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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20240530BHJP
   H02K 5/16 20060101ALI20240530BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02K5/24 B
H02K5/16
F16C27/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020152782
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047074
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 崇
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-068459(JP,U)
【文献】特開平06-296343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
H02K 5/16
F16C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸および駆動用磁石を有するロータと、前記駆動用磁石の外周側に配置されるステータとを備えるとともに、前記回転軸の軸方向の一方側を出力側とし、前記回転軸の軸方向の他方側を反出力側とすると、前記回転軸の出力側部分を前記回転軸の軸方向および前記回転軸の径方向で支持する出力側軸受と、前記回転軸の反出力側部分を前記回転軸の径方向で支持する反出力側軸受と、前記回転軸の反出力側部分を前記回転軸の径方向にのみ付勢するためのバネ部材と、前記回転軸の反出力側への移動範囲を規制するための規制部材と、前記ステータの反出力側の端面に固定されるとともに前記駆動用磁石の反出力側の端面が隙間を介して対向配置される端板とを備え、
前記規制部材は、前記回転軸の反出力側端が接触可能な軸接触部を備え、前記ステータに固定され
前記回転軸の軸方向における前記回転軸の反出力側端と前記軸接触部との間の隙間は、前記回転軸の軸方向における前記駆動用磁石の反出力側の端面と前記端板との間の隙間よりも狭くなっていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記バネ部材は、板バネ、引張りコイルバネまたはネジリコイルバネであることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記反出力側軸受は、前記端板に保持され、
前記回転軸は、前記反出力側軸受よりも反出力側に突出する突出部を備え、
前記規制部材は、有底の筒状に形成され、前記突出部を覆っていることを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記バネ部材は、前記回転軸の軸方向から見たときの形状がU形状となるU形状部を備える板バネであり、
前記端板には、前記バネ部材を保持するために反出力側に向かって立ち上がる平板状の立上部が形成され、
前記U形状部は、前記立上部の一方の面と前記突出部とに接触して、前記立上部から離れる方向に前記突出部を付勢していることを特徴とする請求項記載のモータ。
【請求項5】
前記立上部には、前記バネ部材を位置決めするための凸部が形成され、
前記U形状部には、前記凸部が嵌る係合穴が形成されていることを特徴とする請求項記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸および駆動用磁石を有するロータと、駆動用磁石の外周側に配置されるステータとを備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を有するロータと、ロータの外周側に配置される筒状のステータとを備えるモータ(ステッピングモータ)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータでは、ロータは、図5に示すように、回転軸101に固定される永久磁石102を備えている。回転軸101の出力側の端部は、出力側の軸受部材(図示省略)によって、回転軸101の径方向(ラジアル方向)および回転軸101の軸方向(スラスト方向)で支持されている。回転軸101の反出力側の端部は、反出力側の軸受部材103によって、回転軸101の径方向で支持されている。
【0003】
特許文献1に記載のモータでは、回転軸101は、付勢部材(板バネ)104の板バネ部104aによって付勢されている。付勢部材104は、ステータの反出力側の端面に重なる環状部104bを備えており、板バネ部104aは、環状部104bの中央部分から出力側に向かって斜めに切り起されている。図5(A)に示すように、板バネ部104aは、斜め方向から回転軸101の反出力側の端面に接触しており、回転軸101を軸方向および径方向に付勢している。板バネ部104aは、回転軸101の軸方向のがたつきを防止するとともに、回転軸101の径方向のがたつきを防止している。
【0004】
特許文献1に記載のモータでは、板バネ部104aによって回転軸101の径方向のがたつきを防止することで、回転軸101の外周面と軸受部材103の内周面との間の隙間に起因するロータの回転時の異音の発生を防止している。また、特許文献1に記載のモータでは、板バネ部104aの反出力側への過剰な変形を防止する端板105がステータの反出力側の端面に固定されている。端板105は、付勢部材104よりも反出力側に配置されている。端板105は、軸受部材103および付勢部材104を保持している。
【0005】
特許文献1に記載のモータでは、モータに衝撃が加わったりして、図5(B)に示すように、反出力側への過剰な力が回転軸101に作用すると、板バネ部104aは、回転軸101によって反出力側に押されるが、板バネ部104aが所定量、反出力側に押されると、板バネ部104aは、端板105に接触する。そのため、特許文献1に記載のモータでは、板バネ部104aの反出力側への過剰な変形が防止される。また、このモータでは、反出力側への過剰な力が回転軸101に作用したときに、板バネ部104aが端板105に接触することで、回転軸101の反出力側への移動が規制されるため、反出力側への過剰な力が回転軸101に作用したときの、永久磁石102と軸受部材103との接触が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-195349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のモータのように、付勢部材104によって回転軸101が径方向に付勢されているモータの中には、ロータの回転時に比較的大きな径方向の負荷が回転軸101に作用するモータもある。このモータの場合、回転軸101をより強い力で径方向に付勢していないと、回転軸101の外周面と軸受部材103の内周面との間の隙間に起因するロータの回転時の異音の発生を防止できないといった事態が生じるおそれがある。回転軸101をより強い力で径方向に付勢するためには、図6(A)に示すように、環状部104bに対する板バネ部104aの切り起こし角度θを大きくすれば良い。
【0008】
しかしながら、板バネ部104aの切り起こし角度θを大きくすると、反出力側への過剰な力が回転軸101に作用して板バネ部104aが回転軸101に押されたときに、板バネ部104aが端板105に接触するまでの回転軸101の移動距離が長くなる。板バネ部104aが端板105に接触するまでの回転軸101の移動距離が長くなると、図6(B)に示すように、板バネ部104aが端板105に接触する前に、永久磁石102と軸受部材103とが接触して、永久磁石102や軸受部材103が損傷するおそれがある。
【0009】
なお、板バネ部104aが端板105に接触するまでの回転軸101の移動距離が長くなっても、板バネ部104aが端板105に接触する前に永久磁石102と軸受部材103とが接触しないように、回転軸101の軸方向における永久磁石102と軸受部材103との間の隙間を大きくすれば、反出力側への過剰な力が回転軸101に作用したときの、永久磁石102や軸受部材103の損傷を防止することは可能である。しかしながら、モータのトルクを確保するために回転軸101の軸方向における永久磁石102の長さを維持したまま、永久磁石102と軸受部材103の間の隙間を大きくすると、モータが軸方向で大型化する。また、永久磁石102と軸受部材103との間の隙間を大きくするため、回転軸101の軸方向における永久磁石102の長さを短くすると、モータのトルクが低下する。
【0010】
そこで、本発明の課題は、比較的強い力で回転軸を径方向に付勢することが可能であっても、反出力側への過剰な力が回転軸に作用したときの回転軸の反出力側への移動距離を抑制することが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、回転軸および駆動用磁石を有するロータと、駆動用磁石の外周側に配置されるステータとを備えるとともに、回転軸の軸方向の一方側を出力側とし、回転軸の軸方向の他方側を反出力側とすると、回転軸の出力側部分を回転軸の軸方向および回転軸の径方向で支持する出力側軸受と、回転軸の反出力側部分を回転軸の径方向で支持する反出力側軸受と、回転軸の反出力側部分を回転軸の径方向にのみ付勢するためのバネ部材と、回転軸の反出力側への移動範囲を規制するための規制部材と、ステータの反出力側の端面に固定されるとともに駆動用磁石の反出力側の端面が隙間を介して対向配置される端板とを備え、規制部材は、回転軸の反出力側端が接触可能な軸接触部を備え、ステータに固定され、回転軸の軸方向における回転軸の反出力側端と軸接触部との間の隙間は、回転軸の軸方向における駆動用磁石の反出力側の端面と端板との間の隙間よりも狭くなっていることを特徴とする。
【0012】
本発明のモータでは、バネ部材は、回転軸の反出力側部分を回転軸の径方向にのみ付勢するために設けられている。そのため、本発明では、回転軸の反出力側端と規制部材の軸接触部との間にバネ部材の一部を配置する必要がない。したがって、本発明では、比較的強い力で回転軸を径方向に付勢できるようにバネ部材が形成されていても、バネ部材の影響を受けることなく、規制部材によって回転軸の反出力側への移動距離を設定することが可能になる。
【0013】
その結果、本発明では、比較的強い力で回転軸を径方向に付勢することが可能であっても、反出力側への過剰な力が回転軸に作用したときの回転軸の反出力側への移動距離を抑制することが可能になる。また、本発明のモータでは、回転軸の反出力側端と規制部材の軸接触部との間にバネ部材の一部を配置する必要がないため、反出力側への過剰な力が回転軸に作用したときのバネ部材の損傷を防止することが可能になる。
また、本発明では、モータは、ステータの反出力側の端面に固定されるとともに駆動用磁石の反出力側の端面が隙間を介して対向配置される端板を備え、回転軸の軸方向における回転軸の反出力側端と軸接触部との間の隙間は、回転軸の軸方向における駆動用磁石の反出力側の端面と端板との間の隙間よりも狭くなっている。そのため、反出力側への過剰な力が回転軸に作用して回転軸が反出力側に移動したときの駆動用磁石と端板との接触を防止することが可能になる。したがって、反出力側への過剰な力が回転軸に作用して回転軸が反出力側に移動したときの駆動用磁石等の損傷を防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、バネ部材は、たとえば、板バネ、引張りコイルバネまたはネジリコイルバネである。
【0016】
本発明において、たとえば、反出力側軸受は、端板に保持され、回転軸は、反出力側軸受よりも反出力側に突出する突出部を備え、規制部材は、有底の筒状に形成され、突出部を覆っている。
【0017】
本発明において、バネ部材は、回転軸の軸方向から見たときの形状がU形状となるU形状部を備える板バネであり、端板には、バネ部材を保持するために反出力側に向かって立ち上がる平板状の立上部が形成され、U形状部は、立上部の一方の面と突出部とに接触して、立上部から離れる方向に突出部を付勢していることが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成で回転軸の反出力側部分を径方向に付勢することが可能になる。
【0018】
本発明において、立上部には、バネ部材を位置決めするための凸部が形成され、U形状部には、凸部が嵌る係合穴が形成されていることが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成でバネ部材を位置決めすることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のモータでは、比較的強い力で回転軸を径方向に付勢することが可能であっても、反出力側への過剰な力が回転軸に作用したときの回転軸の反出力側への移動距離を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかるモータの側面図である。
図2図1に示すモータの断面図である。
図3図2のE-E方向から回転軸、端板、反出力側軸受およびバネ部材を示す図である。
図4】本発明の他の実施の形態にかかるバネ部材を説明するための図である。
図5】従来技術にかかるモータの構成を説明するための断面図である。
図6】従来技術にかかるモータの問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の側面図である。図2は、図1に示すモータ1の断面図である。
【0023】
本形態のモータ1は、ステッピングモータである。モータ1は、回転軸2および駆動用磁石3を有するロータ4と、駆動用磁石3の外周側に配置されるステータ5とを備えている。以下の説明では、回転軸2の軸方向の一方側である図1等のX1方向側を「出力側」とし、回転軸2の軸方向の他方側である図1等のX2方向側を「反出力側」とする。また、以下の説明では、回転軸2の軸方向を「軸方向」とし、回転軸2の径方向を「径方向」とする。
【0024】
モータ1は、ロータ4およびステータ5に加えて、ステータ5の出力側の端面に固定されるフレーム6と、ステータ5の反出力側の端面に固定される端板7と、回転軸2の出力側部分を支持する出力側軸受8と、回転軸2の反出力側部分を支持する反出力側軸受9とを備えている。また、モータ1は、回転軸2の反出力側部分を径方向にのみ付勢するためのバネ部材10と、回転軸2の反出力側への移動範囲を規制するための規制部材11とを備えている。
【0025】
回転軸2の出力側の大半部分は、ステータ5よりも出力側へ突出している。回転軸2の、ステータ5から出力側に突出している部分は、外周面に送りねじが形成された送りねじ軸(リードスクリュー)2aとなっている。回転軸2の外周面には、円筒状のブッシュ16が固定されている。ブッシュ16は、送りねじ軸2aよりも反出力側に配置されている。駆動用磁石3は、円筒状に形成されている。駆動用磁石3の内周面は、接着剤によって、ブッシュ16の外周面に固定されており、駆動用磁石3は、送りねじ軸2aよりも反出力側に配置されている。なお、本形態のモータ1が所定の上位装置に組み込まれると、ロータ4は、出力側に付勢される。すなわち、モータ1が所定の上位装置に組み込まれると、回転軸2は、出力側に付勢される。
【0026】
ステータ5は、全体として略円筒状に形成されている。ステータ5の出力側の端面および反出力側の端面は、回転軸2の軸方向に直交する円環状の平面となっている。ステータ5は、駆動用磁石3の外周面に対向配置される極歯が形成されるステータコア17と、ボビン18を介してステータコア17に巻回される駆動用コイル19とを備えている。ボビン18には、端子20が固定される端子台18aが形成されている。端子台18aは、径方向に突出している。端子20には、駆動用コイル19を構成する導線の端部が電気的に接続されている。
【0027】
フレーム6は、角溝状に形成されており、底面部6aと、底面部6aの出力側端から直角に立ち上がる側面部6bと、底面部6aの反出力側端から直角に立ち上がる側面部6cとから構成されている。ステータ5の前端面には、側面部6cが固定されている。側面部6cには、回転軸2が挿通される貫通穴が形成されている。
【0028】
端板7は、円板状の基部7aと、バネ部材10を保持するために反出力側に向かって立ち上がる平板状の立上部7bとから構成されている。基部7aは、基部7aの厚さ方向と軸方向とが一致するように配置されている。上述のように、端板7は、ステータ5の反出力側の端面に固定されている。具体的には、基部7aがステータ5の反出力側の端面に固定されている。端板7の具体的な構成については後述する。
【0029】
出力側軸受8は、回転軸2の出力側部分を径方向および軸方向で支持している。具体的には、出力側軸受8は、回転軸2の出力側の端部を径方向および軸方向で支持している。出力側軸受8は、鍔付きの有底円筒状に形成される軸受部材23と、軸受部材23の内部に配置される球状のボール24とから構成されている。軸受部材23は、フレーム6の側面部6bに保持されている。回転軸2の出力側の端面には、ボール24の一部が配置される凹部が形成されている。出力側軸受8は、回転軸2の出力側への移動を規制している。
【0030】
反出力側軸受9は、回転軸2の反出力側部分を径方向で支持している。反出力側軸受9は、鍔付きの円筒状に形成される軸受部材によって構成されている。反出力側軸受9は、端板7に保持されている。具体的には、反出力側軸受9は、基部7aの中心部に保持されている。反出力側軸受9の反出力側端は、基部7aの反出力側の面よりも反出力側に配置されている。回転軸2の反出力側の端部は、反出力側軸受9よりも反出力側に配置されている。回転軸2の、反出力側軸受9よりも反出力側に突出する部分は、突出部2bとなっている。
【0031】
本形態のバネ部材10は、板バネである。したがって、本形態では、バネ部材10を「板バネ10」とする。また、規制部材11は、回転軸2の突出部2bを覆うカバーである。したがって、以下の説明では、規制部材11を「カバー11」とする。以下、端板7、板バネ10およびカバー11の具体的な構成を説明する。
【0032】
(端板、板バネおよびカバーの構成)
図3は、図2のE-E方向から回転軸2、端板7、反出力側軸受9および板バネ10を示す図である。
【0033】
端板7は、上述のように、基部7aと立上部7bとから構成されている。ステータ5の反出力側の端面に固定される基部7aの出力側の面には、駆動用磁石3の反出力側の端面が対向している(図2参照)。軸方向における駆動用磁石3の反出力側の端面と基部7aの出力側の面との間には、隙間G1が形成されている。すなわち、端板7には、駆動用磁石3の反出力側の端面が隙間G1を介して対向配置されている。立上部7bは、基部7aの一部が反出力側に向かって切り起こされることで形成されている。立上部7bは、反出力側軸受9よりも径方向の外側に配置されている。立上部7bの反出力側端は、反出力側軸受9の反出力側端よりも反出力側に配置されている。
【0034】
平板状に形成される立上部7bの厚さ方向は、径方向と一致している。立上部7bの径方向の外側には、立上部7bの切り起こしに伴って形成される四角形の貫通穴7cが形成されている。立上部7bには、板バネ10を位置決めするための凸部7dが形成されている。具体的には、径方向の内側を向く立上部7bの一方の面7e(以下、「一方面7e」とする。)に2個の凸部7dが形成されている。立上部7bの一方面7eと、一方面7eの反対側の面(すなわち、径方向の外側を向く面)である他方面7fは、径方向に直交する平面となっている。
【0035】
板バネ10は、ステンレス鋼板等の薄い1枚の金属板を所定形状に折り曲げることで形成されている。板バネ10は、回転軸2に接触する軸接触部10aと、立上部7bの一方面7eに接触する端板接触部10bと、軸接触部10aの一端と端板接触部10bとを繋ぐ連結部10cと、軸接触部10aの他端に繋がる折り曲げ部10dとから構成されている。
【0036】
軸接触部10aは、回転軸2の軸方向から見たときの形状が直線となる平板状に形成されている。連結部10cは、回転軸2の軸方向から見たときの形状が半円弧となる曲板状に形成されている。端板接触部10bは、回転軸2の軸方向から見たときの形状が直線となる平板状に形成されている。端板接触部10bは、立上部7bの一方面7eに面接触している。本形態では、軸接触部10aと連結部10cと端板接触部10bとによって回転軸2の軸方向から見たときの形状がU形状となるU形状部10hが構成されている。
【0037】
端板接触部10bは、立上部7bの一方面7eに所定の接触圧で接触している。また、軸接触部10aは、回転軸2の突出部2bの外周面に所定の接触圧で接触しており、突出部2bを立上部7bから離れる方向に付勢している。すなわち、本形態では、U形状部10hが立上部7bの一方面7eと回転軸2とに接触して、突出部2bを立上部7bから離れる方向に付勢している。端板接触部10bには、立上部7bの凸部7dが嵌る係合穴が形成されている。すなわち、U形状部10hには、凸部7dが嵌る係合穴が形成されている。
【0038】
カバー11は、有底の筒状に形成されている。具体的には、カバー11は、円筒状の円筒部11aと、円筒部11aの一端を塞ぐ底部11bとを有する有底円筒状に形成されている。円筒部11aの出力側の端面は、端板7の基部7aの反出力側の面に接触している。底部11bは、円板状に形成されており、カバー11の反出力側の端部を構成している。底部11bは、回転軸2の反出力側端より反出力側に配置されている。底部11bには、回転軸2の反出力側端が接触可能となっている。本形態の底部11bは、回転軸2の反出力側端が接触可能な軸接触部である。
【0039】
円筒部11aは、基部7aと一緒にステータ5に固定されている。すなわち、カバー11は、端板7と一緒にステータ5に固定されている。たとえば、カバー11は、溶接またはカシメ加工によって、端板7と一緒にステータ5に固定されている。カバー11は、径方向の外側から回転軸2の突出部2bを覆うとともに反出力側から突出部2bを覆っている。また、円筒部11aは、径方向において、板バネ10および立上部7bよりも外側に配置されており、カバー11は、径方向の外側および反出力側から板バネ10および立上部7bを覆っている。本形態では、突出部2b、板バネ10および立上部7bの全体がカバー11によって覆われている。
【0040】
回転軸2の軸方向において、回転軸2の反出力側端と底部11bとの間には隙間G2が(図2参照)形成されている。本形態では、回転軸2の軸方向における回転軸2の反出力側端と底部11bとの間の隙間G2は、回転軸2の軸方向における駆動用磁石3の反出力側の端面と端板7との間の隙間G1よりも狭くなっている。そのため、ロータ4が反出力側に移動して、回転軸2の反出力側端が底部11bに接触しても、駆動用磁石3の反出力側の端面は端板7に接触しない。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、板バネ10は、回転軸2の反出力側部分を径方向にのみ付勢するために設けられており、回転軸2の反出力側端とカバー11の底部11bとの間に板バネ10の一部は配置されていない。そのため、本形態では、比較的強い力で回転軸2を径方向に付勢できるように板バネ10が形成されていても、板バネ10の影響を受けることなく、カバー11によって回転軸2の反出力側への移動距離を設定することが可能になる。
【0042】
したがって、本形態では、比較的強い力で回転軸2を径方向に付勢することが可能であっても、反出力側への過剰な力が回転軸2に作用したときの回転軸2の反出力側への移動距離を抑制することが可能になる。また、本形態では、回転軸2の反出力側端とカバー11の底部11bとの間に板バネ10の一部が配置されていないため、反出力側への過剰な力が回転軸2に作用したときの板バネ10の損傷を防止することが可能になる。
【0043】
本形態では、回転軸2の軸方向における回転軸2の反出力側端と底部11bとの間の隙間G2は、回転軸2の軸方向における駆動用磁石3の反出力側の端面と端板7との間の隙間G1よりも狭くなっており、ロータ4が反出力側に移動して、回転軸2の反出力側端が底部11bに接触しても、駆動用磁石3の反出力側の端面は端板7に接触しない。そのため、本形態では、反出力側への過剰な力が回転軸2に作用して回転軸2が反出力側に移動したときの駆動用磁石3の損傷を防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、板バネ10のU形状部10hが、立上部7bの一方面7eと回転軸2の突出部2bとに接触して、立上部7bから離れる方向に突出部2bを付勢している。そのため、本形態では、比較的簡易な構成で回転軸2の反出力側部分を径方向に付勢することが可能になる。また、本形態では、板バネ10を位置決めするための凸部7dが立上部7bに形成され、板バネ10のU形状部10hに凸部7bが嵌る係合穴が形成されているため、比較的簡易な構成で板バネ10を位置決めすることが可能になる。
【0045】
(バネ部材の変形例)
図4は、本発明の他の実施の形態にかかるバネ部材10を説明するための図である。なお、図4では、上述した形態の構成と同一の構成には同一の符号を付している。
【0046】
上述した形態において、板バネ10は、図4(A)に示すように、平板状の端板接触部10jを備えていても良い。端板接触部10jは、端板接触部10jの厚さ方向と回転軸2の軸方向とが一致するように配置されており、端板接触部10jは、端板7の基部7aの反出力側の面に接触している。また、端板接触部10jは、端板接触部10bに繋がっている。立上部7bの他方面7fには、端板接触部10jの端面が所定の接触圧で接触している。この場合には、基部7aに、板バネ10を位置決めするための凸部7dが形成されている。また、端板接触部10jに凸部7dが嵌る係合穴が形成されている。
【0047】
上述した形態において、回転軸2の反出力側部分を径方向にのみ付勢するためのバネ部材10は、図4(B)に示すように、引張りコイルバネでも良い。この場合には、端板7に立上部7bは形成されていない。また、この場合には、引張りコイルバネの一端部が係合するバネ係合部7hが端板7に形成されており、引張りコイルバネの他端部は、回転軸2の突出部2bに係合している。
【0048】
また、回転軸2の反出力側部分を径方向にのみ付勢するためのバネ部材10は、図4(C)に示すように、ネジリコイルバネでも良い。この場合にも、端板7に立上部7bは形成されていない。また、この場合には、ネジリコイルバネが挿通されるバネ保持部7kと、ネジリコイルバネの一端部が係合するバネ係合部7jとが端板7に形成されており、ネジリコイルバネの他端部は、回転軸2の突出部2bに係合している。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態において、出力側軸受8は、ボール24を備えていなくても良い。この場合には、たとえば、回転軸2の出力側の端面が半球状に形成されている。また、上述した形態において、ブッシュ16と端板7との間に、ロータ4を出力側に付勢する圧縮コイルバネが配置されていても良い。
【0051】
上述した形態において、板バネ10は、溶接または接着等によって端板7に固定されていても良い。具体的には、端板接触部10bが立上部7bに固定されていても良い。また、上述した形態において、回転軸2の突出部2bは、回転軸2の周方向の一部においてカバー11に覆われていなくても良い。さらに、上述した形態において、回転軸2に送りねじが形成されていなくても良い。また、上述した形態において、モータ1は、ステッピングモータ以外のモータであっても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ
2 回転軸
2b 突出部
3 駆動用磁石
4 ロータ
5 ステータ
7 端板
7b 立上部
7d 凸部
8 出力側軸受
9 反出力側軸受
10 板バネ(バネ部材)
10h U形状部
11 カバー(規制部材)
11b 底部(軸接触部)
G1 回転軸の軸方向における回転軸の反出力側端と軸接触部との間の隙間
G2 回転軸の軸方向における駆動用磁石の反出力側の端面と端板との間の隙間
X1 出力側
X2 反出力側
図1
図2
図3
図4
図5
図6