(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】スフィンゴ脂質の調製方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/02 20060101AFI20240530BHJP
A61K 8/42 20060101ALN20240530BHJP
A61Q 5/12 20060101ALN20240530BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
C12P13/02
A61K8/42
A61Q5/12
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019062355
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2020-08-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エクスタイン,マリット フリーデリーケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ログチェム,モニカ デジレー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンク,ハンス ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,アニカ
(72)【発明者】
【氏名】マクツキーウィッツ,ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒアーラス,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】カラコクク,スナイ
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト,アンドレアス
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522550(JP,A)
【文献】特表2011-522551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P7/62
A61K8/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分である一般式IIのリゾスフィンゴ脂質
【化1】
を、第2の成分である、アシル基R
1COのアシル基供与体と反応させることによって、一般式Iのスフィンゴ脂質
【化2】
を調製する方法であって、式中、
R
1は、2~55個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖を表し、該アルキル鎖は、任意に1つ以上の多重結合及び/又は芳香族環若しくは芳香族ヘテロ環を含み、任意に酸素原子又はエステル若しくはアミド官能基が挿入され、アルキル基、ヒドロキシ基、ケトン基又はアミノ基から選択される少なくとも1つのさらなる基によって任意に置換され、
R
2は、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミン又は糖、好ましくは糖又はH、より好ましくはHを表し、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2又はCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-CH
2を表し、
前記第1の成分及び前記第2の成分は、全反応混合物に対して、合計少なくとも70重量%、好ましくは90重量%、特に95重量%を占め、
前記第1の成分の1グラム当たり多くとも600プロピルラウレート単位の、少なくとも1つの酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解酵素が、前記全反応混合物において使用され、1プロピルラウレート単位は、1-プロパノール及びラウリン酸から1分間当たり1μmolのプロピルラウレートを合成する酵素の量として定義さ
れることを特徴とする、調製方法。
【請求項2】
用いられる前記第1の成分が、R
2=H及びX=CH
2-CH
2であるスフィンガニンであることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記第2の成分が、天然脂肪酸のアシル基の群より選択されるアシル基を提供するアシル基供与体から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記第2の成分が、最大6個の炭素原子、より好ましくは最大3個の炭素原子を有するアルカノール及びポリオールに基づくエステル、最も好ましくはグリセロールエステルから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項5】
用いられる前記第1の成分が、R
2=H及びX=CH
2-CH
2であるスフィンガニンであり、用いられる前記第2の成分が、ヤシ脂肪、パーム核油、オリーブ油、パーム油、アルガン油、ヒマシ油、アマニ油及びババス油を含む群より選択されるアシル基供与体であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記反応物が、前記反応の開始時に前記第1の成分と前記第2の成分とのモル比1:0.11~1:2000で存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記全反応混合物に対して、存在する任意の溶媒の最大総量が、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項8】
無水条件下で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴ脂質の調製方法、スフィンゴ脂質とさらなる成分とを含む組成物、並びにその組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第20110077302号には、少なくとも1つの菌界の生物由来の酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解酵素及びそれらのホモログを含む生体触媒を用いることを特徴とする、リゾスフィンゴ脂質をカルボン酸エステルと反応させることによる、スフィンゴ脂質の生体触媒的調製方法が開示されている。
【0003】
米国特許出願公開第20110065801号には、少なくとも1つの酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解酵素を含む生体触媒を用いる、リゾスフィンゴ脂質をグリセリドと反応させることによる、スフィンゴ脂質の生体触媒的調製方法が開示されている。
【0004】
大量の溶媒及び高い酵素濃度を用いることが、従来技術において有益であると強調されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が対処する課題は、資源を節約するように機能することが可能な、代替の穏やか且つ産業上利用可能なセラミド合成経路を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、これ以降に記載される方法が、従来技術に代わる優れた経路を構成すること、及び驚くべきことに、有益な特性を有する組成物を提供することが見出された。
【0007】
したがって、本発明は、請求項1に記載されるようなスフィンゴ脂質の調製方法を提供する。
【0008】
本発明はさらに、スフィンゴ脂質とさらなる成分とを含む組成物、及びその使用を提供する。
【0009】
本発明に係る調製方法の利点の1つは、用いられる溶媒及び酵素の量が非常に少ないために、非常に資源を節約するように機能することが可能であるという点である。さらに、驚くべきことに、無溶媒での変換において、非常に少量の酵素が最良の結果をもたらすことが見出された。
【0010】
さらに、本発明に係る反応条件下でトリグリセリドを用いると、従来技術、例えば米国特許出願公開第20110065801号とは、モノ及びジグリセリドが存在するという点で異なる生成物混合物がもたらされ、さらにこの使用は、特に化粧用製品への応用において特別な効果を有する。
【0011】
本発明に係る組成物の利点の1つは、その組成物が、化粧用オイルに対する優れた取り込み性を有することである。
【0012】
本発明に係る組成物の利点の1つは、製剤中の組成物が優れた知覚特性を有し、それによって皮膚の感触及び/又は毛髪の感触が改善されるということである。
【0013】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、インビトロでヒト毛乳頭細胞(HFDPC)を刺激して増殖させることであり、これは、インビボにおける毛髪成長の刺激に相当する。
【0014】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて改善された分散性を有することである。
【0015】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて改善された吸収を有することである。
【0016】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて低い油性を有することである。
【0017】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて低い蝋性を有することである。
【0018】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて改善された滑性を有することである。
【0019】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて低い粘着性を有することである。
【0020】
本発明に係る組成物のさらなる利点は、製剤中の組成物が、個々の成分と比べて改善されたつややかさ/滑らかさを有することである。
【0021】
本発明に関連する「pH」は、別段述べられない限り、ISO4319(1977)に従って較正されたpH電極を用いて、該当する組成物を5分間撹拌した後に25℃において測定された値として定義される。
【0022】
本発明の文脈において引用されるアクセッション番号は、2017年1月1日時点のNCBIタンパク質バンクデータベースのエントリーに対応し、一般に、本文脈において、そのエントリーのバージョン番号が、「.数字」、例えば、「1」によって特定される。
【0023】
別段述べられない限り、示されるすべてのパーセンテージ(%)は、質量基準のパーセンテージである。
【0024】
したがって、本発明は、第1の成分である一般式IIのリゾスフィンゴ脂質
【化1】
を、第2の成分であるアシル基R
1COのアシル基供与体と反応させることによって、一般式Iのスフィンゴ脂質
【化2】
を調製する方法を提供し、
式中、R
1は、2~55個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖を表し、そのアルキル鎖は、任意に1つ以上の多重結合及び/又は芳香族環若しくは芳香族ヘテロ環を含み、任意に酸素原子又はエステル若しくはアミド官能基が挿入され、アルキル基、ヒドロキシ基、ケトン基又はアミノ基、好ましくは-CH
2-Y-CH
3(ここで、Y=炭素-炭素結合であるか、又は任意に1つ以上の多重結合を含み、任意に少なくとも1つのヒドロキシ基によって置換される、1~53個、特に6~32個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキレン鎖である)から選択される少なくとも1つのさらなる基によって任意に置換され、
R
2は、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミン又は糖、好ましくは糖又はH、より好ましくはHを表し、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2又はCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-CH
2を表し、
第1及び第2の成分は、全反応混合物に対して、合計少なくとも70重量%、好ましくは90重量%、特に95重量%を占め、
第1の成分の1グラム当たり多くとも600プロピルラウレート単位の、少なくとも1つの酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解酵素が、全反応混合物において使用され、ここで、1プロピルラウレート単位は、1-プロパノール及びラウリン酸から1分間当たり1μmolのプロピルラウレートを合成する酵素の量として定義されることを特徴とする。
【0025】
プロピルラウレート単位を単位とするカルボン酸エステル加水分解酵素の測定される活性は、所与の酵素にとって最適な温度において測定され、ここで、「最適温度」は、その酵素が最も高い活性を有する温度を意味すると理解される。例えば、アクセッション番号P41365を有するCandida antarctica由来のリパーゼA及びBの場合、最適温度は、60℃である。
【0026】
用いられる第1の成分は、好ましくはR2=H及びX=CH2-CH2であるスフィンガニンである。
【0027】
本発明で用いられる第2の成分は、任意のアシル基供与体であってもよい。これらは、例えば、カルボン酸エステル、又はカルボン酸自体、及びそれらの混合物である。
【0028】
好ましくは本発明によれば、アシル基供与体は、カルボン酸エステル、好ましくは、最大6個の炭素原子、より好ましくは最大3個の炭素原子を有するアルカノール及びポリオールに基づくエステル、特に好ましくはグリセロールエステルから選択される。
【0029】
好ましくは本発明によれば、アシル基供与体は、天然脂肪酸に由来するアシル基の群より選択されるアシル基を提供する、アシル基供与体から選択される。天然脂肪酸は、天然に存在する植物油又は動物油に基づいて生成することができ、好ましくは6~30個の炭素原子、特に8~22個の炭素原子を有する。天然脂肪酸は、通常、枝分かれしておらず、偶数個の炭素原子からなる。任意の二重結合がシス配置を有する。例は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸である。
【0030】
特に好ましくは本発明によれば、アシル基供与体は、トリグリセリド、特に天然の脂肪及び油から選択され、より好ましくは、ヤシ脂肪、パーム核油、オリーブ油、パーム油、アルガン油、ヒマシ油、アマニ油、ババス油、菜種油、藻類の油、ゴマ油、ダイズ油、アボカド油、ホホバ油、ベニバナ油、アーモンド油、綿実油、シアバター、ヒマワリ油、クパスバター及び高割合のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を有する油を含む群、好ましくはそれらからなる群より選択される。上記した鎖長分布及び修飾を有するソルビタンエステル、モノグリセリド及びジグリセリドを用いることが同様に好ましく可能である。
【0031】
用いられるアシル基供与体がR1基を決定することは明らかである。
【0032】
より好ましくは本発明によれば、用いられる第1の成分は、R2=H及びX=CH2-CH2であるスフィンガニンであり、用いられる第2の成分は、ヤシ脂肪、パーム核油、オリーブ油、パーム油、アルガン油、ヒマシ油、アマニ油及びババス油を含む群、好ましくはそれらからなる群より選択されるアシル基供与体である。
【0033】
本発明によれば、反応物は、反応の開始時に1:0.11~1:200000、好ましくは1:2000までという第1の成分と第2の成分とのモル比で存在し得る。用語「モル比」は、本明細書中においてリゾスフィンゴ脂質とアシル基供与体によって提供されるアシル基の数とのモル比のことを指す。1:0.3~1:200のモル比を用いることが好ましい。1:1~1:50のモル比を用いることが特に好ましい。
【0034】
代わりに好ましい実施態様において、アシル基供与体は過剰に存在し、よって、反応物は、反応の開始時に1:500~1:200000、好ましくは1:2000までという第1の成分と第2の成分とのモル比で存在する。
【0035】
全反応混合物は、主に反応物、つまり第1及び第2の成分からなるので、存在していたとしても非常に少ない溶媒が、全反応混合物中に存在し得る。上記に基づくと、本発明に係る調製方法において、第2の成分は「溶媒」に包含されないことが明らかである。
【0036】
考えられる溶媒は、例えば、ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン、立体障害を持つ第二級アルコール、例えば、2-ブチル-1-オクタノール、メチルシクロヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ブタン-2,3-ジオール、2-オクタノール、ジアセトンアルコール、2-メチル-2-ブタノール、並びにエーテル、例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びVaronic APMであってもよい。
【0037】
全反応混合物に対して、溶媒は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満の最大総量で存在する。「X重量%未満の最大総量で存在する」という表現は、「X重量%未満の含有率を有する」と等価である。
【0038】
本発明に係るプロセスは無溶媒で行うことが特に好ましい。
【0039】
カールフィッシャー(Karl Fischer)法によって検出した場合、多くとも0.100M、好ましくは最大0.010M、より好ましくは最大0.005Mの含水量で定義される無水条件下において、本発明に係る調製方法を実施することが好ましい。
【0040】
好ましくは、本発明に係る酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解酵素は、菌界の生物から単離することができる加水分解酵素、及び菌界の生物から単離することができるカルボン酸エステル加水分解酵素とアミノ酸レベルにおいて少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、98%又は99%の相同性を有する酵素クラスE.C.3.1.1のカルボン酸エステル加水分解である。
【0041】
参照配列と比較した場合、アミノ酸レベルにおいて相同なそれらの酵素は、本発明に関連して定義されるプロピルラウレート単位を単位として、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも90%の酵素活性を有する。
【0042】
本発明の文脈における「アミノ酸レベルにおける相同性」は、本明細書及びこれ以降、既知の方法を用いて決定することができる「アミノ酸同一性」を意味すると理解されるものとする。一般に、特定の要件を考慮したアルゴリズムを備える特別なコンピュータプログラムが用いられる。同一性を決定するための好ましい方法は、まず第一に比較すべき配列間の最大一致を生じさせる。同一性を決定するためのコンピュータプログラムとしては、
GAP (Deveroy, J. et al., Nucleic Acid Research 12 (1984), 387頁, Genetics Computer Group University of Wisconsin, Medicine (WI)、並びに
BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), 403-410頁)。BLASTプログラムは、National Center For Biotechnology Information (NCBI)及び他の供給源から得ることができる(BLAST Handbook, Altschul S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda ND 22894; Altschul S. et al., 上記)を含むGCGプログラムパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
当業者は、2つのヌクレオチド配列間又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性を計算するために様々なコンピュータプログラムが利用可能であることを承知している。例えば、2つのアミノ酸配列間のパーセンテージ同一性は、例えば、Needleman及びWunschが開発したアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))によって決定することができ、このアルゴリズムは、ブロッサム(Blossom)62マトリックス、又はPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10、8、6又は4というギャップウェイト及び1、2、3、4、5又は6という長さウェイトを用いるGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれている(http://www.gcg.comにおいて入手可能)。異なるパラメータを用いることによって、わずかに異なる結果がもたらされ得るものの、2つのアミノ酸配列間のパーセンテージ同一性は、全体的に有意に異なることはないことを、当業者は認識しているだろう。典型的には、ブロッサム62マトリックスは、デフォルトの設定(ギャップウェイト:12、長さウェイト:1)を用いて使用される。
【0044】
本発明の文脈において、上記アルゴリズムによる60%の同一性は、60%の相同性を意味する。同じことが、より高い同一性にも適用される。
【0045】
本発明に係るプロセスにおいて特に好ましく用いられるカルボン酸エステル加水分解酵素は、アクセッション番号O59952を有するThermomyces lanuginosus由来のリパーゼ、アクセッション番号P41365を有するCandida antarctica由来のリパーゼA及びB並びにアクセッション番号P19515を有するMucor miehei由来のリパーゼ、アクセッション番号O59952を有するHumicola sp.由来のリパーゼ、アクセッション番号S32492を有するRhizomucor javanicus由来のリパーゼ、アクセッション番号P61872を有するRhizopus oryzae由来のリパーゼ、アクセッション番号P20261、P32946、P32947、P3294及びP32949を有するCandida rugosa由来のリパーゼ、アクセッション番号P61871を有するRhizopus niveus由来のリパーゼ、アクセッション番号P25234を有するPenicillium camemberti由来のリパーゼ、アクセッション番号ABG73613、ABG73614及びABG37906を有するAspergillus niger由来のリパーゼ及びアクセッション番号P61869を有するPenicillium cyclopium由来のリパーゼ、並びにアミノ酸レベルにおいてそれらのそれぞれの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、98%又は99%のホモログの群より選択される酵素である。相同性に関しては、上記で与えられた定義を参照する。
【0046】
商業的な例及び本発明に係る調製方法において同様に好ましく用いられるカルボン酸エステル加水分解は、市販品のLipozyme TL IM、Novozym 435、Lipozyme IM 20、Lipase SP382、Lipase SP525、Lipase SP523(すべてNovozymes A/S, Bagsvaerd, Denmarkの市販品)、Chirazyme L2、Chirazyme L5、Chirazyme L8、Chirazyme L9(すべてRoche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germanyの市販品)、Puroliteの市販品のCALB Immo Plus TM、及びLipase M “Amano”、Lipase F-AP 15 “Amano”、Lipase AY “Amano”、Lipase N “Amano”、Lipase R “Amano”、Lipase A “Amano”、Lipase D “Amano”、Lipase G “Amano”(すべてAmano, Japanの市販品)である。
【0047】
本発明に係る調製方法は、好ましくは、20℃~160℃、好ましくは35~130、特に65℃~110℃の範囲内の反応温度において実施される。
【0048】
本発明に係る調製方法は、好ましくは、1bar未満、好ましくは0.5bar未満、より好ましくは0.05bar未満の圧力において実施される。
【0049】
別の好ましい実施態様において、本発明に係る調製方法は、1bar超の圧力、好ましくは2bar~10barの範囲内の圧力において実施される。これに関連して、反応混合物は不活性ガスとともに供給されることが好ましく、これらは好ましくは、窒素及びアルゴンを含む群、好ましくはそれらからなる群より選択される。
【0050】
米国特許出願公開第20110077302号及び米国特許出願公開第20110065801号には、トリグリセリド、例えば天然の油を用いたとき、部分的にアシル化されたグリセリドはかなりの量では観察できなかったことが開示されている。したがって、本発明に係る調製方法において、トリグリセリドを第2の成分として用いるとき、比較的大量のモノ及びジグリセリドが見られることは、全く予期しないことである。
【0051】
したがって、本発明は同様に、
A)一般式Iの少なくとも1つのスフィンゴ脂質
【化3】
B)一般式IIの少なくとも1つのリゾスフィンゴ脂質
【化4】
C)一般式IIIの少なくとも1つのトリグリセリド
【化5】
D)一般式IVの少なくとも1つのジグリセリド
【化6】
E)一般式Vの少なくとも1つのモノグリセリド
【化7】
を含む組成物を提供し、式中、R
1は、同一のまたは異なる、2~55個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖をそれぞれ表し、そのアルキル鎖は、任意に1つ以上の多重結合及び/又は芳香族環若しくは芳香族ヘテロ環を含み、任意に酸素原子又はエステル若しくはアミド官能基が挿入され、アルキル基、ヒドロキシ基、ケトン基又はアミノ基、好ましくは-CH
2-Y-CH
3(ここで、Y=炭素-炭素結合であるか、又は任意に1つ以上の多重結合を含み、任意に少なくとも1つのヒドロキシ基によって置換される、1~53個、特に6~32個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキレン鎖である)から選択される少なくとも1つのさらなる基によって任意に置換され、
R
2は、同一のまたは異なる、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミン又は糖、好ましくは糖又はH、より好ましくはHをそれぞれ表し、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2又はCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-CH
2を表すが、
ただし、全組成物に対して、それらの成分は、
A)30重量%~98重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは65重量%~85重量%、
B)0.01重量%~60重量%、好ましくは0.1重量%~45重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%、
C)0.01重量%~60重量%、好ましくは0.01重量%~45重量%、より好ましくは0.01重量%~10重量%、
D)0.1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、
E)0.1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%
のとおり存在する。
【0052】
全く驚くべきことに、上記したような本発明に係る組成物は、トリグリセリド、ゆえに成分C)で高度に希釈でき、前述のように組成物の活性を有意に検出可能であることが見出された。
【0053】
したがって、本発明はさらに、高い含油率を有した、
A)一般式Iの少なくとも1つのスフィンゴ脂質
【化8】
B)一般式IIの少なくとも1つのリゾスフィンゴ脂質
【化9】
C)一般式IIIの少なくとも1つのトリグリセリド
【化10】
D)一般式IVの少なくとも1つのジグリセリド
【化11】
E)一般式Vの少なくとも1つのモノグリセリド
【化12】
を含む組成物を提供し、式中、R
1は、同一のまたは異なる、2~55個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル鎖をそれぞれ表し、そのアルキル鎖は、任意に1つ以上の多重結合及び/又は芳香族環若しくは芳香族ヘテロ環を含み、任意に酸素原子又はエステル若しくはアミド官能基が挿入され、アルキル基、ヒドロキシ基、ケトン基又はアミノ基、好ましくは-CH
2-Y-CH
3(ここで、Y=炭素-炭素結合であるか、又は任意に1つ以上の多重結合を含み、任意に少なくとも1つのヒドロキシ基によって置換される、1~53個、特に6~32個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖のアルキレン鎖である)から選択される少なくとも1つのさらなる基によって任意に置換され、
R
2は、同一のまたは異なる、H、ホスホコリン、セリン、エタノールアミン又は糖、好ましくは糖又はH、より好ましくはHをそれぞれ表し、
Xは、CH=CH、CH
2-CH
2又はCH
2-HCOH、好ましくはCH
2-CH
2を表すが、
ただし、それらの成分は、
A)30重量部~98重量部、好ましくは50重量部~90重量部、より好ましくは65重量部~85重量部、
B)0.01重量部~60重量部、好ましくは0.1重量部~45重量部、より好ましくは0.5重量部~10重量部、
D)0.1重量部~30重量部、好ましくは1重量部~20重量部、より好ましくは2重量部~15重量部、
E)0.1重量部~30重量部、好ましくは1重量部~20重量部、より好ましくは2重量部~15重量部、
及び全組成物に対して、
C)60重量%~98重量%、好ましくは71重量%~96重量%、より好ましくは81重量%~95重量%
のとおり組成物中に存在する。
【0054】
本発明に係る高い含油率を有する組成物は、成分A)、B)、D)及びE)を2重量%~29重量%、好ましくは3重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~12重量%という総量で含むときが好ましく、ここで、これらの重量パーセントは、高い含油率を有する全組成物に対してである。
【0055】
本発明による好ましい組成物及び本発明による好ましい高い含油率を有する組成物において、R2=H及びX=CH2-CH2であり、R1は、コシオール基、パルミトイル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、リシノイル基、ステアリル基、エルシル基及び多価不飽和脂肪酸アシル基を含む群、好ましくはそれらからなる群より選択される。
【0056】
驚くべきことに、本発明に係る組成物は、皮膚及び毛髪に対して正の効果を示すことが見出された。したがって、本発明は、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物を、化粧品製剤を製造するために用いる。
【0057】
本発明はさらに、皮膚の水分を保持するための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0058】
本発明はさらに、皮膚の乾燥を避けるための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0059】
本発明はさらに、皮膚バリアを強化するための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0060】
本発明はさらに、UVストレス後の毛髪構造を修復するための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0061】
本発明はさらに、毛髪中の細胞膜複合体を増大させるための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0062】
本発明はさらに、毛髪を保護するため、特にタンパク質の分解を避けるための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0063】
本発明はさらに、頭皮上の毛髪の成長を刺激するための、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0064】
本発明はさらに、抗微生物剤として、特に頭皮上での抗微生物剤として、本発明に係る組成物及び/又は本発明に係る高い含油率を有する組成物の使用を提供する。
【0065】
本発明に係る使用は、化粧用の使用である。
【0066】
これ以降に例証される実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、その適用範囲は、明細書全体及び請求項から明らかであり、本発明が、実施例において明示される実施態様に限定されることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
以下の図面は、実施例の一部である。
【
図2】セラミドによる処理後の、アルカリでストレートにされた毛髪の存続確率である。
【
図3】エスニックヘアー(ethnic hair)の存続確率である。
【0068】
実施例1:PLUを単位とした、用いられる酵素の比活性の測定
PLU(プロピルラウレート単位)を単位として酵素活性を測定するために、1-プロパノール及びラウリン酸を等モル比で60℃において均一に混合する。酵素を加えることで反応を開始し、反応の時間を計る。サンプルを周期的に反応混合物から取り出し、変換されたラウリン酸の量を、水酸化カリウム水溶液による滴定を用いて測定する。PLUを単位とする酵素活性は、1gの当該酵素が60℃において1分間当たり1μmolのプロピルラウレートを合成する速度から見出される。米国特許出願公開第20070087418号、特に[0185]も参照のこと。例えば、製造者のNovozymesは、そのNovozym435の製品データシートにおいて10000PLU/gと述べている。
【0069】
実施例2:スフィンガニンとオリーブ油、オリーブ油ベースのセラミドNGとの反応
12gのオリーブ油を8gのスフィンガニンとともに、2.2gの2-メチル-2-ブタノールに溶解する。その混合物を100℃に加熱し、0.05barの窒素雰囲気で撹拌する。反応温度に到達したら、120PLUのNovozym435を加え、撹拌を続ける。24時間後、Novozym435を濾別した。このようにして得られた反応混合物は、スフィンガニン基準で、>98.5%の変換率に達した。反応後、溶媒を蒸留によって除去し、得られた生成物混合物が実施試験に用いられる。
【0070】
実施例3:高い含油率を有する組成物
10gの実施例2からの組成物を、90gの、オリーブ油とヒマシ油との1:1(重量基準)混合物に溶解する。これにより、高い含油率を有する、10%のオリーブ油ベースのセラミドNGとグリセロールとグリセリドとスフィンガニンとの混合物、45%のオリーブ油、及び45%のヒマシ油を含む組成物が得られる。
【0071】
実施例4:スフィンガニンとヒマシ油との反応
25gのヒマシ油を16gのスフィンガニンと混合する。その混合物を100℃に加熱し、0.05barの窒素雰囲気で撹拌する。反応温度に到達したら、80PLU(スフィンガニン基準)のNovozym435を加え、撹拌を続ける。24時間後、Novozym435を濾別した。このようにして得られた反応混合物を60mlのヒマシ油と混合した。スフィンガニン基準で、反応は、>98.5%の変換率に達した。
【0072】
実施例5:溶媒の量の効果
12gのオリーブ油を8gのスフィンガニンと混合し、下記の表において述べる量の2-メチル-2-ブタノールを加える。その混合物を80℃に加熱し、0.05barの窒素雰囲気で撹拌する。反応温度に到達したら、一定量のNovozym435を加え、撹拌を続ける。2時間後、各場合においてサンプルを取り出し、残留スフィンガニン含有量についてガスクロマトグラフィーを用いて分析した。結果は、より少ない酵素を用いるとき、溶媒の量を減少させるにつれてより良い変換率を達成できることを示している。溶媒及び酵素を加えずに行ったネガティブコントロールでは、変換率は0ではなかった。
【表1】
【0073】
実施例6:さらなる合成例
手順の概要は、溶媒を用いないで、実施例2に記載したとおりであった。
【表2】
【0074】
実施例7:皮膚に対する塗布データ:皮膚の水分量、皮膚のはがれ状態によって評価される乾燥度合、インビボでの皮膚の全体的な状態によって評価される皮膚バリアに対する効果
実施例3からの高い含油率を有する組成物のスキンケア特性を測定するために、インビボ研究を行った。研究の手順は以下の通りである。各被験体に2週間にわたって1日2回、2つの試験製剤を腋下の内側に塗布した。使用開始前並びに1及び2週間後に、特殊カメラ(Visioscan VC 98, Courage & Khazaka, Cologne)を用いて、皮膚の白黒像を撮影した。これらの像を用いて、カメラのソフトウェアが、皮膚のはがれ状態及び皮膚の粗さを計算した。像の灰色レベルの分布から値が計算され、したがって、結果は単位を有しない。
【0075】
被験体は、試験製剤のケア特性を評価するための質問票も受け取った。合計25人の被験体が本研究に参加した。
【表3】
【0076】
皮膚のはがれ状態と皮膚の粗さの両方が、ビヒクル製剤を塗布した場合よりも、実施例3からの高い含油率を有する組成物を含む製剤を塗布した場合に大きく減少した。これらの結果は、被験体も同意した。ビヒクル製剤の場合よりも、実施例3からの生成物を含む試験製剤において、「本製品は皮膚乾燥のはがれ状態を減少させる」、「本製品は皮膚に十分な水分を供給する」及び「自分の皮膚の状態は改善された」という記述に対し明確により高い同意が得られた。
【0077】
実施例8:毛髪に対する塗布データ:UVでダメージを受けた毛髪の修復
以下の実施例において、実施例2からの生成物を含む試験コンディショナーの修復効果をセラミドNPの修復効果と比較する。
【0078】
白人のダメージを受けていない毛髪に24時間、UVを照射した。この目的のために、UVチャンバーを使用した(Dr. Honle, Sol 2)。毛髪の束に910W/m2の強度で照射した。続いて、毛髪を以下のように処理した。
1.ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びコカミドプロピルベタインからなる試験シャンプーで洗浄する。
2.試験コンディショナーを塗布する。接触時間は5分であった。続いて、毛髪の束を37℃の温度の流水下で1分間すすいだ。
3.毛髪の束をヘアドライヤーで3分間乾燥させる。
【0079】
【0080】
修復効果を定量するために、毛髪断裂測定を行った(Cyclic Tester, Diastron Limited, UK)。この測定では、個々の毛髪を、それらが断裂するまで一定の力で伸ばす。存続した伸長サイクルの回数を記録し、存続確率を計算する。約50本の個々の毛髪を各測定に用いた。
【0081】
図1は、毛髪断裂試験においてUVを照射された毛髪の存続確率が、照射されていない毛髪(白人のバージン)の場合よりもかなり低いことを示している。セラミド含有の試験製剤による処理は、再び存続確率を高めた。実施例2からの生成物を含む製剤の方が、比較のために試験されたセラミドNPを含む製剤よりも高い存続確率をもたらすことが分かる。
【0082】
実施例9:毛髪に対する塗布データ:タンパク質の分解からの保護
エスニックヘアー(ethnic hair)を化学的にストレートにした。この目的のために、炭酸グアニジン及び水酸化カルシウムに基づく約12のpHを有する標準的な製剤を用いた。続いて、毛髪を以下のように処理した。
1.ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びコカミドプロピルベタインからなるシャンプーで洗浄する。
2.試験コンディショナーを塗布する。接触時間は5分であった。続いて、毛髪の束を37℃の温度の流水下で1分間すすいだ。
3.毛髪の束をヘアドライヤーで3分間乾燥させる。
【0083】
【0084】
修復効果を定量するために、毛髪断裂測定を行った(Cyclic Tester, Diastron Limited, UK)。この測定では、個々の毛髪を、それらが断裂するまで一定の力で伸ばす。存続した伸長サイクルの回数を記録し、存続確率を計算する。約50本の個々の毛髪を各測定に使用した。
【0085】
図2は、毛髪断裂試験において、アルカリでストレートにされた毛髪の存続確率が、ストレートにされていない毛髪(バージン)の場合よりもかなり低いことを示している。セラミド含有の試験製剤による処理は、再び存続確率を高めた。驚くべきことに、本発明の組成物(実施例2)が、商業的なヘアケア製品にとって通例のセラミドII(純粋なスフィンガニンC18)よりも高い存続確率をもたらすことが見出された。
【0086】
実施例10:毛髪に対する塗布データ:酸性ストレート後の毛髪の修復
エスニックヘアー(ethnic hair)を、酸によってストレートにし、10%オリーブ油ベースのセラミドからなる高いトリグリセリド含有量を有する特許請求される組成物(実施例2)のうちの1つを含むコンディショナーで後処理した。比較のために、対応する量の純粋なセラミドNG又は純粋なオリーブ油を用いて同処理を行った。
【0087】
修復効果及び細胞膜複合体の増大を、Hair fatigue alphaを用いて測定した。
【0088】
エスニックヘアー(ethnic hair)を化学的にストレートにした。この目的のために、約1~2のpHを有する標準的な酸性の製剤を、ストレートアイロンの使用と組み合わせて使用した。続いて、毛髪を以下のように処理した。
1.ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びコカミドプロピルベタインからなるシャンプーで洗浄する。
2.試験コンディショナーを塗布する。接触時間は5分であった。続いて、毛髪の束を37℃の温度の流水下で1分間すすいだ。
3.毛髪の束をヘアドライヤーで3分間乾燥させる。
【0089】
これらの3処理工程を合計5回行った。
試験コンディショナーは、活性成分を含まない(ビヒクル、1%オリーブ油、0.1%セラミドNG)か、又は高いトリグリセリド含有量を有する特許請求される組成物を含んでいる。
【表6】
【0090】
修復効果を定量するために、毛髪断裂測定を行った(Cyclic Tester, Diastron Limited, UK)。この測定では、個々の毛髪を、それらが断裂するまで一定の力で伸ばす。存続した伸長サイクルの回数を記録し、存続確率を計算する。約50本の個々の毛髪を各測定に使用した。
【0091】
驚くべきことに、
図3に示されるように、セラミドNG及びオリーブ油が、いかなる修復効果も達成できなかったのに対して、本発明の組成物だけが、適切な修復効果を達成できたことが見出された。
【0092】
実施例11:製剤化容易性に対する適用データ:化粧用オイルへの結晶フリーな導入
スフィンゴ脂質の低溶解度及び高い再結晶化の傾向は常に、それらを化粧品製剤に安定的に導入することを困難にしている。
【0093】
驚くべきことに、高い含油率及び高いトリグリセリド含有量を有する本発明の組成物を用いることにより、従来技術のスフィンゴ脂質の場合よりも、本発明のスフィンゴ脂質を化粧用オイルに取り込めることが明確に簡単になることが見出された。
【0094】
この目的のために、スフィンゴ脂質の溶解温度を確かめた。化粧用オイル中、0.1%の最終濃度を持つセラミドを選択した。セラミド組成物を、ホットプレート上のビーカー内の化粧用オイルに混合し徐々に加熱、撹拌した。溶液が透明になった時の温度を溶解温度とした。続いて、その混合物を、確認された溶解温度において1時間撹拌した。それを室温まで冷却させた後、製剤を観察した。
【表7】
【0095】
このデータから、純粋なセラミドと比べて、高い含油率を有する本発明の組成物の化粧用オイルへの取り込み性は明確に改善していることが分かる。