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特許7496247画像描画処理装置、画像描画処理方法及び画像描画処理プログラム並びに電子ゲーム提供装置
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  • 特許-画像描画処理装置、画像描画処理方法及び画像描画処理プログラム並びに電子ゲーム提供装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】画像描画処理装置、画像描画処理方法及び画像描画処理プログラム並びに電子ゲーム提供装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/00 20060101AFI20240530BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240530BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240530BHJP
   G09G 5/373 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G06T11/00 110
G09G5/00 530T
G09G5/00 550B
G09G5/37 310
G09G5/373
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020102888
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196862
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】599115217
【氏名又は名称】株式会社 ディー・エヌ・エー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 誉裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信介
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-202259(JP,A)
【文献】特開2019-205791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/00
G09G 5/00
G09G 5/37
G09G 5/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、
前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、
を備えることを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数1】
行列要素Size,Sizeは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿った前記サブテクスチャ画像のサイズを示す値、
行列要素Pos,Posは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向において前記テクスチャ画像上において前記サブテクスチャ画像としてクリップする原点の座標を示す値、
で示されるクリップ変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像から前記サブテクスチャ画像を生成することを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数2】
θは、画像の回転角度、
で示されるローテーション変換行列を適用することによって前記サブテクスチャ画像を回転させることを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数3】
行列要素f,fは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿った反転値、
で示されるフリップ変換行列を適用することによって前記サブテクスチャ画像を反転させることを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数4】
行列要素Ofs,Ofsは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を移動させる移動量、
で示されるオフセット変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像の画素の座標を移動させることを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数5】
行列要素T,Tは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を繰り返す回数を示すリピート数、
で示されるタイリング変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像の画素を繰り返させることを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の画像描画処理装置であって、
前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列の適用を一度に行うことを特徴とする画像描画処理装置。
【請求項8】
テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ生成処理と、
前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画処理と、
を備えることを特徴とする画像描画処理方法。
【請求項9】
テクスチャ画像を記憶する記憶手段を備えたコンピュータを、
前記テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、
前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、
して機能させることを特徴とする画像描画処理プログラム。
【請求項10】
電子ゲームに用いられるテクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、
前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、
を備えることを特徴とする電子ゲーム提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像描画処理装置、画像描画処理方法及び画像描画処理プログラム並びに電子ゲーム提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いた電子ゲーム等において、揺らめく炎等のアニメーションをゲーム上の効果として表現するビジュアルエフェクツ(VFX)が用いられている(特許文献1)。炎等のエフェクト画像を描画する際、炎を表現するための模様を有する1枚のテクスチャ画像をサブテクスチャ画像に分割して、それらのサブテクスチャ画像を高速に切り替えながら表示することで揺らめく炎を表現する手法が用いられている。このような手法は、処理コストが比較的低く、処理速度を求められている電子ゲームにおけるVFXにおいては一般的な手法であり、市販のゲームエンジンやDCCツールにも搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-046732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存のツールでもテクスチャ画像をサブテクスチャ画像へ分割する機能は一般的であるが、サブテクスチャ画像を回転させたり、反転させたりする機能を適用する順序の自由度がなかった。従来では、図5に示すように、テクスチャ画像200をずらすオフセット処理を施したテクスチャ画像202、繰り返し回数を変更するタイリング処理を施したテクスチャ画像204、回転させるローテーション処理を施したテクスチャ画像206、画像を反転させるフリップ処理を施したテクスチャ画像208を生成した後、テクスチャ画像208を分割するクリップ処理を施してサブテクスチャ画像210を生成する処理が行われている。しかしながら、図5に示すように、分割で得られたサブテクスチャ画像210を高速に切り替えて表示する際に元のテクスチャ画像の連続性が失われ、VFXとしてのアニメーションが不自然となることがあった。そこで、テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像に加えて、回転させた状態で分割したサブテクスチャ画像を別途に準備しておく必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、を備えることを特徴とする画像描画処理装置である。
【0006】
ここで、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数1】
行列要素Size,Sizeは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿った前記サブテクスチャ画像のサイズを示す値、
行列要素Pos,Posは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向において前記テクスチャ画像上において前記サブテクスチャ画像としてクリップする原点の座標を示す値、
で示されるクリップ変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像から前記サブテクスチャ画像を生成することが好適である。
【0007】
また、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数2】
θは、画像の回転角度、
で示されるローテーション変換行列を適用することによって前記サブテクスチャ画像を回転させることが好適である。
【0008】
また、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数3】
行列要素f,fは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿った反転値、
で示されるフリップ変換行列を適用することによって前記サブテクスチャ画像を反転させることが好適である。
【0009】
また、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数4】
行列要素Ofs,Ofsは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を移動させる移動量、
で示されるオフセット変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像の画素の座標を移動させることが好適である。
【0010】
また、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列として、
【数5】
行列要素T,Tは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を繰り返す回数を示すリピート数、
で示されるタイリング変換行列を適用することによって前記テクスチャ画像の画素を繰り返させることが好適である。
【0011】
また、前記サブテクスチャ画像生成手段は、前記変換行列の適用を一度に行うことが好適である。
【0012】
本発明の別の態様は、テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ生成処理と、前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画処理と、を備えることを特徴とする画像描画処理方法が好適である。
【0013】
本発明の別の態様は、テクスチャ画像を記憶する記憶手段を備えたコンピュータを、前記テクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、して機能させることを特徴とする画像描画処理プログラムである。
【0014】
本発明の別の態様は、電子ゲームに用いられるテクスチャ画像の各画素のテクスチャ座標系における座標を示す行列に対して変換行列を乗算する行列計算を適用することによって、前記テクスチャ画像を分割したサブテクスチャ画像を生成するサブテクスチャ画像生成手段と、前記サブテクスチャ画像を変更しながら経時的に描画するサブテクスチャ描画手段と、を備えることを特徴とする電子ゲーム提供装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テクスチャ画像を分割してサブテクスチャ画像を生成してビジュアルエフェクツ(VFX)を効果的に描画することを可能にする画像描画処理装置、画像描画処理方法及び画像描画処理プログラム並びに電子ゲーム提供装置を提供することができる。本発明の実施の形態の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における画像描画処理装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるテクスチャ画像の例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるテクスチャ画像の処理方法を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態における画像描画処理を示すフローチャートである。
図5】従来のテクスチャ画像の処理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態における画像描画処理装置100は、図1に示すように、処理部10、記憶部12、入力部14、出力部16及び通信部18を含んで構成される。処理部10は、セントラルプロセッシングユニット(CPU)及びグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)等の演算処理を行う手段を含む。処理部10は、記憶部12に記憶されている画像描画処理プログラムを実行することによって、本実施の形態における画像描画処理に関する機能を実現する。記憶部12は、半導体メモリやメモリカード等の記憶手段を含む。記憶部12は、処理部10とアクセス可能に接続され、画像描画処理プログラム、その処理に必要な情報を記憶する。入力部14は、情報を入力する手段を含む。入力部14は、例えば、使用者からの情報の入力を受けるキーボード、タッチパネル、ボタン等を備える。出力部16は、管理者から入力情報を受け付けるためのユーザインターフェース画面(UI)や処理結果を出力する手段を含む。出力部16は、例えば、画像を呈示するディスプレイを備える。通信部18は、ネットワーク102を介して、外部端末(図示しない)との情報の通信を行うインターフェースを含んで構成される。通信部18による通信は有線及び無線を問わない。なお、画像描画処理に供される情報は通信部18を介して外部端末から取得してもよい。
【0018】
画像描画処理装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット端末等とすることができる。画像描画処理装置100は、電子ゲームを提供するための電子ゲーム提供装置の一部として機能させてもよい。画像描画処理装置100において、処理部10は、CPU及びGPUを含んで構成することができる。GPUは、CPUとは別に設けられた処理手段であり、CPUからの指示に基づいてもっぱら画像処理を行う。GPUは、ディスプレイ等の出力部16に画像を表示する際にデコードプログラムを実行することによってモデルデータをデコードして表示可能な画像データに復元する処理を行う。
【0019】
<テクスチャ画像処理>
テクスチャ画像は、図2に示すように、ゲーム上の効果を表現するビジュアルエフェクツ(VFX)を表現するための模様等を含む画像である。テクスチャ画像は、例えば、VFXにおいて炎、風、衝撃等の表示による効果を得るためのアニメーションを表示するために用いられる画像とすることができる。なお、図2において、テクスチャ画像はグレイスケールで示しているがカラー画像としてもよい。
【0020】
テクスチャ画像は、テクスチャ座標であるu方向及びv方向に沿って二次元に配列された複数の画素で表現することができる。すなわち、テクスチャ画像は、テクスチャ座標を適用した行列UVoriginで表すことができる。
【0021】
テクスチャ画像の行列UVoriginにおいて、座標u及びvに位置する画素は数式(1)によって表される。ここで、テクスチャ座標系は、左上を原点とし、u方向及びv方向共に-1.0~1.0に正規化された座標とする。また、後述する変換行列に座標の平行移動の要素を含めるため、行列UVoriginを3×3行列に拡張している。本実施の形態では、行列UVoriginの3要素目は無視することができる。
【数6】
【0022】
また、テクスチャ画像は、各画素の輝度を0~255の数値範囲で表現することができる。テクスチャ画像がカラー画像である場合、輝度に加えて、各画素の色彩(例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、透明度(A))をそれぞれ0~255の数値範囲で表現したテクスチャ画像とすることができる。
【0023】
以下、図3を参照して、本実施の形態におけるビジュアルエフェクツ(VFX)等で用いられるテクスチャ画像に対する処理を説明する。図3では、以下で説明する処理を分かり易くするためにテクスチャ画像の例を1~8の数字を表した画像としている。
【0024】
処理部10は、処理の元画像となるテクスチャ画像からサブテクスチャ画像を生成する処理を行う。具体的には、図3に示すように、処理部10は、テクスチャ画像に対してオフセット処理(offset)、タイリング処理(Tiling)、クリップ処理(Clip)、ローテーション処理(Rotation)及びフリップ処理(Flip)を順に適用する。
【0025】
オフセット処理は、元のテクスチャ画像300の画素の位置を移動させてテクスチャ画像302を生成する処理である。オフセット処理は、画像の行列に対して数式(2)で表されるオフセット変換行列を乗算させればよい。ここで、行列要素Ofs,Ofsは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を移動させる移動量を示すオフセット値である。
【数7】
【0026】
例えば、テクスチャ画像300の幅の方向に沿って幅の半分だけ画素を移動させたテクスチャ画像302を生成する。この場合、テクスチャ画像の各画素をu方向に0.5に移動させ、v方向には移動させないので、行列要素(Ofs,Ofs)=(0.5,0)とすればよい。
【0027】
タイリング処理は、元のテクスチャ画像302を複製して繰り返したテクスチャ画像304を生成する処理である。タイリング処理は、画像の行列に対して数式(3)で表されるタイリング変換行列を乗算させればよい。ここで、行列要素T,Tは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿って画素を繰り返す回数を示すリピート数である。実際には、行列要素T,Tは、テクスチャ座標に対するスケール値とする。ここで、テクスチャ画像の行列UVoriginの要素にスケール値を乗算することで座標値がテクスチャ座標系の最大値(本実施の形態では1.0)を超えた場合、テクスチャ座標系の原点(本実施の形態では0)に戻す機能を利用している。
【数8】
【0028】
例えば、テクスチャ画像302の幅の方向に沿ってテクスチャ画像を2回繰り返したテクスチャ画像304を生成する。この場合、テクスチャ画像の各画素をu方向に2回繰り返し、v方向には1回の繰り返しなので、行列要素(Tu,Tv)=(2,1)とすればよい。
【0029】
クリップ処理は、元のテクスチャ画像304の一部を抽出してサブテクスチャ画像306を生成する処理である。クリップ処理は、画像の行列に対して数式(4)で表されるクリップ変換行列を乗算させればよい。ここで、行列要素Size,Sizeは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿ったサブテクスチャ画像のサイズを示す値である。また、行列要素Pos,Posは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向においてテクスチャ画像上においてサブテクスチャ画像としてクリップする原点の座標を示す値である。
【数9】
【0030】
例えば、テクスチャ画像304の左上からu方向に4分割、v方向に2分割してサブテクスチャ画像306を生成する。この場合、行列要素(Sizeu,Sizev)=(0.25、0.5)、行列要素(Posu,Posv)=(0.0,0.0)とすればよい。
【0031】
ローテーション処理は、元のサブテクスチャ画像306を回転させてサブテクスチャ画像308を生成する処理である。ローテーション処理は、画像の行列に対して数式(5)で表されるローテーション変換行列を乗算させればよい。ここで、θは、画像の回転角度である。
【数10】
【0032】
例えば、サブテクスチャ画像306を反時計回りに90°回転させる。この場合、回転角度θ=π/2とすればよい。
【0033】
フリップ処理は、元のサブテクスチャ画像308を反転させてサブテクスチャ画像310を生成する処理である。フリップ処理は、画像の行列に対して数式(6)で表されるフリップ変換行列を乗算させればよい。ここで、行列要素f,fは、それぞれテクスチャ座標系のu方向及びv方向に沿った反転値である。また、反転値は、反転させる場合には-1.0とし、反転させない場合には1.0とする。
【数11】
【0034】
例えば、サブテクスチャ画像308をu方向に反転させ、v方向には反転させないでサブテクスチャ画像310を生成する。この場合、行列要素(f,f)=(-1.0,1.0)とすればよい。
【0035】
なお、上記行列計算を一度に行うことができる。すなわち、数式(7)に示すように、処理対象である元のテクスチャ画像300の行列UVoriginに対して上記の各処理の変換行列を順に乗算させることによってサブテクスチャ画像310の行列UVnewを生成することができる。その際、計算上、変換行列の適用順序は効果が適用される順番と逆の順となる。
【数12】
【0036】
また、オフセット変換行列、タイリング変換行列、クリップ変換行列、ローテーション変換行列及びフリップ変換行列を構成する行列要素は、フレーム毎に描画されるサブテクスチャ画像の各々について予め設定して記憶部12に記憶させておけばよい。
【0037】
<画像描画処理>
以下、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態における画像描画処理について説明する。画像描画処理は、処理部10を構成するCPU又はGPUによって記憶部12に記憶されている画像描画処理プログラムを実行することによって行われる。
【0038】
ステップS10は、テクスチャ画像を設定する処理を行う。当該ステップにおける処理によって、画像描画処理装置100はテクスチャ画像設定手段として機能する。当該処理は、CPUによって実行することができる。
【0039】
処理部10は、描画対象であるテクスチャ画像の画像データを記憶部12に記憶させる。具体的には、テクスチャ画像の画像データとして、テクスチャ座標系におけるテクスチャ画像の各画素の座標を示す行列UVoriginと各画素の輝度値、色(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色成分値及び透明度)が記憶部12に記憶される。
【0040】
ステップS12は、サブテクスチャ画像の画像データを生成する処理を行う。当該ステップにおける処理によって、画像描画処理装置100はサブテクスチャ画像生成手段として機能する。
【0041】
CPUは、記憶部12からテクスチャ画像の画像データを読みだし、当該画像データをGPUへ転送する。また、CPUは、テクスチャ画像からサブテクスチャ画像を生成するために用いられる上記変換行列の行列要素もGPUへ送信する。各サブテクスチャ画像を生成するための行列要素は、予め記憶部12に記憶させておけばよい。GPUは、CPUからテクスチャ画像の画像データと変換行列の行列要素のデータを受け取ると、テクスチャ画像の行列UVoriginに対して上記数式(7)を適用してサブテクスチャ画像を生成する。
【0042】
ステップS14は、サブテクスチャ画像を描画して表示させる処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、画像描画処理装置100はサブテクスチャ画像描画手段として機能する。
【0043】
GPUは、ステップS12において生成されたサブテクスチャ画像をディスプレイ等の出力部16に表示させる。すなわち、サブテクスチャ画像の画素の座標を示す行列UVnewに基づいて各画素に対応する画面上の座標位置に輝度値、色(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色成分値及び透明度)に応じて表示を行う。
【0044】
上記処理を繰り返すことによって、1つのテクスチャ画像から切り出したサブテクスチャ画像を経時的に表示させたVFXを実現することができる。例えば、1つのテクスチャ画像から揺らめく炎等のアニメーションを電子ゲーム上の効果として表示させることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、元となる1つのテクスチャ画像から分割されて、さらに回転・反転等を含んだサブテクスチャ画像を生成し、当該サブテクスチャ画像を表示させることでVFXを実現することができる。特に、サブテクスチャ画像を予め生成して準備しておくことなく、VFXとして表示させる処理の実行時にテクスチャ画像からサブテクスチャ画像を生成して表示させることができる。
【0046】
本実施の形態における画像描画処理方法及び画像表示方法は、行列計算のみでテクスチャ画像からのサブテクスチャ画像の切り出し、サブテクスチャの回転や反転等を行うことができるため、VFX等の高速な描画が必要とする処理に適している。また、従来のVFXの描画の処理フローを大きく変更する必要がない。すなわち、テクスチャ画像に対する変換行列を追加し、それに伴ってシェーダーの一部を変更するだけでよい。
【符号の説明】
【0047】
10 処理部、12 記憶部、14 入力部、16 出力部、18 通信部、100 画像描画処理装置、102 ネットワーク、200,202,204,206,208 テクスチャ画像、210 サブテクスチャ画像、300,302,304 テクスチャ画像、306,308,310 サブテクスチャ画像。
図1
図2
図3
図4
図5