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  • 特許-病原体感染防止ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】病原体感染防止ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
A61G10/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021050963
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149036
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-229696(JP,A)
【文献】実開昭50-070787(JP,U)
【文献】特開2011-041765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0221554(US,A1)
【文献】特開2010-017225(JP,A)
【文献】特開2010-252965(JP,A)
【文献】特開2019-107425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00-10/04
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板(1a)と側板(1b~1e)から外板を構成されて、室内に設置される病原体感染防止ユニット(1)であって、
当該病原体感染防止ユニット(1)は、病原体感染防止ユニット(1)内に設けられた後壁(2)と病原体染防止ユニット(1)の側板(1b、1c、1e)と天井(3)及びパンチングパネル(4)により形成された診察室(S)と、
当該診察室(S)内を仕切り部材(5)で仕切り構成された、医療従事者エリア(S1)と前記パンチングパネル(4)を上部に有する患者エリア(S2)と、
前記医療従事者エリア(S1)の天井(3)に設けられて高速で吹き出すスリット状の吹出口(7)と、
前記患者エリア(S2)内へ前記室内の空気を取り込む差圧保持ダンパ(12)と、
前記患者エリア(S2)の医療従事者エリア(S1)と面する反対側に、後壁(2)により仕切られて下部に吸込口(13)を有し前記患者エリア内の空気を吸込口(13)から吸い込んで上方へ移動させるレタンシャフト(8)と、
前記レタンシャフト(8)の側板(1d)の下方に設置される前記室内の空気を取り込む差圧保持ダンパ(12A)と、
前記レタンシャフト(8)へ吸い込まれた空気を清浄してプレナムチャンバー(6)内に清浄空気として供給するファンフィルタユニット(14)と、
前記医療従事者エリア(S1)内に吹出した清浄空気のうち、前記差圧保持ダンパ(12)で取り込んだ空気量である余剰空気を前記感染防止ユニット(1)が設置された室内に吹出す側板の下方に位置する通気口(10)を備えていることを特徴とする病原体感染防止ユニット。
【請求項2】
前記患者エリア(S2)内へ前記パンチングパネル(4)を通じて下方へ供給する清浄空気の量を調節する調節機構(3A)を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の病原体感染防止ユニット。
【請求項3】
前記仕切り部材(5)は、透明であり、医療従事者が診察椅子に着座し患者を診察する時に、医療従事者の両手が位置する高さ個所の患者エリア内に向けて手袋(20)が、手の入り口を前記医療従事者エリア(S1)側に設けて密閉して固着していることを特徴とする請求項1又は2記載の病原体感染防止ユニット。
【請求項4】
前記仕切り部材(5)は、ビニールカーテンで形成され、天井(3)と側板(1c,1e)との接触部位はファスナーで密閉固定可能であり、室内の床との接触部位は裾がばたつかない固定可能な封止の重りなどの固定手段があることを特徴とする請求項1~3のいずれか1記載の病原体感染防止ユニット。
【請求項5】
前記医療従事者エリア(S1)に出入りするための医療従事者用出入り口(9)と、前記患者エリア(S2)に出入りするための患者用出入り口(11)とが、それぞれの動線が前記仕切り部材(5)をまたがないよう別々に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
【請求項6】
前記医療従事者エリア(S1)内が陽圧に、前記患者エリア(S2)内が微陰圧に、前記レタンシャフト(8)の下方が強陰圧とされていることを特徴とする
請求項1~5のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
【請求項7】
前記上板(1a)と側板(1b~1e)から外板を構成された前記病原体感染防止ユニット(1)内に設けられた後壁(2)と病原体染防止ユニット(1)の側板(1b、1c、1e)と天井(3)及びパンチングパネル(4)により形成された診察室(S)は、分解可能であり、分解後移動可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設・PCR検査施設などの診察室を有する病院施設や、老健施設(介護老人保健施設)や特別養護老人ホームなど、病気に対する抵抗力が低下した高齢者が多数居住する施設において使用する、病原体感染防止ユニットに関し、特に、患者や検査対象物から発生した病原体が医療従事者や取り扱い従事者(以下、医療従事者)に感染するのを防止するための病原体感染防止ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療従事者と患者とがお互いに着座して向き合う診察室内で医療従事者が患者を診察する際に、患者が保持している細菌やウイルス等の病原体が医療従事者に感染するのを防止することを目的として、各種技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室と、前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉と、を備え、前記前室と前記診療室との仕切りから見て前記コンテナの一方の妻側面側に当該前室が形成され他方の妻側面側に当該診療室が形成されて、当該コンテナの内部の長手方向にて当該前室と当該診療室とが区分されていることを特徴とする設置型の医療用コンテナが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6787618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に記載の技術では、コンテナの内部に設けられ医療従事者が感染症の患者を診療する診療室と、前記コンテナの内部に設けられ前記診療室との間に扉を介して仕切られる前室が必要で有り、診療室全体が大型化してしまう。
また、前記診療室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか一方が入室する診療室扉と、前記前室に対して前記医療従事者および前記患者の何れか他方が入室するとともに、前記診療室扉から入室する前記一方の動線と当該前室に入室する当該他方の動線とが異なるように設けられる前室扉と、を備え、診療室に設けられた吸気口から吸気した空気は前記医療従事者から前記患者へ流れ、最後に陰圧設備に流れて行くので、吸気口から吸気した空気が医療従事者や患者に衝突することにより乱流となるため、患者から発生した病原体が拡散され、医療従事者の呼吸域に入り、医療従事者に空気感染するリスクが高くなるといった問題があった。
さらに、医療従事者と患者とがお互いに着座して向き合う診察となるため患者が咳やくしゃみをすると飛沫が医療従事者にかかる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、医療施設・PCR検査施設などの診察室を有する病院施設や、老健施設(介護老人保健施設)や特別養護老人ホームなど、病気に対する抵抗力が低下した高齢者が多数居住する施設に設置することができ、患者から発生した病原体が医療従事者に感染するのを確実に防止することのできる病原体感染防止ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を下記の手段より解決した。
〔1〕上板1aと側板1b~1eから外板を構成されて、室内に設置される病原体感染防止ユニット1であって、
当該病原体感染防止ユニット1は、病原体感染防止ユニット1内に設けられた後壁2と病原体染防止ユニット1の側板1b、1c、1eと天井3及びパンチングパネル4により形成された診察室Sと、
当該診察室S内を仕切り部材5で仕切り構成された、医療従事者エリアS1と前記パンチングパネル4を上部に有する患者エリアS2と、
前記医療従事者エリアS1の天井3に設けられて高速で吹き出すスリット状の吹出口7と、
前記患者エリアS2内へ前記室内の空気を取り込む差圧保持ダンパ12と、
前記患者エリアS2の医療従事者エリアS1と面する反対側に、後壁2により仕切られて下部に吸込口13を有し前記患者エリア内の空気を吸込口13から吸い込んで上方へ移動させるレタンシャフト8と、
前記レタンシャフト8の側板1dの下方に設置される前記室内の空気を取り込む差圧保持ダンパ12Aと、
前記レタンシャフト8へ吸い込まれた空気を清浄してプレナムチャンバー6内に清浄空気として供給するファンフィルタユニット14と、
前記医療従事者エリアS1内に吹出した清浄空気のうち、前記差圧保持ダンパ12で取り込んだ空気量である余剰空気を前記感染防止ユニット1が設置された室内に吹出す側板の下方に位置する通気口10を備えていることを特徴とする病原体感染防止ユニット。
〔2〕前記患者エリア(S2)内へ前記パンチングパネル(4)を通じて下方へ供給する清浄空気の量を調節する調節機構(3A)を備えている
ことを特徴とする〔1〕記載の病原体感染防止ユニット。
〔3〕前記仕切り部材(5)は、透明であり、医療従事者が診察椅子に着座し患者を診察する時に、医療従事者の両手が位置する高さ個所の患者エリア内に向けて手袋(20)が、手の入り口を前記医療従事者エリア(S1)側に設けて密閉して固着していることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の病原体感染防止ユニット。
〔4〕前記仕切り部材(5)は、ビニールカーテンで形成され、天井(3)と側板(1c,1e)との接触部位はファスナーで密閉固定可能であり、室内の床との接触部位は裾がばたつかない固定可能な封止の重りなどの固定手段があることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
〔5〕前記医療従事者エリア(S1)に出入りするための医療従事者用出入り口(9)と、前記患者エリア(S2)に出入りするための患者用出入り口(11)とが、それぞれの動線が前記仕切り部材(5)をまたがないよう別々に設けられていることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
〔6〕前記医療従事者エリア(S1)内が陽圧に、前記患者エリアS2内が微陰圧に、前記レタンシャフト8の下方が強陰圧とされていることを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
〔7〕前記上板(1a)と側板(1b~1e)から外板を構成された前記病原体感染防止ユニット(1)内に設けられた後壁(2)と病原体染防止ユニット(1)の側板(1b、1c、1e)と天井(3)及びパンチングパネル(4)により形成された診察室(S)は、分解可能であり、分解後移動可能であることを特徴とする〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の病原体感染防止ユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、患者側エリアS2内の下降気流速度を遅くできるので、病原体感染防止ユニット内で患者からの飛沫が空気中のエアロゾル等に乗って患者側エリアS2内でかく乱されず、足元から差圧保持ダンパから吸い込まれる気流に乗ってファンフィルタユニットの高性能フィルタにより除去されるので、医療従事者への感染を防止することができる。
また、医療従事者側エリアS1を陽圧に保つ手段として、上板1aと天井3との間をプレナムチャンバー6としてファンフィルタユニット14から中に吹出して陽圧にし、当該医療従事者側エリアS1の天井3の吹出口7から多量に清浄空気を吹出し、その大部分を病原体感染防止ユニットを設置する病室等室内へ抵抗を付けた通気口10から放出するので、医療従事者側エリアS1も陽圧にできるので、患者エリアS2を含む外部又は陰圧部分からの塵埃付着の病原体の侵入を防ぎ、安全に医療従事者を守ることができる。
また、通気口10から病原体感染防止ユニット外部へ放出したのとほぼ同量の空気について、少しを差圧保持ダンパ12を介して患者側エリアS2へ、多くを差圧保持ダンパ12Aを介してレタンシャフト8へ、ファンフィルタユニット14の吸込み力で吸い込むため、患者側エリアS2内を、病原体感染防止ユニットが設置された室内の圧から、差圧保持ダンパ12で設定した差圧分微陰圧にしながら空気を流入することができる。
さらに、医療従事者側エリアS1の気流を早くすることで快適性を向上することができる。
分解可能とすることで、緊急事態ではない平常時には畳んで保管しておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の病原体感染防止ユニットの横断面図である。
図2図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明の病原体感染防止ユニットの横断面図、図2図1のA-A断面図であり、本実施例において、病原体感染防止ユニットは、医療施設・PCR検査施設などの診察室を有する病院施設や、老健施設(介護老人保健施設)や特別養護老人ホームなど、病気に対する抵抗力が低下した高齢者が多数居住する施設内に設置して使用される。
【0011】
図1図2において、1は病原体感染防止ユニットあり、上板1aと4つの側板1b、1c、1d、1eから構成されている。同図において、1bは医療従事者側の背中側に位置する側板、1cは患者側の側面に位置する側板、1dは前記側板1bに対向して設けられた側板、1eは前記側板1cに対向して設けられた側板である。
【0012】
なお、本発明の実施態様において病原体感染防止ユニット1は、医療施設・PCR検査施設などの診察室を有する病院施設や、老健施設(介護老人保健施設)や特別養護老人ホームなど、病気に対する抵抗力が低下した高齢者が多数居住する施設などの室の床に設置して使用するものであり下板を設けていないが下板を設けることで持ち運びを容易にすることができる。
2は前記病原体感染防止ユニット1内に設けられた後壁、3は天井、4はパンチングパネルであり、前記側板1b、1c、1e、後壁2、天井3及びパンチングパネル4により前記病原体感染防止ユニット1内に診察室Sが構成される。
3Aは前記天板3の上に設けられた、側壁1bと側壁1dとの方向に可動な、側壁1cと側壁1eとの間の長さの長辺を有するスライド天板からなる空気の量を調節する調節機構であり、図1において左右に移動させ前記パンチングパネル4の風通面積を可変にすることで下方の患者側エリアSへ供給する清浄空気の量を調節することができる。
【0013】
本実施の形態においては、パンチングパネル4はアルミニウム板を用いているが、ステンレス板や鉄板を用いても良い。また、板厚、孔配列、孔径、ピッチ、開孔率などについては、後述する吹出口(スリット)7の吹出し気流抵抗よりも、その通過速度での気流抵抗が大きくなるような形態であることが基本であり、目的に応じて適宜選択することができる。
【0014】
5は、医療従事者と患者との間に設けられた仕切り部材であり、当該仕切り部材5により前記診察室S内を医療従事者エリアS1と患者側エリアS2とに分けている。
なお、本発明の実施態様においては、仕切り部材5として透明なビニール―カーテンを用いているので、前記医療従事者エリアS1と患者エリアS2との圧力差により仕切り部材5が患者エリアS2内に張り付くのを防止するため仕切り部材5の下端部に重りを設けたり、仕切り部材5の下端部を前記病原体感染防止ユニット1が設置されている医療施設・PCR検査施設などの診察室を有する病院施設や、老健施設(介護老人保健施設)や特別養護老人ホームなど、病気に対する抵抗力が低下した高齢者が多数居住する施設の床に面ファスナー等を用いて固定する。また、透明なビニール―カーテンである仕切り部材5の密閉させる固定として、天井3、側壁1c,1eへも、仕切り部材5の側辺を面ファスナーなどで固定する。
【0015】
また、仕切り部材5には、医療従事者が診察椅子に着座し患者を診察する時に医療従事者の両手が位置する個所の患者エリア内に向けて手袋20が、手の入り口を前記医療従事者エリアS1側に設けて密閉して固着して設けられている。
手袋20に関しては、患者の診察が終了し患者エリア内を消毒する際に、手袋20を消毒・除染しても良いし、また、手袋20に患者毎に別の手袋20を重ねて使用し、患者の診察が終了後に患者エリアS2内を消毒する際に、手袋20を交換しても良い。
これにより医療従事者は、手袋20を使用して患者を診察することで患者からの感染を防止することができる。
【0016】
6は前記上板1aと天井3及びパンチングパネル4との間に構成され、後述するファンフィルタユニット14のファンの吐出圧力を受けるプレナムチャンバーである。
7は天井3と側板1bとの間に設けられた吹出口(スリット)であり前記プレナムチャンバー6から供給される清浄空気を医療従事者エリアS1へ供給する。
【0017】
8は前記病原体感染防止ユニットの機密を確保した側板1dと診察室Sの後壁2との間で構成されるレタンシャフト(風道)である。
9は医療従事者側の背中側の側板1bに設けられた医療従事者側出入り口であり医療従事者は当該医療従事者側出入り口9から医療従事者エリアS1に出入りする。
なお、本発明に実施の形態においては、医療従事者エリアS1は陽圧となっているので医療従事者側出入り口9として引き戸を用いているが、これに限定されるものでなく開き戸を用いてもよい。
【0018】
10は、前記医療従事者側出入り口9、又は側壁1bに設けられた通気口(ガラリ)であり医療従事者エリアS1内の余剰空気を病原体感染防止ユニット1から、設置されている室内へ排出する。
11は、患者エリアS2の側方の側壁1cに設けられた患者側出入り口であり患者は当該患者側出入り口11から患者エリアS2に出入りする。
なお、本発明に実施の形態においては、患者エリアS2は微陰圧となっているので患者側出入り口11として開き戸を用いているが、これに限定されるものでなく医療従事者側出入り口と同様に開き戸を用いてもよい。
12は、前記患者側で患者側出入り口11に設けられた、比較的気密性の高い室の室圧保持を目的とする差圧保持ダンパであり、前記病原体感染防止ユニット1が設置された室内の空気Aを患者エリアS2に取り込みながら、設置室内の圧力からダンパの重りにより規定できる所定の差圧分、患者エリアS2の内部圧を微陰圧にする。
前記レタンシャフト8の下方に室内の空気Aを取り込む差圧保持ダンパ12Aを設けて、設置室内の圧力からダンパの重りにより規定できる所定の差圧分、レタンシャフト8の下方の内部圧を強陰圧にする。
【0019】
本実施形態の病原体感染防止ユニットは非常時に使用するユニットとなる可能性を考慮し診察室S(医療従事者エリアS1、患者側エリアS2)の温湿度維持は病原体感染防止ユニットを設置する室内の空気の快適な温湿度に頼る。
このように診察室Sへは設置する室内の空気を差圧保持ダンパ12と差圧保持ダンパ12Aから取り込むので適切な温湿度環境を確保することができる。
13は、前記後壁2の下部に設けられた吸込口であり、患者エリアS2内の病原体を含む可能性のある空気B2を前記レタンシャフト8へ、ファンフィルタユニット14のファンの吸込み側静圧により吸い込む。
【0020】
14は、ファン15とHEPAフィルタ16を備えたファンフィルタユニットであり、前記病原体感染防止ユニット1のプレナムチャンバー6の入り口に設けられ、レタンシャフト8から空気B2を、ファン15の吸込み口側吸込み力を搬送力としてレタンシャフト8上部を最も負圧として吸込み、ファン15の吐出側にある高性能フィルタ16を通して空気B2の中に存在する可能性のある固体である病原体をろ過して、空気Bとしてプレナムチャンバー6内に加圧して供給する。
なお、電力で動作する機器であるファン15は小型で電源送りだけの簡単な構造であり、ファンフィルタユニット14自体も軽量である。そのほかの部材は仮設置のために平板同士は蝶番や閂などで簡単に取り外したり畳んだりすることができる軽量なパネル材であり、すべては容易に組み立てバラシができる。
【0021】
上記のように構成された病原体感染防止ユニットの動作について、当該病原体感染防止ユニットを検査施設診察室内に設置した場合で説明する。
前記検査施設診察室内に設置された病原体感染防止ユニット1のファンフィルタユニット14を稼働させると、患者エリアS2内に滞留している空気Aは、差圧保持ダンパ12から吸い込まれてくる空気に押されながら、前記後壁2に設けられた吸込口13を通ってレタンシャフト8内に吸い込まれ、さらに多い風量の設置室内空気を差圧保持ダンパ12Aを介してレタンシャフト8の下方から吸い込み、混合しながら還り空気として持ち上がったのち、ファンフィルタユニット14のファン15でレタンシャフト8から空気B2を、ファン15の吸込み口側吸込み力を搬送力としてレタンシャフト8上部を最も負圧として吸込み、ファン15の吐出側にある高性能フィルタ16を通して空気B2の中に存在する可能性のある固体である病原体をろ過して除去されてプレナムチャンバー6内へ加圧して供給される。
このような空気の流れにおいて、前記差圧保持ダンパ12により設定された差圧により設置室内から所定の微陰圧とされた患者エリアS2には、差圧保持ダンパ12を介して検査施設診察室内の空気が取り込まれる。
【0022】
そして、前記高性能フィルタ16を通してプレナムチャンバー6内に供給された清浄空気Bの大部分の空気B1は、プレナムチャンバー6内から前記側板1bに向かって送られ当該側板1bにより進行方向を変えられ、前記天井3と側板1bとの間に設けられた吹出口(スリット)7から前記側板1bに沿って前記医療従事者エリアS1に供給される。
その後、陽圧に医療従事者エリアS1を保って降下した空気B1は当該医療従事者エリアS1に滞留している空気B11を伴って、既定の陽圧分を設置室の室圧から持ち上げるための通気抵抗を有する通気口10から、前記病原体感染防止ユニット1が設置された部屋内に排出される。必要に応じて、屋外に放出してもよい。
これにより感染防止と診察の両立を目的とした医療従事者エリアS1側は、換気の回数を確保しつつ、吹出し部のコアンダ効果も利用しながらある程度の風速により医療従事者にあたりながら降下するので、清涼感を与えることができる。
【0023】
また、前記プレナムチャンバー6内に供給された清浄空気の一部B2は、パンチングパネル4により風速を遅くされ患者エリアS2に供給され、前記差圧保持ダンパ12から患者エリアS2内に取り込まれた空気Aに巻き込まれながら、前記後壁2に設けられた排出口13を通ってレタンシャフト8内に吹出される。
そして清浄空気の一部B2を巻き込んだ空気Aは、レタンシャフト8の下方にある差圧保持ダンパ12Aを介して取り込まれた空気と混合され、還り空気として持ち上がったのち、前記ファンフィルタユニット14で気中の病原体を含む塵埃を除去されてプレナムチャンバー6内へ還流される。
このように、患者エリアS2内へはパンチングパネル4により風速を遅くされた清浄空気B2が上から供給されるので、患者から排出される息に含まれている飛沫による汚染物質等を下に流すことで細菌が患者エリアS2内の上方に滞留するのを防ぎ、飛沫による汚染物質等をレタンシャフト8を介して高性能フィルター16によりいち早く除去されるので、医療従事者エリアS1に流れること防ぐことができる。
【0024】
さらに、前記医療従事者エリアS1へはプレナムチャンバー6内の清浄空気Bの大部分の清浄空気B1が供給されるのに対して、患者エリアS2内へは風速が遅くなった一部の清浄空気B2が供給されつつ、患者側出入り口11に設置される差圧保持ダンパ12で規定される設置室内との差圧により陰圧となるので、医療従事者エリアS1は患者側エリアS2に対して陽圧に維持され、患者側エリアS2は医療従事者エリアS1に対して陰圧に維持されるので、患者や検査対象物から発生した病原体から医療従事者の感染を防いでいる。
【0025】
なお、ファンフィルタユニット14の設定個数に関しては、ファンフィルタユニット14を設置する感染防止ユニット1のサイズ、診察室S内の換気回数や循環風量に応じて決定する。
【0026】
上記のように構成された病原体感染防止ユニットの使用方法の実施例について、全体のサイズ、感染防止ユニット内に供給する必要風量等、各エリアへ供給する風量の分配等の一例について説明する。
なお、ファンフィルタユニット14のサイズ、診察室S内の換気回数、循環風量等については目的に応じて決定する
1)病原体感染防止ユニットのサイズ
病原体感染防止ユニットの必要サイズ(W×D×H)は、表1に示すように患者一人と医療従事者一人が入ることを前提として算出した。
【表1】
【0027】
2)病原体感染防止ユニットの必要風量について、表2に示すように換気回数と換気回数毎の循環風量を算出した。
【表2】
【0028】
表2に示すように、換気回数(回/h)は病原体感染防止ユニット内の空気を1時間当たりに換気する回数(回/h)であり、循環風量(m/h)は前記換気回数に対応して病原体感染防止ユニット内を循環(出入り)する1時間当たりの空気の風量である。
【0029】
例えば、病原体感染防止ユニット内の空気を1時間に30回換気する場合は、これに対応して病原体感染防止ユニット内を循環する1時間当たりの空気の循環風量は、160(m/h)となる。
また、病原体感染防止ユニット内の空気を1時間に100回換気する場合は、これに対応して病原体感染防止ユニット内を循環する1時間当たり空気の循環風量は、510(m/h)となる。
このように換気回数を確保することで吹出口(スリット)から医療従事者エリアへ供給された空気はすぐに通気口から設置室内に吹き出されるので医療従事者エリアの温熱環境を快適に保ちやすくすることができる。
【0030】
3)各エリア供給風量の分配と必要風量についてその一例を表3に示す。
【表3】
【0031】
表3に示す吹出風速は、前記ファンフィルタユニット14からプレナムチャンバー6内へ還流された清浄空気Bを吹出口(スリット)7から医療従事者側エリアS1へ吹出だすときの風速とパンチングパネル4から患者側エリアS2に吹出すときの風速である。
【0032】
また、吹出口サイズは医療従事者側エリアS1へ清浄空気を供給する吹出口7のサイズと患者エリアS2へ清浄空気を供給されパンチングパネル4のサイズを表している。前記吹出口は横50mm、縦1,000mmの細長い長方形のスリット型であり、パンチングパネル4は横1,000mm、縦1,100mmのほぼ正方形で構成されている。
開口率は、前記吹出口7とパンチングパネル4の開口率を表す。
吹出風量(m3/h)は、前記プレナムチャンバー6内へ還流された清浄空気Bが吹出口7から医療従事者側エリアS1へ吹出だすときの風量と、パンチングパネル4から患者側エリアS2に吹出すときの風量である。
なお、ファンフィルタユニット14のサイズ、診察室S内の換気回数、循環風量、吹出風速、吹出口サイズ、開口率風量については、目的に応じて適宜選択する
【符号の説明】
【0033】
1:病原体感染防止ユニット
1a:上板
1b:側板(医療従事者側に位置する)
1c:側板(患者側に位置する)
1d:側板(側板1bに対向する)
1e:側板(側板1cに対向)
2:後壁
3:天井
3A:スライド天井(空気量調節機構)
4:パンチングパネル
5:仕切り部材
6:プレナムチャンバー
7:吹出口(スリット)
8:レタンシャフト(風道)
9:医療従事者側出入り口(引き戸)
10:通気口(ガラリ)
11:患者側出入り口(開き戸)
12:差圧保持ダンパ
12A:差圧保持ダンパ
13:排出口
14:ファンフィルタユニット
15:ファン
16:高性能フィルタ
20:手袋


図1
図2