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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】簡易構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20240530BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20240530BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
E04B1/343 U
E04H1/12 A
E04H6/02 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020172469
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064003
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 純平
(72)【発明者】
【氏名】須賀 陽一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 高志
(72)【発明者】
【氏名】隈元 友樹
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-084647(JP,U)
【文献】実開昭62-131049(JP,U)
【文献】実開昭57-088829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 1/00
E04H 6/02
E04H 1/12
E04B 7/04
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁と、垂木と、板とを備え、桁は、二つの桁が互いに離間して対向するように設けられ、外周側に立壁部を有しており、垂木は、桁間に複数取り付けられており、折板の山部下面を支持するものであり、立壁部は、垂木と板とを隠す高さであることを特徴とする簡易構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易構造物は、例えば、折板屋根構造のカーポートが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在の折板屋根構造を備えた簡易構造物については、デザイン性について考慮されてなく、このため、良好なデザイン性を有する簡易構造物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するために請求項1記載による簡易構造物は、桁と、垂木と、板とを備え、桁は、二つの桁が互いに離間して対向するように設けられ、外周側に立壁部を有しており、垂木は、桁間に複数取り付けられており、折板の山部下面を支持するものであり、立壁部は、垂木と板とを隠す高さであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上の構成により、良好なデザイン性を有する簡易構造物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明に係る実施形態の簡易構造物を示し、(a)は水下側から見た図、(b)は前側から見た図である。
図2図1(a)の平面図である。
図3図1(b)の屋根側の一部切欠拡大図である。
図4図2の(4)-(4)線断面図である。
図5】(a)は折板屋根を除いた水下側の要部拡大平面図、(b)は、水上側の要部拡大平面図である。
図6】(a)は図4の水上側上部の拡大図、(b)は水切カバーを取り外した状態を示す図4の水上側上部の拡大図である。
図7】(a)は図1(a)の水下側上部の拡大図、(b)は図2の(7b)-(7b)線断面図であり、前側の一部を示す。
図8図7(b)において二点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の簡易構造物Aを説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0008】
以下で説明する簡易構造物Aは、カーポートであるが、本発明ではカーポートに限るものではなく、折板屋根構造を有する各種簡易構造物(例えば、サイクルポート、シェルター、門屋根)に適用できる。
【0009】
[簡易構造物全体の構成]
簡易構造物Aは、図1(a)(b)に示すように、前後方向で所定の間隔を空けて立設された一対の水上側支柱bと、水上側支柱bと対向するように所定の間隔を空けて立設された一対の水下側支柱cと、一対の水上側支柱bの上面に架設された水上側桁1と、一対の水下側支柱cの上面に架設され、水上側桁1と互いに離間して対向するように設けられる水下側桁2と、水上側桁1と水下側桁2との間に適宜間隔をおいて架設された複数の垂木3及び妻垂木4と、垂木3及び妻垂木4に載置固定された折板屋根5とを備えている。
水上側支柱bと水下側支柱cの上端部は、水平方向において同じ高さとなるようにされている。
【0010】
[折板屋根の取付け構造]
折板屋根5は、図1(a)及び図7(a)(b)に示すように、山・谷が交互に連続する複数の折板5aを山・谷方向が前後方向となるように並列状に配設して構成されている。
図7図8に示すように、折板5aは、隣り合う折板5aの前後の端部となる山部50同士が上下に重ねられていると共に、重ねられた山部50の下面が垂木3の上面に載置された状態で、山部50を垂木3にルーフボルトrによりねじ止めしている。
すなわち、垂木3は、折板5aの端部同士を連結する折板5aの連結部としても機能する。
また、最も前側に配設された折板5aの前端側の山部50の下面が前側の妻垂木4に載置されていると共に、山部50の下面が妻垂木4の上面に載置された状態で、山部50が垂木3にルーフボルトrによりねじ止めされている。
最も後側に配設された折板5aの後端側の山部50も、その下面が後側の妻垂木4に載置されていると共に、山部50の下面が妻垂木4の上面に載置された状態で、ルーフボルトrを折板5aの山部50の固定部分に打ち込み、垂木3の中空部で固定している。
【0011】
すなわち、前述の構成による簡易構造物Aにおいては、梁を用いることなく折板屋根5を配設することができる。
また、隣り合う折板5aの上下で重なり合ってなる山部50の下面が垂木3の上面に載置された状態でねじ止めされているため、垂木3が山部50に入り込んだ状態となり、これによって、垂木3を目立たせることなく折板5aを固定することができる。
また、最も前側及び後側の折板5aの山部50の下面が妻垂木4の上面に載置された状態でねじ止めされているため、妻垂木4が山部50に入り込んだ状態となり、これによって、垂木3を目立たせることなく折板5aを固定することができると共に、重なり合った山部50同士の連結状態を確実に保持でき、しかも、垂木3で折板屋根5を支えることができるから強度が高い。
したがって、梁が不要であると共に、垂木3及び妻垂木4を目立たせることなく折板屋根5を構成することができるため、施工性及び意匠性を高めることができ、しかも、重なり合った山部50同士の連結状態を確実に保持できるため、折板屋根5の強度を高めることができる。
【0012】
[水上側桁及び水下側桁の構成]
水上側桁1は、図3及び図4に示すように、外周側に設けられた立壁部1aと、水上側桁1の内側に一体に設けられた樋部1bと、水上側桁1の上面及び樋部1bの上端に設けられた支持面1cと、水上側支柱bに連結するための連結具1dと、連結具1dを前後方向にスライド案内するレール部1eとを備えている。
水下側桁2は、図3及び図4に示すように、外周側に設けられた立壁部2aと、水上側桁1の内側に一体に設けられた樋部2bと、水下側桁2の上面及び樋部2bの上端に設けられた支持面2cと、水上側支柱cに連結するための連結具2dと、連結具2dを前後方向にスライド案内するレール部2eとを備えている。
【0013】
立壁部1aは、水上側桁1の上部に突設され、上端部が折板屋根5の水上側の端部よりも高い位置、且つ折板屋根5の水上側の端部の外側に設けられている。
立壁部2aは、水下側桁2の上部に突設され、上端部が折板屋根5の水下側の端部よりも高い位置、且つ折板屋根5の水下側の端部の外側に設けられている。
すなわち、この立壁部1a、2aで、水上側及び水下側から折板屋根5、垂木3、妻垂木4を見えないように隠している。
【0014】
立壁部1a、2aの下面と、樋部1b、2bの下面が同一平面上に位置するようにしてある。これにより、屋根部分の上下寸法を小さくできるので、意匠性が良い。
【0015】
立壁部1aの上端部と立壁部2aの上端部とは、水平方向において同じ高さに設定されており、後述するように垂木3及び妻垂木4並びに折板屋根5が傾斜していても、外側から視覚される屋根部分が水平として現れるようにされている。
また、図2及び図7に示すように、妻垂木4の外側には、上端部が立壁部1aの上端部と立壁部2aの上端部と同じ高さに設定された後枠40及び前枠50が取り付けられている。
すなわち、立壁部1a及び立壁部2a並びに前後枠40、50によって、垂木3と折板5aとが外周側から隠されることで、簡易構造物Aの四方すべての外側から視覚される屋根部分が水平として現れるため、簡易構造物Aの意匠性を高めることができる。
なお、前後枠40、50に排水機能をもたせるようにすれば、垂木3を架け渡すのは、前後枠40.50間としてもよい。
【0016】
連結具1d、2dは、図4及び図7に示すように、それぞれ水上側支柱bと水下側支柱cの上端から挿し込まれて固定され、水上側支柱bと水下側支柱cとにそれぞれ一体にされている。
レール部1e、2eは、それぞれ水上側桁1及び水下側桁2の下面に長手方向の全域に沿って凹設されている。
連結具1d、2dには、上面側からボルトn1がねじ込まれており、このボルトn1の頭がレール部1e、2eに係合されている。
ボルトn1は、連結具1d、2dの下面に配置されるナットn2に対してねじ込まれ、締め付けることによって連結具1d、2dの位置を保持し、緩めることによって連結具1d、2dがレール部1e、2eの長手方向に沿ってスライド自在となり、このスライドによって連結具1d、2dの位置の変更が行われる。(図7で示す矢印)。
連結具1d、2dの位置の変更により、簡易構造物Aを配置する場所に応じて水上側支柱bと水下側支柱cの位置を任意に設定することができる。
【0017】
垂木3及び妻垂木4の長手方向端部3a、4aは、水上側支柱bと水下側支柱cの中央部より立壁部1a、2a側の端部(外周側端部)寄りに配置されている。これにより、屋根部分の左右寸法を小さくできるので、意匠性が良い。
【0018】
支持面1c、2cは、図4及び図5に示すように垂木3及び妻垂木4の端部下面を支持するものであり、支持面1c、2cに垂木3及び妻垂木4が架設されている。
水上側の支持面1cは、その上端位置が水下側の支持面2cの上端位置よりもわずかに高い位置に設定されており、架設された垂木3及び妻垂木4が水上側から水下側へ低くなる水勾配(略0.2度)をつけるようにされている。
また、支持面1c、2cは、架設される垂木3及び妻垂木4のがたつきを防ぐため、前述の垂木3及び妻垂木4の水勾配の角度に対応する角度とする傾斜が形成されている。
前述のように水上側桁1と水下側桁2との外周側の立壁部の上面高さは同じで、水上側桁1と水下側桁2の内周側に設けられた支持面1c、2cの高さは異なっている。
【0019】
水勾配をつけて架設された垂木3及び妻垂木4に支持された折板屋根5も、図5(a)及び図6(a)に示すように同じ角度の水勾配がつけられており、折板屋根5上の雨水を水上側から水下側へ流すようにされている(図5(a)(b)で示す矢印)。
垂木3及び妻垂木4に支持された折板屋根5の水上側の端部及び水下側の端部の位置は、樋部1b、2bの上部開口10、20の上方の中途に設定されている。
すなわち、図5(a)及び図6(a)に示すように、折板屋根5上の水上側から水下側へ流れる雨水は、折板屋根5の谷部51の上面を流れて樋部2bに排水される。
また、水上側から屋根下に浸水した雨水の一部は、水上側の樋部1bに排水される。
また、垂木3及び妻垂木4は、中空のものであり、水上側から屋根下に浸水した雨水の一部が垂木3内及び妻垂木4内に入り込んで、垂木3及び妻垂木4の傾斜に案内されて水下側に流れると共に、水下側の端部から支持面2cに排水され、排水された雨水が支持面2cを伝って水下側の樋部2bに排水される(図5(a)(b)で示す矢印)。
以上の構成より、折板屋根5上の水を排水できると共に、水上側支柱bと水下側支柱cとの高さを揃えることができるため意匠性を高めることができる。
なお、垂木3及び妻垂木4の傾斜角度は、略0.2度程度のわずかな傾斜角度であることが、施工性と雨水の水下側への案内という観点から好ましい。
【0020】
図4図5(b)、図6(a)に示すように、立壁部1a、2aの内側面と折板屋根5の水上側及び水下側の端部との間には、雨水を樋部1b、2bに導くための隙間sが確保されているが、この隙間sからごみや枯れ葉等が樋部1b、2b内に入り込むおそれがある。
このため、この隙間sを塞ぐ水切りカバー6が設けられている。
水切りカバー6は、隙間sの長手方向(水上側桁1・水下側桁2の長手方向)の全域をカバーする前後長さを有していると共に、折板屋根5の山部50上から立壁部1a、2aの内側面に至る幅を有している。
水切りカバー6は、図6(a)に示すように垂木3の上面に設けられた被係合部60に対し、水切りカバー6の上面から貫通して係合する係合部61により取付けられている。
係合部61は手動による回転によって被係合部60に対して係脱するものであり、係合状態においては水切りカバー6が固定され、係合解除したときに係合部61を被係合部60から抜き取ることができ、抜き取られた状態において図6(b)に示すように水切りカバー6を取外すことができる。
水切りカバー6を取外すことによって、隙間sから樋部1b、2bが望むことができ、これによって、樋部1b、2bの清掃等を行うことができる。
また、この水切りカバー6によって隙間sが塞がれるので、意匠性の向上が期待できる。
【0021】
以上の構成とする簡易構造物Aは、前述のように施工性及び意匠性を高めることができると共に、強度を高めることができる。
【0022】
以上、本発明に係る実施形態の簡易構造物を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0023】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
A:簡易構造物
b:水上側支柱
c:水下側支柱
1:水上側桁
1a:立壁部
1b:樋部
1c:支持面
1d:連結具
1e:レール部
10:上部開口
2:水下側桁
20:上部開口
2a:立壁部
2b:樋部
2c:支持面
2d:連結具
2e:レール部
3:垂木
3a:垂木の長手方向端部
4:妻垂木
4a:妻垂木の長手方向端部
40:後枠
50:前枠
5:折板屋根
5a:折板
50:山部
51:谷部
6:水切りカバー
60:被係合部
61:係合部
r:ルーフボルト
n1:ボルト
n2:ナット
s:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8