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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240530BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240530BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/44
A61K8/368
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/31
A61K8/86
A61Q17/04
A61K8/37
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019225268
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021095340
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】榎本 歩
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭太
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142825(JP,A)
【文献】特開2009-203200(JP,A)
【文献】BB Essence SPF 50+/PA++++,ID 4712819,Mintel GNPD[online],2017年3月,[検索日2024.01.17],https://www.portal.mintel.com
【文献】Real Fit Liquid Foundation,ID 4656417,Mintel GNPD[online],2017年3月,[検索日2023.09.13],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む分散媒、並びに
前記分散媒中に分散している油滴
を含む、水中油型乳化組成物であって、
前記分散媒は、有機酸又はその塩、並びに
増粘剤としての、
寒天(但し、寒天ミクロゲルを除く。)、及び
サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種
を含み、
前記寒天と、前記サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種との質量比が、10:1~7:2であり、
前記油滴は、油分、及び界面活性剤(但し、ジェミニ型アニオン性界面活性剤を除く。)を含
前記水の配合量が、前記組成物の全量に対し、30質量%以上80質量%以下であり、
前記有機酸又はその塩の配合量が、前記組成物の全量に対し、0.0001質量%以上5.0質量%以下であり、
前記寒天、並びに前記サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種の総配合量が、前記組成物の全量に対し、0.5質量%以上5.0質量%以下であり、
前記油分の配合量が、前記組成物の全量に対し、10質量%以上50質量%以下であり、
前記有機酸が、アルコキシサリチル酸、L-アスコルビン酸、コウジ酸、カルノシン、トラネキサム酸、スルホン酸、アミノ酸、グリチルリチン酸、及び1-ピペリジンプロピオン酸から選択される少なくとも一種を含み、
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含む、
水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記油分が、極性油及び紫外線吸収剤から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記極性油及び紫外線吸収剤から選択される少なくとも一種が、油分全量に対し、30質量%以上含まれている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記油滴が、紫外線散乱剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機酸が、トラネキサム酸、アルコキシサリチル酸、スルホン酸、及びアミノ酸から選択される少なくとも一種である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塩型薬剤などの各種の添加剤を含む水中油型乳化組成物が開発されている。
【0003】
特許文献1には、塩型薬剤、親水性非イオン界面活性剤、N-長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩、2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ、高級アルコール、油分、及び水を含有し、高圧乳化により乳化粒子を微細化した、水中油型乳化組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、油相と、油相が分散した水相とを備え、前記油相を水相に分散させる分散剤として、疎水性ゲル微粒子表面に、部分的に親水基を設けたコア-コロナ型ミクロゲルと、平均粒径が10~100μmである寒天ミクロゲルを含む、水中油型乳化組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-126705号公報
【文献】特開2018-070600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水中油型乳化組成物に対し、有機酸及びその塩などの電解質を配合すると、乳化安定性が低下するという問題がある。
【0007】
このような乳化安定性の低下を改善するために、増粘剤が使用されることがあるが、増粘剤の中には、有機酸の影響を受けて十分な増粘効果を発現できない場合、或いは、増粘剤の使用に伴うべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0008】
したがって、本開示の主題は、乳化安定性に優れ、かつ、べたつき感を低減又は抑制することが可能な、有機酸又はその塩を含む水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〈態様1〉
水を含む分散媒、並びに
前記分散媒中に分散している油滴
を含む、水中油型乳化組成物であって、
前記分散媒は、有機酸又はその塩、並びに
増粘剤としての、
寒天、及び
サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種
を含み、
前記油滴は、油分、及び界面活性剤を含む、
水中油型乳化組成物。
〈態様2〉
寒天と、サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種との質量比が、10:1~7:2である、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記油分が、極性油及び紫外線吸収剤から選択される少なくとも一種を含む、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記油分の含有量が、10質量%以上である、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
〈態様5〉
前記極性油及び紫外線吸収剤から選択される少なくとも一種が、油分全量に対し、30質量%以上含まれている、態様3又は4に記載の組成物。
〈態様6〉
前記油滴が、紫外線散乱剤をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の組成物。
〈態様7〉
前記有機酸が、トラネキサム酸、アルコキシサリチル酸、スルホン酸、及びアミノ酸から選択される少なくとも一種である、態様1~6のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、乳化安定性に優れ、かつ、べたつき感を低減又は抑制することが可能な、有機酸又はその塩を含む水中油型乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示の水中油型乳化組成物は、分散媒が、有機酸又はその塩、並びに、増粘剤としての、寒天と、サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種とを含んでいる。
【0013】
原理によって限定されるものではないが、本開示の水中油型乳化組成物が、分散媒中に有機酸又はその塩を含むにもかかわらず、乳化安定性に優れ、かつ、べたつき感を低減又は抑制し得る作用原理は以下のとおりであると考える。
【0014】
水と有機酸を含む非乳化系の組成物に対して、寒天を増粘剤として使用すると、組成物は十分な粘度を発現することができるとともに、べたつき感を低減又は抑制することができた。かかる粘度を乳化系において発現できれば、一般には、乳化粒子を分散させることができるはずだが、この寒天を、分散媒中に有機酸を含む水中油型乳化組成物の系で増粘剤として使用すると、意外にも、乳化粒子を十分に分散させることはできなかった。
【0015】
サクシノグリカン又はキサンタンガムは、べたつき感を呈しやすい増粘剤であるが、本発明者は、このようなべたつき感を呈しやすい増粘剤を、分散媒中に有機酸又はその塩を含む水中油型乳化組成物の系において寒天と併用すると、意外にも、べたつき感を低減又は抑制することができることに加え、乳化粒子の分散性を向上させ得ることを見出した。
【0016】
かかる作用効果が発現する原理は定かではないが、寒天の増粘機構と、サクシノグリカン又はキサンタンガムの増粘機構との相違が寄与しており、両者がそれぞれのデメリットを補完し合っていると考えている。
【0017】
なお、特許文献2に記載される寒天ミクロゲルは、ゲル化(固化)させた寒天を粉砕してミクロン単位のゲル粒子とし、水相中に点在させるように用いられる、使用性を改善するための添加剤であり、水中油型乳化組成物を増粘させる機能は有していない。
【0018】
《水中油型乳化組成物》
〈分散媒〉
本開示の水中油型乳化組成物における分散媒は、水、有機酸又はその塩、並びに増粘剤としての、寒天と、サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種とを含んでいる。
【0019】
(水)
水の配合量としては、特に制限されるものではないが、例えば、みずみずしい使用感の提供、乳化安定性等の観点から、組成物の全量に対し、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上とすることができ、また、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0020】
本開示の水中油型乳化組成物で使用し得る水としては、特に限定されるものではないが、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される水を使用することができる。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、水道水等を使用することができる。
【0021】
(有機酸又はその塩)
有機酸又はその塩の配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、かかる成分に基づく効果の発現性、乳化安定性等の観点から、組成物の全量に対し、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上とすることができ、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下とすることができる。ここで、本開示では、有機酸又はその塩を「塩型成分」と称する場合がある。
【0022】
本開示の組成物は、有機酸等の塩型成分を含有しても、安定な乳化状態を維持することができるため、従来の系に比べて塩型成分の含有率を高めることができ、かかる成分による効果をより高めることができる。
【0023】
塩型成分の配合量は、次のように表記することもできる。かかる成分の配合量は、例えば、組成物100gに対して、2mmol以上、3mmol以上、又は4mmol以上とすることができ、また、30mmol以下、25mmol以下、又は20mmol以下とすることができる。
【0024】
本開示の水中油型乳化組成物で使用し得る有機酸又はその塩としては特に制限はなく、例えば、肌又は髪に適用した場合に、肌質又は髪質を改善する効果、例えば、美白等の美肌効果、滑り性若しくはしっとり感等の向上効果などを奏し得るものを使用することができる。
【0025】
有機酸とは、例えば、カルボキシル基、スルホニル基などを有し、電離して水素イオンを生じる有機化合物であり、この化合物には、例えば、アミノ酸又はその類縁体なども含まれる。具体的には、例えば、アルコキシサリチル酸、L-アスコルビン酸、コウジ酸、カルノシン、トラネキサム酸、スルホン酸、アミノ酸、グリチルリチン酸及び1-ピペリジンプロピオン酸などを挙げることができ、これらは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0026】
これらの中でも、美肌効果等の観点から、トラネキサム酸、アルコキシサリチル酸、スルホン酸、及びアミノ酸から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0027】
アルコキシサリチル酸としては、例えば、3-メトキシサリチル酸、3-エトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、4-エトキシサリチル酸、4-プロポキシサリチル酸、4-イソプロポキシサリチル酸、4-ブトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、5-エトキシサリチル酸、5-プロポシキサリチル酸等を挙げることができ、中でも、4-メトキシサリチル酸が好ましい。
【0028】
スルホン酸としては、例えば、水溶性の紫外線吸収剤として使用され得る、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸などを挙げることができる。
【0029】
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、プロリン、リジン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸等を挙げることができ、また、3つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)からなるトリペプチドのグルタチオンなども挙げることができる。
【0030】
有機酸は、塩の形態又は誘導体の形態であってもよく、これらのものを単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。ここで、塩の形態としては、特に限定されるものでないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の形態を例示することができる。
【0031】
(増粘剤)
本開示の水中油型乳化組成物は、寒天(「第1の増粘剤」と称する場合がある。)と、サクシノグリカン及びキサンタンガムから選択される少なくとも一種(「第2の増粘剤」と称する場合がある。)とを用いて調製される。
【0032】
第1の増粘剤及び第2の増粘剤の総配合量としては、例えば、増粘性、乳化安定性、べたつき感等の観点から、組成物全量に対し、0.5質量%以上、0.7質量%以上、又は1.0質量%以上とすることができ、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下とすることができる。
【0033】
第1の増粘剤及び第2の増粘剤の質量比としては、例えば、増粘性、乳化安定性、べたつき感等の観点から、10:1~7:2の範囲が好ましく、9:1~8:2の範囲がより好ましく、8:1~9:2の範囲がさらに好ましく、7:1~10:2の範囲が特に好ましい。
【0034】
〈油滴〉
水中油型乳化組成物における油相又は分散相としての油滴は、油分、及び界面活性剤を含んでいる。
【0035】
(油分)
本開示の水中油型乳化組成物中の油分の含有量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上とすることができ、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下とすることができる。
【0036】
油分を、例えば、10質量%以上と高度に含む水中油型乳化組成物は、油滴中に配合し得る添加剤、例えば、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の含有割合を増加させることができるため、紫外線防御効果(SPF)をより向上させることができる。
【0037】
油分としては特に制限はなく、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、シリコーン油、極性油等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。ここで、紫外線吸収剤の中には、油分、特に、極性油として作用するものも存在する。このような紫外線吸収剤も油分としてみなすことができる。
【0038】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0039】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0040】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0041】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0042】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーンなどを使用することができる。
【0043】
極性油としては、例えば、IOBが0.10以上の極性油を使用することができる。このような極性油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値=0.18)、パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、パルミチン酸イソプロピル(IOB値=0.16)、ステアリン酸ブチル(IOB値=0.14)、ラウリン酸ヘキシル(IOB値=0.17)、ミリスチン酸ミリスチル(IOB値=0.11)、オレイン酸デシル(IOB値=0.11)、イソノナン酸イソノニル(IOB値=0.20)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB値=0.15)、エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB値=0.35)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB値=0.32)、コハク酸ジオクチル(IOB値=0.36)、ジステアリン酸グリコール(IOB値=0.16)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値=0.29)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値=0.28)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)(IOB値=0.35)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.33)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、アジピン酸ジイソブチル(IOB値=0.46)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル(IOB値=0.29)、アジピン酸2-ヘキシルデシル(IOB値=0.16)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値=0.40)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値=0.28)、パルミチン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.13)、エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.2)、トリイソステアリン(IOB値=0.16)、ジピバリン酸PPG-3(IOB値=0.52)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値=0.33)等が挙げられる。
【0044】
油分とみなすことが可能な紫外線吸収剤としては、例えば、IOBが0.10以上の紫外線吸収剤、具体的には、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等の有機系の油溶性紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
極性油及び紫外線吸収剤のIOB値は、例えば、0.11以上、0.12以上、又は0.13以上とすることでき、また、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下とすることができる。ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0046】
一般に、極性油及び極性油としてみなすことができる紫外線吸収剤は、乳化組成物の乳化安定性を低下させる場合がある。しかしながら、第1の増粘剤及び第2の増粘剤によって増粘された本開示の組成物は、このような極性油が含まれていても、乳化安定性の低下を低減又は抑制することができるため、上述した極性油及び紫外線吸収剤から選択される少なくとも一種を、油分として比較的高度に配合することができる。これらの油分は、油分全体に対し、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上含むことができる。これらの油分の上限値については特に制限はなく、例えば、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下とすることができる。本開示の組成物は、紫外線吸収剤を高度に配合することができるため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、及びオキシベンゾン-3から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤を使用しなくても、良好な紫外線遮蔽性能を発揮することができる。
【0047】
(界面活性剤)
界面活性剤としては特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を使用することができるが、乳化安定性等の観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、POE(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~30モル)ベヘニルエーテル、POE(10~50モル)セチルエーテル、POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(20~100)硬化ヒマシ油誘導体、POE(5~30モル)POP(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)POP(2~30モル)セチルエーテル、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、ポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができる。中でも、POE(30モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(30モル)フィトステロールエーテル、POE(60モル)硬化ヒマシ油誘導体、POE(1000モル)硬化ヒマシ油誘導体、POE(30モル)ベヘニルエーテル、POE(20モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10モル)メチルポリシロキサン共重合体等が好ましく、POE(60モル)硬化ヒマシ油誘導体、POE(100モル)硬化ヒマシ油誘導体がより好ましい。
【0049】
〈任意成分〉
本開示の水中油型乳化組成物は、本開示の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。例えば、保湿剤、水溶性高分子、油溶性高分子、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、エタノール等の低級アルコール、エチレングリコール等の多価アルコール、高級アルコール、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、各種抽出液、糖、高分子エマルジョン、キレート剤、上記の紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、上記の増粘剤以外の他の増粘剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、医薬品、医薬部外品若しくは化粧品等に適用可能な水溶性薬剤又は油溶性薬剤、緩衝剤、防腐剤、分散剤、噴射剤、有機系粉末、無機系粉末、顔料、染料、色素、香料等を挙げることができる。これらの成分は、水相及び/又は油相中に適宜配合することができる。
【0050】
上記の紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤としては、水溶性の紫外線吸収剤、例えば、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノンスルホン酸などを挙げることができる。水溶性の紫外線吸収剤は、一般に、アルカリなどで中和して塩型の形態で使用されるが、本開示の水中油型乳化組成物は、耐塩性に優れるため、このような水溶性の紫外線吸収剤を配合することができる。いくつかの実施態様において、本開示の水中油型乳化組成物は、例えば、油溶性の紫外線吸収剤を油相側に、水溶性の紫外線吸収剤を水相側に安定的に配合することができるため、油相側又は水相側のみに紫外線吸収剤を含む乳化組成物に比べ、紫外線遮蔽性能をより向上させることができる。このような構成の場合、本開示の組成物は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、及びオキシベンゾン-3から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤を使用しなくても、良好な紫外線遮蔽性能を発揮することができる。
【0051】
紫外線散乱剤としては、例えば、無機粒子、具体的には、酸化チタン粒子、酸化クロム粒子、酸化鉄粒子、酸化亜鉛粒子、硫酸バリウム粒子等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。このような紫外線散乱剤は、高温になると金属イオンが溶出し、塩型成分と同様に、乳化組成物の乳化安定性を低減させる場合がある。本開示の水中油型乳化組成物は、このような紫外線散乱剤を配合したとしても、優れた乳化安定性を呈することができる。
【0052】
紫外線散乱剤は、疎水化処理が施されてもよい。このような疎水化処理としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;アルキルシラン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等を挙げることができる。
【0053】
紫外線散乱剤の平均粒子径としては、例えば、200nm以下、180nm以下、150nm以下、120nm以下、又は100nm以下とすることができる。紫外線散乱剤の平均粒子径の下限値については特に制限はないが、例えば、10nm以上、30nm以上、50nm以上、又は70nm以上とすることができる。紫外線散乱剤の平均粒子径は、一次粒子又は凝集した二次粒子の大きさであってよく、動的光散乱法によって算出することができる。
【0054】
本開示の水中油型乳化組成物は、第1の増粘剤及び第2の増粘剤以外の他の増粘剤を配合してもよいが、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマーなどの増粘剤は、塩型成分の影響を受けやすく、増粘効果を発現させにくい一方で、べたつき感を発現させやすくなるため、このような他の増粘剤は、組成物の全量に対し、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.1質量%以下の範囲で含んでもよいが、べたつき感の低減又は抑制の観点から、他の増粘剤を含まないことが好ましい。
【0055】
《水中油型乳化組成物の調製方法》
本開示の水中油型乳化組成物の調製方法としては特に制限はなく、例えば、分散法、凝集法といった公知の方法により調製することができる。
【0056】
分散法とは、分散相の塊を機械的な力により微細化する方法である。具体的には、乳化機の破砕力を利用して乳化する方法であり、このような方法として、例えば、高圧ホモジナイザーを用いて高剪断力を付加する高圧乳化法などを挙げることができる。
【0057】
凝集法とは、界面化学的特性を利用したコロイド調製法であり、一様に溶け合った状態から何らかの手段で過飽和状態にし、分散相となるものを出現させる方法である。具体的な手法として、HLB温度乳化法、転相乳化法、非水乳化法、D相乳化法、液晶乳化法等が知られている。
【0058】
《水中油型乳化組成物の剤型》
本開示の水中油型乳化組成物の剤型としては特に制限はなく、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ミスト、スプレー、エアゾール、ムース等が挙げられる。
【0059】
《水中油型乳化組成物の用途》
本開示の水中油型乳化組成物は、種々の用途に使用することができる。例えば、化粧料、医薬部外品又は医薬品の基剤として使用することができ、例えば、皮膚又は髪等に対して適用される化粧料、医薬部外品又は医薬品として使用することができる。ここで、皮膚に適用される化粧料、医薬部外品又は医薬品には、皮膚外用剤と呼ばれるものも包含することができる。また、皮膚には、皮膚の表皮の角質が変化して硬化した爪なども含まれる。
【0060】
本開示の組成物の製品形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、化粧水、美容液、乳液、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプーなどの皮膚洗浄料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス、育毛料等の毛髪化粧料;軟膏などを挙げることができる。
【実施例
【0061】
以下に実施例を挙げて、本開示についてさらに詳しく説明を行うが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0062】
《実施例1~7及び比較例1~2》
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により得た水中油型乳化組成物について、以下の評価を行い、その結果を表1に示す。なお、静置状態での乳化安定性の評価に関しては、その結果を表2にも示す。
【0063】
〈評価方法1〉
(使用性の評価)
5名の専門パネルにより、調製した組成物を肌に塗布し、塗布時、塗布中又は塗布後のみずみずしい使用感、べたつき感などについて、下記の評価基準により評価した。その結果を表1にまとめる。ここで、A~B評価までが合格、C評価は不合格とみなすことができる。
【0064】
A:5名が、べたつき感を感じることなく、みずみずしい使用感が感じられると回答した。
B:3~4名が、べたつき感を感じることなく、みずみずしい使用感が感じられると回答した。
C:0~2名が、べたつき感を感じることなく、みずみずしい使用感が感じられると回答した。
【0065】
(静置状態での乳化安定性の評価)
調製した組成物を50mLの透明なサンプル管(直径3cm)に入れ、50℃で30日間保管後の油分の分離状態又は紫外線散乱剤の沈殿状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。その結果を表1及び表2にまとめる。ここで、A~B評価までが合格、C評価は不合格とみなすことができる。なお、表1及び表2では、この評価項目を「乳化安定性(静置)」と表記する。
【0066】
A:油分の分離及び紫外線散乱剤の沈殿物は確認されなかった。
B:油分の分離及び又は紫外線散乱剤の沈殿物が僅かに確認された。
C:油分の分離及び又は紫外線散乱剤の沈殿物が明らかに確認された。
【0067】
(振動状態での乳化安定性の評価)
調製した組成物を50mLの透明なサンプル管(直径3cm)に入れ、25℃雰囲気下、速度45rpmでサンプル管を管の軸方向を回転軸として4時間回転させ、油分の分離状態又は紫外線散乱剤の沈殿状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。その結果を表1にまとめる。なお、上述した静置状態での乳化安定性試験が合格レベルであれば、乳化安定性に優れると判断できるが、この振動状態での乳化安定性試験でA~B評価が得られていれば、乳化安定性がより優れていると評価できる。また、表1では、この評価項目を「乳化安定性(振動)」と表記する。
【0068】
A:油分の分離及び紫外線散乱剤の沈殿物は観察されなかった。
B:油分の分離及び又は紫外線散乱剤の沈殿物が僅かに観察された。
C:油分の分離及び又は紫外線散乱剤の沈殿物が明らかに観察された。
【0069】
〈組成物の製造方法1〉
(実施例1)
表1に示す処方を用い、以下の方法によって水中油型乳化組成物を製造した。ここで、以下に示す番号は、表1の処方の成分名を示す左側の番号と一致する。
【0070】
No.1のイオン交換水にNo.8及びNo.9の増粘剤を添加し、加温しながら混合して溶解させた後に、No.2、No.7及びNo.11~No.13の材料を添加し、均一に混合して水相パーツを調製した。
【0071】
No.14~No.24の材料を均一に混合して油相パーツを得た。
【0072】
水相パーツに油相パーツを徐々に添加し、ディスペンサーで均一に分散させて、実施例1の水中油型乳化組成物を得た。
【0073】
(実施例2~6及び比較例1~2)
表1に示す処方に変更したことが以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~2の水中油型乳化組成物を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
〈結果〉
表1から明らかなように、第1の増粘剤及び第2の増粘剤を含む実施例1~7の水中油型乳化組成物は、塩型成分の種類にかかわらず、使用性及び乳化安定性(静置)の両性能が共に優れることが確認できた。一方、第1の増粘剤又は第2の増粘剤のいずれか一方のみを含む比較例1~2の水中油型乳化組成物は、使用性又は乳化安定性(静置)のいずれかの性能が劣ることが確認できた。
【0076】
また、実施例3と実施例7の結果を比較すると、実施例3の組成物の方が、振動状態での乳化安定性にも優れていた。したがって、実施例7の組成物における第1の増粘剤と第2の増粘剤のうちの第2の増粘剤の比率を増加させると、乳化安定性がより向上することが分かった。
【0077】
《実施例8~9、比較例3~4及び参考例1~4》
表2に示す処方及び下記に示す製造方法により得た水中油型乳化組成物について、以下の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0078】
〈評価方法2〉
(塩型成分による粘度変化率の評価)
作製直後の組成物の粘度を、ローター番号H6、30℃、12rpmの条件で、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて測定し、下記の式1より、塩型成分による粘度変化率を算出した。その結果を表2にまとめる:
塩型成分による粘度変化率(%)=塩型成分を含む処方の組成物の粘度×100/塩型成分を含まないこと以外は同一処方の組成物の粘度 …式1
【0079】
(高温安定性の評価)
作製直後の組成物の粘度を、ローター番号H6、30℃、12rpmの条件で、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて測定した粘度1と、50℃の恒温槽中に4週間保管後の組成物の粘度を、同一の条件及び装置を用いて測定した粘度2を、下記の式2に導入して、高温試験後の粘度変化率を算出した。その結果を表2にまとめる:
高温試験後の粘度変化率(%)=粘度2×100/粘度1 …式2
【0080】
〈組成物の製造方法2〉
(実施例8)
表2に示す処方を用い、以下の方法によって水中油型乳化組成物を製造した。ここで、以下に示す番号は、表2の処方の成分名を示す左側の番号と一致する。
【0081】
No.1のイオン交換水にNo.5及びNo.6の増粘剤を添加し、加温しながら混合して溶解させた後に、No.2、No.11、No.13及びNo.14の材料を添加し、均一に混合して水相パーツを調製した。
【0082】
No.18及びNo.21~No.30の材料を均一に混合して油相パーツを得た。
【0083】
水相パーツに油相パーツを徐々に添加し、ディスペンサーで均一に分散させて、実施例8の水中油型乳化組成物を得た。
【0084】
(実施例9、比較例3、及び参考例1~3)
表2に示す処方に変更したことが以外は、実施例8と同様にして、実施例9、比較例3、及び参考例1~3の水中油型乳化組成物を得た。
【0085】
(比較例4)
No.1のイオン交換水にNo.7、No.9及びNo.10の増粘剤を添加し、加温しながら混合して溶解させた後に、No.2~No.4、No.11、No.12及びNo.15~No.17の材料を添加し、均一に混合して水相パーツを調製した。
【0086】
No.19、No.20、No.22~No.24、No.27及びNo.30の材料を均一に混合して油相パーツを得た。
【0087】
水相パーツに油相パーツを徐々に添加し、ディスペンサーで均一に分散させて、比較例4の水中油型乳化組成物を得た。
【0088】
(参考例4)
表2に示す処方に変更したことが以外は、比較例4と同様にして、参考例4の水中油型乳化組成物を得た。
【0089】
【表2】
【0090】
〈結果〉
表2の比較例3と参考例2の結果を比べれば分かるように、第1の増粘剤及び第2の増粘剤を併用していない比較例3の水中油型乳化組成物は、塩型成分によって増粘効果が阻害されて粘度が減少し、乳化安定性が低下していることが確認できた。一方、第1の増粘剤及び第2の増粘剤を併用した実施例8及び9の水中油型乳化組成物は、塩型成分によって粘度が減少することはなく、乳化安定性に優れることが確認できた。
【0091】
また、参考例2の組成物の高温試験後の粘度変化率は、59.4%まで低減していたが、これは、油滴中に含まれる紫外線散乱剤の金属イオンが高温下で溶出したためであると考えられる。実施例8及び9の結果を見れば分かるように、これらの水中油型乳化組成物は、紫外線散乱剤が含まれているにもかかわらず、高温試験後の粘度変化率が大幅に低下することはなかった。つまり、第1の増粘剤及び第2の増粘剤の併用は、塩型成分に加え、紫外線散乱剤の金属イオンの溶出に対しても有効に作用することが分かった。
【0092】
参考例4の組成物は、特許文献2の処方例4の組成物であり、比較例4の組成物は、この参考例4の組成物に対して塩型成分を配合した構成である。比較例4の組成物には、第2の増粘剤としてのキサンタンガムと、寒天ミクロゲルとが含まれているが、この寒天ミクロゲルは固形物であり、増粘剤としては機能しない。そして、比較例4の組成物も塩型成分によって増粘効果が阻害されて粘度が減少し、乳化安定性が低下していることから、塩型成分による組成物の粘度減少の抑制効果は、単に、寒天成分とキサンタンガム又はサクシノグリカンとの成分が組成物に含まれているだけでは足りず、寒天とキサンタンガム又はサクシノグリカンとが、増粘剤として機能しなければならないことが確認できた。