(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】建築物の壁面構造および建築物の風揺れ抑制方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
E04H9/14 H
(21)【出願番号】P 2020035396
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503428703
【氏名又は名称】オイレスECO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 好英
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光司
(72)【発明者】
【氏名】江崎 守
(72)【発明者】
【氏名】入内島 建一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-256679(JP,A)
【文献】特開平06-336860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面構造であって、
前記建築物に吹き付ける風の進行方向に対して前記建築物の左右両側の壁面に、前記風によって前記建築物の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、前記風の進行方向に対して前記建築物の左右両側における風圧変動の周期を短くする凹凸構造が設けられており、当該凹凸構造を形成する突起部の前記壁面からの突出量は調節可能であり、
前記凹凸構造が設けられた前記壁面を複数に分割することにより得られるエリア毎に
、前記建築物に吹き付ける風の風速を計測する風速計が設けられており、
前記エリア毎に、当該エリアに対応して設けられた前記風速計による測定結果が所定値未満の場合に、当該エリアに属する前記突起部を前記壁面内に収容する
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記突起部の前記壁面からの突出量は、前記建築物に吹き付ける風によって前記建築物の周辺に発生するカルマン渦による風圧変動の周期が前記建築物の固有振動数から外れるように調節されている
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項3】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記壁面に設けられ、前記突起部を前記壁面から突出自在に収容する収容部と、
前記突起部に設けられたねじ孔部と、
前記ねじ孔部に螺合して、前記突起部の前記壁面からの突出量を調節する送りねじ部と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項4】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記壁面に設けられ、前記突起部を前記壁面から突出自在に収容する収容部と、
前記突起部に設けられたラックギア部と、
前記ラックギア部と噛合って、前記突起部の前記壁面からの突出量を調節するピニオンギア部と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項5】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記壁面に設けられ、前記突起部を前記壁面から突出自在に収容する収容部と、
前記壁面に沿って移動可能に設けられたスライダ部と、
一方の端部が前突起部に回転自在に取り付けられるとともに、他方の端部が前記スライダ部に回転自在に取り付けられ、前記スライダ部が前記壁面に沿って移動することにより、前記突起部の前記壁面からの突出量を調節するロッド部と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項6】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記突起部は、中央部で折り畳み自在に構成された板状部材であり、
前記壁面に設けられ、前記中央部を前記壁面から突出自在に前記板状部材を収容する収容部と、
前記板状部材の折り畳みを制御して、前記中央部の前記壁面からの突出量を調節する折り畳み制御機構と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項7】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記突起部は、パンタグラフ状部材であり、
前記壁面に設けられ、前記パンタグラフ状部材の頂部を前記壁面から突出自在に前記
パンタグラフ状部材を収容する収容部と、
前記パンタグラフ状部材の折り畳みを制御して、前記頂部の前記壁面からの突出量を調節する折り畳み制御機構と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項8】
請求項1に記載の建築物の壁面構造であって、
前記壁面に設けられ、前記突起部の一端を回転軸として、前記突起部を回転可能かつ前記突起部の他端を前記壁面から突出自在に収容する収容部と、
前記突起部の一端を回転軸とする前記突起部の回転を制御して、前記突起部の他端の前記壁面からの突出量を調節する回転制御機構と、をさらに備える
ことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項9】
建築物の風揺れ抑制方法であって、
前記建築物に吹き付ける風の進行方向に対して前記建築物の左右両側の壁面に
、当該壁面からの突出量を調節可能な突起部による凹凸構造を設けておき、前記風によって前記建築物の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進し、前記風の進行方向に対して前記建築物の左右両側における風圧変動の周期を短くする
とともに、
前記凹凸構造が設けられた前記壁面を複数に分割することにより得られるエリア毎に、前記建築物に吹き付ける風の風速を計測する風速計を設けておき、前記エリア毎に、当該エリアに対応して設けられた前記風速計による測定結果が所定値未満の場合に、当該エリアに属する前記突起部を前記壁面内に収容する
ことを特徴とする
建築物の風揺れ抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ビル等の建築物の風揺れ抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物では、強風が正面(風上に位置する壁面)に吹き付けられると、建築物の隅角部で剥離が発生し、風の進行方向に対して建築物の左右両側に水平方向のカルマン渦(横渦)が周期的に発生する。これにより、風の進行方向に対して建築物の左右両側における風の強弱が周期的に変化して(風圧変動)、交互に向きが入れかわる力(転倒モーメント)が建築物に作用する。ここで、風圧変動の周期が建築物の固有振動数と一致すると、建築物が共振して、建築物を振動(風揺れ)させる(ロッキング現象)。
【0003】
この建築物の風揺れ対策として、従来、建築物の隅角部に剥離の発生を抑制するための隅切り面を設けることが提案されている。例えば、特許文献1では、建築物の隅角部に隅切り面を設けるとともに、この隅切り面に、風の向きを上下方向に変化させて垂直方向のカルマン渦(縦渦)を発生させる渦発生器を所定間隔毎に複数設置して、水平方向のカルマン渦と垂直方向のカルマン渦とを相殺することにより、転倒モーメントを弱めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高層ビル等の細長い形状の建築物は、高層階において常に強風が吹き付けている。また、一般的な建築物に比べて固有振動数が低く、このため、建築物に吹き付ける強風によって周期的に発生するカルマン渦による風圧変動の周期が、建築物の固有振動数と一致して、ロッキング現象を起こしやすい。したがって、このような建築物では、より効果的な風揺れ対策が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高層ビル等の建築物に好適な風揺れ抑制技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、高層ビル等の建築物に吹き付ける風によって建築物の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、風の進行方向に対して建築物の左右両側における風圧変動の周期を短くする凹凸構造を、風の進行方向に対して建築物の左右両側の壁面に設けた。
【0008】
ここで、壁面の凹凸構成を形成する突起部の壁面からの突出量を調節可能としてもよい。そして、建築物に吹き付ける風によって建築物の周辺に発生するカルマン渦による風圧変動の周期を建築物の固有振動数から外すように、突起部の壁面からの突出量を調節してもよい。また、無風等、風の強さが所定値未満の場合には、突起部を壁面内に収容してもよい。
【0009】
例えば、本発明は、
建築物の壁面構造であって、
前記建築物に吹き付ける風の進行方向に対して前記建築物の左右両側の壁面に、前記風によって前記建築物の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、前記風の進行方向に対して前記建築物の左右両側における風圧変動の周期を短くする凹凸構造が設けられており、当該凹凸構造を形成する突起部の前記壁面からの突出量は調節可能であり、
前記凹凸構造が設けられた前記壁面を複数に分割することにより得られるエリア毎に、前記建築物に吹き付ける風の風速を計測する風速計が設けられており、
前記エリア毎に、当該エリアに対応して設けられた前記風速計による測定結果が所定値未満の場合に、当該エリアに属する前記突起部を前記壁面内に収容する
ことを特徴とする建築物の壁面構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建築物に吹き付ける風の進行方向に対して建築物の左右両側の壁面に設けた凹凸構造により、建築物の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、風の進行方向に対して建築物の左右両側における風圧変動の周期を短くし、この風圧変動の周期を高層ビル等の建築物の固有振動数から遠ざけて、ロッキング現象の発生を抑制することができる。また、風圧変動の振幅を小さくすることができる。これにより、高層ビル等の建築物に好適な風揺れ抑制技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)、
図1(B)、および
図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る壁面構造1が適用された建築物2の正面図、側面図、および上面図である。
【
図2】
図2は、表1に示す条件にて実施した気流シミュレーションによって算出された、風向Nに対して建築物2の左右両側における風圧変動Vのグラフを示す図である。
【
図3】
図3は、建築物2のロッキング現象の数値計算モデルを示す図である。
【
図4】
図4は、建築物2に凹凸構造1を設けた場合と設けない場合とのそれぞれについて、
図3に示す数値計算モデルを用いて数値計算した建築物2の振動変位のグラフを示す図である。
【
図5】
図5(A)および
図5(B)は、風揺れ抑制機構3を説明するための図である。
【
図6】
図6(A)および
図6(B)は、風揺れ抑制機構3の第1実施例を説明するための図である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、風揺れ抑制機構3の第2実施例を説明するための図である。
【
図8】
図8(A)および
図8(B)は、風揺れ抑制機構3の第3実施例を説明するための図である。
【
図9】
図9(A)および
図9(B)は、風揺れ抑制機構3の第4実施例を説明するための図である。
【
図10】
図10(A)および
図10(B)は、風揺れ抑制機構3の第5実施例を説明するための図である。
【
図11】
図11(A)および
図11(B)は、風揺れ抑制機構3の第6実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1(A)、
図1(B)、および
図1(C)は、本実施の形態に係る壁面構造1が適用された建築物2の正面図、側面図、および上面図である。ここでは、風上に位置する壁面20aを正面としている。
【0015】
建築物2は、高層ビル等の垂直方向に細長い直方体形状の建築物であり、図示するように、この建築物2に吹き付ける風の進行方向(風向N)に対して左右両側の壁面20b、20c(以下、単に壁面20とも呼ぶ)に、壁面構造としての凹凸構造1が設けられている。
【0016】
凹凸構造1は、壁面20から突出する複数の突起部10を壁面20に規則的に配置することにより構成される。ここでは、複数の突起部10を壁面に千鳥状に配置している。
【0017】
風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに設けられた凹凸構造1により、建築物2の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、風向Nに対して建築物2の左右両側における風圧変動Vの周期を短くし、これにより、この風圧変動Vの周期を建築物2の固有振動数から遠ざけて、ロッキング現象の発生を抑制することができる。また、風圧変動Vの振幅を小さくすることができる。
【0018】
本発明者は、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられている場合と、凹凸構造1が設けられていない場合(すなわち、壁面20b、20cが平坦面の場合)と、のそれぞれについて、下記の表1に示す条件にて気流シミュレーションを実施し、風向Nに対して建築物2の左右両側における風圧変動Vを算出した。
【0019】
【0020】
図2は、表1に示す条件にて実施した気流シミュレーションによって算出された、風向Nに対して建築物2の左右両側における風圧変動Vのグラフを示す図である。
【0021】
図2において、縦軸は、風向Nに対して建築物2の左右両側における壁面20b、20c間の圧力差(Pa)であり、風圧変動Vに該当し、横軸は、時間(s)である。また、実線のグラフ200は、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられている場合の気流シミュレーションの結果から算出した風圧変動Vを示すグラフであり、点線のグラフ201は、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられていない場合(すなわち、壁面20b、20cが平坦面の場合)の気流シミュレーションの結果から算出した風圧変動Vを示すグラフである。
【0022】
図示するように、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられている場合、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられていない場合に比べて、風圧変動Vの周期が短くなっており、前者は平均6.53秒、後者は平均8.61秒であった。また、前者は、後者に比べて風圧変動Vの振幅も小さくなっている。
【0023】
つぎに、本発明者は、気流シミュレーションの結果から算出した風圧変動Vのデータを用いて、建築物2のロッキング現象を再現し、凹凸構造1によるロッキング現象抑制効果を検討した。
【0024】
図3に示すように、建築物2を単純化して、バネ21とダッシュポット22とからなるバネ・ダッシュポット系としてモデル化し、数値計算すると、建築物2の振動変位の時間的変化を得ることができる。なお、
図3において、kはバネ定数、cは減衰定数、そして、F(t)は、時間tにおける加振力である。
【0025】
図3において、
k=ω
2、F(t)=F
0cosβtとした場合、ωがおおよそβと等しく、かつcが小さいときに、建築物2の振動変位が時間的変化に対して不安定化すると考えられる。そこで、本発明者は、建築物2の固有振動数に対してロッキング現象を生じる風速およびバネ・ダッシュポッド条件を想定し、建築物2の壁面に
図2に示す風圧変動Vの差を加振力として与えて建築物2の振動変位を数値計算した。
【0026】
図4は、建築物2に凹凸構造1を設けた場合と設けない場合とのそれぞれについて、
図3に示す数値計算モデルを用いて数値計算した建築物2の振動変位のグラフを示す図である。
【0027】
図4において、縦軸は、建築物2の振動変位(任意スケール)であり、横軸は、時間(s)である。また、点線のグラフ203は、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられていない場合において、数値計算により再現されたロッキング現象下の振動変位を示すグラフである。また、実線のグラフ202は、数値計算により再現されたロッキング現象と同条件において、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1を設けた場合の振動変位を示すグラフである。
【0028】
図示するように、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられている場合、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20b、20cに凹凸構造1が設けられていない場合に比べて、建築物2の振動変位が大きく低減している。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、風向Nに対して建築物2の左右両側の壁面20a、20bに設けた凹凸構造1により、建築物2の周辺に発生するカルマン渦の形成を促進して、風向Nに対して建築物2の左右両側における風圧変動Vの周期を短くし、この風圧変動Vの周期を建築物2の固有振動数から遠ざけて、ロッキング現象を抑制することができる。また、風圧変動Vの振幅を小さくすることができる。これにより、高層ビル等の建築物2に好適な風揺れ抑制技術を実現できる。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、凹凸構造1を構成する突起部10の壁面20からの突出量Pが固定である場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。突起部10は、壁面20からの突出量Pが調節可能であってもよい。たとえば、建築物2に吹き付ける風の強さを測定する風速計を設け、この風速計の測定値が所定値以上である場合に、
図5(A)に示すように、ロッキング現象の抑制を期待できる長さ(突出量P)だけ突起部10を壁面20から突出させ、風速計の測定値が所定値未満の場合には、
図5(B)に示すように、突起部10を壁面20内に格納する風揺れ抑制機構3を、壁面20に規則的に複数配置することにより、建築物2に吹き付ける風の強さが所定値以上である場合にのみ、壁面20に凹凸構造1を形成するようにしてもよい。
【0031】
風揺れ抑制機構3を用いて突出部10の壁面20からの突出量Pを調節可能とすることにより、様々な風の状況に柔軟に対応可能となるとともに、固有振動数の異なる様々な建築物2にも対応可能となる。また、無風時等、ロッキング現象が発生する可能性が低い場合には、突起部10を壁面20内に格納することで、建築物2のデザイン性への影響を小さくすることができる。
【0032】
つぎに、風揺れ抑制機構3の実施例について説明する。
【0033】
[第1実施例]
図6(A)および
図6(B)は、風揺れ抑制機構3の第1実施例を説明するための図である。
【0034】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、板状部材で構成された突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、突起部10の壁面20に対して垂直な方向の移動をガイドするレール31と、軸心を壁面20に対して垂直な方向に向けて突起部10に設けられたねじ孔部32と、ねじ孔部32に螺合した送りねじ部33と、収容部30の内壁に取り付けられ、送りねじ部33を回転駆動するモータ34と、を備えている。
【0035】
モータ34によって送りねじ部33を回転駆動することより、送りねじ部33とねじ孔部32との螺合により、突起部10がレール31にガイドされて移動する。これにより、
図6(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図6(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0036】
[第2実施例]
図7(A)および
図7(B)は、風揺れ抑制機構3の第2実施例を説明するための図である。
【0037】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、板状部材で構成された突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、突起部10の壁面20に対して垂直な方向の移動をガイドするレール31と、壁面20に対して垂直な方向に沿って突起部10に設けられたラックギア部35と、ラックギア部35と噛合うピニオンギア部36と、図示していないが、収容部30の内壁に取り付けられ、ピニオンギア部36を回転駆動するモータと、を備えている。
【0038】
不図示のモータによってピニオンギア部36を回転駆動することより、ピニオンギア部36とラックギア部35との噛合いにより、突起部10がレール31にガイドされて移動する。これにより、
図7(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図7(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0039】
[第3実施例]
図8(A)および
図8(B)は、風揺れ抑制機構3の第3実施例を説明するための図である。
【0040】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、板状部材で構成された突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、突起部10の壁面20に対して垂直な方向の移動をガイドするレール31と、収容部30内において、壁面20に対して平行に設置されたレール37上を移動するスライダ部38と、一方の端部がヒンジ39aを介して突起部10に回転自在に取り付けられ、他方の端部がヒンジ39bを介してスライダ部38に回転自在に取り付けられたロッド40と、を備えている。
【0041】
スライダ部38がレール37上を移動することにより、突起部10がロッド40を介してスライダ部38に牽引され、レール31にガイドされて移動する。これにより、
図8(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図8(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0042】
[第4実施例]
図9(A)および
図9(B)は、風揺れ抑制機構3の第4実施例を説明するための図である。
【0043】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、一対の板状部材をヒンジ11で連結することにより折り畳み自在に構成された突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、突起部10の折り畳みを制御する折り畳み制御機構4と、を備えている。ここで、折り畳み制御機構4は、収容部30内において、壁面20に対して平行に設置されたレール41と、レール41上を移動する一対のスライダ部42と、突起部10の両端部を一対のスライダ部42に回転可能に連結する一対のヒンジ43と、を有する。
【0044】
一対のスライダ部42が互いに近づく方向あるいは離れる方向にレール41上を移動することにより、突起部10の折り畳みが制御され、ヒンジ11が壁面20に対して垂直な方向に移動する。これにより、
図9(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図9(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0045】
[第5実施例]
図10(A)および
図10(B)は、風揺れ抑制機構3の第5実施例を説明するための図である。
【0046】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、パンタグラフ状の突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、突起部10の折り畳みを制御する折り畳み制御機構5と、を備えている。ここで、折り畳み制御機構5は、突起部10を挟んで対向配置された一対の伸縮ロッド50を有する。伸縮ロッド50は、一方の端部がヒンジ51aを介して収容部30に取り付けられ、他方の端部がヒンジ51bを介してパンタグラフ状の突起部10の関節部分に取り付けられている。
【0047】
一対の伸縮ロッド50が伸縮することにより、パンタグラフ状の突起部10の折り畳みが制御され、その頂部12が壁面20に対して垂直な方向に移動する。これにより、
図10(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図10(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0048】
[第6実施例]
図11(A)および
図11(B)は、風揺れ抑制機構3の第6実施例を説明するための図である。
【0049】
図示するように、本実施例の風揺れ抑制機構3は、板状部材で構成された突起部10と、壁面20に設けられ、突起部10を壁面20から突出自在に収容する収容部30と、回転制御機構6と、を備えている。突起部10は、一方の端部がヒンジ13を介して収容部30に取り付けられており、このヒンジ13を回転軸として回転可能である。回転制御機構6は、一方の端部がヒンジ61aを介して収容部30に取り付けられ、他方の端部がヒンジ61bを介して突起部10に取り付けられた伸縮ロッド60を有する。
【0050】
伸縮ロッド60が伸縮することにより、突起部10がヒンジ13を回転軸として回転する。これにより、
図11(A)に示すように、突起部10を収容部30内に完全に収容したり、
図11(B)に示すように、突起部10を壁面20から所望の突出量Pだけ突出させたりすることができる。
【0051】
なお、上述の風揺れ抑制機構3が複数配置された壁面20を複数に分割することにより得られるエリア毎に、このエリアにおける風の強さを測定する風速計を設けてもよい。そして、エリア毎に、このエリアに対応して設けられた風速計の測定値に応じて、このエリアに属する風揺れ抑制機構3を動作させてもよい。例えば、風速計の測定値が所定値以上である場合に、この風速計に対応するエリアに属する風揺れ抑制機構3各々を、突起部10を壁面20から突出させるように動作させ、所定値未満の場合には、突起部10を壁面20内に格納するように動作させてもよい。
【0052】
このようにすることにより、様々な風の状況にエリア毎に対応することが可能となるので、低層階と高層階とで風の強さが異なる高層ビル等において特に効果的である。
【符号の説明】
【0053】
1:凹凸構造 2:建築物
3:風揺れ抑制機構 4:折り畳み制御機構
5:折り畳み制御機構 6:回転制御機構
10:突起部 11:ヒンジ 13:ヒンジ
20、20a~20c:壁面 21:バネ
22:ダッシュポット 30:収容部
31:レール 32:ねじ孔部 33:送りねじ部
34:モータ 35:ラックギア部 36:ピニオンギア部
37:レール 38:スライダ部 39a、39b:ヒンジ
40:ロッド 41:レール 42:スライダ部
43:ヒンジ 50:伸縮ロッド 51a、51b:ヒンジ
60:伸縮ロッド 61a、61b:ヒンジ