(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240530BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240530BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240530BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/08
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020127569
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米川 雄也
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007251(JP,A)
【文献】特開2018-165374(JP,A)
【文献】特開2013-159662(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/109441(JP,A1)
【文献】日本粘着テープ工業会粘着ハンドブック編集委員会,粘着ハンドブック,第3版,日本,日本粘着テープ工業会,2005年10月01日,p.60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル重合体(A)と、
ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価45mgKOH/gを超え、かつ、酸価が5~20mgKOH/gであるロジン系粘着付与樹脂(B)と、
架橋剤(C)と
を含
み、非乳化型粘着剤組成物である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル重合体(A)の重量平均分子量が70万~200万である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを60~99.5質量%および、架橋性官能基含有モノマーを0.1~15質量%含むモノマー成分(a)の重合体である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着剤組成物より得られた厚さ25μmの粘着剤層のヘイズが1%未満である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物より作製された粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
両面テープ用粘着剤等、一般的に利用されるアクリル粘着剤において、良好な定荷重剥離性能を発揮させるためには、重合ロジン系粘着付与樹脂の添加が欠かせない。
近年、自動車用途等において使用される粘着テープには、車内環境を想定した高温耐久性能が求められている。一般的に粘着剤の高温特性と、粘着剤中に含まれる粘着付与樹脂のガラス転移温度(Tg)には相関性があり、粘着付与樹脂のTgが高いほど、粘着剤の高温特性は良化する。しかしながら、従来からある高Tg粘着付与樹脂はアクリル粘着剤との相溶性が悪く、高温性能を良化することが可能な量を添加することが不可能であった。
【0003】
例えば、水酸基を有するアクリル系共重合体、架橋剤及び粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物において、前記粘着付与剤として、軟化点130℃以上、水酸基価が35~80mgKOH/gであるロジンエステル化合物を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、前記アクリル系粘着剤組成物は、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する対剥離性能に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、特許文献1に開示されていたアクリル系粘着剤組成物であっても、高温特性は不充分であった。
本発明は、高温特性に優れる粘着剤層等の粘着剤を形成することが可能な粘着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、特定のロジン系粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が良く、これらを含む粘着剤組成物を用いることにより、粘着剤層等の粘着剤の高温特性が良好になることを見出した。
【0007】
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1] (メタ)アクリル重合体(A)と、
ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価45mgKOH/gを超え、かつ、酸価が5~20mgKOH/gであるロジン系粘着付与樹脂(B)と、
架橋剤(C)と
を含む粘着剤組成物。
[2] 前記(メタ)アクリル重合体(A)の重量平均分子量が70万~200万である、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3] 前記(メタ)アクリル重合体(A)が、アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを60~99.5質量%および、架橋性官能基含有モノマーを0.1~15質量%含むモノマー成分(a)の重合体である、[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
[4] 非乳化型粘着剤組成物である、[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5] 前記粘着剤組成物より得られた厚さ25μmの粘着剤層のヘイズが1%未満である、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物より作製された粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温特性に優れる粘着剤層等の粘着剤を形成することが可能な粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下では、本発明の粘着剤組成物を単に「組成物」ともいう。また、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」、アクリレートおよびメタクリレートを総称して「(メタ)アクリレート」とも記載する。
【0010】
[粘着剤組成物]
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体(A)と、ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価45mgKOH/gを超え、かつ、酸価が5~20mgKOH/gであるロジン系粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含む。
【0011】
本発明者らの検討によると、前記特定の水酸基価、および酸価を有するロジン系粘着付与樹脂(B)は、現在一般的に使用されているロジン系粘着付与樹脂と比べて、(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性に優れることを見出した。さらに、ロジン系粘着付与樹脂(B)は高いTgを有する。このため、本発明の粘着剤組成物では、高温特性に優れる粘着剤層等の粘着剤を提供することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、粘着剤組成物から得られた厚さ25μmの粘着剤層のヘイズが1%未満であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましい。ヘイズが前記範囲内であると、粘着剤組成物中の各成分が均一に混合される傾向にあるため好ましい。ヘイズは低いほど好ましく、その下限としては特に制限はないが、ヘイズは通常は0.1%以上である。なお、ヘイズの測定は、実施例に記載の方法で行うことができる。
【0013】
((メタ)アクリル重合体(A))
前記粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル重合体(A)としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系のモノマー成分の重合体であればよく、特に制限はない。
【0014】
前記(メタ)アクリル重合体(A)としては、アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび、架橋性官能基含有モノマーを含むモノマー成分(a)の重合体であることが好ましい。モノマー成分(a)には、さらにそれ以外のモノマー(他のモノマー)が含まれていてもよい。
【0015】
前記アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレートが挙げられ、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル重合体(A)の高分子量化が容易なn-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。前記アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0016】
前記アルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー成分(a)100質量%中に、好ましくは60~99.5質量%、より好ましくは70~99.5質量%含まれる。
【0017】
前記架橋性官能基含有モノマーとしては、架橋性官能基として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーが好ましく、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーであることがより好ましい。
【0018】
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコールが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0019】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4-カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記カルボキシ基含有モノマーとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0020】
前記架橋性官能基含有モノマーとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよいが、前記ヒドロキシ基含有モノマーと、前記カルボキシ基含有モノマーとを併用することが好ましい態様の一つである。前記ヒドロキシ基含有モノマーと、前記カルボキシ基含有モノマーとを併用する場合には、そのモル比としては特に制限はないが、ヒドロキシ基含有モノマー:カルボキシ基含有モノマー(モル比)が、好ましくは1:10~10:1であり、より好ましくは1:8~8:1である。
【0021】
前記架橋性官能基含有モノマーは、モノマー成分(a)100質量%中に、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%含まれる。
前記他のモノマーとしては、例えばアルキル基の炭素数が1~3または9以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート、窒素原子含有モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、アセトアセチル基含有(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、メタクリロキシプロピルメトキシシラン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0022】
前記アルキル基の炭素数が1~3または9以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0023】
前記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0024】
前記窒素原子含有モノマーとしては、アミド基およびアミノ基の少なくとも一方の官能基を有するモノマーが挙げられ、具体的には(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーが挙げられる。
【0025】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0026】
前記アセトアセチル基含有(メタ)アクリレートとしては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
前記芳香環含有モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエンを挙げることができる。
【0027】
前記モノマー成分(a)が前記他のモノマーを含む場合には、前記他のモノマーは、前記モノマー成分(a)100質量%中に、0.1~30質量%、より好ましくは0.2~25質量%含まれる。前記他のモノマーとしては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0028】
前記(メタ)アクリル重合体(A)のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、通常は50万~250万であり、粘着剤組成物の塗工性の観点および、得られる粘着シートの高温特性に特に優れる観点からは、70万~200万が好ましく、100万~180万がより好ましい。
【0029】
((メタ)アクリル重合体(A)の製造条件)
前記(メタ)アクリル重合体(A)は、モノマー成分を、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法および懸濁重合法等の従来公知の重合法により重合することで得ることができるが、乳化剤や懸濁剤等の重合安定剤を含まない溶液重合法および塊状重合法により製造したものが好ましい。(メタ)アクリル重合体(A)は、該重合体と、有機溶媒とからなるポリマー溶液として得てもよい。重合に使用できる有機溶媒としては、後述の有機溶媒(D)が挙げられる。
【0030】
例えば、反応容器内に重合溶媒、モノマー成分を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃、好ましくは50~90℃に設定し、通常50~90℃、好ましくは60~90℃の温度に反応系を維持して、3~20時間反応させることにより(メタ)アクリル重合体(A)を得ることができる。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系開始剤が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0032】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0033】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、重合中に、重合開始剤を複数回添加することも制限されない。
重合開始剤は、(メタ)アクリル重合体(A)を形成するモノマー成分100質量部に対して、通常0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部の範囲内の量で使用される。また、上記重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、重合性単量体、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0034】
溶液重合に用いる重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類等が挙げられる。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
(ロジン系粘着付与樹脂(B))
前記粘着剤組成物に含まれるロジン系粘着付与樹脂(B)は、ガラス転移温度が85℃以上であり、水酸基価45mgKOH/gを超え、かつ、酸価が5~20mgKOH/gであるロジン系粘着付与樹脂である。
【0036】
ガラス転移温度(Tg)は、85℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましい。また、ガラス転移温度は150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。ロジン系粘着付与樹脂(B)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって測定することができる。Tgが前記範囲であると、前記(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が良く、かつ、得られる粘着シートの高温特性に優れる。
【0037】
水酸基価は、50mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましい。また、水酸基価は、100mgKOH/g以下が好ましく、80mgKOH/g以下がより好ましい。ロジン系粘着付与樹脂(B)の水酸基価は、電位差滴定法によって測定することができる。水酸基価が前記範囲であると、前記(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が良く、かつ、得られる粘着シートのヘイズを低く抑えることができる。また、(メタ)アクリル重合体(A)とロジン系粘着付与樹脂(B)との相溶性が優れることから、粘着シートを製造した後に、粘着剤層表面にロジン系粘着付与樹脂(B)がブリードアウトすることが抑制される。
【0038】
酸価は、5mgKOH/g以上が好ましく、7mgKOH/g以上がより好ましい。また、酸価は、20mgKOH/g以下が好ましく、12mgKOH/g以下がより好ましい。ロジン系粘着付与樹脂(B)の酸価は、電位差滴定法によって測定することができる。酸価が前記範囲であると、前記(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が良く、かつ、得られる粘着シートのタック性に優れる。
【0039】
前記粘着剤組成物は、前記特定のTg、水酸基価、酸価を有するロジン系粘着付与樹脂(B)を用いることにより、(メタ)アクリル重合体(A)とロジン系粘着付与樹脂(B)との相溶性に優れ、高温特性に優れる粘着剤層等の粘着剤を形成することが可能である。
【0040】
また、前記ロジン系粘着付与樹脂(B)のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、1000~10000が好ましく、2500~5000がより好ましい。
【0041】
前記粘着剤組成物中のロジン系粘着付与樹脂(B)の配合量としては、(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、通常は5~50質量部であり、好ましくは6~40質量部であり、より好ましくは10~30質量部である。ロジン系粘着付与樹脂(B)の配合量が前記範囲であると、高温特性に優れた粘着シートが得られる。
【0042】
ロジン系粘着付与樹脂(B)は、例えばアビエチン酸、アビエチン酸二量体、アビエチン酸の異性体を重合することにより得ることができる。水酸基価、酸価を調整する目的で、ペンタエリスリトール等の多価アルコール共存下で重合することも好ましい。ロジン系粘着付与樹脂(B)を得る方法としては、特に制限はなく、従来公知の重合ロジンの製法を適宜調整することにより、Tg、水酸基価、酸価を前記範囲に調整することにより得ることができる。
【0043】
(架橋剤(C))
前記粘着剤組成物に含まれる架橋剤(C)としては、(メタ)アクリル重合体(A)を架橋することができればよく、特に制限はない。架橋剤(C)としては、例えばイソシアネート化合物(C1)、エポキシ化合物(C2)、金属キレート化合物(C3)等の、前記(メタ)アクリル重合体(A)と反応し得る架橋剤を用いることができる。
【0044】
前記粘着剤組成物は、架橋剤(C)を含むため、被着体と圧着、熱成形等により接着された粘着剤層や粘着剤中には架橋体が形成されており、粘着力や、耐熱性に優れる。
前記架橋剤(C)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0045】
(イソシアネート化合物(C1))
イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられ、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~6である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、(メタ)アクリル重合体(A)とイソシアネート化合物との架橋反応効率の点、および粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0046】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0048】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ、高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0049】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0050】
イソシアネート化合物の中でも、難黄変性の点で、キシリレンジイソシアネート系およびヘキサメチレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましく、応力緩和性の観点からトリレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましい。キシリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ、トリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられる。
【0051】
(エポキシ化合物(C2))
エポキシ化合物としては、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)が挙げられる。
【0052】
(金属キレート化合物(C3))
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0053】
前記粘着剤組成物中の架橋剤(C)の配合量としては、(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、通常は0.05~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.3~2.5質量部である。
【0054】
(有機溶媒(D))
前記粘着剤組成物は、塗工性を調整するために有機溶媒(D)を含有していてもよい。有機溶媒(D)としては、前述の(メタ)アクリル重合体(A)の製造条件で挙げた有機溶媒が挙げられる。なお、(メタ)アクリル重合体(A)の製造時に使用した有機溶媒と、粘着剤組成物に含まれる有機溶媒(D)は同種の有機溶媒であっても、別種の有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
粘着剤組成物が有機溶媒(D)を含む場合には、粘着剤組成物100質量%中に、通常は30~90質量%、好ましくは40~90質量%である。
【0055】
(添加剤(E))
前記粘着剤組成物は、上記(A)~(D)成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤(E)を含んでいてもよい。
【0056】
添加剤(E)としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、金属腐食防止剤、可塑剤、架橋促進剤、およびリワーク剤が挙げられる。添加剤(E)としては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。前記粘着剤組成物が、添加剤(E)を含有する場合の量としては、添加剤(E)の種類によっても異なり、特に制限はないが、粘着剤組成物100質量%中に、通常は0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。
【0057】
前記粘着剤組成物は、非乳化型粘着剤組成物であることが好ましい。乳化型の粘着剤組成物と比べ、耐水性および耐熱性に優れる傾向があるため、非乳化型であることが好ましい。本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層等の粘着剤として用いることができる。なお、粘着剤は粘着剤層を包含する概念であり、層状に形成されている粘着剤を、粘着剤層と呼称する。
【0058】
(粘着剤組成物の調製)
前記粘着剤組成物は、例えば、上記各成分を従来公知の方法により混合することで調製することができる。例えば、(メタ)アクリル重合体(A)を含む溶液と、ロジン系粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)と、必要に応じて用いられる添加剤等の他の成分とを混合することにより、粘着剤組成物を調製することができる。
【0059】
[粘着シート]
本発明の一態様に係る粘着シートは、粘着剤組成物より作製された粘着剤層を有する。
粘着シートとしては、例えば、粘着剤層のみから形成される粘着シート、基材と、基材の両面に形成された粘着剤層とを有し、少なくとも一方の粘着剤層が本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層である両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する片面粘着シート、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層の両面に基材が配置された粘着シートが挙げられる。
【0060】
前記基材としては、特に制限はなく、プラスチック基材、不織布、織布、紙、金属、ガラス、セラミックス、フォーム等が挙げられる。基材の厚さはその用途等によってもことなり、特に制限はないが、通常は5~200μmである。
【0061】
プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、およびABSから選択されるプラスチックの基材が挙げられる。
【0062】
基材は、剥離処理された基材であってもよい。粘着シートが、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層の両面に基材が配置された粘着シートである場合には、少なくとも一方の基材は、剥離処理された基材であり、被着体との接着時に、剥離処理された基材は除去される。
【0063】
粘着剤層の厚さは、粘着性能維持の観点から、通常は5~200μm、好ましくは10~100μmである。
粘着剤層は、その製造過程で粘着剤組成物中の、(メタ)アクリル重合体(A)と架橋剤(C)とが反応することにより、少なくとも一部が架橋されていてもよい。
【0064】
粘着シートの製造方法としては特に制限はないが、例えば以下のとおりである。前述の粘着剤組成物を基材上に塗布する。前記粘着剤組成物が溶媒を含有する場合、通常は50~150℃、好ましくは60~100℃で、通常は1~10分間、好ましくは2~7分間乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。続いて、塗膜の基材がない側の表面へ、別の基材を貼り合わせる。続いて、通常は1日以上、好ましくは3~10日間、通常は5~60℃、好ましくは15~40℃、通常は30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で養生し、粘着シートを製造する。前記養生を熟成ともいう。前記条件で熟成を行うと、熟成中に架橋が進行し、効率よく架橋体の形成が可能である。
【0065】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ドクターブレード法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【0066】
前記粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、高温特性に優れるため、自動車用途等の各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0067】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0068】
(ロジン系樹脂)
実施例比較例では以下のロジン系樹脂を用いた。
ロジン系粘着付与樹脂(B-1):下記製造例1により合成
ロジン系粘着付与樹脂(B-2):下記製造例2により合成
ロジン系粘着付与樹脂(B’-1):下記製造例3により合成
D-135、D-160:重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業製)
SEA-100:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業製)
DP-2669:ロジンエステル樹脂(ハリマ化成製)
前記ロジン系樹脂の物性を表1に示す。
なお、表1で示すロジン系樹脂の物性は、以下の方法で測定した。
【0069】
<酸価>
酸価は、JIS K0070に準拠し、ロジン系樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として、電位差滴定法により求めた。
【0070】
<水酸基価>
水酸基価は、JIS K0070に準拠し、ロジン系樹脂1gをアセチル化させた時、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として、電位差滴定法により求めた。
【0071】
<Tg>
ロジン系樹脂を簡易密閉パンに封入し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、測定を行った。測定は、窒素気流下、-100℃から200℃まで10℃/min.で昇温して熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される特徴的な変曲をTgとした。なお、Tgは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
【0072】
<GPC>
前記ロジン系樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)による、Mw(重量平均分子量)の測定は以下の条件で行った。
装置名:東ソー(株)製、HLC-8120
カラム:東ソー(株)製、G7000HXL(7.8mm I.D.×30cm)1本、GMHXL(7.8mm I.D.×30cm)2本、G2000HXL(7.8mm I.D.×30cm)1本
サンプル濃度:1.5mg/cm3になるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0cm3/min
カラム温度:40℃
【0073】
【0074】
[製造例1]
(ロジン系粘着付与樹脂(B-1)の合成)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、アビエチン酸二量体50質量部、および塩化メチレン840質量部を仕込み、攪拌しながら塩化オキサリル25質量部を滴下した。これを窒素気流下25℃で4時間反応させた後、塩化オキサリルおよび塩化メチレンをエバポレーターにて除去した。得られた塩化物中間体を塩化メチレン800質量部に溶解させ、この溶液に、ペンタエリスリトール115質量部、4-ジメチルアミノピリジン10質量部、およびピリジン13質量部の混合物を氷冷下滴下した。これを窒素気流下40℃で12時間反応させ、1000質量部の1mol/L塩酸を加えて反応を終了させた。油層と水層とを分離後、油層に硫酸マグネシウムを加え攪拌し、硫酸マグネシウムを濾過後、エバポレーターにて溶剤を除去し、真空下終夜乾燥させ黄色固体であるロジン系粘着付与樹脂(B-1)を得た。
ロジン系粘着付与樹脂(B-1)の酸価は7.1mgKOH/g、水酸基価は72mgKOH/g、Tgは101℃、重量平均分子量(Mw)は3100であった。
【0075】
[製造例2]
(ロジン系粘着付与樹脂(B-2)の合成)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、アビエチン酸二量体50質量部、および塩化メチレン840質量部を仕込み、攪拌しながら塩化オキサリル25質量部を滴下した。これを窒素気流下25℃で4時間反応させた後、塩化オキサリルおよび塩化メチレンをエバポレーターにて除去した。得られた塩化物中間体を塩化メチレン800質量部に溶解させ、この溶液に、ペンタエリスリトール85質量部、4-ジメチルアミノピリジン10質量部、およびピリジン13質量部の混合物を氷冷下滴下した。これを窒素気流下40℃で12時間反応させ、1000質量部の1mol/L塩酸を加えて反応を終了させた。油層と水層とを分離後、油層に硫酸マグネシウムを加え攪拌し、硫酸マグネシウムを濾過後、エバポレーターにて溶剤を除去し、真空下終夜乾燥させ黄色固体であるロジン系粘着付与樹脂(B-2)を得た。
ロジン系粘着付与樹脂(B-2)の酸価は7.3mgKOH/g、水酸基価は51mgKOH/g、Tgは98℃、重量平均分子量(Mw)は3000であった。
【0076】
[製造例3]
(ロジン系粘着付与樹脂(B’-1)の合成)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、アビエチン酸二量体50質量部、および塩化メチレン840質量部を仕込み、攪拌しながら塩化オキサリル25質量部を滴下した。これを窒素気流下25℃で4時間反応させた後、塩化オキサリルおよび塩化メチレンをエバポレーターにて除去した。得られた塩化物中間体を塩化メチレン800質量部に溶解させ、この溶液に、ペンタエリスリトール60質量部、4-ジメチルアミノピリジン10質量部、およびピリジン13質量部の混合物を氷冷下滴下した。これを窒素気流下40℃で12時間反応させ、1000質量部の1mol/L塩酸を加えて反応を終了させた。油層と水層とを分離後、油層に硫酸マグネシウムを加え攪拌し、硫酸マグネシウムを濾過後、エバポレーターにて溶剤を除去し、真空下終夜乾燥させ黄色固体であるロジン系粘着付与樹脂(B’-1)を得た。
ロジン系粘着付与樹脂(B’-1)の酸価は10mgKOH/g、水酸基価は31mgKOH/g、Tgは69℃、重量平均分子量(Mw)は2000であった。
【0077】
[製造例4]
(アクリル重合体(A-1)溶液の合成)
n-ブチルアクリレート94質量部、アクリル酸5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、酢酸エチル90質量部および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。ついで、撹拌下に65℃に昇温して8時間反応させ、アクリル重合体(A-1)溶液を得た。
得られたアクリル重合体(A-1)の、GPCによるMwは180万であった。
【0078】
[製造例5]
(アクリル重合体(A-2)溶液の合成)
n-ブチルアクリレート94質量部、アクリル酸5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、酢酸エチル160質量部および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。ついで、撹拌下に70℃に昇温して8時間反応させ、アクリル重合体(A-2)溶液を得た。得られたアクリル重合体(A-2)の、GPCによるMwは80万であった。
【0079】
[製造例6]
(アクリル重合体(A-3)溶液の合成)
n-ブチルアクリレート94質量部、アクリル酸5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、酢酸エチル110質量部および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を反応容器に入れ、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。ついで、撹拌下に65℃に昇温して8時間反応させ、アクリル重合体(A-3)溶液を得た。得られたアクリル重合体(A-3)の、GPCによるMwは152万であった。
【0080】
(GPC)
前記アクリル重合体(A-1)~(A-3)のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)による、Mw(重量平均分子量)の測定は以下の条件で行った。
【0081】
装置名:東ソー(株)製、HLC-8120
カラム:東ソー(株)製、G7000HXL(7.8mm I.D.×30cm)1本、GMHXL(7.8mm I.D.×30cm)2本、G2000HXL(7.8mm I.D.×30cm)1本
サンプル濃度:1.5mg/cm3になるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0cm3/min
カラム温度:40℃
【0082】
〔実施例1〕
アクリル重合体(A-1)溶液(固形分(アクリル重合体)換算100質量部)に、ロジン系粘着付与樹脂(B-1)20質量部およびイソシアネート系架橋剤L-45(綜研化学製)を固形分換算で0.72質量部を添加し、ガラス棒で、5分撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0083】
<粘着シートの製造>
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、得られた粘着剤組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥させ溶媒を除去して塗膜を形成した。
【0084】
粘着剤層のPETフィルムと接している面とは反対側表面に、剥離処理されたPETフィルムを貼り合わせた。その後、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シート(1)を製造した。
【0085】
(物性評価)
<ヘイズ>
剥離処理されたPETフィルム上に、得られた粘着剤組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥させ溶媒を除去して塗膜を形成した。
【0086】
粘着剤層の剥離処理されたPETフィルムと接している面とは反対側表面に、剥離処理されたPETフィルムを貼り合わせた。その後、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シート(2)を製造した。
【0087】
粘着シート(2)の片面から剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層と、ガラス板(AGCファブリテック社製、アルカリガラスFL、1.1mm厚)とを張り合わせた。
【0088】
その後、残りの剥離処理されたPETフィルムを剥がし、前記ガラス板上に粘着剤層のみを有する試験片のヘイズ値を粘着剤層のヘイズ(%)として測定した。
測定にはヘイズメーター(型名HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いた。結果を表2に示す。
【0089】
<保持力試験>
粘着シート(1)を20mm×100mmのサイズに裁断し試験片を作成した。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をステンレス板(SUS)に貼付け面積が20mm×20mmとなるように貼付して2kgローラー3往復にて圧着した。その後40℃/dry環境下で20分静置し、同環境下で試験対象のせん断方向に1kgの荷重をかけ、荷重付加開始から1時間後の粘着剤層のずれ量(mm)を測定した。
1時間後のずれ量(mm)を、表2では、40℃保持力(mm)として記した。
【0090】
<定荷重剥離性>
粘着シート(1)を80×20mmに裁断し、剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層を貼付け面積が50mm×20mmとなるように、表裏面が水平方向と平行を成すように配置されたPP(ポリプロピレン)板の下面側に、2kgローラー3往復にて貼り合わせた。次に、PP板に貼り付けられた試験片の長手方向の一端側の端部に、鉛直方向下方側に荷重を加えた状態で、60分間放置したときの試験片の長手方向における剥がれ距離(mm)又は落下までの時間(min)を測定した。また、荷重は測定温度が40℃のとき100g、80℃のとき50g、120℃のとき50g、150℃のとき16gとした。その結果を下記の基準で評価した。
【0091】
この定荷重剥離性試験の結果を、表2では、PP定荷重として、温度、荷重ごとに記した。
AA:はがれ距離が5mm以下
BB:はがれ距離が5mmを超えて10mm以下
CC:はがれ距離が10mmを超えて50mm未満
DD:落下(はがれ距離50mm)
【0092】
<ボールタック>
J.Dow法により以下の手順で測定した。
前記粘着シート(1)から剥離処理されたPETフィルムを剥がし、粘着剤層が露出するように傾斜角30度の傾斜面に取り付けた。次に、23℃/50%RH環境下でスチールボールを傾斜面の上側から助走させた後に、粘着面上を滑走させた(助走距離は10cm、滑走距離は10cm)。
【0093】
スチールボールの径を変えながら滑走テストを行い、粘着面内で滑走を停止したスチールボールの最大径を求めた。使用スチールボールの径は、X/32インチ(Xは2~32の範囲内の整数)である。スチールボールの最大径におけるXを、ボールタック試験の結果として、表2に示した。
【0094】
〔実施例2~6、比較例1~5〕
アクリル重合体の種類、ロジン系樹脂の種類および架橋剤の量を、表2に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に行い、粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0095】
得られた粘着シートを用いて、実施例1と同様の方法で物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0096】
【0097】
表2より、実施例1~6に記載の粘着剤組成物より得られる粘着シートは、(メタ)アクリル重合体(A)と、ロジン系粘着付与樹脂(B)との相溶性が良くヘイズが低い。また、対ポリプロピレン定荷重剥離も良好な結果であることが示された。
【0098】
Tgが85℃未満であり、かつ水酸基価が45mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与樹脂を配合した粘着剤組成物より得られる粘着シートは、高温時の対ポリプロピレン定荷重剥離の評価が悪い結果となった(比較例1,2,4、5)。特に比較例4の粘着シートはヘイズが低いが、ロジン系粘着付与樹脂のTgの低さから、比較例1、2、5よりも定荷重剥離試験の評価が悪い結果となった。
【0099】
比較例3では、Tgが85℃以上であるロジン系粘着付与樹脂を使用しているものの、水酸基価が45mgKOH/g以下であることから(メタ)アクリル重合体(A)との相溶性が悪く、ヘイズが高く、かつ定荷重剥離試験の評価が悪い粘着シートが得られる結果となった。