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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020085805
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178608
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】510295239
【氏名又は名称】永倉 文洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永倉文洋
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114639(JP,A)
【文献】特開2015-085732(JP,A)
【文献】特開2005-047494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーシングカー、ボートレースのモーターボート、及び、エアレースの飛行機よりなる群から選ばれた移動体の、加速状態若しくはコーナーでの回転状態を、観戦者に分からせる娯楽用、又は、レーサー若しくはパイロットの、運転若しくは飛行の、研究用若しくは練習用;該移動体の内部の人の危険性若しくは安全性の確認用;又は;
移動体の、操縦者、運転者、同乗者、若しくは、乗客にかかる負荷を知ることで、快適性若しくは安全性の指標取得用、又は、運転若しくは操縦の技量認知用、又は、移動体の走行試験研究用若しくは練習用、の移動体であって、
移動方向が略水平方向である該移動体の移動方向に対して上下方向又は横方向の加速度の大きさを、加速度センサー、ジャイロセンサー、又は、角速度センサーで測定することによって該加速度の方向と大きさを検知し、その結果を、該移動体の表面に設置された表示画面の、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化、又は、模様若しくは文字の変化によって、移動体の外部から認識できるようになっていることを特徴とする移動体。
【請求項2】
上記表示画面が設置された移動体の表面が、移動体の少なくとも側面である請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
上記表示画面が設置された移動体の表面が、移動体の側面の透明部分を除く略全面である請求項1又は請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
上記表示画面が、液晶画面、有機EL画面、又は、LEDを敷き詰めた画面である請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の移動体。
【請求項5】
動体の内部の人の危険性若しくは安全性の確認用、移動体の観戦若しくは娯楽用、又は、移動体の研究開発用である請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の移動体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の移動体の少なくとも側面に設置するための表示画面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の表面の空気抵抗の大きさ、速度、加速度等が、その表面に表示される移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物等の移動体の外部に、該移動体の速度等を表示する技術は知られている。
特許文献1には、車体の外部に複数個の表示灯を速度別に色分けして装備した自動車用速度表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、自動車の走行速度を数値で表示する表示手段を自動車車体の外部に設けた自動車速度表示装置が記載され、走行速度に応じて点灯数等を変化させることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、車両の運動状態に関する可視的な情報を他の交通参加者に提供する表示装置であって、減速又は加速を可視的に表示する光源の第1の列と、速度を可視的に表示する光源の第2の列とを含み、該光源は、車両のフロントガラス又はリヤウインドウに配置され、特定の色を放射するように制御可能な発光素子であり、第1の列と第2の列は異なる色の光を発光し、一つの色は減速を、他の色は加速である表示装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、上記技術は、乗物の速度を外部に、表示灯の種類や点灯個数、数値等で表示したり、ポイントでの点灯や光源列の点灯で表示したりするものであり、乗物等の側面(全体)等、大面積の変色で外部に向かって表現するものではなかった。
また、光源については、点光源又はその列であり、液晶画面、有機EL画面等のモニター用の表示画面ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60-096138号公報
【文献】特開平05-213095号公報
【文献】特表2010-540339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、移動体の側面、ボディ等、大面積部分の変色等で、外部に向かって該移動体の速度や加速度等の状態を表現する移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、移動体のボディ表面に表示画面を設置し、該移動体の空気抵抗、速度、加速度等を、該表示画面の色の変化等によって示せば、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、移動体が受ける空気抵抗、移動体の速度、移動体の移動方向の加速度、又は、移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度の大きさを、移動体の表面に設置された表示画面の、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化、又は、模様若しくは文字の変化によって、移動体の外部から認識できるようになっていることを特徴とする移動体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記表示画面が設置された移動体の表面が、移動体の側面の透明部分を除く略全面である上記の移動体を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、自動車、レーシングカー、飛行機、モーターボート、又は、電車である上記の移動体を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記表示画面が、液晶画面、有機EL画面、又は、LEDを敷き詰めた画面である上記の移動体を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、移動体の外部に対する該移動体の危険性若しくは安全性の提示用、移動体の内部の人の危険性若しくは安全性の確認用、移動体の観戦若しくは娯楽用、又は、移動体の研究開発用である上記の移動体を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記の移動体の少なくとも側面に設置するための表示画面を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
移動体の表面全体、側面全体等、又は、移動体のボディの大面積を、表示画面で覆い、該表示画面の変色等によって、外部に該移動体の速度や加速度等の移動状況(状態)を示せば、該移動体の危険性若しくは安全性を外部に提示できる。それによって、交通安全に役立ち、意匠(デザイン)的にも面白いものとなる。
【0016】
また、該移動体の内部の人にとっては、速度や所謂G(加速度)が分かって、危険性若しくは安全性を確認できる。
進行方向に垂直であって水平方向(横方向)に、大きい所謂G(加速度)が加わると、頚椎捻挫・むち打ち症等になり易い状況となるが、その方向の加速度が分かると、該疾患や事故が予防できる。
また、進行方向に垂直であって上下方向の加速度が分かると、該加速度は、凹凸のある走行面を移動したときの上下振動を表すから、スムースな走行(移動)であるか否かを移動体外部の人(研究・開発者、見物人等)と、移動体内部の人(運転手、乗務員、乗客等)に、定量的・直感的に知らせることができる。
【0017】
また、該移動体が、レーシングカー、モーターボート、エアレース(Air Race)用の飛行機等の場合は、観戦者が該移動体の加速状態・速度;コーナーでの回転状態(回転の外側にかかるG(加速度))等が分かり、娯楽用としても楽しめる。特に該移動体のボディの側面全体等の大面積の色が変われば、加速状態(性能)、コーナリングの状態(優劣)等が外部から容易に分かって、レース観戦者にとって面白い。更に、運転者(レーサー、パイロット等)の、運転・飛行の研究(練習)にも役立てることができる。
【0018】
また、特に自動車レースやカーアクションにおいて、ドリフト走行の優劣等が観客席から分かって面白い。また、ドリフト走行をビデオに撮って、運転者(レーサー)がドリフト走行の研究(練習)するのにも役立てることができる。また、ドリフト走行時に、どのような速度や加速度がかかっているかを知ることもできる。
【0019】
更に、特にレースでは、上記したような、横方向に加わる大きい所謂G(加速度)による、頚椎捻挫・むち打ち症等を予防できる。
また、エアレース等で急上昇・急降下したときに、進行方向に垂直であって上下方向の加速度が分かると、血液が脳に行かなくなる障害・失神事故等を防止することができる。また、かかる危険状態を外部から察知することができる。
なお、大きなG(加速度)は、危険が伴うので、レースによっては失格の要件となるが、それがボディの側面全体等の大面積の変色で外部(観戦者等)にも提示されれば、失格ルールの透明性が担保される。
【0020】
また、移動体の製造会社や検査会社の研究開発機関等で、移動体の研究開発用としても有用である。特に、移動体の表面が受ける空気抵抗の大きさや、移動体の速度や加速度が、外部から分かるので、移動体の外部の研究者にとって便利である。
特に、該移動体の上下振動、加速性能等が、「移動体の加速度」として、外部からモニターできるので、移動体の研究開発者や性能確認者が、該移動体に乗っている必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の移動体が自動車であって、該自動車が移動(走行)しているときの側面図である。(a)(b)(c)は、該移動体の速度及び/又は加速度が異なっていて、それぞれ別の色になっていることを示す。
図2】本発明の移動体がレーシングカーであって、該レーシングカーが移動(走行)しているときの側面図である。(a)(b)(c)は、該移動体の速度及び/又は加速度が異なっていて、それぞれ別の色になっていることを示す。
図3】本発明の移動体が飛行機であって、該飛行機が移動(飛行)しているときの側面図である。(a)(b)(c)は、該移動体の速度及び/又は加速度が異なっていて、それぞれ別の色になっていることを示す。
図4】加速度の各方向を示す図である。(3)移動体の移動方向の加速度 (4a)移動体の移動方向に対して垂直方向であって上下方向の加速度 (4b)移動体の移動方向に対して垂直方向であって横方向の加速度
図5】移動体が自動車であって、該自動車が受ける空気抵抗が大きい部分や風速の速い部分の表示画面(図中のハッチが付してある部分)が、変色、(色)濃度等が変化等するようになっていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の具体的な実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0023】
本発明の移動体は、(1)それが受ける空気抵抗の大きさ、(2)その速度、(3)その移動方向にかかる加速度、又は、(4)移動方向に対して垂直方向にかかる加速度を、その表面に設置された表示画面の、「色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化」、又は、「模様若しくは文字の変化」によって、移動体の外部から認識できるようになっていることを特徴とする。
【0024】
そして、上記移動体の移動方向が略水平方向のときは、上記(4)は、(4a)該移動方向に対して上下方向の加速度と、(4b)該移動方向に対して横方向の加速度に分けられ(図4参照)、それらの大きさを、上記移動体の外部に向かって、上記「移動体の表面に設置された表示画面」に表示できるようになっていることが好ましい。
【0025】
<(1)空気抵抗の大きさ>
「(1)その移動体が受ける空気抵抗の大きさ」は、移動体の表面に専用のセンサーを設置することで、移動体の表面の特定箇所の空気抵抗や空気による摩擦力等を測定することができる。該測定値を色等に変換して、該移動体の表面の表示画面に表す。
【0026】
また、移動体全体が受ける空気抵抗は、おおよそ、空気密度、「(2)移動体の速度」の2乗、空気抵抗係数(Cd)、前方投影面積(A)の積で求められるので、例えば、(2)移動体の速度と、前方投影面積(A)の積を色等に変換して、該移動体の表面の表示画面に表す。
表示画面には、同一移動体における相対値のみを色等で示せばよい場合には、前方投影面積(A)は、該色等には影響しない。また、(2)移動体の速度は、下記する方法で測定される。移動体全体が受ける空気抵抗の大きさは、(2)移動体の速度に比例する。
【0027】
図5に、移動体が自動車であって、該自動車が受ける空気抵抗が大きい部分だけが変色している態様を示す。図5では、自動車のボンネットの先端部、及び、自動車の上部の前方部(図5のハッチを付した部分)が、風速が速い又は空気抵抗が大きいので変色又は濃度変化していることを示す。表示画面は、自動車全体に設置されていたとしても、空気抵抗が大きい部分(図5のハッチを付した部分)だけが変色又は濃度変化している。
【0028】
空気抵抗等の大小によって、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化が、グラデーション(gradation)をもって変化するようになっていてもよい。
【0029】
<(2)移動体の速度>
「(2)移動体の速度」は、例えば、車輪(車軸)の回転速度を常法に従って測定して換算する。また、GPSにより測定することもできる。移動体の速度メーターへの信号をそのまま使用することもできる。
【0030】
<(3)移動方向の加速度>
「(3)移動体の移動方向の加速度」は、例えば、車輪(車軸)の回転速度の時間変化を、常法に従って測定して換算する。また、GPSにより測定することもできる。
車輪(車軸)の回転速度のセンサーは、各車輪に1個ずつでもよいし、全体として1個でもよい。
【0031】
<(4)移動方向に対して垂直方向の加速度>
「(4)移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度」には、以下の「(4a)移動体の上下方向の加速度」と、「(4b)移動体の移動方向に対して垂直であって横方向の加速度」の2種がある(図4参照)。
【0032】
上記加速度は、何れも公知の加速度センサーやジャイロセンサー(角速度センサー)で測定できる。該センサーが重力(加速度)を検知することによって、上記「移動体の移動方向に対して垂直方向」が、地面に対して垂直方向(上下方向)か、水平方向(横方向)かを認識できる。該センサーは、3軸方向(X軸・Y軸・Z軸)に適応するセンサーであることが好ましい。
【0033】
上記センサーとしては、市販品が使用可能であり、特に限定はないが、株式会社村田製作所、三菱電機株式会社、パナソニック株式会社、株式会社ワコー、セイコーエプソン株式会社、アナログ・デバイセズ株式会社、北陸電気工業株式会社等から販売されている製品の中から選択して使用できる。
【0034】
<<(4a)上下方向の加速度>>
「(4a)移動体の移動方向に対して垂直であって上下方向の加速度」としては、該移動体が、自動車、レーシングカー、電車等の場合には、例えば、道路、サーキット、線路等の凹凸(面)を走行しているときの上下方向の振動、路面からのショック・衝撃、凹凸面でなくてもモーター等から生じる上下方向の振動等が挙げられる。
【0035】
また、該移動体が、飛行機等の場合には、例えば、(急)降下や(急)上昇したときの上下方向の加速度(所謂「G」)等が挙げられる。なお、エアレースでは、(急)上昇したときの加速度(所謂「G」)により、操縦者の脳に血液が行かなくなるので、(4a)上下方向の加速度は重要である。
【0036】
また、該移動体が、モーターボート、船、水中翼船等の場合には、例えば、波等による上下方向のバウンドによる加速度等が挙げられる。
【0037】
(4a)上下方向の加速度のセンサーの設置については、サスペンション部に、各4個ずつでもよいし、移動体全体として1個でもよい。また、移動体の表面(ボディ)の前部、中央部及び後部に1個ずつ計3個、並びに、左右にそれぞれ3個ずつ計6個が設置されていてもよい。移動体の先端部に設置されていてもよく、飛行機の場合には、それぞれの翼に設置されていてもよい。
【0038】
<<(4b)横方向の加速度>>
「(4b)移動体の移動方向に対して垂直であって横方向の加速度」としては、該移動体が何であっても、例えば、カーブするときに遠心力を生じさせる加速度、カーブしていなくても、モーター等から生じる、又は、走行に伴って生じる、左右方向(横方向)の振動等が挙げられる。
【0039】
一般に速度の速い、自動車、レーシングカー、飛行機、モーターボート、電車等の場合には、それらが曲がるときの向心力は大きいので、(4b)横方向の加速度を知ることは、安全走行・操縦・運転の点から重要であり、移動体の内の人にとっては、横方向の所謂「G」は重要である。
また、レースにおいては、レーシングカーやモーターボートの選手のコーナリングの良否(コーナリングが上手か下手か)が観客席から分かって面白い(娯楽性が上がる)。
【0040】
(4b)横方向の加速度のセンサーの設置については、サスペンション部に、各4個ずつでもよいし、移動体全体として1個でもよい。また、移動体の表面(ボディ)の前部、中央部及び後部に1個ずつ計3個、並びに、左右にそれぞれ3個ずつ計6個が設置されていてもよい。移動体の先端部に設置されていてもよく、飛行機の場合には、それぞれの翼に設置されていてもよい。
【0041】
<移動体>
本発明における移動体は、無線操縦の飛行機、ヘリコプター、ドローン、無人機等の飛行体;無人操縦車、無人運転電車、無線操縦の自動車等の陸上走行車;自動運転の(モーター)ボート、船等の水上移動体;等も挙げられる。なお、上記移動体には、ラジコン、模型等のホビー用を含む。
【0042】
ただ、人が乗って運転又は操縦するものであることが、操縦者、運転者、同乗者、乗客、レーサー等にかかる負荷(所謂G、振動等)が分かる、快適性や安全性の指標となる、運転(操縦)技量が分かる、走行等の試験研究の対象として重要である、移動体の種類や数が多い等の点から好ましい(例えば、図1~3参照)。
【0043】
本発明の移動体として、特に好ましいものは、上記の点から、自動車、レーシングカー、飛行機、モーターボート、又は、電車である。
【0044】
<表示画面>
本発明における表示画面は、少なくとも、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化、又は、模様若しくは文字の変化によって、移動体の外部から認識できるようになるものであることが必須である。
図1、2、3に概略を例示するが、図1、2、3のように、移動体の略全体に表示画面が設置されていてもよく、後記するように移動体の一部に設置されていてもよい。
【0045】
好ましくは、電気的に該変化を表示させることが可能であり、前記したような、移動体が受ける空気抵抗;移動体の速度;移動体又は乗員にかかる、振動、揺れ、所謂G、バウンド、ショック等の加速度を、瞬時に測定して応答し、頻繁に、色、模様、文字等を変化させて外部に表示できるものが好ましい。応答速度が遅いと、上記空気抵抗、速度、加速度をオンタイムで瞬時に画面上に表示できない場合がある。
本発明における表示画面は、太陽光等の反射型であっても、自ら発光する発光型でもよいが、一目で見易い、暗くても見易い、汎用的である等の点から発光型であることが好ましい。
【0046】
表示画面としては、上記の点等から、特に限定はないが、具体的には、液晶画面、有機EL画面、又は、LEDを敷き詰めた画面等の発光型場面であることが好ましい。
これらでは表示の応答が速いので、表示画面上の「色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化」又は「模様若しくは文字の変化」によって、上記した、空気抵抗、速度、加速度を表現することによって、外部から瞬時にそれら(の変化)を特に好適に認識できる。
より好ましくは、設置の容易さ等から、液晶画面又は有機EL画面であり、屈曲性があり移動体の側面にフィットさせられる点から有機EL画面が特に好ましい。
また、本発明は、移動体の少なくとも側面に設置するための表示画面でもある。
【0047】
<<色(の変化)>>
本発明における表示画面は、少なくとも、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化によって、移動体の外部から、上記した移動パラメーターが認識できるようになっていることが好ましい。
本発明における「色の種類」とは光の波長等を、「色の濃度」とは特定波長の光の強度等を、「色の明度若しくは濁度」とは、光のスペクトルにおける波長の混ざり具合やベースラインの高低等を言う。
これらの組み合わせで、前記(1)空気抵抗、(2)速度、(3)移動方向の加速度、(4a)移動方向とは垂直で上下方向の加速度(振動、バウンド、所謂G等)、(4b)移動方向とは垂直で横方向の加速度(横振れ、所謂G等)と言った種々の移動パラメーターの測定値(種々の性質の大きさ)を示せば、外部からでも瞬時に認識し易い。
図1~3の(a)(b)(c)は、移動体表面に設置された表示画面の、色の種類、濃度、明度若しくは濁度が変化している様子を示す。
【0048】
特に限定はないが、色の種類によって、上記(1)ないし(4b)の何れかを区別し、加速度の場合は正負を区別することも好ましい。また、色の濃度でそれらの大きさ(加速度の場合は絶対値)を表現すれば、一目で分かり易い。
また、「色の明度若しくは濁度」で、振動、揺れ等の細かな性質(ピッチ、大きさ等)を表現すれば、より多くの情報を瞬時に知ることができる。また、該移動パラメーターが危険領域に入ったら、特殊な色の種類や濃度で示すようにすれば、危険防止になる。
【0049】
移動体の(1)空気抵抗や表面風速、(2)速度、(3)移動方向の加速度、(4a)(4b)移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度の大きさの大小によって、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化が、グラデーション(gradation)をもって変化するようになっていてもよい。
【0050】
移動体全体に、(1)空気抵抗や表面風速、(2)速度、(3)移動方向の加速度、(4a)(4b)移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度、のうちの1つの値を示す表示画面が設置されていてもよく(例えば図1~3)、移動体の特定個所に2種以上の表示画面が設置されていて、それぞれ上記値を示すようになっていてもよい(図示せず)。
後者の2つ以上の値を示すようになっている場合とは、例えば、移動体上部に、(4a)移動体の移動方向に対して垂直方向であって上下方向の加速度を、移動体前面に、(2)速度、(3)移動方向の加速度を、移動体の側面に、(4b)移動体の移動方向に対して垂直方向であって横方向の加速度を示すようになっていることを言う。
【0051】
また、移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度の正負(方向)、及び/又は、その大きさ(絶対値)の大小によって、色の種類、濃度、明度若しくは濁度が、グラデーション(gradation)をもって変化するようになっていてもよい。
【0052】
<<模様・文字(の変化)>>
移動体の表面に設置された表示画面の模様若しくは文字の変化によって、移動体の外部から認識できるようになっていてもよい。
模様としては、特に限定はなく、粗いモザイク状のものでもよく、特定の図柄であってもよい。速度や加速度の種類や大きさや方向を模様や文字で表してもよい。
自動車のホイールキャップやタイヤにLED等を設置してもよく、その場合は、LEDの点滅のタイミングとタイヤの回転を同期させて、文字や模様等を読み取るようにしてもよい。
【0053】
<<表示画面の特長>>
本発明における表示画面としては、上記した通り、具体的には、液晶画面又は有機EL画面が特に好ましく、色の種類、濃度、明度若しくは濁度の変化によって、移動状況を提示することが特に好ましい。
例えば、LEDを1次元に並べたようなものであると小さくて見難いし、点灯個数で、空気抵抗、速度又は加速度が表現されていると、該個数が頻繁に変化する場合等、瞬時に外部から認識できない場合がある。
また、小さな文字や数字等で、空気抵抗、速度又は加速度が表現されると、外部から(特に遠方から)該文字や数字を読み取り難い場合、瞬時に該文字や数字の意味を認識し難い場合等がある。
【0054】
<<表示画面の設置表面、面積(割合)等>>
表示画面は、移動体に1個設置されていても、2個以上設置されていてもよいが、どちら側から(どこから)でも見えるように、右側面と左側面にそれぞれ1個以上で計2個以上が設置されていることが好ましい(図1~3参照)。
すなわち、上記表示画面が設置された移動体の表面は、移動体の少なくとも側面であることが、外部から見易い、その側面側への移動体のカーブで生じる移動方向に直角方向の加速度が、該側面の側に表示されるので、直感的に分かり易い等の点から好ましい。
【0055】
なお、移動体の底面や上面に設置されていてもよく、飛行機の場合には、下から見えるので、その底面に設置されていることも好ましい。図1~3では、該表示画面が、移動体の全面に設置されている図を示すが、両側の側面だけに設置されているだけでもよい。
【0056】
1個の表示画面の大きさは、特に限定はないが、長方形の場合には(長方形に換算して)、短い方の1辺が、20cm以上2m以下が好ましく、30cm以上1.5m以下がより好ましく、40cm以上1m以下が特に好ましい。この場合、小さな表示画面を隙間なく並列させて1個の表示画面にしてもよい。
【0057】
また、側面の略全面が、1個の表示画面になっていることが特に好ましい。すなわち、移動体の側面全体に、該表示画面が設置されていることが特に好ましい。表示画面はベタ画面であることが好ましい。
言い換えれば、該表示画面が設置された移動体の表面が、移動体の側面の透明部分を除く略全面である移動体が特に好ましい。ここで、「略全面」とは、細かい(小さい)ボディ(筐体)の部分や、曲率半径の小さい部分を除き、側面全体の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上のことを言う。
【0058】
表示画面を並列させて1個の表示画面にして、移動体の側面の略全面を覆ってもよい。また、図1~3に示したように、側面の他に、上面や底面にも設置されていてもよい。すなわち、移動体のボディの略全面が表示画面になっていることも好ましい。
【0059】
表示画面の移動体表面への設置の方法は、特に限定はなく、接着剤による接着、ネジ止め設置等、あらゆる公知の手段が可能である。
【0060】
<移動体の用途>
本発明の移動体は、外部に対する該移動体の危険性若しくは安全性の提示用、移動体の内部の人の危険性若しくは安全性の確認用、移動体の観戦若しくは娯楽用、又は、移動体の研究開発用であることが好ましい。
それらの用途に用いられることによって、前記した本発明の効果を好適に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の移動体は、移動体の表面全体、側面全体等、ボディの大面積を表示画面で覆い、該表示画面の色等の変化によって、該移動体の動きに関する情報を提示するので、該移動体又は乗員の危険性が分かるので、交通安全や健康管理に役立ち、移動体内部の快適さ等も分かるので、交通管理分野、移動体製造・評価分野、健康管理分野等に広く利用されるものである。また、移動体を用いた種々のレースにも使用でき、娯楽性や意匠性にも優れるので、スポーツ分野、レース分野等にも広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0062】
(1) 空気抵抗
(2) 速度
(3) 移動方向の加速度
(4) 移動体の移動方向に対して垂直方向の加速度
(4a)移動方向に垂直で上下方向の加速度
(4b)移動方向に垂直で横方向の加速度
図1
図2
図3
図4
図5