(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】制御ユニット、エアロゾル生成装置、ヒータを制御する方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20240530BHJP
【FI】
A24F40/57
(21)【出願番号】P 2020552482
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039916
(87)【国際公開番号】W WO2020084773
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】竹内 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
(72)【発明者】
【氏名】打井 公隆
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】槙原 進
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/019786(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108618207(CN,A)
【文献】特開2001-230199(JP,A)
【文献】特開平7-129021(JP,A)
【文献】国際公開第2011/068020(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル源を加熱するヒータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御するよう構成され、
前記制御によって、エアロゾルの送達プロファイルが、初期における上昇カーブ、中期における上に凸のカーブ、および終期における下降カーブを有し、それにより、所定の吸引可能期間におけるエアロゾルの送達プロファイルが、前記吸引可能期間の始点と終点との間で極大値を有し、
前記吸引可能期間は、複数の吸引にわたる期間であり、前記送達プロファイルは、各吸引において吸引されるエアロゾル量の、前記複数の吸引にわたる時間変化を表
し、前記送達プロファイルは、前記第1、第2、および第3目標温度によって定められる前記ヒータの加熱プロファイルに対して時間的に遅れた形状を有する、
制御ユニット。
【請求項2】
前記第1目標温度と前記第2目標温度との差は、前記第2目標温度と前記第3目標温度との差よりも大きい、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記第2期間は、前記第1期間及び前記第3期間よりも長い、請求項1又は2に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1期間における前記ヒータの温度上昇の速さに基づき前記第1期間の長さを変更可能に構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記制御部は、前記ヒータが加熱し始めてから所定の温度に達するまでの期間が短いほど、前記第1期間を短く変更するよう構成されている、請求項4に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記第1期間の可変範囲は、所定の上限値を有する、請求項4又は5に記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1期間の終了時から前記2期間の初期にわたって前記ヒータへの電力供給を停止する第1オフ期間を有し、
前記第1オフ期間は、20秒又はそれよりも短く設定される、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2期間の終了時から前記3期間の初期にわたって前記ヒータへの電力供給を停止する第2オフ期間を有し、
前記第2オフ期間は、20秒又はそれよりも短く設定される、請求項1から7のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1期間中であって前記ヒータの温度が前記第1目標温度に維持されている期間中に、吸引可能期間が開始したことを報知するよう構成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1期間の後半に、吸引可能期間が開始したことを報知するよう構成されている、請求項9に記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記制御部は、前記第3期間の後に前記ヒータへの電力供給を停止するよう構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記制御部は、前記第3期間の後に前記ヒータへの電力供給を停止し、前記停止から所定の期間経過後に吸引可能期間が終了したこと報知するよう構成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の制御ユニット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の制御ユニットと、
前記ヒータと、を含むエアロゾル生成装置。
【請求項14】
前記ヒータは、柱状の喫煙物品の外周を加熱可能な筒形状を有する、請求項13に記載のエアロゾル生成装置。
【請求項15】
エアロゾル源を加熱するヒータを制御する方法であって、
第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第1ステップと、
第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第2ステップと、
第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第3ステップと、を有し、
前記第1、第2、および第3ステップの制御によって、エアロゾルの送達プロファイルが、初期における上昇カーブ、中期における上に凸のカーブ、および終期における下降カーブを有し、それにより、所定の吸引可能期間におけるエアロゾルの送達プロファイルが、前記吸引可能期間の始点と終点との間で極大値を有し、
前記吸引可能期間は、複数の吸引にわたる期間であり、前記送達プロファイルは、各吸引において吸引されるエアロゾル量の、前記複数の吸引にわたる時間変化を表
し、前記送達プロファイルは、前記第1、第2、および第3目標温度によって定められる前記ヒータの加熱プロファイルに対して時間的に遅れた形状を有する、
方法。
【請求項16】
エアロゾル源を加熱するヒータを制御する制御部のコンピュータに、
第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第1ステップと、
第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第2ステップと、
第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第3ステップと、を実行させるためのプログラムであって、
前記第1、第2、および第3ステップの制御によって、エアロゾルの送達プロファイルが、初期における上昇カーブ、中期における上に凸のカーブ、および終期における下降カーブを有し、それにより、所定の吸引可能期間におけるエアロゾルの送達プロファイルが、前記吸引可能期間の始点と終点との間で極大値を有し、
前記吸引可能期間は、複数の吸引にわたる期間であり、前記送達プロファイルは、各吸引において吸引されるエアロゾル量の、前記複数の吸引にわたる時間変化を表し、前記送達プロファイルは、前記第1、第2、および第3目標温度によって定められる前記ヒータの加熱プロファイルに対して時間的に遅れた形状を有する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御ユニット、エアロゾル生成装置、ヒータを制御する方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃焼式シガレットに代わり、エアロゾル源をヒータで霧化することによって生じたエアロゾルをユーザに送達する非燃焼式のエアロゾル生成装置が知られている(特許文献1及び特許文献2)。非燃焼式のエアロゾル生成装置は、エアロゾル源を含有する喫煙物品を高温で加熱するので、消費電力が大きくなる場合がある。そのため、非燃焼式のエアロゾル生成装置は、大容量のバッテリを搭載する場合があるが、その結果、装置全体が大型化かつ重量化しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-113016号公報
【文献】国際公開第2018/019786号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の特徴は、制御ユニットであって、エアロゾル源を加熱するヒータを制御する制御部を備え、前記制御部は、第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御するよう構成されていることを要旨とする。
【0005】
第2の特徴は、第1の特徴における制御ユニットであって、前記第1目標温度と前記第2目標温度との差は、前記第2目標温度と前記第3目標温度との差よりも大きいことを要旨とする。
【0006】
第3の特徴は、第1の特徴又は第2の特徴における制御ユニットであって、前記第2期間は、前記第1期間及び前記第3期間よりも長いことを要旨とする。
【0007】
第4の特徴は、第1の特徴から第3の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第1期間における前記ヒータの温度上昇の速さに基づき前記第1期間の長さを変更可能に構成されていることを要旨とする。
【0008】
第5の特徴は、第4の特徴における制御ユニットであって、前記制御部は、前記ヒータが加熱し始めてから所定の温度に達するまでの期間が短いほど、前記第1期間を短く変更するよう構成されていることを要旨とする。
【0009】
第6の特徴は、第4の特徴又は第5の特徴における制御ユニットであって、前記第1期間の可変範囲は、所定の上限値を有することを要旨とする。
【0010】
第7の特徴は、第1の特徴から第6の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第1期間の終了時から前記2期間の初期にわたって前記ヒータへの電力供給を停止する第1オフ期間を有し、前記第1オフ期間は、20秒又はそれよりも短く設定されることを要旨とする。
【0011】
第8の特徴は、第1の特徴から第7の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第2期間の終了時から前記3期間の初期にわたって前記ヒータへの電力供給を停止する第2オフ期間を有し、前記第2オフ期間は、20秒又はそれよりも短く設定されることを要旨とする。
【0012】
第9の特徴は、第1の特徴から第8の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第1期間中であって前記ヒータの温度が前記第1目標温度に維持されている期間に吸引可能期間が開始したことを報知するよう構成されていることを要旨とする。
【0013】
第10の特徴は、第9の特徴における制御ユニットであって、前記制御部は、前記第1期間の後半に、吸引可能期間が開始したことを報知するよう構成されていることを要旨とする。
【0014】
第11の特徴は、第1の特徴から第10の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第3期間の後に前記ヒータへの電力供給を停止するよう構成されていることを要旨とする。
【0015】
第12の特徴は、第1の特徴から第11の特徴のいずれかにおける制御ユニットであって、前記制御部は、前記第3期間の後に前記ヒータへの電力供給を停止し、前記停止から所定の期間経過後に吸引可能期間が終了したことを報知するよう構成されていることを要旨とする。
【0016】
第13の特徴は、エアロゾル生成装置であって、第1の特徴から第12の特徴のいずれかにおける制御ユニットと、前記ヒータと、を含むことを要旨とする。
【0017】
第14の特徴は、第13の特徴におけるエアロゾル生成装置であって、前記ヒータは、柱状の喫煙物品の外周を加熱可能な筒形状を有することを要旨とする。
【0018】
第15の特徴は、エアロゾル源を加熱するヒータを制御する方法であって、第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第1ステップと、第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第2ステップと、第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御する第3ステップと、を有することを要旨とする。
【0019】
第16の特徴は、第15の特徴における方法をエアロゾル生成装置に実行させるプログラムを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る香味吸引器を示す図である。
【
図2】
図2は、喫煙物品が挿入された香味吸引器を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す香味吸引器の内部構造を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す喫煙物品の内部構造を示す図である。
【
図7】
図7は、喫煙物品の基材部と、エアロゾル生成装置のヒータ及び内側筒部材と、の間の位置関係を簡略的に示す図である。
【
図8】
図8は、ヒータの加熱プロファイルを示す図である。
【
図9】
図9は、ヒータの加熱プロファイルと、生成されるエアロゾルの送達プロファイルと、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。
【0022】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合があることは勿論である。
【0023】
[開示の概要]
特許文献1及び特許文献2では、喫煙物品を加熱してエアロゾルを生成するためのヒータの加熱プロファイルが開示されている。しかしながら、所望のエアロゾル生成量を達成しつつ消費電力を抑制する加熱プロファイルについては未だ検討の余地がある。
【0024】
一態様によれば、制御ユニットは、エアロゾル源を加熱するヒータを制御する制御部を備え、前記制御部は、第1期間中に第1目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第1期間後の第2期間中に前記第1目標温度よりも低い第2目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御し、第2期間後の第3期間中に前記第2目標温度よりも低い第3目標温度に向けて前記ヒータの温度を制御するよう構成されている。
【0025】
本態様では、第1期間において第1目標温度を高く設定することにより、ヒータの昇温速度を高くすることができる。ヒータの昇温速度を高くすることにより、ヒータへの電力供給を開始してからエアロゾルの吸引が可能になるまでの期間を短くすることができる。
【0026】
第2期間及び第3期間において目標温度を低下させることにより、第2期間及び第3期間で消費する電力を低下させることができる。これにより、エアロゾルの生成が可能な期間、すなわち吸引可能な期間を長くすることができる。
【0027】
前述した消費電力の低下の観点からは、第1目標温度から第2目標温度を経ることなく第3目標温度でヒータを制御することが好ましい。しかしながら、その場合には、第1目標温度から第3目標温度に到達する期間が長くなる。第1目標温度から第3目標温度に到達する期間はヒータが停止されているため、この期間内にユーザが複数回パフ動作を行うと、ヒータの温度が第3温度を超えて下回ってしまう可能性がある。本願の発明者は、ヒータの温度が一旦低くなりすぎると、エアロゾルが十分に生成されなくなり、エアロゾルの再生成が困難になり得ることを見出した。
【0028】
本態様では、第1目標温度から第3目標温度に移行する前に、第1目標温度と第3目標温度との間の第2目標温度を経ることで、各目標温度間の移行にかかる期間を短くすることができる。ヒータが停止される移行期間が短くなるため、複数回のパフ動作によりヒータ温度が下がりすぎてしまうことを防止することができる。
【0029】
(香味吸引器)
以下において、一実施形態に係る香味吸引器について説明する。
図1は、一実施形態に係る香味吸引器を示す図である。
図2は、喫煙物品が挿入された香味吸引器を示す図である。
図3は、
図2に示す香味吸引器の内部構造を示す図である。
図4は、
図2に示す喫煙物品の内部構造を示す図である。
図5は、香味吸引器のブロック図である。
【0030】
香味吸引器100は、燃焼を伴わずに、喫煙物品からエアロゾルを生成するための非燃焼型の香味吸引器であってよい。香味吸引器100は、特に携帯型の機器であってよい。
【0031】
香味吸引器100は、エアロゾル源を含有する喫煙物品110と、喫煙物品110からエアロゾルを生成させるエアロゾル生成装置120と、を有する。
【0032】
喫煙物品110は、エアロゾル源及び香味源を含有し得る交換可能なカートリッジであり、長手方向に沿って延びる柱状形状を有する。喫煙物品110はエアロゾル生成装置120に挿入された状態で加熱されることによってエアロゾル及び香味成分を発生するように構成されていてよい。
【0033】
図4に示す実施形態において、喫煙物品110は、充填物111と、充填物111を巻装する第1の巻紙112と、を含む基材部11Aと、基材部11Aとは反対側の端部を形成する吸口部11Bと、を有する。基材部11Aと吸口部11Bは、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって連結されている。ただし、第2の巻紙113を省略し、第1の巻紙112を用いて基材部11Aと吸口部11Bを連結することもできる。
【0034】
図4中の吸口部11Bは、紙管部114と、フィルタ部115と、紙管部114とフィルタ部115との間に配置された中空セグメント部116と、を有する。中空セグメント部116は、例えば、1つ又は複数の中空チャネルを有する充填層と、充填層を覆うプラグラッパーとで構成される。充填層は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空チャンネルのみを流れることになり、充填層内はほとんど流れない。喫煙物品110において、フィルタ部115でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときに、フィルタ部115の長さを短くして中空セグメント部116で置き換えることはエアロゾルのデリバリ量を増大させるために有効である。
【0035】
図4中の吸口部11Bは3つのセグメントから構成されているが、本実施形態において、吸口部11Bは1つ又は2つのセグメントから構成されていてもよいし、4つ又はそれ以上のセグメントから構成されていてもよい。例えば、中空セグメント部116を省略し、紙管部114とフィルタ部115を互いに隣接配置して吸口部11Bを形成することもできる。
【0036】
図4に示す実施形態において、喫煙物品110の長手方向の長さは、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mmであることがさらに好ましい。喫煙物品110の円周は15~25mmであることが好ましく、17~24mmであることがより好ましく、20~23mmであることがさらに好ましい。また、喫煙物品110の長手方向において、基材部11Aの長さは20mm、第1の巻紙112の長さは20mm、中空セグメント部116の長さは8mm、フィルタ部115の長さは7mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0037】
本実施形態において、喫煙物品110の充填物111は、所定温度で加熱されてエアロゾルを発生するエアロゾル源を含有し得る。エアロゾル源の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び/又はそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填物111中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを発生するとともに、良好な香喫味の付与の観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0038】
本実施形態における喫煙物品110の充填物111は、香味源としてたばこ刻みを含有し得る。たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。喫煙物品110における充填物111の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmの場合、例えば、200~400mgであり、250~320mgであることが好ましい。充填物111の水分含有量は、例えば、8~18重量%であり、10~16重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、基材部11Aの製造時の巻上適性を良好にする。充填物111として用いるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物111として用いてもよい。また、充填物111は、1種又は2種以上の香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、好ましくはメンソールである。
【0039】
本実施形態において、喫煙物品110の第1及び第2の巻紙112,113は、坪量が例えば20~65gsmであり、好ましくは25~45gsmである原紙から作られることができる。巻紙112,113の厚みは、特に限定されないが、剛性、通気性、及び製紙時の調整の容易性の観点から、10~100μmであり、好ましくは20~75μmであり、より好ましくは30~50μmである。
【0040】
本実施形態において、喫煙物品110の巻紙112,113には填料が含まれうる。填料の含有量は、巻紙112,113の全重量に対して10重量%以上60重量%未満を挙げることができ、15~45重量%であることが好ましい。本実施形態において、好ましい坪量の範囲(25~45gsm)に対して、填料が15~45重量%であることが好ましい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができる。このような填料を含む紙は、喫煙物品110の巻紙として利用する外観上の観点から好ましい白色系の明るい色を呈し、恒久的に白さを保つことができる。そのような填料を多く含有させることで、例えば、巻紙のISO白色度を83%以上にすることができる。また、喫煙物品110の巻紙として利用する実用上の観点から、第1及び第2の巻紙112,113は8N/15mm以上の引張強度を有することが好ましい。この引張強度は、填料の含有量を少なくすることで高めることができる。具体的には、この引張強度は、上記で例示した各坪量の範囲において示した填料の含有量の上限よりも填料の含有量を少なくすることで、高めることができる。
【0041】
図3を参照すると、エアロゾル生成装置120は、喫煙物品110を挿入可能な挿入孔130を有する。すなわち、エアロゾル生成装置120は、挿入孔130を構成する内側筒部材132を有する。内側筒部材132は、例えばアルミニウムやステンレス(SUS)のような熱伝導部材によって構成されていてよい。
【0042】
また、エアロゾル生成装置120は、挿入孔130を塞ぐ蓋部140を有していてよい。蓋部140は、挿入孔130を塞いだ状態(
図1参照)と、挿入孔130を露出させた状態(
図2参照)との間をスライド可能に構成されていてよい。
【0043】
エアロゾル生成装置120は、挿入孔130に連通する空気流路160を有していてよい。空気流路160の一端は、挿入孔130に連結されており、空気流路160の他端は、挿入孔130とは別のところでエアロゾル生成装置120の外部(外気)に連通している。
【0044】
エアロゾル生成装置120は、空気流路160の、外気に連通する側の端部を覆う蓋部170を有していてよい。蓋部170は、空気流路160の、外気に連通する側の端部を覆った状態にすることもでき、空気流路160を露出させた状態にすることもできる。
【0045】
蓋部170は、空気流路160を覆った状態であっても空気流路160に気密に閉塞することはない。すなわち、蓋部170が空気流路160を覆った状態であっても、蓋部170付近を介して空気流路160内に外気が流入可能に構成されている。
【0046】
ユーザは、香味吸引器100に喫煙物品110を挿入した状態で、喫煙物品110の一端部、具体的には、
図4中の吸口部11Bを咥え、吸引動作を行う。ユーザの吸引動作により、空気流路160に外気が流入する。空気流路160内に流入した空気は、挿入孔130内の喫煙物品110を通って、ユーザの口腔内に導かれる。
【0047】
なお、蓋部140が挿入孔130を覆っておらず、かつ喫煙物品110が挿入されていない状態、すなわち、内側筒部材132の内部空間及び空気流路160が露出した状態では、ユーザは、ブラシのような清掃用具を用いて、内側筒部材132の空気流路160内を清掃することができる。この清掃用具は、
図3中の上方の蓋部140側から空気流路160内に挿入されてもよいし、下方の蓋部170側から空気流路160内に挿入されてもよい。
【0048】
エアロゾル生成装置120は、空気流路160内又は空気流路160を構成する壁部の外面に、温度センサを有していてよい。温度センサは、例えば、サーミスタや熱電対等であってよい。ユーザが喫煙物品110の吸口部11Bを吸引すると、空気流路160内を蓋部170側からヒータ30側に向かって流れる空気の影響で、空気流路160の内部温度又は空気流路160を構成する壁部の温度が低下する。温度センサは、この温度低下を測定することによってユーザの吸引動作を検知することができる。
【0049】
エアロゾル生成装置120は、バッテリ10と、制御ユニット20と、ヒータ30と、を有する。バッテリ10は、エアロゾル生成装置120で用いる電力を蓄積する。バッテリ10は、充放電可能な二次電池であってよい。バッテリ10は、例えばリチウムイオン電池であってよい。
【0050】
ヒータ30は、内側筒部材132の周りに設けられていてよい。ヒータ30を収容する空間と、バッテリ10を収容する空間は、隔壁180によって互いに分離されていてよい。これにより、ヒータ30により加熱された空気が、バッテリ10を収容する空間内に流入することを抑制することができる。したがって、バッテリ10の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
ヒータ30は、柱状の喫煙物品110の外周を加熱可能な筒形状であることが好ましい。ヒータ30は、例えばフィルムヒータであってよい。フィルムヒータは、一対のフィルム状の基板と、一対の基板の間に挟まれた抵抗発熱体と、を有していてよい。フィルム状の基板は、耐熱性及び電気絶縁性に優れた材料から作られることが好ましく、典型的には、ポリイミドから作られる。抵抗発熱体は、銅、ニッケル合金、クロム合金、ステンレス、白金ロジウム等の金属材料の1つ又は2つ以上から作られることが好ましく、例えば、ステンレス製の基材によって形成され得る。さらに、抵抗発熱体はフレキシブルプリント回路(FPC)によって電源と接続するために接続部位及びそのリード部に銅メッキを施してもよい。
【0052】
図6は、
図3の領域5Rの模式的拡大図であり、ヒータ30及びその周辺を拡大した断面図である。
図6に示す例では、ヒータ30は、前述したフィルムヒータであり、喫煙物品110を受け入れ可能な内側筒部材132の外周に巻かれている。すなわち、ヒータ30は、内側筒部材132を囲む円筒状に巻かれている。これにより、ヒータ30は、喫煙物品110の外周を取り囲み、喫煙物品110を外側から加熱することができる。
【0053】
好ましくは、熱収縮チューブ136が、ヒータ30の外側に設けられていてよい。言い換えると、ヒータ30は、熱収縮チューブ136内に設けられていることが好ましい。熱収縮チューブ136は、熱により半径方向に収縮するチューブ136であり、例えば熱可塑性エラストマによって構成されていてよい。熱収縮チューブ136の収縮作用により、ヒータ30が内側筒部材132に押し付けられる。これにより、ヒータ30と内側筒部材132の密着性が高まるので、ヒータ30から喫煙物品110への内側筒部材132を介した熱の伝導性が高まる。
【0054】
エアロゾル生成装置120は、ヒータ30の半径方向の外側、好ましくは熱収縮チューブ136の外側に、筒状の断熱材138を有していてもよい。断熱材138は、ヒータ30の外周を取り囲んでいることが好ましい。断熱材138は、ヒータ30の熱を遮断することによって、エアロゾル生成装置120の筐体外面が過度な高温に達するのを防止する役割を果たし得る。断熱材138は、例えば、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲル等のエアロゲルから作られることができる。断熱材138としてのエアロゲルは、典型的には、断熱性能が高くかつ製造コストが比較的低いシリカエアロゲルであってよい。ただし、断熱材138は、グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材であってもよいし、ウレタンフォームやフェノールフォームの発泡系断熱材であってもよい。或いは、断熱材138は真空断熱材であってもよい。
【0055】
断熱材138は、喫煙物品110に面する内側筒部材132と、断熱材138の外側の外側筒部材134と、の間に設けられていてよい。外側筒部材134は、例えばアルミニウムやステンレス(SUS)のような熱伝導部材によって構成されていてよい。断熱材138は、密閉された空間内に設けられることが好ましい。
【0056】
図7は、本実施形態の香味吸引器100における、喫煙物品110の基材部11Aと、エアロゾル生成装置120のヒータ30及び内側筒部材132と、の間の、軸線方向の位置関係を簡略的に示す図である。ここでいう軸線とは、エアロゾル生成装置120における挿入孔130の中心軸を意味し、挿入孔130に喫煙物品110が挿入されたときには、その軸線と喫煙物品110の中心軸とが部分的に重なり合う(
図3も参照)。
【0057】
ヒータ30の軸線方向長さD0は、喫煙物品110の基材部11Aの軸線方向長さL0よりも小さくされることができる(D0<L0)。さらに、長さL0に対する長さD0の比(D0/L0)は、0.70~0.90であり、好ましくは0.75~0.85であり、典型的には0.80であってよい。よって、基材部11Aの長さL0が20mmである場合、ヒータ30の長さD0は14~18mmであり、好ましくは15~17mmであり、典型的には16mmであってよい。
【0058】
基材部11Aの上流端は、ヒータ30の上流端よりも上流側に長さD1で突き出していてよい。ここでいう上流及び下流とは、ユーザの吸引動作により空気流路160内を通る空気流の上流及び下流にそれぞれ対応する(
図3も参照)。基材部11Aのヒータ30からの突き出し部分は、その半径方向外側にヒータ30を有さないので、基材部11Aの他の部分と比較して、その内部温度が幾分低くなり得る。これにより、基材部11Aの上流端及びその近傍でのエアロゾル生成を抑制できるので、そこで発生したエアロゾルが空気流路160で凝縮したり、空気流路160を逆流したりするのを防止できる。基材部11Aの他の部分で発生したエアロゾルは基材部11Aの上流端及びその近傍で凝縮しうる。
【0059】
基材部11A全体の長さL0に対する突き出し長さD1の比(D1/L0)は、0.25~0.40であり、好ましくは0.30~0.35であり、典型的には0.325であってよい。よって、基材部11A全体の長さL0が20mmである場合、突き出し長さD1は5~8mmであり、好ましくは6~7mmであり、典型的には6.5mmであってよい。
【0060】
ヒータ30の下流端は、基材部11Aの下流端よりも下流側に長さD2で突き出していてよい。これにより、基材部11Aの下流端及びその近傍を十分に加熱できるので、そこでのエアロゾル生成量が不足したりエアロゾル凝縮が発生したりするのを防止できる。基材部11Aの長さL0に対するヒータ30の突き出し長さD2の比(D2/L0)は、0.075~0.175であり、好ましくは0.1~0.15であり、典型的には0.125であってよい。よって、基材部11Aの長さL0が20mmである場合、ヒータ30の突き出し長さD2は1.5~3.5mmであり、好ましくは2~3mmであり、典型的には2.5mmであってよい。
【0061】
内側筒部材132の上流端と基材部11Aの上流端の軸線方向位置は概ね一致していてよい。その一方で、内側筒部材132の下流端は、ヒータ30の下流端と同じく、基材部11Aの下流端よりも下流側に長さD3で突き出していてよい。これにより、基材部11Aの下流端及びその近傍に加えて、紙管部114の上流端及びその近傍を加熱できるので、基材部11Aから発生したエアロゾルが紙管部114の上流端及びその近傍で過度に冷却されて凝縮するのを防止できる。ヒータ30の突き出し長さD2に対する内側筒部材132の突き出し長さD3の比(D3/D2)は、2.6~3.4であり、好ましくは2.8~3.2であり、さらに好ましくは3.0であってよい。よって、ヒータ30の突き出し長さD2が2.5mmである場合、内側筒部材132の突き出し長さD3は6.5~8.5mmであり、好ましくは7.0~8.0mmであり、典型的には7.5mmであってよい。
【0062】
図5を参照すると、制御ユニット20は、制御基板、CPU、及びメモリ等を含んでいてよい。CPU及びメモリは、エアロゾル源を加熱するヒータ30を制御する制御部22を構成する。また、制御ユニット20は、ユーザに各種情報を報知するための通知部40を有する。通知部40は、例えばLEDのような発光素子もしくは振動素子、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0063】
制御部22は、ユーザの起動要求を検知したら、バッテリ10からヒータ30への電力供給を開始する。ユーザの起動要求は、例えば、ユーザによる押しボタンやスライド式スイッチの操作や、ユーザの吸引動作によって成される。本実施形態では、ユーザの起動要求は、押しボタン150の押下によって成される。より具体的には、ユーザの起動要求は、蓋部140が開いた状態での押しボタン150の押下によって成される。或いは、ユーザの起動要求は、ユーザの吸引動作の検知によって成されてもよい。ユーザの吸引動作は、例えば前述したような温度センサによって検知できる。
【0064】
図8は、ヒータの加熱プロファイルを示す図である。本実施形態において、加熱プロファイルとは、ヒータ30の制御上の目標温度の時間変化を表すグラフである。ヒータ30の温度制御は、例えば公知のフィードバック制御によって実現できる。具体的には、制御部22は、バッテリ22からの電力を、パルス幅変調(PWM)又はパルス周波数変調(PFM)によるパルスの形態でヒータ30に供給することができる。この場合、制御部22は、電力パルスのデューティ比を調整することによって、ヒータ30の温度制御を行うことができる。
【0065】
フィードバック制御では、制御部22は、ヒータ30の温度を測定又は推定し、測定又は推定されたヒータ30の温度と目標温度との差分等に基づいて、ヒータ30へ供給する電力、例えば、前述のデューティ比を制御すればよい。フィードバック制御は、例えばPID制御であってよい。ヒータ30の温度は、例えば、ヒータ30を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値を測定又は推定することによって定量できる。これは、発熱抵抗体の電気抵抗値は、温度に応じて変化するためである。発熱抵抗体の電気抵抗値は、例えば、発熱抵抗体での電圧降下量を測定することによって推定できる。発熱抵抗体での電圧降下量は、発熱抵抗体に印加される電位差を測定する電圧センサによって測定できる。他の例では、ヒータ30の温度は、ヒータ30付近に設置された温度センサによって測定されることができる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、ヒータ30の実温度が、加熱プロファイルの目標温度に近づくように、ヒータ30への供給電力を制御している。ただし、加熱プロファイルは目標温度が急激に変化する箇所を含む場合があり、そのような箇所ではヒータ30の実温度の目標温度からの乖離が一時的に大きくなる場合がある。
図8に例示した加熱プロファイルにおいて、ヒータ30の実温度の目標温度からの乖離が大きくなる箇所を破線で示している。
【0067】
図8の例では、ユーザの起動要求を受けて、バッテリ10からヒータ30への電力供給が開始されると、制御部22は、まず、第1期間P1中に第1目標温度TA1に向けてヒータ30の温度を制御する。すなわち、制御部22は、初期温度から第1目標温度TA1に向けてヒータ30を加熱する。第1期間P1では、ヒータ30が第1目標温度TA1に達すると、制御部22は、ヒータ30の温度が第1目標温度TA1を維持するよう制御する。
【0068】
第1目標温度TA1は、好ましくは225~240℃であり、典型的には230℃であってよい。第1期間P1において第1目標温度TA1を比較的高く設定することにより、ヒータ30の昇温速度を大きくすることができる。ヒータ30の昇温速度を大きくすることにより、ヒータ30への電力供給を開始してからエアロゾルの吸引が可能になるまでの期間を短くすることができる。
【0069】
制御部22は、第1期間P1中であってヒータ30の温度が第1目標温度TA1に維持されている期間内に、吸引可能期間が開始したことをユーザに報知するよう構成されていてよい。吸引可能期間が開始したことの報知は、通知部40の制御によって行うことができ、例えば、LED等の発光素子の発光色を変えたり、発光パターンを変えたり、振動素子を駆動したりする制御、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。
【0070】
図8の例では、吸引可能期間が開始したことの報知は、タイミングT2で行われる。より具体的には、吸引可能期間が開始したことの報知は、ヒータ30の温度が第1目標温度に到達してから所定の期間P1b経過したタイミングT2、及びヒータ30への電力供給の開始から所定の期間経過したタイミングのどちらか早い方で行われればよい。所定の期間P1bは、好ましくは20~26秒であり、典型的には23秒であってよい。好ましくは、制御部22は、第1期間P1の後半に、吸引可能期間が開始しことを報知するよう構成されていてよい。第1期間P1の後半とは、第1期間P1の真ん中よりも後ろの期間を意味する。
【0071】
制御部22は、吸引可能期間が開始したことを報知したタイミングT2から所定の期間P1cが経過したタイミングT3において、後述する第2期間P2に移行する。所定の期間P1cは、5~15秒であることが好ましく、典型的には10秒であってよい。これにより、ユーザが第1期間P1中に1回目の吸引動作を行う可能性が高くなる。この場合、ヒータ温度が、加熱プロファイルの最高温度である第1目標温度TA1の付近に維持されている間に、ユーザに1回目の吸引動作を行わせることができる。
【0072】
第1期間P1は、ヒータ30及び喫煙物品110の加熱状態や周辺温度等によって変動するが、典型的には35~55秒の範囲であってよい。ただし、制御部22は、第1期間P1におけるヒータ30の温度上昇の速さに基づき第1期間P1の長さを変更可能に構成されていることが好ましい。より具体的には、第1期間P1のうちの初期の昇温期間P1aが、ヒータ30の温度上昇の速さに基づき変更可能に構成されていてよい。具体的には、制御部22は、ヒータ30が加熱し始めてから所定の温度に達するまでの期間が短いほど、第1期間P1の長さを短く変更するよう構成されていることが好ましい。
【0073】
本実施形態では、ヒータ30の温度が第1目標温度TA1に達してから所定の期間(P1b+P1c)が経過したときに、第1期間P1が終了する。すなわち、ヒータ30の温度上昇が速ければ、ヒータ30に電力供給し始める時点T0からヒータ30の温度が第1目標温度TA1に達するまでの期間P1aが短くなる。所定の期間(P1b+P1c)は、好ましくは25~41秒であり、典型的には33秒であってよい。
【0074】
このように、ヒータ30の温度上昇が速い場合には、予備加熱期間を短くすることで、予備加熱期間で使用される消費電力を抑えることができる。
【0075】
第1期間P1の可変範囲、より具体的には、吸引可能期間の開始の報知までの期間(P1a+P1b)の可変範囲は、所定の上限値を有することが好ましい。例えば、電力供給の開始T0から吸引可能期間の開始の報知T2までの期間(P1a+P1b)の上限値は、好ましくは40~60秒であり、典型的には50秒であってよい。これにより、ヒータ30の温度が第1目標温度TA1に達しない場合に、制御部22が第2期間P2に移行することなく予備加熱をし続けてしまうことを防止することができる。
【0076】
次に、制御部22は、第1期間P1後の第2期間P2中に第1目標温度TA1よりも低い第2目標温度TA2に向けてヒータ30の温度を制御する。すなわち、制御部22は、ヒータ30の温度を第1目標温度TA1から低下させ、第2目標温度TA2に維持するようヒータ30を制御する。
【0077】
第2目標温度TA2は、好ましくは190~210℃の範囲であり、典型的には200℃であってよい。第2期間P2は、好ましくは105~160秒の範囲であり、典型的には130秒であってよい。第2期間P2は、第1期間P1と、後述する第3期間P3よりも長いことが好ましい。第2期間は、第3期間P3よりも高い温度に維持される期間であるため、安定的にエアロゾル供給できる期間となる。これにより、安定的にエアロゾルを供給できる期間を相対的に長くできる。第2期間P2において目標温度を低下させることにより、第2期間P2で消費する電力を低下させることができる。
【0078】
制御部22は、第1期間P1の終了時から第2期間P2の初期にわたってヒータ30への電力供給を停止する第1オフ期間を有していてよい。第1オフ期間を設けることにより、第1目標温度TA1から第2目標温度TA2への温度低下を最短時間で達成することができる。制御部22は、第1オフ期間中もヒータ30の温度測定を継続することができる。この場合、制御部22は、ヒータ30の温度が第2目標温度TA2付近まで低下したときにヒータ30への電力供給を再開するように構成されることができる。
【0079】
第1オフ期間は、一般的なユーザが2回又はそれ以上の吸引動作を行うことのないような時間間隔であることが好ましい。オフ期間中にユーザが2回又はそれ以上の吸引動作を行うと、ヒータ30の温度が急激に低下し、第2目標温度TA2を大きく下回ることがある。この場合には、喫煙物品110から発生するエアロゾル量が減少するおそれがある。一般的なユーザによる通常の吸引動作の時間間隔を約20秒と想定した場合、第1オフ期間は、例えば15~20秒の範囲であることが好ましい。第1目標温度TA1及び第2目標温度TA2は、第1オフ期間中の自然冷却による第1目標温度TA1から第2目標温度TA2への温度低下が、上記の時間範囲内で行われるように設定されることができる。或いは、制御部22は、第1オフ期間の時間経過を計測し、第1オフ期間が所定の上限値に達したら強制的にヒータ30への電力供給を再開するように構成されることもできる。この場合の第1オフ期間の上限値は15~20秒であることが好ましい。
【0080】
次に、制御部22は、第2期間P2後の第3期間P3中に第2目標温度TA2よりも低い第3目標温度TA3に向けてヒータ30の温度を制御する。すなわち、制御部22は、ヒータ30の温度を第2目標温度TA1からさらに低下させ、第3目標温度TA3に維持するようヒータ30を制御する。第3目標温度TA3は、好ましくは175~190℃の範囲であり、典型的には185℃であってよい。第3期間P3は、好ましくは30~90秒の範囲であり、典型的には60秒であってよい。第3期間P3において目標温度をより低下させることにより、第3期間P3で消費する電力をより低下させることができる。
【0081】
第1目標温度TA1と第2目標温度TA2の温度差(ΔT12)は、第2目標温度TA2と第3目標温度TA3の温度差(ΔT23)よりも大きいことが好ましい。ヒータ30の消費電力は第3期間P3よりも第2期間P2の方が大きいので、第2期間P2から第3期間P3への移行時の温度差(ΔT23)よりも第1期間P1から第2期間P2への移行時の温度差(ΔT12)を大きくした方が、全期間を通じた消費電力の削減につながる。そのためΔT12/ΔT23は1よりも大きいことが好ましい。他方、ΔT23に対してΔT12を過度に大きくすると、エアロゾルの安定供給を意図した第2期間P2の目標温度TA2が相対的に低くなるので、第2期間P2でのエアロゾル生成が不安定になるおそれがある。そのため、ΔT12/ΔT23は所定の上限値を有することが好ましい。ΔT12/ΔT23の上限値は、例えば2.5であってよい。ΔT12/ΔT23は、好ましくは1.0~2.5であり、典型的には2.0であってよい。
【0082】
制御部22は、第2期間P2の終了時から第3期間P3の初期にわたってヒータ30への電力供給を停止する第2オフ期間を有していてよい。第2オフ期間を設けることにより、第2目標温度TA2から第3目標温度TA3への温度低下を最短時間で達成することができる。制御部22は、第2オフ期間中もヒータ30の温度測定を継続することができる。この場合、制御部22は、ヒータ30の温度が第3目標温度TA3付近まで低下したときにヒータ30への電力供給を再開するように構成されることができる。第2オフ期間は、第1オフ期間と同様に、一般的なユーザが2回又はそれ以上の吸引動作を行うことのないような時間間隔であることが好ましく、例えば15~20秒の範囲であることが好ましい。第2目標温度TA2及び第3目標温度TA3は、第2オフ期間中の自然冷却による第2目標温度TA2から第3目標温度TA3への温度低下が、上記の時間範囲内で行われるように設定されることができる。或いは、制御部22は、第2オフ期間の時間経過を計測し、第2オフ期間が所定の上限値に達したら強制的にヒータ30への電力供給を再開するように構成されることもできる。
【0083】
前述した通り、第1目標温度TA1と第2目標温度TA2の温度差(ΔT12)は、第2目標温度TA2と第3目標温度TA3の温度差(ΔT23)よりも大きいことが消費電力削減の観点から好ましいが、この関係は第1オフ期間と第2オフ期間をなるべく近似した値にするという観点でも好ましい。ニュートン冷却法則から、低温度帯よりも高温度帯の方が自然冷却時の温度低下速度が大きいので、第1オフ期間と第2オフ期間をなるべく近似させるためには、高温度帯に属する第1目標温度TA1と第2目標温度TA2の温度差(ΔT12)を相対的に大きくする必要がある。仮に、第1目標温度TA1と第2目標温度TA2の温度差(ΔT12)を、第2目標温度TA2と第3目標温度TA3の温度差(ΔT23)と等しくするか、又は前者の温度差(ΔT12)を後者の温度差(ΔT23)よりも小さくした場合は、第1オフ期間は第2オフ期間よりも常時短くなるので、2つのオフ期間を同じにすることは理論上できなくなる。
【0084】
また、第2目標温度TA2と第3目標温度TA3との差に対する第1目標温度TA1と第2目標温度TA2との差の比は、2.5未満であることが好ましい。これは、第1目標温度TA1と第2目標温度TA2との差を大きくしすぎないことによって、パフ可能期間の中盤において、安定的にエアロゾルを生成させることができるようにするためである。
【0085】
なお、消費電力削減の観点からは、第1目標温度TA1から第2目標温度TA2を経ることなく第3目標温度TA3でヒータ30を制御することが好ましい場合もある。しかしながら、その場合には、第1目標温度TA1から第3目標温度TA3に到達する期間(第2オフ期間)が相対的に長くなる。第1目標温度TA1から第3目標温度TA3に到達する期間はヒータ30への電力供給が停止されるため、この期間内にユーザが複数回の吸引動作を行うと、ヒータ30の温度が第3温度を大きく下回ってしまうおそれがある。第1目標温度TA1から第3目標温度TA3に移行する前に、第1目標温度TA1と第3目標温度TA2との間の第2目標温度TA2を経ることで、一の目標温度間から他の目標温度への移行にかかる期間を短くすることができる。これにより、ヒータ30への電力供給が停止されるオフ期間の連続時間が相対的に短くなるので、複数回の吸引動作により喫煙物品の温度が過度に低下し、その結果エアロゾル生成が不安定になるのを防止することができる。
【0086】
制御部22は、第3期間P3の終了と同時にヒータ30への電力供給を停止する。次いで、制御部22は、ヒータ30への電力供給を停止(タイミングT6)してから所定の期間経過後のタイミングT7で吸引可能期間の終了を報知する。つまり、ヒータ30への電力供給が停止した後であっても、所定の期間を経過するまでは、ユーザにエアロゾルの吸引動作を促し、ヒータ30及び喫煙物品110の余熱によりユーザにエアロゾルを味わわせることができる。なお、吸引可能期間の終了の報知は、通知部40によって行うことができ、例えば、LED等の発光素子の発光色を変えたり、発光パターンを変えたり、振動素子を駆動したりする制御、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。
【0087】
ヒータ30が加熱プロファイルの第1期間P1、第2期間P2、第3期間P3を経過した後は、ヒータ30の熱が喫煙物品110の内部まで十分に伝達されている。そのため、第3期間P3が終了してから吸引可能期間が終了するまで期間、すなわち、
図8中の第4期間P4においては、ヒータ30及び喫煙物品110の余熱だけで一定量のエアロゾルを生成できる。ただし、第4期間P4は、第1オフ期間及び第2オフ期間と同じくエアロゾル生成が不安定になりやすいので、ユーザが2回又はそれ以上の吸引動作を行わないような時間間隔であることが好ましい。そのため、第4期間P4は、好ましくは5~15秒であり、典型的には10秒であってよい。
【0088】
また、制御部22は、吸引可能期間の終了を報知するタイミングT7から所定の期間Peだけ早いタイミングT5で、吸引可能期間の終了が近付いたことをユーザに報知することができる。このような報知は、例えば吸引可能期間が終了する20~40秒前に行うことができる。このような報知は、通知部40によって行うことができ、例えば、LED等の発光素子の発光色を変えたり、発光パターンを変えたり、振動素子を駆動したりする制御、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。
【0089】
前述した態様では、制御部22は、第3期間P3の終了時点でヒータ30への電力供給を停止する。この他にも、制御部22は、ユーザによる吸引動作の回数が所定回数を超過した場合、第2期間P2又は第3期間P3内であってもヒータ30への電力供給を停止してもよい。ユーザによるパフ動作は、例えば前述した温度センサによって検出できる。
【0090】
図9は、ヒータの加熱プロファイルと、エアロゾルの送達プロファイルと、を示す図である。エアロゾルの送達プロファイルとは、ユーザが所定の吸引条件に従って香味吸引器100を使用したときに、ユーザの口腔内に送達される主要エアロゾル成分の時間変化を表すグラフである。ここでいう「主要エアロゾル成分」とは一定温度以上に加熱されたときに可視性のエアロゾルを生成する物質であり、具体的には、喫煙物品110の充填物111に含まれるエアロゾル源のことである。
【0091】
主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、主には、ヒータ30の加熱プロファイルに依存し得る。具体的には、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、基本的には、喫煙物品110の内部の温度プロファイルに対応したプロファイルであり得る。喫煙物品110の内部の温度プロファイルは、ヒータ30の加熱プロファイルに追従するため、概して、加熱プロファイルに対して時間的に遅れた形状になり易い。
【0092】
したがって、第1期間P1における第1目標温度TA1を、加熱プロファイル全体を通じた最高温度に設定することによって、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、初期Q1において、急勾配の上昇カーブを形成し易くなる。また、第1期間P1後の第2期間P2の大半においてヒータ30の温度を第2目標温度TA2に維持することによって、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、中期Q2において、吸引ごとの変動が少ない安定期間SPを形成し易くなる。さらに、第2期間P2後の第3期間P3中に第2目標温度TA2よりも低い第3目標温度TA3に向けてヒータ30の温度を制御することによって、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、終期Q3において下降カーブを形成し易くなる。特に、第2目標温度TA2と第3目標温度TA3の温度差T23を小さくすることによって、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、終期Q3において、より緩勾配の下降カーブを形成し易くなる。以上のように、
図8に例示した加熱プロファイルに従ってヒータ30の加熱制御を行うことによって、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、中期Q2において極大点を有する上に凸のカーブを全体として形成し易くなり、初期Q1において急勾配の上昇カーブを形成し易くなり、かつ終期Q3において緩勾配の下降カーブを形成し易くなる。
【0093】
前述したように、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、主に、ヒータ30の加熱プロファイルに依存し得る。しかしながら、主要エアロゾル成分の送達プロファイルは、ヒータ30の形状、断熱材138の有無及び形状、喫煙物品110の大きさ、ヒータ30と喫煙物品110の接触度、並びに喫煙物品110に対するヒータ30の加熱部分の位置等の要素に応じて変化し得るので、
図9中の送達プロファイルは例示的なものであることに留意されたい。
【0094】
(プログラム及び記憶媒体)
前述した加熱プロファイル及び/又はエアロゾルプロファイルを実現するための制御フローは、制御部22が実行することができる。すなわち、本発明は、香味吸引器100及び/又はエアロゾル生成装置120に前述の方法を実行させるプログラム、当該プログラムが格納された記憶媒体をも含んでいてよい。このような記憶媒体は、非一過性の記憶媒体であってよい。
【0095】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。