(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】貯水装置
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20240530BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20240530BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20240530BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
E03F5/04 A
A01G9/02 E
A01G27/02 B
(21)【出願番号】P 2020040434
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226068
【氏名又は名称】日亜鋼業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道盛 武彦
(72)【発明者】
【氏名】有門 和広
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235344(JP,A)
【文献】特開2017-150212(JP,A)
【文献】特開平03-161620(JP,A)
【文献】特開平06-343349(JP,A)
【文献】特開2010-150826(JP,A)
【文献】特開2009-235872(JP,A)
【文献】特開2013-227849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00
E03F 5/04
A01G 9/02
A01G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留するタンクを有し、地上に設置される貯水器と、
集水管と該集水管に接続されるポンプとを含み、該ポンプにより水路から前記タンク内に集水する集水機構と、
排水管と該排水管を開閉する開閉機構とを含み、前記タンクから排水する排水機構と
、 前記タンクに設けられ、前記タンク内に堆積した土砂を外部に排出する排砂口と、
前記集水機構と前記排水機構とを制御する制御部と
を備え
、
前記排水機構は、前記タンクに貯留する水を前記水路に排出する機構であり、
前記排水管を介して、前記タンクに貯留する水は前記水路へ排出される
ることを特徴とする貯水装置。
【請求項2】
水を貯留するタンクを有し、地上に設置される貯水器と、
集水管と該集水管に接続されるポンプとを含み、該ポンプにより水路から前記タンク内に集水する集水機構と、
排水管と該排水管を開閉する開閉機構とを含み、前記タンクから排水する排水機構と、
前記集水機構と前記排水機構とを制御する制御部と、
前記貯水器に設けられ、雨滴を検知する雨滴検知センサ
とを備え、
前記制御部は、
前記雨滴検知センサが雨滴を検知した時、前記ポンプを作動させ、
前記雨滴検知センサが雨滴を検知しない時、前記開閉機構を開状態にすることを特徴とする貯水装置。
【請求項3】
請求項1
又は2において、
隣り合うように配置される複数の前記貯水器を備え、
隣り合う前記貯水器のタンク同士が互いに連通するように接続管により接続されることを特徴とする貯水装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1つにおいて、
前記水路の水位を検知する水位検知部とをさらに備え、
前記制御部は、前記水位検知部が第1水位を検知した時、前記ポンプを作動させることを特徴とする貯水装置。
【請求項5】
請求項
4において、
前記制御部は、前記水位検知部が第1水位を検知しなくなった時、前記開閉機構を開状態にすることを特徴とする貯水装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つにおいて、
前記貯水器は、前記タンクの上面に、植物を生育するプランタを備えることを特徴とする貯水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨などにより増水した水路内の水を貯留するための貯水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市型災害として台風やゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な集中豪雨によって、道路が冠水する被害が増加傾向にある。道路脇には、雨水を排出する側溝が設けられている。しかし、一時的に大量に降った雨水は、地表面(コンクリート面やアスファルト面)などを流れ、側溝に集中する。その結果、排水が間に合わず、側溝から雨水が溢れることによって道路が冠水する。
【0003】
特許文献1には、集中豪雨による道路の冠水を防止する洪水防止側溝構造が開示されている。この洪水防止側溝構造は、側溝と、該側溝の直下に設けられた貯水桝ブロックとを備える。この貯水桝ブロックは、側溝と連通しており、側溝内の水が該貯水桝ブロックに流れ込む。また、貯水桝ブロックの下部には排水部が設けられ、貯水桝ブロックに貯留された水は該排水部から地中に排出される。このようにして、洪水防止側溝構造は、道路の冠水を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の貯水桝ブロックは、地中に設置される。そのため、集中豪雨における冠水を防止できるほどの貯水桝ブロックを地中に設置しようとすると、多大な作業負担と設置コストを要する。また、貯水桝ブロックに貯水された水は地中に排出されるため、短時間で排水できない。このことにより、貯水桝ブロック内の水が十分に排出されていない状態で、集中豪雨が発生すると貯水桝ブロックの機能を発揮できない。さらには、側溝内の水には土砂も含まれるため、貯水桝ブロック内にはその土砂が堆積していく。貯水桝ブロックは、地中に設置されるため、堆積した土砂と取り除くことは困難である。堆積された土砂を取り除けない場合、貯水桝ブロック内で占める土砂の体積が増え、貯水可能な容積が減少する。
【0006】
本発明は、かかる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業負担及び設置コストを抑え、雨水による道路の冠水を抑制できる貯水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明では、降雨時に排水路(側溝)を流れる雨水を汲みあげて一時的に貯留するタンクを地上に設けるようにした。
【0008】
具体的に、第1の発明は、
貯水装置であって、
水を貯留するタンクを有し、地上に設置される貯水器と、
集水管と該集水管に接続されるポンプとを含み、該ポンプにより水路から前記タンク内に集水する集水機構と、
排水管と該排水管を開閉する開閉機構とを含み、前記タンクから排水する排水機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、例えば、雨水が道路脇の側溝(水路)に集中することによって、該側溝の水位が急激に上昇しても、該側溝の雨水をポンプがタンク内に汲み上げることによって、側溝内の雨水の一部を一時的に集水できる。このことにより、局所的な集中豪雨が発生しても道路の冠水を抑制できる。
【0010】
また、排水機構によりタンク内の水を排水できる。このことにより、タンク内が満水であっても速やかに排水できる。その結果、短期間のうちに繰り返し発生する集中豪雨にも対応できる。
【0011】
また、貯水器は地面に設置される。そのため、貯水器を地中に設置する場合と比較して、作業負担は少なく、かつ、設置コストも抑えることができる。ここで地面とは、車道または車道脇の歩道などのアスファルト面およびコンクリート面を含む。さらに、簡単かつ速やかに貯水器を設置できるため、冠水被害が起きる地域に迅速に貯水器を設置できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
隣り合うように配置される複数の前記貯水器を備え、
隣り合う前記貯水器のタンク同士が互いに連通するように接続管により接続されることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、隣り合う貯水器のタンク内の水が互いに流出入できる。このことにより、集水機構及び排水機構は、複数の前記貯水器のうちいずれか1つに設置できる。そのため、貯水装置の部品点数の増加を抑えることができる。また、設置する貯水器の数を調節することによって、貯水装置の貯水量を設定できる。そのため、設置面積に応じた大きさの貯水器を製造する必要がない。このことにより、貯水器を規格化できるため、貯水装置を製造する作業負担及び製造コストを抑えることができる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記集水機構と前記排水機構とを制御する制御部と、
前記水路の水位を検知する水位検知部とをさらに備え、
前記制御部は、前記水位検知部が第1水位を検知した時、前記ポンプを作動させることを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、水位検知部が第1水位を検知すると、ポンプが作動する。このことにより、例えば、雨水により側溝内の水位が上昇して第1水位に達したことを水位検知部が検知すると、ポンプにより側溝内の雨水をタンク内に集水できる。その結果、道路の冠水を抑制できる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、
前記制御部は、前記水位検知部が第1水位を検知しなくなった時、前記開閉機構を開状態にすることを特徴とする
第4の発明では、例えば、雨が止み、水位検知部が第1水位を検知しなくなると、すなわち、側溝内の水位が第1水位よりも低くなると、開閉機構は開状態となる。このことにより、タンク内の水を排出できる。その結果、次の降雨に備えタンク内の水位を下げておくことができる。
【0017】
第5の発明は、第1または第2の発明において、
前記貯水器に設けられ、雨滴を検知する雨滴検知センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記雨滴検知センサが雨滴を検知した時、前記ポンプを作動させ、
前記雨滴検知センサが雨滴を検知しない時、前記開閉機構を開状態にすることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、例えば、降雨により雨滴検知センサが雨滴を検知すると、ポンプにより側溝内の雨水をタンク内に集水できる。一方、雨が止み雨滴検知センサが雨滴を検知しなくなると、タンク内の水を排出できる。
【0019】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、
前記貯水器は、前記タンクの上面に、植物を生育するプランタを備えることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、プランタに植物を植えることによって、貯水装置が設置されたエリアの景観を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば集中豪雨などにより、一時的に道路脇の水路の水位が上昇しても、水路内の雨水の一部を貯水装置のタンク内に貯留できる。このことにより、水路の水位上昇が抑えられるため、道路の冠水を抑制できる。また、貯水器は、地面に設置されるため、貯水装置の設置作業及び設置コストの負担を抑えることができる。また、貯水器がプランタを備える場合には、街に設置したとき町の美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯水装置が設置された状態の一部を縦断に表した斜視図である
【
図2】貯水装置を
図1のA方向から見た縦断面図である。
【
図3】コントローラと各種の機器との関係を示すブロック図である。
【
図4】コントローラによる集水機構及び排水機構の制御を示すフローチャートである。
【
図5】変形例1にかかる貯水装置の一部を示した図である
【
図7】変形例2にかかる貯水装置の貯水器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
《全体構成》
図1及び
図2に示すように、貯水装置1は、貯水部8、集水機構10、排水機構20、第1水位センサ15、第2水位センサ16及びコントローラ100を備える。貯水装置1は、地上に設置される。具体的に、貯水装置1は、道路脇の側溝Wに沿って、地上である地面Gに配置される。ここで、地面Gとは、アスファルト面又はコンクリート面等である。貯水装置1は、降雨により側溝W内の水位が上昇したとき、集水機構10により側溝W内の水を汲み上げ、貯水部8に一時的に貯留する。貯水装置1は、側溝W内の水位が下がると、排水機構20によりタンク3内の水を側溝Wに排出する。
【0025】
〈貯水部〉
貯水部8は、複数の貯水器2,2,…により構成される。複数の貯水器2,2,…は隣り合うように一列に配置される。隣り合う貯水器2,2は、接続管4により互いに接続される。複数の貯水器2,2,…のうち、一端に配置される第1貯水器2aには集水機構10が設けられ、他端に配置される第2貯水器2bには排水機構20が設けられる。各貯水器2は、ケーシング6と、タンク3と、プランタ5と、補強部材14とを備える。
【0026】
ケーシング6は、タンク3とプランタ5とを収容する部材である。ケーシング6は、直方体の形状であり、ケーシング6の上面は開口している。ケーシング6には、タンク3に形成される各種の孔に一致する位置に貫通孔が設けられる。
【0027】
タンク3は、水を貯留する直方体の容器である。タンク3の上面は開口している。タンク3は、ケーシング6の底面に配置される。タンク3には、連通口13、排砂口19、及びオーバーフロー口9が形成される。第1貯水器2aが備えるタンク3は、第1タンク3aである。第1タンク3aは、集水口17を含む。第2貯水器2bが備えるタンク3は、第2タンク3bである。第2タンク3bは、排水口18と後述する第2水位センサ16とを含む。
【0028】
連通口13は、隣り合うタンク3,3において、タンク3,3同士が向かい合う第1側面7に1つずつに設けられる。連通口13は、第1側面7の下端寄りに設けられる。隣り合うタンク3,3のうち、一方のタンク3の連通口13には接続管4の一端が接続される。該接続管4の他端は、他方のタンク3の連通口13に接続される。すなわち、隣り合うタンク3,3同士は、互いに連通するように接続管4により接続されている。このように、隣り合う貯水器2,2のタンク3,3内の水は互いに流出入する。
【0029】
集水口17は、第1タンク3aの第1側面7に対向する側面に設けられる。集水口17は、集水管11が接続される穴である。
【0030】
排水口18は、第2タンク3bの第1側面7に対向する側面に設けられる。排水口18は、該側面の下端寄りに設けられる。排水口18は、排水管21が設けられる穴である。
【0031】
排砂口19は、各タンク3の一側面の下部寄りに設けられる。排砂口19は、各タンク3内に堆積した土砂を外部に排出する穴である。排砂口19は、通常は閉鎖されており、土砂を排出する場合等に、開放されるように構成される。
【0032】
オーバーフロー口9は、各タンク3の第1側面7の上端に設けられる。オーバーフロー口9は、常時開口されている。タンク3内が満水となっても、オーバーフロー口9から排水される。
【0033】
プランタ5は、植物を生育するための容器である。プランタ5は、タンク3の開口面を覆うように設置される。すなわち、プランタ5は、ケーシング6に収納された状態では、タンク3の上に重なるように設置される。プランタ5の底面には、下方へ突出した三角錐状の凸部31が複数設けられる。凸部31は網状に形成されたメッシュ部32を有する。プランタ5は、プランタ5内の土がメッシュ部32を介してタンク3内の水を吸収できるように構成される。
【0034】
補強部材14は、ケーシング6を補強する金属性部材である。補強部材14は、網状に形成される。補強部材14は、ケーシング6の周壁を囲むように設けられる。補強部材14の網目の形状により、貯水器2の意匠性が向上する。また、プランタ5に植生する植物がつる性植物である場合、補強部材に巻き付いて成長するためケーシング6の意匠が向上する。
【0035】
〈集水機構〉
集水機構10は、集水管11とポンプ12とを備える。集水管11の一端は、集水口17に接続される。集水管11の他端には、ポンプ12が接続される。ポンプ12は、側溝W内の底面に配置される。
【0036】
〈排水機構〉
排水機構20は、排水管21とバルブ22とを備える。
【0037】
排水管21の一端は排水口18に接続される。排水管21の他端は、側溝W内に配置される。
【0038】
バルブ22は、排水管21を開閉する開閉機構である。バルブ22は、排水管21に設けられる。バルブ22は電磁弁により構成される。バルブ22の開閉は、後述するコントローラ100により制御される。具体的に、バルブ22が開状態のとき、排水管21は開口されるため、貯水装置1は、タンク3内から排水できる。一方、バルブ22が閉状態のとき、排水管21は閉鎖されるため、貯水装置1は、タンク3内に貯水できる。
【0039】
〈水位センサ〉
第1水位センサ15及び第2水位センサ16は、水位を検知するセンサである。
【0040】
第1水位センサ15は、側溝W内の水位を検知する水位検知部である。第1水位センサ15は、側溝W内の底面からの第1水位の高さ位置に設けられる。ここで第1水位は、任意の高さに設定される。第1水位センサ15は、静電容量式のレベルセンサである。側溝W内の水位が上昇して、第1水位センサ15の電極が水に浸かると、第1水位センサ15の静電容量値は変化する。この変化により、第1水位センサ15は、コントローラ100に第1水位を検知したことを示す信号を送信する。側溝W内の水位が下降して、第1水位センサ15の電極が第1水位より上方に位置したとき、第1水位センサ15の静電容量値は変化する。この変化により、第1水位センサ15は、コントローラ100に第1水位を検知しなくなったことを示す信号を送信する。
【0041】
第2水位センサ16は、第2タンク3b内の水位を検知する。第2水位センサ16は、第2タンク3b内の底面から第2水位の高さ位置にある側面に設けられる。第2水位は、タンク内の比較的上端に近い高さ位置である。第2水位センサ16は、静電容量式のレベルセンサである。第2タンク3b内の水位が第2水位まで上昇して、第2水位センサ16の電極が水に浸かると、第2水位センサ16の静電容量値は変化する。この変化により、第2水位センサ16は、コントローラ100に第2水位を検知したことを示す信号を送信する。
【0042】
〈コントローラ〉
コントローラ100は、集水機構10と排水機構20とを制御する制御部である。
図3に示すように、コントローラ100は、第1水位センサ15及び第2水位センサ16からの信号を受信することにより、ポンプ12の運転/非運転(すなわち、ポンプ12の運転のON/OFF)、及びバルブ22の開閉の制御を行う。
【0043】
《集水機構及び排水機構の制御》
次に貯水装置1の集水機構10及び排水機構20の制御について、
図4を参照して具体的に説明する。
【0044】
ステップST1では、コントローラ100は、ポンプ12の電源がONであるか否かを判定する。ポンプ12の電源がONであるとき、ステップST2が行われる。ポンプ12の電源がONでないとき、集水機構10及び排水機構20の制御は終了する。
【0045】
ステップST2では、コントローラ100は、第1水位センサ15が側溝W内の水位を検知したか否かを判定する。ステップST2において、第1水位センサ15が側溝W内の水を検知した時、すなわち、側溝W内の水面が第1水位以上になった時、ステップST4が行われる。ステップST2において、第1水位センサ15が側溝W内の水を検知しない時、すなわち、側溝W内の水面が第1水位未満である時、ステップST3が行われる。
【0046】
ステップST3では、コントローラ100は、ポンプ12をOFFにすると共に、バルブ22を開状態にする。このことにより、タンク3,3,…内の水は側溝W内に排出される。側溝W内の水位は第1水位未満であるため、タンク3,3,…内の水が側溝W内に流れ込んでも、側溝Wから水が溢れにくい。また、タンク3,3,…内の水を排出することにより、次回発生する集中豪雨等に備えることができる。
【0047】
ステップST4では、コントローラ100は、第2水位センサ16が第2タンク3b内の水を検知したか否かを判定する。第2水位センサ16が、第2タンク3b内の水を検知した時、すなわち、第2タンク3b内の水位が第2水位以上である時、ステップST5が行われる。第2水位センサ16が、第2タンク3b内の水を検知しない時、すなわち、第2タンク3b内の水位が第2水位未満である時、ステップST6が行われる。
【0048】
ステップST5では、コントローラ100は、ポンプ12をOFFにすると共に、バルブ22を閉状態にする。このことにより、タンク3,3,…内に水は流入しない。その結果、タンク3,3,…から水が溢れることを抑制できる。その後、ステップ が行われる。
【0049】
ステップST6では、コントローラ100は、ポンプをONにすると共に、バルブ22を閉状態にする。ポンプ12は、側溝W内の水の汲み上げを開始する。汲み上げられた水は、集水管11を介して第1タンク3a内に流入する。第1タンク3a内に流入した水は、接続管4を介して第1貯水器2aと隣り合う貯水器2のタンク3内に流入する。さらに、該貯水器2と隣り合う貯水器2のタンク3内に接続管4を介して水が流入する。このように、接続管4,4,…を介して、貯水装置1のすべてのタンク3,3,…内に水が貯留される。その後、ステップST2が行われる。
【0050】
ステップST7では、コントローラ100は、ポンプ12の電源がOFFであるか否かを判定する。ポンプ12の電源がOFFである時、集水機構10及び排水機構20の制御は終了する。ポンプ12の電源がOFFでない時、ステップST2が行われる。
【0051】
-実施形態の効果-
実施形態では、貯水装置1は、水を貯留するタンク3を有し、地面Gに設置される貯水器2と、集水管11と該集水管11に接続されるポンプ12とを含み、該ポンプ12により水路から前記タンク3内に集水する集水機構10と、排水管21と該排水管21を開閉する開閉機構(バルブ22)とを含み、前記タンク3から排水する排水機構20とを備える。
【0052】
この形態では、集中豪雨により雨水が道路脇の水路である側溝Wに集中した結果、該側溝Wの水位が急激に上昇しても、ポンプ12によって該側溝W内の水をタンク3内に貯留できる。このことにより、局所的な集中豪雨が発生しても道路の冠水を抑制できる。
【0053】
加えて、開閉機構であるバルブ22を開状態にすることにより、タンク3内が満水の時、タンク3内の水を速やかに排出できる。そのため、短期間のうちに繰り返し発生する集中豪雨にも対応できる。また、排砂口19だけなく排水管21からもタンク3内に堆積した土砂を排出できる。このことにより、タンク3内の土砂を取り除く作業負担を軽減できる。さらには、タンク3内に土砂が堆積することにより、タンク3内の貯水許容量が減ることを抑制できる。
【0054】
加えて、貯水器2は地面Gに設置される。そのため、地面を掘って、貯水器2を地中に設置する場合と比較して、作業負担と設置コストを抑えることができる。このことにより、冠水被害が起きる地域に迅速に対応できる。ここで地面Gとは、道路または道路脇の歩道などのアスファルト面およびコンクリート面を含む。
【0055】
実施形態では、貯水装置1は、隣り合うように配置される複数の前記貯水器2を備え、隣り合う前記貯水器2,2のタンク3,3同士が互いに連通するように接続管4により接続される。
【0056】
この形態では、隣り合う貯水器2,2のタンク3,3内の水が互いに流出入できる。そのため、ポンプ12及びバルブ22は、複数の貯水器2,2,…のうちいずれか1つに設置できる。その結果、貯水装置1の部品点数の増加を抑えることができる。また、設置する貯水器2の数を調節することによって、貯水装置1の貯水量を設定できる。そのため、貯水装置1を設置する場所や面積に基づいて貯水器2を設計する必要がない。すなわち、貯水器2を規格化できるため、貯水装置1を製造する作業負担及び製造コストを抑えることができる。
【0057】
実施形態では、貯水装置1は、前記集水機構10と前記排水機構20とを制御する制御部(コントローラ100)と、前記水路の水位を検知する水位検知部(第1水位センサ15)とをさらに備え、前記制御部(コントローラ100)は、前記水位検知部(第1水位センサ15)が第1水位を検知した時、前記ポンプ12を作動させることを特徴とする。
【0058】
この形態では、水位検知部である第1水位センサ15は側溝W内に設置される。第1水位センサ15は、側溝W内の第1水位を検知する。第1水位は、該水位センサの取り付け高さの位置である。第1水位センサ15が第1水位を検知すると、制御部であるコントローラ100はポンプ12の運転をONにする。このことにより、側溝W内の水位が第1水位を超えることを抑制できる。その結果、道路の冠水を抑制できる。
【0059】
加えて、第1水位の高さ位置を自由に設定できる。すなわち、第1水位を比較的に低い高さ位置に設定することで、集中豪雨による冠水を早期に抑制できる。一方、第1水位を比較的高い高さ位置に設定することで、ポンプ12の運転時間を抑えることができる。このことにより、ポンプ12の運転により電力の消費量を抑えることができる。その結果、ポンプ12に供給される電力が交換式のバッテリーから供給される場合、該バッテリーの交換頻度を抑えることができ、ひいては集中豪雨時にバッテリーの電池残量がなくなっているという事態を回避できる。
【0060】
実施形態では、貯水装置1の前記制御部(コントローラ100)は、前記水位検知部(第1水位センサ15)が第1水位を検知しなくなった時、前記開閉機構(バルブ22)を開状態にすることを特徴とする
この形態では、側溝W内の水位が、第1水位を下回ると、コントローラ100は、バルブ22を開状態にする。このことにより、タンク3内の水を排出できる。その結果、次の降雨に備えタンク3内の水位を下げておくことができる。
【0061】
実施形態では、貯水装置1は、前記タンク3の上面に、植物を生育するプランタ5を備えることを特徴とする。
【0062】
この形態では、プランタ5に植物を植えることによって、貯水装置1が設置されたエリアの美観を向上できる。すなわち、貯水装置1は、新たな都市機能として、集中豪雨による冠水被害を抑制し、かつ、街の景観を向上させる。
【0063】
《変形例1》
図5に示すように変形例1の貯水装置1は、雨滴検知センサ30を備える。雨滴検知センサ30は、雨水の水滴を検知するセンサである。雨滴検知センサ30は、ケーシング6の外面に設けられる。変形例1の貯水装置1は、タンク3内の水位を検知する第2水位センサ16を有さない。以下では上記実施例と異なる点について、
図6を参照して具体的に説明する。
【0064】
ステップST11では、コントローラ100は、ポンプ12の電源がONであるか否かを判定する。ポンプ12の電源がONであるとき、ステップST12が行われる。ポンプ12の電源がONでないとき、集水機構10及び排水機構20の制御は終了する。
【0065】
ステップST12では、コントローラ100は、雨滴検知センサ30が雨滴を検知したか否かを判定する。雨滴検知センサ30が雨滴を検知した時、すなわち、降雨が発生した時、ステップST14が行われる。雨滴検知センサ30が、雨滴を検知しない時、すなわち、降雨が発生していない時は、ステップST13が行われる。
【0066】
ステップST13では、コントローラ100は、ポンプ12をOFFにすると共に、バルブ22を開状態にする。このことにより、タンク3,3,…内に水が溜まっていた場合、該水は側溝W内に排出される。タンク3,3,…内の水を排出することにより、次回発生する集中豪雨等に備えることができる。
【0067】
ステップST14では、コントローラ100は、所定の時間を経過した否かを判定する。所定の時間とは、任意に定められる時間であり、例えば、側溝W内の雨水が所定の水位まで上昇するまでの予測時間である。所定の水位とは、任意に定められる側溝W内の水位である。予測時間は、例えば一定時間当たりの降水量に基づいて算出される。所定の時間を経過した時、ステップST15が行われる。所定の時間を経過していない時、ステップST14が再度行われる。
【0068】
ステップST15では、コントローラ100は、雨滴検知センサ30が雨滴を検知したか否かを判定する。雨滴検知センサ30が雨滴を検知した時、すなわち、所定の時間を経過するまで降雨が継続している場合、ステップST16が行われる。雨滴検知センサ30が、雨滴を検知しない時、すなわち、所定の時間経過するまでに雨が止んだ場合、ステップST13が行われる。
【0069】
ステップST16では、コントローラ100は、ポンプをONにすると共に、バルブ22を閉状態にする。ポンプ12は、側溝W内の水の汲み上げを開始する。汲み上げられた水は、集水管11を介して第1タンク3a内に流入し、接続管4,4,…を介して、貯水装置1のすべてのタンク3,3,…内に貯留される。その後、ステップST12が行われる。
【0070】
ステップST17では、コントローラ100は、ポンプ12の電源がOFFであるか否かを判定する。ポンプ12の電源がOFFである時、集水機構10及び排水機構20の制御は終了する。ポンプ12の電源がOFFでない時、ステップST12が行われる。
【0071】
この変形例によれば、降雨が所定の時間継続した時、ポンプ12が作動しタンク3に側溝W内の雨水を集水できる。そのため、突発的な集中豪雨に対しても迅速に対応できる。その結果、道路の冠水を抑制できる。
【0072】
加えて、雨滴検知センサ30が雨滴を感知しない時、すなわち雨が止んだ時、バルブ22が開状態となりタンク3内の水が排出される。このことにより、次の降雨に備えタンク3内の水位を下げておくことができる。
【0073】
加えて、雨滴検知センサ30のみにより、ポンプ12とバルブ22を制御できる。そのため、貯水器2に取り付ける部品点数が少なくすることができる。その結果、製造コスト及び設置作業の負担を抑えることができる。
【0074】
《変形例2》
図7に示すように変形例2の貯水装置1の貯水器2は、ケーシング6とタンク3とプランタ5とが一体に形成される。具体的に、貯水器2の内部には、中空部24が形成される。ケーシング6の上面には、凹所25が形成される。中空部24は、雨水を貯水するタンクに相当する。凹所25は、植物を植生するプランタに相当する。上記実施形態と同様に、変形例2の貯水装置1では、複数の貯水器2,2,…が隣り合うように配置され、隣り合う貯水器2,2は接続管4により互いに接続される。変形例2の貯水器2には、連通口13、オーバーフロー口9、及び排砂口19が設けられる。一端に配置される貯水器2には、集水口17が設けられる。他端に配置される貯水器2には、排水口18が設けられる。凹所25の底面には、凸部31が形成される。凹所25内に植生する植物は、凸部31から中空部24内に貯留された雨水を給水する。
【0075】
この変形例の貯水器2では、タンクに相当する中空部24とプランタに相当する凹所25とが一体に形成されるため、製造コストを抑えることができる共に、製造工程を簡易化できる。このことにより、製造期間を短くできるため、集水装置1が必要な地域に迅速に対応できる。さらに、一体に形成されるため、貯水器2の軽量化を実現できる。このことにより、複数の貯水器2,2,…の搬送作業の作業負担を軽減できる。
《その他の実施形態》
上記実施形態及び上記変形例では、貯水装置1は、複数の貯水器2を備えているが、これに限定されない。貯水装置1は、貯水器2を1つのみ備えていてもよい。
【0076】
上記実施形態及び上記変形例では、複数の貯水器2,2,…が一列に配され、一端に配置される貯水器2が1つの集水機構10を備え、他端に配置される貯水器2が1つの排水機構20を備えるが、これに限定されない。集水機構10及び排水機構20は、複数の貯水器2のうち少なくとも1つに備えていればよい。また、集水機構10及び排水機構20は、同一の貯水器2に備えていてもよい。
【0077】
上記実施形態及び上記変形例では、複数の貯水器2,2,…が一列に配されるが、これに限定されない。例えば、複数の貯水器2,2,…は、十字型に配列されてもよい。この場合、交差する位置にある貯水器2のタンク3には、各側面に接続管4が接続される。
【0078】
上記実施形態及び上記変形例では、ケーシング6は直方体に形成されているが、これに限定されない。例えば、四角錘台、楕円錘台または台形柱のような形状であってもよい。
【0079】
上記実施形態及び上記変形例では、凸部31の形状は、三角錐に限定されない。プランタ5の底面からタンク3内へ突出する形状であればよく、円錐、四角錘又は円柱のような形状であってもよい。
【0080】
上記実施形態及び上記変形例では、第1水位センサ15は静電容量式であるが、これに限定されない。第1水位センサ15は、例えばガイドパルス式のレベルセンサであってもよい。また、第1水位センサ15は、例えば、加速度センサであってもよい。この場合、加速度センサは、側溝W内に取り付けられる。側溝W内の水位が加速度センサの取り付け高さ位置まで上昇し、側溝W内の水が加速度センサに触れることによって、該加速度センサはコントローラ100へ信号を送信する。この信号を受信したコントローラ100は、ポンプ12を作動させる。
【0081】
上記実施形態及び上記変形例では、コントローラ100は、第1水位センサ15及び第2水位センサ16により、ポンプ12とバルブ22を制御するがこれに限定されない。コントローラ100は、外部から入力される信号に基づいて、ポンプ12の運転とバルブ22の開閉を制御してもよい。ここで、外部から入力される信号とは、作業者が直接、ポンプ12の運転のON/OFF、及びバルブ22の開閉を指示する信号であってもよいし、各地域の雨量観測所で観測される降水雨量情報や所定機関により発表される予想降水雨量の情報に基づいて、ポンプ12の運転のON/OFF、及びバルブ22の開閉を自動的に指示する信号であってもよい。そのため、タンク3内の水位を調節することができる。例えば、雨が止んだ後にタンク3内が満水であっても、排水せずにタンク3内の貯水状態を維持することが可能である。このことにより、雨が止んだ後しばらく晴天が続いても、プランタ5の植物はタンク3内の水を吸収することができる。その結果、プランタ5に水を散布する作業を不要とすることができる。また、タンク3内の水は、例えば近隣建物の火災時に消化用の水として利用することもできる。
【0082】
貯水器2には、手動で開閉可能な排水口を備えていてもよい。このことにより、バルブ22の故障により排水管21を開閉不可能な事態に対応できる。
【0083】
上記実施形態及び上記変形例では、水路は側溝Wであるが、これに限定されない。水路は、水が流れる場所、又は貯水される場所であればよく、例えば、排水路、用水路、河川、溜池、又は貯水槽であってもよい。また、貯水装置1を、都市部の緑化空間の演出に使用したり、アーケード内の花壇として使用したりするなどの目的で設置してもよい。
【0084】
上記実施形態及び上記変形例では、貯水装置1は、水路の近傍に設置されるがこれに限定されない。貯水装置1は、水路からポンプ12により汲み上げることができる場所に設置されていればよい。
【0085】
排水機構20には、排水を促進する排水ポンプを備えていてもよい。排水ポンプによりタンク3内から強制的に排水することで急な豪雨にも対応できる。
【0086】
プランタ5は、タンク3から集水できる凸部31を有さなくてもよい。すなわち、プランタ5は、タンク3から集水できる構造でなくてもよい。
【0087】
バルブ22は電磁弁であるが、流量調整可能な電動弁であってもよい。
【0088】
上記実施形態及び上記変形例では、第2水位センサ16を有していなくてもよい。この場合、第1水位センサ15が、第1水位を検知した時、コントローラ100はポンプ12の運転をONにする。タンク3,3,…内が満水に達しても、タンク3内の余剰水はオーバーフロー口9より排出される。また、タンク3,3,…内が満水に達した時、操作者がポンプ12の運転をOFFにしてもよい。
【0089】
集水機構10及び排水機構20の制御は、上記実施形態及び上記変形例による制御に限定されない。集水機構10及び排水機構20は、水路内の水位が第1水位より上昇すると該水路内の雨水がポンプ12によりタンク3に汲み上げられ、道路が冠水しない程度にまで水位が低下するとタンク3内の水が排出されるように制御されてもよい。
【0090】
集水機構10及び排水機構20の制御の開始及び終了は、雨滴検知センサにより実行されてもよい。具体的に、貯水装置1は、雨滴検知センサを備えており、集水機構10及び排水機構20は、雨滴検知センサが雨滴を検知した時に開始され、雨滴検知センサが雨滴を検知しなくなった時に終了してもよい。
【0091】
上記実施形態及び上記変形例では、集水装置1は地上である地面Gに設置されると説明したが、これに限定されない。集水装置1は地上に設置されるものであればよく、例えば、建物の外壁などに設置されてもよい。
【0092】
貯水装置1の各種の構成機器に供給される電流は商用電源からの電流であってもよいし、太陽電池などの充電可能な電池からの電流であってもよい。太陽電池から電流が供給される場合、ソーラーパネルは貯水装置1に設置されてもよい。
【0093】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、集中豪雨などにより増水した水路内の水を貯留するための貯水装置について有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 貯水装置
2 貯水器
3 タンク
4 接続管
5 プランタ
10 集水機構
11 集水管
12 ポンプ
15 第1水位センサ(水位検知部)
20 排水機構
21 排水管
22 バルブ(開閉機構)
30 雨滴検知センサ
100 コントローラ(制御部)