(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】複雑な試料からの核酸の単離および阻害物質の除去
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20240530BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240530BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
G01N33/50 P
G01N33/48 A
(21)【出願番号】P 2020556263
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 US2019027966
(87)【国際公開番号】W WO2019209597
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514000473
【氏名又は名称】キアゲン サイエンシーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン, ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】ニシェツキ, ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】デフォース, エメリア
(72)【発明者】
【氏名】アダムズ, エディ ダブリュー.
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104152436(CN,A)
【文献】国際公開第2017/044827(WO,A1)
【文献】特表2010-505430(JP,A)
【文献】特表2017-522263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から核酸を単離するための方法であって、
(a)混合物を得るために、試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清、または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤ならびに塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
(b)工程(a)の混合物を固相および液相に分離すること、ここで、前記1またはそれを超える第二の剤は、前記固相中に主に存在し、ならびに
(c)工程(b)の液相から核酸を単離すること、
を含む方法。
【請求項2】
(i)第一の剤が酢酸アンモニウムであり、および第二の剤が塩化アルミニウムである;
(ii)工程(a)の前記混合物中の前記1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.1~3M、例えば、0.1~0.25M、0.25~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~2.5M、2.5~3M、0.1~0.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~2.5M、0.1~3M、0.25~1M、0.25~1.5M、0.25~2M、0.25~2.5M、0.25~3M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~2.5M、0.5~3M、1~2M、1~2.5M、1~3M、または2~3Mである;ならびに/あるいは
(iii)工程(a)の前記混合物中の前記1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、1~150mM、例えば、1~5mM、5~25mM、25~50mM、50~75mM、75~100mM、100~150mM、1~25mM、1~50mM、1~75mM、1~100mM、1~150mM、5~50mM、5~75mM、5~100mM、5~150mM、25~75mM、25~100mM、25~150mM、50~100mM、50~150mM、または75~150mMの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)工程(c)で単離された核酸がDNA、RNAまたは両方を含む;
(ii)前記試料が、便試料、植物試料または環境試料である;
(iii)前記試料が、土壌、水または空気試料である環境試料である;
(iv)前記試料が、工程(a)において前記1またはそれを超える第二の剤と複合体を形成する混入物または阻害物質を含み、前記複合体が、前記1またはそれを超える第二の剤によって、工程(b)の液相から沈殿および除去される;ならびに/あるいは
(v)工程(a)中の前記試料の量が、1グラム未満、または0.5グラム未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(i)工程(a)が、前記試料、前記試料の前記可溶化液もしくは前記可溶化液の前記上清、または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、前記1またはそれを超える第一の剤および前記1またはそれを超える第二の剤を含む組成物と接触させることによって実施される;
(ii)前記試料、前記試料の前記可溶化液または前記可溶化液の前記上清を前記1またはそれを超える第一の剤と接触させることと、前記試料、前記試料の前記可溶化液または前記可溶化液の前記上清を前記1またはそれを超える第二の剤と接触させることとの間に、沈殿、遠心分離またはろ過が実施されない;あるいは
(iii)工程(a)が、
(a)(1)混合物を生成するために、前記試料、前記試料の前記可溶化液または前記可溶化液の前記上清を前記1またはそれを超える第一の剤と接触させること、
(a)(2)液相を得るために、工程(a)(1)の混合物を沈殿、遠心分離またはろ過すること、および
(a)(3)(a)(2)の前記液相を前記1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が、溶解試薬の存在下で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、以下の特徴のうちの1またはそれを超える特徴を有する、請求項5に記載の方法:
(i)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤を含む;
(ii)前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含む;
(iii)前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含み、前記ホスフェートが、以下の特徴:
a)それがホスフェート二塩基性である、
b)前記ホスフェート中の陽イオン性部分がアンモニウム、ナトリウム、カリウムまたはリチウムから選択される、
c)それがリン酸ナトリウム二塩基性である、
のうちの1またはそれを超える特徴を有する;
(iv)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウム二塩基性を含む;
(v)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤を含み、そして:
(a)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、0.05~0.5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(b)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の最終濃度が合計で、0.01~4M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4Mである;
(vi)前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含み、そして:
(a)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、または0.1~0.2Mである;ならびに/あるいは
(b)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるホスフェートの最終濃度が合計で、0.01~0.4M、または0.1~0.2Mである。
【請求項7】
(i)試料の可溶化液を生成するために、試料または試料の一部を前記溶解試薬と接触させること
であって、工程(a)が、前記試料の前記可溶化液、前記可溶化液の前記上清、または前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、前記1またはそれを超える第一の剤および前記1またはそれを超える第二の剤と接触させることを含む、
接触させること、または
(ii)試料の可溶化液を生成するために、試料または試料の一部を前記溶解試薬と接触させることであって、工程(a)が、前記試料の前記可溶化液、前記可溶化液の前記上清、または前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、前記1またはそれを超える第一の剤および前記1またはそれを超える第二の剤と接触させることを含み、前記溶解試薬が、物理的破壊および/または酵素的溶解と組み合わせて使用される、接触させること、
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
(d)工程(c)で単離された核酸を分析すること、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)が、PCR、qPCR、RT-PCRまたは核酸配列決定を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(i)酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、
(ii)塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と、
を含む、から本質的になる、またはからなる、試料から核酸を単離するための組成物。
【請求項11】
(i)前記1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウムまたはこれらの組み合わせであり、および前記第二の剤が塩化アルミニウムである;
(ii)前記組成物が水を含む;
(iii)前記組成物が水溶液である;
(iv)前記組成物が水溶液であり、そして前記1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.5~10M、例えば、0.5~2.5M、2.5~5M、5~7.5M、7.5~10M、0.5~5M、0.5~7.5M、0.5~10M、2.5~7.5M、2.5~10M、5~10M、1~8Mまたは1.5~7.5Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(v)前記1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、10~500mM、例えば、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~500mM、100~300mM、100~400mM、100~500mM、200~400mM、200~500mM、300~500mM、10~500mM、50~200mM、50~500mMまたは75~150mMの範囲にある、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
試料から核酸を単離するためのキットであって、
(a)請求項10または11に記載の組成物、
あるいは
(b)(i)酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、
(ii)塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤、
を含む、キット。
【請求項13】
(i)前記1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウムまたはこれらの組み合わせであり、および前記第二の剤が塩化アルミニウムである;
(ii)前記キットが、核酸結合固体支持体をさらに含む;ならびに/あるいは
(iii)前記キットが、DNA結合溶液、DNA洗浄溶液、DNA溶出溶液、RNA結合溶液、RNA洗浄溶液およびRNA溶出溶液から選択される1またはそれを超える溶液をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
溶解試薬をさらに含む、請求項12または13に記載のキット。
【請求項15】
前記溶解試薬が、以下の特徴のうちの1またはそれを超える特徴を有する、請求項14に記載のキット:
(i)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含む;
(ii)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含み、前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含む;
(iii)前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む;
(iv)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含み、そして前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にある;
(v)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含み、そして前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にあり、前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含む;
(vi)前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含み、前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含み、前記1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、または0.1~0.2Mである。
【請求項16】
試料から可溶化液を調製するための方法であって、
(a)可溶化液を生成するために、試料を、1またはそれを超えるホスフェートとチオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤とを含む溶解試薬と接触させること、および
(b)前記可溶化液、前記可溶化液の上清、または前記可溶化液もしくは前記可溶化液の前記上清の一部を、1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤および1またはそれを超える阻害物質除去剤と接触させることであって、前記1またはそれを超える阻害物質除去剤が、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV
)およびこれらの組み合わせから選択される、こと
を含む方法。
【請求項17】
前記1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤が、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む;
(ii)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、または0.1~0.2Mの範囲にある;
(iii)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるホスフェートの最終濃度が合計で、0.01~0.4M、または0.1~0.2Mの範囲にある;
(iv)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、例えば、0.05~0.5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(v)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4Mの範囲にある、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
試料から可溶化液を調製するための方法であって、
(a)可溶化液を生成するために、試料を溶解試薬と接触させること
を含み、
前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートとカオトロピック剤を含み、前記カオトロピック剤が、チオシアン酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムであるか、または、前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートを含み、かつ、前記カオトロピック剤としてチオシアン酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む、方法。
【請求項20】
(i)前記溶解試薬が溶液である;
(i
i)前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む;
(ii
i)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、または0.1~0.2Mの範囲にある;
(i
v)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるホスフェートの最終濃度が合計で、0.01~0.4M、または0.1~0.2Mの範囲にある;
(
v)前記溶解試薬中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、例えば、0.05~0.5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(v
i)前記可溶化液中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4Mの範囲にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(b)前記可溶化液、前記可溶化液の上清または前記可溶化液もしくは前記可溶化液の前記上清の一部を、1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤および1またはそれを超える阻害物質除去剤と接触させること、
をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤が、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)前記1またはそれを超える阻害物質除去剤が、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される;あるいは
(ii)前記1またはそれを超える阻害物質除去剤が、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、硫酸カリウムアルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウム、酸化カルシウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
(c)工程(b)の混合物から上清を得るために、工程(b)の混合物を遠心分離すること、および
(d)工程(c)の前記上清から核酸を単離すること、
をさらに含む、請求項16~18および21~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
(i)前記試料が、便試料、植物試料または環境試料である;
(ii)前記試料が、土壌、水または空気試料である環境試料である;
(iii)前記方法が、前記試料の機械的破壊をさらに含む
;
(iv)前記方法が、高密度ビーズを用いて実施される前記試料の機械的破壊をさらに含む
;ならびに/あるいは
(v)前記溶解試薬が酵素的溶解と組み合わせて使用される、請求項16~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
(a)チオシアン酸ナトリウム、または炭酸ナトリウムであるカオトロピック剤と、
(b)1またはそれを超えるホスフェートと、
を含むか、あるいは
(a)’前記カオトロピック剤としてのチオシアン酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムと、
(b)’1つまたはそれを超えるホスフェートと、
を含む、溶解試薬。
【請求項27】
(i)前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む;
(ii)前記溶解試薬が溶液である;
(ii
i)前記溶解試薬が溶液であり、前記溶液中の前記1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度は、0.05~5M、0.05~0.5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(i
v)
前記溶解試薬が溶液であり、前記溶液中の前記1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、または0.1~0.2Mの範囲にある、請求項26に記載の溶解試薬。
【請求項28】
試料から可溶化液を調製するためのキットであって、
(1)チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤と、
(2)1またはそれを超えるホスフェートと、
(3)塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と
を含
む、キット。
【請求項29】
試料から可溶化液を調製するためのキットであって、
溶解試薬を含み、前記溶解試薬が、
(1)チオシアン酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムであるカオトロピック剤と、
(2)1またはそれを超えるホスフェートと
を含むか、または
(1)’前記カオトロピック剤としてのチオシアン酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムと、
(2)’1つまたはそれを超えるホスフェートと、
を含む、キット。
【請求項30】
前記1つまたはそれを超えるホスフェートと、1つまたはそれを超える前記カオトロピック剤とを含む溶解試薬を含む、請求項28
に記載のキット。
【請求項31】
前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含
み、ならびに/または、前記溶解試薬が、溶液である、請求項2
9または請求項
30に記載のキット。
【請求項32】
(iv)塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、硫酸カリウムアルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、酸化カルシウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤、
をさらに含む、請求項2
9または請求項3
1に記載のキット。
【請求項33】
(i)前記1またはそれを超える第二の剤が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される;あるいは
(ii)前記第二の剤が硫酸アンモニウムアルミニウムまたは硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物である、請求項3
2に記載のキット。
【請求項34】
(iii)1またはそれを超える第一の剤をさらに含み、
(a)前記1またはそれを超える第一の剤が、アミノ酸;短鎖脂肪酸の塩、例えば、酪酸ナトリウム;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;およびポリアクリル酸ナトリウムから選択される;
(b)前記1つまたはそれを超える第一の剤が、、硫酸アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、スルホ酢酸、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム、β-アラニン、硫酸グアニジン、ヒスチジン、グリシンおよびこれらの組み合わせから選択される、あるいは
(c)前記1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項28~3
3のいずれかに記載のキット。
【請求項35】
前記1またはそれを超える第一の剤および前記1またはそれを超える第二の剤が組成物を形成する、請求項28
、30、3
2または3
3のいずれかを引用する場合の請求項3
4に記載のキット。
【請求項36】
(i)前記組成物が溶液である;
(ii)前記組成物が溶液であり、前記溶液中の前記1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.5M~10M、例えば、1~8Mまたは1.5~7.5Mまたは0.1~1M、例えば0.1~0.75Mの範囲にある;ならびに/あるいは
(iii)前記組成物が溶液であり、前記溶液中の前記1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、0.01M~0.5M、0.05~0.2Mまたは0.075~0.15Mの範囲にある、請求項3
5に記載のキット。
【請求項37】
(i)前記試料の機械的破壊に適した高密度ビーズ;
(ii)核酸結合固体支持体;
(iii)DNA結合溶液、DNA洗浄溶液、DNA溶出溶液、RNA結合溶液、RNA洗浄溶液およびRNA溶出溶液から選択される1またはそれを超える溶液;
(iv)タンパク質結合固相;ならびに/あるいは
(v)タンパク質結合溶液、タンパク質洗浄溶液およびタンパク質溶出溶液の1またはそれより多く
をさらに含む、請求項28~3
6のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
本開示は、試料の溶解ならびに土壌または便試料などの複雑な試料など、試料からの核酸の単離および阻害物質の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
分子生物学ならびに疾患診断、法医学、食品科学および環境科学を含む関連分野において、高い収率と純度で核酸を単離することは極めて重要である。既存の技術は、土壌試料および便試料のような環境試料など、ある種の試料中の核酸を単離するときに低収率および/または低純度という問題を抱える。混入物質および阻害物質の存在は、単離された核酸の下流での分析を妨害する。特に、場合によっては、上記試料材料は、膨大な量の極めて多様な妨害成分を含有し、極めて複雑であるので、試料材料から生体分子を単離および精製するときに、多数の相互作用が起こり得る。既存の技術の欠点は、1つには、このような複雑な試料を溶解するための効果的な方法が存在しないことによる。さらに、特に、同じ試料からいくつかの異なる生体分子を単離し、およびまたは精製することが予定される場合には、阻害成分の除去は極めて困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本開示は、試料由来の混入分子を枯渇させながら、核酸を単離するための方法、組成物およびキットを提供する。さらに、本開示は、試料から可溶化液を調製するための方法、組成物およびキットを提供する。
【0004】
一態様において、本開示は、試料から核酸を単離するための方法であって、
(a) 混合物を得るために、試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤ならびに塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
(b) 工程(a)の前記混合物を、固相および液相に分離すること、ここで、前記1またはそれを超える第二の剤は、主として前記固相中にあり、ならびに
(c) 工程(b)の前記液相から核酸を単離すること、
を含む、方法を提供する。
【0005】
別の態様において、本願は、試料から核酸を単離するための組成物であって、
(i) 酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、
(ii) 塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と、ならびに
(iii) 必要に応じて水と、
を含む、から本質的になる、またはからなる組成物を提供する。
【0006】
別の態様において、本開示は、試料から核酸を単離するためのキットであって、
(a) 本明細書において提供される組成物、
または
(b)
(i) 酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤、ならびに
(ii) 塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤、
を含むキットを提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、試料から可溶化液を調製するための方法であって、
(a) 可溶化液を生成するために、試料を、1またはそれを超えるホスフェートとチオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤とを含む溶解試薬と接触させること、を含む方法を提供する。
【0008】
別の態様において、本開示は、溶解試薬であって、
(a) チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤と、
(b) 1またはそれを超えるホスフェートと、
を含む溶解試薬を提供する。
【0009】
別の態様において、本開示は、試料から可溶化液を調製するためのキットであって、
(i)(a) 本明細書において提供される溶解試薬、
または
(b)(1) チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤と、
(2) 1またはそれを超えるホスフェート、
を含むキットを提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
試料から核酸を単離するための方法であって、
(a)混合物を得るために、試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清、または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤ならびに塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
(b)工程(a)の混合物を固相および液相に分離すること、ここで、前記1またはそれを超える第二の剤は、前記固相中に主に存在し、ならびに
(c)工程(b)の液相から核酸を単離すること、
を含む方法。
(項目2)
第一の剤が酢酸アンモニウムであり、および第二の剤が塩化アルミニウムである、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(a)の混合物中の1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.1~3M、例えば、0.1~0.25M、0.25~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~2.5M、2.5~3M、0.1~0.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~2.5M、0.1~3M、0.25~1M、0.25~1.5M、0.25~2M、0.25~2.5M、0.25~3M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~2.5M、0.5~3M、1~2M、1~2.5M、1~3M、2~3M、好ましくは0.5~2.5Mまたは1~2Mである、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
工程(a)の混合物中の1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、1~150mM、例えば、1~5mM、5~25mM、25~50mM、50~75mM、75~100mM、100~150mM、1~25mM、1~50mM、1~75mM、1~100mM、1~150mM、5~50mM、5~75mM、5~100mM、5~150mM、25~75mM、25~100mM、25~150mM、50~100mM、50~150mM、75~150mM、好ましくは、5~25mMまたは5~50mMの範囲にある、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
工程(c)で単離された核酸がDNA、RNAまたは両方を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
試料が、便試料、植物試料または環境試料、好ましくは、土壌、水または空気試料である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
工程(a)が、前記試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清、または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤を含む組成物と接触させることによって実施される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記試料、前記試料の可溶化液または前記可溶化液の上清を1またはそれを超える第一の剤と接触させることと、前記試料、前記試料の可溶化液または前記可溶化液の上清を1またはそれを超える第二の剤と接触させることとの間に、沈殿、遠心分離またはろ過が実施されない、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
工程(a)が、
(a)(1)混合物を生成するために、前記試料、前記試料の可溶化液または前記可溶化液の上清を1またはそれを超える第一の剤と接触させること、
(a)(2)液相を得るために、工程(a)(1)の混合物を沈殿、遠心分離またはろ過すること、および
(a)(3)(a)(2)の液相を1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
を含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
工程(a)が、溶解試薬の存在下で実施される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択されるカオトロピック剤を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含む、項目10または項目11に記載の方法。
(項目13)
ホスフェートが、1またはそれを超える以下の特徴:
a)ホスフェート二塩基性である、
b)ホスフェート中の陽イオン性部分がアンモニウム、ナトリウム、カリウムまたはリチウムから選択される、
c)リン酸ナトリウム二塩基性である、
を有する、項目12に記載の方法。
(項目14)
溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウム二塩基性を含む、項目10に記載の方法。
(項目15)
試料の可溶化液を生成するために、試料または試料の一部を溶解試薬と接触させることをさらに含み、工程(a)が、前記試料の可溶化液、前記可溶化液の上清、または前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤と接触させることを含む、項目10~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
溶解試薬中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にある、項目11~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
可溶化液中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の最終濃度が合計で、0.01~4M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mである、項目11~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
溶解試薬中の1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mである、項目12~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
可溶化液中の1またはそれを超えるホスフェートの最終濃度が合計で、0.01~0.4M、好ましくは、0.1~0.2Mである、項目12~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
試料が、工程(a)において1またはそれを超える第二の剤と複合体を形成する混入物または阻害物質を含み、前記複合体が、1またはそれを超える第二の剤によって、工程(b)の液相から沈殿および除去される、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
(d)工程(c)で単離された核酸を分析すること、
をさらに含む、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
工程(d)が、PCR、qPCR、RT-PCRまたは核酸配列決定を含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
工程(a)中の試料の量が、1グラム未満、好ましくは、0.5グラム未満である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
(i)酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、
(ii)塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と、ならびに
(iii)必要に応じて水と、
を含む、から本質的になる、またはからなる、試料から核酸を単離するための組成物。
(項目25)
1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウムまたはこれらの組み合わせであり、および第二の剤が塩化アルミニウムである、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記組成物が水溶液である、項目24または項目25に記載の組成物。
(項目27)
1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.5~10M、例えば、0.5~2.5M、2.5~5M、5~7.5M、7.5~10M、0.5~5M、0.5~7.5M、0.5~10M、2.5~7.5M、2.5~10M、5~10M、好ましくは、0.5~5M、0.5~7.5M、2.5~5M、2.5~7.5M、1~8Mまたは1.5~7.5Mの範囲にある、項目26に記載の組成物。
(項目28)
1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、10~500mM、例えば、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~500mM、100~300mM、100~400mM、100~500mM、200~400mM、200~500mM、300~500mM、好ましくは、10~200mM、10~500mM、50~200mM、50~500mMまたは75~150mMの範囲にある、項目24~26のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
試料から核酸を単離するためのキットであって、
(a)項目24~28のいずれか一項に記載の組成物、
または
(b)(i)酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、
(ii)塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤、
を含む、キット。
(項目30)
キットが、項目24~28のいずれか一項に記載の組成物を含む、項目29に記載のキット。
(項目31)
1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウムまたはこれらの組み合わせであり、および第二の剤が塩化アルミニウムである、項目29または項目30に記載のキット。
(項目32)
核酸結合固体支持体をさらに含む、項目29~31のいずれか一項に記載のキット。
(項目33)
DNA結合溶液、DNA洗浄溶液、DNA溶出溶液、RNA結合溶液、RNA洗浄溶液およびRNA溶出溶液から選択される1またはそれを超える溶液をさらに含む、項目29~32のいずれか一項に記載のキット。
(項目34)
溶解試薬をさらに含む、項目29~33のいずれか一項に記載のキット。
(項目35)
前記溶解試薬が、チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤を含む、項目34に記載のキット。
(項目36)
前記溶解試薬が、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含む、項目35に記載のキット。
(項目37)
前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む、項目34に記載のキット。
(項目38)
溶解試薬中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にある、項目35~37のいずれか一項に記載のキット。
(項目39)
1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mである、項目36~38のいずれか一項に記載のキット。
(項目40)
試料から可溶化液を調製するための方法であって、
(a)可溶化液を生成するために、試料を、1またはそれを超えるホスフェートとチオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤とを含む溶解試薬と接触させること、を含む方法。
(項目41)
前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記溶解試薬中の1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mの範囲にある、項目40または項目41に記載の方法。
(項目43)
前記可溶化液中の1またはそれを超えるホスフェートの最終濃度が合計で、0.01~0.4M、好ましくは、0.1~0.2Mの範囲にある、項目40~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記溶解試薬中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.05~5M、例えば、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にある、項目40~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記可溶化液中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度が、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にある、項目40~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記試料が、便試料、植物試料または環境試料、好ましくは、土壌、水または空気試料である、項目40~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記試料の機械的破壊をさらに含む、項目40~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記機械的破壊が高密度ビーズを用いて実施される、項目47に記載の方法。
(項目49)
(b)前記可溶化液、前記可溶化液の上清または前記可溶化液もしくは前記可溶化液の前記上清の一部を、タンパク質沈殿剤および1またはそれを超える阻害物質除去剤と接触させること、
をさらに含む、項目40~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤が、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記1またはそれを超える阻害物質除去剤が、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される、項目49または項目50に記載の方法。
(項目52)
前記1またはそれを超える阻害物質除去剤が、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、硫酸カリウムアルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウム、酸化カルシウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、項目49または項目50に記載の方法。
(項目53)
(c)工程(b)の混合物から上清を得るために、工程(b)の混合物を遠心分離すること、および
(d)工程(c)の上清から核酸を単離すること、
をさらに含む、項目49~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
(a)チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤と、
(b)1またはそれを超えるホスフェートと、
を含む溶解試薬。
(項目55)
前記溶解試薬が、リン酸ナトリウム二塩基性およびチオシアン酸ナトリウムを含む、項目54に記載の溶解試薬。
(項目56)
前記溶解試薬が溶液であり、前記溶液中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度は、0.05~5M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にある、項目54または項目55に記載の溶解試薬。
(項目57)
前記溶液中の1またはそれを超えるホスフェートの総濃度が、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mの範囲にある、項目54~56のいずれか一項に記載の溶解試薬。
(項目58)
試料から可溶化液を調製するためのキットであって、
(i)(a)項目54~57のいずれか一項に記載の溶解試薬、
または
(b)(1)チオシアン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超えるカオトロピック剤と、
(2)1またはそれを超えるホスフェート、
を含む、キット。
(項目59)
(ii)前記試料の機械的破壊に適した高密度ビーズ、
をさらに含む、項目58に記載のキット。
(項目60)
(iii)アミノ酸;短鎖脂肪酸の塩、例えば、酪酸ナトリウム;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;ポリアクリル酸ナトリウム;好ましくは、硫酸アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、スルホ酢酸、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム、β-アラニン、硫酸グアニジン、ヒスチジン、グリシンおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤、
をさらに含む項目58または項目59に記載のキット。
(項目61)
前記1またはそれを超える第一の剤が、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される、項目58または項目59に記載のキット。
(項目62)
(iv)塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、硫酸カリウムアルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、酸化カルシウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤、
をさらに含む、項目58~61のいずれか一項に記載のキット。
(項目63)
前記1またはそれを超える第二の剤が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される、項目62に記載のキット。
(項目64)
前記第二の剤が硫酸アンモニウムアルミニウムまたは硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物である、項目62に記載のキット。
(項目65)
前記1またはそれを超える第一の剤および前記1またはそれを超える第二の剤が組成物を形成する、項目62~64のいずれか一項に記載のキット。
(項目66)
前記組成物が溶液である、項目65に記載のキット。
(項目67)
前記溶液中の1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.5M~10M、例えば、1~8Mまたは1.5~7.5Mまたは0.1~1M、例えば0.1~0.75Mの範囲にある、項目66に記載のキット。
(項目68)
前記溶液中の1またはそれを超える第二の剤の総濃度が、0.01M~0.5M、0.05~0.2Mまたは0.075~0.15Mの範囲にある、項目66または項目67に記載のキット。
(項目69)
核酸結合固体支持体をさらに含む、項目58~68のいずれか一項に記載のキット。
(項目70)
DNA結合溶液、DNA洗浄溶液、DNA溶出溶液、RNA結合溶液、RNA洗浄溶液およびRNA溶出溶液から選択される1またはそれを超える溶液をさらに含む、項目58~69のいずれか一項に記載のキット。
(項目71)
タンパク質結合固相をさらに含む、項目58~70のいずれか一項に記載のキット。
(項目72)
タンパク質結合溶液、タンパク質洗浄溶液およびタンパク質溶出溶液の1またはそれより多くをさらに含む、項目58~71のいずれか一項に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、実施例2に従って単離されたDNA(上のパネル)、RNA(中央のパネル)およびタンパク質(下のパネル)のゲル電気泳動を示す。
【0012】
【
図3】
図3は、実施例3に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、実施例4に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0014】
【
図5】
図5は、実施例5に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0015】
【
図6A】
図6Aは、ZymoBIOMICS DNA Miniprep Kitを用いて単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0016】
【
図6B】
図6Bは、PureLink Microbiome DNA Purification Kitを用いて単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0017】
【
図6C】
図6Cは、PowerFecal DNA Isolation Kitを用いて単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0018】
【
図6D】
図6Dは、本開示の例示的な方法(「新技術」)を用いて単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0019】
【
図6E】
図6Eは、Nanodropを用いて測定された、異なるキットを用いて糞便試料から単離されたDNAの濃度を示すグラフである。
【0020】
【
図6F】
図6Fは、Qubitを用いて測定された、異なるキットを用いて糞便試料から単離されたDNAの濃度を示すグラフである。
【0021】
【
図7】
図7は、実施例7に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0022】
【
図8】
図8は、実施例8に従って単離されたDNA(上側左)およびRNA(下側左)のゲル電気泳動ならびにDNA(上側右)およびRNA(下側右)の収率および純度を示す。
【0023】
【
図9】
図9は、実施例9に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0024】
【
図10】
図10は、実施例10に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0025】
【
図11】
図11は、実施例11に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【0026】
【
図12】
図12は、実施例12に従って単離されたDNAのゲル電気泳動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本開示は、試料から、特に、土壌試料および便試料のような環境などの複雑な試料からDNAおよびRNAを可溶化するために、試料を効果的に溶解するための方法、組成物およびキットを提供する。本明細書において提供される方法は、1またはそれを超えるホスフェートと、試料溶解の間に核酸を著しく分解することなく核酸を効果的に可溶化するための1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤とを含む溶解試薬を使用する。
【0028】
さらに、本開示は、試料から、特に、土壌試料および便試料のような環境試料などの複雑な試料から単離された核酸から、混入物質(例えば、阻害物質)を効果的に除去するための方法、組成物およびキットも提供する。本明細書において提供される方法は、タンパク質および混入物質を沈殿させ、これらを核酸調製物から除去する上で、タンパク質沈殿剤および三価または四価の塩の新規組み合わせを使用する。
【0029】
さらに、本明細書に開示されている試料溶解および阻害物質除去方法は、単離された核酸の完全性を犠牲にすることなく、核酸収率および純度を増加させるために互いに組み合わされ得る。
【0030】
これらの方法は、RNAの量/g土壌を犠牲にすることなく、著しくより少量の試料投入量、例えば、2g~250mgを可能にする。これらの方法は、核酸単離の間に、スピンカラム型式での固体支持を使用し得、これにより自動化が可能になり、規模拡大および高処理量が容易になる。
【0031】
以下の記述において、本明細書に提供されている任意の範囲は、その範囲中の全ての値を含む。
【0032】
文脈上別段の指示がなければ、用語「または」は、「および/または」を含む意味で(すなわち、選択肢の一方、両方または選択肢の任意の組み合わせを意味するために)一般に使用されることにも留意すべきである。
【0033】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が反対の意味を指示しなければ、複数表記を含む。
【0034】
用語「含む(include)」、「有する(have)」、「含む(comprise)」およびこれらの変形は同義的に使用され、非限定的に解釈されなければならない。
【0035】
本明細書において使用される「これらの組み合わせ(a combination thereof)」という用語は、本用語に先行する列記された項目の全ての可能な組み合わせのうちの1つを表す。例えば、「A、B、Cまたはこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCのいずれか1つを表すことが意図される。同様に、本明細書において使用される「これらの組み合わせ(combinations thereof)」という用語は、本用語に先行する列記された項目の全ての可能な組み合わせを表す。例えば、「A、B、Cおよびこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BCおよびABCの全てを表すことが意図される。
【0036】
I. 試料の溶解
一態様において、本開示は、試料を、1またはそれを超えるホスフェートと1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤とを含む溶解試薬と接触させることを含む、試料から可溶化液を調製するための方法を提供する。得られた可溶化液は、関心対象の生体分子(例えば、核酸、タンパク質)を単離または検出するために使用され得る。
【0037】
A. 試料
試料は、生体試料、環境試料および食品試料など、関心対象の生体分子を含有する任意の試料、特に、単離された核酸の調製物中に存在する場合、単離された核酸の下流での分析を妨害する阻害物質を含有する試料であり得る。
【0038】
本明細書において使用される用語「生体試料」は、臓器、組織、細胞、体液(例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液または尿)、綿棒試料、便試料および植物試料(例えば、種子、葉、根、茎、花、細胞または植物組織培養由来の組織)を含むがこれらに限定されない、生物被験体から得られるまたは生物被験体によって産生される試料を表す。生体試料は、原核生物起源または真核生物起源であり得る。いくつかの実施形態において、生体試料は、哺乳動物、とくにヒトのものである。
【0039】
本明細書において提供される方法は、便試料から生体分子を単離する上で特に有用である。便試料由来の生体分子(例えば、核酸)の分析によって、細菌およびウイルスの感染性因子の検出、食事、プロバイオティクスおよび抗生物質の使用から生じる変化のモニタリングならびに腫瘍特異的変化の検出が可能となり、腫瘍特異的変化の検出は、消化管の腫瘍の初期診断におけるパラメータとして使用され得る。
【0040】
本明細書において使用される用語「環境試料」は、関心対象の生体分子を含有する任意の環境材料(すなわち、地球および空間中に含有される材料)を表す。環境材料は、土壌、水および空気中の材料であり得る。生体分子には、環境材料中の生きたまたは死んだ生物由来の生体分子が含まれる。
【0041】
本明細書において使用される用語「土壌」は、土壌(例えば、鉢植え用混合物、泥)、堆積物(例えば、海洋堆積物、湖沼堆積物、河川堆積物)、堆肥(manure)(ニワトリまたはシチメンショウのような家禽の堆肥、ウマの堆肥、ウシの堆肥、ヤギの堆肥、ヒツジの堆肥)、ごみ埋め立て地(landfill)、コンポストなどの環境試料を表す。
【0042】
本明細書において使用される用語「食品試料」は、未加工食品、加工食品、肉、魚、家禽、植物、卵、乳製品、パン製品、チョコレート、ピーナッツバター、飲料などを含む、動物(例えば、ヒト)によって消費するための材料、物質または組成物を表す。食品試料には、食品試料を培地と接触させ、試料中に存在する場合に微生物が増殖するのに適した条件下でこの混合物をインキュベートすることによって作製される食品集積培養物も含まれ得る。
【0043】
生体分子の分解を最小限に抑制しながら、生体分子を可溶化するその高い効率性のために、本開示の方法は、グラム試料当たりの核酸の取得量を犠牲にすることなく、伝統的に必要とされる(例えば、2グラム)より、少量の出発材料(例えば、1グラム未満、0.5グラム未満または0.25グラム未満)の使用を可能にする。例えば、出発材料は、0.01グラム~1グラム、0.01グラム~0.5グラム、0.01グラム~0.25グラム、0.05グラム~1グラム、0.05グラム~0.5グラム、0.05グラム~0.25グラム、0.1グラム~1グラム、0.1グラム~0.5グラムまたは0.1グラム~0.25グラムの範囲にあり得る。
【0044】
B. 溶解試薬
試料を収集した後に、その後の単離または検出のため、生体分子を放出するために、試料は、通例、溶解される。本明細書に開示されている方法に従う試料の溶解は、1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤および1またはそれを超えるホスフェート(および必要に応じて水)を含む、から本質的になる、またはからなる溶解試薬を使用する。
【0045】
カオトロピック剤は、タンパク質および核酸などの高分子の構造を破壊し、タンパク質および核酸などの高分子を変性させる。カオトロピック溶質は、水素結合、ファンデルワールス力および疎水性効果などの、高分子構造および機能がそれに依存する非共有結合力によって媒介される分子内相互作用を妨害することによって系のエントロピーを増加させる。例示的なカオトロピック剤としては、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジン、尿素またはリチウム塩が挙げられる。
【0046】
「相対的に穏やかな」カオトロピック剤は、より強いカオトロピック剤であるチオシアン酸グアニジニウム(GuSCN)または塩化グアニジニウム(GuCl)より少なくタンパク質を変性させるが、より弱いカオトロピック剤である塩化ナトリウムより多くタンパク質を変性させるカオトロピック剤を表す。したがって、このような相対的に穏やかなカオトロピック剤は、タンパク質を精製および/または単離するためにも使用され得る。このような相対的に穏やかな(「より少ない侵襲性の」とも称される)カオトロピック剤としては、相対的に強い陰イオンが相対的に弱い陽イオンと組み合わされまたは相対的に強い陽イオンが相対的に弱い陰イオンと組み合わされるある種のホフマイスター系列カオトロープ陽イオン/陰イオン組み合わせが挙げられる。
【0047】
ホフマイスター系列は、イオンがタンパク質を塩析するまたは塩溶する能力の順番でのイオンの分類である。この塩の系列は、タンパク質の溶解度に対して、ならびにタンパク質の二次構造および三次構造の安定性に対して一貫した効果を有する。陰イオンは、陽イオンより大きな効果を有するようであり、例示的な陰イオンは、通常、以下のように順序付けられる。
CO3
2->F-またはSO4
2->HPO4
2->アセテート>Cl->Br->NO3
->ClO3
->I->ClO4
->SCN-
【0048】
例示的な陽イオンの順序は、通常、以下のように与えられる。
N(CH3)4
+>Cs+>Rb+>NH4
+>K+>Na+>Li+>Mg2+>Ca2+>グアニジニウム
【0049】
例示的な相対的に穏やかなカオトロピック剤としては、NaSCN、NaCO3、KSCN、NH4SCN、LiSCN、LiClO4、硫酸グアニジンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、相対的に穏やかなカオトロピック剤は、NaSCNまたはNaCO3である。
【0050】
相対的に穏やかなカオトロピック剤としては、タンパク質を可溶化する上でMg2+より弱い陽イオンと対を成した強い陰イオン、SCN-を有する塩;タンパク質を可溶化する上でMg2+より弱い陽イオンと対を成した強い陰イオン、ClO4
-を有する塩;およびタンパク質を可溶化する上でNH4
+より強い陽イオンと対を成した弱い陰イオン、CO3
2-を有する塩が挙げられ得る。
【0051】
相対的に穏やかなカオトロピック剤(例えば、NaSCN)は、GuSCNまたはGuClなどのより強いカオトロピック剤とRbSCNなどのより弱いカオトロピック剤の間で望ましいバランスを取る。このようなより少ない侵襲性のカオトロピック剤は、典型的には、試料、特に、複雑な試料(例えば、便試料)を溶解するための機械的破壊などのさらなる機構を必要とする。しかしながら、より少ない侵襲性のカオトロピック剤は、生体分子を下流の単離または検出工程用に利用可能にするために、ホモジナイゼーションの間に生体分子を効果的に可溶化することができる。他方、強いカオトロピック剤および界面活性剤(例えば、SDS)は、完全な細胞溶解を達成することができるが、生体分子の分解(例えば、核酸の分解)という犠牲を生じる。より少ない侵襲性のカオトロピック剤は、このような生体分子の分解を最小限に抑えながら、生体分子(例えば、核酸)を可溶化することができる点で特有である。
【0052】
溶解試薬中の相対的に穏やかなカオトロピック剤の濃度は、0.05~5M、例えば、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の相対的に穏やかなカオトロピック剤の最終濃度は、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mであり得る。
【0053】
例えば、溶解試薬中のNaSCNの濃度は、0.5~2M、好ましくは、0.8~1.2Mであり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中のNaSCNの最終濃度は、0.1~1.8M、好ましくは、0.5~1.1Mであり得る。
【0054】
溶解試薬中のNa2CO3の濃度は、0.05~0.2M、好ましくは、0.08~0.12Mであり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中のNa2CO3の最終濃度は、0.01~0.4M、好ましくは、0.04~0.15Mであり得る。
【0055】
複数の相対的に穏やかなカオトロピック剤が溶解試薬中に存在する場合、溶解試薬中の合わせたカオトロピック剤の総濃度は、0.05~5M、例えば、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にあり得る。溶解試薬中の個々のカオトロピック剤の濃度は、0.01~4.5M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4.5M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4.5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4.5M、1~2Mまたは1~4.5M、好ましくは、0.01~0.5Mまたは0.1~2Mの範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の合わせたカオトロピック剤の総最終濃度は、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mであり得る。可溶化液中の個々のカオトロピック剤の最終濃度は、0.001~3.5M、例えば、0.001~0.01M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~3.5M、0.001~0.1M、0.001~0.5M、0.001~1M、0.001~1.5M、0.001~2M、0.001~3.5M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~3.5M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~3.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~3.5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~3.5M、1~2Mまたは1~3.5M、好ましくは、0.01~0.5Mまたは0.1~2Mであり得る。
【0056】
1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤に加えて、溶解試薬は1またはそれを超えるホスフェートをさらに含み得る。ホスフェートは、土壌粒子の均一な破壊を達成し、土壌有機物を可溶化し、土壌から腐植質の物質を抽出する上で特に有用である。さらに、理論に拘泥することを望むものではないが、遊離のホスフェート基(PO4
3-)も、阻害物質除去剤と競合的に相互作用することによって、阻害物質除去剤(例えば、AlCl3)と核酸のホスホジエステル基との間での錯体形成も防止または低減すると考えられる。例示的なホスフェートとして、ホスフェート一塩基性、ホスフェート二塩基性およびホスフェート三塩基性ならびに1またはそれを超える遊離のホスフェート基を含有するその他の化合物、例えば、リン酸ナトリウム一塩基性、リン酸ナトリウム二塩基性、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム一塩基性、リン酸カリウム二塩基性、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム一塩基性、リン酸アンモニウム二塩基性、リン酸アンモニウム、リン酸リチウム一塩基性、リン酸リチウム二塩基性、リン酸リチウム、リン酸三ナトリウム、ポリ(ビニルホスホン酸)ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロホスフェート、三リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、その他のリン含有オキシアニオンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。ホスフェート中の陽イオン部分としては、アンモニウム、ナトリウム、カリウムおよびリチウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
溶解試薬中のホスフェートの濃度は、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mであり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中のホスフェートの最終濃度は、0.01~0.4M、好ましくは、0.1~0.2Mであり得る。複数のホスフェートが溶解試薬中に存在する場合、溶解試薬中の合わせたホスフェートの総濃度は、0.05~0.5M、好ましくは0.1~0.2Mの範囲にあり得る。溶解試薬中の個々のホスフェートの濃度は、0.01~0.45M、例えば、0.01~0.1M、0.1~0.2M、0.2~0.3M、0.3~0.45M、好ましくは、0.01~0.2Mの範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の合わせたホスフェートの総最終濃度は、0.01~0.4M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.4M、好ましくは、0.1~0.2Mであり得る。可溶化液中の個々のホスフェートの最終濃度は、0.001~0.35M、例えば、0.001~0.01M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.35M、0.1~0.2M、0.2~0.35M、好ましくは、0.01~0.2Mの範囲にあり得る。
【0058】
溶解試薬としては、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性(ドデシル硫酸ナトリウム)または双性イオン性界面活性剤などの、1またはそれを超える界面活性剤も挙げることができる。例示的な界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、サルコシル、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、コール酸、デオキシコール酸、ベンズアミドタウロコーレート(BATC)、オクチルフェノールポリエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、tert-オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール、1,4-ピペラジンビス-(エタンスルホン酸)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100)、(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(TRITON(登録商標)X-114)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
溶解試薬中の合わせた界面活性剤の総濃度は、界面活性剤が液体であれば、0.01%~15%(v/v)の範囲にあり得、または界面活性剤が固体であれば、0.01%~15%(w/v)の範囲にあり得る。溶解試薬中の個々の界面活性剤の濃度は、0.001~15%、例えば、0.005~12%、0.01~10%、0.1~8%、0.05~6%、0.1~4%、0.5~2%、0.8~1%、好ましくは、0.01~15%の範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の合わせた界面活性剤の総最終濃度は、0.005%~12%、例えば、0.005%~0.05%、0.05%~0.5%、0.5%~5%、5%~12%、0.05%~10%、0.1%~10%または0.5%~5%であり得る。溶解試薬中の個々の界面活性剤の総最終濃度は、0.001~12%、例えば、0.005~10%、0.01~8%、0.05~6%、0.05~6%、0.1~4%、0.2~2%、0.5~1%、好ましくは、0.001~12%の範囲にあり得る。
【0060】
ある他の実施形態において、溶解試薬は、SDSなどの界面活性剤を一切含まない。
【0061】
溶解試薬は、試料中の混入物質と溶解および可溶化の間に遊離された核酸との間の相互作用をブロックしまたは低減する1またはそれを超えるブロッキング剤をさらに含有し得る。例示的なブロッキング剤としては、カゼイン、ポリアクリル酸およびポリスチレンスルホネートが挙げられる。このようなブロッキング剤は、正に帯電した基(例えば、金属イオン)を有する試料中の粒子(例えば、土壌粒子)と試料から放出された核酸との間の静電的相互作用をブロックする上で有用である。このような相互作用は、妨害しなければ、試料からの核酸収率の著しい減少を引き起こし得る。
【0062】
溶解試薬中の合わせたブロッキング剤の総濃度は、0.01~0.5Mの関連する官能基(例えば、ポリアクリル酸の場合には、カルボキシレート;スルホネート、ホスフェート)の範囲にあり得る。溶解試薬中の個々のブロッキング剤の濃度は、0.001~0.5Mの範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の合わせたブロッキング剤の総最終濃度は、2~400mMの範囲にあり得る。溶解試薬中の個々のブロッキング剤の最終濃度は、0.2~400mMの範囲にあり得る。ある他の実施形態において、溶解試薬は、ブロッキング剤を一切含まない。
【0063】
溶解試薬は、上記カオトロピック剤またはホスフェート以外に1またはそれを超える塩をさらに含有し得る。例示的な塩としては、NaCl、NaF、LiCl、NaBr、NaI、RbCl、CsCl、RbBr、CsBr、RbI、Cslおよびこれらの組み合わせが挙げられる。溶解試薬中の合わせた塩の総濃度は、10~500mM、例えば、30~300mMまたは50~200mMの範囲にあり得る。溶解試薬中の個々の塩の濃度は、1~500mM、例えば、10~200mMまたは25~100mMの範囲にあり得る。ある他の実施形態において、溶解試薬は、さらなる塩(例えば、NaCl)を一切含まない。
【0064】
溶解試薬は、溶解が安定なpHで起こるように、1またはそれを超える緩衝物質をさらに含有し得る。溶解試薬のpHは、pH6~pH12、例えば、pH6~pH8、pH7~pH9、pH8~pH10およびpH8~pH11およびpH7~pH10の範囲にあり得る。
【0065】
いずれも上述されているとおりの1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤と1またはそれを超えるホスフェートとを含む、から本質的になる、またはからなる溶解試薬は、その固体状態であり得る。好ましくは、溶解試薬は、1またはそれを超える上記相対的に穏やかなカオトロピック剤と、1またはそれを超える上記ホスフェートと、水とを含む、から本質的になる、またはからなる溶液である。好ましくは、1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤は、NaSCNもしくはNaCO3、特にNaSCNを含み、またはNaSCNもしくはNaCO3、特にNaSCNである1。またはそれを超えるホスフェートは、好ましくは、リン酸ナトリウム二塩基性を含み、またはリン酸ナトリウム二塩基性である。例示的な好ましい溶解試薬は、0.5~2M NaSCNおよび0.1~0.2M Na2HPO4を含み、から本質的になり、またはからなる。別の例示的な好ましい溶解試薬は、0.05~0.5M Na2CO3および0.1~0.2M Na2HPO4を含み、から本質的になり、またはからなる。
【0066】
C. 溶解過程
本明細書において提供される試料から可溶化液を調製するための方法は、関心対象の生体分子に適した条件下で、このような分子の著しい分解なしに生体分子を可溶化するのに十分な時間、試料を上記1またはそれを超える溶解試薬と接触させることを含む。以下に記載されている本開示のある態様は核酸の単離に焦点を当てているが、上記溶解試薬は、核酸の単離のために試料を溶解するのに有用であるのみならず、タンパク質を単離する、精製するおよび/または検出するなどの他の目的のために試料を溶解するのにも有用である。
【0067】
1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤と1またはそれを超えるホスフェートとを含む、から本質的になる、またはからなる溶解試薬は、物理的破壊および酵素的溶解などの1またはそれを超える他の試料溶解方法と組み合わせて使用され得る。
【0068】
試料の物理的破壊としては、超音波処理、温度変化、機械力、剪断力、機械的振動もしくはボルテックス装置を使用する機械的破壊またはこのような方法の1つの組み合わせが挙げられる。
【0069】
機械的破壊としては、ビードビーティングおよび/またはホモジナイズ法の使用が挙げられ得る。機械的破壊のために有用なビーズは、ガラス、セラミック、金属、鉱物(mineral)またはこのような材料の2またはそれより多くの1つの組み合わせから作られ得る、またはこれらを含み得る。ビーズのサイズは、0.05mm~3mmの範囲であり得る。例示的なビーズとしては、0.7mmガーネットビーズ、0.15mmガーネットビーズ、0.1mmガラスビーズ、0.5mmガラスビーズ、0.1mmセラミックビーズ、0.5mmセラミックビーズ、1.4mmセラミックビーズ、0.1mmイットリウム安定化ジルコニウムビーズ、0.5mmイットリウム安定化ジルコニウムビーズ、またはこのようなビーズの1つの組み合わせ(例えば、同じ量の0.1mmガラスビーズと0.5mmガラスビーズ)が挙げられる。ある好ましい実施形態において、ビーズは、少なくとも6.0の密度(g/cc)を有する高密度ビーズ、例えば、イットリウム安定化ジルコニウムビーズ、セリウム安定化ビーズおよびステンレス鋼ビーズである。ビードビーティングは、TissueLyzer II(QIAGEN)、AMBION(商標)Vortex Adapter(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)およびOmini Bead Rupter Homogenizer、OMNI Int’l、Kennesaw,GA)およびOPS Diagnosticsによる様々なホモジナイズ装置などの、ビーズチューブアダプターまたはビードビーターとともにボルテックス混合器を用いて実施され得る。ビードビーティングの速度および期間は、試料の種類およびサイズに応じて変動し得る(例えば、Gibbonsら、Bead Beating:A Primer、OPS Diagnostics、LLC参照)。例えば、ビードビーティングは、ビードビーターの最大速度で、1~20分間、例えば、5~10分間、10~20分間または5~15分間、実施され得る。
【0070】
本明細書に開示されている溶解試薬は、好ましくは、便試料などの複雑な試料から生体分子(例えば、DNA、RNAおよび/またはタンパク質)を単離する上で、機械的破壊(例えば、ビードビーティング)と組み合わせて使用される。生体分子は、微生物起源であり得る。
【0071】
溶解試薬は、酵素的溶解と組み合わせても使用され得、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼなどの使用が含まれる。
【0072】
タンパク質を単離するための可溶化液を生成するために溶解試薬が使用される場合、溶解は、タンパク質変性を回避または軽減するために、低温(例えば、4℃)で実施され得る。単離されたタンパク質の下流の分析(例えば、質量分光分析)が変性されていないタンパク質を必要としないいくつかの他の実施形態において、溶解は、より高い温度(例えば、20~25℃)で実施され得る。さらに、一般的に、プロテアーゼは、溶解試薬中に含まれない。代わりに、好ましくは、試料溶解およびその後のタンパク質単離の間にタンパク質分解を防止または軽減するために、試料溶解の直前に、試料材料、溶解試薬または試料材料と溶解試薬の混合物に、プロテイナーゼ阻害物質(例えば、Thermo Fisherから得られるHaltプロテアーゼ阻害物質)が添加される。同様に、酸化によって引き起こされるタンパク質又は酵素の活性の喪失を回避するために、試料溶解の直前に、還元剤(例えば、β-メルカプトエタノール)が、試料材料、溶解試薬または試料材料と溶解試薬の混合物に添加され得る。
【0073】
得られた可溶化液は、試料から生体分子を単離する方法中のその後の工程(例えば、阻害物質除去)において直接使用され得る。好ましくは、可溶化液は、ろ過、沈降または好ましくは遠心分離によって、試料から放出された生体分子を含む液相と、試料からの固体粒子または残留物を含有する固相とに分離される。得られた液相(すなわち、上清)またはその一部は、生体分子を単離し、および/または阻害物質を除去するために使用され得る。
【0074】
D. キット
関連する態様において、本開示は、(a)上記溶解試薬、または(b)別々に提供される溶解試薬の、1またはそれを超えるホスフェートと1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤とを含む、試料から可溶化液を調製するためのキットを提供する。
【0075】
キットは、試料(例えば、便試料)を機械的に破壊するために、ホモジナイズ材料(すなわち、ビーズ、好ましくは、高密度ビーズなどの、試料をホモジナイズする上で有用な物質)をさらに含み得る。
【0076】
キットは、1またはそれを超えるタンパク質沈殿剤として機能する1またはそれを超える第一の剤をさらに含み得る。例示的なタンパク質沈殿剤としては、以下に記載されているとおり、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム、好ましくは、酢酸ナトリウムおよび酢酸セシウムが挙げられる。
【0077】
または、キットは、試料中のタンパク質の官能基を競合的に結合し、これにより、このような基が試料から混入物を枯渇させる上で有用な多価の塩の多価の陽イオンと相互作用するのを抑制する1またはそれを超える分子スクリーンとして機能する1またはそれを超える第一の剤をさらに含み得る。このような剤は、タンパク質および必要に応じてその他の生体分子(例えば、核酸)を単離するための可溶化液を生成する上で有用である。分子スクリーンは、低分子量カルボキシレート、低分子量サルフェート、カルボキシレートポリマー、スルホン化ポリマーおよびこれらの複数の混合物から選択され得る。例示的な分子スクリーンとしては、アミノ酸;短鎖脂肪酸の塩、例えば、酪酸ナトリウム;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;ポリアクリル酸ナトリウム;好ましくは、硫酸アンモニウム、グリコール酸アンモニウム、スルホ酢酸、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム、β-アラニン、硫酸グアニジン、ヒスチジン、グリシンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
第一の剤のいくつか(例えば、酢酸アンモニウム)は、相対的に高濃度において(例えば、以下に記載されているとおりの、可溶化液、第一の剤および1またはそれを超える第二の剤を含む混合物中で1~2Mにおいて)タンパク質沈殿剤として機能し得るが、相対的に低い濃度において(例えば、タンパク質沈殿剤として機能するときの濃度より5~15倍低い濃度において)分子スクリーンとして機能し得る。
【0079】
キットは、1またはそれを超える阻害物質除去剤として機能する1またはそれを超える第二の剤をさらに含み得る。例示的な阻害物質除去剤としては、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムアルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、酸化カルシウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、阻害物質除去剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤は、固体形態でまたは溶液として組成物を形成し得る。
【0081】
組成物が溶液であり、1またはそれを超える第一の剤がタンパク質沈殿剤として機能する実施形態においては、溶液中の1もしくはそれを超える第一の剤の総濃度は、0.5M~10M、1~8Mまたは1.5~7.5M、好ましくは、0.5~5M、0.5~7.5M、2.5~5M、2.5~7.5M、1~8Mもしくは1.5~7.5Mの範囲にあり;ならびに/または、溶液中の1もしくはそれを超える第二の剤の総濃度は、10~500mM、例えば、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~500mM、10~200mM、10~300mM、10~400mM、100~300mM、100~400mM、100~500mM、200~400mM、200~500mM、および300~500mM、好ましくは、10~200mM、10~500mM、50~200mM、50~500mMまたは75~150mMの範囲にある。組成物が複数の第一の剤を含む場合、個々の第一の剤の濃度は、0.1~9.5M、例えば、0.1~0.5M、0.5~2.5M、2.5~5M、5~7.5M、7.5~9.5M、0.1~2.5M、0.1~5M、0.1~7.5M、0.5~5M、0.5~7.5M、0.5~9.5M、2.5~7.5M、2.5~9.5M、5~9.5M、好ましくは、0.1~5M、0.5~7.5M、2.5~5M、2.5~7.5M、1~8Mまたは1.5~7.5Mの範囲にあり得る。組成物が複数の第二の剤を含む場合、個々の第二の剤の濃度は、1~450mM、例えば、1~10mM、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~450mM、1~200mM、1~300mM、1~400mM、1~450mM、100~300mM、100~400mM、100~450mM、200~400mM、200~450mM、300~450mM、好ましくは、1~200mM、10~450mM、50~200mM、50~450mMまたは75~150mMの範囲にあり得る。
【0082】
組成物が溶液であり、1またはそれを超える第一の剤が分子スクリーンとして機能する実施形態においては、溶液中の1もしくはそれを超える第一の剤の総濃度は、0.1~1M、例えば、0.1~0.25M、0.25~0.5M、0.5~0.75M、0.75~1M、0.1~0.5M、0.1~0.75M、0.25~0.75M、0.1~0.95M、0.25~1Mもしくは0.5~1M、好ましくは、0.1~0.75Mの範囲にあり;ならびに/または、溶液中の1もしくはそれを超える第二の剤の総濃度は、10~500mM、例えば、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~500mM、100~300mM、100~400mM、100~500mM、200~400mM、200~500mM、300~500mM、好ましくは、10~200mM、10~500mM、50~200mM、50~500mMまたは75~150mMの範囲にある。組成物が複数の第一の剤を含む場合、個々の第一の剤の濃度は、0.01~0.95M、例えば、0.01~0.1M、0.1~0.25M、0.25~0.5M、0.5~0.75M、0.75~0.95M、0.01~0.25M、0.01~0.5M、0.01~0.75M、0.1~0.5M、0.1~0.75M、0.25~0.75M、0.25~0.95Mまたは0.5~0.95M、好ましくは、0.01~0.75Mの範囲にあり得る。組成物が複数の第二の剤を含む場合、個々の第二の剤の濃度は、1~450mM、例えば、1~10mM、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~450mM、100~300mM、100~400mM、100~450mM、200~400mM、200~450mM、300~450mM、好ましくは、1~100mM、10~200mM、10~450mM、50~200mM、50~450mMまたは75~150mMの範囲にあり得る。
【0083】
キットは、1またはそれを超える以下の成分をさらに含み得る。
タンパク質結合溶液、
タンパク質洗浄溶液、
タンパク質溶出溶液、
核酸結合固体支持体(例えば、DNA結合固体支持体、RNA結合固体支持体およびDNAとRNAの両方を結合することができる固体支持体)、
DNA結合溶液、
DNA洗浄溶液、
DNA溶出溶液、
RNA結合溶液、
RNA洗浄溶液、
RNA溶出溶液、および
1またはそれを超える器(vessels)または容器(containers)(例えば、収集チューブ)。
【0084】
「タンパク質結合溶液」は、タンパク質結合固体支持体へのタンパク質の結合を容易にするまたは強化する溶液を表す。結合溶液は、緩衝溶液(例えば、シトレート緩衝液)および1またはそれを超える塩(例えば、NaCl)を含み得る。結合混合物中の塩の最終濃度は、1~5M、例えば、2~3Mの範囲にあり得る。
【0085】
「タンパク質結合固体支持体」は、タンパク質一般(すなわち、全タンパク質)または関心対象の特定のタンパク質を含むタンパク質を結合することができる固体支持体を表す。例示的なタンパク質結合固体支持体としては、シリカスピンフィルター膜、シリカスピンカラム、シリカ被覆された磁気ビーズ、珪藻土およびシリカ粒子の細分された懸濁液が挙げられる。
【0086】
「タンパク質洗浄溶液」は、タンパク質結合固体支持体に結合されたタンパク質から混入物を除去する上で有用な溶液、例えば、エタノールを含有する溶液を表す。
【0087】
「タンパク質溶出溶液」は、タンパク質結合固体支持体に結合されたタンパク質を溶出する上で有用な溶液を表す。例示的なタンパク質溶出溶液としては、界面活性剤(例えば、SDS)を必要に応じて含有する緩衝溶液(例えば、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液)が挙げられる。
【0088】
核酸の単離において有用な固体支持体および溶液は、以下の「核酸の単離」の節に記載されているとおりである。
【0089】
関連する態様において、本開示は、可溶化液を調製するおよび/または試料から生体分子を単離する上での上記キットの使用を提供する。
【0090】
II. 核酸の単離
別の態様において、本開示は、試料から核酸を単離するための方法であって、
(a) 混合物を得るために、試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤ならびに塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と接触させること、
(b) 工程(a)の前記混合物を、固相および液相に分離すること、ここで、前記1またはそれを超える第二の剤は、主として前記固相中にあり、ならびに
(c) 工程(b)の前記液相から核酸を単離すること、
を含む、方法を提供する。
【0091】
A. 方法
1. 試料の溶解
本明細書において提供される方法に従って核酸を単離するための試料は、生体試料、環境試料および食品試料など、核酸を含有する任意の試料、特に、単離された核酸の調製物中に存在する場合、単離された核酸の下流での分析を妨害し得る阻害物質を含有する試料であり得る。
【0092】
様々な種類の試料は、上の節「I.試料の溶解、サブセクション「A.試料」に記載されているとおりである。好ましい試料としては、土壌試料および便試料が挙げられる。
【0093】
出発材料として必要とされる試料の量は、試料から単離された核酸の下流での分析に応じて変動し得る。阻害物質を枯渇させながら核酸を単離する上でのその高い効率性のために、本開示の方法は、グラム試料当たりの核酸の取得量を犠牲にすることなく、伝統的に必要とされる(例えば、2グラム)より、少量の出発材料(例えば、1グラム未満、0.5グラム未満または0.25グラム未満)の使用を可能にする。例えば、出発材料は、0.01グラム~1グラム、0.01グラム~0.5グラム、0.01グラム~0.25グラム、0.05グラム~1グラム、0.05グラム~0.5グラム、0.05グラム~0.25グラム、0.1グラム~1グラム、0.1グラム~0.5グラムまたは0.1グラム~0.25グラムの範囲にあり得る。
【0094】
試料を収集した後に、核酸を放出するために、このような分子が単離される前に、試料は、通例、溶解される。試料の溶解は、阻害物質の除去と同時に、好ましくは、阻害物質の除去より前に実施され得る。
【0095】
試料の溶解は、物理的破壊、化学的溶解、酵素的溶解またはこれらの組み合わせによって実施され得る。試料中に存在する所定の試料の種類および生物に応じて、異なる試料破壊方法を使用し得る。例えば、ヒト細胞およびウイルスのキャプシドは塩または界面活性剤によって容易に溶解されるが、細菌の芽胞または接合子嚢は、より侵襲性の高い化学的、酵素的または物理的方法を必要とする。
【0096】
物理的な破壊および酵素的溶解は、上の節「I.試料の溶解、サブセクション「C.溶解過程」に記載されているとおりである。
【0097】
化学的溶解としては、1またはそれを超えるカオトロピック剤を含む溶解試薬の使用が挙げられる。例示的なカオトロピック剤としては、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジン、尿素またはリチウム塩が挙げられる。好ましくは、1またはそれを超えるカオトロピック剤は、上の節「I.試料の溶解、サブセクション「B.溶解試薬」に記載されているとおりの相対的に穏やかなカオトロピック剤である。
【0098】
溶解試薬中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の総濃度は、
0.05~5M、例えば、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~5M、1~2Mまたは1~5M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mの範囲にあり得る。複数のカオトロピック剤が溶解試薬中に存在する場合、溶解試薬中の個々のカオトロピック剤の濃度は、0.01~4.5M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4.5M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4.5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4.5M、1~2Mまたは1~4.5M、好ましくは、0.01~0.5Mまたは0.1~2Mの範囲にあり得る。
【0099】
可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の1またはそれを超えるカオトロピック剤の最終総濃度は、0.01~4M、例えば、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~4M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~4M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~4M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~4M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~4M、1~2Mまたは1~4M、好ましくは、0.05~0.5Mまたは0.5~2Mであり得る。複数のカオトロピック剤が可溶化液中に存在する場合、可溶化液中の個々のカオトロピック剤の濃度は、0.001~3.5M、例えば、0.001~0.01M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~3.5M、0.001~0.1M、0.001~0.5M、0.001~1M、0.001~1.5M、0.001~2M、0.001~3.5M、0.01~0.1M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~3.5M、0.05~0.5M、0.05~1M、0.05~1.5M、0.05~2M、0.05~2M、0.05~3.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~3.5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~3.5M、1~2Mまたは1~3.5M、好ましくは、0.01~0.5Mまたは0.1~2Mの範囲にあり得る。
【0100】
溶解試薬は、上の「試料の溶解」の節に記載されているように、1またはそれを超えるホスフェートをさらに含み得る。溶解試薬中の1またはそれを超えるホスフェートの総濃度は、0.05~0.5M、好ましくは、0.1~0.2Mであり得る。溶解試薬中の個々のホスフェートの濃度は(複数のホスフェートが溶解試薬中に存在する場合)、0.01~0.45M、例えば、0.01~0.1M、0.1~0.2M、0.2~0.3M、0.3~0.45M、好ましくは、0.01~0.2Mの範囲にあり得る。可溶化液(すなわち、試料と溶解試薬の混合物)中の1またはそれを超えるホスフェートの最終総濃度は、0.01~0.4M、好ましくは、0.1~0.2Mであり得る。可溶化液中の個々のホスフェートの最終濃度は(複数のホスフェートが可溶化液中に存在する場合)、0.001~0.35M、例えば、0.001~0.01M、0.01~0.05M、0.05~0.1M、0.1~0.35M、0.1~0.2M、0.2~0.35M、好ましくは、0.01~0.2Mの範囲にあり得る。
【0101】
溶解試薬は、溶解が安定なpHで起こるように、1つまたはそれを超える以下の成分:1またはそれを超える界面活性剤、1またはそれを超えるブロッキング剤、1またはそれを超える上記カオトロピック剤またはホスフェート以外の塩および1またはそれを超える緩衝物質をさらに含み得る。このような追加の成分およびそれらの濃度も、上記節「I.試料の溶解、サブセクション「B.溶解試薬」に記載されているとおりである。
【0102】
好ましくは、上記節「I.試料の溶解、サブセクション「B.溶解試薬」に記載されている1またはそれを超える相対的に穏やかなカオトロピック剤および1またはそれを超えるホスフェートを含む溶解試薬が、本明細書において提供される試料から核酸を単離するための方法において使用される。
【0103】
試料の可溶化液は、本明細書に開示されている核酸を単離する方法中の工程(a)において直接使用され得る。好ましくは、可溶化液は、ろ過、沈降または好ましくは遠心分離によって、試料から放出された核酸を含む液相と、試料からの固体粒子または残留物を含有する固相とに分離される。得られた液相(すなわち、上清)またはその一部は、核酸を単離し、阻害物質を除去するために使用され得る。
【0104】
2. 阻害物質の除去
本明細書において提供される方法は、試料から核酸を単離し、単離された核酸から阻害物質を除去し、単離された核酸の効果的な下流での分析を可能にする。具体的には、本明細書に開示されている方法の工程(a)は、混合物を得るために、試料、前記試料の可溶化液、前記試料の上清または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部を、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤ならびに塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と接触させることである。工程(b)は、工程(a)の混合物を固相および液相に分離することであり、ここで、1またはそれを超える阻害物質除去剤は、主として前記固相中にあり、したがって、液相から除去され、その後、核酸を単離する上で使用される。
【0105】
1またはそれを超える第一の剤は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウム、好ましくは酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸セシウムから選択される。
【0106】
ある実施形態において、1またはそれを超える第一の剤は、塩化ナトリウムまたは酢酸カリウムを含まない。
【0107】
工程(a)の混合物中の合わせた第一の剤の総濃度は、0.1~3M、例えば、0.1~0.25M、0.1~0.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~2.5M、0.1~3M、0.25~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~2.5M、2.5~3M、0.25~1M、0.25~1.5M、0.25~2M、0.25~2.5M、0.25~3M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~2.5M、0.5~3M、1~2M、1~2.5M、1~3M、2~3M、好ましくは0.5~2.5Mまたは1~2Mの範囲にあり得る。複数の第一の剤が工程(a)の混合物中に存在する場合、工程(a)の混合物中の個々の第一の剤の濃度は、0.01~2.5M、例えば、0.01~0.1M、0.1~0.25M、0.25~0.5M、0.5~1M、1~1.5M、1.5~2M、2~2.5M、0.01~0.5M、0.01~1M、0.01~1.5M、0.01~2M、0.01~2.5M、0.1~0.5M、0.1~1M、0.1~1.5M、0.1~2M、0.1~2.5M、0.25~1M、0.25~1.5M、0.25~2M、0.25~2.5M、0.5~1.5M、0.5~2M、0.5~2.5M、1~2M、1~2.5M、好ましくは、0.1~2Mまたは0.5~2Mの範囲にあり得る。
【0108】
1またはそれを超える第一の剤は、工程(a)において、タンパク質沈殿剤として機能し得、「タンパク質沈殿剤」と称され得る。
【0109】
1またはそれを超える第二の剤は、阻害物質除去剤として機能し、「阻害物質除去剤」と称され得る。阻害物質除去剤は、3または4の原子価を有する陽イオンを含有する3価または4価の塩である。例示的な阻害物質除去剤としては、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)およびこれらの組み合わせ、好ましくは、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、より好ましくは、塩化アルミニウムが挙げられる。
【0110】
工程(a)の混合物中の1またはそれを超える第二の剤の総濃度は、1~150mM、例えば、1~5mM、5~25mM、25~50mM、50~75mM、75~100mM、100~150mM、1~25mM、1~50mM、1~75mM、1~100mM、1~150mM、5~50mM、5~75mM、5~100mM、5~150mM、25~75mM、25~100mM、25~150mM、50~100mM、50~150mM、75~150mM、好ましくは、5~25mMまたは5~50mMの範囲にあり得る。複数の第二の剤が工程(a)の混合物中に存在する場合、工程(a)の混合物中の個々の第二の剤の濃度は、0.1~145mM、例えば、0.1~1mM、1~5mM、5~25mM、25~50mM、50~75mM、75~100mM、100~145mM、0.1~5mM、0.1~25mM、0.1~50mM、0.1~75mM、0.1~100mM、0.1~145mM、1~25mM、1~50mM、1~75mM、1~100mM、1~145mM、5~50mM、5~75mM、5~100mM、5~145mM、25~75mM、25~100mM、25~145mM、50~100mM、50~145mM、75~145mM、好ましくは、1~25mMまたは5~50mMの範囲にあり得る。
【0111】
沈殿剤として機能する場合を含む上記第一の剤のいずれもが、阻害物質除去剤として機能する場合を含む上記第二の剤のいずれとも組み合わされて、本明細書において提供される方法の阻害物質除去過程において使用され得る。例えば、酢酸アンモニウムは、以下の阻害物質除去剤:塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)またはこれらの組み合わせと組み合わされ得る。同様に、酢酸ナトリウムは、以下の阻害物質除去剤:塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)またはこれらの組み合わせと組み合わされ得、酢酸セシウムは、以下の阻害物質除去剤:塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ジルコニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)またはこれらの組み合わせと組み合わされ得る。別の選択肢は、塩化アルミニウムを、以下のタンパク質沈殿剤:酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムまたはこれらの組み合わせと組み合わせることである。さらに、2またはそれを超える上記第一の剤のいずれもが、本明細書において提供される方法の阻害物質除去過程において、上記第二の剤のいずれとも組み合わせて使用され得;上記第一の剤のいずれもが、本明細書において提供される方法の阻害物質除去過程において、2またはそれを超える上記第二の剤のいずれとも組み合わせて使用され得;2またはそれを超える上記第一の剤のいずれもが、本明細書において提供される方法の阻害物質除去過程において、2またはそれを超える上記第二の剤のいずれとも組み合わせて使用され得る。
【0112】
第一の剤および第二の剤の好ましい組み合わせとしては、酢酸アンモニウムと塩化アルミニウム、酢酸ナトリウムと塩化アルミニウム、酢酸セシウムと塩化アルミニウムが挙げられる。
【0113】
工程(a)では、試料、前記試料の可溶化液もしくは前記可溶化液の上清または前記試料、前記可溶化液もしくは前記上清の一部(「試料材料」と総称される)を、まず、1またはそれを超える第一の剤と接触させ得る。試料材料と1またはそれを超える第一の剤を混合した後に、得られた混合物は、例えば、沈殿、遠心分離またはろ過によって、固相と液相に分離され得、次いで、液相を、1またはそれを超える第二の剤と接触させる。好ましくは、試料材料を1またはそれを超える第一の剤と接触させることと、得られた混合物を1またはそれを超える第二の剤と接触させることとの間に、固相と液相の分離は起こらない。換言すれば、好ましくは、1またはそれを超える第一の剤との接触から生じた混合物は、1またはそれを超える第二の剤とさらに混合されるべき上清を生成するために遠心分離、ろ過、沈殿またはその他の処理をされない。
【0114】
または、試料材料は、まず、1またはそれを超える第二の剤と、次いで、1またはそれを超える第一の剤と接触させ得る。このような実施形態においては、試料材料と1またはそれを超える第二の剤の混合物は、好ましくは、1またはそれを超える第一の剤とさらに混合されるべき上清を生成するために遠心分離、ろ過またはその他の処理をされない。
【0115】
好ましくは、試料材料は、1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤と同時に接触させる。例えば、試料材料は、1またはそれを超える第一の剤と1またはそれを超える第二の剤とを含む組成物(例えば、溶液)と混合され得る。1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤ならびに例示的な好ましい溶液の濃度は、以下の「組成物」のサブセクション中に詳しく記載されている。
【0116】
工程(a)の混合物は、その固相をその液相から分離するために、工程(b)において遠心分離され、ろ過され、沈殿され、またはその他処理され、ここで、前記1またはそれを超える第二の剤は、主として(50%を超えて)固相中にある。1またはそれを超える第二の剤は、試料由来の阻害物質およびその他の混入材料と複合体を形成し、ここで、複合体は、工程(b)において、沈殿され、またはその他液相から除去される。
【0117】
ある実施形態において、1またはそれを超える第二の剤の60%、70%または80%、好ましくは、90%超、またはより好ましくは、95%超が、工程(b)において、液相から除去される。
【0118】
本明細書において使用される用語「阻害物質」は、試料から単離されたDNAおよび/またはRNAを伴う反応を妨害し、DNAおよび/またはRNAの操作に対して有害な効果を有する任意の物質を表す。阻害物質としては、例えば、基質としてDNAまたはRNAを使用する酵素反応の阻害物質およびDNAまたはRNAのハイブリッド形成を破壊する混入物質が挙げられる。
【0119】
試料の種類に応じて、阻害物質は異なり得る。例えば、便試料中の阻害物質としては、ヘモグロブリンおよびその代謝物、ビリルビン、胆汁酸および胆汁酸誘導体、消化されていないもしくは部分的に消化された繊維または消化されていないもしくは部分的に消化された食物ならびに多糖が挙げられる。
【0120】
土壌試料由来の阻害物質は、微生物が植物残渣を分解するときに形成される腐植質の物質を含み、金属イオンおよび粘土鉱物へのその反応部位の共有結合によって分解に対して安定化される。阻害物質は、糖類、ペプチドおよびフェノールが付着された多環式芳香族化合物を含む。土壌中の腐植質の物質の主な種類は、フミン酸およびフルボ酸である。さらなる腐植質の物質としては、腐植質のポリマーおよびフミンが挙げられる。
【0121】
さらなる例示的な阻害物質としては、キチン、分解植物材料、コンポスト由来の有機化合物、フェノール類、フェノール系ポリマーまたはオリゴマー、ポリフェノール、多糖およびタンニンが挙げられる。
【0122】
本明細書において提供される方法は、試料から1またはそれを超える阻害物質を実質的に除去することができる。試料材料、必要に応じて溶解試薬、および1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える剤を含む混合物を固相と液相に分離した後に、試料由来の阻害物質の20%もしくはそれ未満、好ましくは、18%もしくはそれ未満、15%もしくはそれ未満、13%もしくはそれ未満、または10%もしくはそれ未満、より好ましくは、5%もしくはそれ未満、3%もしくはそれ未満、2%もしくはそれ未満または1%もしくはそれ未満が液相中に残存する場合、阻害物質は実質的に除去される。
【0123】
ある実施形態において、阻害物質は、単離された核酸のPCR増幅を阻害し、「PCR阻害物質」と称される。本明細書において使用される「PCR増幅」としては、qPCRおよびRT-PCRなどの様々な種類のPCR反応が挙げられる。特定の阻害物質除去過程によるこのような阻害物質の除去は、阻害物質除去過程を用いて単離された核酸を使用するPCR反応のある特徴(例えば、Ct値)を、阻害剤除去過程なしに単離された核酸を用いたPCR反応と比較することによって評価され得る。PCR反応間でのCt値の低下の程度は、PCR阻害物質を枯渇させる上での、阻害物質除去過程の有効性を示し得る。
【0124】
3. 核酸の単離
工程(b)において得られた液相は、続いて、核酸を単離するために使用される。
【0125】
本明細書において使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖核酸を含み、任意のDNA(例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、細菌DNA、酵母DNA、ウイルスDNA、色素体DNA、コスミドDNAおよびミトコンドリアDNA)または任意のRNA(例えば、rRNA、tRNA、mRNAおよびsnRNA)であり得る。
【0126】
溶液からDNA、RNAまたはDNAとRNAの両方を単離するのに適した任意の方法を使用し得る。好ましくは、核酸の単離において、核酸結合固体支持体が使用される。例示的な固体支持体としては、シリカマトリックス、ガラス粒子、珪藻土、磁気ビーズ、ニトロセルロース、ナイロンおよび陰イオン交換材料が挙げられる。固体支持体は、緩い粒子、フィルター、膜、繊維もしくは織物または格子の形態であり得、チューブ、カラム、好ましくはスピンカラムなどの器中に含有され得る。
【0127】
固体支持体への核酸の結合を容易にし、または強化するために、結合溶液を使用され得る。結合溶液は、阻害物質除去過程の間に試料材料をタンパク質沈殿剤および阻害物質除去剤と接触させる前に、試料溶解の間(例えば、溶解試薬の存在下での試料の機械的破壊後)に添加され得る。または、結合溶液は、阻害物質除去過程後に得られた液相に添加され得る。
【0128】
例示的なDNA結合溶液は、カオトロピック剤(例えば、GuSCNまたはGuHCl)、アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール)または両方を含み得る。例示的なDNA結合溶液は、Tris HClなどの緩衝物質をさらに含み得る。
【0129】
DNAとRNAの両方が試料から単離される実施形態においては、DNAの単離とRNAの単離は、平行して実施され得る。換言すれば、工程(b)の液相は、少なくとも2つの部分、すなわち1つはDNA単離用に、1つはRNA単離用に分けられる。好ましくは、DNAおよびRNAは、逐次的に単離される。
【0130】
DNAとRNAを逐次的に単離する方法は、公知である(例えば、米国特許第8,889,393号、国際公開第2004/108925号参照)。好ましくは、DNAを結合するための固体支持体とRNAを結合するための固体支持体とが使用される。DNAを結合するための固体支持体は、RNAを結合するための固体支持体と同一であり得、または異なり得る。同一の固体支持体がDNAおよびRNA単離のために使用される場合、結合する混合物の成分および/またはそれらの濃度を調整することによって、固体支持体へのDNAおよびRNAの差異のある結合が達成され得る。例えば、素通り画分がエタノールと混合され得る間に、まずDNAを結合するためにシリカスピンカラムを使用し得、得られた混合物は、RNAを結合するために第二のシリカスピンカラムに適用される(Triant and Whitehead,Journal of Heredity 100:246-50,2009)。
【0131】
固相に結合した後に、固相に結合されたDNAまたはRNAは洗浄され得、続いて固相から溶出され得る。DNA洗浄溶液は、カオトロピック剤(例えば、GuHCl)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)または両方を含み得る。DNA洗浄溶液は、緩衝物質(例えば、Tris HCl)、キレート剤(例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸))および/または塩(例えば、NaCl)をさらに含み得る。DNA溶出溶液は、緩衝液(例えば、Tris緩衝液)または水であり得る。
【0132】
RNA結合溶液は、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)および必要に応じて別の有機溶媒(例えば、アセトン)を含み得る。RNA洗浄溶液は、1またはそれを超える以下のもの:緩衝物質(例えば、Tris HClおよびTris塩基)、キレート剤(例えば、EDTA)、アルコールおよび塩(例えば、NaCl)を含み得る。RNAは、DEPC処理された水またはその他RNアーゼを含まない水を用いて、固体支持体から溶出され得る。
【0133】
核酸を単離する方法の例示的な実施形態は、以下の実施例13および14により詳しく記載されている。例えば、実施例14において、土壌試料は、試料から核酸およびタンパク質を効率的に可溶化するために、ビードビーティングと組み合わせた溶解試薬によって溶解される。可溶化液は、DNA結合溶液と混合される。DNAはシリカスピンカラムに結合され、次いで、RNAを含有する素通り画分は、第二のシリカスピンカラム上に全RNAを結合する溶液と合わされる。次いで、固定化されたDNAまたはRNAのいずれかを含有する各スピンカラムを洗浄し、固定化されたDNAまたはRNAは溶出される。
【0134】
単離された核酸の収率および純度は、NANODROP(登録商標)ND1000分光光度計(NanoDrop Technologies Inc.,Wilmington,DE)、QUBIT(商標)Fluorometer(Invitrogen Co.,Carlsbad,CA)上でのQUBIT(商標)dsDNA HS Assay Kit(Q32854)およびQUBIT(商標)dsDNA Br Assay Kit(Q32853)、QUANT-IT(商標)High-Sensitivity dsDNA Assay Kit(ThermoFisher)、QUANT-IT(商標)RNA Assay Kitを用いて決定され得る。DNAの収率は、分光光度計および蛍光光度計によって異なって測定され得る。NANODROP(登録商標)分光光度計によって測定されたDNA濃度は、いくつかの事例では、QUBIT(商標)蛍光光度計によって測定されたDNA濃度より高いことが観察されてきた。
【0135】
単離されたDNAおよびRNAの純度は、例えば、NANODROP(登録商標)NDIOOO分光高度計(NanoDrop Technologies Inc.,Wilmington,DE)を用いて、A260/A280nm比、A260/A230nm比およびA340を測定することによって評価され得る。
【0136】
純粋なDNAおよびRNAは、それぞれ、1.8および2.0のA260/A280nm比を有する。タンパク質またはフェノールが著しく混入する場合、A260/A280比は上に与えられた値より低いであろう。
【0137】
A260/A230nm比は、230nmにおいて吸収する混入物の指標である。純粋なDNAおよびRNAは、2.0~2.2のA260/A230nm比を有する。230nmでの著しい吸収は、フェノレートイオン、チオシアネート(thiocvanates)およびその他の有機化合物による混入を示す。
【0138】
340nmにおける吸収(すなわち、A340)は、通常、光散乱によって引き起こされ、粒子状物質の存在を示す。
【0139】
本明細書において提供される方法に従って単離されたDNAは、1またはそれを超える以下の特徴を有し得る。
(1) そのA260/A280は、1.6~2.0、好ましくは、1.7~1.9、より好ましくは、1.75~1.85の範囲にある。
(2) そのA260/A230は、1.0~2.5、好ましくは、1.5~2.2の範囲にある。
(3) そのA340は、0~0.15、好ましくは、0~0.1、より好ましくは、0~0.05の範囲にある。
【0140】
本明細書において提供される方法に従って単離されたRNAは、1またはそれを超える以下の特徴を有し得る。
(1)そのA260/A280は、1.8~2.2、好ましくは、1.9~2.1、より好ましくは、1.95~2.05の範囲にある。
(2) そのA260/A230は、1.0~2.5、好ましくは、1.5~2.2の範囲にある。
(3) そのA340は、0~0.15、好ましくは、0~0.1、より好ましくは、0~0.05の範囲にある。
【0141】
単離されたDNAの完全性は、抽出されたDNAをアガロースゲル上で可視化することによって評価され得る。単離されたRNAの完全性も、ゲル電気泳動を用いて、抽出されたRNAを可視化することによって評価され得る。
【0142】
単離されたDNAは、PCR、qPCR、RT-PCR、ローリングサークル複製、リガーゼ連鎖反応、配列決定(例えば、次世代配列決定、サザン、ドットおよびスロットブロット分析、DNAメチル化分析、質量分析および電気泳動を含む任意の用途において分析または使用され得る。
【0143】
単離されたRNAは、RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、ディファレンシャルディスプレー、cDNA合成、ノーザン、ドット、およびスロットブロット分析、およびマイクロアレイ分析などの任意の用途において分析または使用され得る。
【0144】
B. 組成物
関連する態様において、本開示は、試料から核酸を単離する間に阻害物質を除去する上で有用な組成物を提供する。組成物は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸セシウムおよびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第一の剤と、塩化アルミニウム、酢酸エルビウム(III)、塩化エルビウム(III)、塩化ホルミウム、塩化ハフニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)およびこれらの組み合わせから選択される1またはそれを超える第二の剤と、必要に応じて水と、を含み、から本質的になり、またはからなる。
【0145】
第一の剤、第二の剤および第一の剤と第二の剤の組み合わせは、上記節II.「核酸の単離」、サブセクション「A.方法」に上述されているとおりである。
【0146】
組成物は、好ましくは、水溶液である。このような事例では、溶液中の1またはそれを超える第一の剤の総濃度が、0.5~10M、例えば、0.5~2.5M、2.5~5M、5~7.5M、7.5~10M、0.5~5M、0.5~7.5M、0.5~10M、2.5~7.5M、2.5~10M、5~10M、好ましくは、0.5~5M、0.5~7.5M、2.5~5M、2.5~7.5M、1~8Mまたは1.5~7.5Mの範囲にあり得る。複数の第一の剤が溶液中に存在する場合、溶液中の個々の第一の剤の濃度は、0.1~9.5M、例えば、0.1~0.5M、0.5~2.5M、2.5~5M、5~7.5M、7.5~9.5M、0.1~2.5M、0.1~5M、0.1~7.5M、0.5~5M、0.5~7.5M、0.5~9.5M、2.5~7.5M、2.5~9.5M、5~9.5M、好ましくは、0.1~5M、0.5~7.5M、2.5~5M、2.5~7.5M、1~8Mまたは1.5~7.5Mの範囲にあり得る。溶液中の1またはそれを超える第二の剤の総濃度は、10~500mM、例えば、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~500mM、100~300mM、100~400mM、100~500mM、200~400mM、200~500mM、300~500mM、好ましくは、10~200mM、10~500mM、50~200mM、50~500mMまたは75~150mMの範囲にあり得る。複数の第二の剤が溶液中に存在する場合、溶液中の個々の第二の剤の濃度は、1~450mM、例えば、1~10mM、10~100mM、100~200mM、200~300mM、300~400mM、400~450mM、1~200mM、1~300mM、1~400mM、1~450mM、100~300mM、100~400mM、100~450mM、200~400mM、200~450mM、300~450mM、好ましくは、1~200mM、10~450mM、50~200mM、50~450mMまたは75~150mMの範囲にあり得る。
【0147】
第一の剤および第二の剤を含む例示的な好ましい溶液としては、以下のものが挙げられる。
(1) 1~8M(好ましくは、2.5~5M)酢酸アンモニウムと20~200mM塩化アルミニウムを含有する溶液;
(2) 1~10M(好ましくは、1~8M)酢酸ナトリウムと20~200mM塩化アルミニウムを含有する溶液;
(3) 1~8M(好ましくは、1~5M)酢酸セシウムと20~200mM塩化アルミニウムを含有する溶液;
(4) 1~8M(好ましくは、2.5~5M)酢酸アンモニウムと20~200mM酢酸エルビウム(III)を含有する溶液;
(5) 1~10M(好ましくは、1~8M)酢酸ナトリウムと20~200mM酢酸エルビウム(III)を含有する溶液;
(6) 1~8M(好ましくは、1~5M)酢酸セシウムと20~200mM酢酸エルビウム(III)を含有する溶液;
(7) 1~8M(好ましくは、2.5~5M)酢酸アンモニウムと20~200mM塩化エルビウム(III)を含有する溶液;
(8) 1~10M(好ましくは、1~8M)酢酸ナトリウムと20~200mM塩化エルビウム(III)を含有する溶液;
(9) 1~8M(好ましくは、1~5M)酢酸セシウムと20~200mM塩化エルビウム(III)を含有する溶液;
(10) 1~8M(好ましくは、2.5~5M)酢酸アンモニウムと20~200mM塩化ホルミウムを含有する溶液;
(11) 1~10M(好ましくは、1~8M)酢酸ナトリウムと20~200mM塩化ホルミウムを含有する溶液;および
(12) 1~8M(好ましくは、1~5M)酢酸セシウムと20~200mM塩化ホルミウムを含有する溶液。
【0148】
または、組成物は、固体形態であり得る。このような事例では、適量の水が組成物に添加されたときに、組成物が既に溶液である場合において、得られた溶液が、上記のとおりの1またはそれを超える第一の剤と1またはそれを超える第二の剤の濃度を有するように、組成物は、1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤を含み、から本質的になり、またはからなる。添加される水は、試料中の水からも生じ得る、すなわち、塩の組み合わせが水性試料材料に直接添加され得る。
【0149】
関連する態様において、本開示は、試料から核酸を単離する上での上記組成物の使用を提供する。
【0150】
C. キット
別の態様において、本開示は、試料から核酸を単離するためのキットを提供する。キットは、上記節「II.「核酸の単離」、サブセクション「組成物」に記載されているとおり、1またはそれを超える第一の剤および1またはそれを超える第二の剤を含む組成物を含む。または、キットは、別々に提供される1またはそれを超える第一の剤と1またはそれを超える第二の剤とを含む。
【0151】
キットは、1またはそれを超える以下の成分をさらに含み得る。
溶解試薬
ホモジナイズ材料、
核酸結合固体支持体、
DNA結合溶液、
DNA洗浄溶液、
DNA溶出溶液、
RNA結合溶液、
RNA洗浄溶液、
RNA溶出溶液、および
1またはそれを超える器(vessels)または容器(containers)(例えば、収集チューブ)。
【0152】
溶解試薬は、好ましくは、上記節「I.試料の溶解」に記載されているとおりの、ホスフェートおよび相対的に穏やかなカオトロピック剤を含む、から本質的になる、またはからなる溶解試薬である。
【0153】
ホモジナイズ材料は、上記節「I.試料の溶解、サブセクション「C.溶解過程」に上記されているとおりの、試料をホモジナイズする上で有用な物質、例えば、ビーズ、好ましくは、試料を機械的に破壊するための高密度ビーズを表す。
【0154】
その他の必要に応じて存在するキット成分は、上記節「I.試料の溶解」、サブセクション「D.キット」に記載されているとおりである。
【0155】
関連する態様において、本開示は、試料から核酸を単離する上での上記キットの使用を提供する。
【実施例】
【0156】
以下の実施例では、以下の試薬が参照される。
溶解試薬I:1M NaSCN、0.2M Na2HPO4。
溶解試薬II:0.09Mチオシアン酸グアニジン、0.13M Na2HPO4、0.006M NaCl、1.76M酢酸アンモニウム、0.25%SDS、0.10%消泡剤A。
溶解溶液I:0.18M Na2HPO4、0.12M GuSCN、pH8.8~9.2。
溶解溶液II:0.1M NaCl、0.5M Tris塩基、4%SDS(0.14M)、pH10.75~11.25。
DNA結合溶液I:カオトロピック剤を含有する。
DNA結合溶液II:カオトロピック剤、緩衝剤およびイソプロパノールを含有する。
DNA結合溶液III:エタノールを含有する。
DNA結合溶液IV:カオトロピック剤、緩衝剤塩基およびエタノールを含有する。
DNA洗浄溶液I:カオトロピック剤、緩衝剤およびイソプロパノール、およびエタノールを含有する。
DNA洗浄溶液II:緩衝剤、キレート剤、塩およびエタノールを含有する。
DNA溶出溶液:わずかに塩基性のpHを有する緩衝剤を含有する。
RNA結合溶液:アセトンおよびエタノールを含有する。
RNA洗浄溶液:緩衝剤、キレート剤、塩およびアルコールを含有する。
タンパク質結合溶液:塩および酸性pHを有する緩衝剤を含有する。
タンパク質洗浄溶液:エタノールを含有する。
タンパク質溶出溶液:わずかに塩基性のpHを有する緩衝剤および界面活性剤を含有する。
【0157】
[実施例1]
便試料からのDNA単離に対する阻害物質の除去ありまたはなしでの溶解試薬の効果
本実施例は、便試料からのDNA単離に対する阻害物質の除去ありまたはなしでの異なる溶解試薬の効果を調べる。
【0158】
4つの異なる実験(A、B、CおよびD)は、以下の表に示されているように実施した。AおよびBは、本開示の例示的な溶解試薬(「溶解試薬I」)を使用したのに対して、CおよびDは、既存の溶解試薬(「溶解試薬II」)を使用した。AおよびCは阻害物質の除去を実施しなかったのに対して、BおよびDは実施した。
【0159】
【0160】
単離されたDNAの収率および純度は、下表に示されている。
【表2】
【0161】
上の結果は、供給者の指示に従って、QUANT-IT(商標)dsDNA Assay Kit(ThermoFisher Scientific)を用いて得られた。
【0162】
【0163】
上の結果は、供給者の指示に従って、THERMOSCIENTIFIC(商標)NANODROP(商標)ND-1000分光光度計(ThermoFisher Scientific)を用いて得られた。
【0164】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図1に示されている。
【0165】
これらの結果は、溶解試薬IIと比べて、溶解試薬Iはずっと多くのDNAを抽出し、可溶化したことを示す。阻害物質の除去なしでは、2つの溶解方法間のDNA収率の差は47%であった。阻害物質の除去ありでは、差は52%であった。
【0166】
[実施例2]
便試料からのDNA、RNAおよびタンパク質の単離に対する酢酸アンモニウムの用量設定の効果
本実施例は、便試料からのDNA、RNAおよびタンパク質の単離に対する様々な濃度の酢酸アンモニウムの効果を調べる。
【0167】
イヌの便を以前に集め、直ちに凍結した。本実験のために使用した分割量は一回融解されたことがあった。最大の設定にしたボルテックス上で、10分間、混合ジルコニウムビーズチューブ(1.2g 0.1mm+1.2g 0.5mm)中において、ビードビーティングを行った。溶解およびDNA結合溶液の添加後に、全ての上清をプールした。各チューブから約800μLを回収したが、阻害物質除去工程のために、750μLを再度分取した。NH4OAcの濃度は全て、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物(AASD)と合わされた後の濃度である。
【0168】
【0169】
単離された核酸の収率および純度は、下表に示されている。
【表5】
【0170】
【0171】
上表から得られた結果は、供給者の指示に従って、INVITROGEN(商標)QUBIT(商標)蛍光光度計(Invitrogen)を用いて得られた。
【0172】
単離されたDNA、RNAおよびタンパク質のゲル電気泳動は、それぞれ、
図2の上、中央および下のパネルに示されている。
【0173】
これらの結果は、3.75M酢酸アンモニウムが実質的なDNAの喪失およびDNA結合の低下を引き起こしたことを示す。酢酸アンモニウムが0.9375Mでまたはそれを下回って使用された場合に、DNA、RNAおよびタンパク質の単離は全て改善され、対照(3.75M酢酸アンモニウム)に匹敵しまたはそれを上回った。少なくとも1.0のA260/A230を有する全ての核酸およびタンパク質に対する最高の収率は、DNAについてはE(0.234375M酢酸アンモニウム)、RNAについてはD(0.46875M酢酸アンモニウム)であった。
【0174】
[実施例3]
土壌試料からのDNA単離
本実施例は、土壌試料からのDNA単離に対する異なる溶解および/または阻害物質除去方法の効果を調べる。
【0175】
DNA単離は、下表に示されているとおりに実施した。対照(試料5)を除き、全ての試料は4つ組で行った。
【0176】
【0177】
庭園土壌(VVG):高濃度のPCR阻害性化合物を含有する極めて肥えた庭園土壌。
【0178】
単離されたDNAの収率および純度は、下表に示されている。
【0179】
【0180】
【0181】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図3に示されている。
【0182】
これらの結果は、試料1および3の条件は、最低量のDNA剪断によって、最高のDNA収率をもたらしたことを示す。PowerLyzerはDNA収率を劇的に改善しなかったが、ビードビーティングに対して通常費やされる時間を節約した。試料2は最高の収率をもたらしたが、DNAはより小さな断片であった。阻害物質の除去前に可溶化液はほぼ黒かったので、これらの試料の純度は極めて良かった。試料4は、ガーネットビーズを使用した。ジルコニウムビーズチューブは、これらの試料を20ng/μL(2μg)上回った。試料5は、伝統的なプロトコールであり、対照として使用した。本実験は、DNA収率が250%向上され得ることを示す。
【0183】
[実施例4]
土壌試料からのDNA単離に対する異なる溶解緩衝液の効果
本実施例は、土壌試料からのDNA単離に対する異なる溶解緩衝液の効果を調べる。
【0184】
DNA単離は、下表に示されているとおりに実施した。全ての試料は、2つ組で行った。いずれの点でも、試料はプールしなかった。
【0185】
【0186】
単離されたDNAの収率および純度は、下表に示されている。
【表11】
【0187】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図4に示されている。
【0188】
これらの結果は、試料1 DNAは、ホスフェートのみ対照(試料4)より高いDNA収率を有するように見受けられたことを示し、ホスフェートのみの溶解緩衝液へNaSCNを添加することがDNA収率を改善したことを示唆する。DNA結合溶液III中のエタノールはRNAも結合させたので、ゲルおよびnanodropを用いて試料2のDNA収率を決定することは困難であった。試料3は、高品質のDNAをもたらした。
【0189】
[実施例5]
便試料からのDNA単離に対する異なる溶解緩衝液の効果
本実施例は、便試料からのDNA単離に対する異なる溶解の効果を調べる。
【0190】
全ての試料は2つ組で行い、下表に示されているように、2つのパートで処理した。全ての試料は溶解後にプールした。各試料に、540uLを分配した。
【0191】
【0192】
【0193】
「P1から得たBT1」は、群1(1.2g 0.1mmおよび1.2g 0.5mmビーズ+0.18Mホスフェート)中のビーズチューブ組成物(緩衝物質を含む)を表す。この同じビーズチューブを群8において使用したが、溶解および上清の除去後に、溶解工程の間に放出された場合に、DNAを可溶化できたかどうかをチェックするために、ビーズチューブ中に1M NaSCN+0.18M Na2HPO4を再び添加した。
【0194】
単離されたDNAのゲル電気泳動が、
図5に示されている。
【0195】
これらの結果は、便試料中での微生物の溶解のためにNaSCNが必要とされるように見受けられたことを示す。具体的には、ホスフェートに加えて溶解溶液中にNaSCNを含有する試料5および7からDNAが単離されたのに対して、溶解溶液中にNaSCNを含有しない他の試料からはほとんどDNAが単離されなかった。
【0196】
[実施例6]
異なるキット間での、便試料からのDNA単離の比較
本実施例は、異なる市販のキット(試験1~3)および本開示の例示的な方法(「新技術」、試験4)の間での、便試料からのDNA単離を比較する。
【0197】
全ての試料は、3つ組で行った。各キットのプロトコールに従った。ビードビーティングは、全てのキットにわたって標準化した。ビーズチューブは、最高速度で10分間ホモジナイズした。
【0198】
【0199】
「O」および「Y」という表記は、高齢者「O」ドナーから得たヒト便試料と若年者「Y」ドナーから得たヒト便試料に対応する。「高齢」ドナーは65歳以上であり、「若年」ドアーは50歳未満であった。
【0200】
ZymoBIOMICS DNA Miniprep Kit試料Aは、Zymo-Spin IV Spin Filterを閉塞させた。試料は2つのスピンフィルターに分けられたが、遠心分離後に可溶化液を再度合わせた。
【0201】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図6A(ZymoBIOMICS DNA Miniprep Kit)、
図6B(PureLink Microbiome DNA Purification Kit)、
図6C(MO BIO Power Soil)および
図6D(New Technique)に示されている。
【0202】
NanoDropによって測定された異なるキットによる単離されたDNAの濃度が、下表および
図6Eに示されている。
【0203】
【0204】
Qubitによって測定された異なるキットによる単離されたDNAの純度および濃度が、下表および
図6Fに示されている。
【0205】
【0206】
これらの結果は、本開示に係る新技術が全てのキットの中で最も高いDNA収率をもたらしたことを示す。特に、この新技術は、高齢者の便試料からDNAを単離したときに、性能が他の全てのキットより400%超優れていた。
【0207】
[実施例7]
別の三価金属塩を用いた土壌試料からの阻害物質の除去
本実施例は、土壌試料から阻害物質を除去する上で、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物と類似する他の三価金属塩を試験する。
【0208】
全ての試料は、2つ組で行い、阻害物質の除去前にプールした。
【0209】
【0210】
LCC:ラコスタキャニオン(La Costa Canyon)から得た土壌試料。これは、PCR阻害物質含量が極めて高い、中度の高バイオマス土壌である。
【0211】
単離されたDNAの収率および純度が、下表に示されている。
【表18】
【0212】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図7に示されている。
【0213】
単離されたDNA中での阻害を定量するために、以下に設定されているとおりのPCRを使用した。
【0214】
【0215】
PCRサイクリングは、以下のとおり実施した。95℃5分間、ならびに95℃15秒間および60℃30秒間を45サイクル。
【0216】
これらの結果は、下表に示されている。
【表20】
これらの結果は、試験された三価金属塩の全てが、様々なDNA喪失度で、AASDより効果的に土壌阻害物質を除去したことを示す。AlCl
3(試験2)は、最小量のDNAを除去しながら最高量の阻害物質を除去した。
【0217】
[実施例8]
異なる溶解試薬および阻害物質除去溶液を用いた、土壌試料からのDNAおよびRNAの単離
本実施例は、土壌試料からのDNAおよびRNA単離に対する異なる溶解溶液および阻害物質除去の効果を示す。
【0218】
プロトコール:
-0.25g土壌をビーズチューブに加え、
-650uLの溶解試薬II(チューブ1~4)または810uLの溶解試薬I(チューブ5~7)を加え、
-7uLのβ-MEと100uLのフェノールを加え(チューブ1~7)、
-10分間、高設定でのボルテックス上でホモジナイズし、
-上清を取り出し、新しいチューブに入れ、
-150uLの0.12M AASD(チューブ1~4)または250uLの3.75M NH4OAc、96mM AASD(チューブ5~7)を加え、5分インキュベートし、回転し、上清を除去する。
【0219】
DNAを結合する:
-等しい容量のDNA結合溶液IV(チューブ1~4)または等しい容量のDNA結合溶液Iを加え、
-750uLをスピンカラムの中に入れ、遠心分離し、素通り画分を別個の2mLチューブ中に保ち(すなわち、RNA素通り画分)、全ての可溶化液がスピンカラムを通過するまで繰り返す。
【0220】
RNAを結合する:
-RNAを結合するために、5mLチューブ中に等しい容量の100%エタノール(約1mL)を加え、
-750uLをスピンカラムの中に入れ、遠心分離し、全ての可溶化液がスピンカラムを通過するまで繰り返す。
【0221】
DNA/RNAを洗浄する:
-650uLのRNA洗浄溶液でスピンカラムを洗浄し、次いで、650uLのエタノールでスピンカラムを洗浄し(チューブ1~4)、または600uLのDNA洗浄溶液Iでスピンカラムを洗浄し、次いで、600μLのDNA洗浄溶液IIでスピンカラムを洗浄し、
-10,000で2分間、遠心分離して脱水し、
-新しいチューブにスピンフィルターを加え、
-100uLH2O中にDNA/RNAを溶出する(チューブ1~7)
【0222】
【0223】
結果は、
図8に示されている。具体的には、
図8の上左パネルは単離されたDNAのゲル電気泳動であり、下左パネル(pane)は、単離されたRNAのゲル電気泳動であり、上右の表は、単離されたDNAの収率および純度であり、下右の表は、単離されたRNAの収率および純度である。
【0224】
これらの結果は、酢酸アンモニウムとAASDを含む阻害物質除去溶液と組み合わせた溶解試薬Iを用いたDNAおよびRNAの収率が、AASDと組み合わせた溶解試薬IIを用いたDNAおよびRNAの収率より著しく高かったことを示す。
【0225】
[実施例9]
塩化アルミニウムを用いた土壌試料からの阻害物質の除去
本実施例は、塩化アルミニウムが土壌試料から阻害物質を除去する上で効果的であったことを示す。
【0226】
試料1および3は、5つの反復からなったのに対して、試料2および4は2つ組みで行った。
【0227】
【0228】
単離されたDNAの収率および純度が、下表に示されている。
【0229】
【0230】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図9に示されている。
【0231】
単離されたDNA中での阻害を定量するために、以下に設定されているとおりのPCRを使用した。
【0232】
【0233】
PCRサイクリングは、以下のとおり実施した。95℃5分間、ならびに95℃15秒間および60℃30秒間を45サイクル。
【0234】
これらの結果は、下表に示されている。
【0235】
【0236】
これらの結果は、AlCl3が、両方の土壌の種類において、対照(AASD)と等しいDNA収率をもたらしたことを示す。AlCl3は、VVGにおいて3.8から1へ、LCCにおいて5から0.5へ、dCtを低下させ、両土壌試料からPCR阻害化合物を除去する上で、AlCl3がAASDより有効であったことを示す。
【0237】
[実施例10]
土壌試料からのDNA単離に対する酢酸カリウムと硫酸アンモニウムの効果
本実施例は、土壌試料からのDNA単離に対する酢酸カリウムと硫酸アンモニウムの効果を調べる。
【0238】
DNA単離は、下表に示されているとおりに実施した。全ての試料は、2つ組で行った。
【0239】
【0240】
単離されたDNAのゲル電気泳動は、
図10に示されている。
【0241】
Nanodropによって測定された単離されたDNAの収率および純度が、下表に示されている。
【表27】
【0242】
これらの結果は、実験D1bおよびD3aによって得られたDNA収率と純度は対照実験0と類似していたが、実験D1aはより少ないDNAをもたらしたことを示す。したがって、硫酸アンモニウムは、土壌試料からのDNA単離に対して酢酸アンモニウムと類似の効果を有していたが、酢酸カリウムは、酢酸アンモニウムより少ないDNAをもたらした。
【0243】
[実施例11]
土壌試料からのDNA単離に対する酢酸ナトリウムと塩化ナトリウムの効果
本実施例は、土壌試料からのDNA単離に対する酢酸ナトリウムと塩化ナトリウムの効果を調べる。
【0244】
DNA単離は、下表に示されているとおりに実施した。全ての試料は、2つ組で行った。全ての同様の試料(1~6)は、ビードビーティング後にプールした。550ulを各収集チューブに分配した。
【0245】
【0246】
単離されたDNAのゲル電気泳動が、
図11に示されている。
【0247】
Nanodropによって測定された単離されたDNAの収率および純度が、下表に示されている。
【0248】
【0249】
これらの結果は、試験された濃度で酢酸ナトリウムを使用したDNA収率(実験1~3)は、溶解溶液IIを含めずに酢酸アンモニウムを使用したDNA収率(実験6)と同様であったが、試験濃度で塩化ナトリウムを使用したDNA収率(実験4および5)は、溶解溶液IIを含めずに酢酸アンモニウムを使用したDNA収率(実験6)より低かった。実験6と7を比較すると、DNA単離の間に溶解溶液IIを含めることはDNA収率を低下させたことを示す。
【0250】
[実施例12]
土壌試料からのDNA単離に対する酢酸セシウムと塩化セシウムの効果
本実施例は、土壌試料からのDNA単離に対する酢酸セシウムと塩化セシウムの効果を調べる。
【0251】
DNA単離は、下表に示されているとおりに実施した。全ての試料は、2つ組で行った。全ての同様の試料(1~7)は、ビードビーティング後にプールした。550ulを各収集チューブに分配した。
【0252】
【0253】
単離されたDNAのゲル電気泳動が、
図12に示されている。
【0254】
Nanodropによって測定された単離されたDNAの収率および純度が、下表に示されている。
【0255】
【0256】
これらの結果は、DNA収率が、酢酸セシウム濃度が増加するにつれて減少したことを示す(実験1~3)。試験された最小の濃度での酢酸セシウム(実験1)は、酢酸アンモニウムを使用するが溶解溶液IIを使用しない対照(実験7)より高いDNA収率を与えた。試験したいずれのCsCl濃度においても、DNAは単離されなかった。
【0257】
[実施例13]
土壌または便試料からDNAを単離するための例示的な方法
本実施例は、本開示に従って土壌または便試料からDNAを単離するための例示的な方法を記載する。
【0258】
プロトコールの概要
化学的および機械的ホモジナイゼーションを用いて、土壌または便試料を溶解する。試料を含有する混合ジルコニウムビーズチューブに溶解緩衝液を添加する。ビードビーティングは、ビーズチューブアダプターまたは高出力のTissueLyzerとともに、標準的な卓上ボルテックスを用いて実施することができる。次いで、PCRおよびRT-PCR阻害化合物を除去するために、一段階の沈殿反応に未精製可溶化液を供する。阻害物質除去後に、精製された可溶化液をDNA結合溶液と混合し、シリカスピンフィルター膜を通過させる。二段階の洗浄レジメンで膜を洗浄する。次いで、DNA溶出緩衝液を用いて、シリカに結合したDNAを溶出する。
【0259】
詳細なプロトコール
溶解:
1.イットリウム安定化ジルコニウム混合ビーズチューブ(例えば、0.1および0.5mmビーズ、それぞれ1グラム)中に最大250mgの土壌(または便)を加える。
2.800μLの溶解緩衝液(例えば、NaSCNおよびNa2HPO4を含有する緩衝液)を加える。
3.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
4.最高速度で10分間、ビードビーティングを行う。
5.15,000×gで1分間、ビーズチューブを遠心分離する。
6.新しい収集チューブに上清(予想550μL)を移す。
【0260】
阻害物質の除去:
7.200μLの阻害物質除去溶液(例えば、NH4OAcおよびAlCl3を含有する溶液)を加える。
8.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
9.15,000×gで1分間、チューブを遠心分離する。
10.新しい収集チューブに上清(予想650μL)を移す。
【0261】
DNA結合:
11.450μLのDNA結合溶液Iを加える。
12.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
13.スピンカラム中に550μLを搭載する。
14.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
15.スピンカラム中に残りの可溶化液の容量を搭載する。
16.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
【0262】
DNA洗浄:
17.650μLのDNA洗浄溶液Iをスピンカラム上に加える。
18.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
19.500μLのDNA洗浄溶液IIをスピンカラム上に加える。
20.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
21.15,000×gで2分間、空のスピンカラムを遠心分離する。
22.スピンカラムを新しい収集チューブに移す。
【0263】
DNA溶出:
23.スピンカラム膜の中心に100μLのDNA溶出溶液を加える。
24.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。スピンカラムを廃棄する。
【0264】
[実施例14]
土壌試料からDNAおよびRNAを単離するための例示的な方法
本実施例は、本開示に従って土壌試料からDNAおよびRNAを単離するための例示的な方法を記載する。
【0265】
プロトコールの概要
化学的および機械的ホモジナイゼーションを用いて、最大250mgの土壌を溶解する。試料を含有する混合ジルコニウムビーズチューブに溶解緩衝液を添加する。ビードビーティングは、ビーズチューブアダプターまたは高出力のTissueLyzerとともに、標準的な卓上ボルテックスを用いて実施することができる。次いで、PCRおよびRT-PCR阻害化合物を除去するために、一段階の沈殿反応に未精製可溶化液を供する。阻害物質除去後に、精製された可溶化液をDNA結合溶液と混合し、シリカスピンフィルター膜を通過させる。DNA素通り画分に等容量のイソプロパノールを加え、全RNAを捕捉するために、この溶液を第二のスピンカラムに通過させる。二段階の洗浄レジメンで両方の膜を洗浄する。次いで、シリカに結合したDNAとRNAを溶出する。
【0266】
詳細なプロトコール
溶解:
1.イットリウム安定化ジルコニウム混合ビーズチューブ(例えば、0.1および0.5mmビーズ、それぞれ1グラム)中に最大250mgの土壌を加える。
2.800μLの溶解緩衝液(例えば、NaSCNおよびNa2HPO4を含有する緩衝液)、7μLのβ-メルカプトエタノールおよび100μLのフェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール(PIC)を加え、Tris緩衝液、pH8.0で平衡化する。
3.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
4.最高速度で10分間、ビードビーティングを行う。
5.15,000×gで1分間、ビーズチューブを遠心分離する。
6.新しい収集チューブに上清(予想500μL)を移す。
【0267】
阻害物質の除去:
7.250μLの阻害物質除去溶液(例えば、NH4OAcおよびAlCl3を含有する溶液)を加える。
8.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
9.15,000×gで1分間、チューブを遠心分離する。
10.新しい収集チューブに上清(予想650μL)を移す。
【0268】
DNA結合:
11.450μLのDNA結合溶液Iを加える。
12.混合するために、高設定でボルテックスにかける。
13.スピンカラム中に550μLを搭載する。
14.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。RNAを含有する素通り画分を保持する。
15.スピンカラム中に残りの可溶化液の容量を搭載する。
16.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。RNAを含有する素通り画分を保持する。
17.RNAが単離されている間に、固定化されたDNAを有するスピンカラムを+4℃に置く。
【0269】
RNA結合:
18.上からの保持されたスピンカラム素通り画分に1000μLのイソプロパノールを加える。
19.スピンカラム上に750μLのRNA含有可溶化液を搭載する。
20.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
21.全ての可溶化液がスピンカラムを通して処理されるまで、可溶化液の搭載および遠心分離を繰り返す。
【0270】
DNAおよびRNA洗浄:
22.650μLのDNA洗浄溶液Iをスピンカラム上に加える。
23.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
24.650μLのDNA洗浄溶液2をスピンカラム上に加える。
25.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。素通り画分を廃棄する。
26.15,000×gで2分間、空のスピンカラムを遠心分離する。
27.スピンカラムを新しい収集チューブに移す。
【0271】
DNA溶出:
28.スピンカラム膜の中心に100μLのDNA溶出溶液を加える。
29.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。スピンカラムを廃棄する。
【0272】
RNA溶出:
30.スピンカラム膜の中心に100μLのRNアーゼを含まない水を加える。
31.15,000×gで1分間、スピンカラムを遠心分離する。スピンカラムを廃棄する。
【0273】
上記されている様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。2018年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/662,063号を含む、本明細書中に引用されているおよび/または出願データシート中に列記されている全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、参考文献またはその一部の組み込みが本開示と矛盾する場合を除き、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願および刊行物の概念を使用してさらなる実施形態を提供することが必要であれば、実施形態の態様は改変することができる。
【0274】
上記記述に照らして、実施形態に対してこれらおよびその他の変化を施すことができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用されている用語は、本明細書および特許請求の範囲中に開示されている具体的な実施形態に特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、かかる特許請求の範囲の権利が及ぶ均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。