(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】二液硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240530BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240530BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240530BHJP
C08F 222/32 20060101ALI20240530BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J4/02
C09J11/06
C08F222/32
C08F220/18
(21)【出願番号】P 2021556281
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020057384
(87)【国際公開番号】W WO2020187963
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マッカードル, キーラン
(72)【発明者】
【氏名】ペホアン ヒメネス, アルナウ
(72)【発明者】
【氏名】カンパンヤ イ リョベト, マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ フェンテ モリナ, ベロニカ
(72)【発明者】
【氏名】アルハス ブルゴス, シルビア
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509126(JP,A)
【文献】国際公開第2017/202698(WO,A1)
【文献】特開平06-145606(JP,A)
【文献】特開2007-169397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/00- 4/06
C08F 222/32-222/34
C08F 220/10-220/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・第1液(成分A)であって、第1液の総重量に基づいて少なくとも51重量%の1つまたは複数のシアノアクリレートモノマーであるが、但し、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーは、-X-O-R
b基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、R
bはアルキル基である。]を含むシアノアクリレートモノマーを含む第1液(成分A)と;
・第2液(成分B)であって:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマイケル受容体Mであるが、但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHR
a-CH
2O)
n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1
)であり、R
aは、CH
3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのマイケル受容体M;ならびに
- 求核開始剤;
を含む第2液(成分B)と
を含む二液硬化性組成物であって、
第2液が:
- マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも20重量%であり;
- シアノアクリレートモノマーを含まない
ことを特徴とする、二液硬化性組成物。
【請求項2】
シアノアクリレートモノマーが、一般式(I):
[式中、Rは、C
1~C
18線状または分岐状アルキル、C
3~C
20アルコキシアルキル、トリメチルシリル化C
1~C
3アルキル、フルフリル、アリル、シクロヘキシル、および以下の式:-R
i-O-C(O)-C(R
j)=CH
2(式中、R
iは有機部
分であり、R
jはHまたはCH
3である。)を有する基からなる群から選択される。]を有する、請求項1に記載の二液硬化性組成物。
【請求項3】
シアノアクリレートモノマーが、Rが一般式(II):
[式中、R
1=CH
3またはH、R
2=C
1~C
4線状または分岐状アルキル、およびmは1~3の範囲である。]を有する式(I)を有することを特徴とする、請求項2に記載の二液硬化性組成物。
【請求項4】
第1液中のシアノアクリレートモノマーの総含有量が、第1液の総重量に基づいて60重量%
超である、請求項1から3のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項5】
組成物の第1液が、組成物の第1液の総重量に基づいて少なくとも20重量%の
、-X-O-R
b基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断された線状または分岐状アルキレン基であり、R
bはアルキル基である。]を含む少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項6】
-X-O-R
b基を含むシアノアクリレートモノマーが、Xが、2~5個の炭素原
子を含む線状アルキレンであり、R
bが、1~6個の炭素原
子を含むアルキル基であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項7】
-X-O-R
b基を含むシアノアクリレートモノマーが、2-メトキシエチルシアノアクリレート、2-エトキシエチルシアノアクリレート、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシブチル-2”-シアノアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項8】
組成物の第1液が
、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、過化合物、接着促進剤、顔料、着色剤、安定剤、抗酸化剤、可塑剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤を含有する
、請求項1から7のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリル系モノマーが:
-i)一般式(III)の化合物:
CH
2=CR
3(CO
2R
4) (III)
[式中、R
3はメチルまたは
Hを表し、R
4は、水素原子、C
1~C
8線状もしくは分岐アルキル、C
2~C
6線状もしくは分岐状アルコキシアルキル、フルフリルまたはイソボルニル基である。];
-ii)ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A-ジアクリレート、ビスフェノール-A-ジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、プロポキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物;ならびに
-iii)これらの混合物
からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項10】
組成物の第2液が、第2液の総重量に基づいて30重量%
超のマイケル受容体Mを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項11】
マイケル受容体M1が、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項12】
組成物の第2液のマイケル受容体Mが、マイケル受容体M1である、請求項1から11のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項13】
求核開始剤が、
- 有機塩基;
- ハードアニオンの塩;
- (メタ)アクリル酸のCa
2+、Zn
2+またはMg
2+塩;および
- これらの混合物
からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項14】
組成物の第2液中の求核開始剤がカフェインである、請求項1から13のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項15】
組成物の第2液が、例えば、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、過化合物、接着促進剤、顔料、着色剤、安定剤、抗酸化剤、可塑剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項16】
第1液:第2液の体積比が、1:1~10:
1の範囲である、請求項1から15のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項17】
・第1液(成分A)であって:
- 第1液の総重量に基づいて少なくとも70重量%の1つまたは複数のシアノアクリレートモノマーであるが、但し、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーは、-X-O-R
b基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、R
bはアルキル基である。]を含むシアノアクリレートモノマー;
- 0.001重量%~0.2重量%の安定剤;
- 2重量%~8重量%のチキソトロープ剤;
- 2重量%~8重量%の増粘剤;
を含む第1液(成分A)と;
・第2液(成分B)であって:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも40重量%の少なくとも1つのマイケル受容体Mであるが、但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHR
a-CH
2O)
n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1
)であり、R
aは、CH
3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのマイケル受容体M;
- 第2液の総重量に基づいて0.01重量%~1重量%の求核開始剤;
- 0重量%~5重量%のチキソトロープ剤;
を含む第2液(成分B)と
を含み、
第2液が、マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも40重量%であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物を含む、シリンジまたはカートリッジまたはディスペンスヘッド。
【請求項19】
- 請求項1から17のいずれか一項に記載の二液硬化性組成物を、基材のうちの少なくとも片方に施用する工程と、
- 基材同士を、合わせた基材間に接着剤の結合を形成させるのに十分な時間の間、合わせる工程と、
- 任意選択により、合わせた(任意選択により固定した)基材
を加熱する工程と
を含む、基材を結合するための方法。
【請求項20】
二液硬化性組成物の耐熱性を改善するための、二液硬化性組成物の第1液中に-X-O-R
b基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、R
bはアルキル基である。]を含む少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーの使用であって、二液硬化性組成物が:
・シアノアクリレートモノマーを含む第1液と;
・第2液であって:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマイケル受容体Mであるが、但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHR
a-CH
2O)
n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1
)であり、R
aは、CH
3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのマイケル受容体M;ならびに
- 求核開始剤
を含む第2液と
を含み、
第2液が、マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも20重量%であり、シアノアクリレートモノマーを含まないことを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレートをベースとする二液硬化性組成物の分野に関する。
【0002】
本発明はまた、二液硬化性組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
シアノアクリレート(CA)エステルをベースとする接着剤組成物は、例えば、瞬間接着剤またはいわゆる「スーパー接着剤」として周知である。これらは、多くの分野の用途において人気があり、消費者、専門的職人および工業組立工に使用されている。これらは典型的には、溶媒を含まず、100%反応性物質であり、多くの異なる基材に迅速に強力な接着ボンドを形成する能力と、接着剤硬化を引き起こすための電磁放射または熱などのエネルギー的刺激を必要としないことで知られている。これらの特質は、持続可能性およびエンドユーザーの利便性の観点で非常に魅力的である。
【0004】
ほとんどの基材タイプの組立工程における、従来の単一成分(1K)CAの硬化または重合する能力は、重合プロセスの開始が、普通の状況下で、ほとんどの表面(例えば、吸収された水、塩、微量の塩基性物質など)上に見られる求核種またはイオン種から生じるという事実に一部関連する。金属、合金、セラミック、ゴム、紙、生体組織、革およびプラスチックなどの基材から組み立てられる部品が、液体シアノアクリレート接着剤の薄層の中間に接触して配置されると、接着剤が固体に硬化したときに非常に強力な接続をもたらす。
【0005】
CAが室温で迅速に接着できる広範な基材のタイプが、他のいずれの接着剤クラスよりずっと優れていても、特定の基材、例えば、いわゆる「低表面エネルギー」基材(ポリオレフィンなど)および「付着しない」フッ素化ポリマーは、難題をもたらす。この制限を解決するために対処される技術的解決策は、例えば、米国特許第3,260,637号、米国特許第3,836,377号、米国特許第4,460,758号、米国特許第5,818,325号、米国特許第5,110,392号、米国特許第5,066,743号、米国特許第6,001,213号、米国特許第2003/0191248(A)号または米国特許第2005/0000646(A)号などの最新技術に開示されており、後続するCA組成物の塗布に先立って、活性化剤の使用が提案された。
【0006】
しかしながら、1K接着剤に関連する1つの障害は、いわゆる「硬化貫通容積(cure throughvolume)」(CTV)がないことに関連する。より厚い結合線においては、バルク接着剤全体にわたってこの制限された硬化が生じ、その理由は、最も効果的な硬化は、表面上に見られる起爆種源に最も近い位置で生じるためである。
【0007】
CA接着剤を使用したときに組み立てられる基材間にCTVを達成するための代替的かつより効果的な手法は、有効な開始剤源として基材表面のみに依存することを避けたものである。代わりに、そのような手法は、液体またはゲル様担体中に含まれる特異的活性化剤を直接混合してバルク反応性CA組成物にすることに頼り、次いでこれらの2つの別々の組成物の混合物を基材に塗布する。この手法は、活性化剤が適合性担体中に適当な濃度で存在する場合、各基材接触面のみから活性化する方法に比べて、より優れた接着剤ボディーへの活性化剤の分布をもたらすことができる。この文脈において、成分を混合してバルク接着剤にすることは、「二液」、「二成分」、または「2K」手法と呼ばれ、そのような手法は、CA組成物を要し、先行技術において周知である。
【0008】
2K手法を説明するとき、接着剤および/またはそのパッケージの別個の成分または部分を、例えば「パートA」および「パートB」として指すことは一般的である。したがって、パートAが一区画またはリザーバ中にCA組成物を含有する場合、パートBは、任意の手段で2つの部分を混合して得られる接着剤の物理的性質を活性化、反応および/または改変(可塑化、着色、強化など)するように選択される組成物を含有しうる。
【0009】
活性化成分を均一に混合して直接CA組成物にし、接着剤のバルク全体にわたって同時開始を達成することは明確な利益があるが、この手法によって新たな難題が出てくる。
【0010】
第一に、シアノアクリレート組成物は極度に反応性であり、重合を開始するためにごくわずかな濃度(典型的には数十から数千ppm(parts per million)の範囲)の活性化剤種が必要とされうる。混合してバルクシアノアクリレート組成物にするときに均一な混合を可能にするために、そのような微量が好適な担体中に含有されなければならない。
【0011】
第二に、目的のある活性化によって、重合が一旦「誘発(活性化)」されれば、エンドユーザーが分注し組み立てるための時間は明らかに制限される。
【0012】
二液手法は、典型的には、一液接着剤に勝るいくつかの利益をもたらすが、この手法にはいくつかの欠点もある。特に、活性化剤の混合自体が不便を掛け、その理由は、これが硬化反応を開始させ、したがってエンドユーザーが接着するタスクを実行するために要する時間を制限するからである。先行技術の手法は、作用時間におけるバランスをいくらか達成可能になるが、他の性能パラメータを犠牲にすることが多い。
【0013】
欧州特許第0659859号の構造用二液アクリル接着剤について示されるように、既に活性化または開始され得、さらに長時間の作用時間および接着オープンタイムならびに使用者が部品を組み立てて接着させる準備ができたときの比較的迅速な固着を達成する反応性バルク組成物の達成が最も望ましい目標と考えられる。CAの場合、開始したら最速で既知の市販モノマーを重合するため、さらに達成しにくい。実際、後続する迅速な固着時間と組み合わせた長時間の接着オープンタイムなどの特質は、CAとは最も特定的に正反対である。そのような利益を達成したいにもかかわらず、高い強度を有する複数の基材タイプから派生する部品も結合し、高いCTV、耐熱性、耐溶剤性および耐湿性を示す同じ接着剤が必要とされており、これらの性質は、ここでも、妥協なく直接的にシアノアクリレート接着剤にするように設計したものではない。
【発明の概要】
【0014】
したがって、迅速な固着に、一旦活性化されたら使用可能な残りの時間が延長されることが組み合わされ、以下の性質:硬化貫通深度、耐熱性および耐薬品性のうちの少なくとも1つを有する新規の接着剤二液組成物を提供することが依然として必要とされている。
【0015】
より具体的には、耐熱性を示す新規の二液組成物を提供する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は:
・第1液(成分A)であって:
第1液の総重量に基づいて少なくとも51重量%の1つまたは複数のシアノアクリレートモノマーであるが、但し、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーは、-X-O-Rb基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、Rbはアルキル基である。]を含むシアノアクリレートモノマーを含む第1液(成分A)と;
・第2液(成分B)であって:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマイケル受容体Mであるが、但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHRa-CH2O)n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1)、より好ましくは1~4の範囲、さらにより好ましくは、nは1または2であり、Raは、CH3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのマイケル受容体M;ならびに
- 求核開始剤を
含む第2液(成分B)と;
を含む二液硬化性組成物であって、
第2液が:
- マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも20重量%であり;
- シアノアクリレートモノマーを含まない
ことを特徴とする、二液硬化性組成物に関する。
【0017】
本明細書中に開示される範囲は、それらの下限および上限の両方を含む。例えば、「xからyの範囲」または「xとyとの間」という表現は、端xおよびyを含む。
【0018】
本明細書全体にわたって使用される用語「作用寿命」または「作用時間」(「WT」)は、シアノアクリレート組成物にする活性化剤の第1の混合と、後続する部品への活性化組成物の塗布との間の期間を指し、すなわち、分注の各操作の間の、活性化生成物が静的混合要素(接着剤成分を合わせ、分注ノズルとして使用されるもの)中に存在するまたは残留する時間である。活性化剤が混合されると、硬化プロセスが開始し、接着剤が静的混合要素から分注されるように継続する。
【0019】
用語「オープンタイム」(OT)は、既に活性化され、後続して分注された接着剤が作用可能なままである、すなわち、滴、ビーズまたは大きな塊として一基材上に塗布されたときに、第2の基材を結合するために使用されるときに有効な接着剤を形成できない程度まで実質的に硬化されない時間を指す。したがってオープンタイムは、接着剤が活性化されたままであるが、実質的に未硬化であり、各部品を有用に結合できる状態にある期間を説明する。OTが長い接着剤は、単一の部品上に比較的長時間置いた状態の後でも、部品を組み立てる前に尚早にセットアップしないものを指す。
【0020】
本明細書中で用いられる用語「固着時間」(「FT」)は、2つの合わせ基材面に最少量の接着剤(「小」液滴)を使用して、接着された組立品が、接着された組立品の一端に重りを垂直方向に吊るしたとき、10秒間超、3kgの重りを吊るす能力を有するのにかかる時間として定義される接着速度の尺度である。
【0021】
成分A
シアノアクリレートモノマー
好ましい実施形態において、シアノアクリレートモノマーは、一般式(I):
を有し、式中、Rは、C
1~C
18線状または分岐状アルキル、C
3~C
20アルコキシアルキル、トリメチルシリル化C
1~C
3アルキル、フルフリル、アリル、シクロヘキシル、および以下の式:-R
i-O-C(O)-C(R
j)=CH
2[式中、R
iは有機部分(好ましくはアルキレン基)であり、R
jはHまたはCH
3である]を有する基からなる群から選択される。式(I)中、Rは、好ましくはC
1~C
18線状または分岐状アルキルまたはC
3~C
20アルコキシアルキルを表す。
【0022】
一実施形態において、上式(I)を有するシアノアクリレートモノマーは、Rが一般式(II):
[式中、R
1=CH
3またはH、R
2=C
1~C
4線状または分岐状アルキル、およびmは1~3の範囲である。]を有するものである。
【0023】
シアノアクリレートモノマーは、2-メトキシエチルシアノアクリレート、2-エトキシエチルシアノアクリレート、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、イソプロピルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、sec-ブチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、n-ペンチルシアノアクリレート、1-メチルブチルシアノアクリレート、1-エチルプロピルシアノアクリレート、ネオペンチルシアノアクリレート、n-ヘキシルシアノアクリレート、1-メチルペンチルシアノアクリレート、n-ヘプチルシアノアクリレート、n-オクチルシアノアクリレート、n-ノニルシアノアクリレート、n-デシルシアノアクリレート、n-ウンデシルシアノアクリレート、n-ドデシルシアノアクリレート、シクロヘキシルシアノアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0024】
1つ以上の該シアノアクリレートの組み合わせを使用してもよい。
【0025】
好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、エチル-2-シアノアクリレート、2-メトキシエチルシアノアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
そのような式(I)のモノマーは、当業者によって、例えば米国特許第2,467,927号に記載の方法として知られる方法によって調製することができる。
【0027】
エチル-2-シアノアクリレート(ECA)および2-メトキシエチルシアノアクリレート(MECA)など、それらの一部は市販されている。
【0028】
本発明の組成物の第1液中、シアノアクリレートモノマーの総含有量は、第1液の総重量に基づいて60重量%超、好ましくは70重量%以上、より具体的には85重量%以上であってもよい。
【0029】
一実施形態において、本発明の組成物の第1液中、シアノアクリレートモノマーの総含有量は、組成物の第1液の総重量に基づいて60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~98重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の範囲である。
【0030】
好ましくは、組成物の第1液は、組成物の第1液の総重量に基づいて、少なくとも20重量%の、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも50重量%の、-X-O-Rb基を含む少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーを含む。
【0031】
組成物の第1液中、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーは、-X-O-Rb基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、Rbはアルキル基である]を含むシアノアクリレートモノマーである。好ましくは、Xは、2~5個の炭素原子、より好ましくは1個または2個の炭素原子を含む線状アルキレンであり、Rbは、1~6個の炭素原子、好ましくは1個または2個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0032】
-X-O-Rb基を含むシアノアクリレートモノマーは、2-メトキシエチルシアノアクリレート、2-エトキシエチルシアノアクリレート、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブトキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-エトキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-ブチルオキシブチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシエチル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシプロピル-2”-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシブチル-2”-シアノアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。好ましくは、-X-O-Rb基を含むシアノアクリレートモノマーは、2-メトキシエチルシアノアクリレートである。
【0033】
添加剤
組成物の第1液は、例えば、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、過化合物、接着促進剤、顔料、着色剤、安定剤、抗酸化剤、可塑剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含有しうる。
【0034】
好適な安定剤は、ラジカル安定剤、酸安定剤、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0035】
ラジカル安定剤は、典型的にはラジカル重合阻害剤であり、好ましくは、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシトルエンブチルエーテル、ヒドロキシアニソールブチルエーテル、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
組成物の第1液中のラジカル安定剤の総含有量は、第1液の総重量に基づいて0.001重量%~0.2重量%、好ましくは0.01重量%~0.1重量%、より好ましくは0.02重量%~0.06重量%の範囲であってもよい。
【0037】
酸安定剤は、典型的には、アニオン重合の阻害剤である。酸安定剤は、ブレーンステッド酸、ルイス酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。酸安定剤は、好ましくは、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フッ化水素酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート錯体、フルオロホウ酸、二酸化硫黄、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
好ましい実施形態において、組成物の第1液は、メタンスルホン酸、二酸化硫黄、三フッ化ホウ素エーテラート錯体、ヒドロキノンおよびヒドロキノンモノメチルエーテルならびに4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)を含む。
【0039】
組成物の第1液中、安定剤の総含有量は、一般的に、第1液の総重量に基づいて0.0001重量%~1重量%、好ましくは0.001重量%~0.8重量%、より好ましくは0.0015重量%~0.7重量%の範囲である。
【0040】
典型的には、接着促進剤は、芳香族カルボン酸または無水物の群から、好ましくはトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸の二無水物、イタコン酸、無水イタコン酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0041】
組成物の第1液中の接着促進剤の総含有量は、第1液の総重量に基づいて0.02重量%~0.1重量%、より好ましくは0.03重量%~0.08重量%の範囲であってもよい。
【0042】
好適な促進剤(またはアクセラレータ)は、カリックスアレーン、クラウンエーテル(例えば、Alfa Aesarから市販されている15クラウン5、18クラウン6、ジベンゾ18クラウン6)、シクロデキストリン、およびこれらの混合物から選択されうる。
【0043】
典型的には、組成物の第1液中の促進剤の総含有量は、第1液の総重量に基づいて0.01重量%~0.8重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%の範囲であってもよい。
【0044】
好適なチキソトロープ剤は、任意選択によりアミンとの反応によって改変された水素化ヒマシ油、ポリアミド、シリカ、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0045】
好ましくは、チキソトロープ剤は、シリカであり、より好ましくはヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカ(例えば、Evonikから市販されているAerosil(登録商標)R202)、親水性ヒュームドシリカおよび沈降シリカからなる群から選択される。
【0046】
典型的には、組成物の第1液中のチキソトロープ剤の総含有量は、第1液の総重量に基づいて2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。
【0047】
組成物の第1液に好適な増粘剤(thickener)または増粘剤(thickening agent)は、ホストモノマーと適合性のものから選択することができる。そのような増粘剤の例としては、ポリ(メタ)アクリレート、アシル化セルロースポリマー、例えば酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシレート、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、例えば塩化ビニルとの酢酸ビニル共重合体、ブタジエンおよびスチレンとの(メタ)アクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリ[ブチレンテレフタレート]-コ-ポリエチレングリコールテレフタレート、乳酸とカプロラクトンとの共重合体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
これらの増粘剤は、当業者に周知であり、先行技術において説明されてきた。好ましくは、本発明の接着剤中、増粘剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、およびアクリル化セルロースポリマーからなる群から選択される。組成物の第1液に好適な増粘剤は、例えば、ポリメチルメタクリレート(例えば、Evonik製のDegacryl(登録商標)M449)、酢酸ビニルとビニルアルコールとの共重合体(例えば、Lanxess製のLevamelt(登録商標)900)、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体(例えば、Wacker製のVinnol(登録商標)H40-60)、エチレン、酢酸ビニルおよびマレイン酸のエステルまたは部分エステルの共重合体(例えば、DuPont製のVamac(登録商標)G)、ならびにこれらの混合物であってもよい。ポリシアノアクリレート自体をシアノアクリレート組成物に添加して増粘度を付与してもよい。
【0049】
典型的には、組成物の第1液中の増粘剤の総含有量は、組成物の第1液の総重量に基づいて2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。
【0050】
組成物の第1液に好適な強化剤(toughener)または強化剤(toughening agent)は、ブロック共重合体(例えば、ポリメチルメタクリレート-コ-ポリブチルアクリレート-コ-ポリメチルメタクリレート);弾性ゴム;弾性ポリマー;液体エラストマー;ポリエステル;アクリルゴム;ブタジエン/アクリトニトリルゴム;ブナゴム;ポリイソブチレン;ポリイソプレン;天然ゴム;スチレン/ブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム;ポリウレタンポリマー;エチレン-酢酸ビニルポリマー;フッ素化ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;ブロック共重合体;コアシェルゴム粒子、およびこれらの混合物である。
【0051】
過化合物は、構造中にO-O基を含有する化合物、例えば、過酸エステル、過ホウ酸塩、過硫酸塩、パーアセタール、または過酸化物などである。
【0052】
好適な過化合物は、例えば、過安息香酸tert-ブチル(TBPB)または過酸化tert-ブチル(TBP)である。
【0053】
存在する場合、総含有量は、組成物の第1液の総重量に基づいて1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~12重量%を占めることが好ましい。
【0054】
好ましくは、組成物の第1液は、過化合物を含まず、より好ましくは過酸化物を含まない。
【0055】
好ましい実施形態において、組成物の第1液は、増粘剤およびチキソトロープ剤を含み、好ましくは、接着促進剤および少なくとも1つの安定剤をさらに含む。
【0056】
成分B
マイケル受容体M
組成物の第2液は、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマイケル受容体Mを含む。
【0057】
マイケル反応は、当該技術分野において周知であり、マイケル供与体のマイケル受容体への付加を要する。これは、カルボアニオンまたは求核剤と活性化α,β-不飽和カルボニル化合物または基との付加反応を指す。そのような反応の例は、米国特許第5,350,875号、米国特許第5,430,177号、米国特許第6,706,414号、国際特許第2005/012394号および欧州特許第0970137号に開示されている。マイケル供与体は、2つの電子求引基(例えばC=O、CNなど)の間に位置する炭素原子に結合された水素原子である少なくとも1個のマイケル活性水素原子を含有する官能基である少なくとも1つのマイケル供与体官能基を有する化合物である。マイケル供与体官能基の例の限定的なリストには、アセトアセテートエステル、マロンアミド、シアノアセテート、ポリシアノアクリレートの鎖末端が含まれる。
【0058】
マイケル受容体Mは、単官能性または多官能性(二または三官能性など)であってもよい。
【0059】
マイケル受容体Mは、1つの(メタ)アクリル官能基またはいくつかの(メタ)アクリル官能基を含んでもよい。アクリレートは、典型的には、メタクリレートに対するマイケル受容体より優れている。
【0060】
(メタ)アクリル系モノマーは:
-i)一般式(III)の化合物
CH2=CR3(CO2R4) (III)
[式中、R3はメチルまたはH(好ましくはH)を表し、R4は、水素原子、C1~C8線状もしくは分岐状アルキル、C2~C6線状もしくは分岐状アルコキシアルキル、フルフリルまたはイソボルニル基である。];
-ii)ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A-ジアクリレート、ビスフェノール-A-ジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、プロポキシル化ビスフェノール-A-ジアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物;ならびに
-iii)これらの混合物
からなる群から選択され得る。
【0061】
(メタ)アクリル系モノマーの例は、例えば、Sartomer、Arkema、およびBASFなどの周知の供給業者から容易に入手できる。
【0062】
多官能性(メタ)アクリルエステルは、比較的低い分子量のもの、例えば、市販のトリエチレンオキシドジメタクリレートもしくはブタンジオールジメタクリレートであってもよく、または高分子量のもの:(メタ)アクリル系官能化オリゴマーおよび(メタ)アクリル系官能化樹脂、例えば(メタ)アクリルエステル末端ポリマー、例えば(メタ)アクリル末端ウレタンポリマーもしくは共重合体またはいわゆる(メタ)アクリルエステル官能化テレケリック、デンドリメリックもしくは超分岐材料であってもよい。
【0063】
好ましい実施形態において、組成物の第2液は、第2液の総重量に基づいて30重量%超、より好ましくは50重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上、特に90重量%以上のマイケル受容体Mを含む。
【0064】
組成物の第2液中、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、-O(CHRa-CH2O)n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1)の範囲であり、Raは、CH3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む。好ましくは、マイケル受容体M1は、nが1~4の範囲、さらにより好ましくは、nは1または2である。
【0065】
マイケル受容体M1は、好ましくは、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む。
【0066】
マイケル受容体M1は、エトキシル化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。エチレンオキシド基の数は、これらの化合物中で1~5個の範囲であってもよい。
【0067】
好ましい実施形態において、マイケル受容体M1は、エトキシル化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。エチレンオキシド基の数は、これらの化合物中で1~5個の範囲であってもよい。
【0068】
より好ましくは、マイケル受容体M1は、エトキシル化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
マイケル受容体M1の重量による分子量(Mw)は、300~1000g/mol、好ましくは400~800g/molの範囲であってもよい。
【0070】
マイケル受容体M1の総含有量は、組成物の第2液の総重量に基づいて少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%である。
【0071】
好ましい実施形態において、組成物の第2液のマイケル受容体Mは、マイケル受容体M1である。
【0072】
重合の求核開始剤
求核開始剤は、イオン性または非イオン性であり得る電子が豊富な開始剤である。
【0073】
第2液は、シアノアクリレートモノマーを含まない。
【0074】
好ましい求核開始剤は、以下:
- 有機塩基(例えば、カフェイン、テオブロミン、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、テトラヒドロキノリンなど);
- ハードアニオンを有する塩(例えば、塩化コリン、塩化ベンザルコニウムなど);
- (メタ)アクリル酸のCa2+、Zn2+またはMg2+塩;および
- これらの混合物
からなる群から選択されうる。
【0075】
組成物の第2液は、好ましくは、有機塩基、さらにより好ましくはカフェインを求核開始剤として含む。
【0076】
第2液は、組成物の第2液の総重量に基づいて0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.2重量%~0.5重量%の範囲の濃度の求核開始剤を含んでもよい。
【0077】
添加剤
組成物の第2液は、例えば、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、過化合物、接着促進剤、顔料、着色剤、安定剤、抗酸化剤、可塑剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含有しうる。
【0078】
好適な安定剤は、ラジカル安定剤、酸安定剤、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0079】
ラジカル安定剤は、典型的にはラジカル重合阻害剤であり、好ましくは4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシトルエンブチルエーテル、ヒドロキシアニソールブチルエーテル、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0080】
組成物の第2液中、ラジカル安定剤の総含有量は、第2液の総重量に基づいて0重量%~0.2重量%、好ましくは0.01重量%~0.1重量%、より好ましくは0.02重量%~0.06重量%の範囲であり得る。
【0081】
酸安定剤は、典型的には、アニオン重合の阻害剤である。酸安定剤は、ブレーンステッド酸、ルイス酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。酸安定剤は、好ましくは、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フッ化水素酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート錯体、フルオロホウ酸、二酸化硫黄、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0082】
組成物の第2液中、安定剤の総含有量は、一般的に、第2液の総重量に基づいて0重量%~1重量%、好ましくは0.001重量%~0.8重量%、より好ましくは0.0015重量%~0.7重量%の範囲であり得る。
【0083】
典型的には、接着促進剤は、芳香族カルボン酸または無水物の群から、好ましくはトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3‘、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸の二水和物、イタコン酸、無水イタコン酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0084】
組成物の第2液中の接着促進剤の総含有量は、第2液の総重量に基づいて0重量%~0.1重量%、より好ましくは0.03重量%~0.08重量%の範囲であってもよい。
【0085】
好適な促進剤(またはアクセラレータ)は、カリックスアレーン、クラウンエーテル(例えば、Alfa Aesarから市販されている15クラウン5、18クラウン6、ジベンゾ18クラウン6)、シクロデキストリン、およびこれらの混合物から選択されうる。
【0086】
典型的には、組成物の第2液中のアクセラレータの含有量は、第2液の総重量に基づいて0重量%~0.8重量%、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%の範囲であり得る。
【0087】
好適なチキソトロープ剤は、任意選択によりアミンとの反応によって改変された水素化ヒマシ油、ポリアミド、シリカ、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0088】
好ましくは、チキソトロープ剤は、シリカであり、より好ましくはヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカ(例えば、Evonikから市販されているAerosil(登録商標)R202)、親水性ヒュームドシリカおよび沈降シリカからなる群から選択される。
【0089】
典型的には、組成物の第2液中のチキソトロープ剤の含有量は、第2液の総重量に基づいて2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。
【0090】
組成物の第2液に好適な増粘剤(thickener)または増粘剤(thickening agent)は、含有されるモノマーと適合性のものから選択することができる。それらの中でも、ポリ(メタ)アクリレート、アシル化セルロースポリマー、例えば酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシレート、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、例えば塩化ビニルとの酢酸ビニル共重合体、ブタジエンおよびスチレンとの(メタ)アクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリ[ブチレンテレフタレート]-コ-ポリエチレングリコールテレフタレート、乳酸とカプロラクトンとの共重合体、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0091】
これらの増粘剤は、当業者に周知であり、先行技術において説明されてきた。好ましくは、本発明の接着剤中、増粘剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、およびアクリル化セルロースポリマーからなる群から選択される。組成物の第1液に好適な増粘剤は、例えば、ポリメチルメタクリレート(例えば、Evonik製のDegacryl(登録商標)M449)、酢酸ビニルとビニルアルコールとの共重合体(例えば、Lanxess製のLevamelt(登録商標)900)、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体(例えば、Wacker製のVinnol(登録商標)H40-60)、エチレン、酢酸ビニルおよびマレイン酸のエステルまたは部分エステルの共重合体(例えば、DuPont製のVamac(登録商標)G)、ならびにこれらの混合物であってもよい。ポリシアノアクリレート自体をシアノアクリレート組成物に添加して増粘度を付与してもよい。増粘剤として好適なポリマーは、一般的に、靭性を付与しない。さらに、粘性官能化樹脂は、任意の追加の高分子添加剤の代わりに増粘剤としても機能することができる。
【0092】
典型的には、組成物の第2液中の増粘剤の含有量は、組成物の第2液の総重量に基づいて2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。
【0093】
組成物の第1液に好適な強化剤(toughener)または強化剤(touchening agent)は、ブロック共重合体(例えば、ポリメチルメタクリレート-コ-ポリブチルアクリレート-コ-ポリメチルメタクリレート);弾性ゴム;弾性ポリマー;液体エラストマー;ポリエステル;アクリルゴム;ブタジエン/アクリトニトリルゴム;ブナゴム;ポリイソブチレン;ポリイソプレン;天然ゴム;スチレン/ブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム;ポリウレタンポリマー;エチレン-酢酸ビニルポリマー;フッ素化ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;ブロック共重合体;コアシェルゴム粒子、およびこれらの混合物である。
【0094】
過化合物、例えば、過酸エステル、過ホウ酸塩、過硫酸塩、パーアセタール、または過酸化物などは、構造中にO-O基を含有する化合物である。
【0095】
好適な過化合物は、例えば、過安息香酸tert-ブチル(TBPB)または過酸化tert-ブチル(TBP)である。
【0096】
存在する場合、過化合物の総含有量は、好ましくは、組成物の第2液の総重量に基づいて0.1重量%~20重量%、好ましくは0.2重量%~15重量%、より好ましくは0.2重量%~12重量%を占める。
【0097】
好ましくは、組成物の第2液は、ベンゾチアゾール化合物(置換ベンゾチアゾール化合物を含む)を含まない。
【0098】
組成物
二液組成物は、パッケージ(二液シリンジなど)またはリザーバポットから分注されうる。前者は一般に、手操作での塗布に便利であり、第1液:第2液の体積比は、1:1~10:1の範囲、より好ましくは2:1または4:1であり得る。二液組成物は、自動化装置を使用して分注することもでき、混合比は、1:1~10:1で継続的に調整可能であり得る。
【0099】
二液組成物中、第1液:第2液の体積比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~5:1の範囲、さらにより好ましくは2:1、3:1、4:1または5:1であってもよい。
【0100】
好ましい二液硬化性組成物は:
・第1液(成分A)であって:
- 第1液の総重量に基づいて少なくとも70重量%の1つまたは複数のシアノアクリレートモノマー(但し、少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーは、-X-O-Rb基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、Rbはアルキル基である。]を含むシアノアクリレートモノマー;
- 0.001重量%~0.2重量%の安定剤;
- 2重量%~8重量%のチキソトロープ剤;
- 2重量%~8重量%の増粘剤;
を含む第1液(成分A)と;
・第2液(成分B)であって:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも40重量%の少なくとも1つのマイケル受容体Mであるが、但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHRa-CH2O)n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1)、より好ましくは1~4の範囲であり、さらにより好ましくは、nは1または2であり、Raは、CH3またはHを表す。]の少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのマイケル受容体M;
- 第2液の総重量に基づいて0.01重量%~1重量%の求核開始剤;
- 0重量%~5重量%のチキソトロープ剤;
を含む第2液(成分B)と
を含み、
第2液は、マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも40重量%であることを特徴とする。
【0101】
シリンジまたはカートリッジまたはディスペンスヘッド
本発明はまた、上で定義した二液硬化性組成物を含むシリンジまたはカートリッジまたはディスペンスヘッドにも関する。
【0102】
好ましくは、シリンジ(またはカートリッジ)は、片方は組成物の第1液用であり、他方が上記の組成物の第2液用であるそれぞれ異なる容積の2つの室を有するシリンジ(またはカートリッジ)である。
【0103】
組成物の第1液は、好ましくは、より大きな容積の室内に位置する。
【0104】
接着剤の調製は、好ましくは、手の圧力により、またはシリンジもしくはカートリッジのプランジャー上のガンの助けを借りて、室の内容物を強制的に静的ミキサーに入れて、組成物の二液を混合し、それによりその出口で本発明の接着剤が得られることによって行われる。接着剤中、二成分は有利に密接に混合される。
【0105】
自動化によって分注する場合、接着剤の調製は、好ましくは、特定の量の所望の組成物の混合物を部品上へ分注することができるように、組成物の二液を強制的に、ディスペンスヘッドを構成するバルブおよび混合要素に入れることによって該二液を混合して行われる。
【0106】
組成物の使用
本発明はまた、基材を結合させるための上記の二液硬化性組成物の使用にも関する。
【0107】
本発明はまた:
- 上記の二液硬化性組成物を、基材のうちの少なくとも片方に塗布する工程と、
- 基材同士を、合わせた基材間に接着剤の結合を形成させるのに十分な時間の間、合わせる工程と、
- 任意選択により、合わせた(任意選択により固定した)基材を、特に100℃超、より好ましくは120℃超の温度まで加熱する工程と、
を含む、基材を結合させるための方法にも関する。
【0108】
加熱工程は、所望の特性に達するために十分な時間、好ましくは1分~5日の範囲の時間の間、実施されうる。
【0109】
本発明の二液接着剤組成物は、有利には、以下の特性の少なくとも1つを示す:
・迅速な固着:好ましくは1分未満、より好ましくは35秒未満;
・長時間の接着オープンタイム:室温(25℃)で好ましくは30分超;
・高い結合強度;
・高度のCTV;
・高い耐熱老化性;
・温水中の浸漬に対する高い抵抗性;
・良好なエネルギー吸収;
・有機溶媒に対する良好な抵抗性(好ましくは常温における、アセトン中での24時間の間の不溶性50%~100%)。
【0110】
本発明はまた、二液硬化性組成物の耐熱性を改善するための、二液硬化性組成物の第1液中に-X-O-Rb基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、Rbはアルキル基である。]を含む少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーの使用であって、前記二液硬化性組成物が:
・第1液の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも51重量%のシアノアクリレートモノマーを含む第1液;
・以下を含む第2液:
- (メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系官能化オリゴマー、(メタ)アクリル系官能化樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのマイケル受容体M(但し、少なくとも1つのマイケル受容体Mは、式-O(CHRa-CH2O)n-[式中、nは1~10(マイケル受容体M1)、より好ましくは1~4の範囲であり、さらにより好ましくは、nは1または2であり、Raは、CH3またはHを表す]の少なくとも1つの基を含む);ならびに
- 求核開始剤
を含み、
第2液が、マイケル受容体M1の総含有量が、第2液の総重量に基づいて少なくとも20重量%であり、シアノアクリレートモノマーを含まないことを特徴とする、使用に関する。
【0111】
上に挙げた二液組成物の全ての特徴(成分、重量パーセントなど)は、上記の使用に適用される。
【実施例】
【0112】
以下の成分を全て使用した:
エチルシアノアクリレート(ECA):Cartell Chemical Co Ltd
メトキシエチルシアノアクリレート(MECA):Cartell Chemical Co Ltd
SO2:Carburos Metalicos SA
Sartomer SR 454:Arkemaから市販されているエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート
Sartomer SR 349:Arkemaから市販されているエトキシル化ビスフェノールAジアクリレート
Degacryl 449:Evonikより市販されているポリメチルメタクリレート
Aerosil R202:Evonikより市販されている疎水性ヒュームドシリカ
以下の全ては、Sigma Aldrich Mercから入手した:
メタンスルホン酸、BF3エーテラート、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、イタコン酸、カフェイン、過安息香酸tert-ブチル。
【0113】
以下の方法を用いて組成物の性能を評価した:
引張剪断試験データは、ASTM D1002に準拠して測定した場合、接触面が25mm2の重複する重ね剪断(標準試験片)の部品を組み立てた後にメガパスカル(MPa)で測定された結合強度を反映する(接着した重ね剪断は、組立後、試験前の24時間の間、静止された)。また、150℃の乾式加熱に3日間曝露した後、組み立てられた重ね剪断標本上の抵抗性の試験も測定し、また、温水(60℃)中に3日間浸漬させた組立試料についても測定した。
【0114】
ギャップ接合(GB)は、蹄鉄形に曲げた直径2mmの小型スペーシングワイヤによって2つの部品間のギャップを2mm厚に設定したとき、接着した軟鋼基材(MS)の重ね剪断の引張剪断強度によって測定した。強度は、組み立てた後、24時間静止した後で測定した。
【0115】
「エネルギー」のパラメータは、ギャップ接合したMS重ね剪断の破壊機械試験中の応力ひずみ曲線下面積として測定される靭性または耐結合破壊の比較尺度を表す。
【0116】
例1:二液接着剤組成物
表1に示す例1の組成物の第1液および第2液を調製した:
【0117】
組成物の第1液は、89重量%超のシアノアクリレートモノマーを含む。第1液は、2種のシアノアクリレートモノマーの混合物を含み、その約40%はMECAモノマーであった。
【0118】
表1の第1液および第2液を、4:1の体積比で混合した。
【0119】
2つの液を、4:1の静的ミキサーを備えた4:1のシリンジに投入した。第1液が、多量の液(合計80%)であった。
【0120】
液を混合すると、混合時に第2液からクロスオーバーする有機塩基カフェインによってシアノアクリレートの硬化が開始した。
【0121】
この接着剤の性能を、4つの試料の平均で決定した。結果を以下の表2に示す。
(MS=軟鋼基材、Al=アルミニウム基材)
【0122】
オープンタイムおよび固着時間は、本明細書中で定義されるとおりである。
【0123】
例1の組成物は、有利に硬化したとき、長時間のオープンタイム(30分)および迅速な固着時間(30秒)を示す。
【0124】
硬化した組成物は、金属上で高い強度を有し、高いCTVを示し、また、良好なエネルギー吸収を有する。
【0125】
それに加えて、結果は、硬化組成物が有利なことに、熱老化の後、また温水中の浸漬の後に高い強度を示すことを示す。熱処理後、硬化接着剤はアセトン中に不溶性である。
【0126】
例2~4:二液接着剤組成物
例2の組成物は、第1液がシアノアクリレート成分としてECA/MECA混合物の代わりにECAモノマーのみを含む例1の組成物に対応する、比較組成物である。そのため、例2の組成物中に、-X-O-Rb基[式中、Xは、任意選択により1個またはいくつかの酸素原子で中断されている線状または分岐状アルキレン基であり、Rbはアルキル基である。]を含むシアノアクリレートモノマーは存在しない。
【0127】
例3の組成物は、第1液がシアノアクリレート成分としてECA/MECA混合物の代わりにMECAモノマーのみを含む、例1の組成物に対応する。
【0128】
例3の組成物は、第2液が過安息香酸tert-ブチルを含まず、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレートの比率が再調整された、例1の組成物に対応する。
【0129】
例1に従い、150℃で3日間老化させた後、耐熱性のみを評価した。以下の表4に、これらの組成物の実験結果を示す。
【0130】
表4は、組成物3および4が老化後に示す耐熱性(7MPa)が、第1液中にMECAモノマーを含まない例2の比較組成物(わずか3MPa)と比較して有利なことに高いことを実証した。