(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
E02F9/00 D
(21)【出願番号】P 2020192542
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲場 康彦
(72)【発明者】
【氏名】藤島 弘明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220033(JP,A)
【文献】特開2000-64348(JP,A)
【文献】特開2011-236701(JP,A)
【文献】特開2013-241802(JP,A)
【文献】特開2020-56152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0230710(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を構成するフレーム上に載置され、燃料または作動油を濾過するフィルタが内部に収容され、前後方向に回動可能な開閉カバーが取り付けられている機械室を備えた建設機械において、
前記機械室の内部には、前後方向の一側に前記フィルタが、前後方向の他側に上下方向に延びるブラケットが、それぞれ配置され、
前記開閉カバーは、前記ブラケットにカバー用ヒンジを介して取り付けられており、
前記開閉カバーが備える第1ロック部材と、前記機械室の内部に設けられた支持部材が備える第2ロック部材と、が係合することで、前記開閉カバーは回動不能になり、
前記支持部材は、
端部が前記ブラケットに取り付けられて前記フィルタ側に向かって延在する第1延在片、および前記第1延在片から前記機械室の底部に向かって垂下して前記底部に取り付けられた第1垂下片を有する下段部と、
前記第1延在片よりも上方において端部が前記ブラケットに取り付けられて前記フィルタ側に向かって延在する第2延在片、および前記第2延在片から前記下段部の前記第1延在片に向かって垂下して前記第1延在片に接続された第2垂下片を有する上段部と、
を備え、
前記下段部は、前記フィルタよりも下側に位置し、
前記上段部の前記第2延在片の長さは、前記第1延在片の長さよりも短い
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記下段部の前記第1垂下片は、前記機械室の前記底部に着脱可能に取り付けられ、
前記下段部の前記第1延在片および前記上段部の前記第2延在片はそれぞれ、前記ブラケットにヒンジを介して回動可能に取り付けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記カバー用ヒンジは、上下方向に所定の間隔を空けて一対並んで配置されており、
前記上段部の前記第2延在片と前記ブラケットとを連結する前記ヒンジは、一対の前記カバー用ヒンジのうち上側に配置された方の前記カバー用ヒンジと上下方向において少なくとも一部が重なるように、または上側に配置された方の前記カバー用ヒンジよりも上方となるように配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記フィルタは、閉じられた状態の前記開閉カバーに対して交差する方向に並んで複数配置され、
前記開閉カバーから離れた位置に配置された前記フィルタほど、前記開閉カバー側に配置された前記フィルタよりも低い位置に配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記開閉カバーの内側の面には、前記カバー用ヒンジが取り付けられる側の端部とは反対側の他端部に第1板片が設けられ、
前記機械室の側壁のうち、閉じられた状態の前記開閉カバーの前記他端部側に隣接する側壁には、第2板片が張り出して設けられ、
前記第1ロック部材と前記第2ロック部材とが係合されることにより前記開閉カバーが回動不能な状態では、前記第1板片の先端部と前記第2板片の先端部とは、左右方向に隙間を介して並んで配置され、
前記第1板片および前記第2板片のいずれかには、前記開閉カバーが回動不能な状態で前記隙間を埋めて前記第1板片および前記第2板片のそれぞれと接触する弾性部材が取り付けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記フレーム上には、前記機械室の後側にカウンタウェイトが載置されており、
前記ブラケットは、前記カウンタウェイトに固定されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項6に記載の建設機械において、
前記カウンタウェイトは、前記開閉カバーが配置された側の下端部に、前方に向かって延出する延出部を有し、
前記延出部は、前記機械室の前記底部の一部を形成し、
前記下段部の前記第1垂下片は、前記延出部に取り付けられている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の機器類が内部に収容された機械室を備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械では、本体を構成するフレーム上に、例えばエンジンや油圧ポンプなどを収容する機械室が載置されている。機械室には、エンジンや油圧ポンプの他に、油中に混入した異物を取り除くための作動油フィルタや燃料フィルタなどのフィルタ類も収容されている。これらのフィルタ類は異物によって目詰まりを起こすと濾過機能が低下するため、作業員は、定期的にフィルタ類を点検して清掃や交換を行う必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された建設機械では、燃料フィルタおよびエンジンオイルフィルタが燃料タンクの一側面に上下方向に並んで取り付けられている。燃料フィルタはブラケットを介して燃料タンクに固定され、他方、エンジンオイルフィルタはヒンジを介して燃料タンクに旋回可能に取り付けられている。これにより、メンテナンス時以外の定常時には、燃料フィルタとエンジンオイルフィルタとが接近配置されてフィルタカートリッジの交換が不能な状態となり、メンテナンス時には、エンジンオイルフィルタを旋回させて燃料フィルタと離隔させることでフィルタカートリッジの交換が可能な状態となる。
【0004】
また、建設機械には、フレームの前部に取り付けられた作業装置とのバランスを保つため、フレームの後端部にカウンタウェイトが設けられている。カウンタウェイトは、建設機械の仕様や規格に応じて設計されるが、例えば、旋回半径が制限された後方小旋回型の油圧ショベル(いわゆる後方小旋回機)に設けられる場合には、必要な重量を確保しつつも、後端部がコンパクトになるよう求められる。
【0005】
特許文献2には、後方小旋回機に設けられたカウンタウェイトであって、左右側の下端部がそれぞれ機械室側に延出し、前面部によって機械室の内壁面の後部全体および左右側部の一部が形成されているものが開示されている。後方小旋回機では、機械室内にアクセスするための開閉カバーが、カウンタウェイトにおける機械室側への延出部の上側に取り付けられることが多い。この開閉カバーは、例えば、パイプなどを屈曲加工して形成された支持部材によって機械室の内側から支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-121292号公報
【文献】特開2008-179970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたフィルタ類の構成を特許文献2に記載された後方小旋回機に適用した場合には、機械室の開閉カバーを支持する支持部材がフィルタ類に近接してしまうため、エンジンオイルフィルタを旋回させることができない。そのため、フィルタ類のメンテナンス時には、少なくとも作業員の手が入る作業スペースを確保するために支持部材を取り外さなければいけないといった問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、機械室の開閉カバーを支持する支持部材が機械室内に設けられている場合であっても、フィルタ類のメンテナンス作業を容易に行うことが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、本体を構成するフレーム上に載置され、燃料または作動油を濾過するフィルタが内部に収容され、前後方向に回動可能な開閉カバーが取り付けられている機械室を備えた建設機械において、前記機械室の内部には、前後方向の一側に前記フィルタが、前後方向の他側に上下方向に延びるブラケットが、それぞれ配置され、前記開閉カバーは、前記ブラケットにカバー用ヒンジを介して取り付けられており、前記開閉カバーが備える第1ロック部材と、前記機械室の内部に設けられた支持部材が備える第2ロック部材と、が係合することで、前記開閉カバーは回動不能になり、前記支持部材は、端部が前記ブラケットに取り付けられて前記フィルタ側に向かって延在する第1延在片、および前記第1延在片から前記機械室の底部に向かって垂下して前記底部に取り付けられた第1垂下片を有する下段部と、前記第1延在片よりも上方において端部が前記ブラケットに取り付けられて前記フィルタ側に向かって延在する第2延在片、および前記第2延在片から前記下段部の前記第1延在片に向かって垂下して前記第1延在片に接続された第2垂下片を有する上段部と、を備え、前記下段部は、前記フィルタよりも下側に位置し、前記上段部の前記第2延在片の長さは、前記第1延在片の長さよりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械室の開閉カバーを支持する支持部材が機械室内に設けられている場合であっても、フィルタ類のメンテナンス作業を容易に行うことができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】後方右側から見た油圧ショベルを示す斜視図である。
【
図3】後方右側から見た旋回体の後部の構成を示す斜視図である。
【
図4】後方右側から見た機械室内の構成を示す斜視図である。
【
図5】右側から見た機械室内の構成を示す側面図である。
【
図6】開閉カバーが開いた状態の機械室を前方から見た斜視図である。
【
図7】燃料フィルタ、燃料プレフィルタ、および作動油フィルタの位置関係を示す平面図である。
【
図8】開閉カバーのバタつき防止構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の一態様として、クローラ式の油圧ショベルについて説明する。
【0013】
<油圧ショベル1の全体構成>
まず、油圧ショベル1の全体構成について
図1~3を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の一構成例を示す外観側面図である。
図2は、後方右側から見た油圧ショベル1を示す斜視図である。
図3は、後方右側から見た旋回体12の後部の構成を示す斜視図である。
【0015】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の走行体11と、走行体11の上方に旋回可能に設けられた旋回体12と、旋回体12の前部に取り付けられて掘削などの作業を行う作業装置13と、を備える。なお、走行体11は、必ずしもクローラ式である必要はなく、ホイール式であってもよい。
【0016】
旋回体12は、ベースとなる本体を構成するフレームとしての旋回フレーム21と、オペレータが搭乗する運転室22と、油圧ショベル1が傾倒しないように作業装置13とのバランスを保つカウンタウェイト23と、油圧ショベル1を駆動するための機器類を内部に収容する機械室24と、を備える。
【0017】
図2に示すように、旋回フレーム21上において、運転室22は前部左側に、カウンタウェイト23は後端部に、機械室24は運転室22とカウンタウェイト23との間に、それぞれ載置されている。なお、旋回体12の左右方向のうち、運転室22内に設けられた運転席(不図示)に前方を向いて着座したオペレータの左手の方向を「左方向」とし、右手の方向を「右方向」とする。
【0018】
油圧ショベル1は、旋回半径が制限された後方小旋回型の油圧ショベル(後方小旋回機)であり、カウンタウェイト23は、後方小旋回機の規格に対応して設計されている。具体的には、
図2および
図3に示すように、カウンタウェイト23は、後壁231が後方に向かって凸となるように円弧状に湾曲して形成されている。
【0019】
一方で、カウンタウェイト23は、必要な重量を確保するために、左右両側の下端部がそれぞれ前方に向かって延出している。これら左右の延出部232はそれぞれ、カウンタウェイト23の前側に位置する機械室24まで延びており、機械室24の底部241の一部を形成している(
図4参照)。なお、
図2および
図3では、左右の延出部232のうち右側の延出部232のみが示されているが、左側の延出部232も、右側の延出部232と同様に形成されている。
【0020】
本実施形態では、機械室24は、前後方向に回動可能な開閉カバー242が、右側の延出部232の上側であって、旋回体12における右側部の後端領域から後端部の右端領域に亘る部分に取り付けられている。作業員は、この開閉カバー242から機械室24の内部にアクセスすることができる。なお、開閉カバー242は、必ずしも右側の延出部232の上側に配置されている必要はなく、機械室24の左右方向の一側に取り付けられていればよい。開閉カバー242の具体的な構成については後述する。
【0021】
図1に示すように、作業装置13は、基端部が旋回フレーム21に回動可能に取り付けられたブーム31と、ブーム31を駆動するブームシリンダ31Aと、ブーム31の先端部に回動可能に取り付けられたアーム32と、アーム32を駆動するアームシリンダ32Aと、アーム32の先端部に回動可能に取り付けられたバケット33と、バケット33を駆動するバケットシリンダ33Aと、を備える。
【0022】
ブームシリンダ31Aは、旋回フレーム21とブーム31とを連結し、ロッドが伸縮することによりブーム31を旋回体12に対して上下方向に回動(俯仰)させる。アームシリンダ32Aは、ブーム31とアーム32とを連結し、ロッドが伸縮することによりアーム32をブーム31に対して前後方向に回動させる。バケットシリンダ33Aは、アーム32とバケット33とを連結し、ロッドが伸縮することによりバケット33をアーム32に対して前後方向に回動させる。
【0023】
バケット33は、土砂などの荷を掬い上げて所定の位置に荷を下ろすものである。なお、このバケット33は、例えば、木材や岩石、廃棄物などを掴むグラップルや、岩盤を掘削するブレーカといった各種のアタッチメントに変更することが可能であり、これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適したアタッチメントを用いて、掘削や破砕などを含む様々な作業を行うことができる。
【0024】
<機械室24の構成>
次に、機械室24の構成について、
図4~8を参照して説明する。
【0025】
図4は、後方右側から見た機械室24内の構成を示す斜視図である。
図5は、右側から見た機械室24内の構成を示す側面図である。
図6は、開閉カバー242が開いた状態の機械室24を前方から見た斜視図である。
図7は、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の位置関係を示す平面図である。
図8は、開閉カバー242のバタつき防止構造を示す図である。
【0026】
図4および
図5に示すように、機械室24の内部には、例えば、エンジン(不図示)と、エンジンの燃料を貯留する燃料タンク41と、燃料を濾過して燃料中に混入した異物を取り除く燃料フィルタ42および燃料プレフィルタ43と、エンジンにより駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ44と、作動油を貯留する作動油タンク45と、作動油を濾過して作動油中に混入した異物を取り除く作動油フィルタ46と、を含む各種の機器類が収容されている。
【0027】
燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46はいずれも、フィルタ本体が目詰まりを起こすと濾過機能が低下してしまうため、定期的にフィルタ本体の清掃や交換が行われる。その際、フィルタ本体は、下側に引き抜かれることによってフィルタケースから取り出される。作業員は、開閉カバー242から機械室24の内部にアクセスし、各フィルタ42,43,46のフィルタ本体の清掃や交換をはじめとした各種機器のメンテナンス作業を行う。
【0028】
本実施形態では、
図4に示すように、燃料タンク41および作動油タンク45は、機械室24内における前側にそれぞれ配置されている。作動油タンク45は、燃料タンク41の右側に配置されており、後側に位置する面には、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46がフィルタ用ブラケット47を介して取り付けられている。
【0029】
図4および
図7に示すように、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46は、機械室24の左右方向に、すなわち閉じられた状態の開閉カバー242(
図3参照)に対して交差する方向に並んで配置されている。具体的には、機械室24の右側から左側(開閉カバー242側から奥側)に向かって、燃料プレフィルタ43、燃料フィルタ42、作動油フィルタ46の順で並んでいる。
【0030】
そして、燃料フィルタ42は燃料プレフィルタ43よりも低い位置に、作動油フィルタ46は燃料フィルタ42よりも低い位置に、それぞれ配置されている。すなわち、開閉カバー242から離れた位置に配置されたフィルタほど、開閉カバー242側に配置されたフィルタよりも低い位置に配置されている。
【0031】
なお、「低い位置」とは、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46が互いに上下方向に重ならない(重複する部分を有していない)ことを意味しておらず、
図7に示すように、燃料フィルタ42と燃料プレフィルタ43、燃料フィルタ42と作動油フィルタ46、および燃料プレフィルタ43と作動油フィルタ46とは、それぞれ上下方向に重複する部分を有する。すなわち、機械室24の右側から左側に向かうにつれて燃料プレフィルタ43、燃料フィルタ42、作動油フィルタ46の順に、上下方向の位置が階段状に低くなっている。
【0032】
仮に、燃料フィルタ42が燃料プレフィルタ43よりも高い位置に、作動油フィルタ46が燃料フィルタ42よりも高い位置に、それぞれ配置されていた場合、すなわち開閉カバー242から離れた位置に配置されたフィルタほど、開閉カバー242側に配置されたフィルタよりも高い位置に配置されていた場合、例えば、作業員が、作動油フィルタ46のフィルタ本体をフィルタケースから取り出そうとすると、作動油フィルタ46よりも手前に位置する燃料フィルタ42や燃料プレフィルタ43に手や腕などがぶつかってしまうため作業がしづらい。
【0033】
一方、本実施形態のように、燃料フィルタ42は燃料プレフィルタ43よりも低い位置に、作動油フィルタ46は燃料フィルタ42よりも低い位置に、それぞれ配置されている場合、すなわち、開閉カバー242から離れた位置に配置されたフィルタほど、開閉カバー242側に配置されたフィルタよりも低い位置に配置されているには、作業員は、手や腕などが燃料フィルタ42や燃料プレフィルタ43にぶつかることなく、作動油フィルタ46のメンテナンス作業を行うことができる。なお、燃料フィルタ42についても同様に、作業員は、燃料フィルタ42よりも手前に位置する燃料プレフィルタ43に手や腕などがぶつかることなく、燃料フィルタ42のメンテナンス作業を行うことができる。
【0034】
図4~6に示すように、開閉カバー242は、カウンタウェイト23に固定された上下方向に延びるブラケット5に、一対のカバー用ヒンジ51,52を介して取り付けられている。一対のカバー用ヒンジ51,52は、ブラケット5の長手方向(上下方向)に所定の間隔を空けて並んで配置されている。開閉カバー242は、一対のカバー用ヒンジ51,52を中心として、前側から後側に向かって回動されることにより開き、後側から前側に向かって回動されることにより閉じる。
【0035】
なお、本実施形態では、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46が機械室24内における前側に配置されているため、これらのフィルタ42,43,46とは反対側、すなわち機械室24内における後側となるカウンタウェイト23にブラケット5が取り付けられていたが、機械室24の仕様によっては、ブラケット5が機械室24内における前側に、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46が機械室24内における後側に、それぞれ配置されていてもよい。その場合、開閉カバー242は、一対のカバー用ヒンジ51,52を中心として、後側から前側に向かって回動されることにより開き、前側から後側に向かって回動されることにより閉じることになる。
【0036】
したがって、ブラケット5は、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46とは反対側の位置であって、開閉カバー242が前後方向に回動可能となるように配置されていれば、機械室24内における具体的な位置については特に制限はない。
【0037】
また、開閉カバー242は、機械室24内に設けられた支持部材6により、機械室24内から支持されている。支持部材6は、例えば鉄や鋼のパイプを屈曲加工してなり、下段部61および上段部62の2段で構成されている。
【0038】
下段部61は、端部がブラケット5に取り付けられて燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の側に向かって延在する第1延在片611と、第1延在片611から機械室24の底部241に向かって垂下する第1垂下片612と、を有する。
【0039】
第1延在片611は、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46よりも下側に位置している。したがって、本実施形態では、下段部61は、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46のうち最も低い位置に配置された作動油フィルタ46よりも下側に位置している。
【0040】
第1垂下片612には、機械室24の底部241に取り付けるための取付用ブラケット613が設けられている。他方、機械室24の底部241には、上方向に延出した板部材241Aが固定されている。そして、取付用ブラケット613が2つのボルト613Aで板部材241Aに締結されることにより、第1垂下片612は機械室24の底部241に取り付けられる。
【0041】
本実施形態では、
図4および
図5に示すように、第1垂下片612は、機械室24の底部241の一部となっているカウンタウェイト23の右側の延出部232に、取付用ブラケット613および板部材241Aを介して取り付けられている。
【0042】
特に、
図5に示すように、板部材241Aを右側の延出部232における中央位置もしくは中央位置よりも後側の位置に取り付けることによって、第1垂下片612が、機械室24内の前後方向において中央もしくは中央よりも後方寄りに配置されることが望ましい。これにより、板部材241Aが右側の延出部232における中央位置よりも前側の位置に取り付けられている場合よりも、支持部材6(下段部61)と燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46との間に形成される空間を広く確保することができる。
【0043】
上段部62は、第1延在片611よりも上方において端部がブラケット5に取り付けられて燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の側に向かって延在する第2延在片621と、第2延在片621から下段部61の第1延在片611に向かって垂下する第2垂下片622と、を有する。第2垂下片622は、例えば、溶接などにより、第1延在片611に接続されている。
【0044】
また、
図5および
図6に示すように、第2垂下片622には、開閉カバー242に備えられた第1ロック部材71と係合することにより開閉カバー242を回動不能にロックする第2ロック部材72が設けられている。すなわち、開閉カバー242は、一対のカバー用ヒンジ51,52を中心に後側から前側に向かって回動されて、第1ロック部材71と第2ロック部材72とが係合することで開かなくなる。
【0045】
開閉カバー242は、第1ロック部材71と支持部材6が備える第2ロック部材72とが係合することで、支持部材6によって車体に支持される。すなわち、この開閉カバー242は、ブラケット5および支持部材6の両方によって車体に支持される。したがって、支持部材6は、第2ロック部材72を設置するためのサポート(土台)でありながら、かつ開閉カバー242を支持するための部材となっている。
【0046】
図4および
図5に示すように、上段部62の第2延在片621の長さは、下段部61の第1延在片611の長さよりも短く形成されている。したがって、上段部62の第2垂下片622は、下段部61の第1垂下片612の位置よりもブラケット5の側に位置している。
【0047】
本実施形態では、特に、
図5に示すように、下段部61の第1垂下片612が、機械室24内の前後方向において中央もしくは中央よりも後方寄りに配置されているため、上段部62の第2垂下片622は、機械室24内の前後方向において中央よりも後方寄りに配置される。これにより、機械室24内の前後方向において、上段部62の第2垂下片622と燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46との間に、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の前後方向の幅寸法(望ましくは、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の前後方向の幅寸法のうち最も大きい寸法)以上の空間が形成される。
【0048】
また、特に、
図4に示すように、本実施形態では、支持部材6は、下段部61の第1垂下片612が、機械室24の左右方向において燃料プレフィルタ43よりも右側に位置する右側の延出部232に取り付けられているため、第1延在片611および第2延在片621は、機械室24の前後方向に対して右側に傾いて(ブラケット5の位置から右斜め前方に向かって)延在している。これにより、第1延在片611および第2延在片621が、ブラケット5の位置から機械室24の前後方向に沿って真っ直ぐ延在している場合と比べて、支持部材6と燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46との間に形成される空間がより広くなっている。
【0049】
このように、支持部材6は、少なくとも下段部61が燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46よりも下側に位置し、かつ上段部62の第2延在片621の長さが下段部61の第1延在片611の長さよりも短いことから、機械室24の前後方向において、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46と上段部62との間には、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46と下段部61との間よりも広い空間が形成されている。
【0050】
これにより、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46のメンテナンス作業を行うにあたって、作業員の両手や腕などを入れるスペースが十分に確保されることから、作業員は、支持部材6を取り外すことなく、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、第1延在片611は下側ヒンジ63を介して、第2延在片621は上側ヒンジ64を介して、それぞれブラケット5に回動可能に取り付けられている。したがって、取付用ブラケット613と板部材241Aとを締結している2つのボルト613Aを取り外すと、支持部材6は下側ヒンジ63および上側ヒンジ64を中心に回動する。
【0052】
これにより、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46と上段部62との間の空間では作業スペースが不十分である場合には、支持部材6を取り外すことなく回転させることで作業スペースを広げることができる。
【0053】
また、本実施形態では、
図5および
図6に示すように、上段部62の第2延在片621とブラケット5とを連結する上側ヒンジ64が、一対のカバー用ヒンジ51,52のうちの上側に配置された方のカバー用ヒンジ51と上下方向において一部が重なるように配置されている。
【0054】
これにより、支持部材6は、上側ヒンジ64と上側に配置された方のカバー用ヒンジ51とが上下方向において重ならない位置に配置されている場合(すなわち、上側ヒンジ64の上端が上側に配置された方のカバー用ヒンジ51の下端よりも下方に位置している場合)と比べて、ブラケット5における上下方向の広い範囲で開閉カバー242をしっかりと支持することができる。
【0055】
なお、上側ヒンジ64は、上側に配置された方のカバー用ヒンジ51と上下方向において少なくとも一部が重なるように、または、上側に配置された方のカバー用ヒンジ51よりも上方となるように配置されていれば、上述の作用および効果を得ることができる。
【0056】
図4、
図5、および
図8に示すように、開閉カバー242の内側面242A(機械室24の内部に面する側の面)には、一対のカバー用ヒンジ51,52(ブラケット5)が取り付けられる側の端部とは反対側の他端部(開放側の端部)に第1板片81が設けられている。また、機械室24の右側壁243(開閉カバー242の前方に配置された側壁)の内側面243Aには、開閉カバー242側の端部に第2板片82が取り付けられている。
【0057】
第2板片82は、右側壁243における開閉カバー242側の端部よりも張り出しており、
図8に示すように、開閉カバー242がロックされた状態では、第1板片81の先端部と第2板片82の先端部とが左右方向に隙間Sを介して並んで配置される。
【0058】
第1板片81の先端部には、例えば、ゴムなどの弾性部材83が取り付けられている。弾性部材83は、開閉カバー242がロックされた状態では、隙間Sを埋めて第1板片81および第2板片82のそれぞれと接触している。なお、弾性部材83は、必ずしも第1板片81に取り付けられている必要はなく、第2板片82に取り付けられていてもよい。
【0059】
開閉カバー242では、第1ロック部材71が、開放側の端部から離れた位置、すなわち開放側の端部よりもブラケット5側の端部に近い位置に設けられているため、開閉カバー242のバタつきが大きくなりやすい。しかしながら、開閉カバー242がロックされた状態で、開閉カバー242側の第1板片81と右側壁243側の第2板片82とが弾性部材83を押し合うことにより、開閉カバー242のバタつきを抑えることができる。
【0060】
なお、
図4に示すように、本実施形態では、第1板片81および第2板片82はそれぞれ、上下方向に所定の間隔を空けて一対並んで設けられているが、開閉カバー242のバタつきを抑制することが可能であれば、数については特に制限はない。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、カウンタウェイト23は、左右両側の下端部にそれぞれ延出部232を有していたが、油圧ショベル1の仕様によっては、少なくとも開閉カバー242が配置された側の下端部に延出部232を有していればよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、支持部材6は、下側ヒンジ63および上側ヒンジ64を介してブラケット5に回動可能に取り付けられていたが、必ずしもブラケット5に対して回動可能に取り付けられる必要はなく、ボルトなどにより締結されていてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、機械室24内に収容されたフィルタとして、燃料フィルタ42、燃料プレフィルタ43、および作動油フィルタ46の3つを例に挙げて説明したが、フィルタの種類や数については特に制限はない。
【0065】
また、上記の実施形態では、建設機械の一態様として、後方小旋回型の油圧ショベル1について説明したが、これに限らず、機械室24の内部から支持部材6によって支持され前後方向に回動可能な開閉カバー242を有する機械室24を備えていれば、他の建設機械であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:油圧ショベル(建設機械)
5:ブラケット
6:支持部材
21:旋回フレーム(フレーム)
23:カウンタウェイト
24:機械室
42:燃料フィルタ(フィルタ)
43:燃料プレフィルタ(フィルタ)
46:作動油フィルタ(フィルタ)
51,52:カバー用ヒンジ
61:下段部
62:上段部
63:下側ヒンジ(ヒンジ)
64:上側ヒンジ(ヒンジ)
71:第1ロック部材
72:第2ロック部材
81:第1板片
82:第2板片
83:弾性部材
232:延出部
241:底部
242:開閉カバー
611:第1延在片
612:第1垂下片
621:第2延在片
622:第2垂下片
S:隙間