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特許7496182AlNセラミックスの超音波洗浄方法、半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法および半導体製造装置用部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】AlNセラミックスの超音波洗浄方法、半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法および半導体製造装置用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240530BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20240530BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240530BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H01L21/304 642E
B08B3/12 Z
H01L21/02 Z
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648A
H01L21/68 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056937
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158217
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100142686
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晶
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-256358(JP,A)
【文献】特開2010-234298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/02
H01L 21/67 -21/687
B08B 1/00 -13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水を用いたAlNセラミックスの超音波洗浄方法であって、
前記超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における前記気相のゲージ圧をP(kPa)、前記液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、-5.0≦P≦-1.0、かつ、-7.3≦DO/P≦-0.10の関係式を満たすことを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項2】
-5.0≦P≦-1.0、かつ、-4.0≦DO/P≦-0.10の関係式を満たすことを特徴とする請求項1記載の超音波洗浄方法。
【請求項3】
超純水を用いたAlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法であって、
前記超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における気相のゲージ圧をP(kPa)、前記液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、-5.0≦P≦-1.0、かつ、-7.3≦DO/P≦-0.10の関係式を満たすことを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項4】
-5.0≦P≦-1.0、かつ、-4.0≦DO/P≦-0.10の関係式を満たすことを特徴とする請求項3記載の超音波洗浄方法。
【請求項5】
前記半導体製造装置用部材は、基板を加熱するヒータまたは基板を保持する静電チャックまたはサセプタであることを特徴とする請求項3または4に記載の超音波洗浄方法。
【請求項6】
AlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の製造方法であって、請求項3から5のいずれか1項に記載の超音波洗浄方法により前記半導体製造装置用部材を洗浄する工程を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlNセラミックスの超音波洗浄方法、半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法および半導体製造装置用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子製造工程においては、洗浄水で満たされた洗浄槽内に被洗浄物(半導体ウェハ)を配置し、洗浄水を介して超音波を当該被洗浄物に照射することにより被洗浄物の洗浄を行う超音波洗浄方法が開示されている。その超音波洗浄方法は、洗浄を行うにあたり、被洗浄物を配置した洗浄水内の気体の溶解度を低下させ、これにより、パーティクルの除去効率を上げ、半導体素子製造工程の歩留まりを向上させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-077376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、AlNセラミックスがプラズマ耐性や高熱伝導性の観点から半導体ウェハの加熱用ヒータやプラズマ装置用部材に使用されている。AlNセラミックスは半導体製造用途向けで一般に使用される部材であるが、これらの部材は、製品形状に外形を機械加工した 後に、製品表面の汚れ除去や加工によって発塵して付着しているパーティクル除去の目的 のために、湿式洗浄が行われる。湿式洗浄時にAlN と水と反応して表面が腐食(エロージョン)することが知られている。AlNセラミックスは、腐食すると、2AlN+3H2O→Al2O3+2NH3の反応式により、酸化アルミニウムの粒子(パーティクル)を発生させる。このため、特許文献1に記載の超音波洗浄方法でAlNセラミックスを洗浄した場合、腐食により粒子が離脱してパーティクル発塵の原因となるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、AlNセラミックスの洗浄工程での腐食によるパーティクル発塵を抑制することができるAlNセラミックスの超音波洗浄方法、半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法および半導体製造装置用部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るAlNセラミックスの超音波洗浄方法は、超純水を用いたAlNセラミックスの超音波洗浄方法であって、前記超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における前記気相のゲージ圧をP(kPa)、前記液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、P<0、かつ、-9≦DO/P≦0の関係式を満たすことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法は、超純水を用いたAlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法であって、前記超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における気相のゲージ圧をP(kPa)、前記液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、P<0、かつ、-9≦DO/P≦0の関係式を満たすことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る半導体製造装置用部材の製造方法は、AlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の製造方法であって、前述の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法により前記半導体製造装置用部材を洗浄する工程を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る超音波洗浄方法および本発明に係る製造方法では、超純水を用いるため、他の水に比べて溶存ガスの濃度が高く、超音波によってキャビテーションを発生し、洗浄効果を高めることができる。用いる超純水は、気相のゲージ圧P(kPa)と液相中の溶存酸素濃度DO(mg/L)とが上記の所定の関係式(P<0、かつ、-9≦DO/P≦0)を満たすとき、AlNセラミックスの腐食を抑制することができる。このため、AlNセラミックスの腐食によるパーティクル発塵を抑制することができる。
【0010】
本発明に係るAlNセラミックスの超音波洗浄方法および本発明に係る半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法では、P<0、かつ、-4≦DO/P≦0の関係式を満たすことが好ましい。
本発明に係る半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法において、前記半導体製造装置用部材は、基板を加熱するヒータ、基板を保持する静電チャックまたは基板を支持するサセプタであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、AlNセラミックスの洗浄工程での腐食によるパーティクル発塵を抑制することができるAlNセラミックスの超音波洗浄方法、半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法および半導体製造装置用部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法において洗浄されるヒータを示す(A)正面上方からの斜視図、(B)正面下方からの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法において洗浄される静電チャックを示す(A)正面上方からの斜視図、(B)正面下方からの斜視図である。
図3】本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法において洗浄されるサセプタを示す斜視図である。
図4】本発明の実施例で用いた溶存ガス濃度測定方法を示す説明図である。
図5】本発明の実施例のパーティクル数の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態のAlNセラミックスの超音波洗浄方法は、超純水を用いたAlNセラミックスの超音波洗浄方法である。用いる超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における前記気相のゲージ圧をP(kPa)、液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、P<0、かつ、-9≦DO/P≦0の関係式を満たす。
【0014】
本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法は、超純水を用いたAlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法である。用いる超純水は、液相および気相が共存する系の平衡状態における気相のゲージ圧をP(kPa)、液相中の溶存酸素濃度をDO(mg/L)としたとき、P<0、かつ、-9≦DO/P≦0の関係式を満たす。
【0015】
本発明の実施の形態のAlNセラミックスの超音波洗浄方法および本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法では、まず超音波洗浄による洗浄効果を高めるため、溶存ガスの濃度が高い超純水を用いる。超純水は、電気抵抗率(比抵抗、MΩ・cm)によって定義される(JIS K0552:1994)。超純水の25℃における理論値は18.24MΩ・cm であり、17MΩ・cm以上の水、好ましくは18MΩ・cm以上の水が用いられる。溶存ガスは、水に溶存する窒素、酸素、二酸化炭素など大気成分の総体であり、その一部が溶存酸素である。溶存ガスの濃度が高いと、超音波によって発生するキャビテーションによる洗浄効果が高くなる。
【0016】
更に、溶存酸素の濃度が低い超純水を用いる。溶存酸素の濃度が高いと、2AlN+3H2O→Al2O3+2NH3の反応式に加えて2AlN+3/2O2→Al2O3+Nの反応式により溶存酸素がAlNと反応し、AlNの腐食が進行する。このAlNの腐食の進行を抑制するため、溶存酸素の濃度が低い超純水を用いる。
このように、溶存ガスの濃度が高いことと溶存酸素の濃度が低いこととのバランスによりAlNセラミックスの腐食を抑制し、洗浄工程での腐食によるパーティクル発塵を抑制することができる。
【0017】
液相と気相が共存する系では、液相と気相の気体が平衡状態となり、液相の溶存ガス濃 度は気相の気体量、すなわち気体の分圧に比例する。そのため、上記の所定の関係式(P <0、かつ、-9≦DO/P≦0)は、超純水における溶存ガスの濃度と溶存酸素の濃度との関係式であるといえる。なお、上記関係式P<0、かつ、-9≦DO/P≦0において、DOは超純水の溶存酸素濃度計による直読値(単位mg/L)である。
本発明の上記実施の形態の超音波洗浄方法は、P<0、かつ、-4≦DO/P≦0の関係式を満たすことが好ましい。
【0018】
本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の超音波洗浄方法において、半導体製造装置用部材は、一例で、基板を加熱するヒータ、基板を保持する静電チャックまたはサセプタである。
「基板」としては、半導体ウエハ、ガラス基板等が例示される。
【0019】
図1(A),(B)に示すように、ヒータは、円板状のヒータプレート1の一方の面1aの中心に、ヒータプレート1を支持する円筒状のAlNセラミックス製のシャフト2の一端2aが垂直に接合される。更に、ヒータは給電用の金属製の端子3が、電極と電気的接続させるためにシャフト2の他端2bより内部に挿入され、端子3の一端がロウ材(図示しない)を介して、ヒータプレート1の内部に埋設されている電極に電気的に接続される。ヒータプレート1およびシャフト2は、AlNセラミックスを含む材料で構成される。
【0020】
図2(A),(B)に示すように、静電チャックは、基板が載置される円板状の板状部材4と、板状部材4を支持するベース部材5とを備え、板状部材4とベース部材5とは接合層(図示しない)を介して接合されている。更に、静電チャックは、上面と下面とを貫通する複数のリフトピン用貫通孔6を有し、下面に端子7を有する。板状部材4およびベース部材5はAlNセラミックスを含む材料で構成される。
【0021】
図3に示すように、サセプタは、基板が支持される円板状のトレイ8を備える。トレイ8は、AlNセラミックスを含む材料で構成される。
【0022】
上述のAlNセラミックスを含む材料は、AlNは、90~99.99wt%の純度の範囲で構成されていることが好ましい。AlN以外には焼結助剤成分としてYを含む化合物が含まれる。焼結助剤はY以外にはアルカリ土類金属やY以外の希土類の化合物を含んでもよい。更に遷移金属の化合物を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の実施の形態の半導体製造装置用部材の製造方法は、AlNセラミックスを含む半導体製造装置用部材の製造方法であって、本発明の他の実施の形態の超音波洗浄方法により前記半導体製造装置用部材を洗浄する工程を有する。
【実施例
【0024】
以下、図面に基づき、本発明の実施例について説明する。
以下の洗浄物について、以下の洗浄方法により超音波洗浄を行った後、パーティクル評価を行った。
(洗浄物)
AlNセラミックス(AlN)およびAl2O3セラミックス(Al2O3
寸法: 直径 500mm、厚み25mm
(洗浄方法)
超純水性状・・・ 電気抵抗率18MΩ・cm以上
超音波洗浄器性状・・・ 40kHz、500W
洗浄条件・・・ 30分間
洗浄槽・・・塩ビ製水槽
超純水流量・・・ 1L/min以上の流水
【0025】
(パーティクル評価方法)
液中パーティクルカウンタ(型番リオン社 KS42-A)を使用し、超音波洗浄の所定時間経過後に、液中の単位容積(mL)当たり0.2μm以上の粒径を有するパーティクルの数カウントした。
【0026】
(溶存ガス濃度測定方法)
溶存ガス濃度は、図4に示す装置を用いて、特開2000-65710に記載される方法によって測定した。図4の装置は、密閉容器10内に気体透過膜11を設けて、一方の側を液相室12、他方の側を気相室13に区画し、液相室12に超純水を矢印14に示す方向から導入し、矢印15に示す方向に排出して、気相室13に気相の真空度を測定する圧力計16を設けて成っている。
【0027】
予備脱気した超純水に大気または窒素ガスをバブリングしてガス濃度を調整した超純水 を図4の装置を用いて、気体透過膜に通水し、その気相を密閉して真空度を測定した。また、別に予備脱気水の溶存酸素ガス濃度を、隔膜式溶存酸素計を用いて測定した。
液相と気相が共存する系では、液相と気相の気体が平衡状態となり、液相の溶存ガス濃度は気相の気体量、すなわち気体の分圧に比例する。よって水中に溶解している気体の濃度を、圧力0.1MPa、温度25℃における気体の溶解度で除した値を、気体の飽和度と定義すると、水と平衡状態にある気相の真空度(ゲージ圧)を測定することにより、溶存ガス(溶存気体)濃度を一括して飽和度の単位で求めることができる。そこで溶存ガス濃度として真空度(kPa)で代用した。真空度の測定は-5kPa~5kPaの範囲で行なった。真空度は、マイナス値では未飽和、プラス値では過飽和を示す。気相は大気または溶存酸素濃度をより小さく調整するため大気と窒素ガスの混合ガスとした。
【0028】
(溶存酸素濃度測定方法)
溶存酸素濃度は下記方式、測定器で濃度(mg/L)を直読した。
方式:隔膜式ガルバニ電地法
測定器:HORIBA製 ポータブル溶存酸素計 OM-71
(溶存酸素の濃度と前記溶存ガスの濃度との比率パラメータ)
溶存ガスの濃度は、溶存ガス濃度測定方法における気相の真空度P(単位kPa、ゲージ圧)として求めた。
溶存酸素の濃度は、超純水の溶存酸素濃度計による直読値をDO(単位mg/L)とする。
ここで、DO/P (kPa/(mg/L))により溶存酸素濃度と溶存ガス濃度の比率のパラメータとした。
【0029】
(溶存酸素と溶存ガス濃度の調整方法)
溶存酸素は、気体の種類(大気、窒素ガス等)および、液相の撹拌や気体のバブリングによって調整した。
溶存ガスは、気相の圧力を調整することによって行った。
なお、液相の温度を調節することによっても溶存酸素と溶存ガス濃度を調節することは可能である。
超純水について、気相のゲージ圧P(kPa)と溶存酸素濃度DO(mg/L)とが異なる条件で、図5に示す装置を用いてパーティクル数を測定した。図5に示すように、容器21を超音波振動子22の上に載せ、容器21の内部に支持台23を設けた。支持台23の上に洗浄物24を配置し、容器21を超純水25で満たしオーバーフローさせた。容器21中に設置した液中パーティクルカウンタ26によりパーティクル数を測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
表1に示すように、実施例1~6は、Pが0(kPa)以下、かつDO/P (kPa/(mg/L))が-9以上0未満である条件であり、液中パーティクルの数が少なかった。これは超音波洗浄時に溶存ガス濃度が小さくキャビテーションによる粒子剥離の効果が小さかったことと、溶存酸素の濃度が低くAlNセラミックス表面の腐食が抑えられたためと推定される。
【0031】
比較例1、2、4は、Pが0より大きく、DO/P(kPa/(mg/L))の値も0より大きくなっている。このとき液中パーティクルは800個以上と大きく増加した。これは液中のガスが過飽和の状態になっているため超音波洗浄時にAlNセラミックス表面でのキャビテーションの影響が強すぎて粒子を剥離する効果を引き起こしたためと推定される。
【0032】
比較例3は、Pが減圧側で比較的0に近くキャビテーションの効果は小さいが、溶存酸素濃度が高くAlNの表面を腐食する効果が大きかったためパーティクル数が800個と多くなったものと推定される。
比較例5は、Pが正圧側で比較的0に近くキャビテーションの効果は小さく、溶存酸素による腐食効果も小さかったが、超音波による洗浄効果が十分に発揮されずパーティクル数は800個以上で多かった。
【0033】
比較例6は、洗浄物をAl2O3とした以外、比較例1と同じである。パーティクル数は350個と少なかった。これは、Al2O3セラミックスの表面はもともと酸素が存在しているため、AlNセラミックスと異なり、2AlN+3/2O2→Al2O3+Nのような腐食する反応が生じず、表面の腐食が起きないためと推定される。
【0034】
比較例7は、洗浄物をAl2O3とした以外、実施例1と同じである。パーティクル数は320個と少なかった。
【0035】
このように、AlNセラミックスの超純水による超音波洗浄工程では、Pが0(kPa)未満、かつDO/Pが-9以上0以下の条件でパーティクル発塵の少ない効果的な洗浄が行えることが示された。
またさらに、Pが0(kPa)以下、かつDO/P(kPa/(mg/L))が-4以上0以下の条件で、さらにパーティクル発塵の少ない効果的な洗浄が行えることが確認された。
【0036】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0037】
1 ヒータプレート
2 シャフト
3 端子
4 板状部材
5 ベース部材
6 リフトピン用貫通孔
7 端子
8 トレイ
10 密閉容器
11 気体透過膜
12 液相室
13 気相室
16 圧力計
21 容器
22 超音波振動子
23 支持台
24 洗浄物
25 超純水
26 液中パーティクルカウンタ
図1
図2
図3
図4
図5