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特許7496321MRI適合性のためのアイロンレス電気モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】MRI適合性のためのアイロンレス電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/02 20060101AFI20240530BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240530BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240530BHJP
   H02K 3/14 20060101ALI20240530BHJP
   H02K 17/16 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02K17/02 B
A61B5/055 390
A61M5/142
H02K3/14
H02K17/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020567880
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066922
(87)【国際公開番号】W WO2020002386
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】62/691,955
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ナイセ ジェラルド ヨハネス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】サヒン ノマラー フンダ
(72)【発明者】
【氏名】クロップ ウォウター
(72)【発明者】
【氏名】メヘンデール アディチャ
(72)【発明者】
【氏名】フリッセン ペトルス カロルス マリア
(72)【発明者】
【氏名】セイガー オラフ ヨハネス
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102638152(CN,A)
【文献】特開平04-255441(JP,A)
【文献】特開2017-041996(JP,A)
【文献】特開平06-133515(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107482870(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/02
A61B 5/055
A61M 5/142
H02K 3/14
H02K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータであって、
電気巻線を含むステータと、
前記ステータと磁気的に結合されたロータとを有し、
前記電気モータは、強磁性材料を含まず、
前記電気モータは、永久磁石を含まず、
前記ロータは、前記ステータを取り囲む外側ロータシリンダを含み、及び
前記外側ロータシリンダは、前記電気モータ内に生じる漂遊場を遮蔽する薄い円筒形の形状を有する
電気モータ。
【請求項2】
前記ロータが、前記ステータの内側に配置され、前記外側ロータシリンダと共に回転するように接続された内側ロータシリンダを更に含む、請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記ロータが、1つの半ループ内の誘起電圧が他の半ループ内の誘起電圧の影響を相殺するようにそれぞれ成形された1つ又は複数の導電性ループを含み、
前記ステータは、前記1つの半ループと磁気的に結合された第1のステータと、前記他の半ループと磁気的に結合された第2のステータとを含み、前記第1及び第2のステータが、180度の位相差で電気的に駆動される、請求項1又は2に記載の電気モータ。
【請求項4】
各導電性ループと動作可能に連結された整流子ブラシを更に含む、請求項3に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記ステータの電気巻線が、三相のステータとして前記ステータを形成するように巻かれる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気モータ。
【請求項6】
固定された電気周波数で前記ステータに電気的に電力を供給するように作動する固定周波数モータドライバを更に有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気モータ。
【請求項7】
注入ポンプであって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気モータと、
(i)シリンジレセプタクルと、(ii)注入流体供給源と接続するよう構成された入口と、患者注入送達アクセサリと接続するよう構成された出口とを持つ流体ポンプと、の1つを備える流体送達要素とを有し、
前記電気モータが、前記シリンジレセプタクルに取り付けられた関連するシリンジのプランジャを駆動することにより、又は前記流体ポンプを作動させることにより、前記流体送達要素を作動させるように接続される、注入ポンプ。
【請求項8】
医療装置を作動させる方法において、
前記医療装置を患者に動作可能に接続するステップと、
前記患者に治療を提供するために前記医療装置に原動力を加えるために電気モータを作動させるステップとを有し、
前記電気モータが、電気巻線を備えるステータと、ロータとを含み、
前記電気モータが強磁性材料を含まず、永久磁石を含まず、
前記方法は、前記電気モータの作動中に、前記ロータを使用して前記ステータの電磁シールドを提供するステップを更に有し、
前記ロータは、前記ステータを取り囲む外側ロータシリンダを含み、及び
前記外側ロータシリンダは、前記電気モータ内に生じる漂遊場を遮蔽する薄い円筒形の形状を有する
方法。
【請求項9】
磁気共鳴撮像(MRI)装置を使用して、患者のMRI画像を取得し、同時に、前記電気モータを作動させて、前記医療装置に原動力を適用して、前記患者に治療を提供するステップを更に有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者のMRI画像を取得しないとき、前記MRI装置により生成される任意の磁場の外側に前記電気モータが配置される状態で、前記患者に治療を提供するために、前記医療装置に原動力を適用するために、前記電気モータの作動を繰り返すステップを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記医療装置が、注入ポンプであり、前記電気モータは、注入流体を前記患者に送達するためにポンプ力を適用するように作動される、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電気モータを作動させるステップが、固定された電気周波数で前記誘導モータを作動させるステップを含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般に、医療デバイス技術、注入ポンプ技術、磁気共鳴撮像(MRI)技術、電気モータ技術、及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)は、強力な医学的診断及び臨床評価技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、MRIは、強い磁場及び無線周波数(RF)干渉を生成し、次に、MRI画像は、近くの磁場及び/又はRF放出デバイスからのRF干渉による劣化の影響を受けやすい。この観点から、医用MRIシステムは一般に、RFシールドルーム(MRI室と呼ばれることもある)、即ち、壁(並びに、場合によっては床及び/又は天井)が、密閉ファラデーケージを形成するワイヤメッシュシートなどを含む部屋内に密閉される。MRI検査手順を受ける患者は、余分な埋め込み強磁性材料を有しないことを保証するために、処置前に評価される。例えば、埋め込み心臓ペースメーカは、MRI準拠又はMRIセーフであることが要求される。実験室安全プロトコルは、強磁性材料を含む物品を禁止する。一般に、MRI室内に強磁性材料を導入又は使用することは禁止される。なぜなら、MRI磁場は大きな引力を引き起こし、これは、危険な状況をもたらす場合があるからであり、強磁性材料がMRIシステムの撮像を歪ませる場合があるからである。
【0004】
この状況は、注入ポンプ、ファン、電動患者テーブルなどの電動装置をMRI室内で使用することを困難にする。電気モータは電磁装置であり、通常、回転がモータにより駆動される回転軸の形で、入力された電力を原動力(機械的)出力に変換するために、電場と磁場との相互作用を利用する。斯かるモータでは、コイルが電気的に通電されるとき磁場を生成する電磁石を形成するよう、巻線が強磁性コアに巻き付けられる。これらは、固定的な態様で取り付けられるステータ巻線、及び回転要素(ロータ)に取り付けられるロータ巻線として配置される。ステータ及びロータ磁場の相互作用が原動力を発生させる。代替的に、これらの磁場の1つは、磁化された強磁性材料を含む永久磁石により提供されてもよい。誘導モータでは、1組の巻線(通常はステータ巻線)のみが入力交流(a.c.電流)を用いて電気的に通電され、結果として生じる時間変動磁場はロータ巻線に交流電流を誘導し、これによりロータに原動力を生成させる相互作用磁場が提供される。こうして、誘導モータは、出力が二次電磁石に誘導される電流ではなく、誘導モータにおける二次電磁石の回転であることを除いて、変圧器と同様に動作する。変形インダクタモータ設計では、ロータ巻線は、短絡された導電性バーにより置換され、これは、かご形ロータと呼ばれる。
【0005】
斯かるモータは、MRI室で使用される場合に問題となる。強磁性材料は、MRI装置により生成された強い磁場によりMRIボア内に引き込まれる場合、物理的危険性を呈する。更に、強磁性材料及び生成された磁場の両方が、MRI装置の動作を妨害する可能性があり、これにより、臨床MRI画像の劣化及び医用誤診の可能性がもたらされる。
【0006】
MRI室内で電気モータを使用することの困難性に対処するために、様々なアプローチが採用される。これらのアプローチは一般に、MRIに適合する特別に設計されたモータを使用することを必要とする。例えば、電荷の引力及び反発に基づき作動する静電モータが採用されることができる。しかしながら、静電モータは、非標準的なモータ設計であり、一般に、高い動作電圧を必要とし、低効率を提供し、より典型的には、小型化された装置、例えば、微小電気機械システム(MEMS)に使用される。高電圧は、RFノイズを伴う静電放電を導入する可能性もある。圧電モータも同様の困難がある。別のアプローチは、電気モータをMRI室の外側に配置し、回転シャフトを壁を通してMRI室内に通すことである。このアプローチは、長い回転シャフトを必要とし、モータがMRI室の外側に配置されるので動作を複雑にし、シャフト貫通が、MRI室のRFシールドの完全性を損なわせる。MRI室でのみ使用される専用装置の場合、モータ動作においてMRI装置自体により生成される磁場を利用する専用のモータ設計が知られる。例えば、RoeckらによるUS2010/0264918A1号である。
斯かるモータは、MRI装置により生成される磁場に依存するため、MRI室内でのみ使用可能である。これは、注入ポンプが患者と共にMRI室に出入りできないことを意味し、これは実質的な実践上の困難を呈する。
【0007】
MRI室又はMRI装置の近傍での動作は、例示的な問題であるが、有害な磁気相互作用の可能性のために電気モータが問題となり得る他の状況がある。例えば、陽電子放出断層撮影(PET)撮像では、光電子増倍管(PMT)ベースの放射線検出器は、磁気干渉の影響を受けやすい。超伝導量子干渉計(SQUID)装置のような高感度磁力計装置の近くにある電気モータは、誤った磁場測定をもたらす可能性がある。これらは単に例示的な例である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下は、新規で改良されたシステム及び方法を開示する。
【0009】
開示された一態様では、電気モータは、電気巻線を含むステータと、ステータと磁気的に結合されたロータとを含む。電気モータは強磁性体を含まず、電気モータは永久磁石を含まない。ロータはオプションで、ステータを取り囲む外側ロータシリンダを含む。ロータはオプションで、ステータの内側に配置され、外側ロータシリンダと共に回転するように接続された内側ロータシリンダを更に含む。外側ロータシリンダは、円筒形シートロータを含むことができる。ステータの電気巻線は、例示的な実施形態では、三相ステータとしてステータを形成するように巻かれる。電気モータは、固定された電気周波数でステータに電気的に電力を供給するように作動する固定周波数モータドライバを更に含むことができる。
【0010】
別の開示された態様では、注入ポンプは、(i)シリンジレセプタクルと、(ii)注入流体供給源と接続するよう構成された入口と、患者注入送達アクセサリと接続するよう構成された出口とを持つ流体ポンプと、の1つを備える流体送達要素とともに、直前の段落に記載されたような電気モータを有する。電気モータは、シリンジレセプタクルに取り付けられた関連するシリンジのプランジャを駆動することにより、又は流体ポンプを作動させることにより、流体送達要素を作動させるように接続される。
【0011】
別の開示された態様では、医療デバイスを作動させる方法が開示される。この方法は、医療デバイスを患者に動作可能に接続するステップと、患者に治療を提供するために医療デバイスに原動力を適用するように電気モータを作動させるステップとを含む。モータは強磁性体を含まず、永久磁石を含まない。
【0012】
一つの利点は、強磁性材料を有さない電気モータを提供することにある。
【0013】
別の利点は、強磁性材料がなく、永久磁石がない電気モータを提供することにある。
【0014】
別の利点は、MRI装置に適合し、MRI室内で使用できる電気モータを提供することにある。
【0015】
別の利点は、従来の誘導モータ設計を保持し、前述の利点の1つ又は複数を有する電気モータを提供することにある。
【0016】
別の利点は、要素の数を減らし、かつ/又は製造コストを減らしつつ、従来の誘導モータ設計を保持する、前述の利点の1つ又は複数を有する電気モータを提供することにある。
【0017】
別の利点は、固有のRFシールドを更に提供し、前述の利点の1つ又は複数を有する電気モータを提供することにある。
【0018】
別の利点は、固定された電気周波数でステータに電力を供給して電気モータを作動させるように動作可能な固定周波数モータドライバを使用して更に動作可能な、前述の利点の1つ又は複数を有する電気モータを提供することにある。
【0019】
別の利点は、前述の利点の1つ又は複数を有する電気モータを使用するMRI適合注入ポンプを提供することにある。
【0020】
別の利点は、斯かる電気モータを使用する電気モータ又はMRI適合注入ポンプを提供することにあり、これは、MRI適合的であるが、MRI室の外側でもMRI装置から遠くても使用可能である。
【0021】
所与の実施形態は、本開示を読んで理解するとき当業者に明らかになるように、前述の利点のいずれも提供しないか、1つ、2つ、より多く、若しくはすべてを提供することができるか、及び/又は他の利点を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】MRI装置を収容するMRI室を含む例示的な電気モータ用途設定を概略的に示す図であり、注入ポンプが、本書に開示されるような電気モータを使用する、図である。
図2】1つの例示的な実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石も含まない誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、図3に示されるセクションA-Aを示す、図である。
図3】1つの例示的な実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石も含まない誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、電気モータの概略的な側面表示を示す、図である。
図4】別の例示的実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、図5に示されるセクションB-Bを示す、図である。
図5】別の例示的実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、電気モータの概略的側面表示を示す、図である。
図6】別の例示的な実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない、誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、図7に示すセクションC-Cを示す、図である。
図7】別の例示的な実施形態による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない、誘導モータを備える電気モータを概略的に示す図であり、電気モータの概略的な側面表示を示す、図である。
図8】本書に記載される計算による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない誘導モータを備える電気モータについて計算されたモータ特性をプロットした図である。
図9】本書に記載される計算による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない誘導モータを備える電気モータについて計算されたモータ特性をプロットした図である。
図10】本書に記載される計算による、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない誘導モータを備える電気モータについて計算されたモータ特性をプロットした図である。
図11】破線により概略的に示された分割ステータと共に、二重ループパターンの巻線を含む代替的なロータの斜視表示を概略的に示す図である。
図12】ロータ巻線が整流子を介して電気的に通電される、図11のロータ/ステータ設計の変形例の斜視表示を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、様々な要素及び要素の配置、並びに様々なステップ及びステップの配置の形をとることができる。図面は、好ましい実施形態を例示する目的のためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0024】
図1を参照すると、実質的な磁場を生成する磁石を収容するハウジング6を含むMRI装置4を収容するMRI室2を含む例示的な電気モータ適用設定が示される。例えば、例示的なMRI装置4は、磁石が約1.5テスラの静磁場(B0磁場と呼ばれることもある)を生成するPhilips Achieva(登録商標)1.5T MRI装置であってもよい。Philips又は他の製造業者から入手可能な臨床用途のための他のMRI装置は典型的には、0.2~7.0テスラのオーダーのB0磁場を生成するが、より低い又はより高い主磁場強度も想定される。MRIハウジング6はまた、典型的には、空間的に選択的な磁気共鳴励起、励起された磁気共鳴の位相及び/又は周波数を空間的に符号化すること、磁気共鳴をスポイルすること、及び/又は他の目的のために、空間的に変化する磁場勾配をB0磁場に重ね合わせる傾斜磁場コイルを含む。
例示的な患者支持部8は、撮像のためにMRI装置4に患者を装填し、MRI撮像セッションの完了後に患者を引き出すために提供され、「全身」スキャンを形成する一連のMRI画像を取得するために、患者をMRI装置を通して段階的に移動させるなどの他の調整を提供することもできる。図示されていないが、MRI装置4は典型的には、磁気共鳴を励起及び/又は検出するための全身RFコイル及び/又は局所RFコイル、勾配コイル、RFコイルなどに通電するための電子機器、磁石を極低温に維持するための極低温コンプレッサ(MRI磁石が超伝導磁石である場合)など、他の従来のMRI要素を含む。
【0025】
患者は、MRI撮像手順の間、医学的支援又は治療を必要とすることがある。例えば、注入ポンプ10は、生理食塩水溶液、注入された薬物などの注入流体を患者に送達するために使用されてもよい。例示的な注入ポンプ10は、シリンジ14が挿入されるシリンジレセプタクル12を含むシリンジ注入ポンプである(図1は、縮尺通りではなく、例えば、MRI装置4及び注入ポンプ10の図の相対的なサイズは、それぞれ縮尺通りではないことにも留意されたい)。尿カテーテル、静脈内(IV)ポートなどの患者注入送達アクセサリ16は、シリンジ14を患者に接続し(図1は、シリンジ14から離れて延びる流体チューブの一部を示すことにより、患者アクセサリ16を概略的に示す点に留意されたい)、シリンジのプランジャ18は、シリンジ注入ポンプ10により駆動され、制御された流量で、シリンジ14に含まれる注入流体の供給を患者に送達する。プランジャ18を駆動するための原動力を提供するために、シリンジ注入ポンプ10は、電気モータ20を含む(モータ20は典型的には、注入ポンプ10のハウジング内に配置される内部要素であるが、例示の目的のために外側に示されることに留意されたい)。電気モータ20は、ギア又は他の機械的ハードウェア(図示省略)により結合され、シリンジ14のプランジャ18と係合するアーム22を駆動する。
【0026】
電気モータ20は、シリンジ注入ポンプ10の駆動アーム22と結合された回転可能なシャフト26を駆動するロータ/ステータアセンブリ24を含む(ここでも、図示されていないギア、クラッチ等を使用して結合されるか、又はより一般的には、シャフト26は、作動原動力を必要とする医療装置等の要素と作動可能に機械的に連結される)。ロータ/ステータアセンブリ24は、電気巻線を含むステータと、電気モータ20を規定するためにステータと磁気的に結合されたロータとを含む。例示的なモータは、電気的に駆動されないステータを有し、誘導モータとして分類される。本書に開示されるように、電気モータ20は強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない。電気モータ20は、固定された電気周波数でステータに電気的に電力を供給するように作動するモータドライバ28を更に含んでいるか、又は(例えば、適切な電気ワイヤー若しくはケーブルを介して)作動可能に接続される。
【0027】
シリンジ注入ポンプは、MRI室2内に配置され、本書に開示されるようなMRI互換電気モータ20を使用してMRI室2内で有用に使用され得る電動装置の例示的な例として示される。他の実施形態では、注入ポンプは、非シリンジの変形例とすることができ、そこでは、(シリンジレセプタクル12の代わりに)流体送達要素が、注入流体供給源(例えば、IVスタンドから吊り下げられる)と接続するよう構成された入口と、患者注入送達アクセサリ16と接続するよう構成された出口とを持つ流体ポンプを含む。別の例として、電動ファンがMRI室2内に有効に配置されることができる。更に、前述したように、本書に開示される電気モータ20の実施形態は、磁場相互作用が、PET撮像装置、SQUID又は他の磁力計などの近接する機器の動作に有害であり得る設定で使用される、実質的に他の任意のタイプの電動デバイスにおいて使用され得る。
【0028】
電気モータ20は、何ら強磁性部品を含まないので、MRI装置4により生成される磁場に引き寄せられない。別の利点として、電気モータ20は、MRIの撮像野を歪ませる場合がある強磁性部品を含まない。電気モータ20は、弱い漂遊場を生成し、これは、MRIの撮像野を妨害しないように十分に小さく設計されることができる。オプションで、任意の残りの漂遊場は、例えば導電性シートカバーを用いてシールドされることができる。
【0029】
電気モータ20は誘導モータである(しかしながら、例えば、図12に示すように、別のタイプの電気モータも代替的に考えられる)。しかしながら、従来の誘導モータとは異なり、電気モータ20は、ロータ及びステータ内に強磁性材料(例えば、鉄、鋼、ネオジムなど)を含まない。従来の誘導モータでは、強磁性材料が採用され、強磁性材料を含まない電気モータ20内で生成される磁束よりも何倍も大きいステータ巻線の通電による磁束が提供される。当技術分野で既知のように、強磁性材料の使用により提供される高い磁束は、高いトルクの達成を可能にする。モータ20内の強磁性材料の省略は、そのステータ及び/又はロータ内に強磁性材料を有する従来の誘導モータと比較して、(1)(MRI装置4により生成されるB0磁場などの)静磁場内に吸引力がない、(2)ステータ巻線用の強磁性コアが省略されているため、従来の誘導モータと比較して効率が低い、(3)ステータコイルが強磁性コアの省略のためにより低い自己インダクタンスを持つため、より高い周波数で駆動する選択肢を持つ、及び(4)電気モータ20内で達成可能な大きなスリップ範囲のために一定周波数で駆動する選択肢(ベクトル制御を必要としない)を持つ、という違いをもたらす。強磁性材料を有する従来の誘導モータと比較して電気モータ20の効率が低いことは欠点である。しかしながら、電気モータ20が強磁性材料がないにもかかわらず有用なトルクを達成できることが、本書において認識され、本書において報告されるモータ特性を介して実証される。
【0030】
電気モータ20の動作中に生成されるコイル電流及び誘導電流は、MRI装置4の撮像機能を乱す可能性を持つ磁場を生成することになる。しかしながら、本書では、通常の電流レベル及びMRI装置からのモータの現実的な距離(例えば、約1/2メートル以上のオーダー)では、磁場及び磁場勾配は低く、例えば、ミリテスラ(mT)範囲以下の磁場及びmT/m範囲以下の勾配である可能性が高いことが更に認識される。いくつかの例示的な実施形態では、外部シートロータが採用され、これは、固有のシールドを提供し、その結果、電気モータ20の外部に伝搬する場の追加的な減少を提供する。オプションで、追加的なシールド層を適用して、漂遊場が更に遮蔽されてもよい。
【0031】
誘導モータの作動原理は、複数のステータコイル(典型的には三相であるが、他のコイル分布が存在し、電気モータ20のために想定される)を流れる交流電流が回転磁場を作ることである。この回転磁場は、ロータに誘導電流を生じさせ、次に、ステータ磁場と相互作用して原動力(例えばトルク)を与える磁場を生じさせ、この力は、ロータ及びロータと回転するように接続されたシャフト26の回転を生じさせる。原動力を生み出す部分は、導電性の部分(コイル及びロータ)である。従来の誘導モータでは、効率を高めるために強磁性体が加えられる。しかしながら、本書に開示されるように、電気モータ20は、強磁性材料を含まない。強磁性材料を省略すると、電気モータ20は、かなり低い効率ではあるが、依然として従来の誘導モータと同じように機能する。
【0032】
電気モータ20が、作動しているMRI装置4により生成されるような磁場環境で作動されるとき、いくつかの妨害力が存在することになる。外部磁場は、モータコイル内の電流と相互作用し、ローレンツ力を生成するであろう。ステータのコイルは、静止支持部に機械的に接続されるため、ステータ支持部が十分である限り、これは問題を引き起こさない。外部磁場は、ロータの導電性材料に渦電流を発生させ、これは、磁場の2乗に比例し、回転周波数の2乗にも比例する減衰トルクを発生させる。この影響に対抗するために、複数のモータコイルが使用されることができる。これは、減衰トルクを減少させる。なぜなら、電気的作動周波数がロータの回転周波数よりもはるかに大きいからである。逆に、モータコイルは、MRI磁場を歪ませる可能性のある磁場を生成する。しかしながら、複数のコイルがあるため、その結果生じる場は距離とともに非常に急速に減少するであろう。本書に開示されるいくつかの実施形態におけるような外部シートロータの使用、及び/又は追加のモータシールドの使用などの更なる手段は、モータの外部漂遊場が、許容される(設計基準)外乱場未満に留まることを確実にすることができる。
【0033】
誘導モータ20は強磁性材料を含まない。誘導モータ20(より詳細には、ロータ/ステータ組立体24)は例えば、薄肉の導電性シリンダ(リスかごロータのようなかご形のロータも考えられるが)を含み得るロータと、ロータの周囲又は内部の小さな距離に配置された1組のコイル(例えば、三相入力電力を採用するときの3の倍数のコイル)を含むステータとを有する。回転部品と静止部品とを交換することが考えられるが(その結果、シリンダが静止し、コイルがその周囲又は内部で回転する)、これは一般には好ましくない。なぜなら、コイルの電気的接続を複雑にするからである。
【0034】
図2図7を参照して、ロータ/ステータ組立体24の3つの例示的な実施形態が説明される。各例示的な実施形態は、図2図4、及び図6の断面図で最もよく分かるように、電気巻線32を備えるステータ30を含む。ステータ30は、固定された態様で取り付けられ(図示省略)、電力を受けて、モータドライバ28から電気巻線32に通電する(図1参照)。電気巻線32は、異なる電気位相、例えば、ステータ30の円周の周りで順次繰り返される3つの位相を有するコイルのパターンとして配置される。例えば、電気巻線32は、5組の三相コイルとして配置されることができるが、より多くの又はより少ない数の組も考えられる。ステータの電気周波数は、三相電力の電気周波数(例えば、米国では従来の60Hz、欧州では従来の50Hz)と、三相コイルの組数(組数が多いと、モータ20に対してより高い動作電気周波数が提供される)とにより決定される。ステータ30は、図2図7の3つの実施形態すべてにおいて同じ構成を持ち、これらの例示的な実施形態は、ロータの構成において異なる。
【0035】
図2及び図3を参照すると、第1の例示的な実施形態では、ロータは、ステータ30の内側に配置された内側ロータシリンダ40を備える。この設計では、ロータは、内側ロータシリンダ40の端部を囲む端板42、44を更に含んでもよく、シャフト26は、シャフト26をロータと接続するために両端板42、44で固定されるよう延在する。ステータ30は、ロータの外部にあり、従って、固定支持部(図示省略、例えばモータフレーム)に容易に固着される。
【0036】
図4及び図5を参照すると、第2の例示的な実施形態では、ロータは、ステータ30の外側に配置された外側ロータシリンダ50を備える。外側ロータシリンダ50は、端板54により一端がシャフト26で固定され、端板54とは反対側の端部は開放されており、ステータ30を固定支持部(図示省略、例えばモータフレーム)に固定するためのアクセスが提供される。
【0037】
図6及び図7を参照すると、第3の例示的な実施形態において、ロータは、ステータ30の内側に配置された内側ロータシリンダ40と、ステータ30の外側に配置された外側ロータシリンダ50との両方を備える。端板54は、内側ロータシリンダ40と外側ロータシリンダ50とを一緒に固定するために設けられており、その結果、それらが一緒に回転してシャフト26が駆動される。オプションで、シャフト26をロータで固定するための追加のアンカーポイントを提供するために、図2及び図3の第1の実施形態のように、端板42が含まれる。
【0038】
ステータ30の外側に配置された外側ロータシリンダ50を含む図4図7の実施形態は、この外側ロータシリンダを省略した図2図3の実施形態に比べて実質的な利点を有する。なぜなら、外側ロータシリンダ50がステータ30に固有のRF及び磁気シールドを提供するからである。これは、図4図7の実施形態の場合にモータにより放出される場を減少させ、また、これらの実施形態においてモータに対する外部場の影響を減少させる。
【0039】
内側ロータシリンダ40は、いくつかの実施形態において、円筒形シートロータであり、これは、ロータのシリンダから成形された薄い金属シートである。同様に、外側ロータシリンダ50は、いくつかの実施形態において、円筒形シートロータである。この設計は、特に外側円筒形シートロータ50の場合に設けられるシールドを強化する。他の実施形態では、内側及び/又は外側ロータシリンダ40、50は、誘電体シリンダ、例えば、誘電体シリンダ上又は誘電体シリンダ内に印刷又は他の態様で形成された導電性ループパターンを有するプリント回路基板(PCB)とすることができる。更に他の実施形態では、内側及び/又は外側ロータシリンダ40、50はかご形ロータとすることができる。
【0040】
図2図7の実施形態は、例示的な例であり、多数の変形が想定される。例えば、外側ロータシリンダ50を含む図4図7の実施形態では、モータフレームに固定するためのステータ30へのアクセスを提供するために、異なる構成が採用されることができる。別の例示的な想定される変形として、回転磁場が生成される限り、三相の代わりに異なる位相スキームが考えられる。例示的なロータ/ステータ設計は円筒形であるが、円板形ロータ/ステータ設計が代替的に考えられる。
【0041】
前述したように、高トルクの達成を可能にするのに十分な磁束を提供するために、誘導モータ内に強磁性材料を含むことが当該技術分野において一般的に必要と考えられる。しかしながら、強磁性材料を有さない開示された誘導モータ20は、注入ポンプ、機械的ファンなどを駆動するなど、多くの用途に十分なトルクを提供することができることが、本書で認識される。
【0042】
図8図10を参照して、これを実証するモータ特性の計算が提示される。三相入力電流の周波数の変化に関して、モータの性能が計算される。トルクが最大化される特定の最適周波数と、モータの急峻度が最大となる最適周波数(必ずしも同じではない)とが存在するであろう。モータの急峻度は性能指標として見られることができ、効率の比較を可能にする。図8図10に示される計算は、図6及び図7の実施形態についてであり、内側及び外側ロータシリンダ40、50の両方を含み、横軸に示す電気的動作周波数を提供するのに有効な数の巻線の組を有する三相電力を仮定した電気的動作周波数の機能として、トルク(図8)、消散電力(図9)、及び二乗トルク/電力(図10)のモータ特性をプロットしたものである。
【0043】
図8は、シートロータの厚さのいくつかの値について、計算されたモータトルク対駆動周波数をプロットしたものである。図8から、この例示的な幾何学的形状は、数kHzの駆動周波数で0.14~0.17N-mmのトルクをもたらすことが分かる。もう一つの顕著な観察は、コイルの数がほんの数個以上のとき、シートの回転周波数は駆動周波数に対して小さい滑り周波数をもたらすことである。その結果、一つの固定周波数を用いてこのモータを駆動することができると予想される(即ち、モータドライバ28はオプションで、固定電気周波数でステータ30に電力を供給するように動作する固定周波数モータドライバであってもよい)。その場合、ベクトル制御は必要とされず、これはモータドライバ28の電子ドライバ設計を簡略化することになる。
【0044】
図1を再び参照すると、医療デバイスを作動させる方法は、医療デバイスを患者に動作可能に接続するステップと、患者に治療を提供するために医療デバイスに原動力を加えるように誘導モータ20を作動させるステップとを含み、誘導モータ20は、強磁性材料を含まず、永久磁石を含まない。斯かる方法は、有利には、患者に治療を提供するために医療デバイスに原動力を適用するために誘導モータ20を作動させるのと同時に、MRI装置4を使用して患者のMRI画像を取得することを更に含むことができる。更なる利点は、誘導モータ20がMRI装置4により生成される磁場に依存しないことである。従って、患者のMRI画像を取得しないとき、及び誘導モータ20がMRI装置により生成される任意の磁場の外側(例えば、MRI室2の外側)に配置された状態で、患者に治療を提供するために医療デバイスに原動力を適用するための誘導モータの作動が繰り返されることができる。図1の例示的な実施形態では、医療デバイスは、注入ポンプ10であり、誘導モータ20は、注入を患者に送達するために、注入流体にポンプ力を適用するように作動される。この方法は、誘導モータ20の作動中に、ロータを使用してステータ30の電磁シールドを提供する(例えば、外側ロータシリンダ50を使用する)ことを更に含むことができる。斯かる方法のいくつかの実施形態では、誘導モータ20の作動は、誘導モータを固定電気周波数で作動させることを含む。
【0045】
図2図7の例示的な実施形態は、シートロータ40、50を使用する。他の実施形態では、前述したように、内側及び/又は外側ロータシリンダ40、50は、誘電体シリンダ、例えば、誘電体シリンダ又はかご形ロータ上又は内に印刷又は他の態様で形成された導電性ループパターンを有するプリント回路基板(PCB)とすることができる。
【0046】
図11は、内側及び/又は外側ロータ40、50の代わりに適切に使用されることができる別の例示的なロータ60を示す。例示的なロータ60は、後述するような三相構成で基板、例えば誘電体形成器64上に配置された導電性ループパターン62A、62B、62Cを含む。例えば、ロータ60は、PCBとして構成されることができる。この場合、基板64がPCBのボードであり、導電性ループ62A、62B、62CがPCBトレースとして実現される。
【0047】
MRI装置4の磁場は、ロータが移動しているときにロータの導電部分に電流を誘導し、その結果減衰トルクがもたらされる。より詳細には、レンツの法則に基づき電圧が誘導され、その結果、導電性経路が存在するとき電流がもたらされる。この電流により消散される電力は、供給されなければならず、ロータの機械的入力動力に加えられる。機械的な動力はトルク及び回転数の積として表されるため、この付加的な動力は回転数に比例したトルクとして観測され、それは純粋な減衰として現れる。誘導電流の大きさは、いくつかの要因:(i)ロータと半径方向に整列する磁場成分の大きさ、(ii)ロータの回転数、及び(iii)導電路の電気抵抗に依存する。ロータ軸と軸方向に整列した磁場成分は無視できるほどの影響を与えるであろう。従って、ロータ軸が局所MRI(漂遊)場と整列しないようにロータが方向付けられる場合、更なる減衰が発生する。好ましくない条件(高B磁場、高回転数)では、この追加の減衰トルクは、モータの性能を著しく制限する場合がある。
【0048】
これを防止するために、例示的なロータ60は、閉じたシート(即ち、シートロータではない)として成形されず、むしろ、1つ又は複数の導電性ループ62A、62B、62Cを備える。これらのループは、ループの半分(半ループHL1として示される)内の誘起電圧が、他の半ループHL2内の誘起電圧の効果を打ち消すように成形される。例示的な例では、これは、8の字に似たパターンを有する導電性ループ62A、62B、62Cにより達成される(交差点において、導体は、例えば、介在する電気絶縁誘電体層を有する異なるPCB層を使用することにより、互いに絶縁されるべきである)。こうして複数のループが構成されることができる。その結果、ロータがこれらの導体で効率的に満たされる。異なる層上のループは、それらが電気的に接続されない限り、互いに重なり合ってもよい。例示的な導電性ループ62A、62B、62Cは、三相のセットであり、各導電ループは、反対の電流方向(例示の目的のために導電ループ62Aに対してのみ矢印で示される)を有する囲まれた領域の大きさが等しくなるよう、閉輪郭を備える。想定される変形例では、相の数は変えられることができ、コイル端部は異なる方法で重なることができ、及び/又はループ形状は変えられることができる(反対の電流方向を有する囲まれた面積が等しいことを保証しつつ)。時計回りの電流方向を有する全ての囲まれた領域の合計が、反時計回りの電流方向を有する全ての領域の合計に等しいという条件で、2つを超えるループ部分を有する設計もまた考えられる。
【0049】
半ループHL1、HL2の向きが逆向きであることに対応するために、ステータは、2つの半分に分割され、180度の位相差で電気的に駆動される(一般に、ステータ励起に対応する半ループ内の誘導電流が同相であるような位相差で)。その結果、2つの半ループが、トルクに対するそれらの寄与を結合する。図11において、分割されたステータは、第1のロータ半ループHL1と磁気的に結合された第1のステータ301と、第2のロータ半ループHL2と磁気的に結合された第2のステータ302とを示す破線で示される。例示的なステータ301、302は、ロータ60の内側に配置される。即ち、ロータ60は、図4及び図5の実施形態におけるように、外側ロータである(しかし、シートロータ50がロータ60により置き換えられる)。図示されていないが、代替的又は追加的な内部シートロータ40が、ロータ60に対応する設計により同様に置き換えられることができる。一般に、例示的なロータ60の設計のロータでは、MRI装置4からの外部磁場の影響が(少なくとも部分的に)打ち消される態様で、導電路が成形され、一方、180°の位相差で駆動される第1及び第2のステータ301、302の使用によりステータ電流の影響が最大化される。
【0050】
図12を参照すると、ロータ60が再び示される。図12の構成では、導電性ループ62A、62B、62Cは、それぞれの整流子ブラシ70A、70B、70Cに接続され、その結果、制御された電流が、それぞれの整流子ブラシ70A、70B、70Cを介して、ロータの導電性ループ62A、62B、62Cを通り送られることができる。図2図7の実施形態のモータは、(図11のロータ60によりロータ40、50が置き換えられるとしても)誘導モータとして分類されることができるのに対して、整流子70A、70B、70Cを介して駆動されるロータ60の導電性ループ62A、62B、62Cを有する図12の実施形態は、誘導モータとして分類されない。なぜなら、それは誘導電流を利用しないからである。図12の実施形態の幾つかの利点は、ロータ電流が誘導電流と比較してより大きくされることができ、及び/又は最適トルクを達成するために電流の位相が制御されることができることである。
【0051】
本発明が、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。前述の詳細な説明を読み及び理解すると、修正及び変更を他者は思い付く場合がある。本発明は、添付の請求項の範囲及びその均等物の範囲内に入る限り、斯かる全ての修正及び変更を含むよう構成されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12