(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】灯具システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240530BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240530BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240530BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240530BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240530BHJP
F21S 41/13 20180101ALI20240530BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20240530BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20240530BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240530BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20240530BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240530BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240530BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240530BHJP
【FI】
B60Q1/00 C
B60Q1/14 Z
F21V14/04
F21V7/00 590
F21V5/04 550
F21S41/13
F21S41/675
F21S41/147
B60Q1/00 G
F21W102:13
F21W103:60
F21Y115:30
F21Y115:10
F21Y101:00 300
F21Y101:00 100
(21)【出願番号】P 2021524864
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021833
(87)【国際公開番号】W WO2020246483
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019104683
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019113909
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一嘉
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011039(JP,A)
【文献】特開2015-174551(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026437(WO,A1)
【文献】特開2013-119357(JP,A)
【文献】特開2014-165130(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026438(WO,A1)
【文献】特開2006-311216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
B60Q 1/14
F21V 14/04
F21V 7/00
F21V 5/04
F21S 41/13
F21S 41/675
F21S 41/147
F21W 102/13
F21W 103/60
F21Y 115/30
F21Y 115/10
F21Y 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子を含む光偏向装置と、
前記光偏向装置へ可視光を照射する可視光源と、
前記光偏向装置へ非可視光を照射する非可視光源と、
前記非可視光源からの光の波長域に感度を有する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記光偏向装置に対して、可視光照射領域に対応する光学素子を第1反射位置に設定する第1モードと、非可視光照射領域に対応する光学素子を第2反射位置に設定する第2モードと、を実行可能であり、
前記第1モードが実行され、かつ、前記可視光源が点灯しているときに、灯具前方の前記可視光照射領域に可視光が照射され、
前記第2モードが実行され、かつ、前記非可視光源が点灯しているときに、灯具前方の前記非可視光照射領域に非可視光が照射され、
前記制御部は、非可視光が灯具前方に照射されている期間の少なくとも一部の期間では、前記撮像部を露光状態とし、非可視光が灯具前方に照射されていない期間の少なくとも一部の期間では、前記撮像部を非露光状態とし、
前記制御部は、前記可視光源と、前記非可視光源とを交互に点灯することを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
前記第1反射位置は、前記可視光源からの光を有効に利用されるように反射し、前記非可視光源からの光を有効に利用されないように反射する位置であり、
前記第2反射位置は、前記非可視光源からの光を有効に利用されるように反射し、前記可視光源からの光を有効に利用されないように反射する位置であることを特徴とする請求項
1に記載の灯具システム。
【請求項3】
前記撮像部は、可視光に対して不感であることを特徴とする請求項
1または
2に記載の灯具システム。
【請求項4】
非可視光が灯具前方に照射されている期間に対する前記撮像部の露光時間の比は、0.8~1.2の範囲であることを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項5】
非可視光を照射して前記撮像部の位置を標示する、前記撮像部に隣接配置される標示ランプをさらに備えることを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載の灯具システム。
【請求項6】
前記制御部は、非可視光に対して感度を有する他車両の撮像部に対応する範囲であって、当該他車両の標示ランプが非可視光を照射して標示する範囲を照射しないように前記光偏向装置を制御することを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載の灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(1)従来、図形字を路面に描画し、自車両や他車両の運転者や周囲の交通参加者にさまざまな情報を提示する技術が提案されている。
【0003】
(2)DMD(Digital Micromirror Device)などの光偏向装置が知られている。光偏向装置は、一般的に、高分解能であり、高速にパターンを切替可能であることから、走行状況に応じて配光を適応的に切り替えるADB(Adaptive Driving Beam)システムや、路面に運転支援のためのパターンを描画する路面描画システムなど、灯具システムへの採用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-165130号公報
【文献】特開2015-64964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)灯具システムあるいは車両ECU(Electronic Control Unit)が、路面に描画された図形を路面標示等として誤検出する場合がある。誤検出すると、検出結果に基づく制御、例えば自動運転に関する制御に悪影響を及ぼしうる。
【0006】
(2)赤外線などの非可視光を照射し、物体による非可視光の反射光を撮像して画像解析することで、車両周囲の状況を把握する技術が知られている。本発明者達は、可視光に加えて、この非可視光の配光も、光偏向装置を用いて制御することを検討している。これにより、たとえは非可視光を複雑な形状の配光パターンにするなど、非可視光の配光の自由度も向上する。
【0007】
ところで、非可視光は、他車両の運転者にはグレアを与えないものの、当該他車両の撮像部であって、当該非可視光の波長域に感度を有する撮像部にはグレアを与えうる。他車両の撮像部に与えるグレアも低減できれば、当該他車両はより精度良く周囲の状況を把握でき、その結果、交通の安全性が高まる。
【0008】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、(1)そのある態様の例示的な目的のひとつは、路面に描画された図形を路面標示等として誤検出するのを抑止できる灯具システムを提供することにある。
【0009】
(2)また、ある態様の例示的な目的の他のひとつは、交通安全に寄与する灯具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具システムは、複数の光学素子を含み、各光学素子は第1反射位置、第2反射位置に傾動可能である、光偏向装置と、光偏向装置に可視光を照射する可視光源と、光偏向装置に非可視光を照射する非可視光源と、可視光源および非可視光源からの光の波長域に感度を有する撮像部と、光偏向装置を制御する制御部と、を備える。第1反射位置に傾動した光学素子は、可視光源からの光を有効に利用されるように反射し、非可視光源からの光を有効に利用されないように反射し、第2反射位置に傾動した光学素子は、非可視光源からの光を有効に利用されるように反射し、可視光源からの光を有効に利用されないように反射し、制御部は、光偏向装置を制御し、複数の光学素子のうちの一部の光学素子を第1反射位置に傾動して可視光により図形を路面に描画し、複数の光学素子のうちの残りの光学素子を第2反射位置に傾動して非可視光を路面に照射する。
【0011】
(2)本発明のある態様の灯具システムは、複数の光学素子を含む光偏向装置と、光偏向装置へ可視光を照射する可視光源と、光偏向装置へ非可視光を照射する非可視光源と、非可視光源からの光の波長域に感度を有する撮像部と、制御部と、を備える。制御部は、光偏向装置に対して、可視光照射領域に対応する光学素子を第1反射位置に設定する第1モードと、非可視光照射領域に対応する光学素子を第2反射位置に設定する第2モードと、を実行可能であり、第1モードが実行され、かつ、可視光源が点灯しているときに、灯具前方の可視光照射領域に可視光が照射され、第2モードが実行され、かつ、非可視光源が点灯しているときに、灯具前方の非可視光照射領域に非可視光が照射され、制御部は、非可視光が灯具前方に照射されている期間の少なくとも一部の期間では、撮像部を露光状態とし、非可視光が灯具前方に照射されていない期間の少なくとも一部の期間では、撮像部を非露光状態とする。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明によれば、路面に描画された図形を路面標示等として誤検出するのを抑止できる。あるいは、(2)本発明によれば、交通安全に寄与する灯具システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態に係る灯具システムのブロック図である。
【
図2】
図1の配光可変ランプが形成するパターンの一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、光偏向装置を示す図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、
図1の灯具システムの動作を説明する図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、
図1の灯具システムの動作を時系列で説明する図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る灯具システムのブロック図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、光偏向装置を示す図である。
【
図10】可視光と非可視光の配光の制御の一例を説明する図である。
【
図11】灯具システムの動作を説明するタイムチャートの一例である。
【
図12】第2の実施の形態の変形例に係る灯具システムのブロック図である。
【
図13】非可視光の配光の制御の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ110と、撮像部130と、ロービーム140と、ハイビーム150と、制御部160と、を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0017】
配光可変ランプ110は、制御部160からパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じたビームBMを出射し、車両前方に制御信号SCTRLに応じた照度分布(パターンPTN)を形成する。
【0018】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも路面をカバーするように定められる。したがって本実施の形態では、配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービーム140の照射エリアの一部とオーバーラップする。したがって配光可変ランプ110は、ロービームよりも明るい照度でパターンPTNを照射してもよい。
【0019】
図2は、配光可変ランプ110が形成するパターンPTNの一例を示す図である。
図2の走行シーンでは、先行車3および対向車4が存在する。破線10は、配光可変ランプ110のビームBMの照射可能なエリアを示す。より詳しくは、配光可変ランプ110は、運転支援のための図形Fを可視光により路面に照射(描画)する。また、詳しくは後述するが、路面に描画されたパターンを路面標示として誤検出される問題を解決するために、配光可変ランプ110は、可視光と同時に非可視光を照射する。配光可変ランプ110は、例えば図示のように図形F以外のパターンPTNの部分を非可視光により照射してもよいし、また例えば図形F以外の路面の部分のみを非可視光により照射してもよい。図形Fの種類は特に限定されないが、自車が進行すべき方向、法定速度、道路標識などを示す図形Fであってもよく、自車から歩行者に向かって伸びる図形Fであってもよい。
【0020】
図3は、配光可変ランプ110の断面図である。配光可変ランプ110は、可視光源112と、非可視光源114と、投影光学系116と、光偏向装置120と、を備える。
【0021】
可視光源112は、可視光L1を出射する光源である。本実施の形態の可視光L1は、白色光である。可視光源112としては、LED(Light emitting diode)、LD(Laser diode)、EL(Electroluminescence)素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。
【0022】
非可視光源114は、非可視光L2を出射する光源である。本実施の形態の非可視光L2は、赤外光である。非可視光L2は、近赤外光であってもよいし、より長波長の光であってもよい。非可視光源114としては、LED、LD、EL素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯、放電灯等を用いることができる。
【0023】
光偏向装置120は、投影光学系116の後方の光軸X上に配置され、可視光源112または非可視光源114から出射した光を選択的に投影光学系116へ反射するように構成されている。光偏向装置120は、例えばDMDで構成される。すなわち、光偏向装置120は、m行n列のマトリクス状に配列される複数の微小なミラー素子(光学素子)のアレイである。これらの複数のミラー素子の反射面の角度をそれぞれ制御することで、可視光源112または非可視光源114から出射された光の反射方向を選択的に変えることができる。
【0024】
図4(a)、(b)は、光偏向装置120を示す図である。
図4(a)は、光偏向装置120の正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面図である。
【0025】
光偏向装置120は、
図4(a)に示すように、複数の微小なミラー素子122がマトリックス状に配列されたマイクロミラーアレイ124と、ミラー素子122の反射面122aの前方側(灯具前方側であって
図4(b)では右側)に配置された透明なカバー部材126と、を有する。カバー部材126は、例えば、ガラスやプラスチック等である。
【0026】
図4では、説明の便宜上、ミラー素子122の数を80(横10×縦8)としているが、ミラー素子122の数は特に限定されない。実際には例えば、ミラー素子122の数は1000~30万である。
【0027】
ミラー素子122は、略正方形であり、水平方向に延びミラー素子122をほぼ等分する回動軸122bを有する。複数のミラー素子122は、可視光源112から出射された光をパターンPTNの一部分(すなわち図形F)として有効に利用されるように投影光学系116(
図4(a)、(b)では不図示)へ向けて反射し、非可視光源114から出射された光を有効に利用されないように反射する第1反射位置(
図4(b)に示す実線位置)と、非可視光源114から出射された光をパターンPTNの残りの部分(すなわち図形F以外の部分)として有効に利用されるように投影光学系116へ向けて反射し、可視光源112から出射された光を有効に利用されないように反射する第2反射位置(
図4(b)に示す点線位置)に、傾動可能に構成されている。ここで、有効に利用されない方向は、例えば、投影光学系116に入射しない方向であって図示しない光吸収部材(遮光部材)に向かう方向や、投影光学系116に入射するが配光の形成にほとんど寄与しない方向である。
【0028】
図3に戻り、投影光学系116は、例えば、前方側表面および後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなる。投影光学系116は、その後方焦点が灯具システム100の光軸上、かつ光偏向装置120のマイクロミラーアレイ124の反射面の近傍に位置するように配置される。なお、投影光学系116はリフレクタであってもよい。
【0029】
撮像部130は、車両前方を撮像する。撮像部130は、可視光L1の波長域および非可視光L2の波長域に感度を有する。制御部160は、撮像部130が撮影した画像(以下、画像IMGという)に基づいて、配光可変ランプ110が路面に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。車両ECU(Electronic Control Unit)200は、車両および車両に搭載された灯具システム100を統合的に制御する。車両ECU200から灯具システム100には、配光可変ランプ110、ロービーム140、ハイビーム150のオン、オフなどの指令が送信される。また配光制御に必要な情報が送信される。車両ECUは、画像IMGに基づいて、自動運転を行ってもよい。
【0030】
続いて、灯具システム100の動作を説明する。
【0031】
図5(a)~(c)は、
図1の灯具システム100の動作を説明する図である。
図5(a)~(c)の走行シーンでは、先行車3および対向車4が存在する。破線10は、配光可変ランプ110のビームBMの照射可能なエリアを示す。
【0032】
図5(a)は、配光可変ランプ110が形成するパターンPTNを示す。配光可変ランプ110により、可視光L1による矢印の図形Fが路面に描画されている。例えばこの矢印の図形Fは、カーナビゲーションシステムと連動した図形であり、自車が直進(あるいはレーンキープ)すべき状態であることを示す。また、配光可変ランプ110により、図形F以外のパターンPTNの部分に非可視光L2が照射されている。
【0033】
図5(b)は、運転席から見た視野の一例を示す図である。人間の目には、可視光により描画された図形Fだけが認識されるため、運転者は図形Fを視認することによって、自車が進行すべき方向を把握できる。また、自車が進行する方向を、交通参加者や他車の運転者に示すことができる。
【0034】
図5(c)は、撮像部130が撮像した画像IMGを示す図である。図形Fを描画する可視光L1と、それ以外のパターンPTNの部分を照射する非可視光との照度の差(あるいはコントラスト)が低いあるいは無いため、画像IMGから図形Fは認識されない。言い換えると、画像IMGから図形Fが認識されないように、可視光源112による可視光L1の照度と非可視光源114による非可視光L2の照度が制御される。つまり、制御部160は、可視光源112の輝度と非可視光源114の輝度とを個別に制御可能に構成される。画像IMGから図形Fは認識されないため、制御部160あるいは車両ECU200が、路面に描画された図形Fを路面標示、例えば車線境界線(いわゆるレーンマーク)として誤検出する問題が解決される。
【0035】
図6は、別の走行シーンにおける灯具システム100の動作を説明する図である。
図6(a)、(b)は、
図1の灯具システム100の動作を時系列で説明する図である。
図6(a)では、対向車4および歩行者5が存在する。配光可変ランプ110により、その照射エリアの全体に非可視光L2が照射される。画像IMGには、歩行者5による非可視光L2の反射光が写る。制御部160は、この画像IMGを画像解析して、歩行者5を検出する。制御部160は、歩行者5を検出すると、
図6(b)に示すように図形Fを可視光L1により描画し、それ以外の部分に非可視光L2を照射する。図形Fは、自車から歩行者5に向かって伸びる方向に並べられた複数のバーである。これにより、歩行者5にグレアを与えずに歩行者5に注意喚起を与えることができる。なお、
図5の例と同様に、画像IMGから図形Fは認識されないため、制御部160あるいは車両ECU200が、路面に描画された図形Fを路面標示、例えば車線境界線として誤検出する問題が解決される。
【0036】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る灯具システム100のブロック図である。
図8は、灯具ユニットの断面図である。灯具システム100は、灯具ユニット110と、撮像部130と、制御部160と、を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0037】
灯具ユニット110は、可視光源112と、非可視光源114と、投影光学系116と、光偏向装置120と、を備える。
【0038】
可視光源112は、可視光L1を出射する光源である。本実施の形態の可視光L1は、白色光である。可視光源112としては、LED(Light emitting diode)、LD(Laser diode)、EL(Electroluminescence)素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。
【0039】
非可視光源114は、非可視光L2を出射する光源である。本実施の形態の非可視光L2は、赤外光である。非可視光L2は、近赤外であってもよいし、より長波長の光であってもよい。非可視光源114としては、LED、LD、EL素子等の半導体発光素子や、電球、白熱灯、放電灯等を用いることができる。
【0040】
光偏向装置120は、投影光学系116の後方の光軸X上に配置され、可視光源112または非可視光源114から出射した光を選択的に投影光学系116へ反射するように構成されている。光偏向装置120は、例えばDMDで構成される。すなわち、光偏向装置120は、m行n列のマトリクス状に配列される複数の微小なミラー素子(光学素子)のアレイである。これらの複数のミラー素子の反射面の角度をそれぞれ制御することで、可視光源112または非可視光源114から出射された光の反射方向を選択的に変えることができる。
【0041】
図9(a)、(b)は、光偏向装置120を示す図である。
図9(a)は、光偏向装置120の正面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のA-A線断面図である。
【0042】
光偏向装置120は、
図9(a)に示すように、複数の微小なミラー素子122がマトリックス状に配列されたマイクロミラーアレイ124と、ミラー素子122の反射面122aの前方側(灯具前方側であって
図9(b)では右側)に配置された透明なカバー部材126と、を有する。カバー部材126は、例えば、ガラスやプラスチック等である。
【0043】
図9では、説明の便宜上、ミラー素子122の数を80(横10×縦8)としているが、ミラー素子122の数は特に限定されない。実際には例えば、ミラー素子122の数は1000~30万である。
【0044】
ミラー素子122は、略正方形であり、水平方向に延びミラー素子122をほぼ等分する回動軸122bを有する。全てあるいは一部のミラー素子122は、第1反射位置(
図9(b)に示す実線位置)と第2反射位置(
図9(b)に示す点線位置)とを切り替え可能に構成されている。ミラー素子122は、第1反射位置では、可視光源112から出射された光を可視光による配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系116(
図9(a)、(b)では不図示)へ向けて反射し、非可視光源114から出射された光を有効に利用されないように反射する。また、ミラー素子122は、第2反射位置では、非可視光源114から出射された光を非可視光による配光パターンの一部として有効に利用されるように投影光学系116へ向けて反射し、可視光源112から出射された光を有効に利用されないように反射する。ここで、有効に利用されない方向は、例えば、投影光学系116に入射しない方向であって図示しない光吸収部材(遮光部材)に向かう方向や、投影光学系116に入射するが配光の形成にほとんど寄与しない方向である。
【0045】
少なくとも一部のミラー素子122が第1反射位置に設定され、かつ、可視光源112が点灯しているときに、可視光源112からの可視光が第1反射位置に設定されたミラー素子122によって投影光学系116に向けて反射され、灯具前方に可視光による配光パターンである可視光パターンが照射される。また、少なくとも一部のミラー素子122が第2反射位置に設定され、かつ、非可視光源114が点灯しているときに、非可視光源114からの非可視光が第2反射位置に設定されたミラー素子122によって投影光学系116に向けて反射され、灯具前方に非可視光による配光パターンである非可視光パターンが照射される。
【0046】
図7に戻り、投影光学系116は、例えば、前方側表面および後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなり、投影光学系116の後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影光学系116は、その後方焦点が灯具システム100の光軸上、かつ光偏向装置120のマイクロミラーアレイ124の反射面の近傍に位置するように配置される。なお、投影光学系116はリフレクタであってもよい。
【0047】
撮像部130は、車両前方の物体による非可視光L2の反射光L3を撮像する。撮像部130は、少なくとも非可視光L2の波長域に感度を有していればよく、可視光に対して不感(感度を有しないあるいは感度が所定値以下)であることが好ましい。撮像部130は、露光時間を調整するための電子的またはメカニカルなシャッター(不図示)を備える。
【0048】
制御部160は、灯具ユニット110を制御する灯具制御部162と、撮像部130を制御する撮像制御部164と、配光パターンを決定するパターン決定部166と、を含む。
【0049】
灯具制御部162は、可視光源112と非可視光源114とを交互に点消灯させる。
【0050】
また、灯具制御部162は、光偏向装置120に対する制御として、第1モード、第2モード、第3モードおよび第4モードを選択的に実行する。灯具制御部162は、可視光源112の点灯時は、第1モードまたは第3モードによる制御を実行し、非可視光源114の点灯時は、第2モードまたは第4モードによる制御を実行する。つまり、第1モードおよび第3モードは、可視光パターンを照射するためのモードであり、第2モードおよび第4モードは、非可視光パターンを照射するためのモードである。なお、可視光パターンを照射するときに第1モードまたは第3モードのどちらのモードによる制御を実行するか、非可視光パターンを照射するときに第2モードまたは第4モードのどちらのモードによる制御を実行するかは、それぞれ運転者が選択してもよい。
【0051】
第1モードでは、例えばパターン決定部166によって決定される可視光パターンに基づいて、可視光を照射すべき領域(可視光照射領域)に対応するミラー素子122が第1反射位置に設定され、他のミラー素子122、すなわち可視光を照射すべきでない領域(可視光遮光領域)に対応するミラー素子122が第2反射位置に設定される。
【0052】
第3モードでは、全てのミラー素子122が第1反射位置に設定される。なお、第3モードは、第1モードの一種と捉えることもできる。
【0053】
第1モードあるいは第3モードが実行され、かつ、可視光源112が点灯している場合、可視光源112から光偏向装置120に照射された可視光L1は、第1反射位置に設定されたミラー素子122に反射されて、灯具前方に出射される。その結果、灯具ひいては車両前方に可視光パターンが形成される。このとき、非可視光源114は消灯しているため、光偏向装置120に非可視光L2は照射されず、したがって、第2反射位置に設定されたミラー素子122が存在しても、非可視光L2は灯具前方に出射されない。なお、第3モードでは、全てのミラー素子122が第1反射位置に設定されるため、仮に非可視光源114が点灯していても、非可視光L2は灯具前方に出射されない。
【0054】
第2モードでは、非可視光を照射すべき領域(非可視光照射領域)に対応するミラー素子122が第2反射位置に設定され、他のミラー素子122、すなわち非可視光を照射すべきでない領域(非可視光遮光領域)に対応するミラー素子122が第1反射位置に設定される。
【0055】
第4モードでは、全てのミラー素子122が第2反射位置に設定される。なお、第4モードは、第2モードの一種と捉えることもできる。
【0056】
第2モードあるいは第4モードが実行され、かつ、非可視光源114が点灯している場合、非可視光源114から光偏向装置120に照射された非可視光L2は、第2反射位置に設定されたミラー素子122に反射されて灯具前方に出射される。その結果、灯具ひいては車両前方に非可視光パターンが形成される。このとき、可視光源112は消灯しているため、光偏向装置120に可視光L1は照射されず、したがって、第1反射位置に設定されたミラー素子122が存在しても、可視光L1は灯具前方に出射されない。なお、第4モードでは、全てのミラー素子122が第2反射位置に設定されるため、仮に可視光源112が点灯していても、可視光L1は灯具前方に出射されない。
【0057】
撮像制御部164は、撮像部130に撮像させる。撮像制御部164は、可視光L1による可視光パターンが灯具前方に照射されている期間、すなわち第1モードまたは第3モードが実行され、かつ、可視光源112が点灯している期間、の少なくとも一部の期間では、撮像部130のシャッターを閉じて撮像部130を非露光状態とする。また、撮像制御部164は、非可視光L2による非可視光パターンが灯具前方に照射されている期間、すなわち第2モードまたは第4モードが実行され、かつ、非可視光源114が点灯している期間、の少なくとも一部の期間では、撮像部130のシャッターを開いて撮像部130を露光状態とする。
【0058】
パターン決定部166は、撮像部130が撮像した画像にもとづいて、灯具ユニット110に供給する可視光の配光パターンを決定する。パターン決定部166は、撮像部130により得られた画像にもとづいて、画像処理によって先行車、対向車などグレアを与えるべきでない物体を検出する。物体の検出アルゴリズムは特に限定されない。パターン決定部166は、画像の連続する複数のフレームにもとづいて、物体を検知してもよい。そしてパターン決定部166は、物体に対応する部分が遮光された配光パターンを生成する。つまり灯具システム100は、いわゆるADB制御を実行可能である。なお、「或る部分を遮光する」とはその部分の輝度(照度)を完全にゼロとする場合のほか、その部分の輝度(照度)を低下させる場合も含む。
【0059】
以上が灯具システム100の基本構成である。続いて、灯具システム100の動作を説明する。
【0060】
図10は、可視光L1と非可視光L2の配光の制御の一例を説明する図である。
図10には、可視光L1による可視光パターンP1と非可視光L2による非可視光パターンP2が示される。
図10では、可視光パターンP1と非可視光パターンP2を重ねて描いているが、実際には、これらは交互に照射される。
図10の例では、制御部160は、可視光パターンP1を照射するためのモードとして第1モードを実行し、非可視光パターンP2を照射するためのモードとして第2モードを実行する。
【0061】
可視光パターンP1は、物体(対向車)に対応する部分が遮光されている。非可視光パターンP2は、灯具前方の比較的広い範囲に照射されている。非可視光パターンP2は、例えば撮像部130の撮像範囲全体を含む範囲を照射してもよい。なお、非可視光パターンP2は、対向車や先行車のドライバにグレアを与えない。
【0062】
図11は、灯具システム100の動作を説明するタイムチャートの一例である。制御部160は、所定の周期T
Sで、可視光源112の点消灯、非可視光源114の点消灯、ミラー素子122の反射位置の切り替え、および撮像部130の露光状態の切り替えを実行させる。
【0063】
各周期TSにおいて、可視光源112が点灯している期間を第1期間T1、非可視光源114が点灯している期間を第2期間T2、光偏向装置120に対して第1モードまたは第3モードによる制御が実行され、かつ、可視光源112が点灯している期間、すなわち可視光パターンP1が灯具前方に照射されている期間を第3期間T3、光偏向装置120に対して第2モードまたは第4モードによる制御が実行され、かつ、非可視光源114が点灯している期間、すなわち非可視光パターンP2が灯具前方に照射されている期間を第4期間T4、撮像部130が露光状態である期間を第5期間T5と称する。
【0064】
可視光源112および非可視光源114は、互いにタイミングをずらして点灯し、光偏向装置120はそれに合わせてミラー素子122の反射位置を切り替え、これにより可視光パターンP1または非可視光パターンP2が灯具前方に照射される。撮像部130は、各周期において、可視光パターンP1が灯具前方に照射されている期間のうちの少なくとも一部の期間では撮像部130非露光状態とし、非可視光パターンP2が灯具前方に出射されている期間のうちの少なくとも一部の期間では撮像部130を露光状態とする。
【0065】
図11では、可視光源112の消灯、非可視光源114の点灯、およびミラー素子122の第1反射位置から第2反射位置への切り替えは、実質的に同一のタイミングで実施されている。
図11では、非可視光源114の消灯、可視光源112の点灯、およびミラー素子122の第2反射位置から第1反射位置への切り替えは、実質的に同一のタイミングで実施されている。したがって、可視光源112が点灯している第1期間T
1と、可視光パターンP1が灯具前方に照射されている第3期間T
3とが一致し、非可視光源114が点灯している第2期間T
2と、非可視光パターンP2が灯具前方に照射されている第4期間T
4とが一致している。しかしながらこれに限らず、これらのタイミングは多少ずれていてもよい。
【0066】
例えば、可視光源112を消灯してから所定時間が経過してから非可視光源114を点灯してもよいし、非可視光源114を消灯してから所定時間が経過してから可視光源112を点灯してもよい。言い換えると、第1期間T1と第2期間T2との間、あるいは第2期間T2と第1期間T1との間に休止期間を設けてもよい。
【0067】
可視光パターンP1が照射される第3期間T3、非可視光パターンP2が照射される第4期間T4およびそれらを繰り返す周期TSは、人間が違和感を感じない長さに、すなわち人間が可視光パターンP1が点滅していることを人間が知覚できず、可視光パターンP1が点灯し続けているように知覚する長さに設定される。
【0068】
また、
図11では、撮像部130が露光状態(シャッターが開いている状態)である第5期間T
5よりも、非可視光パターンP2が灯具前方に照射されている第4期間T
4が長くなっている。つまり、T
5/T
4=1となっている。なお、第4期間T
4と第5期間T
5は、両者がT
5/T
4=0.6~1.4を満たす関係にあればよく、好ましくは両者がT
5/T
4=0.8~1.2を満たす関係にあればよく、さらに好ましくは両者がT
5/T
4=1を満たす関係にあればよい。T
5/T
4が小さいほどノイズの少ない画像を得られ、T
5/T
4が大きいほど明るい画像を得られる。つまりT
5/T
4が1に近いほど、ノイズの少なさと明るさのバランスがとれた鮮明な画像を得られ、より精度よく車両前方の状況を把握できる。
【0069】
続いて、以上説明した本実施の形態が奏する効果について述べる。本実施の形態によれば、可視光パターンP1と非可視光パターンP2が交互に車両前方に照射され、撮像部130は、基本的に、可視光パターンP1が照射されるタイミングでは非露光状態とされ、非可視光パターンP2が照射されるタイミングでは露光状態とされる。このため、複数の車両、例えば対向する2つの車両がいずれも本実施の形態の灯具システム100を備える場合、一方の車両の灯具システム100の灯具ユニット110が非可視光パターンP2を照射するタイミングと他方の車両の灯具システム100の撮像部130が露光状態とされるタイミングとが異なっていれば、一方の車両の灯具システム100が照射する非可視光パターンP2が他方の車両の灯具システム100の撮像部130に与えるグレアを低減できる。これにより、他方の車両の撮像部130は、より精度良く車両前方の状況を把握することが可能となり、その結果、交通の安全性が高まる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、撮像部130は、非可視光パターンP2が灯具前方に照射されている期間の少なくとも一部の期間では露光状態とされ、非可視光パターンP2が灯具前方に照射されていない期間の少なくとも一部の期間では非露光状態とされるため、非可視光パターンP2が灯具前方に出射されていない期間をずっと露光状態とする場合に比べてノイズが少ない画像が得られ、より精度よく車両前方の状況を把握できる。その結果、交通の安全性が高まる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、撮像部130が露光状態(シャッターが開いている状態)である時間と、非可視光源114が点灯し、かつ、非可視光の照射領域に対応するミラー素子122が第2反射位置にある時間が等しくなっている。この場合、非可視光パターンP2が車両前方に照射されているときだけ撮像部130が非露光状態とされるため、ノイズの少なさと明るさのバランスがとれた鮮明な画像を得られ、より精度よく車両前方の状況を把握できる。その結果、交通の安全性が高まる。
【0072】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
(変形例1)
第1の実施の形態では、配光可変ランプ110が、ロービーム140およびハイビーム150に対する付加的な光源であったが、ロービーム140およびハイビーム150の少なくとも一方の機能と、配光可変ランプ110とを統合してもよい。
【0074】
(変形例2)
図12は、第2の実施の形態の変形例に係る灯具システム100のブロック図である。以下、第2の実施の形態との相違点を中心に説明する。以下では、他車両に搭載された灯具システムであって、本変形例の灯具システム100と同様の灯具システムとその構成要素の符号に「’」を付して説明する。
【0075】
灯具システム100は、表示装置180をさらに備える。表示装置180は、車室内に設置されたモニターであってもよいし、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)であってもよい。制御部160は、撮像部130が撮像した画像を、表示装置180に表示する。運転者は、表示装置180に表示された画像を見ることによっても車両前方の状況を把握でき、例えば視界の悪い夜間の安全性が向上する。
【0076】
また、灯具システム100は、撮像部130に隣接して配置される、撮像部130の位置を示すための標示ランプ170をさらに備える。
図12では、撮像部130および標示ランプ170は筐体内に設けられているが、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。標示ランプ170は、非可視光源を含んで構成され、非可視光を出射する。標示ランプ170は、撮像部130に隣接配置されて非可視光を出射することで、撮像部130の位置を周囲の他車両に報知する。
【0077】
制御部160は、撮像部130が撮像した画像に基づいて、灯具ユニット110に供給する非可視光の配光パターンを決定する。制御部160は、撮像部130により得られた画像にもとづいて、画像処理によって、他車両、例えば対向車に搭載される灯具システム100’の撮像部130’を検出する。本変形例では、制御部160は、標示ランプ170’が表示する範囲を撮像部130’の範囲として検出する。制御部160は、当該範囲を照射しないように、当該範囲を遮光した非可視光L2の照射パターンを照射する。つまり、制御部160は、非可視光パターンP2を照射するためのモードとして、第2モードを実行する。
【0078】
図13は、非可視光L2の配光の制御の一例を説明する図である。
図13には、非可視光L2の照射パターンが示される。
【0079】
図13では、撮像部130’は車両側、具体的にはフロントウィンドウに設けられている。また、点状に光るい2つの標示ランプ170’が、撮像部130’を左右に挟み込むように、撮像部130’の左右に設けられている。なお、標示ランプ170’の数や構成は特には限定されない。例えば、点状に光る1つの標示ランプ170’が撮像部130’に隣接配置されてもよいし、点状に光3つ以上の標示ランプ170’が撮像部130’を囲むように撮像部130’の周囲に例えば等間隔に配置されてもよい。また、標示ランプ170’は、撮像部130’を環囲する環状の発光面を有していてもよい。
【0080】
非可視光L2は、標示ランプ170’が標示する範囲であって、撮像部130’に対応する部分が遮光されている。なお、標示ランプ170’の標示から遮光する範囲を特定する方法は特に限定されず、各標示ランプ170’を中心とする所定の範囲を遮光範囲と特定してもよいし、標示ランプ170’が3つ以上の場合は標示ランプ170’を直線で結んだ範囲を遮光範囲と特定してもよいし、標示ランプ170’が環状の発光面を有する場合はその発光面の内側を遮光範囲と特定してもよい。
【0081】
灯具システム100’の制御部160’は、好ましくは、標示ランプ170’を所定のパターンで点滅させる。これにより、灯具システム100の制御部160は、標示ランプ170’から出射される光を、標示ランプ170’以外の光源から出射された光と区別でき、標示ランプ170’の誤検出を抑止できる。
【0082】
本変形例によれば、自車両に搭載された灯具システム100が他車両に搭載された灯具システム100’の撮像部130’にグレアを与えるのを抑止できる。
【0083】
(変形例3)
第2の実施の形態および変形例2では、可視光源112および非可視光源114を点消灯させる場合について説明したが、これに限定されず、可視光源112および非可視光源114の少なくとも一方を、点灯させたままにしてもよい。
【0084】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、灯具システムに利用できる。
【符号の説明】
【0086】
100 灯具システム、 112 可視光源、 114 非可視光源、 120 光偏向装置、 122 ミラー素子、 130 撮像部、 160 制御部、 L1 可視光、 L2 非可視光、 F 図形。