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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】振動抑制装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240530BHJP
   F16F 15/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/04 F
F16F15/06 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020219423
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104301
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】515064009
【氏名又は名称】ソフトバンクロボティクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】園部 真康
(72)【発明者】
【氏名】豊田 勝敏
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2010-0110143(KR,A)
【文献】特開2018-091387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳用ロボットに着脱可能に装着するための装着部を有する基台と、
前記基台上に配置され、上部に可動天板を有し、且つ、配膳用ロボットの自走又は停止による前記可動天板の振動を抑制するための振動抑制機構と、
前記可動天板上に着脱可能に装着され、料理又は食器類を載置するための載置面を有するトップトレーと、
を有し、
前記振動抑制機構は、
前記基台と前記可動天板との間に設けられ、前記基台に対して前記可動天板の相対移動を可能とする摺動部材と、
前記基台と前記可動天板との間に連結され、前記可動天板が配膳用ロボットの自走又は停止による振動により移動した場合に、前記可動天板を元の位置に復元するように動作する弾性部材と、
前記基台の当接部と当接して、前記可動天板の相対移動を規制するためのストッパと、
を有し、
前記ストッパは、軟質部材により形成された軟質部と硬質部材により形成された硬質部を有し、
前記当接部は、前記軟質部と当接するための第1当接部と、前記硬質部と当接するための第2当接部を有し、
前記第1及び第2当接部は、前記第2当接部が前記硬質部に当接するより先に、前記第1当接部が前記軟質部に当接するように前記基台に配置されている、
ことを特徴とする振動抑制装置。
【請求項2】
前記当接部は、円形の形状を有している、請求項に記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記振動抑制機構は、前記当接部と前記ストッパを複数組有する、請求項1または2に記載の振動抑制装置。
【請求項4】
前記振動抑制機構は、前記基台と前記可動天板との間に設けられた抵抗部材を更に有する、請求項1~の何れか一項に記載の振動抑制装置。
【請求項5】
前記載置面には、滑り止め加工が施されている、請求項1~の何れか一項に記載の振動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配膳ロボット等に用いられる振動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店や小売店等において従業員と共に働くことを目的として、配膳するテーブルを指定すると自律的に走行して料理を運ぶ配膳ロボットが開発されている。配膳ロボットは、人や物などの障害物を検知して避けながら移動することができる。配膳ロボットによれば、飲食店等のホールスタッフの大きな負担だった調理場とホールの往復作業などを大幅に削減し、より多くの時間を接客等に使えるため、業務効率を最大化しながらサービス品質を高めることができるようになる。
【0003】
配膳ロボットは料理や食器等を運ぶため、走行開始時や停止時等に生じる振動を抑制することが重要である。これまでに、安定して載荷物を載荷する免振装置が報告されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の免振装置は、ベースプレート部材と、ベースプレート部材上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材と、ベースプレート部材と載荷プレート部材との間に設けられ相対移動を可能とする滑り部材または転がり部材と、ベースプレート部材と載荷プレート部材との間に連結され地震動を吸収し地震前の位置に復元する複数の弾性部材を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-091387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の免振装置は、載荷プレート部材の可動範囲に制限がないため、載荷プレート部材の振動が大きくなると、載荷プレート部材がベースプレート部材から脱落するおそれがあった。
【0006】
本発明は、振動が大きい場合でもトレーが配膳ロボットから脱落することなく、料理等を運搬することができる振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置は、配膳用ロボットに着脱可能に装着するための装着部を有する基台と、基台上に配置され、上部に可動天板を有し、且つ、配膳用ロボットの自走又は停止による可動天板の振動を抑制するための振動抑制機構と、可動天板上に着脱可能に装着され、料理又は食器類を載置するための載置面を有するトップトレーと、を有することを特徴とする。
【0008】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、振動抑制機構は、基台と可動天板との間に設けられ、基台に対して可動天板の相対移動を可能とする摺動部材と、基台と可動天板との間に連結され、可動天板が配膳用ロボットの自走又は停止による振動により移動した場合に、可動天板を元の位置に復元するように動作する弾性部材と、基台の当接部と当接して、可動天板の相対移動を規制するためのストッパと、を有することが好ましい。
【0009】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、ストッパは、軟質部材により形成された軟質部と硬質部材により形成された硬質部を有し、当接部は、軟質部と当接するための第1当接部と、硬質部と当接するための第2当接部を有し、第1及び第2当接部は、第2当接部が硬質部に当接するより先に、第1当接部が軟質部に当接するように基台に配置されていることが好ましい。
【0010】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、当接部は、円形の形状を有していることが好ましい。
【0011】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、振動抑制機構は、当接部とストッパを複数組有することが好ましい。
【0012】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、振動抑制機構は、基台と可動天板との間に設けられた抵抗部材を更に有することが好ましい。
【0013】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置において、載置面には、滑り止め加工が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の実施形態に係る振動抑制装置によれば、振動が大きい場合でもトレーが配膳用ロボットから脱落することなく、料理等を運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る振動抑制装置を備えた配膳ロボットの斜視図であり、(a)は振動抑制装置の可動天板にトップトレーを搭載した状態を示し、(b)は振動抑制装置の可動天板にトップトレーを搭載していない状態を示す。
図2】本開示の一実施形態に係る振動抑制装置を備えた配膳ロボットの側面図であり、(a)は振動抑制装置の可動天板にトップトレーを搭載した状態を示し、(b)は振動抑制装置の可動天板にトップトレーを搭載していない状態を示す。
図3】本開示の一実施形態に係る振動抑制装置を備えた配膳ロボットの第2載荷台の拡大斜視図である。
図4図1(a)のA-A線における断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る振動抑制装置を構成する基台、可動天板、及び振動抑制機構の平面図であり、(a)は可動天板が通常の位置にある状態を示し、(b)は可動天板が移動し、ストッパの軟質部が当接部の第1当接部に当接した状態を示し、(c)は可動天板がさらに移動し、ストッパの硬質部が当接部の第2当接部に当接した状態を示す。
図6】(a)は図5(a)のB-B線における断面図であり、(b)は図5(b)のC-C線における断面図であり、(c)は図5(c)のD-D線における断面図である。
図7図5(b)のC-C線における断面斜視図である。
図8図1(a)のE-E線における断面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る振動抑制装置に配置される抵抗部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る振動抑制装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を備えた配膳ロボット100について説明する。図1(a)及び(b)は、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を備えた配膳ロボット100の斜視図であり、図1(a)は振動抑制装置200の可動天板2にトップトレー4を搭載した状態を示し、図1(b)は振動抑制装置200の可動天板2にトップトレー4を搭載していない状態を示す。図2(a)及び(b)は、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を備えた配膳ロボット100の側面図であり、図2(a)は振動抑制装置200の可動天板2にトップトレー4を搭載した状態を示し、図2(b)は振動抑制装置200の可動天板2にトップトレー4を搭載していない状態を示す。図3は、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を備えた配膳ロボット100の第2載荷台62の拡大斜視図である。図4は、図1(a)のA-A線における断面図である。
【0018】
配膳ロボット100は、第1載荷台61、第2載荷台62、及び第3載荷台63を備えている。第1載荷台61及び第2載荷台62は第1アーム71で連結されており、第2載荷台62及び第3載荷台63は第2アーム72で連結されている。第1載荷台61及び第2載荷台62は同一構造を備えており、それぞれに振動抑制装置200が設けられている。
【0019】
配膳ロボット100は、底部の車輪カバー81の内部に車輪82を備えており、自律走行を行う。配膳ロボット100が走行を開始する際、走行中、及び停止する際に、トップトレー4上に搭載した料理や食器等に加速度がかかり、料理がこぼれたり、食器が倒れたりする恐れがある。本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200は、配膳ロボット100が走行を開始する際、走行中、及び停止する際に、トップトレー4に載置された料理や食器等にかかる加速度を緩和することにより、料理がこぼれたり食器が転倒したりするのを抑制するものである。
【0020】
振動抑制装置200は、基台1と、振動抑制機構3と、トップトレー4と、を備えている。基台1は、配膳用ロボット100の第1載荷台61及び第2載荷台62に着脱可能に装着するための装着部12を有する。基台1は金属等で構成されており、通常は第1載荷台61及び第2載荷台62に固定されている。また、振動抑制機構3のメンテナンスの際には、基台1を第1載荷台61及び第2載荷台62から取りはずしてメンテナンスを行うことができる。第1載荷台61及び第2載荷台62は同一構造を有していることが好ましい。第1載荷台61及び第2載荷台62が同一構造を有していることにより、基台1は第1載荷台61及び第2載荷台62のいずれにも装着することができる。図1及び図2には、配膳ロボット100が振動抑制装置200を搭載する2つの載荷台を備える例を示したが、振動抑制装置200を搭載する載荷台は1つでもよく、3つ以上であってもよい。
【0021】
振動抑制機構3は、基台1上に配置される。振動抑制機構3は、上部に可動天板2を有し、且つ、配膳用ロボット100の自走又は停止による可動天板2の振動を抑制することができる。可動天板2はアクリルまたはガラス等の耐傷性に優れ、表面硬度の硬い材質等により構成することができる。可動天板2は水平方向の任意の方向に動くことができる。振動抑制機構3の詳細な構成については後述する。
【0022】
トップトレー4は、可動天板2上に着脱可能に装着され、料理又は食器類を載置するための載置面41を有する。トップトレー4は、可動天板2と一体となって動くことができる。従って、配膳ロボット100の走行開始時、走行中、及び停止時に振動抑制機構3が可動天板2の振動を抑制することにより、トップトレー4の振動を抑制することができる。
【0023】
配膳ロボット100の走行開始時、走行中、及び停止時に料理又は食器類が移動することを防止するために、載置面41には、滑り止め加工が施されていることが好ましい。滑り止め加工は、載置面41に塗装を施したり、滑り止め用のシートを配置したりすることにより実現することができる。トップトレー4は、可動天板2と容易に着脱可能な構成を備えているため、トップトレー4が食べ物等で汚れた場合であっても容易に洗浄を行うことができる。また、トップトレー4は、食洗器等で洗浄および乾燥を容易に行うこと可能な材質で構成することが好ましく、例えば、プラスチックにより構成することができる。
【0024】
トップトレー4の下部には嵌合部42が設けられ、可動天板2の外周部と嵌合する構造を備えており、可動天板2に着脱可能に装着することができる。また、嵌合部42の外周面は凹形状を備えており、店員等がトップトレー4を可動天板2に着脱する際に指を掛けられる構造となっている。
【0025】
トップトレー4の載置面41の外周にはガード部43が設けられており、料理又は食器類が載置面41から脱落するのを防止することができる。ガード部43は、載置面41の外周全体に設けてもよく、載置面41への料理又は食器類の搭載または取り出しの容易性を考慮して、載置面41の外周の一部に設けてもよい。
【0026】
次に、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を構成する振動抑制機構3について説明する。図5(a)~(c)は、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を構成する基台1、可動天板2、及び振動抑制機構3の平面図であり、図5(a)は可動天板2が通常の位置にある状態を示し、図5(b)は可動天板2が移動し、ストッパ33の軟質部33aが当接部11の第1当接部11aに当接した状態を示し、図5(c)は可動天板2がさらに移動し、ストッパ33の硬質部33bが当接部11の第2当接部11bに当接した状態を示す。図6(a)は、図5(a)のB-B線における断面図であり、図6(b)は図5(b)のC-C線における断面図であり、図6(c)は図5(c)のD-D線における断面図である。図7は、図5(b)のC-C線における断面斜視図である。振動抑制機構3は、摺動部材31と、弾性部材32と、ストッパ33と、を有する。
【0027】
摺動部材31は、基台1と可動天板2との間に設けられ、基台1に対して可動天板2の相対移動を可能とする。図5(a)~(c)においては、摺動部材31が9か所設けられた例を示しているが、このような例には限られず、3ヶ所以上設けられていればよい。摺動部材31は、正多角形の頂点に配置することが好ましい。図5(a)~(c)においては、外周側の6個の摺動部材31は、正6角形の頂点に配置され、内周側の3個の摺動部材31は、正3角形の頂点に配置された例を示している。ただし、このような例には限られず、任意の正多角形の頂点に配置するようにしてもよい。摺動部材31は、例えばボールベアリングにより構成することができる。摺動部材31は、可動天板2の底面側と接するため、可動天板2が滑らかに移動可能なように、可動天板2の底面は平坦な構造を有していることが好ましい。
【0028】
弾性部材32は、基台1と可動天板2との間に連結され、可動天板2が配膳用ロボット100の自走又は停止による振動により移動した場合に、可動天板2を元の位置に復元するように動作する。弾性部材32は、基台1側の第1係止部34と、可動天板2側の第2係止部35との間に設けられる。第2係止部35は可動天板2の中心部近傍に配置され、第1係止部34は基台1の外周部近傍に配置される。弾性部材32が伸縮することにより、可動天板2は基台1と平行な面上で任意の方向に移動することができる。弾性部材32には、バネやゴム等を用いることができる。図5(a)~(c)においては、可動天板2の周辺部と基台1の外周部とをそれぞれ2つずつの弾性部材32を用いて連結する例を示したが、可動天板2の周辺部と基台1の外周部とを連結する弾性部材32の数をそれぞれ1つとしてもよい。また、第1係止部34及び第2係止部35をそれぞれ3個ずつ設ける例を示したが、このような例には限られず、それぞれ4個以上設けるようにしてもよい。
【0029】
図5(b)に示すように、配膳ロボット100が矢印Yの方向に走行を開始すると、基台1も移動するが、可動天板2は慣性モーメントによりその場に留まろうとするため、弾性部材32が伸縮し、可動天板2が矢印Yの方向とは反対方向に基台1に対して相対的に移動する。配膳ロボット100が走行を開始した際に、可動天板2が相対移動することにより、可動天板2に装着されたトップトレー4にかかる加速度が緩和され、トップトレー4に載置した料理等の振動を抑制することができる。
【0030】
一方、配膳ロボット100の移動速度が一定となると可動天板2に対する加速度がなくなり、弾性部材32が元に戻ろうとするため、可動天板2は元の位置に戻る。矢印Y方向に移動していた配膳ロボット100が停止する際には、可動天板2には矢印Yとは反対方向の加速度がかかり、図5(b)とは逆に可動天板2は矢印Yの方向に基台1に対して相対的に移動する。
【0031】
ストッパ33は、基台1の当接部11と当接して、可動天板2の相対移動を規制する。図5(b)に示すように、配膳ロボット100が走行を開始する際、走行中、及び停止する際には、基台1に対して可動天板2が相対移動することにより、可動天板2に装着したトップトレー4に生じる振動を抑制することができるが、可動天板2の可動範囲を無制限とすると可動天板2が基台1から脱落するおそれがある。また、可動天板2は基台1と弾性部材32により連結されているため、可動天板2の移動距離が大きくなると、弾性部材32が伸び過ぎて復元しなくなるおそれがある。そこで、可動天板2の可動範囲を一定の範囲に規制するために、可動天板2にストッパ33が設けられている。ストッパ33は、可動天板2上で基台1に対向する面に配置されている。基台1には当接部11が設けられ、当接部11の内周側には、ストッパ33が移動可能な空間が設けられている。可動天板2が移動することにより、ストッパ33は当接部11の内周側の空間を移動する。一方、ストッパ33が当接部11に当接することにより、可動天板2の移動が規制される。当接部11は、円形の形状を有していることが好ましい。当接部11を円形とすることにより、可動天板2が任意の方向に移動した場合であっても可動天板2の移動距離を一定とすることができ、可動天板2が基台1から脱落するのを防止することができ、弾性部材32が伸び過ぎて復元しなくなるのを防止することができる。ただし、このような例には限られず、当接部11の形状を矩形としてもよい。当接部11を矩形とした場合であっても、可動天板2が基台1から脱落するのを防止することができ、弾性部材32が伸び過ぎて復元しなくなるのを防止することができる 。
【0032】
ストッパ33は、軟質部材により形成された軟質部33aと硬質部材により形成された硬質部33bを有する。硬質部33bは可動天板2にネジ等により固定されている。硬質部33bは可動天板2から基台1方向に向かって延伸した円柱形状を備えていることが好ましい。硬質部33bは金属等により構成することができる。軟質部33aは、硬質部33bの軸方向の一部に配置され、硬質部33bと同心であり、硬質部33bより径が大きい円柱形状を有することが好ましい。軟質部33aはゴム等により構成することができる。
【0033】
当接部11は、軟質部33aと当接するための第1当接部11aと、硬質部33bと当接するための第2当接部11bを有する。第1当接部11a及び第2当接部11bは基台1が鉛直方向に軸を有する円柱状にくり抜かれた同心円状の内周面を有する。第1当接部11aの内周面の径は、第2当接部11bの内周面の径より大きい。可動天板2が基台1に対して移動していない状態では、図6(a)に示すように、ストッパ33は当接部11の略中心に位置している。可動天板2が基台1に対して相対移動すると、ストッパ33は当接部11に近づく。例えば、図6(b)に示すように、配膳ロボット100が停止している状態から左方向に移動すると、基台1も左方向に移動し、可動天板2は基台1に対して相対的に右方向に移動する。ストッパ33は可動天板2に固定されているため、ストッパ33も右方向に移動する。可動天板2にかかる加速度が小さい場合は、ストッパ33は当接部11に当接せずに元の位置に戻る場合がありうる。
【0034】
一方、可動天板2にかかる加速度が大きい場合、基台1に対する相対移動が大きくなり、図6(b)に示すように、まず、ストッパ33の軟質部33aが当接部11の第1当接部11aに当接する。軟質部33aは軟質部材で構成されているため、ストッパ33が当接部11に当接した際に、軟質部33aが圧縮されることにより、可動天板2に生じる加速度を低減させ、可動天板2に装着されたトップトレー4の振動を抑制することができる。
【0035】
可動天板2が基台1に対してさらに相対移動すると、軟質部33aはさらに圧縮されていく。そうすると、軟質部33aが圧縮される量が大きくなり、その分だけ反発力も増加し、可動天板2が元の位置に戻る際の加速度が大きくなり、可動天板2に装着されたトップトレー4の振動が増大するおそれがある。そこで、軟質部33aが第1当接部11aに当接した後に、さらに可動天板2が移動する場合には、図6(c)に示すように、軟質部33aが所定量圧縮された状態で、ストッパ33の硬質部33bが、当接部11の第2当接部11bに当接する。これにより、軟質部33aが圧縮される量を所定の範囲に制限することができ、可動天板2が元の位置に戻る際に生じる加速度を減少させ、可動天板2に装着されたトップトレー4の振動を抑制することができる。このように、第1及び第2当接部11bは、第2当接部11bが硬質部33bに当接するより先に、第1当接部11aが軟質部33aに当接するように基台1に配置されていることが好ましい。
【0036】
ここで、軟質部33a及び硬質部33bは同心円状の円柱形状を備えており、それぞれの半径をr1、r2とする。また、第1当接部11a及び第2当接部11bは同心円状の内周面を備えており、それぞれの半径をr3、r4とする。このとき、第2当接部11bが硬質部33bに当接するより先に、第1当接部11aが軟質部33aに当接するようにするために、それぞれの半径の大きさは、以下の式(1)を満たすように決めることが好ましい。
r1-r2>r3-r4 (1)
【0037】
図6(b)及び(c)においては、ストッパ33が当接部11の右側側面で当接する例を示したが、このような例には限られず、ストッパ33は、当接部11の任意の側面に当接することができる。例えば、図7に示すように、ストッパ33が当接部11の左側側面で当接する場合であっても、第2当接部11bが硬質部33bに当接するより先に、第1当接部11aが軟質部33aに当接するようにすることが好ましい。
【0038】
また、ストッパ33の底部は基台1に対して所定の距離dだけ離間していることが好ましい。ストッパ33が基台1に対して離間していることにより、可動天板2が基台1に対してスムーズに移動することができる。
【0039】
図5(a)~(c)においては、振動抑制機構3が、ストッパ33と当接部11を3組有する例を示したが、このような例には限られず、ストッパ33と当接部11を複数組有していればよく、2組、あるいは4組以上有していてもよい。
【0040】
ここで、ストッパ33と当接部11を複数組設ける場合において、可動天板2が基台1に対して相対移動した際に、複数組のストッパ33と当接部11において、それぞれのストッパが同時に当接部11に当接することが好ましい。例えば、図5(b)に示すように、3個のストッパ33が同時に当接部11に当接することが好ましい。このようにすることで、1つのストッパ33のみが当接部11に当接する場合に比べて、より大きな加速度が可動天板2に加わった場合でも振動を抑制することができる。
【0041】
また、図6(a)~(c)及び図7においては、ストッパ33の軟質部33aを鉛直方向の上方に配置し、硬質部33bを下方に配置した例を示したが、このような例には限られない。即ち、軟質部33aと硬質部33bの位置を上下方向に逆の位置に配置し、ストッパ33の軟質部33aを鉛直方向の下方に配置し、硬質部33bを上方に配置してもよい。この場合は、第2当接部11bが硬質部33bに当接するより先に、第1当接部11aが軟質部33aに当接するように、第1当接部11a及び第2当接部11bの位置も上下方向に逆の位置に配置し、第1当接部11aを鉛直方向の下方に配置し、第2当接部11bを上方に配置することが好ましい。
【0042】
次に、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置200を構成する振動抑制機構3に設けられている抵抗部材5について説明する。図8は、図1(a)のE-E線における断面図である。図9は、本開示の一実施形態に係る振動抑制装置に配置される抵抗部材5の断面図である。振動抑制機構3は、基台1と可動天板2との間に設けられた抵抗部材5を有する。
【0043】
抵抗部材5の厚さは基台1と可動天板2との間よりも大きい。抵抗部材5を基台1に配置し、その上に可動天板2を配置した状態では、抵抗部材5は圧縮された状態となる。可動天板2が基台1に対して相対移動する際には、可動天板2は抵抗部材5の表面上を摺動する。
【0044】
図5(a)に示すように、抵抗部材5は基台1の周辺部に設けられることが好ましい。図5(a)においては、抵抗部材5を基台1上の4ヶ所に配置する例を示したがこのような例には限られず、複数ヶ所に設けられていればよい。
【0045】
図9に示すように、抵抗部材5は、可動天板2と接する面に配置された摺動部51と、本体52と、基台1と接着させるための接着部53とを有する。摺動部51には樹脂を用いることができ、例えばシリコーン樹脂を用いることができる。本体52は、圧縮により反発力を得られる部材であればよく、例えば発泡体を用いることができる。接着部53には接着剤や接着部材を用いることができ、例えば、両面テープを用いることができる。
【0046】
配膳ロボット100が走行を開始する際、走行中、及び停止する際に、可動天板2に加速度が生じ、可動天板2が基台1に対して相対移動するが、基台1と可動天板2との間に抵抗が存在しないと可動天板2にかかる加速度が大きくなり、可動天板2に装着されたトップトレー4の水平方向の振動が大きくなるおそれがある。また、基台1と可動天板2との間に抵抗が存在しないと可動天板2が基台1に対して水平方向に振動しやすくなり、一旦振動し始めると収束するまで長時間かかるという問題が生じる恐れがある。これに対して、基台1と可動天板2との間に抵抗部材5を設けると、抵抗部材5は可動天板2と接することにより、基台1に対して相対移動する際に抵抗を生じるため、可動天板2に加わる加速度がある程度大きくないと可動天板2は移動しない。その結果、配膳ロボット100の走行開始時、走行中、及び停止時に可動天板2に加わる加速度が所定の値より小さい場合は、可動天板2は基台1に対して静止した状態を維持することができる。
【0047】
また、配膳ロボット100の走行開始時、走行中、及び停止時に可動天板2に加わる加速度が所定の値より大きい場合は、可動天板2は基台1に対して相対移動するが、抵抗部材5は可動天板2と接することにより、基台1に対して相対移動する際に抵抗を生じるため、可動天板2の移動速度を減少させ、抵抗部材5を設けない場合に比べて短時間で可動天板2の水平方向の振動を減少させることができる。また、抵抗部材5を設けることにより、可動天板2が移動し、元の位置に戻る際に生じる加速度も抑えることができ、可動天板2に装着したトップトレー4の水平方向の振動を抑制することができる。その結果、トップトレー4に載置した料理の液面を揺らすようなスロッシング効果を抑制することができる。
【0048】
可動天板2は摺動部材31によって支持されるが、トップトレー4に載置される料理等の重量が大きいと可動天板2が摺動部材31に加える荷重が増大し、摺動部材31が可動天板2を摺動させる機能が低下する恐れがある。抵抗部材5は可動天板2が摺動部材31に加える荷重を分散させることができるため、摺動部材31の摺動機能の低下を抑制することができる。
【0049】
上記の説明において、可動天板2とトップトレー4とを別体として説明したが、可動天板2とトップトレー4とを一体化させてもよい。
【0050】
上記の説明において、振動抑制装置200が、配膳ロボット100が走行を開始する際、走行中、及び停止する際に生じる振動を抑制する例について説明したが、他の要因で配膳ロボット100に対して水平方向に加速度が生じる場合においても、振動を抑制することができる。例えば、配膳ロボット100が停止している状態、あるいは走行している状態で地震が発生したり、人や物に衝突したりして、配膳ロボット100が水平方向に移動した際にも、振動抑制装置200は振動を抑制することができる。
【0051】
以上説明したように、本開示の実施形態に係る振動抑制装置によれば、振動が大きい場合でもトレーがロボットから脱落することなく、料理等を運搬することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 基台
11 当接部
11a 第1当接部
11b 第2当接部
12 装着部
2 可動天板
21 連結部
3 振動抑制機構
31 摺動部材
32 弾性部材
33 ストッパ
33a 軟質部
33b 硬質部
34 第1係止部
35 第2係止部
4 トップトレー
41 載置面
42 嵌合部
43 ガード部
5 抵抗部材
51 摺動部
52 本体
53 接着部
61 第1載荷台
62 第2載荷台
63 第3載荷台
71 第1アーム
72 第2アーム
81 車輪カバー
82 車輪
100 配膳用ロボット
200 振動抑制装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9