IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ オイレス工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社奥村組の特許一覧

<>
  • 特許-ラックの免震装置 図1
  • 特許-ラックの免震装置 図2
  • 特許-ラックの免震装置 図3
  • 特許-ラックの免震装置 図4
  • 特許-ラックの免震装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ラックの免震装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20240530BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240530BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B65G1/14 F
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020176010
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067346
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清春
(72)【発明者】
【氏名】舟木 秀尊
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128276(JP,A)
【文献】特開2015-081146(JP,A)
【文献】特開2014-201385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/20
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる支柱と、
荷物積載用のパレットを載置させる載置部材と、
前記支柱に取り付けられ、荷物出入方向に延びて前記載置部材を支持する支持部材と、を備えるラックの免震装置であって、
前記載置部材に設けられた第1の免震部材と、
前記支持部材に設けられ、前記第1の免震部材に沿って相対的に移動する第2の免震部材と、を備え、
前記第2の免震部材は、前記支持部材の側面に固定され
前記第2の免震部材の少なくとも下面は前記支持部材の上面よりも下側に配置され、
前記第2の免震部材は、前記ラックの幅方向の内側における前記側面に固定され、
前記第2の免震部材のうち、少なくとも前記第1の免震部材と接触する箇所の全体は、前記幅方向において前記支持部材より内側に配置される、ラックの免震装置。
【請求項2】
前記第1の免震部材は、前記載置部材に沿って延びる摺動面を有し、
前記第2の免震部材は、前記第1の免震部材を下方から支持しながら、前記摺動面に沿って相対的に移動する部材である、請求項1に記載のラックの免震装置。
【請求項3】
前記第2の免震部材は、前記支持部材に対して複数箇所で固定される、請求項2に記載のラックの免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックの免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるようなラックの免震装置が知られている。ラックの免震装置は、パレットを載置する載置部材としてのパレット台の下面に設けられたレール支承と、パレットを支持する支持部材である腕木の上面に設けられたスライド部材と、を備える。これにより、免震装置は、腕木の上面の位置にて、腕木に対してパレットを相対的に移動させることで、免震を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016―204097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のようなラックの免震装置は、腕木の上面に配置されている。従って、ラックの荷物の保管用スペースは、免震装置の高さ分だけ、狭くなってしまう。そのため、免震装置を配置することによって、ラックの保管効率が低下してしまうという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、ラックの保管効率の低下を抑制することができるラックの免震装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るラックの免震装置は、上下方向に延びる支柱と、荷物積載用のパレットを載置させる載置部材と、支柱に取り付けられ、載置部材を支持する支持部材と、を備えるラックの免震装置であって、載置部材に設けられた第1の免震部材と、支持部材に設けられ、第1の免震部材に沿って相対的に移動する第2の免震部材と、を備え、第2の免震部材は、支持部材の側面に固定される。
【0007】
ラックの免震装置は、載置部材に設けられた第1の免震部材と、支持部材に設けられ、第1の免震部材に沿って相対的に移動する第2の免震部材と、を備える。これにより、地震の発生によってラックの支柱及び支持部材に揺れが発生した場合、支持部材に設けられた第2の免震部材が、載置部材に設けられた第1の免震部材に対して、相対的に移動する。従って、免震装置は、載置部材に載置されたパレット及び荷物の揺れを低減することができる。ここで、第2の免震部材は、支持部材の側面に固定される。すなわち、第2の免震部材は、支持部材の上面ではなく、当該上面よりも低い位置である側面に固定される。この場合、支持部材の上面から上側に免震装置が出ないような構成とすることができる。あるいは、支持部材の上面から上側に免震装置が出たとしても、上面から出る寸法を低減することができる。このように、免震装置を低い位置に配置した分だけ、載置部材が支持部材の上面よりも上側に出る寸法を低減することができる。そのため、載置部材の上側の荷物の保管用スペースを広くすることができる。以上より、ラックの保管効率の低下を抑制することができる。
【0008】
第1の免震部材は、載置部材に沿って延びる摺動面を有し、第2の免震部材は、第1の免震部材を下方から支持しながら、摺動面に沿って相対的に移動する部材であってよい。このような構成によれば、第1の免震部材の摺動面は、載置部材に沿って長く延びており、且つ、第2の免震部材が支持できるように、下方を向いた状態となる。例えば、広い面積を有する摺動面が上方を向いている場合、当該摺動面に埃などの異物が付着してしまう可能性があるが、摺動面を下方へ向けることで、異物の付着を抑制することができる。
【0009】
第2の免震部材は、支持部材に対して複数箇所で固定されてよい。第2の免震部材は、第1の免震部材を支持しながら、長い摺動面に沿って相対的に移動する。従って、第2の免震部材にはモーメントが作用しやすい。例えば、第2の免震部材がボルトなどで固定されている場合に、モーメントがボルトの緩みの原因になる可能性がある。これに対し、第2の免震部材が複数箇所で固定されることで、第2の免震部材に作用するモーメントの影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラックの保管効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る免震装置を備えるラックを示す正面図である。
図2図1に示すラックの収納棚2の平面図である。
図3図2に示すIII-III線に沿った断面図である。
図4図3に示す箇所における免震装置20を幅方向D2の内側(左右の腕木6の間のスペースSP)から見た側面図である。
図5図5(a)(b)は、変形例に係る免震装置の免震部材の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る免震装置20を備えるラック1を示す正面図である。図2は、図1に示すラック1の収納棚2の平面図である。ラック1は、例えば、荷物50が積載された荷物積載用のパレット51のピッキング作業等を自動化した自動ラック倉庫などに用いられる。ただし、ラック1の用途は特に限定されない。荷物50は、スタッカークレーンのフォーク52によって、パレット51ごとラック1に対して収納及び取り出しされる。なお、以降の説明においては、荷物50及びパレット51を出し入れする方向を荷物出入方向D1と称し、荷物出入方向D1と直交する水平方向を幅方向D2と称する場合がある。また、荷物出入方向D1のうち、スタッカークレーン側を手前側と称し、スタッカークレーンと反対側を奥側と称する場合がある。また、幅方向D2において、スタッカークレーンから見たときを基準として「左」「右」の語を用いる場合がある。
【0014】
ラック1は、複数本の支柱3と、複数段の収納棚2と、を備える。図1では、ラック1には、三段の収納棚2が設けられているが、収納棚2の段数は特に限定されない。また、図1には一列分のラック1のみが示されているが、自動ラック倉庫には、幅方向D2に複数列のラック1が設けられる。
【0015】
図1に示すように、支柱3は、上下方向に延びる部材である。正面視において、一対の支柱3が幅方向D2に互いに離間した状態で配置されている。なお、一対の支柱3は、荷物出入方向D1の手前側及び奥側に設けられており、一つあたりのラック1に対して四本の支柱3が設けられる(図2参照)。一対の支柱3の幅方向D2における離間距離は、荷物50よりも大きく設定される。
【0016】
収納棚2は、正面視において、一対の支柱3間に設けられる。複数の収納棚2は、上下方向に互いに離間した状態で設けられる。下側の収納棚2と上側の収納棚2との間の上下方向の隙間の大きさは、パレット51及び荷物50を配置し、それらをフォーク52で持ち上げることができる程度の大きさに設定される(二段目の収納棚2を参照)。
【0017】
次に、図2を参照して、収納棚2の構成について詳細に説明する。収納棚2は、載置部材4と、一対の腕木6(支持部材)と、を備える。
【0018】
載置部材4は、荷物積載用のパレット51を載置させる部材である。載置部材4は、後述の免震装置20によって、荷物出入方向D1へ往復移動することができる部材である。本実施形態では、載置部材4は、荷物出入方向D1における手前側が開口するように、コ字状の形状を有している。載置部材4は、荷物出入方向D1に延びる一対のフレーム部材7と、荷物出入方向D1の奥側において幅方向D2に延びるフレーム部材8と、を備える。荷物出入方向D1において、一対のフレーム部材7は、手前側の支柱3の位置から、奥側の支柱3の位置まで延びる。一対のフレーム部材7は、幅方向D2において互いに離間した状態で配置される。また、左側のフレーム部材7は、左側の支柱3から右側に離間した位置に配置される。右側のフレーム部材7は、右側の支柱3から左側に離間した位置に配置される。フレーム部材8は、一対のフレーム部材7の奥側の端部同士を接続する。
【0019】
一対の腕木6は、載置部材4を支持する部材である。一つの腕木6は、荷物出入方向D1に延びる。一対の腕木6は、手前側の支柱3の位置から、奥側の支柱3の位置まで延びる。一対の腕木6は、幅方向D2において互いに離間した状態で配置される。また、左側の腕木6は、左側の支柱3から右側に離間した位置に配置される。左側の腕木6は、左側の支柱3から幅方向D2に延びる接続部材10を介して、支柱3と接続される。右側の腕木6は、右側の支柱3から左側に離間した位置に配置される。右側の腕木6は、右側の支柱3から幅方向D2に延びる接続部材10を介して、支柱3と接続される。
【0020】
なお、図1に示すように、接続部材10には、パレット51の幅方向D2の移動範囲を規制するためのストッパ9が設けられる。ストッパ9は、接続部材10の上面から上方へ突出する。これにより、幅方向D2のいずれか一方へパレット51が大きく移動したとき、パレット51がストッパ9と衝突することで、それ以上の移動が規制される(図1の最下段の収納棚2を参照)。
【0021】
図2に示すように、ラック1は、腕木6と載置部材4との間に免震装置20を備える。免震装置20は、載置部材4が腕木6に対して荷物出入方向D1に相対的に移動することを許容する装置である。これにより、免震装置20は、地震時などにおいて、載置部材4上のパレット51及び荷物50が大きく揺れることを抑制することができる。本実施形態では、ラック1は、合計四つの免震装置20を備える。二つの免震装置20が、左側の腕木6及び載置部材4の左側のフレーム部材7に対して、荷物出入方向D1に離間した状態で設けられる。また、二つの免震装置20が、右側の腕木6及び載置部材4の右側のフレーム部材7に対して、荷物出入方向D1に離間した状態で設けられる。なお、免震装置20の数は特に限定されるものではない。
【0022】
次に、図3及び図4を参照して、免震装置20、及びその周辺構造について詳細に説明する。図3は、図2に示すIII-III線に沿った断面図である。図4は、図3に示す箇所における免震装置20を幅方向D2の内側(左右の腕木6の間のスペースSP)から見た側面図である。なお、図3及び図4では、四つの免震装置20のうち、左側で手前側の免震装置20を示している。左側で奥側の免震装置20は、図3及び図4に示す免震装置20と同様の構成を有し、右側の二つの免震装置20は、図3及び図4に示す免震装置20を左右対称にした構成を有する。従って、図3及び図4に示す免震装置20以外の免震装置20については説明を省略する。
【0023】
まず、腕木6及び載置部材4のフレーム部材7の配置及び構成について詳細に説明する。図3に示すように、腕木6は、矩形環状の部材である。腕木6の断面形状は、上下方向に長手方向を有する長方形をなす。従って、腕木6は、上面6a、下面6b、幅方向D2の外側(左側)の側面6c、及び幅方向D2の内側(右側)の側面6dを有する。フレーム部材7は、矩形柱状の部材である。フレーム部材7の上下方向の大きさは、腕木6よりも小さい。従って、フレーム部材7は、上面7a、下面7b、幅方向D2の外側(左側)の側面7c、及び幅方向D2の内側(右側)の側面7dを有する。
【0024】
フレーム部材7は、腕木6に対して、幅方向D2の内側(右側)で隣り合う位置に配置される。腕木6の側面6dとフレーム部材7の側面7cとは、幅方向D2に僅かな隙間をあけて対向するように配置される。上下方向において、フレーム部材7は、免震装置20に支持されることによって、腕木6の上半分の領域に対応する位置に配置される。フレーム部材7の下面7bの上下方向の位置は特に限定されないが、ここでは、腕木6の上面6aよりも低い位置であって、腕木6の上下方向の中央位置よりも高い位置に配置される。フレーム部材7の上面7aは、腕木6の上面6aよりも僅かに高い位置に配置される。これにより、フレーム部材7の上面7aに載置されたパレット51は、腕木6から僅かに浮いた状態で支持される。後述のように、レール支承21(第1の免震部材)とスライド部材22(第2の免震部材)との位置関係によって、フレーム部材7の上面7aと腕木6の上面6aとの高さの差(図3に示す寸法L1)は変動するが、当該寸法L1は、次のように設定されてよい。すなわち、寸法L1の最小値は、フレーム部材7が、その上部に載置されたパレット51及び荷物50の荷重により、下方へたわむことを考慮し、その際においても、パレット51が腕木6から浮き続けられるよう、且つ、ラックの保管効率を低下せしめないよう、できるだけ小さく定められる必要がある。また、寸法L1の最大値は、レール支承21とスライド部材22との位置関係がいかようになった場合においても、載置された荷物50の上端が、上段の棚等と干渉することが無いよう、且つ、免震装置20として必要な機能が確保されるよう、定められる必要がある。具体的に、寸法L1は、3mm~8mmの範囲に収まることが好ましい。
【0025】
図3及び図4に示すように、免震装置20は、載置部材4のフレーム部材7に設けられたレール支承21と、腕木6に設けられたスライド部材22と、を備える。なお、以降の説明においては、特段の注記が無い限り、地震などが発生しておらず、載置部材4が腕木6に対して移動していない定常状態を基準として、各部品の位置関係の説明を行う。
【0026】
図4に示すように、レール支承21は、フレーム部材7の下面7bに固定されており、当該フレーム部材7と共に荷物出入方向D1に沿って延びる部材である。レール支承21は、下面側に、摺動部材23が設けられている(図3も参照)。当該摺動部材23の下面が、レール支承21の摺動面21aを構成する。摺動面21aは、下方を向いた状態にて、荷物出入方向D1に沿って延びる。摺動部材23には、優れた摺動特性が要求される。具体的には、摺動部材23には、適度な摩擦係数、長期に亘って腐食、変形等の物性が変化しない耐久性、及び数回程度の中小の地震による摺動では減摩しない強度を備えることが要求される。このような要求を満たす材料として、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)等の合成樹脂、あるいは青銅合金等の金属が挙げられる。なお、これらの材料は、他の摺動面に対しても適用可能である。
【0027】
レール支承21の荷物出入方向D1の長さは、地震時における載置部材4の移動のストローク等を考慮して、任意の長さに設定することができるが、レール支承21の長さは、次のように設定されてよい。すなわち、レール支承21の長さは、例えば、パレット51及び荷物50の荷物出入方向D1の長さと、荷物出入方向D1に対し並置される免震装置20の個数との関係により、定められることが推奨される。より詳細に、仮に、荷物出入方向D1に対し並置される免震装置20の個数が2個だった場合、レール支承21の荷物出入方向D1の長さは、パレット51または荷物50の荷物出入方向D1の長さのいずれか長い方のおよそ半分以下となるよう、定められることを推奨するものである。具体的に、レール支承21の長さは、例えば、150mm~250mm程度に設定可能である。ここで、レール支承21の摺動面21aは、荷物出入方向D1における中央位置に頂部21bが形成されるようにV字状またはU字状に傾斜している。具体的に、レール支承21の荷物出入方向D1の手前側の領域E1では、摺動面21aは、奥側へ向かうに従って上側へ向かうようになだらかに傾斜している。一方、レール支承21の荷物出入方向D1の奥側の領域E2では、摺動面21aは、手前側へ向かうに従って上側へ向かうようになだらかに傾斜している。
【0028】
図3に示すように、スライド部材22は、腕木6に設けられており、レール支承21を下方から支持しながら、荷物出入方向D1へ相対的に移動する部材である。スライド部材22は、腕木6の側面6dに固定される。スライド部材22は、腕木6の幅方向D2の内側(右側)に隣り合う位置にて、フレーム部材7及びレール支承21の下側に配置される。
【0029】
具体的に、腕木6の側面6c,6dには、当該腕木6を幅方向D2に挟み込むように、固定プレート26,27がそれぞれボルト28の締結によって固定される。固定プレート26,27の上面及び下面は、腕木6の上面6a及び下面6bの高さと同一となる。スライド部材22は、ボルト28の締結によって、固定プレート27を介して腕木6の側面6dに固定される。スライド部材22は、幅方向D2の外側(左側)の端面22aが、固定プレート27の幅方向D2の内側(右側)の主面27aと接触した状態で、固定プレート27に固定される。
【0030】
スライド部材22は、固定プレート27から幅方向D2における内側へ延びる。これにより、スライド部材22は、上面側にてレール支承21及びフレーム部材7を支持する。スライド部材22の上面は、レール支承21の摺動面21aと接触することで、スライド部材22の摺動面22cを構成する。
【0031】
スライド部材22は、フレーム部材7及びレール支承21よりも、幅方向D2の内側(右側)まで突出している。すなわち、スライド部材22の幅方向D2の内側(右側)の端面22bは、フレーム部材7の側面7d及びレール支承21の側面21cよりも、幅方向D2の内側(右側)に位置する。スライド部材22の端面22bには、規制プレート29がボルト31の締結によって固定される。
【0032】
規制プレート29は、スライド部材22の上端よりも上側まで延びており、フレーム部材7の側面7dと対向する位置まで延びる。これにより、規制プレート29は、フレーム部材7の幅方向D2における移動範囲を規制し、スライド部材22から落下することを抑制する。なお、フレーム部材7の幅方向D2の外側(左側)への移動は、固定プレート27によって規制される。固定プレート27の主面27aには、フレーム部材7との摩擦を低減するための摺動部材36が設けられている。
【0033】
規制プレート29には、幅方向D2の外側(左側)へ突出するボルト32が設けられている。当該ボルト32の軸部は、フレーム部材7の側面7dに形成された溝部33に収容されている。溝部33は、荷物出入方向D1に延びている(図4参照)。溝部33は、ボルト32との上下方向及び荷物出入方向D1における相対的な移動範囲を規制する。これにより、溝部33及びボルト32の機構により、腕木6とフレーム部材7との上下方向及び荷物出入方向D1における相対的な移動範囲が規制される。
【0034】
次に、図4を参照して、スライド部材22を幅方向D2から見たときの構成について説明する。スライド部材22は、荷物出入方向D1において、レール支承21の摺動面21aの頂部21bと接触する位置に設けられる。また、スライド部材22は、上端側の摺動面22cが上側へ向かって突出するような形状を有している。具体的には、摺動面22cは、上側へ向かって山なりに突出するように湾曲している。これにより、スライド部材22の摺動面22cは、レール支承21の摺動面21aに対して、実質的に線接触した状態となる。なお、地震の発生により、スライド部材22がレール支承21に対して荷物出入方向D1へ相対的に移動すると、摺動面21aが傾斜しているため、スライド部材22(すなわち腕木6の上面6a)とフレーム部材7の上面7aとの上下方向の寸法L1(図3参照)が変動する。具体的には、図4の状態で寸法L1は最も小さく、スライド部材22がレール支承21に対して荷物出入方向D1へ相対的に移動するにしたがって寸法L1は大きくなる。この結果、地震による揺れが収まった際にスライド部材22の上端側の摺動面22cの頂部とレール支承21の摺動面21aの頂部21bとにずれが生じていても、自重によって図4の状態に戻ることになる。また、溝部33の高さは、図4の状態でボルト32が溝部33の上端に接しておらず、ボルト32が溝部33の一方の端部に到達した状態でボルト32が溝部33の下端に接しない程度であることが望ましい。
【0035】
本実施形態では、スライド部材22は、腕木6に対して複数箇所で固定される。具体的には、図4に示すように、スライド部材22と腕木6とを固定するボルト28、及びスライド部材22と規制プレート29とを固定するボルト31は、荷物出入方向D1に二つ並べられた状態で締結を行っている。従って、スライド部材22は、ボルト28によって、腕木6に対して二箇所で固定される。
【0036】
次に、本実施形態に係るラック1の免震装置20の作用・効果について説明する。
【0037】
ラック1の免震装置20は、載置部材4に設けられたレール支承と、腕木6に設けられ、レール支承に沿って相対的に移動するスライド部材22と、を備える。これにより、地震の発生によってラック1の支柱3及び腕木6に揺れが発生した場合、腕木6に設けられたスライド部材22が、載置部材4に設けられたレール支承21に対して、相対的に移動する。従って、免震装置20は、載置部材4に載置されたパレット51及び荷物50の揺れを低減することができる。ここで、スライド部材22は、腕木6の側面6dに固定される。すなわち、スライド部材22は、腕木6の上面6aではなく、当該上面6aよりも低い位置である側面6dに固定される。この場合、腕木6の上面6aから上側に免震装置20が出ないような構成とすることができる。このように、免震装置20を低い位置に配置した分だけ、載置部材4が腕木6の上面6aよりも上側に出る寸法L1(図3参照)を低減することができる。そのため、載置部材4の上側の荷物50の保管用スペースを広くすることができる。以上より、ラックの保管効率の低下を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るラック1の免震装置20は、ラック1に存在するデッドスペースを有効活用することができる。すなわち、右側の腕木6と左側の腕木6との間のスペースSPには、フォーク52が挿入される(図1の最上段の収納棚2を参照)。従って、収納棚2のうち、幅方向D2の最も内側に配置される部分(ここでは、免震装置20の側面)とフォーク52との干渉を防止するために、免震装置20とフォーク52との間に寸法L2のギャップが確保される。しかし、従来のラックにおいては、腕木6が幅方向D2の最も内側に配置される部分であったが、腕木6とフォーク52との間に寸法L3の大きなギャップが形成されていた。これは、パレット51及び荷物50の位置ずれ、及び接続部材10の長さなどの関係を考慮して設計を行うことで、結果的に確保されたギャップであるが、フォーク52との衝突防止という観点では、必要以上の大きさであったため、寸法L3の領域がデッドスペースとなっていた。これに対し、本実施形態では、当該デッドスペースに免震装置20を配置することで、フォーク52との衝突を防止しつつも、デッドスペースを有効に活用することが可能となっている。また、本実施形態の免震装置20は、寸法L3のデッドスペースを有する既存のラックに対しても、比較的容易な改造工事にて適用することができる。
【0039】
レール支承21は、載置部材4のフレーム部材7に沿って延びる摺動面21aを有し、スライド部材22は、レール支承を下方から支持しながら、摺動面21aに沿って相対的に移動する部材である。このような構成によれば、レール支承21の摺動面21aは、載置部材4のフレーム部材7に沿って長く延びており、且つ、スライド部材22が支持できるように、下方を向いた状態となる。例えば、広い面積を有する摺動面21aが上方を向いている場合、当該摺動面21aに埃などの異物が付着してしまう可能性があるが、摺動面21aを下方へ向けることで、異物の付着を抑制することができる。免震装置20は、地震が発生しない限り、長期間にわたって作動しないため、異物がたまりやすい装置であるため、当該効果が特に有効となる。
【0040】
スライド部材22は、腕木6に対して複数箇所で固定される。スライド部材22は、レール支承21を支持しながら、長い摺動面21aに沿って相対的に移動する。従って、スライド部材22には、その摺動に伴う摩擦抵抗によるモーメントが作用しやすい。例えば、スライド部材22が一本のボルトで固定されている場合に、ボルト周りにモーメントが作用することで、当該モーメントがボルトの緩みの原因になる可能性がある。これに対し、スライド部材22が二本のボルト28によって複数箇所(ここでは二箇所)で固定されることで、ボルト28が緩みにくくなり、スライド部材22に作用するモーメントの影響を低減することができる。
【0041】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0042】
スライド部材22を固定する二本のボルト28は、水平方向に並んでいるが、並ぶ方向は特に限定されず、上下方向に並んでもよい。また、スライド部材22を一本のボルトで固定する形態も請求項1から排除されるものではない。また、スライド部材22の固定方法もボルトに限定されず、溶接などの公知の方法が採用されてよい。
【0043】
上述の実施形態では、免震装置20全体が、腕木6の上面6aよりも低い位置に配置されていたが、免震装置20の一部が腕木6の上面6aから上側に出ていてもよい。このような場合であっても、本発明を採用することで、腕木6の上面6aに免震装置20を設ける場合よりは、上面6aから出る寸法を低減することができる。
【0044】
例えば、載置部材に設けられる第1の免震部材、及び支持部材(腕木)に設けられる第2の免震部材の具体的な構造は特に限定されるものではない。例えば、腕木にレール支承が設けられ、当該レール支承の摺動面に上方から接触するスライド部材が載置部材に設けられてもよい。また、上述の実施形態では、レール支承の摺動面を相対的に移動する免震部材として、湾曲した摺動面を有したスライド部材22を例示したが、このようなスライド部材に限定されるものではない。例えば、ボルトなどのシンプルな棒状部材をスライド部材としてもよい。その他、球体やベアリングなど、絶縁機能を有する支承として公知の免震部材を採用してもよい。例えば、図5(a)(b)に示すような構造を採用してもよい。なお、図5においては、構造を分かり易くするために、レール支承21と免震部材を上下方向に離間させた状態で示している。図5(a)に示すように、三角形状の摺動面122aを有するスライド部材122が採用されてもよい。スライド部材122の摺動面122aは、レール支承21の摺動面21aに対応した形状を有する。また、図5(b)に示すように、複数本(ここでは2本)の円柱状の摺動部材222aを有するスライド部材222が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ラック、3…支柱、4…載置部材、6…腕木(支持部材)、20…免震装置、21…レール支承(第1の免震部材)、21a…摺動面、22…スライド部材(第2の免震部材)、51…パレット。
図1
図2
図3
図4
図5