(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】加飾フィルム用粘着剤組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20240530BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240530BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2020158627
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 翔太
(72)【発明者】
【氏名】米川 雄也
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-231436(JP,A)
【文献】特開2018-159019(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/091927(JP,A1)
【文献】特開2017-052146(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080244(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/126849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
B29C 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、
カルボキシ基含有モノマー(a2)を1質量%以上
10質量%以下と、
ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを主成分としたマクロモノマー(a3)を2質量%以上
30質量%以下と
を含むモノマー成分の共重合体であって、Tgが
-37.4℃以上である(メタ)アクリル系共重合体(A)
と、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01~5質量部のエポキシ系架橋剤と
を含む
組成物(ただし、炭素数が1~14のアルキル基を有するアクリル酸系アルキルエステルを主成分とする室温粘着性の共重合体を主鎖とし、ガラス転移点が70~150℃の重合体を側鎖とするグラフトポリマーを含有する水分散液を除く)である、
加飾フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマー成分が、窒素含有モノマー(a4)を0.1~5質量%含む、請求項1に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記マクロモノマー(a3)の数平均分子量(Mn)が2000~20000である、請求項1または2に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、基材層とを有する加飾フィルム。
【請求項5】
前記基材層が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABSから選ばれる少なくとも1種以上の基材からなる、請求項4に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
車両の内装部品用または外装部品用である、請求項4または5に記載の加飾フィルム。
【請求項7】
車両の外装部品用である、請求項4~6のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の加飾フィルムを有する加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム用粘着剤組成物、該加飾フィルム用粘着剤組成物を用いた加飾フィルム、ならびに加飾フィルムを有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の揮発性有機化合物(VOC)削減の潮流により、各自動車メーカーでは外装塗装を、粘着剤層を有する加飾フィルムで代替する動きが活発である。この加飾フィルムに用いられる粘着剤の要求項目に初期貼り直し性がある。初期貼り直し性とは粘着加工した加飾フィルムを被着体に貼り付ける際に、位置ずれが発生した場合、容易に剥がすことができ、貼り直すことができる性能である。さらに加飾成型後は剥がれることなく、高い耐久性が求められる。また、加飾フィルムに再剥離性の機能があれば、被着体材料を汚染することなく剥がすことができ、洗浄することなく別の加飾フィルムを貼り合わせることで異なる意匠性を付与することができる。
【0003】
特許文献1には、2種の特定のアクリル系ポリマーを含む粘着剤が、看板等の物品、建築物および車輌等の宣伝広告や装飾を目的として用いられる装飾粘着シート用の粘着剤として好適であり、これを用いた装飾シートが、使用後は糊残りせずに剥離できることが記載されている。具体的には、n-ブチルアクリレート70部、メチルアクリレート20部、2-エチルヘキシルアクリレート4部およびアクリル酸6部を共重合して得られた、Mwが91万、Tgが-39℃のアクリル系重合体75質量部と、アクリル系低分子量体25質量部と、エポキシ系硬化剤を含む粘着剤組成物が、屋外対候性がよく、オレフィン素材にも粘着性が良好であり、使用後に糊残りせず剥離し得ることが教示されている。しかしながら、このような粘着剤を用いたシートは、初期の貼り直し特性が不十分であるという問題があった。
なお特許文献2には、マクロモノマーを共重合成分とした(メタ)アクリル系共重合体を用いて形成された粘着層を有する粘着テープが記載されているが、初期貼り直し特性については何ら記載されておらず、初期貼り直し性と、その後の高い粘着性とが求められる用途への使用が見込まれるものではない。
このように現状では、初期の貼り直し性が良好であり、耐久性が高く、しかも再剥離性に優れた加飾フィルム用粘着剤は存在しないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5433773号公報
【文献】特開2016-222839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好な初期の貼り直し性、高い耐久性、および優れた再剥離性を兼ね備えて有する、加飾フィルム用粘着剤組成物、該加飾フィルム用粘着剤組成物を用いた加飾フィルム、ならびに加飾フィルムを有する成形体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のような状況に鑑みて鋭意検討した結果、特定のマクロモノマーを含むモノマー成分から得られ、Tgが高い(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の〔1〕~〔8〕に関する。
【0007】
〔1〕(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、
カルボキシ基含有モノマー(a2)を1質量%以上15質量%未満と、
ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを主成分としたマクロモノマー(a3)を2質量%以上40質量%未満と
を含むモノマー成分の共重合体であって、Tgが-40℃以上である(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む
加飾フィルム用粘着剤組成物。
【0008】
〔2〕前記モノマー成分が、窒素含有モノマー(a4)を0.1~5質量%含む、〔1〕に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物。
〔3〕前記マクロモノマー(a3)の数平均分子量(Mn)が2000~20000である、〔1〕または〔2〕に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の加飾フィルム用粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、基材層とを有する加飾フィルム。
〔5〕前記基材層が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABSから選ばれる少なくとも1種以上の基材からなる、〔4〕に記載の加飾フィルム。
【0009】
〔6〕車両の内装部品用または外装部品用である、〔4〕または〔5〕に記載の加飾フィルム。
〔7〕車両の外装部品用である、〔4〕~〔6〕のいずれかに記載の加飾フィルム。
〔8〕〔4〕~〔7〕のいずれかに記載の加飾フィルムを有する加飾成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な初期の貼り直し性、高い耐久性、および優れた再剥離性を兼ね備えて有する、加飾フィルム用粘着剤組成物、該加飾フィルム用粘着剤組成物を用いた加飾フィルム、ならびに加飾フィルムを有する成形体を提供することができる。本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、加飾フィルムの粘着剤層に好適に用いることができ、これを用いた加飾フィルムは、初期の貼り直し性、耐久性、および再剥離性に優れる。本発明に係る加飾フィルムは、各種成形体の表面加飾に使用でき、自動車、列車等の車両内外装部品の加飾用途に特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルを総称する意味で用いる。例えば、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。また、本発明において、数値範囲を表すA~Bは、特に断りのない限り、A以上B以下を意味する。
【0012】
<加飾フィルム用粘着剤組成物>
本発明に係る加飾フィルム用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)および必要に応じてその他の成分を含有する組成物である。
【0013】
(メタ)アクリル系共重合体(A)
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、カルボキシ基含有モノマー(a2)を1質量%以上15質量%未満と、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを主成分としたマクロモノマー(a3)を2質量%以上40質量%未満とを含むモノマー成分の共重合体であり、前記モノマー成分を共重合して得られる。モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、カルボキシ基含有モノマー(a2)およびマクロモノマー(a3)に加えて、窒素含有モノマー(a4)および/またはその他のモノマーを含んでもよい。
【0014】
≪(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)≫
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、アルキル基が好ましくは炭素数1~20、より好ましくは1~10である、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、アルキル基としては、直鎖状のアルキル基であっても、分岐を有するアルキル基であってもよい。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)は、1種または2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する構造単位を有することができる。
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中における、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)の含有割合は、通常40~97質量%、好ましくは50~97質量%、より好ましくは60~97質量%、さらに好ましくは70~97質量%の範囲である。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する構造単位を、通常40~97質量%、好ましくは50~97質量%、より好ましくは60~97質量%、さらに好ましくは70~97質量%有する。
【0016】
≪カルボキシ基含有モノマー(a2)≫
カルボキシ基含有モノマー(a2)としては、カルボキシ基を含有するとともに、重合性二重結合を含有するモノマーを特に制限なく用いることができるが、好ましくは、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。カルボキシ基含有モノマー(a2)には、開環してカルボキシ基を生じる酸無水物基含有モノマーを含める。
【0017】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)は、1種または2種以上のカルボキシ基含有モノマー(a2)に由来する構造単位を有することができる。
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中のカルボキシ基含有モノマー(a2)量は、1質量%以上15質量%未満、好ましくは1~12質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~8質量%である。また、共重合体(A)は、カルボキシ基含有モノマー(a2)に由来する構造単位を、1質量%以上15質量%未満、好ましくは1~12質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~8質量%有する。
【0018】
カルボキシ基含有モノマー(a2)を前記量で共重合して得られる共重合体(A)を含む加飾フィルム用粘着剤組成物を用いることにより、得られる加飾フィルムの粘着剤層の被着体表面への濡れ性が低下し、貼付直後の粘着力を低く抑えられることから、加飾フィルムの初期の貼り直し性が向上する傾向にある。
【0019】
カルボキシ基含有モノマー(a2)を前記量で共重合して得られる共重合体(A)を含む加飾フィルム用粘着剤組成物を用いることにより、得られる加飾フィルムの粘着剤層は、被着体への貼付から一定時間経過後に粘着力が上昇し、高粘着力を発現する傾向にある。
【0020】
≪マクロモノマー(a3)≫
マクロモノマー(a3)は、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを主成分としたマクロモノマーである。マクロモノマー(a3)は、重合性不飽和基を有している。重合性不飽和基としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合が挙げられる。一例を挙げれば、末端に(メタ)アクリロイル基を有する重合体である。
【0021】
前記マクロモノマーの重合性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する他のモノマーとラジカル重合反応を起こし、前記マクロモノマーは(メタ)アクリル系共重合体(A)中に取り込まれる。そして(メタ)アクリル系共重合体(A)として見ると、前記マクロモノマーに基づく側鎖が形成されることになる。この側鎖により、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子同士が密集することが防がれ、それにより粘着剤層は柔軟な構造になると考えられる。
【0022】
マクロモノマー(a3)は、例えば、数平均分子量(Mn)が通常は500~10万、好ましくは1000~5万、より好ましくは2000~20000の重合体である。本明細書において数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0023】
マクロモノマー(a3)は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは50~180℃、より好ましくは80~150℃である。このため、(メタ)アクリル系共重合体(A)を含有する前記粘着剤層は、耐ブリスター性などの耐久性に優れている。重合性マクロモノマーのTgは、Foxの式より求めた値を採用してもよく、市販品を使用する場合はカタログ記載値を採用してもよい。
【0024】
Foxの式:1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
前記式中、Tgは(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(K)であり、Tg1,Tg2,…,Tgmは各モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W1,W2,…,Wmは各モノマーに由来する構造単位の前記共重合体(A)における質量分率である。各モノマーに由来する構造単位の質量分率としては、共重合体合成時の各モノマーの全モノマーに対する仕込み割合を用いることができる。
【0025】
Foxの式の計算時において、各モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience 2003)に記載された値を採用することができる。
【0026】
マクロモノマー(a3)を構成する重合体鎖(主鎖)部分のモノマーの例としては、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーが好適であり、当該モノマーがマクロモノマーを構成するモノマーの主成分となる。本発明に係るマクロモノマー(a3)は、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有するモノマー成分から得られる。
【0027】
本発明において、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、Polymer Handbook Forth Edition(Wiley-Interscience 2003)に記載された値を用いることができる。ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上となるモノマーとしては、特に限定されるものではないが、架橋性官能基を有さないモノマーが好ましく、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式基含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等であることがより好ましい。
【0028】
マクロモノマー(a3)を構成する、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上となるモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、t-ブチルメタクリレート(Tg:118℃)、スチレン(Tg:105℃)等が挙げられる。
【0029】
マクロモノマー(a3)は、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上となるモノマーを、マクロモノマーの主成分としていればよく、1種以上の当該モノマーに由来する構成単位を主成分として有することができる。マクロモノマー(a3)は、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃未満であるその他のモノマーをマクロモノマーの少量成分として含んでもよく、1種以上のその他のモノマーから導かれる構成単位を少量成分として有してもよい。
【0030】
マクロモノマー(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル系マクロモノマー、(メタ)アクリロニトリル系マクロモノマー、およびスチレン系マクロモノマーのうち、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上となるモノマーを主成分としてなるものが好ましい。このようなマクロモノマー(a3)は、公知の種々の方法に従って製造することができ、例えば、特開2013-018227号公報の段落[0039]に記載された方法により製造することができる。
【0031】
マクロモノマー(a3)としては、市販品を用いてもよく、例えば、主鎖構成モノマーがメチルメタクリレートである、末端がメタクリロイル基であるマクロモノマー(製品名:45%AA-6(AA-6S)、AA-6;東亞合成製)などを用いることができる。マクロモノマー(a3)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中のマクロモノマー(a3)量は、2質量%以上40質量%未満、好ましくは2~35質量%、より好ましくは2~30質量%である。また、共重合体(A)は、マクロモノマー(a3)に由来する構造単位を、2質量%以上40質量%未満、好ましくは2~35質量%、より好ましくは2~30質量%有する。
【0033】
前モノマー成分中のマクロモノマー(a3)量が、前記下限値以上であると、被着体と粘着剤層との界面での発泡拡大の抑制により耐ブリスター性に優れ、耐久性に優れたものとなるため好ましく、また、前記上限値以下であると、基材や被着体との密着性に優れたものとなるため好ましい。
【0034】
≪窒素含有モノマー(a4)≫
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、カルボキシ基含有モノマー(a2)およびマクロモノマー(a3)に加え、窒素含有モノマー(a4)を含むモノマー成分の共重合体であってもよい。すなわち(メタ)アクリル系共重合体(A)は、窒素含有モノマー(a4)から導かれる構成単位を有してもよい。
【0035】
窒素含有モノマー(a4)としては、窒素を含有するとともに、重合性二重結合を含有するモノマーを特に制限なく用いることができ、たとえばアミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーなどが挙げられるが、好ましくは、アミノ基含有モノマー、すなわちアミノ基類を含有するとともに重合性二重結合を含有するモノマーを用いることができる。ここで、アミノ基類としては、-NH2で表される基の他、例えば、-NHRで表される基、-NR2で表される基が包含される。ここでRは、例えばアルキル基である。
【0036】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。窒素系複素環含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0037】
窒素含有モノマー(a4)としては、好ましくは、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートにおけるジアルキルアミノアルキル基の炭素数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中の窒素含有モノマー(a4)量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.1~3質量%である。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、窒素含有モノマー(a4)に由来する構造単位を、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.1~3質量%有する。
【0039】
本発明に係る加飾フィルム用粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系共重合体(A)が窒素含有モノマー(a4)を含むモノマー成分の共重合体であることにより、密着性が適度に低下し、得られる加飾フィルムの初期の貼り直し性を向上させることができる。
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中の窒素含有モノマー(a4)量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下であると、得られる粘着剤層が耐久性に優れる傾向にあるため好ましい。
【0040】
≪その他のモノマー≫
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前述した(a1)~(a4)以外の他のモノマーに由来する構造単位を有してもよい。他のモノマーとしては、例えば、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、水酸基含有モノマー、酢酸ビニル、上記(a3)以外の重合性マクロモノマーが挙げられる。
【0041】
脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等の官能基化スチレンが挙げられる。
【0044】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
上記(a3)以外の重合性マクロモノマーを構成する重合体鎖(主鎖)部分のモノマーの例としては、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃未満であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、前記アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、また、(メタ)アクリロニトリル;スチレンおよびα-メチルスチレン等のスチレン系モノマーも挙げられる。(a3)以外の重合性マクロモノマーとしては、例えば、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃未満であるモノマーを主成分とした、(メタ)アクリル系マクロモノマー、(メタ)アクリロニトリル系マクロモノマー、およびスチレン系マクロモノマーが好ましい。
【0046】
その他のモノマーの中では、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、1種または2種以上のその他のモノマーに由来する構造単位を有することができる。
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るために用いられる全モノマー成分中の他のモノマー量は、好ましくは47質量%以下、より好ましくは41質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)において、他のモノマーに由来する構造単位量は、好ましくは47質量%以下、より好ましくは41質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0048】
≪(メタ)アクリル系共重合体(A)の物性および製造方法≫
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記モノマー成分を重合することにより得られる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の方法が挙げられ、これらの中でも溶液重合法が好ましい。
【0049】
例えば、反応容器内に重合溶媒およびモノマー成分を仕込み、重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常は40~100℃、好ましくは50~90℃に設定し、反応系を通常は50~90℃、好ましくは70~90℃の温度に維持して、2~20時間反応させる。重合反応は、例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、上述したモノマー成分を重合して得られるが、例えば、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。これらの中では、ランダム共重合体が好ましい。
【0051】
重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0052】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤が挙げられる。
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0053】
過酸化物系開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0054】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
重合開始剤は、(メタ)アクリル系共重合体(A)のモノマー成分100質量部に対して、通常は0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部の範囲内の量で使用される。また、重合反応中に、モノマー成分、重合開始剤および重合溶媒から選ばれる1種または2種以上を適宜追加添加してもよい。
【0055】
≪(メタ)アクリル系共重合体(A)の物性≫
(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、通常は20万~200万、好ましくは30万~150万、より好ましくは40万~120万である。このような態様であると、耐久性に優れた粘着剤が得られる傾向にある。
【0056】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の、Mwと数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、通常は2~15、好ましくは3~13、より好ましくは4~11である。このような態様であると、耐久性に優れた粘着剤が得られる傾向にある。
Mw、MnおよびMw/Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0057】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以上であり、好ましくは-40~-10℃、より好ましくは-35~-15℃である。このような態様であると、再剥離性に優れた粘着剤が得られる傾向にある。ガラス転移温度は、前述のいわゆるFoxの式により算出することができる。
【0058】
架橋剤
本発明に係る加飾フィルム用粘着剤組成物は、上述した(メタ)アクリル系共重合体(A)に加えて、架橋剤を含有することができる。
架橋剤としては、(メタ)アクリル系共重合体(A)と架橋反応を起こすことができる成分であれば特に限定されない。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0059】
架橋剤は1種または2種以上を用いることができる。
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物において、架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部、さらに好ましくは0.01~1質量部である。このような態様であると、架橋構造が充分かつ適度に形成され、凝集力が高く、また粘着物性のバランスに優れ、耐久性に優れた粘着剤を得ることができる。
【0060】
≪エポキシ系架橋剤≫
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1分子中のエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。前記エポキシ化合物における1分子中のエポキシ基数は、例えば2~10である。
エポキシ系架橋剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
≪金属キレート系架橋剤≫
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等の成分が配位した化合物が挙げられる。これらの中でも、アルミキレート化合物が好ましい。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
金属キレート系架橋剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0062】
≪イソシアネート系架橋剤≫
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0063】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0064】
添加剤
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(メタ)アクリル系共重合体以外の樹脂成分、帯電防止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤、充填剤、安定剤、軟化剤、および濡れ性調整剤から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0065】
有機溶媒
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、その塗布性を調整するため、有機溶媒を含有することが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
【0066】
有機溶媒は1種または2種以上用いることができる。
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物において、有機溶媒の含有割合は、通常は0~90質量%であり、好ましくは10~80質量%である。
【0067】
加飾フィルム用粘着剤組成物
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、上述した(メタ)アクリル系共重合体(A)を含有する組成物である。このような粘着剤組成物から得られる粘着剤層は、初期の貼り直し性が良好であり、耐久性が高く、再剥離性に優れる。
【0068】
加飾フィルム用粘着剤組成物の製造方法
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、上述の各成分を、公知の方法により逐次または同時に混合することにより製造することができる。
すなわち本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、必要に応じて架橋剤(C)、添加剤、有機溶媒等の他の成分とを、従来公知の方法により混合することで調製することができる。一実施態様では、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)を合成する際に得られた、当該ポリマーと有機溶媒とを含むポリマー溶液に、必要に応じて架橋剤(C)、添加剤等を配合することが挙げられる。
【0069】
<加飾フィルム>
本発明の加飾フィルムは、上述の加飾フィルム用粘着剤組成物から得られる粘着剤層と、基材層とを有する。本発明の加飾フィルムでは、基材層が加飾の役割を果たすことが好ましいが、装飾層を有していてもよい。また本発明の加飾フィルムは、使用するまでの間粘着剤層を保護する、剥離フィルムを粘着剤層上に有していてもよい。
【0070】
粘着剤層
本発明の加飾フィルムの粘着剤層は、上述した本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物から形成される。
粘着剤層は、例えば、上述の加飾フィルム用粘着剤組成物を基材上あるいは加飾層上に塗布し、必要に応じて架橋することにより得ることができる。すなわち、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように加飾フィルム用粘着剤組成物を塗布し、乾燥する方法を用いることができる。具体的には、例えば、前記加飾フィルム用粘着剤組成物を、基材上あるいは加飾層上に塗布し、通常は60~120℃、好ましくは70~110℃で、通常は1~10分間、好ましくは2~5分間乾燥し、塗膜を形成する。続いて、通常は1日以上、好ましくは2~10日間、通常は5~60℃、好ましくは15~50℃、通常は30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で養生(熟成)する。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋体(ネットワークポリマー)の形成が可能である。
粘着剤層の厚さは、通常3~1000μm、好ましくは5~500μmである。
【0071】
基材層
基材層は、通常は、装飾対象である被着体に加飾フィルムを貼付して得られた加飾成形体における最外層を構成する。基材層を構成する基材は、有色であっても、無色であってもよく、透明、半透明および不透明のいずれでもよい。また、基材層は、通常フィルム状あるいはシート状であり、単層構造でも複数の層で構成されていてもよい。
【0072】
基材層は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)から選ばれる少なくとも1種からなることがより好ましい。
【0073】
基材層には、必要に応じて、シリカ等の無機粒子、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤等の機能性付与物質が含まれていてもよい。また、基材表面に意匠性を付与するための模様、文字および絵柄などが印刷されていてもよく、基材内部に模様、文字および絵柄などが形成されていてもよい。
基材層は、フィルム状あるいはシート状であることが好ましい。基材層の厚さは、通常10~1000μm、好ましくは20~500μm、より好ましくは50~300μmである。
【0074】
装飾層
本発明の加飾フィルムは、基材層と粘着剤層との間あるいは基材層上に、装飾層をさらに有することができる。装飾層は、加飾フィルムに意匠性を付与するために設けられる層であり、模様、文字および絵柄などを表現する層である。
【0075】
剥離フィルム
本発明に係る加飾フィルムは、必要に応じて、粘着剤層上に剥離フィルムを有していてもよい。剥離フィルムは、加飾フィルムを実際に使用するまでの間、粘着剤層の表面を保護するものであり、加飾フィルムの使用時に剥離除去される。剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離が容易に行なえるフィルムであれば特に限定されず、樹脂フィルムが挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンのフィルムが挙げられる。剥離フィルムの少なくとも片面は、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系または脂肪酸アミド系等の剥離処理剤により、易剥離処理が施されていてもよい。
剥離フィルムの厚さは通常は10~500μm、好ましくは25~200μmである。
【0076】
加飾フィルムの製造方法
本発明の加飾フィルムの製造には、本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物からなる粘着剤層と、基材層とを有する加飾フィルムを形成し得る方法を特に制限なく採用することができる。例えば、本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物を、基材層上に塗布・乾燥して粘着剤層を形成する方法;該方法により得られた加飾フィルムの粘着剤層上に必要に応じてさらに剥離フィルムを貼り合わせる方法;本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布し乾燥して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層における剥離フィルムとは接しない露出した面と基材層となる基材とを貼り合わせ、養生して形成する方法;等の方法が挙げられる。
【0077】
粘着剤層は、通常、上述した本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物を、基材層を構成する基材上または剥離フィルム上に塗布し、乾燥することにより得ることができる。乾燥条件は、組成物中に含まれる有機溶媒の種類や、粘着剤層の厚さ等によっても異なるが、通常は乾燥温度が50~150℃であり、乾燥時間が1~10分間である。
【0078】
加飾フィルム用粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法が挙げられる。
【0079】
養生の条件は、例えば以下のとおりである。通常は1日以上、好ましくは2~10日間、通常は5~60℃、好ましくは15~50℃、通常は30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で、養生する。この養生条件で架橋を行うと、(メタ)アクリル系重合体(A)と架橋剤(C)とからなる架橋体(ネットワークポリマー)を効率良く形成することができる。
【0080】
<用途・加飾成形体>
本発明の加飾成形体は、被着体である成形体の表面の少なくとも一部に、本発明の加飾フィルムを貼付したものである。
本発明の加飾フィルムの被着体としては、立体形状を有する物品などの成形体が挙げられ、3次元曲面を有する物品が好ましい。具体的には、車両の車体、車両内装材、建材、化粧板が挙げられる。なお、「車両」としては、例えば、乗用車、バス、トラック等の4輪車;オートバイ、スクーター、原動機付自転車等の二輪車;電車が挙げられる。
【0081】
本発明の加飾フィルムは、車両用フィルム、具体的には車両外装用フィルム(例:カーラッピング用フィルム)として特に好ましく用いられる。カーラッピング用フィルムを車体に貼付するときには、手作業で大判フィルムの貼り付けを行うことが多く、また貼付から長期間経過後に当該フィルムを車体から剥離することがある。本発明の加飾フィルムは、上述したように初期貼り直し性および再剥離性に優れているので、カーラッピング用フィルムとして好適である。
【0082】
被着体を形成する材料としては、特に制限されず、金属材料;木材;ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックが挙げられ、その表面に塗装が施されていてもよい。
【0083】
加飾フィルムを被着体である成形体に貼付する方法としては、例えば、手作業による貼り付け、真空成形法、圧空成形法、熱高圧成形法が挙げられる。これらの中でも、真空成形法が好ましい。
【0084】
本発明の加飾成形体は、成形体(前述した被着体)と、前記成形体の表面に配置された、前記加飾フィルムから剥離フィルムを除去してなる粘着剤層付き基材とを有する。より具体的には、前記加飾成形体は、成形体、粘着剤層、必要に応じて装飾層、および基材をこの順に有する。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0086】
[重合例1]((メタ)アクリル系共重合体(A-1)の製造)
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素道入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)75部、メチルアクリレート(MA)10部、アクリル酸(AA)5部、マクロモノマー(a3-1)10部、および酢酸エチル200部を仕込み、窒素ガスを導入しながら75℃に昇温した。ここで、マクロモノマー(a3-1)は、主鎖構成モノマーがメチルメタクリレート(MMA、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg):105℃)であり、末端がメタクリロイル基であり、ガラス転移温度(Tg)が105℃、数平均分子量(Mn)が6000のマクロモノマー(製品名:AA-6;東亞合成株式会社製)であった。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、窒素雰囲気下、75~76℃で4時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を酢酸エチルにて希釈し、固形分濃度25質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-1)の重量平均分子量(Mw)は70,000、ガラス転移温度(Tg)(Foxの式による計算値)は-30℃であった。ここで重量平均分子量(Mw)は以下の方法により求めた。
【0087】
[重量平均分子量(Mw)]
(メタ)アクリル系共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を求めた。
・測定装置:HLC-8220GPC(東ソー製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー製)(1)TSK-GEL HXL-H (ガードカラム)(2)TSK-GEL G7000HXL(3)TSK-GEL GMHXL(4)TSK-GEL GMHXL(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0088】
[重合例2~8、12~17]
モノマー組成を表1(組成の単位は質量部)に記載したとおりに変更したこと以外は上記重合例1と同様に重合を行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-2)~(A-8)、(A’-1)~(A’-6)を得た。表1中、マクロモノマー(a3-2)は、主鎖構成モノマーがブチルアクリレート(BA、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg):-50℃)であり、末端がメタクリロイル基であり、ガラス転移温度(Tg)が-50℃、数平均分子量(Mn)が6000のマクロモノマー(製品名:AB-6;東亞合成株式会社製)であった。得られた各(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)を表1に併せて示す。
【0089】
[重合例9]
2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの量を0.2部に変更したこと以外は上記重合例1と同様に行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-9)を得た。得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-9)の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0090】
[重合例10]
2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの量を0.15部に変更したこと以外は上記重合例1と同様に行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-10)を得た。得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-10)の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0091】
[重合例11]
2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの量を0.08部に変更したこと以外は上記重合例1と同様に行い、(メタ)アクリル系共重合体(A-11)を得た。得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-11)の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)を表1に示す。
【0092】
[実施例1]
重合例1で得られた(メタ)アクリル系共重合体(A-1)のポリマー溶液に、架橋剤(硬化剤)としてエポキシ系化合物「E-AX」(綜研化学(株)製)を、添加して混合し、粘着剤組成物を得た。配合量は、(メタ)アクリル系共重合体(A-1)100部に対して、エポキシ系化合物「E-AX」の固形分0.09部となる量である。
次いで、得られた粘着剤組成物を用いて、以下のようにして粘着シート試料を作成し、初期貼り直し性、耐久性および耐剥離性を測定あるいは評価した。結果を表1に示す。
【0093】
[粘着シート試料作製]
粘着剤組成物を、剥離処理されたPETフィルム上に塗布し、90℃で4分間乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。その後、厚さ25μmのPETフィルム基材に貼り合わせ、40℃×3日間熟成させて粘着シートを作製した。
【0094】
[ボールタック(初期の貼り直し性)]
J.Dow法により測定した。具体的には、作製した粘着シートから剥離処理されたPETフィルムを剥がし、粘着剤層が露出するように傾斜角30度の傾斜面に取り付けた。次に、23℃/50%RH環境下でスチールボールを傾斜面の上部から助走させた後に、粘着面(粘着剤層表面)上を滑走させた。この際の助走距離は10cm、滑走距離は10cmとした。スチールボールの径を変えて滑走テストを行い、粘着面で滑走を停止したスチールボールの最大径を求めた。なお、使用したスチールボールの径はX/32インチ(但し、Xは1~32の整数)であり、表1中に示す数値はXの値を示している。判定基準は次のとおりである。
判定基準
◎:2以下(タックが低く、貼り直し性が良好である)
○:3~5(タックをやや有するが、使用上問題ない範囲である)
×:6以上(タックが高く、貼り直し性に問題がある)
【0095】
[耐久性試験]
作製した粘着シートを25mm×100mmの大きさに裁断し、剥離処理されたPETフィルムを剥がして、露出した粘着剤層をポリカーボネート板に貼着した。次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して圧着させた。その後、85℃/85%RH環境下に1000時間放置し、外観の観察を行った。判定結果を表1に示す。
判定基準
◎:発泡、剥がれが観察されなかった
○:発泡、剥がれが若干観察されたが、使用上問題ない
×:発泡、剥がれが顕著に観察された
【0096】
[再剥離性試験]
作製した粘着シートを25mm×100mmの大きさに裁断し、粘着面をステンレス板に貼着した。次いで、60℃/90%RH環境下に7日間放置した後、23℃/50%RH環境下で引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離し、その際の剥離形態を観察した。判定結果を表1に示す。
判定基準
◎:被着体と粘着剤層の界面で剥離しており、被着体表面に粘着剤層による付着物がない
○:被着体と粘着剤層の界面で剥離しているが、被着体表面に粘着剤層による汚染がある
×:粘着剤層が破壊されており、被着体表面に粘着剤層の一部が残っている
【0097】
[実施例2~11、比較例1~6]
実施例1において、(メタ)アクリル系共重合体(A-1)のポリマー溶液に替えて、表1に示す(メタ)アクリル系共重合体のポリマー溶液を用いたこと及びエポキシ系化合物「E-AX」の量を表1に記載したとおりに変更したことの他は、実施例1と同様に行い、粘着剤組成物を得た。表1において、架橋剤(硬化剤)として用いたエポキシ系化合物「E-AX」の量は、各(メタ)アクリル系共重合体100部に対する量(質量部)である。表1中の架橋剤の量は固形分量である。
次いで、得られた各粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様に粘着シート試料を作成し、初期貼り直し性、耐久性および再剥離性を測定あるいは評価した。結果を表1に併せて示す。
【0098】
【0099】
実施例1~11より、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、カルボキシ基含有モノマー(a2)を1質量%以上と、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が100℃以上のモノマーを主成分としたマクロモノマー(a3)を2質量%以上とを含むモノマー成分の共重合体であって、Tgが-40℃以上である(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物では、初期貼り直し性、耐久性、再剥離性のいずれもが良好で、加飾フィルムとして好適な粘着フィルムが得られることがわかる。
【0100】
各実施例と比較例1との対比から、(a1)、(a2)、(a3)の共重合体であっても、Tgが-40℃未満である共重合体を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムでは、初期貼り直し性、耐久性、再剥離性のいずれもが、加飾フィルム用途に不十分であることがわかる。
各実施例と比較例2および比較例3との対比から、(a2)成分を含まないか、過剰に含むモノマー成分の共重合体を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムでは、耐久性が加飾フィルム用途に不十分であることがわかる。
【0101】
各実施例と比較例4との対比から、(a3)成分を含まないモノマー成分の共重合体を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムでは、再剥離性が加飾フィルム用途に不十分であることがわかる。
各実施例と比較例5との対比から、(a3)成分含有量が過剰なモノマー成分の共重合体を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムでは、耐久性が加飾フィルム用途に不十分であることがわかる。
【0102】
また、各実施例と比較例6との対比から、Tgが100℃未満であるマクロモノマーを含む成分の共重合体を含む粘着剤組成物を用いた粘着フィルムでは、初期貼り直し性、耐久性および再剥離性が加飾フィルム用途に不十分であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物は、加飾フィルムの粘着剤層の形成に好適である。本発明の加飾フィルムは、車両の車体、車両内装材、建材、化粧板等の成形体の表面加飾に好適に用いられ、車両用フィルム、具体的には、カーラッピング用フィルム車両外装用フィルムとして特に好ましく用いることができる。