(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240530BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240530BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240530BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240530BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240530BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240530BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20240530BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20240530BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B7/02
B32B27/30 B
B32B27/32 Z
C09J7/38
C09J11/08
C09J123/00
C09J125/04
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020517393
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011393
(87)【国際公開番号】W WO2020203214
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019066792
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】町田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井上 則英
(72)【発明者】
【氏名】田邨 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
(72)【発明者】
【氏名】辰喜 利海
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-089044(JP,A)
【文献】特開2016-183241(JP,A)
【文献】特開2016-196650(JP,A)
【文献】特開2013-116626(JP,A)
【文献】特開2017-132995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199172(WO,A1)
【文献】特開2018-119138(JP,A)
【文献】特開2018-001620(JP,A)
【文献】特開2013-072067(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084517(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047321(WO,A1)
【文献】特開2019-156943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その少なくとも一方の面の側に樹脂層Aを有する積層フィルムであって、以下(a)、(b)、(c)を満たし、
前記樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)が、0.30μm以上、0.70μm以下であり、
前記樹脂層Aが、25℃、1Hzでのtanδ(25)が0.5以上のオレフィン系エラストマーを含
み、
前記樹脂層Aが、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが0.01g/10分以上1.5g/10分以下であるオレフィン系樹脂を含む、積層フィルム。
(a)樹脂層A側の23℃におけるプローブタック最大値Fが、0.2g/mm
2以上、2.5g/mm
2以下。
(b)樹脂層A側の26℃、最大荷重1mNでナノインデンテーションによる負荷除荷試験を行ったときの残留変位hp(単位μm)と最大変位hm(単位μm)の比(hp/hm)が、0.50以上、0.90以下。
(c)樹脂層Aが、50℃以上に融点Tmを有する。
【請求項2】
前記樹脂層Aの50℃、1Hzでの貯蔵弾性率G’(A)が、1.5MPa以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層Aが、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが3g/10分以上50g/10分以下であるスチレン系エラストマーを含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層Aが、軟化点80℃以上の、未水添または部分水添の芳香族系共重合体及び/または未水添または部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記基材が、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーを含む、請求項1~
4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記基材の樹脂層Aを有する側の面とは反対の面の側に、樹脂層Bを有する、請求項1~
5のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状の異なる様々な被着体に対し、被着体の形状に関わらず一定の粘着力を示す、被着体依存性に優れた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂、金属、ガラス等の各種素材からなる製品は、加工・輸送工程や保管中に生じるキズや汚れを防止するため、その表面に保護用のシートやフィルムを貼合し、取り扱われることがある。一般には、熱可塑性樹脂や紙からなる支持基材の上に、粘着層が形成された表面保護フィルム等が用いられ、上記粘着層面を被着体に貼り合わせて使用される。
【0003】
特に近年、液晶ディスプレイやタッチパネルデバイスの普及が進んでいるが、これらは合成樹脂からなる多数の光学シートや光学フィルム等の部材から構成されている。かかる光学用部材は、光学的な歪み等の欠点を極力低減させる必要があることから、欠点の原因となり得るキズや汚れを防止するため、表面保護フィルムが多用されている。
【0004】
このような表面保護フィルムの特性としては、温度、湿度等の環境変化や小さな応力を受けた程度では被着体から容易に剥離しないこと、被着体から剥離した際に被着体に粘着剤および粘着剤成分が残らないこと、加工後や使用後に容易に剥離できることが求められる。
【0005】
上記光学用部材のなかでも拡散板、プリズムシートのような表面に凹凸形状を有する被着体については、様々な表面形状を有するものが市場に出回っており、このような異なる表面形状をもつ被着体に対し一様な粘着力を示し、汎用的に利用できる表面保護フィルム、すなわち被着体依存性の小さい表面保護フィルムの開発が求められている。
【0006】
表面に凹凸形状を有する被着体に用いられる表面保護フィルムに関して、特許文献1、2に記載の技術をあげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-253435号公報
【文献】特開2013-117019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の表面に凹凸形状を有する被着体に用いられる表面保護フィルムである、特許文献1や2に記載の技術は、いずれも被着体の凹凸形状の違いによる粘着力差、いわゆる被着体依存性を改善するものではなかった。
【0009】
そこで本発明の課題は、上記した課題を解決することにある。すなわち、異なる表面形状をもつ被着体に対し一様な粘着力を示し、汎用的に利用できる、被着体依存性に優れた積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題は、以下によって解決可能である。
【0011】
基材と、その少なくとも一方の面の側に樹脂層Aを有する積層フィルムであって、以下(a)、(b)、(c)を満たす積層フィルム。
【0012】
(a)樹脂層A側の23℃におけるプローブタック最大値Fが、0.2g/mm2以上、2.5g/mm2以下。
【0013】
(b)樹脂層A側の26℃、最大荷重1mNでナノインデンテーションによる負荷除荷試験を行ったときの残留変位hp(単位μm)と最大変位hm(単位μm)の比(hp/hm)が、0.50以上、0.90以下。
【0014】
(c)樹脂層Aが、50℃以上に融点Tmを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上述の課題に鑑み、被着体依存性に優れ、異なる表面形状を持つ様々な被着体に対して、良好な粘着特性を示す積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明は、基材と、その少なくとも一方の面の側に樹脂層Aを有する積層フィルムである。ここで樹脂層Aとは、基材の少なくとも一方の面の側に配置される、少なくとも樹脂を含む層であって、以下の(a)、(b)、(c)を満たす層である。そして樹脂層Aは、樹脂を含みさえすれば、その樹脂の種類は特に限定されないが、積層フィルムが以下の(a)、(b)、(c)を満たすように樹脂層A中の樹脂を選択することが好ましい。なお、樹脂層Aが含有する樹脂の好ましい態様については、後述する。
【0018】
(a)樹脂層A側の23℃におけるプローブタック最大値Fが、0.2g/mm2以上、2.5g/mm2以下。
【0019】
(b)樹脂層A側の26℃、最大荷重1mNでナノインデンテーションによる負荷除荷試験を行ったときの残留変位hp(単位μm)と最大変位hm(単位μm)の比(hp/hm)が、0.50以上、0.90以下。
【0020】
(c)樹脂層Aが、50℃以上に融点Tmを有する。
【0021】
本発明の積層フィルムは、樹脂層A側の23℃におけるプローブタック最大値Fが、0.2g/mm2以上、2.5g/mm2以下である。プローブタック最大値Fは、0.3g/mm2以上がより好ましく、0.4g/mm2以上がさらに好ましい。また、プローブタック最大値Fは、2.0g/mm2以下がより好ましく、1.5g/mm2以下がさらに好ましい。
【0022】
樹脂層A側のプローブタック最大値Fが0.2g/mm2未満の場合は、本発明の積層フィルムを表面保護フィルムとして用いた際に、十分な粘着力が得られない場合がある。また、樹脂層A側のプローブタック最大値Fが2.5g/mm2より大きい場合は、粘着力が大きくなりすぎたり、特に表面粗度粗さの小さい被着体に対する粘着力が大きくなることで被着体依存性が大きくなりすぎる場合がある。
【0023】
プローブタック最大値Fは、後述する樹脂層Aを構成する材料や樹脂層Aの柔軟性、厚み、表面粗さ等を調整することで制御できるが、例えば、樹脂層Aを硬くする方法、樹脂層Aの厚みを薄くする方法、樹脂層Aの表面粗さを大きくする方法により、プローブタック最大値Fを小さくして0.2g/mm2以上2.5g/mm2以下に制御することができる。
【0024】
本発明の積層フィルムは、樹脂層A側の26℃、最大荷重1mNでナノインデンテーションによる負荷除荷試験を行ったときの残留変位hp(単位μm)と最大変位hm(単位μm)の比(hp/hm。以下、hp/hmと記載する)が、0.50以上、0.90以下である。hp/hmは、0.60以上がより好ましく、0.70以上がさらに好ましい。また、hp/hmは、0.80以下がより好ましい。
【0025】
hp/hmが0.50未満の場合、本発明の積層フィルムの樹脂層A側を被着体に貼合した際に、樹脂層Aが被着体の凹凸部へ追従しにくく、粘着力が小さくなりすぎたり、特に表面粗度の大きい被着体に対する粘着力が小さくなり、被着体依存性が大きくなりすぎる場合がある。hp/hmが0.90を超える場合は、粘着力が大きくなりすぎる場合がある。hp/hmは、後述する樹脂層Aを構成する材料等により制御することができる。
【0026】
本発明の積層フィルム中の樹脂層Aは、50℃以上に融点Tmを有するが、さらに好ましくは100℃以上に融点Tmを有する。また、本発明の樹脂層Aが融点を二つ以上有する場合は、高温側の融点を本発明の樹脂層Aの融点Tmとする。Tmの上限は特に設けないが、実質的に180℃以下が好ましい。Tmが50℃未満の場合、あるいは樹脂層Aが融点を持たない場合は、本発明の積層フィルムを被着体に貼合後、高温下で保管されたり、時間が経つにつれて、樹脂層Aと被着体の接触面積が増加し、粘着力が大きくなりすぎる場合がある。Tmが180℃を超える場合は、樹脂層Aを溶融押出により成形する場合に、粘度が高くなりすぎて生産性が悪くなってしまう場合がある。
【0027】
樹脂層Aが50℃以上にTmを有するための方法としては、樹脂層Aを構成する材料に50℃以上の融点をもつ結晶性樹脂を添加する方法が挙げられる。つまり、樹脂層Aが50℃以上の融点をもつ結晶性樹脂を含むような態様とする方法を挙げることができる。このような樹脂層Aが含有するのに好適な結晶性樹脂としては例えば、樹脂層Aに用いられる他の成分との相溶性や生産性の観点から結晶性のオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂の具体例は、後述する。
【0028】
上記したプローブタック最大値F、ナノインデンテーション測定により得られるhp/hm、樹脂層Aの融点Tmは実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
本発明の樹脂層Aは50℃、1Hzでの貯蔵弾性率G’(A)が、1.5MPa以上であることが好ましく、2.0MPa以上がより好ましく、2.5MPa以上がさらに好ましい。貯蔵弾性率G’(A)の上限は特に設けないが、貼り付き性等の粘着特性の観点から、30MPaが好ましい。
【0030】
樹脂層Aの貯蔵弾性率G’(A)を1.5MPa以上にすることは、本発明の積層フィルムを被着体に貼合後、高温下で保管されたり、時間が経ったときの、樹脂層Aと被着体の接触面積増加を抑制し、粘着力の増加を抑制する観点で好ましい。なお、樹脂層Aの貯蔵弾性率G’(A)は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0031】
また、樹脂層Aの貯蔵弾性率G’(A)は、樹脂層Aを構成する材料を調整することで制御でき、例えば、貯蔵弾性率G’(A)を高くする方法としては、樹脂層Aがスチレン系エラストマーを含有する態様として、さらにそのスチレン系エラストマーの分子量を大きくする方法、樹脂層A中の樹脂として50℃以上の融点をもつ結晶性樹脂を用いる方法、樹脂層A中の樹脂として芳香族系共重合体や脂肪族・芳香族系共重合体の未水添物や部分水添物を用いる方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)は、0.20μm以上が好ましく、0.30μm以上がより好ましく、0.40μm以上が特に好ましい。また、算術平均粗さRa(A)は、0.80μm以下が好ましく、0.70μm以下がより好ましく、0.60μm以下が特に好ましい。算術平均粗さRa(A)を0.20μm以上にすることは、被着体依存性を小さくしたり、本発明の積層フィルムを被着体に貼合後、高温下で保管されたり、時間が経ったときの、樹脂層Aと被着体の接触面積増加を抑制し、粘着力増加を抑制する観点で好ましい。なお、樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)は、実施例に記載の方法で測定することができる。また、樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)は、例えば、後述の樹脂層Aを構成する材料や基材を構成する材料、樹脂層Aの厚みによって制御することができる。
【0033】
本発明の積層フィルムは、前述の通り、基材と、その少なくとも一方の面の側に樹脂層Aを有する。ここで、樹脂層Aは有限の厚さを有する層状のものを指し、常温で粘着性を有することが好ましい。
【0034】
樹脂層Aが粘着性を有するとは、算術平均粗さRaが0.2μm、十点平均粗さRzが2.8μmであるSUS304板に対して、積層フィルムの樹脂層A側をロールプレス機((株)安田精機製作所製特殊圧着ローラ)を用い、貼込圧力0.35MPaで貼り合わせた後、樹脂層AとSUS304板間の粘着力を測定した場合に、1g/25mm以上の粘着力を有することを意味する。樹脂層Aの粘着性は、2g/25mm以上であればより好ましく、5g/25mm以上であればさらに好ましい。樹脂層Aの粘着性は高い程好ましく、上限は特にないが、1000g/25mmを超える場合には貼合後に剥離が困難となり作業性が低下することがあるので、1000g/25mm程度が上限として好ましい。
【0035】
樹脂層Aは、基材の少なくとも一方の面の側に配置されさえすれば、その位置は特に限定されないが、本発明の積層フィルムの少なくとも一方の最外層に配置されることが好ましい。粘着性を有する樹脂層Aが、積層フィルムの最外層に配置されることで、樹脂層Aを介して積層フィルムを被着体と貼り合せることが可能となる。また樹脂層Aは、基材の少なくとも一方の面の側に配置されさえすれば特に限定されないので、基材と樹脂層Aは直接接するように配置されても構わないし、基材と樹脂層Aの間には、例えば易接着層のような別の層を設けることもできる。
【0036】
樹脂層Aは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、アクリル系、シリコーン系、天然ゴム系、合成ゴム系などのエラストマーを含むことができる。これらの中でもリサイクル性の観点から熱可塑性の合成ゴム系粘着剤を用いることが好ましく、なかでもスチレン系エラストマーがより好ましい。
【0037】
本発明においてスチレン系エラストマーとは、25℃、1Hzでの貯蔵弾性率G’(25)が10MPa以下であって、単量体成分として少なくともスチレン成分を含む樹脂を言う。このような樹脂層Aが含有するのに好適なスチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)等のスチレン・共役ジエン系共重合体およびそれらの水添物(例えば水添スチレン・ブタジエン共重合体(HSBR)やスチレン・エチレンブチレン・スチレントリブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレンブチレンジブロック共重合体(SEB))や、スチレン・イソブチレン系共重合体(例えば、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)やスチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)、またはこれらの混合物)を使用することができる。前記した中でも、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)等のスチレン・共役ジエン系共重合体およびそれらの水添物、スチレン・イソブチレン系共重合体が好ましく用いられる。また、スチレン系エラストマーは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用することもできる。
【0038】
樹脂層A中に好適に含まれるスチレン系エラストマーの、樹脂層A中の含有量は、樹脂層A全体を100質量%としたとき、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、スチレン系エラストマーの、樹脂層A中の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。樹脂層A中のスチレン系エラストマーの含有量を上記好ましい範囲内とすることで、本発明の積層フィルムを粘着フィルムとして用いたときに、良好な粘着特性を得ることができる。
【0039】
樹脂層A中に好適に含まれるスチレン系エラストマーのメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgの条件で測定)は、3g/10分以上が好ましく、7g/分以上がより好ましく、10g/10分以上がさらに好ましい。また、スチレン系エラストマーのMFRは、50g/10分以下が好ましく、30g/10分以下がより好ましく、20g/10分以下がさらに好ましい。樹脂層Aに好適なスチレン系エラストマーのMFRを上記範囲内とすることで、生産性に優れたり、本発明の積層フィルムを表面保護フィルムとして用いたときに、良好な粘着特性を示す。
【0040】
また、樹脂層Aに好適なスチレン系エラストマー中のスチレン成分の含有量は、スチレン系エラストマー全体を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。また、スチレン系エラストマー中のスチレン成分の含有量は、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。スチレン系エラストマー中のスチレン成分の含有量を上記範囲内とすることで、本発明の積層フィルムを被着体に貼り合わせた際に、良好な貼り付き性を示したり、糊残りを抑制したり等、良好な粘着特性を示す。
【0041】
本発明の樹脂層Aは、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgの条件で測定)が0.01g/10分以上、1.5g/10分以下であるオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。樹脂層AがMFRが0.01g/10分以上、1.5g/10分以下のオレフィン系樹脂を含むことにより、樹脂層Aのマトリックス成分であるエラストマーに対し、ドメイン成分としてオレフィン系樹脂が分散した構造を形成し、樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)好ましく制御でき、本発明の積層フィルムを粘着フィルムとして用いたときに被着体依存性を小さくすることが可能となる。樹脂層A中のオレフィン系樹脂のMFRは、0.1g/10分以上がより好ましく、0.2g/10分以上がさらに好ましい。また、オレフィン系樹脂のMFRは、1.3g/10分以下がより好ましく、1.0g/10分以下がさらに好ましい。MFRが0.01g/10分未満である場合は、ドメイン成分の分散不良によりオレフィン系樹脂が凝集、FEとなる場合がある。一方で、MFRが1.5g/10分を超える場合は、ドメイン成分の分散性が高まることにより、樹脂層Aの算術平均粗さRa(A)を本願規定の範囲に調整することが困難な場合がある。樹脂層A中に好適に含まれるオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体、結晶性ポリプロピレン、低結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリブテン、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・n-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が挙げられ、前記した中でも、結晶性ポリプロピレン、低結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体といったポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。これらオレフィン系樹脂は単独で用いても併用してもよい。なお、前記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテンを挙げることができる。これらの中でも、樹脂層A中のオレフィン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレンが特に好ましい。なお、ここで言うオレフィン系樹脂は、後述のオレフィン系エラストマーに該当するものであっても良い。一方でここで言うオレフィン系樹脂には、上記したスチレン系エラストマーは含まない。
【0042】
オレフィン系樹脂の樹脂層A中の含有量は、樹脂層A全体を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、オレフィン系樹脂の樹脂層A中の含有量は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。樹脂層A中のオレフィン系樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、良好な生産性を確保しながら、樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)を好ましく調整することができ、これにより本発明の積層フィルムを粘着フィルムとして用いた場合に被着体依存性が小さくなる等、粘着特性がより向上する。
【0043】
本発明の樹脂層Aは、オレフィン系エラストマーを含有することが好ましい。なお、本発明でいうオレフィン系エラストマーは、25℃、1Hzでの貯蔵弾性率G’(25)が10MPa以下であるオレフィン系樹脂、及び/または、25℃、1Hzでのtanδ(25)が0.5以上のオレフィン系樹脂を指す。つまりオレフィン系エラストマーは、一定の貯蔵弾性率G’(25)や一定のtanδ(25)を有するオレフィン系樹脂であるため、オレフィン系エラストマーに該当するものは、前述のオレフィン系樹脂にも該当することとなる。また、前述のとおりオレフィン系樹脂にはスチレン系エラストマーは含まないので、オレフィン系樹脂の一部であるオレフィン系エラストマーには、上記したスチレン系エラストマーは含まれない。
【0044】
本発明の樹脂層Aは、オレフィン系エラストマーを含有することが好ましいが、前述のオレフィン形エラストマーの中でも、25℃、1Hzでのtanδであるtanδ(25)が0.5以上のオレフィン系エラストマーを含むことがより好ましい。上記オレフィン系エラストマーのtanδ(25)は1.0以上がさらに好ましく、1.5以上が特に好ましい。本発明の樹脂層Aに上記オレフィン系エラストマーを含有することで、前述のプローブタック最大値Fや樹脂層A側のナノインデンテーションにより得られるhp/hmを好ましく制御することができる。
【0045】
このような樹脂層Aに好適なオレフィン系エラストマーとしては、例えば、非晶性ポリプロピレン、低結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリブテン、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体等を挙げることができるが、非晶性ポリプロピレンや4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体が好ましく用いられる。
【0046】
本発明の樹脂層A中のオレフィン系エラストマーの含有量は、樹脂層Aを100質量%とした時に、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、樹脂層A中のオレフィン系エラストマーの含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%がより好ましい。樹脂層A中のオレフィン系エラストマーの含有量が30質量%を超える場合、被着体への粘着力が低くなりすぎる場合がある。
【0047】
本発明の樹脂層Aは、被着体への貼り付き性を高める観点で、粘着付与剤を含むことが好ましい。粘着付与剤としては、本用途で公知のものを用いることができるが、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体や脂環式系共重合体等の石油樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂又はこれらの水添物等、本用途で一般に用いられるものを使用することができる。粘着付与剤の含有量は、樹脂層A全体を100質量%としたとき、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、粘着付与剤の含有量は、樹脂層A全体を100質量%としたとき、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0048】
本発明の樹脂層Aは、上記した粘着付与剤のなかでも、芳香族系共重合体あるいは脂肪族・芳香族系共重合体を少なくとも含むことがより好ましい。また、前記芳香族系共重合体あるいは脂肪族・芳香族系共重合体は、未水添または部分水添の芳香族系共重合体あるいは未水添または部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体であることが好ましい。なお、ここでいう部分水添とは、水添率が1質量%以上、90%質量未満のこと、未水添とは、水添率が0質量%以上、1質量%未満のことを言う。また、前記部分水添の芳香族系共重合体あるいは部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体の水添率は、80質量%未満がより好ましく、70質量%未満がさらに好ましく、50質量%未満が特に好ましい。樹脂層Aが、前記未水添または部分水添の芳香族系共重合体あるいは未水添または部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体を含むことにより、前述のプローブタック最大値Fの値を好ましく制御し、被着体依存性を小さくすることができる。なお、未水添または部分水添の芳香族系共重合体や未水添または部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体は、特に軟化点が80℃以上のものを好ましく用いることができる。つまり本発明の積層フィルムの樹脂層Aは、軟化点80℃以上の未水添または部分水添の芳香族系共重合体及び/または未水添または部分水添の脂肪族・芳香族系共重合体を含むことが特に好ましい。なお、水添率は、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMRスペクトル)測定により算出することができる。
【0049】
また、本発明の樹脂層Aは、上記した以外にも滑剤、その他の添加剤等の他の成分を本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加しても良い。
【0050】
本発明の樹脂層Aに用いる滑剤としては、スチレン系エラストマーをチップ化した際に、チップ同士が粘着、ブロッキングすることを防止するためにチップ表面に付着させたり、樹脂層Aの表面に析出させることで粘着力を調整したり、樹脂層Aを溶融押出する際に良好な押出性を得るために添加するもので、例えばステアリン酸カルシウムやベヘン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩やエチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミドやポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等のワックスを挙げることができる。滑剤の含有量は樹脂層A全体を100質量%としたとき、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0051】
また、上記したその他の添加剤としては、結晶核剤、酸化防止剤、耐熱付与剤、耐候剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は単体で用いても、併用してもよいが、総含有量は、樹脂層A全体を100質量%としたときに、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0052】
また、本発明の樹脂層Aは、樹脂層Aの算術平均粗さRa(A)を制御することを目的として、粒子を含んでもよい。樹脂層A中の粒子としては、例えば無機粒子や有機粒子などが使用でき、被着体と貼り合せた場合に被着体を損傷する懸念が少ない有機粒子であることが好ましい。有機粒子としては、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、フッ素系樹脂粒子、あるいは上記樹脂の合成に用いられる2種以上のモノマーの共重合樹脂粒子等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。
【0053】
樹脂層A中の粒子の平均粒子径は、樹脂層Aの算術平均粗さRa(A)及び粘着特性を好ましく制御する観点から、0.1μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。また樹脂層A中の粒子の平均粒子径は、20.0μm以下が好ましく、15.0μm以下がより好ましく、10.0μm以下が特に好ましい。
【0054】
本発明の樹脂層Aの厚みは、被着体への貼り付き性を確保する観点で、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。また、樹脂層Aの厚みは、被着体依存性を小さくしたり、被着体に貼り付け後の経時や加熱による粘着昂進を抑制する観点で、6.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましい。
【0055】
本発明の積層フィルムは基材を有する。ここで基材とは有限の厚さを有する層状のものを指す。基材の材質は特に限定されないが、例えばオレフィン系樹脂やエステル系樹脂を用いることができ、なかでも生産性や加工性の観点からオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで述べる主成分とは、基材を構成する全ての成分の中で最も質量%の高いもの(含有量の多いもの)をいう。
【0056】
基材中に主成分として含まれるオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・n-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が挙げられ、これらの中でも特にポリプロピレンを好ましく用いることができる。また、これらは単独で用いても併用してもよい。なお、前記α-オレフィンとしては、プロピレンやエチレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテンを挙げることができる。なお、ここで言うオレフィン系樹脂は、上記したオレフィン系エラストマーに該当するものであっても良い。一方でここで言うオレフィン系樹脂には、上記したスチレン系エラストマーは含まない。
【0057】
上記オレフィン系樹脂のなかでも、樹脂層Aの算術平均粗さRa(A)を所望の範囲に制御するためには、基材についても、主成分であるマトリックス樹脂に対し、ドメイン成分が分散した構造を有することが好ましい。上記構造を形成するには、例えば基材を構成する主成分をポリプロピレンとし、これに相溶しないポリオレフィンを添加する方法や、市販のブロックポリプロピレン、いわゆるブロックコポリマーあるいはインパクトコポリマーを用いる方法により可能である。
【0058】
本発明の基材に用いる樹脂のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgの条件で測定)は、生産性や隣接する層との積層時の安定性等の観点から、0.5g/10分以上が好ましく、1g/10分以上がより好ましく、2g/10分以上がさらに好ましい。また、基材に用いる樹脂のMFRは上記同様の観点から、30g/10分以下が好ましく、25g/10分以下より好ましく、20g/10分以下がさらに好ましい。
【0059】
本発明の基材は、スチレン系エラストマーを含むことが好ましい。つまり、本発明の積層フィルムの基材は、オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含むことが特に好ましい。基材にスチレン系エラストマーを含むことで、樹脂層Aにスチレン系エラストマーを用いた場合、基材と樹脂層Aの親和性が向上し、基材と樹脂層Aの間の界面接着力を高めることができる。基材全体を100質量%としたときの、基材中のスチレン系エラストマーの含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、基材中のスチレン系エラストマーの含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、本発明の基材に用いるスチレン系エラストマーは、公知のものを使用することができ、例えば上記した樹脂層Aに好適なスチレン系エラストマーと同じものを使用することができる。
【0060】
本発明の基材にスチレン系エラストマーを含有させる方法としては、例えば、樹脂層Aにスチレン系エラストマーを含む本積層フィルムを回収、再原料化した回収原料を添加して基材に使用する方法を挙げることができ、この方法を採用することは樹脂のリサイクルや生産コスト低下の観点から好ましい手法である。
【0061】
さらに本発明の基材中には、本発明の積層フィルムとしての特性を損なわない範囲で、結晶核剤、滑剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、顔料等の各種添加剤を適宜添加してもよい。また本発明の基材中には、本発明の樹脂層Aと良好に積層させるための易接着成分をさらに含有してもよい。
【0062】
本発明の積層フィルムを構成する基材の厚みは、積層フィルムの要求特性にあわせて適宜調整することができるが、製造時や使用時の搬送性や生産性の観点で、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、積層フィルムを構成する基材の厚みは、上記同様の観点で、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。
【0063】
本発明の積層フィルムは、基材の樹脂層Aを有する面とは反対の面の側に、樹脂層Bを有することが好ましい。ここで樹脂層Bとは、基材の樹脂層Aを有する側の面とは反対の面の側に配置される層であり、少なくとも樹脂を含む層であり、樹脂層Aとは異なる層である。つまり樹脂層Bは、前述の(a)、(b)、(c)の少なくとも1つを満たさない層である。この樹脂層Bは、離型性を有することが好ましく、有限の厚さを有する層状のものを指す。
【0064】
樹脂層Bは、基材の樹脂層Aを有する面とは反対の面の側に配置されさえすれば、その位置は特に限定されないため、基材と樹脂層Bは直接接するように配置されても構わないし、基材と樹脂層Bの間に別の層を設けることもできる。
【0065】
本発明の積層フィルムの樹脂層Bに用いる樹脂として、例えばオレフィン系樹脂やエステル系樹脂を挙げることができ、なかでも生産性や加工性の観点からオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで述べる主成分とは、積層フィルムの樹脂層Bを構成する成分のうち最も質量%の高いもの(含有量の多いもの)をいう。
【0066】
樹脂層Bに好適なオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・n-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が挙げられる。これらは単独で用いても併用してもよい。なお、前記α-オレフィンとしては、プロピレンやエチレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテンを挙げることができる。上記したポリオレフィン系樹脂のなかでも、樹脂層Bの粗さの制御による離型性付与の観点から、樹脂層Bを構成する主成分をポリプロピレンとし、これに相溶しないポリオレフィンを添加する方法や、市販のブロックポリプロピレン、いわゆるブロックコポリマーあるいはインパクトコポリマーを用いることが好ましい。樹脂層B中のオレフィン系樹脂としては1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用することもできる。なお、ここで言うオレフィン系樹脂は、上記したオレフィン系エラストマーに該当するものであっても良い。一方でここで言うオレフィン系樹脂には、上記したスチレン系エラストマーは含まない。
【0067】
本発明の樹脂層Bに用いる樹脂のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgの条件で測定)は、生産性や隣接する層との積層時の安定性等の観点から、0.5g/10分以上が好ましく、1g/10分以上がより好ましく、2g/10分以上がさらに好ましい。また、樹脂層Bに用いる樹脂のMFRは、上記同様の観点で、30g/10分以下が好ましく、25g/10分以下がより好ましく、20g/10分以下がさらに好ましい。
【0068】
樹脂層Bを構成する材料は、さらに離型剤として、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、無機粒子、有機粒子などの易滑剤を添加してもよい。
【0069】
本発明の積層フィルムは、樹脂層Bを有することで、製造工程やスリット工程で積層フィルムをロール状に巻き取る際に良好な巻き姿で巻き取ることができたり、スリット時や使用時にロールからフィルムを巻き出す際の力が大きくなりすぎず、良好に巻き出しすることができたりするようになる。なお、本発明の積層フィルムにおける樹脂層Aと反対側の面に離型性を付与する他の方法としては、樹脂層Bを設けずに上記した易滑剤などを基材に添加する方法も挙げられるが、生産性やコスト、離型効果の観点から樹脂層Bを設ける方法がより好ましい。
【0070】
本発明の積層フィルムの樹脂層Bの算術平均粗さRa(B)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上がより好ましい。樹脂層Bの算術平均粗さRa(B)の上限は特に設けないが、2μm以上では厚み精度や強度の低下が問題となる場合がある。
【0071】
本発明の積層フィルムは、基材と、その少なくとも一方の面の側に樹脂層Aを有するが、上記した通り、樹脂層Aを有する側とは反対の面の側に、樹脂層Bを有することが好ましい。また、本発明の積層フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、基材、樹脂層A、樹脂層B以外の別の層を設けても良いが、樹脂層Aおよび樹脂層Bがそれぞれ積層フィルムの最表面に位置することが好ましい。また、本発明の積層フィルムの厚みは、製造時や使用時の搬送性や生産性の観点で、10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。また、積層フィルムの厚みは、上記同様の観点で、250μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0072】
次に本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。
【0073】
本発明の積層フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、樹脂層A、基材、及び樹脂層Bをこの順に有する3層積層構成の場合、各々を構成する樹脂組成物を個別の押出機から溶融押出し、口金内で積層一体化させるいわゆる共押出法や、上記樹脂層A、基材、樹脂層Bをそれぞれ個別に溶融押出した後に、ラミネート法により積層する方法等が挙げられるが、生産性の観点から共押出法で製造されることが好ましい。各層を構成する材料は、ヘンシェルミキサ等で各々混合したものを用いてもよいし、予め各層の全てまたは一部の材料を混練したものを用いてもよい。共押出法については、インフレーション法、Tダイ法等の公知の方法が用いられるが、厚み精度に優れることや表面形状制御の観点から、Tダイ法による熱溶融共押出法が特に好ましい。
【0074】
共押出法により製造する場合、樹脂層A、基材、樹脂層Bの構成成分を各々溶融押出機から押出を行う。この時、樹脂層Aの押出温度は250℃以下であることが好ましく、より好ましくは230℃以下であり、さらに好ましくは220℃以下である。樹脂層Aの押出温度が250℃を超える場合、樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)を所望の範囲に制御できない場合がある。下限は特に設けないが、180℃未満の樹脂温度では、溶融粘度が高すぎるため、生産性が低下する場合がある。
【0075】
樹脂層Aと基材、樹脂層BはTダイ内部で積層一体化し、共押出を行う。そして金属冷却ロールで冷却固化し、フィルム状に成形を行い、ロール状に巻き取ることで積層フィルムを得ることができる。
【0076】
本発明の積層フィルムは、合成樹脂板、金属板、ガラス板等の製造、加工、運搬時の傷付き防止、汚れ付着防止用の表面保護フィルムとして用いることができるが、例えば、拡散板やプリズムシートなどの表面に凹凸を有する光学用の表面保護フィルムとして好ましく用いられる。また、樹脂層Aと接する面の算術平均粗さRaが0.1μm以上、2μm以下の面を有する被着体に貼り合わせて使用するための表面保護フィルムとして好ましく用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性の測定および評価は、以下の方法により実施した。以下の実施例1、2、4、6-10は参考例1、2、4、6-10と読み替える。
【0078】
(1)表面粗さ
樹脂層A側の算術平均粗さRa(A)、樹脂層Bの算術平均粗さRa(B)、被着体Xの算術平均粗さRa(X)、被着体Xの十点平均粗さRz(X)、被着体Yの算術平均粗さRa(Y)、被着体Yの十点平均粗さRz(Y)は、(株)小坂研究所製の高精度微細形状測定器(SURFCORDER ET4000A)を用い、JIS B0601-1994に準拠し、積層フィルム、被着体の幅方向に2mm、長手方向に0.2mmの範囲について、走査方向を幅方向とし、長手方向に10μm間隔で21回の測定を実施し3次元解析を行い、評価した。なお、触針先端半径2.0μmのダイヤモンド針を使用、測定力100μN、カットオフ0.8mmで測定した。
【0079】
(2)プローブタック最大値
レスカ製タッキング試験機TAC1000を用いて、以下の条件で積層フィルムの樹脂層A側から直径5mmのSUSプローブを接触後、引き剥がした際の最大荷重を読み取り、プローブの面積で除して単位面積あたりの荷重を算出した。試験は1種類の積層フィルムにつき5回実施し、その平均値を積層フィルムの樹脂層A側のプローブタック最大値Fとした。
温度:23℃
サンプル設置後の保持時間:5分
接触速さ、引き剥がし速さ:2mm/秒
接触時間:2秒。
【0080】
(3)ナノインデンテーション測定による残留変位hpと最大変位hmの比hp/hm
エリオニクス製のナノインデンテーションテスターENT-2100を用いて、以下の条件で、バーコビッチ圧子(先端三角錐)を用いて、積層フィルムの樹脂層A側から負荷-除荷試験による押込み試験を以下の条件で、1種類の積層フィルムにつき10回実施した。得られた最大変位hm(単位μm)と残留変位hp(単位μm)から、hp/hmを求め、10回の測定で得られたhp/hmの平均値を、積層フィルムの樹脂層A側のhp/hmの値とした。
温度:26℃
最大荷重:1mN
負荷速度・除荷速度:0.1mN/s
負荷-除荷試験開始時の荷重:0mN
最大荷重での保持時間:1秒
表面検出方式:傾斜方式
表面検出閾値係数:1.5
ばね補正:リアルタイムバネ補正。
【0081】
(4)融点
実施例および比較例に示す積層フィルムから、ステンレス製のヘラを用いて樹脂層Aのみを削り取り、さらに5mg秤量して、測定用試料とした。その後、試料をアルミニウム製パンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて、窒素雰囲気下で、室温から250℃まで20℃/分で昇温し、250℃で5分間保持した後、20℃まで20℃/分で降温した。さらに、その後、再度250℃まで40℃/分で昇温し、この際に得られた吸熱ピークの温度を樹脂層Aの融点Tmとした。
【0082】
(5)貯蔵弾性率
実施例および比較例に示す積層フィルムから、ステンレス製のヘラを用いて樹脂層Aのみを削り取り、これを厚さ1mmに溶融成型したものをサンプルとした。測定はTAインスツルメント社製レオメーターAR2000exを用いて、200℃から-20℃まで速度20℃/分で降温後、-20℃から100℃まで速度10℃/分で昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.01%で動的剪断変形させ、昇温過程での50℃での貯蔵弾性率G’を樹脂層Aの貯蔵弾性率G’(A)とした。
【0083】
また、オレフィン系樹脂、スチレン系エラストマーのペレットを厚さ1mmに溶融成形し、上記と同様にして測定して得られた昇温過程での25℃での貯蔵弾性率G’をG’(25)とした。
【0084】
(6)厚み
ミクロトーム法を用い、積層フィルムの幅方向-厚み方向に断面を有する幅5mmの超薄切片を作製し、該断面に白金コートをして観察試料とした。次に、日立製作所製電界放射走差電子顕微鏡(S-4800)を用いて、積層フィルム断面を加速電圧2.5kVで観察し、観察画像の任意の箇所から基材、樹脂層A、樹脂層Bの厚みおよび積層フィルムの総厚みを計測した。観察倍率に関し、樹脂層A、Bの厚みを測定する際には5,000倍、基材および積層フィルムの厚みを測定する際には1,000倍とした。さらに、同様の計測を合計10回行い、その平均値を基材、樹脂層A、Bそれぞれの厚みおよび積層フィルムの総厚みとして用いた。
【0085】
(7)tanδ(25)
オレフィン系樹脂のペレットを厚さ1mmに溶融成形した後、測定はTAインスツルメント社製レオメーターAR2000exを用いて、200℃から-20℃まで速度20℃/分で降温後、-20℃から40℃まで速度10℃/分で昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.01%で動的剪断変形させ、昇温過程での25℃でのtanδをtanδ(25)とした。
【0086】
(8)軟化点
軟化点は、JIS K-2207:2006に定められた環球法に基づき測定した。
【0087】
(9)メルトフローレート(MFR)
(株)東洋精機製作所製メルトインデックサを用い、JIS K7210-1997に準拠し、温度230℃、荷重2.16kg/cm2の条件で測定した。単位はいずれもg/10分である。
【0088】
(10)積層フィルムの被着体との貼合
温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間、保管・調整した実施例及び比較例の積層フィルムの樹脂層A側、及び被着体を、ロールプレス機((株)安田精機製作所製特殊圧着ローラ)を用い、貼込圧力0.35MPaで貼り付けた。被着体は、材質はアクリル樹脂であるプリズムシートの反対面に形成されたマット面の2種類(被着体X、被着体Y)を用いた。なお、被着体Xの算術平均粗さRa(X)は0.2μm、十点平均粗さRz(X)は2.2μm、被着体Yの算術平均粗さRa(Y)は0.4μm、十点平均粗さRz(Y)は3.2であった。
【0089】
(11)粘着力
上記(10)により得られた貼り合せサンプルを、23℃の室内にて24時間保管後、引張試験機((株)オリエンテック“テンシロン”万能試験機)を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180°にて粘着力測定を実施した。1種類の積層フィルムに対して、被着体X、被着体Yそれぞれの粘着力を測定した。また、下記式(P1)に従い被着体X、被着体Yの粘着力比を算出した。
粘着力比=被着体Xとの粘着力/被着体Yとの粘着力・・・ 式(P1)
被着体Xおよび被着体Yの粘着力について、以下の基準3段階で評価した。
◎:5g/25mm以上かつ15g/25mm未満
〇:3g/25mm以上かつ5g/25mm未満、または15g/25mm以上かつ25g/25mm未満
×:3g/25mm未満、または25g/25mm以上
また、式(P1)に基づいて算出した被着体X、被着体Yの粘着力比は、1に近いほど被着体依存性に優れる積層フィルムであることを示し、以下の3段階で評価した。
◎:0.5以上かつ2.0未満
○:0.3以上かつ0.5未満、または2.0以上かつ4.0未満
×:0.3未満、または4.0以上。
【0090】
(12)加熱保管後の粘着力
上記(10)により得られた貼り合せサンプルのうち、被着体Xと貼り合わせたサンプルを50℃の熱風乾燥機の中で100時間保管後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で1時間保管し、その後引張試験機((株)オリエンテック“テンシロン”万能試験機)を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180°にて粘着力測定を実施した。下記式(P2)に従い、50℃加熱保管後の粘着力と、上記(11)で算出した被着体Xに対する23℃保管後の粘着力比を算出し、粘着昂進倍率とした。
粘着昂進倍率=50℃保管後の粘着力/23℃保管後の粘着力・・・ 式(P2)
式(P2)に基づいて算出した粘着昂進倍率は、1に近いほど加熱保管時の安定性に優れる積層フィルムであることを示し、以下の3段階で評価した。
◎:0.5以上かつ1.6未満
○:0.3以上かつ0.5未満、または1.6以上かつ2.5未満
×:0.3未満、または2.5以上。
【0091】
(実施例1)
各層の構成樹脂を次のように準備した。
【0092】
基材:MFRが8.5g/10分の市販のブロックポリプロピレンを97質量%、スチレン系エラストマー(旭化成製SEBS、“タフテック”H1052、MFR13g/10分、G’(25)≦10MPa)を3質量%用いた。
【0093】
樹脂層A:スチレン系エラストマー(旭化成製SEBS、“タフテック”H1052、MFR13g/10分、G’(25)≦10MPa)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製“ウェイマックス”MFX8、MFR1g/10分、G’(25)>10MPa、tanδ(25)<0.5)を15質量%、粘着付与剤(荒川化学工業製、“アルコン”M115、芳香族系共重合体、軟化点115℃、水添率<90%)を15質量%用い、事前に二軸押出機にて混練、チップ化したものを使用した。
【0094】
樹脂層B:基材に用いた市販のブロックポリプロプレンと同じものを95質量%、離型剤として市販のシリコーン系表面改質剤を5質量%用いた。
【0095】
次に、各層の構成樹脂を、3台の押出機を有するTダイ複合製膜機のそれぞれの押出機に投入し、樹脂層Aが3.5μm、基材が30μm、樹脂層Bが5μmになるように各押出機の吐出量を調整し、この順で積層して複合Tダイから押出温度200℃にて押出し、表面温度を40℃に制御したロール上にキャストしフィルム状に成型したものを巻回し、積層フィルムを得た。
【0096】
その後、得られた積層フィルムに対して、上記した方法により評価を行った。なお、基材の厚みは30μm、樹脂層Bの厚みは5μm、樹脂層Bの算術平均粗さRa(B)は、0.20μmであった。
【0097】
(実施例2)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を15質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を5質量%、粘着付与剤“FTR”8100(三井化学製、芳香族系共重合体、軟化点100℃、水添率<90%)を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0098】
(実施例3)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を60質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を15質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を5質量%、粘着付与剤“FTR”8100を10質量%、オレフィン系エラストマー(三井化学製“アブソートマー”EP-1001、MFR10g/10分、G’(25)33MPa、tanδ(25)1.9)を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0099】
(実施例4)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を80質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を10質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0100】
(実施例5)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を10質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を10質量%、オレフィン系エラストマー(“アブソートマー”EP-1001)を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0101】
(実施例6)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を79.5質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を10質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を10質量%、市販のエチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)を0.5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0102】
(実施例7)
樹脂層Aを構成する組成物のうち、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)に替えて、高密度ポリエチレン(東ソー製“ニポロンハード”7300A、密度952kg/m3、MFR2g/10分、G’(25)>10MPa、tanδ(25)<0.5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0103】
(実施例8)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX8)を15質量%、粘着付与剤“アルコン”P125を15質量%(荒川化学工業製、芳香族系共重合体、軟化点125℃、水添率≧90%)としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0104】
(実施例9)
樹脂層Aの厚みを2.8μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0105】
(実施例10)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”EX8000、MFR1.5g/10分、G’(25)>10MPa、tanδ(25)<0.5)を15質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を5質量%、粘着付与剤“FTR”8100(三井化学製、芳香族系共重合体、軟化点100℃、水添率<90%)を5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0106】
(比較例1)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を90質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0107】
(比較例2)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を94質量%、高溶融張力ポリプロプレン(“ウェイマックス”MFX8)を5質量%、市販のエチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)を1質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0108】
(比較例3)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を69質量%、高溶融張力ポリプロプレン(“ウェイマックス”MFX8)を15質量%、粘着付与剤(“アルコン”M115)を15質量%、市販のエチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)を1質量%とし、樹脂層Aの厚みを2.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0109】
(比較例4)
基材を構成する組成物を、ホモポリプロピレン(住友化学株式会社製、“ノーブレン”FLX80E4、MFR8g/10分)を97質量%、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を3質量%とし、樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を20質量%、オレフィン系エラストマー(“アブソートマー”EP-1001)を80質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0110】
(比較例5)
樹脂層Aを構成する組成物を、スチレン系エラストマー(“タフテック”H1052)を70質量%、高溶融張力ポリプロピレン(“ウェイマックス”MFX3、MFR9g/10分、G’(25)>10MPa、tanδ(25)<0.5)を15質量%、粘着付与剤“アルコン”M115を15質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0111】
【0112】
【0113】
本発明の要件を満足する実施例1~9はいずれの被着体に対しても良好な貼り付き性を有し、被着体依存性が小さく、粘着昂進抑制に優れる積層フィルムであった。一方、比較例1、2は被着体Xに対する粘着力が高く、被着体依存性が悪く、さらに粘着昂進しやすい積層フィルムであった。また、比較例3は被着体Yに対する貼り付き性が不十分であった。比較例4は、被着体Yに対する貼り付き性が不十分であることに加え、粘着昂進しやすい積層フィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の積層フィルムは被着体依存性等の粘着特性に優れることから、様々な表面形状を有する、合成樹脂、金属、ガラス等の各種素材から成る製品の表面保護フィルム用途として好ましく用いることができる。