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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】生体吸収性の逸流足場
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20240530BHJP
【FI】
A61F2/90
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020572587
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CA2019050304
(87)【国際公開番号】W WO2019173912
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】62/641,891
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520353385
【氏名又は名称】フルイド バイオテック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Fluid Biotech Inc.
【住所又は居所原語表記】803 Rideau Road SW,Calgary,Alberta T2S 0S1,CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミタ,アリム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ジョン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャムシーディ,メフディ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0221670(US,A1)
【文献】特開2014-176656(JP,A)
【文献】特開平11-197252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体壁によって画定される頭蓋内血管の体腔内に配置するための弾性変形可能な管状体を備える血管内デバイスであって、前記管状体は前記頭蓋内血管内の動脈瘤から血液の流れを逸らすために前記動脈瘤の頸部を横切って拡張するように構成され、前記管状体は拡張時に3mmと7mmとの間の直径を有し、前記管状体は織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維と弾性変形可能な金属ワイヤとの編組を含み、前記生体吸収性ポリマー繊維は30μm~80μmの範囲の直径を有し、前記管状体は少なくとも38本のポリマー繊維及び2~12本の弾性変形可能なワイヤを含み、前記弾性変形可能な金属ワイヤは(i)前記管状体の前記ポリマー繊維の径方向および/または軸方向での拡張を促進および/または維持するように構成され、且つ、(ii)イメージングを容易にするように構成された放射線不透過性材料を含み、前記放射線不透過性材料は、放射線不透過性金属を含む、デバイス。
【請求項2】
体壁によって画定される頭蓋内血管の体腔内に配置するための弾性変形可能な管状体を備える血管内デバイスであって、前記管状体は前記頭蓋内血管内の動脈瘤から血液の流れを逸らすために前記動脈瘤の頸部を横切って拡張するように構成され、前記管状体は拡張時に3mmと7mmとの間の直径を有し、前記管状体は織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維と弾性変形可能な金属ワイヤとの編組を含み、前記生体吸収性ポリマー繊維は30μm~80μmの範囲の直径を有し、前記デバイスが拡張されたときに、前記編組は60%~80%の範囲の多孔度を有し、前記弾性変形可能な金属ワイヤは(i)前記管状体の前記ポリマー繊維の径方向および/または軸方向での拡張を促進および/または維持するように構成され、且つ、(ii)イメージングを容易にするように構成された放射線不透過性材料を含み、前記放射線不透過性材料は、放射線不透過性金属を含む、デバイス。
【請求項3】
前記管状体の前記弾性変形可能な金属ワイヤの前記放射線不透過性材料が視覚化助剤を提供する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
複数のポリマー繊維は、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(l-アスパルタミド)、DLPLA-ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(L-乳酸)、LPLA-ポリ(l-ラクチド)、PDO-ポリ(ジオキサノン)、PGA-TMC-ポリ(ポリグリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、PGA-LPLA-ポリ(l-ラクチド-co-グリコリド)、PGA-DLPLA-ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)、LPLA-DLPLA-ポリ(l-ラクチド-co-dl-ラクチド)、PDO-PGA-TMC-ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート-co-ジオキサノン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記管状体は、治療薬を含み、前記治療薬は、前記生体吸収性ポリマー繊維に接合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記治療薬は、抗生物質剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、化学療法剤、動脈内血管拡張剤、カルシウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、一過性受容体電位タンパク質遮断薬、エンドセリン拮抗薬、血液希釈剤、抗血小板薬、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記血管の病変に隣接して配置されて、前記病変から血流を逸らすための、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記血管の前記病変は、動脈瘤である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記弾性変形可能な金属ワイヤは、ニッケル-チタン合金またはコバルト-クロム-ニッケル合金を含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記放射線不透過性材料は、ヨウ素またはバリウムを含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項11】
前記放射線不透過性金属は、タンタル、金、白金、またはそれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項12】
前記管状体の直径は:
7mmであり、生体吸収性ポリマー繊維が9°以下のピッチ角で織り合わされている;
5mmであり、生体吸収性ポリマー繊維が12°以下のピッチ角で織り合わされている;
4mmであり、生体吸収性ポリマー繊維が16°以下のピッチ角で織り合わされている;または、
3mmであり、生体吸収性ポリマー繊維が18°以下のピッチ角で織り合わされている;請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが拡張されたときに、前記編組は10孔/mm~32孔/mmの範囲の細孔密度を有する、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項14】
前記弾性変形可能な金属ワイヤは:
前記放射線不透過性材料で被覆されたニッケル-チタン合金;
ニッケル-チタン合金の外層と、前記放射線不透過性材料を含むコアとを備えた延伸充填管(DFT);
前記放射線不透過性材料を含む外層と、ニッケル-チタン合金を含むコアとを備えたDFT;
前記放射線不透過性材料で被覆されたコバルト-クロム-ニッケル合金;
コバルト-クロム-ニッケル合金を含む外層と、前記放射線不透過性材料を含むコアとを備えたDFT;または
前記放射線不透過性材料を含む外層と、コバルト-クロム-ニッケル合金を含むコアとを備えたDFT;
の1つ以上を含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項15】
前記編組は、前記編組の前記織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維と前記弾性変形可能な金属ワイヤとを、前記ポリマー繊維の残留応力を緩和するが前記金属ワイヤの残留応力を緩和しない温度で加熱することにより、形状設定される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ポリマー繊維の形状が設定されているが、前記金属ワイヤは形状設定されていない、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項17】
前記編組は、38~96本の生体吸収性ポリマー繊維を含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
この開示は、哺乳動物の生体の体腔内に移植するための生体吸収性ポリマー繊維の編組で作られた足場に関する。本開示の特定の態様は、血管に関連する病変から血流を逸らすように構成された、そのような編組製の足場に関する。
【0002】
2.関連出願
この出願は、米国特許出願62/641891号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
3.関連技術の説明
様々な病変を治療するために体内の血管に移植される当該技術分野で知られた多くの医療デバイスが存在する。例えば、動脈瘤は血管壁の局部的な脆弱スポットによって引き起こされる外向きに膨出した風船様の構造である。動脈瘤は壁が薄くて弱いため、破裂する危険がある。動脈瘤を治療するための「流れを逸らす」足場が提案されており、それによって動脈瘤の頸部に広がるようにステントが挿入され、動脈瘤を通る流れを逸らせて動脈瘤を治癒させる。このように、流れを逸らすことにより動脈瘤に入る必然性がなくなる。そのような逸流足場は、例えば、米国特許第871531号明細書および米国特許第8267986号明細書に記載されている。米国特許第871531号明細書および米国特許第8267986号明細書は、編組金属ワイヤ製の足場を記載している。パイプライン(登録商標)Flex塞栓術デバイス(Medtronic社)は、大型または巨大で広い頸部を有する頭蓋内動脈瘤の血管内治療に使用される。パイプライン(登録商標)Flex塞栓術デバイスは、75%コバルトクロム/25%白金タングステン製ワイヤからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第871531号明細書
【文献】米国特許第8267986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野で知られている逸流足場の金属組成は、欠点を提供する。それらは永久的でかつ取り除くことができないので、血栓症のリスク(このリスクにより患者は抗血小板薬の長期投与を受け続けること必要とする)、過形成、血管内腔の再形成または拡張の阻止、および血管閉塞のリスクを含む種々の欠点を呈示する。金属製の足場はまた、それらが反射する信号が明るすぎる傾向があるので、移植後のCTおよびMRIイメージングの状況では欠点を呈示する。
【0006】
したがって、疾患の予防または治療を可能にしながら、移植部位での生体のネガティブな応答を排除または低減する移植可能なデバイスが必要とされている。生体吸収性足場は、非永続性を含め、金属足場に比較して利点を有する。しかしながら、臨床研究では、生体吸収性冠動脈で血栓症のリスクがより高いことが示された(Masayuki et al.,Circulation 136,A15796-A15796;Raeber et al.,ACC(Journal Am. Coll. Cardiol. 66,1901-1914;Kang et al.,ACC Cardiovasc. Interv. 9,1203-1212)。さらに、ワクスマン等(Circ. Cardiovasc. Interv. 10,e004762)は、PLLAの生体吸収性ポリマーの性質を持たせて作製された足場の血栓形成能が高いことを実証している。
【0007】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて、以下の本発明の特定の実施形態の説明を検討したときに、当業者には明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様は、体壁によって画定された体腔内に配置するための弾性変形可能な管状体を具備したデバイスであって、この管状体は、織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維の編組を含み、当該管状体は少なくとも38本のポリマー繊維を含む、デバイスに関する。様々な実施形態において、当該デバイスが拡張された形態にあるとき、編組は、約5%~約80%の範囲の多孔度を有する。様々な実施形態において、当該デバイスが拡張された形態にあるときに、編組は約60%~約80%の範囲の多孔度を有する。
【0009】
本開示の態様は、体壁によって画定される体腔内に配置するための弾性変形可能な管状体を備えるデバイスであって、この管状体は、織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維の編組を含み、当該デバイスが拡張形態にあるときに、編組は約60%から約80%の範囲の多孔度を有する、デバイスに関する。様々な実施形態において、管状体は、少なくとも38本のポリマー繊維を含む。
【0010】
上記デバイスの様々な実施形態において、編組は、38~96本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は少なくとも44本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は少なくとも46本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は少なくとも48本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は少なくとも72本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態では、編組は44本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は46本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は48本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態では、編組は72本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。様々な実施形態において、編組は少なくとも96本の生体吸収性ポリマー繊維を含む。
【0011】
上記デバイスの様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は少なくとも約30μmの直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約30μm~約80μmの範囲の直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約40μmの直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約50μmの直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性は約60μmの直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約70μmの直径を有する。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約80μmの直径を有する。
【0012】
上記デバイスの様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、2-アンダー-2-オーバー-2パターンで織り合わされる。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、1-オーバー-2-アンダー-2パターンで織り合わされる。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、1-オーバー-1-アンダー-1パターンで織り合わされる。
【0013】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体の直径は約4mmである。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約16°以下のピッチ角で織り合わされる。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約14°以下のピッチ角で織り合わされる。
【0014】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体の直径は約5mmである。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、約12°以下のピッチ角で織り合わされる。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約10°以下のピッチ角で織り合わされる。
【0015】
上記のデバイスの様々な実施形態において、管状体の直径は約3mmである。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、約18°以下のピッチ角で織り合わされる。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、約16°以下のピッチ角で織り合わされる。
【0016】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体の直径は約7mmである。実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は約9°以下のピッチ角で織り合わされる。
【0017】
上記デバイスの様々な実施形態において、デバイスが拡張された形態にあるとき、編組は約10細孔/mm~約32細孔/mmの範囲の細孔密度を有する。
【0018】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体は、さらに視覚化助剤を含む。様々な実施形態において、視覚化助剤は放射線不透過性材料を含む。様々な実施形態において、放射線不透過性材料はヨウ素またはバリウムを含む。様々な実施形態において、視覚化助剤は、放射線不透過性材料を含む少なくとも1本のワイヤを含み、各ワイヤは、複数の生体吸収性ポリマー繊維と織り合わされて編組の一部を形成する。
【0019】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体は、体腔内における管状体の径方向および/または軸方向の拡張を促進および/または維持するための手段を備える。様々な実施形態において、体腔内の管状体の拡張を促進および維持するための手段は、少なくとも1本のワイヤであり、各ワイヤは、複数の生体吸収性ポリマー繊維と織り合わされて編組の一部を形成する。様々な実施形態において、少なくとも1本のワイヤは、放射線不透過性材料を含む。
【0020】
上記デバイスの様々な実施形態において、当該少なくとも1本のワイヤは、弾性変形可能なワイヤである。様々な実施形態において、この弾性変形可能なワイヤは、ニッケル-チタン合金またはコバルト-クロム-ニッケル合金を含む。様々な実施形態において、各ワイヤは独立して、放射線不透過性材料で被覆されたニッケル-チタン合金、ニッケル-チタン合金の外層と放射線不透過性材料を含むコアを備えた延伸充填管(DFT:drawn filled tube)、放射線不透過性材料を含む外層およびニッケル-チタン合金を含むコアを備えたDFT、放射線不透過性材料で被覆されたコバルト-クロム-ニッケル合金、コバルト-クロム-ニッケル合金の外層および放射線不透過性材料を含むコアを備えた(DFT)、または、放射線不透過性材料を含む外層およびコバルト-クロム-ニッケル合金を含むコアを備えたDFTを含む。
【0021】
上記デバイスの様々な実施形態において、放射線不透過性材料はヨウ素またはバリウムを含む。
【0022】
上記デバイスの様々な実施形態において、放射線不透過性材料は、放射線不透過性金属を含む。様々な実施形態において、放射線不透過性金属は、タンタル、金、白金、またはそれらの組み合わせである。
【0023】
上記デバイスの様々な実施形態において、少なくとも1本のワイヤは、タンタル被覆ニチノール製ワイヤを含む。
【0024】
上記デバイスの様々な実施形態において、少なくとも1本のワイヤは、ニチノール製の外層および白金製のコアを備えたDFTを含む。
【0025】
上述のデバイスの様々な実施形態において、少なくとも1本のワイヤは、2本のワイヤ、3本のワイヤ、4本のワイヤ、5本のワイヤ、6本のワイヤ、7本のワイヤ、8本のワイヤ、9本のワイヤ、または10本ワイヤを含む。
【0026】
上記のデバイスの様々な実施形態において、複数のポリマー繊維には、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(l-アスパルタミド)、DLPLA-ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(L-乳酸)、LPLA-ポリ(l-ラクチド)、PDO-ポリ(ジオキサノン)、PGA-TMC-ポリ(ポリグリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、PGA-LPLA-ポリ(l-ラクチド-co-グリコリド)、PGA-DLPLA-ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)、LPLA-DLPLA-ポリ(l-ラクチド-co-dl-ラクチド)、PDO-PGA-TMC-ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート-co-ジオキサノン)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。様々な実施形態においては、複数のポリマー繊維には、ポリラクチド(PLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、DLPLA-ポリ(dl-ラクチド)、ポリ-L-乳酸)、LPLA-ポリ(l-ラクチド)、PGA-LPLA-ポリ(l-ラクチド-co-グリコリド)、PGA-DLPLA-ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)、LPLA-DLPLA-ポリ(l-ラクチド-co-dl-ラクチド)、またそれらの任意の組み合わせが含まれる。様々な実施形態において、複数のポリマー繊維は、ポリ-L-乳酸(PLLA)を含む。
【0027】
上記デバイスの様々な実施形態において、管状体は、生体吸収性ポリマー繊維に接合された治療薬を含む。様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は治療薬でコーティングされる。様々な実施形態において、治療薬は、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮痛薬、筋弛緩薬、化学療法薬、動脈内血管拡張薬、カルシウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、一過性受容体電位タンパク質遮断薬、エンドセリン拮抗薬、血液希釈剤、抗血小板薬、またはそれらの任意の組み合わせである。様々な実施形態において、治療薬は、アスピリン、ヘパリン、チカグレロル、5-フルオロウラシル、メルファラン、またはクロピドグレルである。様々な実施形態において、治療薬は、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、テモゾラミド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、アザチオプリン、メトトレキサート、シスプラチン、またはビンクリスチンである。
【0028】
上記デバイスの様々な実施形態において、体腔は血管の管腔である。様々な実施形態において、血管は頭蓋内血管である。様々な実施形態において、デバイスは、血管の病変部に隣接して配置されて、血流を病変部から逸らすためのものである。様々な実施形態において、病変は、動脈瘤、癌、感染症、冠動脈疾患、頸動脈アテローム性動脈硬化症、または頭蓋内アテローム性動脈硬化症である。
【0029】
上記デバイスの様々な実施形態において、当該デバイスは、体壁の病変または当該体壁の近位にある病変に隣接した部位において体腔内に配置され、当該部位に乳酸を供給するためのものである。
【0030】
本開示の態様は、体腔内に配備されて、当該体腔を画定する体壁の病変または当該体壁の近位にある病変を治療するための、上記で規定されたデバイスの使用に関する。本開示の態様は、体腔内に配備して、当該体腔を画定する体壁の病変または当該体壁の近位にある病変に治療薬を送達するための、上記で規定されたデバイスの使用に関する。本開示の態様は、体腔内に配備して、当該体腔を画定する体壁の病変または当該体壁の近位にある病変の部位に乳酸を送達するための、上記で規定されたデバイスの使用に関する。様々な実施形態において、体壁は血管の壁である。様々な実施形態において、血管は頭蓋内血管である。様々な実施形態において、病変は、動脈瘤、癌、感染症、冠動脈疾患、頸動脈アテローム性動脈硬化症、または頭蓋内アテローム性動脈硬化症である。
【0031】
本開示の態様は、体壁の病変または当該体壁の近位にある病変を治療する方法であって、この方法は、病変の近位の位置で体壁によって画定された体腔内に、上記で規定されたデバイスを配備することを含む、方法に関する。本開示の態様は、体壁の病変または当該体壁の近位にある病変の部位に乳酸を送達する方法に関し、この方法は、病変の近位にある部位において、体壁によって画定される体腔内に上記のようなデバイスを配備することを含む。様々な実施形態において、体壁は血管の壁である。様々な実施形態において、血管は頭蓋内血管である。様々な実施形態において、病変は、動脈瘤、癌、感染症、冠動脈疾患、頸動脈アテローム性動脈硬化症、または頭蓋内アテローム性動脈硬化症である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、第1の実施形態による織り合わされた生体吸収性ポリマー繊維の編組を含む移植可能なデバイスの等角図である。
図2図2は、48本の織り合わされたポリL-乳酸(PLLA)ポリマー繊維を含む移植可能な血管内デバイスの実施形態の写真である。
図3図3は、デバイスの弾性変形性を示す48本の織り合わされたポリL-乳酸(PLLA)ポリマー繊維を含む移植可能な血管内デバイスの実施形態を示す写真である。
図4図4は、ピッチ角を示す、織り合わされた繊維の編組を含む埋め込み可能なデバイスの概略図である。
図5図5は、本開示のデバイスを製造するために有用な編組機の概略図である。
図6A図6Aは、織り合わされた生体吸収性ポリマー繊維の編組および放射線不透過性材料を含む、本発明の第2の実施形態による移植可能なデバイスの等角図である。
図6B図6Bは、図6Aに示したデバイスの側面図である。
図7A図7Aは、44本の織り合わされたポリL-乳酸(PLLA)ポリマー繊維および4本の放射線不透過性ワイヤを含む移植可能な血管内デバイスの実施形態を示す写真である。
図7B図7Bは、図7Aのデバイスの拡大図である。
図8A図8Aは、46本の織り合わされたポリL-乳酸(PLLA)ポリマー繊維および2本の放射線不透過性ワイヤを含む移植可能な血管内デバイスの実施形態の写真である。
図8B図8Bは、図8Aのデバイスの拡大図である。
図9A図9Aは、動脈瘤を治療するための逸流適用の概略図である。
図9B図9Bは、動脈瘤を治療するための逸流適用の概略図である。
図10図10は、動脈瘤ブリッジング適用と組み合わせた逸流適用の略図である。
図11A図11Aは、デバイス移植前に撮影された初期動脈相血管造影図であり、動脈瘤の先端に二次瘤を有するウサギ頸動脈内に作成された動脈瘤を示す図である。
図11B図11Bは、デバイス移植前の図19A(上記と同じ血管造影の実行)に示された同じ動脈瘤の初期静脈相血管造影図であり、娘嚢以外での急速なコントラストのウォッシュアウトを示す図である。
図11C図11Cは、デバイスの配置後の図19Aおよび図19Bに示す同じ動脈瘤の初期静脈相血管造影図であり、逸流効果を示す動脈瘤本体におけるコントラストのよどみ(stagnation)を示す図である。
図12A図12Aは、44本の生体吸収性PLA繊維および放射線不透過性タンタル被覆ニチノール繊維を含むデバイスの移植直後の、ウサギ大動脈の血管造影図である。
図12B図12Bは、デバイス移植の1ヶ月後における図14Aに描かれたウサギ大動脈の血管造影図である。
図13図13は、デバイス移植の1ヶ月後におけるウサギ大動脈側枝の持続的開存性を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図14図14は、ウサギの大動脈への移植後の、44本の生体吸収性PLA繊維および4本の放射線不透過性タンタル被覆ニチノール繊維を含むデバイスの全体的な組織像である。
図15図15は、デバイスをウサギ大動脈に移植した1ヶ月後における、ステント支柱上の滑らかな新内膜層の形成を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図16A図16Aは、デバイス移植の1ヶ月後におけるポリマー繊維の持続性および繊維を覆う新生内膜形成を示す、ウサギ大動脈の組織学的断面図である。
図16B図16Bは、デバイスの埋め込みから2ヶ月後のポリマー繊維の持続性、繊維を覆う新生内膜形成、および活発な炎症反応の欠如を示すウサギ大動脈の組織学的断面図である。
図17図17は、生体吸収性PLLAポリマー繊維のみからなる本明細書に開示の実施形態によるデバイスの写真であり、内径0.027インチのカテーテルに装填され、その後押し出された後に自己拡張するその能力を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<定義>
本明細書で使用される「病変」は、疾患、状態、または障害を構成または特徴付ける、正常からの構造的および機能的な逸脱を指す。
【0034】
本明細書で使用される「含む」は、「含むがこれに限定されない」ことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「からなる」は、「含み且つそれに限定される」ことを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「薬物」または「治療薬」は、疾患を予防または治療するための活性剤として使用できる様々な薬物、医薬化合物、他の生物活性剤の任意のものを指すことができる。
【0037】
「生体吸収性」、「生分解性」、および「生体再吸収性」は、本明細書では同意語として使用され、生体組織または生体系において経時的に分解または溶解される材料または構造を指す。
【0038】
本明細書で使用される「体腔」は、限定されるものではないが、血管、尿管、尿道、胆管を含む、哺乳動物の生体の管状構造によって画定される空洞を指す。
【0039】
本明細書で使用される「壁」は、限定されるものではないが、血管壁、尿管壁、尿道壁、胆管壁を含む、哺乳動物の生体の管状構造を形成する組織を指す。
【0040】
本明細書で使用される「足場」は、体腔に挿入され得る管状構造体を指す。足場には、閉塞した通路に挿入してそれらを開いたままにし、血液または他の流体の流れを回復できるステントが含まれる。足場には、閉塞した通路を開いたままにすることを主な目的としたものではなく、流体の流れを逸らすことを目的としたデバイスも含まれる。足場は、新生内膜の成長といった組織成長のサポートとしても機能する。足場はまた、治療薬の送達のためのプラットフォームとしても機能し得る。足場は、金属またはプラスチックのいずれかでできていてよい。
【0041】
本明細書で使用される「視覚化助剤」は、X線透視法による画像化を容易にする任意の構造を指す。
【0042】
本明細書で使用される「弾性変形可能」は、曲げられた、伸ばされた、圧縮された、または他の形に変形した形状から解放されると、元の形状に自律的に戻ることができる物体に関する。
【0043】
本明細書で使用される「血管内デバイス」は、体腔または体管内に移植できる補綴物を指す。
【0044】
本明細書で使用される「繊維」は、それから生地が形成されるフィラメント、糸、巻きひげ(テンドリル)、またはストランドを指す。
【0045】
本明細書で使用される「ポリマー繊維」は、架橋または重合された一連の繰り返しモノマー単位を含む繊維を指す。本明細書に開示される幾つかの実施形態では、単一のポリマーのみが使用される。別の実施形態では、2つ以上のポリマーの組み合わせを使用してもよい。別の実施形態では、ポリマーを、放射線不透過性材料と共に使用できる。ポリマーおよびポリマーの組み合わせを様々な比率で使用して、異なる特性を提供することができる。本発明で使用できるポリマーには、例えば、安定性ポリマー、生体安定性ポリマー、耐久性ポリマー、不活性ポリマー、有機ポリマー、有機無機コポリマーまたは無機ポリマーが含まれる。適切なポリマーは、生体吸収性、生体適合性、生体再吸収性、再吸収性、分解性、および生分解性ポリマーである。
【0046】
本明細書で使用される「逸流」は、体液流が病変部位から離れて逸れることを指す。
【0047】
本明細書で使用される「多孔度」は、完全に拡張された形態のデバイスについて、総面積に対する自由面積の比率であり、ここでの自由面積は、総面積から材料の表面積を引いたものに等しい。換言すると、開いていて繊維を含まない全デバイス壁表面積の割合である。
【0048】
この開示は、一般に、病変の予防または治療のいずれかにおける移植可能なデバイス、製造方法および使用に関する。本明細書で明確に定義されていない用語または表現は、当業者が理解する一般に受け入れられる定義を有するものとする。以下の説明が本発明の特定の実施形態または特定の使用に関するものである限り、説明のみを意図したものであり、本発明を限定するものではなく、全体として詳細な説明と一致し且つ特許請求の範囲と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0049】
図1および図2を参照すると、本発明の第1の実施形態による、体液の逸流を達成するために体腔に関して配置するためのデバイスが、一般的に10で示されている。図2を参照すると、デバイス10は、編み込まれた生体吸収性ポリマー繊維16の編組14で形成された弾性変形可能な管状体12を備えている。図1を参照すると、管状体12は、デバイス10が体腔内に配備されるときに、体液が流れ続けることを可能にする管腔18を画定する。重なり合う生体吸収性ポリマー繊維16が、細孔22を画定する。
【0050】
現在説明されている実施形態において、編組14は、48本の生体吸収性ポリマー繊維からなっている。しかし、逸流を、わずか38本の生体吸収性ポリマー繊維および多くて96本の生体吸収性ポリマー繊維からなる編組で達成してもよい。逸流に有用な本開示のデバイスの様々な実施形態において、編組は、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、または94本の生体吸収性ポリマー繊維を含み得る。逸流に有用な現在開示されているデバイスの特定の実施形態において、編組は、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、または94本の生体吸収性ポリマー繊維からなることができる。
【0051】
逸流が必要でないか、または望まれない用途の場合、本開示の発明における編組は、わずか20本の生体吸収性ポリマー繊維、18本の生体吸収性ポリマー繊維、16本の生体吸収性ポリマー繊維、14本の生体吸収性ポリマー繊維、または12本の生体吸収性ポリマー繊維を含むことができるであろう。
【0052】
現在ここで説明する実施形態において、編組14は、50μmの直径を有する生体吸収性ポリマー繊維16からなる。本明細書に開示される逸流に有用なデバイスを製造するために有用な生体吸収性ポリマー繊維は、少なくとも約30μmの直径を有し、一般には約30μm~約80μmの範囲の直径を有することになる。逸流に有用な現在開示されているデバイスの様々な実施形態において、生体吸収性ポリマー繊維は、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、または約80μmの直径を有するものである。当業者は、この範囲内の任意の直径を有する生体吸収性ポリマー繊維が、逸流デバイスの製造に有用であり得ることを理解するであろう。
【0053】
逸流デバイスの場合、管状体は、マイクロカテーテルを通して、また様々な用途において、蛇行した血管を通して頭蓋内循環系に送達できるように、高い可撓性を有することが望ましい。したがって、生体吸収性ポリマー繊維の直径の上限は、管状体の所望の可撓性、ならびにデバイスが配備される体腔の直径によって決定される。
【0054】
図3は、48本のポリ-L-乳酸(PLLA)生体吸収性繊維からなるデバイスの、可撓性および弾力性のある変形性を示す写真である。
【0055】
<多孔性>
デバイスの編組の性質は、逸流適用には不可欠である。編組は、十分に高い材料表面積/十分に低い多孔度を備えた管状体の製造を可能にし、それにより管状体の側面を通過する流体の有意な側方流を防ぎ、それによって当該デバイスが広がっている対象の任意の部位から離れるように流体の流れを逸らすことを可能にする。編組はまた、送達のためのマイクロカテーテル内におけるデバイスの折り畳みを可能にする。さらに、生体吸収性ポリマー繊維は相互に対してスライドし、それにより管状体の拡張および収縮を容易にする。
【0056】
逸流適用の場合、多孔度は最も重要な設計要素の1つである。より低い多孔度は、動脈瘤嚢の中への血流のより低い入口速度および出口速度をもたらし、それにより、血栓形成および早期閉塞の機会を増大させる。BWステントの多孔度を下げると、動脈瘤および親動脈壁の両方において壁せん断応力(WSS)もまた減少する。一方、動脈瘤嚢のドーム内の圧力は、多孔度が減少するにつれて上昇し、それによって現在臨床試験中の逸流足場に関連した動脈瘤破裂のリスクが増大する。
【0057】
逸流適用において、管状体の多孔度は、約60%~約80%の範囲が望ましい。好ましい実施形態において、多孔度は、約60%~約70%の範囲である。本明細書に開示されるデバイスの様々な実施形態において、多孔度は、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%である。様々な実施形態では、10細孔/mm~約32細孔/mmの範囲の細孔密度が望ましい。特定の実施形態において、細孔密度は約18細孔/mmである。当業者は、管状体の多孔度が減少するにつれて、管状体の可撓性/変形性が減少し得ることを理解するであろう。したがって、多孔度を下げることができる限界は、管状体に必要な可撓性によっても知ることができる。
【0058】
<ピッチ角>
編組プロセスのピッチ角は、その拡張された形態における管状体の材料表面積および多孔度に影響を与える重要な要素であり、したがってデバイスの逸流能力に影響する。ピッチ角はさらに、変形に対するデバイスの弾力性、したがって自己拡張性に影響を与える。図4を参照すると、本開示の実施形態によるデバイスの弾性変形可能な管状体が、一般的に212で示される。管状体212は、複数の生体吸収性ポリマー繊維216を備えている。重なり合う生体吸収性ポリマー繊維216は、細孔218を画定する。管状体212は、編組が製造されるときのマンドレル230上に描かれている。編組のピッチ角250は、生体吸収性ポリマー繊維216と管状体212の横軸260との間に形成される角度である。
【0059】
図5を参照すると、編組のピッチ角260は、事実上、生体吸収性繊維280が担体240からマンドレル250まで延在するときの生体吸収性繊維280と、マンドレル250の横軸270との間に形成される角度によって決定される。
【0060】
ピッチ角、管状体の直径要素、および生体吸収性ポリマー繊維の直径要素が一緒になって管状体の多孔度に影響を与え、デバイスの流れを逸らす能力に影響を与える。したがって、典型的な逸流デバイスの範囲における多孔度を達成するために、これら変数を、使用される生体吸収性ポリマー繊維または管状体の直径に応じて調整する必要がある。例えば、50μmの直径有する生体吸収性ポリマー繊維および4mmの所望の管状体直径の場合、ピッチ角は約16°以下、または約15°以下でなければならない。5mmの所望の管状体直径の場合、ピッチ角は約12°以下、または約11°以下でなければならない。
【0061】
3mmの所望の管状体直径の場合、ピッチ角は約18°以下、または約17°以下でなければならない。所望の管状体の直径が7mmの場合、ピッチ角は約9°以下でなければならない。以下の表1は、管状体の直径、繊維の直径、およびピッチ角の適切な組み合わせに関する一般的なガイダンスである。ただし、当業者は、ここに示されている組み合わせが限定を意図するものではなく、適切な多孔度を達成するために各要素を適宜調整することは、十分に当業者の能力の範囲内であることを理解するであろう。
【0062】
【表1】
【0063】
達成可能なピッチ角は、ポリマー繊維の品質にも依存する。何故なら、ピッチ角は繊維に張力を与え、繊維を破損させる可能性があるからである。一般に、ピッチ角が小さいほど多孔度は低くなり、材料の表面積が大きくなる。より小さな直径の繊維を追加するほど、当該デバイスについてより低いピッチ角、したがってより低い多孔度を達成することができるであろう。
【0064】
<生体吸収性高分子繊維>
開示されたデバイスの製造に使用されるポリマー繊維は、生体吸収性のポリマー材料を含んでいる。このポリマー材料は、生体内において、制御された/予測可能なレートおよび既知の期間で分解する。当該分解レートは、ポリマー材料、生体吸収性ポリマー繊維の直径、生理学的条件、管状体の多孔度などに依存し得る。
【0065】
図2に戻って参照すると、図示の実施形態の生体吸収性ポリマー繊維16は、ポリ-L-乳酸(PLLA)を含む。しかしながら、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(l-アスパルタミド)、DLPLA-ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(L-乳酸)、LPLA-ポリ(l-ラクチド)、PDO-ポリ(ジオキサノン)、PGA-TMC-ポリ(ポリグリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、PGA-LPLA-ポリ(l-ラクチド-co-グリコリド)、PGA-DLPLA-ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)、LPLA-DLPLA-ポリ(l-ラクチド-co-dl-ラクチド)、PDO-PGA-TMC-ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート-co-ジオキサノン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む複数の生体吸収性ポリマー繊維の1つ以上を利用できるであろう。
【0066】
幾つかの用途において、瘢痕組織の形成を促進するために、配備されたデバイスの近位にある組織の近くに炎症反応を誘発することが望ましい場合がある。例えば、動脈瘤の治療を目的とした逸流適用では、動脈瘤の頸部において血管壁の瘢痕組織が治癒にともなって促進されることにより、その部位の血管の強度が向上し、動脈瘤が再発生するリスクを減少させ得る。そのような用途では、分解して乳酸を形成する生体吸収性ポリマー繊維を使用する実施形態が有用であり得る。酸性分解生成物が蓄積すると、周囲組織のpHが低下し、病変部位で炎症反応や異物反応が引き起こされる可能性がある。ミニブタの冠状動脈にPLLA足場を埋め込むと、多数の炎症性サイトカインの発現を媒介する炎症マーカーであるNF-kBの発現をもたらす。したがって、本発明の特定の実施形態は、ポリラクチド(PLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、DLPLA-ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(L-乳酸)、LPLA-ポリ(l-ラクチド)、PGA-LPLA-ポリ(l-ラクチド-co-グリコリド)、PGA-DLPLA-ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)、LPLA-DLPLA-ポリ(l-ラクチド-co-dl-ラクチド)、またはそれらの任意の組み合わせを含む生体吸収性ポリマー繊維を利用し得る。
【0067】
本明細書に開示されているデバイスは、軸方向に拡張/拡張または圧縮されたときに、特別な構造的特徴を示す。膨張すると、この構造は、当初は傾斜していた繊維が応力方向に対して平行な位置へと自由に旋回できるため、歪みまたは応力に実質的に順応できる。加えて、個々のポリマー繊維は相互に滑動し、デバイスに対して弾性および可撓性を提供することができる。
【0068】
<視覚化助剤>
この編組アセンブリは、軸方向に伸張または圧縮されたときに、特別な構造的特徴を示す。当初は傾斜していた繊維が応力方向に対して平行な位置へと自由に旋回できるため、伸張すると、当該構造は歪みまたは応力に対して実質的に順応できる。加えて、個々のポリマー繊維は相互に滑動して、デバイスに弾性特性および可撓性の特性を提供できる。
【0069】
体腔内にデバイスを配備する医師が、当該体腔内にあるデバイスの位置を決定できることが重要である。そのため、本明細書に開示されるデバイスは、視覚化助剤を含むことが望ましい。したがって、本明細書に開示される埋め込み型デバイスの様々な実施形態は、X線透視法による体腔内デバイスのイメージングを容易にするために、放射線不透過性材料を含むこととなる。
【0070】
そのような放射線不透過性材料には、タンタル、白金、タングステン、金、ヨウ素、またはそれらの組み合わせが含まれる。放射線不透過性材料は、生体吸収性ポリマー繊維のポリマー材料、イメージング技術、治療すべき病変などに応じて選択することができる。
【0071】
放射線不透過性材料は様々な方法で、例えば、放射線不透過性材料と生体吸収性ポリマー繊維との共有結合、放射線吸収性材料の生体吸収性ポリマー繊維への接着、または他の形態での付着、接触、結合、ブレンドまたは組み込みによって、ポリマー繊維に付着または接触させることができる。
【0072】
図6A、6B、7A、7B、8A、および8Bを参照すると、視覚化助剤を備えた本発明の第2の実施形態に従った、体液の逸流を達成するために体腔に関して配置するためのデバイスが、一般的に310で示されている。デバイス310は、織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維316の編組314で形成された、弾性変形可能な管状体312を備えている。図1を参照すると、管状体312は、デバイス310が生体内に配備されたときに、体液が流れ続けることができる管腔318を画定する。視覚化助剤は4本の放射線不透過性ワイヤ317によって提供され、これは生体吸収性ポリマー繊維316と共に織り合わされて、編組314の一部を形成する。重なり合う生体吸収性ポリマー繊維316および放射線不透過性ワイヤ317は、細孔322を画定する。
【0073】
図7に示される実施形態は、44本の生体吸収性ポリマー繊維および4本の放射線不透過性ワイヤを利用する。図8Aに示される実施形態は、46本の生体吸収性ポリマー繊維および2本の放射線不透過性ワイヤを利用する。ただし、放射線不透過性ワイヤは何本でも視覚化助剤として使用できる。使用される本数は、放射線不透過性材料の性質を含む様々な要素に依存する可能性がある。最少で1本の放射線不透過性ワイヤで十分であるかもしれない。しかし、デバイスを視覚化する機能は、使用される放射線不透過性ワイヤの本数と共に向上する。様々な実施形態において、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、または12本の放射線不透過性ワイヤを利用することができる。好ましくは、偶数の放射線不透過性ワイヤを利用してバランスを維持する。好ましい実施形態では、6本の放射線不透過性ワイヤまたは8本の放射線不透過性ワイヤが利用される。当業者は、デバイスの解像度が放射線不透過性ワイヤの数の増加に伴って減少する可能性があり、したがって、選択された本数によって、画像の検出可能性と鮮明さの間のバランスが反映されることとなることを理解するであろう。
【0074】
上記のように、放射線不透過性ワイヤ317は、タンタル、白金、タングステン、金、ヨウ素、またはそれらの組み合わせ等の放射線不透過性材料を含むことができる。特定の実施形態において、放射線不透過性ワイヤは、弾性的に変形可能であり得る。幾つかの実施形態において、弾性変形可能なワイヤは、ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)、コバルト-クロム合金(例えば、フィノックス)、またはコバルト-クロム-ニッケル合金から作製される。各弾性変形可能なワイヤは、独立して、放射線不透過性材料で被覆されたニッケル-チタン合金、ニッケル-チタン合金の外層および放射線不透過性材料を含むコアを備えた延伸充填管(DFT)、放射線不透過性材料を含む外層およびニッケル-チタン合金を含むコアを備えたDFT、放射線不透過性材料で被覆されたコバルト-クロム-ニッケル合金、コバルト-クロム-ニッケル合金の外層および放射線不透過性材料を含むコアを備えたDFT、または放射線不透過性材料を含む外層およびコバルト-クロム-ニッケル合金を含むコアを備えたDFTで製造されてよい。特別な実施形態において、放射線不透過性ワイヤはタンタルで被覆されたニチノール製ワイヤである。他の実施形態において、放射線不透過性ワイヤには、ニチノール製の外層および白金製コアを有するDFTが含まれる。
【0075】
<拡張の促進および維持>
特に、血管内での逸流適用のためのデバイスにおいて、体腔内での配備時に、現在開示されているデバイスの管状体外面が体壁に密接に密着したままであることが重要である。管状体の外面が血管壁に密着していないと、管状体と血管壁との間の空間に血栓が形成され、血管が閉塞する。本明細書に開示された生体吸収性ポリマー繊維のみを含むデバイスの実施形態は、弾性変形可能ではあるものの、それらは血管内で収縮または部分的に崩壊する傾向がある。さらに、生体吸収性ポリマー繊維は、長期間圧縮状態で保管されると、自己拡張する能力の一部を失う傾向を持つ可能性がある。
【0076】
したがって、本明細書に開示されるデバイスの様々な実施形態は、体壁に密着した管状体の外面を維持するように、体腔内での管状体の径方向の拡張を促進および/または維持する手段を含む。このような手段はまた、デバイスの軸方向の拡張を容易にし、かつ/または維持するのを補助する。したがって、径方向および/または軸方向の拡張を容易にし、かつ/または維持することは、管腔内での配備時におけるデバイスの自己拡張に寄与し得る。
【0077】
体腔内において管状体の径方向および/または軸方向での拡張を促進および/または維持する手段は、複数の生体吸収性ポリマー繊維と織り合わされて編組の一部を形成するワイヤを含み得る。動作中、ワイヤは管状構造に対して径方向の力を及ぼし、配備時における径方向の拡張を容易にし、管状構造体を体壁に押し付けて管状構造を完全に拡張した形態に維持し、体壁に密着させる。特定の実施形態において、ワイヤは弾性変形可能である。弾性変形可能なワイヤは、ニッケル-チタン合金またはコバルト-クロム-ニッケル合金を含み得る。
【0078】
管状体の径方向および/または軸方向の拡張を容易にし、維持するためには、最少で単一のワイヤで十分であり得る。ただし、それが拡張するときに管状体が及ぼす径方向の力は、使用されるワイヤの数と共に増加することとなる。様々な実施形態では、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、または12本の放射線不透過性ワイヤを利用することができる。好ましくは、偶数の放射線不透過性ワイヤを利用してバランスを維持する。好ましい実施形態では、6本の放射線不透過性ワイヤまたは8本の放射線不透過性ワイヤが利用される。
【0079】
同じワイヤが、視覚的助剤として、ならびに径方向および/または軸方向の拡張を容易にし、かつ/または維持するための手段の両方として使用され得ることが、当業者には容易に明らかであろう。したがって、ワイヤは、タンタル、白金、タングステン、金、ヨウ素、またはそれらの組み合わせのような放射線不透過性材料を含むことができる。特定の実施形態において、放射線不透過性ワイヤは弾性変形可能であることができる。幾つかの実施形態において、弾性変形可能なワイヤは、ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)、コバルト-クロム合金(例えば、フィノックス)、またはコバルト-クロム-ニッケル合金から作製される。各弾性変形可能なワイヤは、独立して、放射線不透過性材料で被覆されたニッケル-チタン合金、ニッケル-チタン合金の外層および放射線不透過性材料を含むコアを備えた延伸充填管(DFT)、放射線不透過性材料を含む外層およびニッケル-チタン合金を含むコアを備えたDFT、放射線不透過性材料で被覆されたコバルト-クロム-ニッケル合金、コバルト-クロム-ニッケル合金の外層および放射線不透過性材料を含むコアを備えたDFT、または放射線不透過性材料を含む外層およびコバルト-クロム-ニッケル合金を含むコアを備えたDFTで製造されてよい。特別な実施形態において、放射線不透過性ワイヤはタンタルで被覆されたニチノール製ワイヤである。他の実施形態において、放射線不透過性ワイヤには、ニチノール製外層および白金製コアを有するDFTが含まれる。
【0080】
したがって、金属ワイヤ部品は、少なくとも3つの独立した利点:すなわち、1)X線透視法による放射線不透過性、したがって視覚化を可能にできること、2)自己拡張性を向上させること、および、3)径方向の拡張を維持するための径方向の力(破砕力および慢性的な外向きの力)を向上させて、管状壁の外壁を体壁に密着させた状態に維持することを提供することができる。
【0081】
<製造>
図4および図5を再度参照すると、本明細書に開示されたデバイスは、例えば、個々の織り合わせた生体吸収性ポリマー繊維、および(様々な実施形態では)放射線不透過性ワイヤから形成して、管状体を形成する編組を作製することができる。
【0082】
例えば、「メイポール型」の機械で管状体を編組することにより、体腔内に配備するデバイスを製造するための、既知のレーザー切断技術の必要性が回避される。その代わりに、様々な直径の生体吸収性ポリマー繊維を、マンドレル上において様々なピッチ角で編んで、編まれた中空の管状体を様々な多孔度で作成できる。編組は、構造の長手方向の軸に対してバイアスされた状態で交絡する生体吸収性繊維の組を備えた線形の繊維アセンブリであってよい。編組は、時計回りまたは反時計回りの交絡状またはらせん状の繊維であってよい。
【0083】
編組または交絡繊維の幾つかのパターンを使用することができる。本発明は以下の例、すなわち、「1-オーバー-1-アンダー-1」または「ハーフロード」パターン、「2-アンダー-2-オーバー-2」もしくは「ダイアモンド」パターン、「1-アンダー-2-オーバー-2」(または「1-オーバー-2-アンダー-2」とも呼ばれる)、もしくは「フルロード」パターン、または他の変形のいずれにも限定されない。
【0084】
1-アンダー-2-オーバー-2パターンの場合、48キャリアマシンを使用して48本の繊維デザインを作成できる。1-オーバー-1-アンダー-1パターンの場合、48本のファイバーをも含む設計では96キャリアマシンが必要である。所望のパターンは、管状体の幅、生体吸収性ポリマー繊維の直径、および特定の生体吸収性ポリマーを含む幾つかの要素に依存し得る。例えば、2-アンダー-2-オーバー-2は編組の厚みが増すので、このパターンで作成できる可能な管状体の選択枝に影響する。
【0085】
図5を参照すると、上述のように、編組のピッチ角は、キャリア250からマンドレル270へと延在するときの、生体吸収性ポリマー繊維280(またはワイヤ290)とマンドレル270の横軸275(すなわち、マンドレル270の長手方向に垂直な軸)との間で形成される角度である。
【0086】
図5をさらに参照すると、選択的には放射線不透過性のワイヤを含む実施形態では、編組製品内で力が釣り合うように、ワイヤ290は対向するキャリア240上で対をなすように装着(ロード)されるのが好ましい。
【0087】
ワイヤの元の形状を設定するための熱処理を必要とする弾性変形可能な放射線不透過性ワイヤを含む本明細書に開示される実施形態に関して、幾つかの実施形態では、ワイヤの形状を設定する必要がないか、または望ましくない。ただし、ワイヤの元の形状を設定する必要がある場合は、形状をストレートに設定(または「アニーリング」)しないように注意することが重要である。これは、拡張時に管状体によって加えられる下流側の放射部に悪影響を与え、カテーテルを通して変形または送達された後に管状体を適切に拡張させることができなくなるからである。したがって、ワイヤをマンドレル上で形状設定することが好ましい。しかし、生体吸収性高分子繊維を用いてマンドレル上でワイヤを成形することは望ましくない。何故なら、ワイヤを形状設定するためには当該ワイヤを摂氏500度以上の温度に加熱する必要があり、このワイヤと同時に生体吸収性ポリマー繊維がマンドレル上に存在すれば、溶融してしまうからである。1つのオプションは、ポリマー繊維を伴わずにワイヤをマンドレル上で形状設定することである。次に、形状設定されたワイヤをボビンに巻き戻し、生体吸収性ポリマー繊維と共に編むことができる。別のオプションは、最終的な編組デザインをより低い温度で形状設定することであり、これにより、(例えば)ポリマー繊維への任意の残留応力が緩和される。これにより、最終的な設計では、本質的に生体吸収性ポリマー繊維の形状が設定されるが、放射線不透過性ワイヤは形状設定されない。別の選択肢は、上記で述べたように、ワイヤまたは生体吸収性ワイヤ繊維の形状設定を単純に放棄することである。
【0088】
幾つかの金属ワイヤは、製造時に足場の端部でフレア状になる可能性があり、送達時に体壁(血管など)に穴が開く可能性がある。金属ワイヤのフレア形成は、足場がマンドレルから切断される場所にも依存する。例えば、2つの金属ワイヤが重なるポイントで足場が正確に切断されれば、フレア状になりにくくなる。したがって、幾つかの実施形態では、金属ワイヤを一緒にはんだ付けすることが好ましい場合がある。
【0089】
<治療薬の送達>
本明細書に開示されたデバイスはまた、体腔を画定する体壁の病変またはその近傍の病変に治療薬を送達するためにも有用であり得る。管状体の生体吸収性ポリマー繊維は、治療薬でコーティングされているか、または治療薬が接合していてもよく、或いは、治療薬は生体吸収性ポリマー繊維内に組み込まれてもよい。治療薬は、病変を治療するために時間をかけて徐々に放出されてよい。血管に移植するための血管内デバイスの関連において、治療薬は、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮痛薬、筋弛緩薬、化学療法薬、動脈内血管拡張薬、カルシウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬、一過性の受容体電位タンパク質遮断薬、エンドセリン拮抗薬、血液希釈剤、抗血小板薬、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0090】
様々な実施形態において、治療薬は、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、テモゾラミド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、アザチオプリン、メトトレキセート、シスプラチン、またはビンクリスチンを含むことができる。動脈瘤の治療のために本明細書に開示される逸流デバイスの特定の状況において、治療薬は、アスピリン、ヘパリン、チカグレロル、5-フルオロウラシル、メルファラン、またはクロピドグレルなどの1種以上の抗凝血薬/抗血小板薬を含むことができる。
【0091】
治療薬はまた、それらの薬学的に許容可能な塩または誘導体の形態で、また、キラル活性成分の場合に使用されてよい。光学活性異性体およびラセミ化合物の両方、またはジアステレオ異性体混合物を使用することも可能である。同様に、治療薬には、化合物または分子のプロドラッグ、水和物、エステル、誘導体または類似体が含まれ得る。
【0092】
上記のように、ポリマー材料自体は、幾つかの状況において分解時に乳酸を与えることがあり、これは、動脈瘤のような病変部位における体壁の治癒および強化に役立つ可能性がある。
【0093】
治療薬は、制御された期間にわたって溶出することができ、これは副作用を最小限にするために効果的であることが示されている。本明細書に開示されるデバイスは、病変に近接した部位に配置され得る。このようにして、治療薬を疾患部位にターゲッティングする一方、治療薬は疾患を含まない器官には分配されない可能性があるので、治療薬の経口投与または静脈内投与の場合のような副作用を最小限に抑えることができる。
【0094】
少なくとも2つのメカニズムが、治療薬の放出動態を制御し得る。すなわち、1)濃度勾配によって、治療薬がバルクポリマーを介して外部に拡散する拡散制御メカニズム、および2)治療薬の放出が、ポリマー材料の加水分解または他の分解、およびポリマー繊維表面の侵食に依存する分解制御メカニズムである。
【0095】
本開示のデバイスは、治療薬の初期の放出が、疾患の遅延した臨床症状に対応するように延期され得るように構成できる。治療薬の放出の所望のタイミングは変動する可能性があり、例えば、既に疾患を患っている患者にとっては即時的であってよい。或いはは、当該デバイスは、疾患または病状を発症するリスクが高い患者において予防的に使用でき、その場合には、薬物放出の所望のタイミングを遅れさせればよい。
【0096】
本開示のデバイスはまた、当該治療薬の放出を、別の治療薬の導入、生理学的状態、または体腔内の任意の変化によって引き起こされるように構成され得る。
【0097】
<操作>
弾性変形可能な管状体を含む本開示のデバイスは、体腔内に配備されると自己拡張することができる。拡張の程度は、ポリマー材料、ポリマーの結晶化度、ポリマー繊維の直径、管状体の直径、織りのピッチ角、生理学的条件、ポリマーのアニーリング温度、または放射線不透過性材料または同様の部品などの含まれている材料の構造的寄与に依存する。本明細書に開示されるデバイスの様々な実施形態は、生体内において、メモリー自己拡張を示し得る。
【0098】
本明細書に開示されるデバイスにおける弾性的に変形可能で且つ自己拡張するという管状体の特徴は、それらが体腔内カテーテルでの移植のために径方向に圧縮された状態で構成されることを可能にする。体腔内の病変に隣接して適切に配備されると、当該デバイスは、管状体の外面が体腔を画定する体壁に密着するように、径方向および軸方向に拡張することができる。デバイスの径方向の拡張は、カテーテルに取り付けられたバルーンの膨張によって支援されることができる。
【0099】
本明細書に開示されるデバイスは、送達を容易にするため、または速やかに配備するために、例えば、鞘またはマイクロカテーテルなどのキットに事前装填されてよい。このキットは、本明細書に開示されるようなデバイスを患者に挿入するのに適した送達システム内に事前に装填し、体腔、例えば患者の血管系を通してデバイスを送達し、患者の体内において、デバイスを移植するための所望の位置に当該デバイスを配備することを含み得る。送達システムは、鞘、カテーテル、ガイドワイヤ、および/または血管デバイスの挿入、送達、案内、展開、および移植のための任意の他の素子、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0100】
本開示の一実施形態によれば、血管内デバイスは、血流を下流の血管内領域または疾患部位から逸らすように構成されてよい。特に、未破裂または破裂した脳動脈瘤を予防または治療するために、血管網を介して血液を逸らすことが必要になる場合がある。図9Aおよび9Bを参照すると、血管内デバイス910は、動脈瘤916の近位にある血管壁918に画定される体腔912内に配置され、管状体914が完全に拡張されると、管状体の外面は血管壁918に密着し、動脈瘤の頸部919に広がるように拡張することができる。したがって、編組の多孔度が低いと、動脈瘤916の頸部を通過する血液の流れを逸らす。同時に、編組は少量の血液が低速で動脈瘤嚢の中に入るのを可能にするように十分に多孔性であり、それにより、動脈瘤の血栓症および閉塞が生じて、動脈瘤の治癒を可能にする。図9Bを参照すると、編組は十分に多孔性であり、十分な血液が細孔を通って健康な血管の枝、例えば分岐920に流れるようになっており、当該デバイスはこれら分枝を跨ぎ、または部分的に跨ぐことができ、それによってこれら分枝の開通性を維持する。
【0101】
別の実施形態では、本明細書に開示された実施形態による血管内デバイスを使用して、動脈瘤の中に配備されたコイルを支持し、例えば、動脈瘤ブリッジングによる親血管への脱出を防止することができる。血管内デバイスは、金属コイルまたはバルーンと組み合わせて、体腔に適合するように構成されてもよい。図10を参照すると、動脈瘤頸部1019は広い可能性がある。そのような状況において、血管内デバイス1010は頸部1019を形状変化させ、かつ、動脈瘤1016内に配置された金属コイル1030を支持する役割を果たすことができる。血管内デバイスは、例えば、血管壁1018によって画定される体腔1012内を金属コイルが移動するのを防ぐことができ、例えば、コイルが親血管の中に入るのを防ぐことができる。処置後、血管内デバイス1010は、典型的にはその場に残されるが、幾つかの実施形態では除去されてもよい。別の実施形態では、血管内デバイスは体腔に適合して、金属コイルを任意の方法で支持するように構成されてもよい。
【実施例
【0102】
<実施例>
本発明の特定の実施形態を説明および図示してきたが、そのような実施形態は本発明の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本発明を限定するものと見なされるべきではない。
【0103】
実施例1
図4を参照して、分子量30,000g/mol、直径50μmのポリ-L-乳酸の生体吸収性ポリマー繊維48本でデバイスを作製した。
【0104】
実施例2
図7を参照して、分子量30,000g/mol、直径50μmのポリL乳酸の生体吸収性高分子繊維44本で構成され、タンタル被覆ニチノールの4本の放射線不透過性繊維が織り込まれたデバイスを作製した。このデバイスを、動物の血管、すなわちウサギの大動脈で試験したところ、いずれの血管も閉塞することなく、重要な血管側枝を開いたままにしておくことができた。
【0105】
図11Aおよび11Bは、デバイスを移植する前の初期動脈相および初期静脈相中の動脈瘤の血管造影の経時的写真である。図11Bに示されている動脈瘤からの信号の急速なウォッシュアウトは、動脈瘤への流体の流れを示している。対照的に、図11Cは、デバイスの移植後の初期の静脈相を示しており、信号は動脈瘤に保持されている。これは、血液がもはや動脈瘤に自由に流れていないこと、およびデバイスが首尾よく流れを動脈瘤から逸らせていることを示している。
【0106】
図12Aおよび12Bを参照すると、デバイスが配置されたウサギの大動脈は、デバイスが配置された大動脈の持続的な血管造影開存性を示し、かつ、1ヶ月後でも「ジェイルされた(jailed)」側枝を示した(図12B)。図13は、デバイスを移植した1ヶ月後のウサギ大動脈における、側枝の持続的開存性を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0107】
図14を参照すると、デバイスは優れた血管壁の同格性を示した。
【0108】
図15は、デバイスの移植1ヶ月後の管状体の内面上に形成される、滑らかな新生内膜層を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0109】
図16Aは、ウサギ大動脈の組織学的断面図であり、デバイスの移植1ヶ月後のポリマー繊維の持続および繊維上の新生内膜形成を示している。
【0110】
図16Bは、ウサギ大動脈の組織学的断面図であり、デバイスの移植2ヶ月後におけるポリマー繊維の持続性、繊維を覆う新生内膜の形成、および活発な炎症反応の欠如を示している。
【0111】
2ヶ月の時点での組織学における活発な炎症反応の欠如は、生体吸収性ポリマー繊維の細い直径(約50ミクロン)によるものと考えられている。本願で開示されている足場は、以前にFDAが承認したレーザーカット生体吸収性ステント(Abbott Vascular社によりAbsorbBVSステントとして上市されている)の太い支柱とは対照的である。
【0112】
2ヶ月目での組織学によって示される、この生体内部の内側表面を覆う新生内膜の形成、活発な炎症反応の欠如は、デバイスの血管壁との生体適合性を実証している。ポリマー材料に対する血液の反応は、望ましくない血栓症または溶血を引き起こす可能性があるので重要である。当該デバイスの血栓形成性を、血栓反応の点で、先導する金属性逸流デバイス(いわゆるパイプライン(登録商標))の血栓形成性と比較した。本開示のデバイスは、表2および表3に示されるように、いわゆるパイプライン(登録商標)と比較して血栓表面被覆率%が低く、溶血指数が低いことを示した。
【0113】
表2は、パイプライン(登録商標)と比較して、本開示のデバイスの低い血栓症表面被覆率%(ISO規格に従って行われた試験)を示す。
【0114】
【表2】
【0115】
表3は、(ASTM標準に従って行われた)インビトロ溶血試験の結果を提供し、パイプライン(登録商標)と比較して、本願で開示されるデバイスのより低い溶血指数を示す。
【0116】
【表3】
【0117】
理論に拘泥するものではないが、生体吸収性ポリマー繊維の小さな直径(約50μm)は、この観察された生体適合性に寄与すると考えられる。比較すると、以前にFDAが承認した、直径約150μmのファイバーを備えた比較的太い高分子ファイバー(AbsorbBVSとしてAbbott Vascular社から上市されている)は血栓症を引き起こす傾向があった(Expert Opin Drug Deliv. 2016 Oct;13(10):1489-99を参照されたい)。
【0118】
実施例3
図8Aを参照して、分子量30,000g/mol、直径50μmのポリL乳酸の生体吸収性ポリマーファイバー46本を、タンタル被覆ニチノール製の2本の放射線不透過性ファイバーと織り合わせてデバイスを作製した。このデバイスを動物の血管で試験したところ、血管を閉塞することなく重要な血管側枝を開いたままにすることができた。
【0119】
本発明の特定の実施形態を説明および図示してきたが、そのような実施形態は本発明の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるべき本発明を限定すると見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17