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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20240530BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61L9/01 Z
A61L9/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020200658
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088700
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 拓
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125646(JP,A)
【文献】特開2017-124367(JP,A)
【文献】中国実用新案第209131066(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01D 47/00-47/18
F24F 6/00- 6/18
F24F 8/00- 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌対象空気が外装前面に設けた上流側の吸気口から下流側の送気口へ流れる浄化用通気路を形成するハウジングと、浄化用通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液を噴霧する噴霧装置と、除菌対象空気の流れ方向において噴霧装置の上流側に位置し、噴霧装置から噴霧された殺菌剤溶液を保持するメディアと、浄化用通気路をなすとともに、メディアを収めて除菌対象空気と殺菌剤溶液が接触する気液接触領域を形成する風洞を備え、
風洞は、吸気口に対向して横方向に向く上流側開口と上方向に向く下流側開口を有し、除菌対象空気の気流進路が横方向から上方向に変転する気流進路変転域をなし、ハウジングの外装前後方向に沿った下流側開口の幅である風洞幅Wと上流側開口の高さである空気取入高Hとの比W/Hが基準値1.0で-0.5から+1.0の範囲にあり、
メディアは、風洞の内部に上流側開口の側からハウジングの外装後側に向けて斜め下方に傾斜させて配置し、下流側開口の開口面に対する傾斜角度が、基準値45°で-19°から+18°の範囲にあることを特徴とする空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌、消臭、除塵、ガス除去の機能を備える空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄装置には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、除菌対象空気が上流側から下流側に流れる通気路を有するハウジングを備え、通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液としての微酸性電解水を噴霧する噴霧装置と、通気路から降下する殺菌剤溶液を受け止める循環槽を有するものであり、さらに、循環槽の微酸性電解水を噴霧装置に供給する循環系と、循環槽に微酸性電解水を供給する薬剤供給装置を有している。そして、薬剤供給装置は、ハウジングの外へ微酸性電解水を取り出す外部取出部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6223112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に空気清浄装置において除菌効果に影響を与える大きな要素は、殺菌剤溶液と除菌対象空気の接触時間および接触頻度である。
【0005】
この接触時間および接触頻度を適切に確保するために重要となる構成部材が風洞である。風洞の構造によって、除菌対象空気の気流速度、気流方向等の気流状態および殺菌剤溶液の噴霧水の拡散状態が異なるものとなる。
【0006】
メディアを配置する空気清浄装置においては、噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が十分に拡散してメディアの全面を濡らすことが殺菌剤溶液と除菌対象空気の接触頻度の最大化に貢献する。このためには、噴霧ノズルからメディアまでの離間距離である加湿距離を最適な有効加湿距離とし、殺菌剤溶液の噴霧水が噴霧ノズルからメディアに到達するまでの滞空時間を適切に設定する必要がある。しかし、この有効加湿距離および滞空時間の最適化は装置の小型化を図る上で障害となっている。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、噴霧ノズルから噴霧する噴霧水が十分に拡散してメディアの全面を濡らすことができ、かつ装置の小型化を実現した空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の空気清浄装置は、除菌対象空気が外装前面に設けた上流側の吸気口から下流側の送気口へ流れる浄化用通気路を形成するハウジングと、浄化用通気路を流れる除菌対象空気に殺菌剤溶液を噴霧する噴霧装置と、除菌対象空気の流れ方向において噴霧装置の上流側に位置し、噴霧装置から噴霧された殺菌剤溶液を保持するメディアと、浄化用通気路をなすとともに、メディアを収めて除菌対象空気と殺菌剤溶液が接触する気液接触領域を形成する風洞を備え、風洞は、吸気口に対向して横方向に向く上流側開口と上方向に向く下流側開口を有し、除菌対象空気の気流進路が横方向から上方向に変転する気流進路変転域をなし、ハウジングの外装前後方向に沿った下流側開口の幅である風洞幅Wと上流側開口の高さである空気取入高Hとの比W/Hが基準値1.0で-0.5から+1.0の範囲にあり、メディアは、風洞の内部に上流側開口の側からハウジングの外装後側に向けて斜め下方に傾斜させて配置し、下流側開口の開口面に対する傾斜角度が、基準値45°で-19°から+18°の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、除菌対象空気の気流進路が横方向から上方向に変転する気流進路変転域をなし、メディアを収めて除菌対象空気と殺菌剤溶液が接触する気液接触領域を形成する風洞において、下流側開口の風洞幅Wと上流側開口の空気取入高Hとの比W/Hを基準値1.0で-0.5から+1.0の範囲に設定することで、風洞を通過する除菌対象空気の流速および気流状態を最適化し、風洞における気流の短絡的な流れを抑止して除菌対象空気の滞留時間を最大化する。
【0011】
この結果、斜めに配置したメディアの上方位置からメディア下端に向けて噴霧されて、メディア上面に沿って飛翔する殺菌剤溶液の噴霧水は、滞空時間が延びて、十分に拡散してメディアの全面を濡らし、除菌対象空気と殺菌剤溶液の接触時間、接触頻度が向上し、装置の小型化を実現できる。
【0012】
また、気流進路変転域にメディアを斜め下方に傾斜させて配置することで、メディアの表面積を大きくとることができ、気液接触面積が増えて浮遊ウィルスの除去性能が向上し、ハウジング内の空間の有効利用を図って装置の小型化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す全体斜視図
図2】同実施の形態に係る空気清浄装置の構成を示す模式図
図3】同実施の形態に係る空気清浄装置の電解槽の構成を示す模式図
図4】同実施の形態に係る空気清浄装置の要部を示す模式図
図5】同実施の形態に係る空気清浄装置の風洞を示す模式図
図6】同実施の形態に係る空気清浄装置における風洞縦横比と除菌率の関係を示すグラフ図
図7】同実施の形態に係る空気清浄装置の運転時間と浮遊ウィルス数の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1から図4に示すように、空気清浄装置は、ハウジング500の外装前面の扉体501に下方位置の吸気口502と上方位置の送気口503を有しており、ハウジング500の内部に除菌対象空気51が上流側の吸気口502から下流側の送気口503に流れる浄化用通気路52を形成している。
【0016】
ハウジング500の浄化用通気路52の途中には、除菌対象空気51の流れ方向において上流側から下流側へ順次に、第1防塵ネット504、乾式フィルター505、メディア506、噴霧装置53、エリミネータ507、ファン装置600、第2防塵ネット508を設けている。
【0017】
第1防塵ネット504、乾式フィルター505、メディア506は、浄化用通気路52の気液接触領域を形成する風洞509に装着している。
【0018】
風洞509は、浄化用通気路52をなすとともに、メディア506を収めて除菌対象空気と殺菌剤溶液が接触する気液接触領域を形成する。風洞509は、吸気口502に対向して横方向に向く上流側開口701と、エリミネータ507に対向して上方向に向く下流側開口702を有し、除菌対象空気の気流進路が横方向から上方向に変転する気流進路変転域を形成する。
【0019】
図5に示すように、風洞509は、ハウジング500の外装前後方向に沿った下流側開口702の幅である風洞幅Wと上流側開口701の高さである空気取入高Hとの比W/Hが基準値1.0で-0.5から+1.0の範囲にある。
【0020】
メディア506は、除菌対象空気51の流れ方向において噴霧装置53の上流側に位置し、風洞509の内部に上流側開口701の側からハウジング500の外装後側に向けて斜め下方に傾斜させて配置してあり、下流側開口702の開口面703に対する傾斜角度θが、空気取入高Hとの比W/Hに応じたものとなり、基準値45°で-19°から+18°の範囲にある。メディア506は単一のものを配置することもでき、多段に配置することも可能である。多段に配置する場合には、下段のメディア56が上段のメディア56から落ちてくる水滴を捕捉して水膜を形成する。メディア56のメッシュの粗さは、上段のメッシュ56を下段のメッシュ56よりも細かくする。
【0021】
噴霧装置53は浄化用通気路52を流れる除菌対象空気に微酸性電解水である殺菌剤溶液をメディア506に沿って噴霧水として噴霧するもので、複数の噴霧ノズル531を備えている。噴霧ノズル531は、斜め下方に向けて配置しても良く、上方に向けて配置しても良く、噴霧装置53をメディア506と対向する位置に配置することも可能である。
【0022】
ここでの微酸性電解水は、主な有効成分が次亜塩素酸(HCLO)で、pH5.0-6.5、有効塩素濃度10-80mg/kgの水溶液である。
【0023】
メディア506は、噴霧装置53から噴霧された噴霧水を保持して除菌対象空気と殺菌剤溶液との気液接触を促すものであって、導電性の材料をマット状にしたものである。エリミネータ507は水滴やミストを捕捉して気流中から除去するものであり、メディア506を収めた風洞509の上方位置に配置している。
【0024】
メディア506の下方には循環槽54が設けてあり、循環槽54は浄化用通気路52から降下する殺菌剤溶液を受け止めて貯溜するものである。循環槽54の内部には中継槽541を設けており、中継槽541を覆って降下液ガイド板542を設けている。
【0025】
循環槽54と噴霧装置53の間には循環系55が配設してあり、循環系55は循環ポンプ550を有して循環槽54の殺菌剤溶液を噴霧装置53に供給するものである。
【0026】
循環系55は、殺菌剤溶液の噴霧と排出を兼ねる循環ポンプ550が循環槽54の下方に位置し、循環ポンプ550の下流側に三方流路切替弁551および逆止弁552を介装している。三方流路切替弁551から排水系567が分岐しており、三方流路切替弁551を切替操作することで1台の循環ポンプ550を兼用して殺菌剤溶液の循環と排出を実施できる。
【0027】
また、循環ポンプ550の停止時には逆止弁552が循環系55における殺菌剤溶液の逆流を阻止するので、噴霧装置53の噴霧ノズル531を上方に向けて配置すれば、循環ポンプ550の停止時に循環系55の内部を殺菌剤溶液が満たした状態となり、循環ポンプ550の再起動時に空気の排出に起因する異音が発生しない。
【0028】
殺菌剤溶液である微酸性電解水を供給する薬剤供給系56は、微酸性電解水を生成する生成装置561と、生成装置561に給水する給水系562と、給水系562から分岐して希釈用水を循環槽54に供給する希釈用水供給系563と、先に述べた中継槽541と、生成装置561から微酸性電解水を中継槽541および中継槽541を介して循環槽54に調製用大流量で供給する調製用供給部564と、中継槽541から循環槽54へ微酸性電解水を補給用小流量で滴下して供給する中継ポンプ565を介装した補給用供給部566を備えている。
【0029】
本実施の形態で中継槽541は循環槽54の内部に配置しているが、循環槽54の外部に配置することも可能である。
【0030】
調剤用供給部564には三方流路切替弁564bが介装してあり、三方流路切替弁564bに外部取出部564cが流量調整弁564dを介して接続している。外部取出部564cはハウジング500の扉体501の前面に設けてあり、先端部が水平方向に向かう上方の水平姿勢と先端部が下方向に向かう下方の傾斜姿勢とわたって上下に揺動し、水平姿勢と傾斜姿勢の間に設定する角度範囲(0-90°)において任意の角度に傾斜配置可能である。
【0031】
生成装置561は、給水系562に連通する給水口(ストレーナ)651から調剤用供給部564に連通する送出口652に至る経路中に、電磁弁653、流量計654、電解槽655を有しており、電解槽655に薬液ポンプ656を通して原料薬液の塩酸カートリッジ657が接続している。
【0032】
図3に示すように、電解槽655は給水系562の管路に連通する開口部801を有する通水式の構造をなし、槽内に電極802を配している。そして、電解槽655は槽内に供給する原料薬液の塩酸を電極802で電気分解して塩素ガスGを発生させ、塩素ガスGを電解槽655の開口部801から給水系562の管路を流れる給水中に混気し、微酸性電解水を得る。
【0033】
扉体501の前面には空気清浄装置の運転を担う制御装置900を設けており、制御装置900はタッチパネルからなる操作盤901を有している。
【0034】
制御装置900は、生成装置561で生成した微酸性電解水を噴霧装置53に供給する空気清浄運転モード部と、生成装置561で生成した微酸性電解水を外部取出部564cから取り出す除菌水運転モード部を有しており、三方流路切替弁564bの操作に伴って、空気清浄運転モード部の運転と、除菌水運転モード部の運転の何れかの運転モードとなる。
【0035】
以下、上記した構成の作用を説明する。
(空気清浄運転モード部の通常運転モード)
薬剤供給装置56は、中継ポンプ565により補給用供給部566を介して中継槽541から循環槽54へ微酸性電解水を補給用小流量、ここでは例えば0.05L/分で滴下して供給し、循環槽54の殺菌剤溶液の有効塩素濃度を0.1-10mg/Lに維持し、循環槽54の殺菌剤溶液を殺菌に適した希釈濃度に保つ。
【0036】
この状態で、循環ポンプ550によって循環槽54の殺菌剤溶液を噴霧装置53に供給し、ハウジング500の浄化用通気路52を上流側から下流側に流れる除菌対象空気51に、噴霧装置53の噴霧ノズル531から循環槽54で濃度調整された殺菌剤溶液を噴霧する。
【0037】
この噴霧により、除菌対象空気51に含まれる浮遊菌や塵埃等の異物は、噴霧された殺菌剤溶液の噴霧水に衝突し、捕捉され、除菌される。さらにメディア506に到達した殺菌剤溶液の噴霧水は、メディア506に付着した浮遊菌や塵埃を流下させるとともに、除菌対象空気51に含まれた浮遊菌や塵埃等の異物を取り込み、循環槽54内に流入する。
【0038】
この際に、風洞509は、除菌対象空気51の気流進路が横方向から上方向に変転する気流進路変転域をなし、メディア506を収めて除菌対象空気51と殺菌剤溶液が接触する気液接触領域を形成し、下流側開口702の風洞幅Wと上流側開口701の空気取入高Hとの比(縦横比)W/Hが基準値1.0で-0.5から+1.0の範囲にあるので、風洞509を通過する除菌対象空気51の流速および気流状態を最適化し、風洞509における気流の短絡的な流れを抑止して除菌対象空気51の滞留時間を最大化する。
【0039】
この結果、斜めに配置したメディア506の上方位置の噴霧ノズル531からメディア下端に向けて噴霧されて、メディア上面に沿って飛翔する殺菌剤溶液の噴霧水は、滞空時間が延びて、十分に拡散してメディア506の全面を濡らし、除菌対象空気51と殺菌剤溶液の接触時間、接触頻度が向上し、装置の小型化を実現できる。
【0040】
また、気流進路変転域にメディア506を斜め下方に傾斜させて配置することで、ハウジング内の空間の有効利用を図って装置の小型化に貢献できる。
【0041】
循環槽54には、噴霧により失われた損失量を補うために、必要に応じて希釈用水供給系563から希釈用水を供給する。また、循環槽54では、微酸性電解水が補給用小流量で滴下されて循環槽54の槽内の殺菌剤溶液の有効塩素濃度が0.1-10mg/Lの殺菌に適した濃度に維持されているので、循環槽54内に流入する菌を確実に除菌することができる。また、殺菌剤溶液を除菌対象空気51に高い飽和効率で直接的に噴霧することで、除菌対象空気51に含まれた浮遊菌や塵埃等の異物を殺菌剤溶液に取り込むことができ、除菌に加えて除塵も実現できる。
【0042】
メディア506を通過した殺菌後の空気は、エリミネータ507を通過してファン装置600により室内へ供給される。
(空気清浄運転モード部の調製運転モード)
三方流路切替弁551を操作し、循環ポンプによって循環槽54の古い殺菌剤溶液を排出系567から系外へ排出し、循環槽54の液位を低下させる。
【0043】
次に、三方流路切替弁551を戻して循環系55が噴霧装置53に接続する状態で、薬剤供給系56は、給水系562から生成装置561に給水し、生成装置561において微酸性電解水を生成し、生成時濃度の微酸性電解水を殺菌剤溶液として調製用供給部564を通して中継槽541に調製用大流量で供給する。
【0044】
生成時濃度の微酸性電解水の供給と同時に、希釈用水供給系563から希釈用水を循環槽54に供給する。そして、循環槽54に有効塩素濃度が設定濃度0.1-10mg/Lである濃度調整された微酸性電解水からなる新しい殺菌剤溶液を回分調製し、循環槽54内に殺菌剤溶液を貯溜する。
【0045】
このとき、制御装置900は、空気清浄運転モード部の運転下にあり、電解槽655の電解電流値の調整により、塩素ガスの発生量を標準設定値の有効塩素濃度に見合う標準発生量に制御する。
【0046】
さらに、制御装置900は、流量計654の測定給水量が標準給水量より少ない場合に給水量の不足量に見合って塩素ガスの発生量を減少させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持し、流量計654の測定給水量が標準給水量より多い場合に給水量の過剰量に見合って塩素ガスの発生量を増加させて、生成装置561で生成する微酸性電解水の有効塩素濃度を標準設定値に保持する。
(空気清浄運転モード部の洗浄運転モード)
洗浄運転モードでは、三方流路切替弁551を操作し、循環ポンプ550によって循環槽54の古い殺菌剤溶液を排出系567から系外へ排出し、調製用供給部564から殺菌剤溶液を循環槽54に供給し、循環槽54に所定量の殺菌剤溶液を満たして循環槽54を薬剤洗浄する。
(除菌水運転モード部の運転)
空気清浄装置から微酸性電解水を除菌水として取り出す場合には、三方流路切替弁564bを操作して調剤用供給部564を外部取出部564cに接続し、微酸性電解水を取り出す。
(実施例1)
図7は、本実施の形態に係る空気清浄装置の運転時間と浮遊ウィルス数(対数)の関係を示すグラフ図であり、空気清浄装置を運転しない状態において、清浄化対象空間の浮遊ウィルス数(対数)は、時間の経過とともに、わずかに自然減衰する。殺菌剤溶液を噴霧しないで空気清浄装置を運転する状態において、清浄化対象空間の浮遊ウィルス数は、自然減衰に比べて多く減少する。殺菌剤溶液を噴霧して空気清浄装置を運転する状態において、清浄化対象空間の浮遊ウィルス数(対数)は、10分で半減し、実際の浮遊ウィルス数(実数)において除菌率99%が達成される。
【0047】
図6は、この空気清浄装置において、風洞509の下流側開口702の風洞幅Wと上流側開口701の空気取入高Hとの比(縦横比)W/Hと、除菌率99%になるまでに必要な到達時間Tとの関係を示しており、表1は、空気清浄装置の諸元を示すデータである。ここでは、風洞幅Wと空気取入高Hの和が一定(固定)であることを条件としている。
【0048】
【表1】
図6および表1より、到達時間Tが10分以内で除菌率99%に達する風洞幅Wと空気取入高Hとの比(縦横比)W/Hは、0.5から2.0の範囲である。縦横比W/Hが1.0である場合には到達時間Tが5.7分で除菌率99%に達し、風洞509における除菌対象空気51の滞留時間τが0.0746秒となる。縦横比W/Hが0.5である場合には到達時間Tが9.9分で除菌率99%に達し、風洞509における除菌対象空気51の滞留時間τが0.0664秒となる。縦横比W/Hが2.0である場合には到達時間Tが9.5分で除菌率99%に達し、風洞509における除菌対象空気51の滞留時間τが0.0664秒となる。
【0049】
除去率、臭気除去率、除塵率は気液接触率に依存するので、除去率の向上は気液接触率の向上を前提とする事象である。よって、風洞509は、最も短時間に除菌率99%に達する縦横比W/H=1.0を基準値とすると、縦横比W/Hが基準値の-0.5から+1.0の範囲内にある場合に、風洞509を通過する除菌対象空気51の流速および気流状態を最適化でき、風洞509における気流の短絡的な流れを抑止して除菌対象空気51の滞留時間を最大化できる。
【0050】
この結果、斜めに配置したメディア506の上方位置からメディア下端に向けて噴霧されて、メディア上面に沿って飛翔する殺菌剤溶液の噴霧水は、滞空時間が延びて、十分に拡散してメディア506の全面を濡らし、除菌対象空気51と殺菌剤溶液の接触時間、接触頻度が向上し、装置の小型化を実現できる。
【0051】
また、気流進路変転域にメディア506を斜め下方に傾斜させて配置することで、メディアの表面積を大きくとることができ、気液接触面積が増えて浮遊ウィルスの除去性能が向上し、ハウジング内の空間の有効利用を図って装置の小型化に貢献できる。
【符号の説明】
【0052】
51 除菌対象空気
52 浄化用通気路
53 噴霧装置
54 循環槽
55 循環系
56 薬剤供給系
500 ハウジング
501 扉体
502 吸気口
503 送気口
504 第1防塵ネット
505 乾式フィルター
506 メディア
507 エリミネータ
508 第2防塵ネット
509 風洞
531 噴霧ノズル
541 中継槽
542 降下液ガイド板
550 循環ポンプ
551 三方流路切替弁
552 逆止弁
561 生成装置
562 給水系
563 希釈用水供給系
564 調製用供給部
564b 三方流路切替弁
564c 外部取出部
564d 流量調整弁
564e 給水口
565 中継ポンプ
566 補給用供給部
567 排出系
600 ファン装置
651 給水口(ストレーナ)
652 送出口
653 電磁弁
654 流量計
655 電解槽
656 薬液ポンプ
657 塩酸カートリッジ
701 上流側開口
702 下流側開口
703 開口面
801 開口部
802 電極
900 制御装置
901 操作盤
G 塩素ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7