(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】バッテリ内蔵直流電源
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240530BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240530BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240530BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240530BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/615
(21)【出願番号】P 2024035866
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392029742
【氏名又は名称】田中 正一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正一
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特許第7301208(JP,B1)
【文献】米国特許第06020732(US,A)
【文献】特開平09-294027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 10/615
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された多数のセルをもつバッテリと、
前記バッテリと直列接続される二次コイルをもつ降圧トランスと、
前記バッテリ及び前記二次コイルとともに電流循環回路を形成する蓄電素子と、
前記降圧トランスの一次コイルに一次電流を供給するオシレータと、
前記一次電流を制御するために前記オシレータを制御するコントローラと、
を備えるバッテリ内蔵DC電源において、
前記コントローラは、前記バッテリから前記二次コイルを通じて外部負荷に供給される負荷電流により前記降圧トランスの磁気コアに形成されるDC磁束を低減するために、前記一次電流を制御することを特徴とするバッテリ内蔵DC電源。
【請求項2】
前記降圧トランスは、互いに等しい巻数をもつ2つの二次コイルを有し、
前記バッテリ及び前記蓄電素子は、直列接続された多数のセルをもつ第1バッテリパック及び第2バッテリパックからなり、
前記第1バッテリパックは、前記2つの二次コイルの一つを通じて外部負荷に接続され、
前記第2バッテリパックは、前記2つの二次コイルのもう一つを通じて前記外部負荷に接続され、
前記2つの二次コイルに誘導される2つの二次電圧は、前記電流循環回路において同じ方向をもつ請求項1記載のバッテリ内蔵DC電源。
【請求項3】
前記バッテリは、前記二次コイル及びコンタクタを通じて外部負荷に負荷電流を供給し、
前記コントローラは、前記コンタクタが開かれる過渡期間に前記一次コイルにパルス電圧を印加することにより、前記負荷電流を低減する請求項1記載のバッテリ内蔵DC電源
。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の参照】
【0001】
本出願人により保有されている日本特許番号7301208及び7357175はこの出願に関連する先行特許である。それらの全内容は参照により取り入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、バッテリ内蔵直流電源に関し、特に推進モータにDC電力を供給するバッテリ内蔵直流電源に関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車は、リチウムイオンバッテリのような二次電池を内蔵する直流電源をもつ。このバッテリにAC電流を供給するAC内部加熱回路が知られている。AC電流が供給される時、バッテリはそのオーム損失により加熱される。
【0004】
図1は、従来のAC内部加熱回路の一例を示す。この回路は、変圧器T、スイッチS、及びダイオードDをもつ。変圧器Tは一次コイルW1及び二次コイルW2をもつ。一次コイルW1、スイッチS、及びバッテリEの抵抗Rは放電用閉ループ回路を形成している。さらに、ダイオードD、二次コイルW2、及びバッテリEの抵抗Rは充電用閉ループ回路を形成している。スイッチSがオンされる時、放電電流Idが放電用閉ループ回路を流れる。スイッチSがオフされる時、充電電流Icが充電用閉ループ回路を流れる。
【0005】
特許文献1及び2は、バッテリ、蓄電素子、及び降圧トランスの二次コイルにより形成された電流循環回路を開示する。一次AC電流が降圧トランスの一次コイルに供給される時、二次AC電流がこの循環回路を循環する。その結果、バッテリはコンパクトな降圧トランスにより加熱されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特許7301208号
【文献】日本特許7357175号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、優れた信頼性をもつバッテリ内蔵DC電源を提供することである。好ましくは、このバッテリ内蔵DC電源は電気ビークルに適用される。本発明の電気ビークルは、トラクションモータをもつ車両に加えて、推進モータをもつ船、潜水艦、飛行機、及びドローンなどを含む。
【0008】
本発明のバッテリ内蔵DC電源は、バッテリ、蓄電素子、及び降圧トランスの二次コイルにより形成された電流循環回路をもつ。蓄電素子は、バッテリ又は平滑キャパシタにより構成される。オシレータから降圧トランスの一次コイルに一次AC電流が供給される時、二次AC電流がこの電流循環回路を循環する。さらに、バッテリは降圧トランスの二次コイルを通じて電気負荷に負荷電流を供給する。
【0009】
本発明の第1の様相において、負荷電流が降圧トランスの磁気コア内に形成するDC磁束を低減するために、降圧トランスの一次コイルにDC磁束低減電流が供給される。これにより、コンパクトな磁気コアを採用することができる。
【0010】
本発明の第2の様相において、降圧トランスの二次コイルは、交互に繰り返される正パルス電圧及び負パルス電圧をバッテリの各セルに印加する。さらに、正パルス電圧及び負パルス電圧の差と、バッテリ電流とに基づいて、各セルの内部抵抗に関連する電気パラメータが検出される。これにより、各セルの内部抵抗に関連する電気パラメータを正確に検出することができる。
【0011】
本発明の第3の様相において、降圧トランスは2つの二次コイル及び2つのバッテリパックをもつ。2つの二次コイル及び2つのバッテリパックは電流循環回路を形成する。第1バッテリパックは第1二次コイルを通じて外部負荷に接続され、第2バッテリパックは第2二次コイルを通じて外部負荷に接続される。等しい巻数をもつ2つの二次コイルにより誘導される2つの二次電圧は、電流循環回路において同じ方向をもつ。2つのバッテリパックの一方が放電される時、他方は充電される。言い換えれば、循環電流により一つのバッテリパックから放電されたバッテリ電力は、もう一つのバッテリパックにより一時的に蓄えられる。したがって、降圧トランスの一次コイルに接続されるオシレータは、2つのバッテリパックの内部抵抗による交流電力損失に相当する電力だけを一次コイルに供給すればよい。
【0012】
好適態様において、電流循環回路は、第1コンタクタ及び第2コンタクタをもつ。第1コンタクタは、第1バッテリパック及び第1二次コイルと直列接続される。第2コンタクタは、第2バッテリパック及び第2二次コイルと直列接続される。これにより、2つのバッテリパックの一方が不良となっても、外部負荷に負荷電流を供給することができる。
【0013】
好適態様において、電流循環回路はコンタクタを含む。コンタクタが開かれる過渡期間に、降圧トランスは、二次コイルを流れる負荷電流を低減するための二次電圧を発生する。これにより、コンタクタの火花を減らすことができる。
【0014】
好適態様において、コントローラは、循環電流により低温のバッテリパックを加熱するためのバッテリ加熱モードをもつ。このバッテリ加熱モードは、バッテリの放電動作又は充電動作とともに実施されることができる。
【0015】
好適態様において、コンタクタは、直列接続されたキャパシタ及びダイオードを含むバイパス回路と並列接続される。このダイオードは、コンタクタが開かれる時にコンタクタのサージ電流によるキャパシタの充電を許可する。したがって、このダイオードは、コンタクタがオフされる時に発生するコンタクタのサージ電流をバイパスする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、交流電流が変圧器とバッテリとの間を流れる従来のバッテリ加熱回路を示す回路図である。
【
図2】実施例のバッテリ内蔵DC電源を示す回路図である。
【
図3】
図3は、バッテリパックの接続切替を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、交流電流循環回路を循環する二次電流の正成分を示す模式回路図である。
【
図5】
図5は、交流電流循環回路を循環する二次電流の負成分を示す模式回路図である。
【
図6】
図6は、第1コンタクタのアークを低減するための二次電流を示す模式回路図である。
【
図7】
図7は、第2コンタクタのアークを低減するための二次電流を示す模式回路図である。
【
図8】
図8は、各セルの内部抵抗を検出する回路を示す模式回路図である。
【
図9】
図9は、各セルの内部抵抗を順番に検出する動作を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、共通の降圧トランスを用いる種々のモードを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、オシレータとしてのHブリッジを流れる正電流を示す回路図である。
【
図12】
図12は、オシレータとしてのHブリッジを流れる負電流を示す回路図である。
【
図14】
図14は、内部抵抗検出モードを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、電流循環回路の一つの変形例を示す回路図である。
【
図16】
図16は、電流循環回路のもう一つの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
バッテリ電気自動車(BEV)に適用される本発明のDC電源が
図1-
図10を参照して説明される。しかしながら、本発明は定置型DC電源のような他のDC電源にも適用されることができる。
【0018】
図2に示されるこのDC電源は、バッテリ回路10、ケーブル141-143、及びコンタクタボックス3を有する。バッテリ回路10は、第1バッテリパック11、第2バッテリパック12、第1バッテリ管理システム(BMS)110、及び第2バッテリ管理システム(BMS)120を有する。バッテリパック11は、直列接続された4つのセル111-114からなる。バッテリパック12は、直列接続された4つのセル121-124からなる。コンタクタボックス3は、バッテリパック11及び12のDC電力を後述されるモータ駆動回路2へ供給する。このモータ駆動回路2は、3相交流電圧を図略のトラクションモータに印加する3相インバータを含む。
【0019】
バッテリパック11及び12の各正極端子は、コモンケーブル143を通じてコンタクタボックス3に接続されている。バッテリパック11の負極端子は、ケーブル142を通じてコンタクタボックス3に接続されている。バッテリパック12の負極端子は、ケーブル141を通じてコンタクタボックス3に接続されている。
【0020】
バッテリパック11はバッテリ管理システム(BMS)110により監視され、バッテリパック12はバッテリ管理システム(BMS)120により監視されている。BMS110は、バッテリパック11の電流、及び、セル111-114の各セル電圧を検出する。同様に、BMS120は、バッテリパック12の電流、及び、セル121-124の各セル電圧を検出する。
【0021】
コンタクタボックス3は、ハイサイド回路31、ローサイド回路32、降圧トランス5、オシレータ6、及びコントローラ7を収容している。コンタクタボックス3は、モータ駆動回路2へのDC電力供給のためのハイサイド端子9H及びローサイド端子9Lをもつ。
【0022】
ハイサイド端子9Hはハイサイド回路31を通じてケーブル143に接続されている。ハイサイド回路31は、コモンコンタクタ43、プリチャージコンタクタ44、低抵抗素子45、キャパシタ81C、ダイオード81Dをもつ。コモンコンタクタ43はケーブル143とハイサイド端子9Hとを接続する。直列接続されたプリチャージコンタクタ44及び低抵抗素子45は、コモンコンタクタ43と並列接続されたプリチャージ回路を形成している。
【0023】
よく知られているように、コモンコンタクタ43がオンされる以前に、プリチャージコンタクタ44が予めオンされる。これにより、ハイサイド端子9H及びローサイド端子9Lに接続された平滑キャパシタ(図示せず)は、低抵抗素子45を通じて緩慢に充電される。この平滑キャパシタは、モータ駆動回路2から発生するスイッチングノイズ電圧を低減する。
【0024】
さらに、直列接続されたキャパシタ81C及びダイオード81Dは、コモンコンタクタ43と並列接続されたバイパス回路を形成している。このバイパス回路は、コモンコンタクタ43がオフされる時に生じる接点火花を抑止する。このバイパス回路の動作は後述される。
【0025】
ローサイド端子9Lはローサイド回路32を通じてケーブル141及び142に接続されている。ローサイド回路32は、コンタクタ41及び42、並びに、二次コイル52及び53を有する。ローサイド端子9Lはコンタクタ41を通じてケーブル141に接続されている。さらに、ローサイド端子9Lはコンタクタ42を通じてケーブル142に接続されている。
【0026】
降圧トランス5は、それぞれ磁気コア50に巻かれた一次コイル51及び2つの二次コイル52及び53をもつ。二次コイル52はコンタクタ42と直列接続され、二次コイル53はコンタクタ41と直列接続されている。たとえば、二次コイル52及び53の巻数はそれぞれ1ターンであり、一次コイル51の巻数は100ターンである。二次コイル52及び53の巻数は互いに等しい。一次コイル51の巻数は適宜選択されることができる。オシレータ6は一次コイル51に一次AC電圧を印加する。オシレータ6は4つのMOSFETからなるHブリッジ回路からなる。
【0027】
コントローラ7は、BMS110及びBMS120により算出された各セルの内部抵抗値に基づいてコンタクタ41-44及びオシレータ6の動作を制御する。
【0028】
2つのバッテリパック11及び12の切替制御が
図3を参照して説明される。コモンコンタクタ43は、このバッテリパック切替制御の開始前にオンされている。まず、バッテリパック11が正常かどうかが判定される(S100)。この実施例では、バッテリパック11のすべてセルが所定の許容範囲の内部抵抗値をもつかどうかが判定される。バッテリパック11の少なくとも一つのセルの内部抵抗値がこの許容範囲外にあれば、コンタクタ42が遮断される(S102)。これにより、モータ駆動回路2はバッテリパック12だけにより運転される。
【0029】
次に、バッテリパック12が正常かどうかが判定される(S104)。この実施例では、バッテリパック12のすべてセルが所定の許容範囲の内部抵抗値をもつかどうかが判定される。バッテリパック12の少なくとも一つのセルの内部抵抗値がこの許容範囲外にあれば、コンタクタ41が開かれる(S106)。これにより、モータ駆動回路2はバッテリパック11だけにより運転される。次に、バッテリパック11及び12に含まれるすべてのセルの内部抵抗値がこの許容範囲内であれば、2つのコンタクタ41及び42が閉じられる(S108)。これにより、バッテリパック11及び12の損失を低減することができる。さらに、バッテリパック11及び12の間のSOC差が拡大するのを防止することができる。
【0030】
結局、
図2に示されるDC電源は、直列接続されたバッテリパック11及びコンタクタ42のペアと、直列接続されたバッテリパック12及びコンタクタ41のペアとをもつ。さらに、これら2つのペアは並列接続される。これにより、2つのバッテリパック11、12の並列運転及び個別運転のどちらか一つを選択することができる。
【0031】
次に、降圧トランス5によるバッテリパック11及び12へのAC電流供給動作が
図4及び
図5を参照して説明される。このAC電流供給動作は、典型的には寒冷環境において実施されるが、バッテリパックの電気特性改善のために実施されることも可能である。オシレータ6は、一次コイル51にAC電圧VT1を印加する。AC電圧VT1は、交互に繰り返される正パルス電圧と負パルス電圧からなる。AC電圧VT1が一次コイル51に印加される時、二次電圧VT2が、二次コイル52及び53に別々に誘導される。これら2つの二次電圧VT2の向きは同じである。
【0032】
バッテリパック11は開回路電圧VB及び内部抵抗rをもつ。バッテリパック12は開回路電圧VB及び内部抵抗r20をもつ。2つのバッテリパック11及び12の開回路電圧は正確には異なる。簡単な説明のために、バッテリパック11及び12は等しい開回路電圧VBをもつことが仮定される。2つの二次電圧VT2は、2つのバッテリパック11及び12からなる電流循環回路を通じて二次電流ICを循環させる。2つのバッテリパック11及び12は、2つの二次コイル52及び53の接続点54を通じてモータ駆動回路2に負荷電流ILを供給する。二次コイル52によりモータ駆動回路2に供給される電流成分は、二次コイル53によりモータ駆動回路2に供給される電流成分と等しい振幅及び反対の方向をもつ。その結果、二次コイル52及び53は、モータ駆動回路2に二次電流を供給しない。
【0033】
図4は、正パルス電圧が印加される期間における電流の流れを示す。二次コイル52の二次電圧VT2は、バッテリパック11によりモータ駆動回路2に供給される電流成分を減らす。逆に、二次コイル53の二次電圧VT2は、バッテリパック12によりモータ駆動回路2に供給される電流成分を増やす。結局、負荷電流ILは、2つの二次コイル52及び53により影響されない。
【0034】
図5は、負パルス電圧が印加される期間における電流の流れを示す。二次コイル52の二次電圧VT2は、バッテリパック11がモータ駆動回路2に供給する電流成分を増やす。逆に、二次コイル53の二次電圧VT2は、バッテリパック12がモータ駆動回路2に供給する電流成分を減らす。結局、負荷電流ILは、2つの二次コイル52により影響されない。
【0035】
結局、バッテリパック11と直列接続された二次コイル52が、バッテリパック12と直列接続された二次コイル53と等しい巻数をもつ時、交流電流ICはバッテリパック11及び12だけを循環することができる。結局、二次コイル52及び53は、負荷電流ILに影響を与えない。
【0036】
しかし、二次コイル52又は53のインダクタンスは、コンタクタ41又は42の火花を強化する。この問題を解決するためのコンタクタ保護動作が、
図6及び
図7を参照して説される。
【0037】
図6は、コンタクタ42が開放される過渡期間における電流の流れを示す。バッテリパック11は電流I1をモータ駆動回路2に供給し、バッテリパック12は電流I2をモータ駆動回路2に供給している。オシレータ6は、この過渡期間に正パルス電圧VT1を一次コイル51に印加する。これにより、二次コイル51及び52は、正方向の循環電流ICPをバッテリパック11及び12並びにコンタクタ41及び42を通じて循環させる。その結果、バッテリパック11は充電され、バッテリパック12は放電される。結局、コンタクタ42が開く過渡期間にコンタクタ42を通じて流れる電流は(I1-ICP)となる。その結果、コンタクタ42の火花は低減される。
【0038】
図7は、コンタクタ41が開放される過渡期間における電流の流れを示す。バッテリパック11は電流I1をモータ駆動回路2に供給し、バッテリパック12は電流I2をモータ駆動回路2に供給している。オシレータ6は、この過渡期間に負パルス電圧VT1を一次コイル51に印加する。
これにより、二次コイル51及び52は、負方向の循環電流ICNをバッテリパック11及び12並びにコンタクタ41及び42を通じて循環させる。その結果、バッテリパック11は放電され、バッテリパック12が充電される。結局、コンタクタ41が開く過渡期間にコンタクタ41を通じて流れる電流は(I2-ICN)となる。その結果、コンタクタ42の火花は低減される。
【0039】
コモンコンタクタ43が開かれる期間に生じる火花は、
図2に示されるバイパス回路81により低減される。コモンコンタクタ43と並列接続されているバイパス回路81は、直列接続されたキャパシタ81C及びダイオード81Dからなる。ダイオード81Dはコモンコンタクタ43の火花電流をバイパスする。コモンコンタクタ43が閉じた状態から開いた状態に移行する過渡期間において、バイパス電流がキャパシタ81C及びダイオード81Dを通じて流れる。その結果、コモンコンタクタ43のアークは良好に消去される。
【0040】
コモンコンタクタ43が閉じられる時、キャパシタ81Cはコモンコンタクタ43を通じて短絡される。しかし、ダイオード81Dが、この短絡による電流を阻止する。
その結果、キャパシタ81Cに蓄積された電荷は、コモンコンタクタ43が閉じているオン期間に、ダイオード81Dの高い逆抵抗値を通じてゆっくりと放電される。
【0041】
この実施例において、バッテリパック11の少なくとも一つのセルが不良である場合にコンタクタ42が開かれ、バッテリパック12の少なくとも一つのセルが不良である場合にコンタクタ41が開かれる。その結果、一つのセルが不良となっても、電気自動車の運転を継続することができる。
【0042】
デンドライト成長によるセルの内部短絡が重要なセル故障として知られている。セルの熱暴走に起因するバッテリ火災がこの内部短絡により発生することも知られている。さらに、セルの内部抵抗はデンドライト成長により次第に低下することが知られている。したがって、セルの内部抵抗を監視することにより、近い将来におけるセルの内部短絡の発生を予想することができる。しかし、セルの内部短絡発見のためのセルの内部抵抗検出は、本質的に常に実施される必要がある。これは、各セルの内部抵抗検出動作をバッテリの放電中又は充電中においても実施しなければならないことを意味する。しかし、この放電中又は充電中における各セルの内部抵抗の検出は、放電電流又は充電電流の変動のため難しい。
【0043】
図8及び
図9は、降圧トランス5を用いる新規なセル抵抗検出動作を開示する。
図8は、バッテリパック11のセル電圧を検出するBMS110の一部を示す。バッテリパック12のセル電圧を検出するBMS120もBMS110と本質的に同じである。
図8において、バッテリパック11の4つのセル11A-11Dだけが示される。BMS110は、セル11A-11Dの各セル電圧V11-V14を順番にコントローラ7に送信する。
【0044】
セル11Aは開回路電圧(OCV)V1及び内部抵抗(IR)r1をもつ。セル11Bは開回路電圧V2及び内部抵抗r2をもつ。セル11Cは開回路電圧V3及び内部抵抗r3をもつ。セル11Dは開回路電圧V4及び内部抵抗r4をもつ。セル11A-11Dはモータ駆動回路2に負荷電流ILを供給している。さらに、二次コイル52及び53に誘導された二次電圧は、セル11A-11Dを通じて循環電流ICを循環させている。その結果、セル11A-11Dの内部抵抗r1-r4はそれぞれ、負荷電流IL及び循環電流ICにより電圧降下を発生する。したがって、セル11Aのセル電圧V11はV1+r1(IL+IC)となり、セル11Bのセル電圧V12はV2+r2(IL+IC)となる。同様に、セル11Cのセル電圧V13はV3+r3(IL+IC)となり、セル11Dのセル電圧V14はV4+r4(IL+IC)となる。
【0045】
オシレータ6は、降圧トランス5の一次コイル51に正パルス電圧と負パルス電圧とを交互に印加する。二次コイル52及び53は、正パルス電圧が一次コイル51に印加される正パルス期間にバッテリパック11及び12にほぼ定電流の正パルス電流ICPを循環させる。さらに、二次コイル52及び53は、負パルス電圧が一次コイル51に印加される負パルス期間にバッテリパック11及び12にほぼ定電流の負パルス電流ICNを循環させる。正パルス電流ICPの積分値は負パルス電流ICNの積分値に等しい。
【0046】
セル電圧V11-V14は、正パルス期間にBMS110により順番に選択され、A/Dコンバータ60によりデジタル信号に変換された後、コントローラ7に送られる。同様に、セル電圧V11-V14は、負パルス期間に第1BMS110により順番に選択され、A/Dコンバータ60によりデジタル信号に変換された後、コントローラ7に送られる。これにより、8つのセル電圧がコントローラ7に送信される。
【0047】
セル11Aの内部抵抗r1の検出動作が説明される。まず、正パルス電流ICPがセル11Aを通じて流れる正パルス期間に、セル電圧V11が検出される。このセル電圧V11は正のセル電圧V11Pと呼ばれる。次に、負パルス電流ICNがセル11Aを通じて流れる負パルス期間に、セル電圧V11が検出される。このセル電圧V11は、負のセル電圧V11Nと呼ばれる。正パルス電流ICP及び負パルス電流ICNは互いに等しい振幅をもつことが仮定される。さらに、正パルス期間及び負パルス期間において、セル11Aは一定の開回路電圧V1をもつことが仮定される。
【0048】
次に、2つのセル電圧V11P及びV11Nの間の電圧差ΔV(=V11P-V11N)が検出される。この電圧差ΔVはセル11Aの開回路電圧V1を含まない。さらに、負荷電流ILが一定である時、電圧差ΔVは負荷電流ILによる内部抵抗r1の電圧降下(r1・IL)を含まない。したがって、電圧差ΔVは2IC・r1となり、内部抵抗r1はΔV/2ICとなる。結局、降圧トランス5がバッテリパック11に供給するAC循環電流を利用することにより、バッテリパック11がモータ駆動回路2に放電している期間において、負荷電流ILや開回路電圧V1の影響無しに内部抵抗r1を検出することができる。セル11B-11Dの各内部抵抗も同様に検出される。
【0049】
BMS110の回路が
図8を参照してさらに説明される。セル11Aの正極はスイッチS1を通じて信号線71に接続されている。セル11Bの正極はスイッチS2を通じて信号線72に接続されている。セル11Cの正極はスイッチS3を通じて信号線71に接続されている。セル11Dの正極はスイッチS4を通じて信号線72に接続されている。セル11Dの負極はスイッチS5を通じて信号線71に接続されている。スイッチS1-S5はそれぞれ、逆向きに直列接続された2つのMOSFETからなる。2つの信号線71及び72はキャパシタ70に接続されている。
【0050】
スイッチS1及びS2がオンされる時、キャパシタ70の電圧はセル11Aのセル電圧V11に等しくなる。スイッチS2及びS3がオンされる時、キャパシタ70の電圧はセル11Bのセル電圧V12に等しくなる。スイッチS3及びS4がオンされる時、キャパシタ70の電圧はセル11Cのセル電圧V13に等しくなる。スイッチS4及びS5がオンされる時、キャパシタ70の電圧はセル11Dのセル電圧V14に等しくなる。
【0051】
キャパシタ70の各電圧は、4つのスイッチS6-S9のうちの2つをオンすることによりA/Dコンバータ60に送られる。A/Dコンバータ60は受信したキャパシタ70の各電圧をデジタル信号に変換し、これらのデジタル信号はコントローラ7に送信される。スイッチS6-S9は、スイッチS1-S4と同様に、逆向きに直列接続された2つのMOSFETからなる。
【0052】
図9は、スイッチS1-S9のスイッチ動作を示すタイミングチャートである。周期T1の前半及び後半において、スイッチS1、S2がオンされ、キャパシタ70の電圧はセル電圧V11と等しくなる。同様に、周期T2の前半及び後半において、スイッチS2、S3がオンされ、キャパシタ70の電圧はセル電圧V12と等しくなる。周期T3の前半及び後半において、スイッチS3、S4がオンされ、キャパシタ70の電圧はセル電圧V13と等しくなる。同様に、周期T4の前半及び後半において、スイッチS4、S5がオンされ、キャパシタ70の電圧はセル電圧V14と等しくなる。
【0053】
周期T1の前半において、スイッチS6、S9はスイッチS1、S2がオフされた直後にオンされる。周期T1の後半において、スイッチS7、S8はスイッチS1、S2がオフされた直後にオンされる。同様に、周期T2の前半において、スイッチS6、S9はスイッチS2、S3がオフされた直後にオンされる。周期T2の後半において、スイッチS7、S8はスイッチS2、S3がオフされた直後にオンされる。
【0054】
周期T3の前半において、スイッチS6、S9はスイッチS3、S4がオフされた直後にオンされる。周期T3の後半において、スイッチS7、S8はスイッチS3、S4がオフされた直後にオンされる。同様に、周期T4の前半において、スイッチS6、S9はスイッチS4、S5がオフされた直後にオンされる。周期T4の後半において、スイッチS7、S8はスイッチS4、S5がオフされた直後にオンされる。
【0055】
結局、各セル電圧はスイッチS1-S4の制御によりキャパシタ70に順番に伝送される。さらに、キャパシタ70の電圧は、スイッチS1-S4がオフされた後に実施されるスイッチS6-S9の制御によりA/Dコンバータ60に送られる。スイッチS6-S9はキャパシタ70の電圧方向を反転する機能をもつ。正パルス電流ICPは循環電流ICの周期T1-T4の前半に流れ、負パルス電流ICNは循環電流ICの周期T1-T4の後半に流れる。
【0056】
したがって、一つのセルの2種類のセル電圧が各周期T1-T4毎に検出される。たとえばバッテリパック11が互いに直列接続された100個のセルからなる時、すべてのセルの内部抵抗の検出は100周期を必要とする。変形態様において、キャパシタ70及びスイッチS6-S9kを省略することも可能である。この態様によれば、A/Dコンバータ60は、セル電圧V11-V14をデジタル信号に直接変換する。
【0057】
セルの内部抵抗rはΔV/(ICP+ICN)となる。ΔVは、正パルス電流ICPがバッテリパックに流れる期間のセル電圧値と負パルス電流ICNがバッテリパックに流れる期間のセル電圧値との間の電圧差である。正パルス電流ICP及び負パルス電流ICNの方向が逆であるため、電圧差ΔVを増加することができる。
【0058】
セル11A-11Dの内部抵抗r1-r4に基づいて、各セルの他の電気パラメータを算出することもできる。たとえば、内部抵抗r1-r4に基づいてセル11A-11Dの劣化を推定することができる。さらに、セル11A-11Dの内部抵抗値r1-r4から各内部抵抗r1-r4の電圧降下を算出することができる。各セル11A-11Dの開回路電圧V1-V4はこれらの電圧降下及びセル電圧V11-V14から算出されることができる。
【0059】
コントローラ7の制御例が、
図10に示されるフローチャートを参照して説明される。コンタクタ41-43は予め閉じられていることが仮定される。まず、バッテリパック11及び12の温度Tbが所定のしきい値Tthより低いか否かが判定される(S1000)。判定結果がYesであれば、バッテリパック11及び12にAC電流を供給するAC加熱サブルーチン(S1020)が実施される。判定結果がNoであれば、このAC加熱サブルーチンは実施されない。
【0060】
このAC加熱サブルーチンにおいて、オシレータ6は一次コイル51に一次AC電流を供給する。これにより、同一方向の二次電圧が二次コイル51及び52に誘導され、二次循環電流がバッテリパック11及び12に供給される。その結果、バッテリパック11及び12は加熱される。バッテリパック11及び12の温度が所定値に達する時、このAC加熱サブルーチンは終了される。
【0061】
次に、内部抵抗検出サブルーチンが実施される(S1040)。この内部抵抗検出サブルーチンにおいて、バッテリパック11及び12の各セルの内部抵抗を検出するために、正パルス電流及び負パルス電流が各セルに交互に供給される。これにより、BMS110はバッテリパック11の内部抵抗値を検出し、BMS120はバッテリパック12の各セルの内部抵抗値を検出する。
【0062】
次に、バッテリパック11から検出された全ての内部抵抗値が所定の許容範囲内か否かが判定され(S1060)、判定結果がNoであれば、ステップS1080に進む。ステップS1080において、コンタクタ42を保護するためのコンタクタ保護サブルーチンが実施される。このコンタクタ保護サブルーチンによれば、オシレータ6は二次循環電流を流す。この二次循環電流はコンタクタ42を流れる電流を減らす。好適には、この二次循環電流は負荷電流ILと略等しい。これにより、コンタクタ42を流れる電流はほぼゼロとなる。次に、コンタクタ42が開放される(S1100)。その結果、アークはコンタクタ42上に生じない。
【0063】
バッテリパック11の全ての内部抵抗値が許容範囲内であれば、バッテリパック12の全ての内部抵抗値が許容範囲内か否かが判定される(S1120)。その判定結果がNoであれば、ステップS1140に進む。
【0064】
ステップS1140において、コンタクタ41を保護するためのコンタクタ保護サブルーチンが実施される。このコンタクタ保護サブルーチンによれば、オシレータ6は二次循環電流を流す。この二次循環電流はコンタクタ41を流れる電流を減らす。好適には、この二次循環電流は負荷電流ILと略等しい。これにより、コンタクタ41を流れる電流はほぼゼロとなる。次に、コンタクタ41が開放される(S1160)。その結果、アークはコンタクタ41上に生じない。
【0065】
もしバッテリパック11及び12のすべての内部抵抗値が所定の許容範囲内であれば、コンタクタ41及び42が閉じられる(S1180)。これにより、バッテリパック11及び12が負荷電流ILをモータ駆動回路2に供給する。特に、各セルの内部抵抗rが所定の最低値より高いかどうかを判定することは重要である。内部抵抗rがこの最低値より低い時、セルの内部短絡が推定される。
【0066】
既述されたこの実施例により、バッテリ回路10にAC電流を供給するための降圧トランス5をもつDC電源の一例が説明された。降圧トランス5の二次コイル52及び53は、バッテリ回路10からモータ駆動回路2にDC電流を供給する負荷電流経路に配置される。その結果、バッテリ回路10がモータ駆動回路2に負荷電流ILを供給する時、負荷電流ILは、降圧トランス5の磁気コア50に磁束を形成する。この磁束は負荷磁束と呼ばれる。一般に3相インバータからなるモータ駆動回路2は、
図2に示される高電位端子9H及び低電位端子9Lに接続される平滑キャパシタを含む。したがって、バッテリ回路10からモータ駆動回路2のような電気負荷に供給される負荷電流ILは主としてDC電流からなる。このDC電流成分は低周波電流成分を含むことができる。
【0067】
負荷電流ILは、バッテリパック11を流れるDC電流I1と、バッテリパック12を流れるDC電流I2からなる。DC電流I1が二次コイル52を流れる時、DC磁束F1が磁気コア50内に形成される。DC電流12が二次コイル53を流れる時、DC磁束F2が磁気コア50内に形成される。
【0068】
バッテリパック11及び12が互いに等しい開回路電圧値及び内部抵抗値をもつ時、電流I1は電流I2に等しくなり、電流I1及びI2はそれぞれ負荷電流ILの半分となる。したがって、バッテリパック11及び12が互いに等しい開回路電圧値及び内部抵抗値をもつ時、磁気コア50に形成されるDC磁束差(F1-F2)はゼロとなる。
【0069】
しかし、バッテリパック11及び12が互いに異なる開回路電圧値をもつ時、電流I1及び電流I2は異なる。同様に、バッテリパック11及び12が互いに異なる内部抵抗値をもつ時、電流I1及び電流I2は異なる。したがって、磁気コア50に形成されるDC磁束差(F1-F2)はゼロとならない。その結果、一次コイル51が磁気コア50にAC磁束を形成する時、このAC磁束は、DC磁束差(F1-F2)によりバイアスされる。
【0070】
結局、このAC磁束及びDC磁束差(F1-F2)の両方が磁気コア50を流れるため、磁気コア50は飽和し易くなる。この磁気飽和により、二次コイル52及び53に生じる二次AC電圧の歪みが増加する。DC磁束差(F1-F2)による磁気コア50の磁気飽和は、磁気コア50の断面積拡大により解決される。しかし、降圧トランス5のサイズ、重量、及び損失が増加する。DC磁束差(F1-F2)の低減による降圧トランス5の小型化技術が以下に説明される。
【0071】
図11及び
図12はHブリッジにより形成されたオシレータ6を示す。オシレータ6は4つのMOSトランジスタ(MOSFETs)61-64からなる。Hブリッジは、直列接続されたMOSトランジスタ61及び62からなる第1レグと、直列接続されたMOSトランジスタ63及び64からなる第2レグとからなる。第1レグの出力端子は一次コイル51の一端に接続され、第2レグの出力端子は一次コイル51の他端に接続されている。オシレータ6は一次コイル51に一次AC電流Ipを供給する。
【0072】
図11は、正の半周期(P+)における一次AC電流Ipの流れを示す。スイッチ61は常にオンされ、スイッチ62は常にオフされる。第2レグはPWMスイッチングされる。スイッチ64がオンされる時、一次AC電流Ipがスイッチ61から一次コイル51を通じてスイッチ64へ流れる。スイッチ64がオフされる時、フリーホィール電流Ifがスイッチ63及びスイッチ61を通じて流れる。
【0073】
図12は、負の半周期(P-)における一次AC電流Ipの流れを示す。スイッチ63は常にオンされ、スイッチ64は常にオフされる。第1レグはPWMスイッチングされる。スイッチ62がオンされる時、一次AC電流Ipがスイッチ63から一次コイル51を通じてスイッチ62へ流れる。スイッチ62がオフされる時、フリーホィール電流Ifがスイッチ61及びスイッチ63を通じて流れる。
【0074】
図13は、一次AC電流Ipに関連する波形を示すタイミングチャートである。
図11に示される正の半周期(P+)、及び、
図12に示される負の半周期(P-)は交互に実施される。正の半周期(P+)においてPWMスイッチンク゛されるスイッチ64のテ゛ューティ比D+は、負の半周期(P-)においてPWMスイッチンク゛されるスイッチ64のテ゛ューティ比D-よりも大きい。その結果、正の半周期(P+)における一次AC電流Ipの正成分は、負の半周期(P-)における一次AC電流Ipの負成分よりも高い振幅をもつ。
【0075】
一次AC電流Ipは、AC電流成分IAC及びDC電流成分IDCに分割される。AC電流成分IACの正成分及び負成分は互いに等しい振幅をもつ。スイッチ64のPWMテ゛ューティ比は正の半周期(P+)においてD+となり、スイッチ62のPWMテ゛ューティ比は負の半周期(P-)においてD-となる。テ゛ューティ比D+及びD-が実質的に等しい時、DC電流成分IDCはゼロとなる。テ゛ューティ比D+がテ゛ューティ比D-よりも大きい時、DC電流成分IDCは正値となる。テ゛ューティ比D+がテ゛ューティ比D-よりも小さい時、DC電流成分IDCは負値となる。
図13において、DC電流成分IDCは正値である。結局、Hブリッジ6は、要求された波形をもつAC電流成分IACと、要求された振幅をもつDC電流成分IDCとの両方を一次コイル51に供給することができる。
【0076】
一般に、バッテリパック11及び12の開回路電圧値及び内部抵抗値は互いに異なる。したがって、それぞれ負荷電流の一部からなる電流I1及びI2は一般的に互いに異なる。同様に、それぞれ充電電流の一部からなる電流I1及びI2は一般に異なる。
【0077】
DC磁束Fdcが電流差(I1-I2)により磁気コア50内に形成される。結局、一次コイル51を流れるAC電流成分IAC及びDC電流成分IDC、二次コイル52を流れる電流I1、及び二次コイル53を流れる電流I2が、磁気コア50内に磁束を形成する。
【0078】
たとえば、磁気コア50の磁気抵抗がRmであり、一次コイル51の巻数が100であり、二次コイル52及び53の巻数がそれぞれ1であることが仮定される。磁気コア50内の全磁束は、(100IAC+100IDC+(I1-I2))/Rmとなる。したがって、DC磁束Fdc(=(I1-I2)/Rm))が、DC電流成分IDCにより形成されるDC磁束(100IDC/Rm)と等しい振幅をもち、かつ、それらの方向が反対である時、磁束はAC電流成分IACだけにより形成される。
【0079】
結局、一次コイル51に流れるDC電流成分IDCを電流差(I1-I2)に応じて調整することにより、磁気コア50内のDC磁束を大幅に低減することができる。その結果、コンパクトな降圧トランス5を実現することができる。
【0080】
図14は、磁気コア50内のDC磁束を低減するための制御を示すフローチャートである。このDC磁束低減制御は、コントローラ7によるスイッチ62及び64のPWMテ゛ューティの調整により実施される。まず、バッテリパック11を流れる電流I1、及び、バッテリパック12を流れる電流I2が検出される(S200)。電流I1はバッテリパック11の放電電流又は充電電流である。電流I2はバッテリパック12の放電電流又は充電電流である。
【0081】
次に、2つの電流I1及びI2の間の電流差(I1-I2)が算出される(S202)。次に、オシレータ6により降圧トランス5の一次コイル51に供給されるDC電流成分Idcが決定される。二次コイル52及び53の巻数がそれぞれ1であり、一次コイル51の巻数がNである時、DC電流成分Idc(=I2-I1)/N)が一次コイル51に供給される。DC電流成分Idcにより磁気コア50に形成されるDC磁束は、電流差(I1-I2)により磁気コア50に形成されるDC磁束と比べて反対方向に流れる。これにより、磁気コア50内を流れるDC磁束はほぼゼロとなる。
【0082】
次に、オシレータ6が一次コイル51に供給する一次AC電流IACが決定される。この一次AC電流IACは、二次AC電流と降圧トランス5の巻数比から算出されることができる(S204)。
【0083】
次に、スイッチ64のPWMテ゛ューティ比D+、及び、スイッチ62のPWMテ゛ューティ比D-が決定される(S206)。スイッチ62及び64のテ゛ューティ比(D+、D-)と、一次コイル51を流れる一次電流Ipとの関係は予めマップに記憶されている。
【0084】
次に、ステップS208において、正の半周期(P+)にスイッチ64のPWMテ゛ューティ比をD+に制御し、負の半周期(P-)にスイッチ62のPWMテ゛ューティ比をD-に制御する。これにより、オシレータ6が一次コイル51に供給する一次電流Ipは、一次AC電流IACと一次DC電流IDCとの和となる。したがって、バッテリパック11及び12を循環する循環AC電流Icだけが実質的に磁気コア50に磁束を形成する。その結果、磁気コア50はコンパクトとなる。結局、負荷電流又は充電電流が磁気コア50に与える磁気的な影響は、一次コイル51に供給されるDC電流により低減される。
【0085】
図2において、降圧トランス5は、バッテリパック11と直列接続される二次コイル52と、バッテリパック12と直列接続される二次コイル53とをもつ。2つの二次コイルに誘起される二次電圧は、2つのバッテリパックを循環するAC電流を形成する。さらに、Hブリッジ6は、公知の種々のPWM制御方式により制御されることができる。
【0086】
図15は第1の変形態様を示す回路図である。
図15において、降圧トランス5の二次コイル54に誘起される二次AC電圧は、バッテリパック11と二次コイル54と平滑キャパシタ8とからなる電流循環回路にAC電流を循環させる。バッテリパック11からモータ駆動回路2に供給される負荷電流は二次コイル54を通じて流れる。
【0087】
図16は第2の変形態様を示す回路図である。
図16において、バッテリパック11は、直列接続された2つのバッテリモジュール160及び170からなる。バッテリパック12は、直列接続された2つのバッテリモジュール180及び190からなる。降圧トランス5の二次コイル54は、バッテリパック11の中間電位点C1と、バッテリパック12の中間電位点C2とを接続している。バッテリパック11及び12はモータ駆動回路2に負荷電流を供給する。2つの中間電位点C1及びC2が等しい電位をもつ時、負荷電流は二次コイル54を流れない。
【0088】
しかし、4つのバッテリモジュール160、170、180、及び190の開路電圧及び内部抵抗は互いに異なるのが一般的である。その結果、2つの中間電位点C1及びC2は異なる電位をもち、負荷電流の一部は二次コイル54を流れる。
【0089】
結局、
図15及び
図16に示される変形態様においても、既述されたDC磁束キャンセル用のDC電流を一次コイル51に供給することができる。さらに、
図15及び
図16に示される変形態様においても、降圧トランス5からバッテリパック11へ供給される二次循環電流を利用して、バッテリパック11の各セルの内部抵抗を検出することができる。
【要約】
2つのバッテリ及び降圧トランスの2つの二次コイルにより形成された電流循環回路に降圧トランスの二次電流が循環される。バッテリはこれらの二次コイルを通じて電気負荷に負荷電流を供給する。負荷電流が降圧トランスの磁気コア内に形成するDC磁束は、降圧トランスの一次コイルに供給されるDC磁束低減電流により低減される。二次コイルは、交互に繰り返される正パルス電圧及び負パルス電圧をバッテリの各セルに印加する。各セルの内部抵抗が、正パルス電圧及び負パルス電圧の間の電圧差とバッテリ電流とに基づいて検出される。2つのバッテリの一つは2つの二次コイルの一つを通じて外部負荷に接続され、2つのバッテリの他の一つは2つの二次コイルの他の一つを通じて外部負荷に接続される。2つの二次コイルに誘起されるAC電圧は同じ方向及び等しい巻数をもつ。
【選択図】なし