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  • 特許-抗アクチビンA抗体及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】抗アクチビンA抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/22 20060101AFI20240530BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240530BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240530BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240530BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240530BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
C07K16/22 ZNA
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/02
A61P19/02
A61P19/10
A61P25/16
A61P29/00
A61P35/00
A61K39/395 N
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022104218
(22)【出願日】2022-06-29
(62)【分割の表示】P 2021122976の分割
【原出願日】2014-07-30
(65)【公開番号】P2022130593
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】61/859,926
(32)【優先日】2013-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/913,885
(32)【優先日】2013-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/864,036
(32)【優先日】2013-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/911,834
(32)【優先日】2013-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー・グロマダ
(72)【発明者】
【氏名】エスター・ラトレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ディー・ヤンコプーロス
(72)【発明者】
【氏名】ロリ・シー・モートン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502740(JP,A)
【文献】国際公開第2013/074557(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/22
A61P 3/00
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 11/00
A61P 13/12
A61P 17/02
A61P 19/02
A61P 19/10
A61P 21/00
A61P 25/00
A61P 25/16
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 43/00
A61K 39/395
C12N 15/13
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチビンA及びアクチビンBと結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号108-110-112-92-94-96のアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインである相補性決定領域(CDRs)を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
(a)配列番号106のアミノ酸配列を有するHCVR;及び(b)配列番号90のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
GDF8アンタゴニスト、及び医薬として許容される担体又は希釈剤をさらに含GDF8アンタゴニストが、抗GDF8抗体、及び抗GDF8抗体の抗原結合フラグメントからなる群より選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗GDF8抗体又はその抗原結合フラグメントが、それぞれ配列番号218、219及び220のCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(HCDRs)、及び、それぞれ配列番号222、223及び224のCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(LCDRs)を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗GDF8抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号217のアミノ酸配列を有するHCVR、及び、配列番号221のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象における筋肉の量又は強度を増加させるのに使用するための、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項3~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医療に使用するための、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項3~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害を処置、予防又は緩和するための医薬の製造における、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項3~のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害を処置、予防又は緩和するのに使用するための、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項3~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害が、サルコペニア、悪液質、筋肉の傷害、筋肉の消耗/萎縮、がん、肥満症、糖尿病、関節炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、骨粗鬆症、変形性関節症、オステオペニア、及び代謝症候群からなる群より選択される、請求項10に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項12】
悪液質が、特発性であるか、又は別の状態に続発する悪液質である、請求項11に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項13】
状態が、がん、慢性腎不全、又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項12に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項14】
筋肉の消耗/萎縮が、不使用、固定、ベッド安静、傷害、医学的処置、外科的介入及び人工呼吸の必要性からなる群より選択される状態によって引き起こされるか、又はそれらに関連する、請求項11に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項15】
外科的介入が、股関節骨折、股関節置換、及び膝置換からなる群より選択される、請求項14に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【請求項16】
代謝症候群が、糖尿病、肥満症、栄養障害、臓器の萎縮、慢性閉塞性肺疾患、及び食欲不振からなる群より選択される疾患又は障害を包含する、請求項11に記載の使用のための抗体、その抗原結合フラグメント、または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチビンAに特異的な抗体及びその抗原結合フラグメント、並びにアクチ
ビンAに特異的な抗体をミオスタチン阻害剤と共に使用する方法を含めたその使用方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
アクチビンは、トランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに
属し、細胞増殖、分化、及びアポトーシスに対して広範囲の生物学的作用を発揮する。アクチビンは、インヒビンβA、インヒビンβB、インヒビンβC及びインヒビンβEのホモ又はヘテロ二量体であり、これらの異なる組合せが、アクチビンタンパク質群の様々なメンバーを作り出す。例えば、アクチビンAはインヒビンβAのホモ二量体であり、アクチビンBはインヒビンβBのホモ二量体であり、それに対してアクチビンABは、インヒビンβAと
インヒビンβBとのヘテロ二量体であり、アクチビンACは、インヒビンβAとインヒビンβCとのヘテロ二量体である[Tsuchida, K.ら、Cell Commun Signal 7:15 (2009)]。
【0003】
アクチビンAは、アクチビンII型受容体(IIA型及びIIB型、それぞれActRIIA及びActRIIBとしても公知である)として公知の細胞表面上の受容体複合体に結合してそれを活性化す
る。これらの受容体の活性化によりアクチビンI型受容体(例えば、Alk4又は7)のリン酸化が起こり、それに続いてSMAD2及び3タンパク質のリン酸化、SMAD複合体の形成(SMAD4との)、並びに細胞核へのSMAD複合体の移動が起こり、そこでSMAD2及びSMAD3は様々な遺伝子
の転写を調節する機能を果たす[Sozzani, S.及びMusso, T.、Blood 117(19):5013~5015 (2011)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5,500,362号
【文献】米国特許第5,821,337号
【文献】WO05/103081
【文献】米国特許第8,586,713号
【文献】US2011-0293630A1
【文献】US2007/0280945A1
【文献】US8,309,082
【文献】US2010/0272734A1
【非特許文献】
【0005】
【文献】Tsuchida, K.ら、Cell Commun Signal 7:15 (2009)
【文献】Sozzani, S.及びMusso, T.、Blood 117(19):5013~5015 (2011)
【文献】McPherron ACら(1997). Nature 387(6628):83~90
【文献】Lee SJら(2005) Proc Natl Acad Sci U S A 102(50):18117~18122
【文献】Reddyら、J Immunol 164:1925~1933 (2000)
【文献】Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md. (1991)
【文献】Al-Lazikaniら、J Mol Biol 273:927~948 (1997)
【文献】Martinら、PNAS (USA) 86:9268~9272 (1989)
【文献】Shieldら、J Biol Chem 277:26733 (2002)
【文献】Clynesら、PNAS USA 95:652~656 (1998)
【文献】Taylorら、Nucl Acids Res 20:6287~6295 (1992)
【文献】Angalら、Molecular Immunology 30:105 1993
【文献】Pearson, W.R.、Methods Mol Biol 24:307~331 (1994)
【文献】Gonnetら、Science 256:1443~1445 (1992)
【文献】Pearson, W.R.、Methods Mol Biol 132:185~219 (2000)
【文献】Altschulら、J Mol Biol 215:403~410 (1990)
【文献】Altschulら、Nucleic Acids Res 25:3389~402 (1997)
【文献】Antibodies、Harlow及びLane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)
【文献】Reineke、Methods Mol Biol 248:443~463 (2004)
【文献】Tomer、Protein Science 9:487~496 (2000)
【文献】Ehring、Analytical Biochemistry 267(2):252~259 (1999)
【文献】Engen及びSmith、Anal. Chem.73:256A~265A (2001)
【文献】Junghansら、Cancer Res.50:1495~1502 (1990)
【文献】Tuttら、J Immunol 147:60~69 (1991)
【文献】Kuferら、Trends Biotechnol 22:238~244 (2004)
【文献】Kleinら、mAbs 4:6、1~11 (2012)
【文献】Kazaneら、J Am Chem Soc. 135(1):340~346 (2013)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA
【文献】Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA、J Pharm Sci Technol 52:238~311 (1998)
【文献】Mordentiら、Pharmaceut Res 8:1351 (1991)
【文献】Wuら、J Biol Chem 262:4429~4432 (1987)
【文献】Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987)
【文献】Medical Applications of Controlled Release、Langer及びWise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Florida
【文献】Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁
【文献】Langer、Science 249:1527~1533 (1990)
【文献】Souza, TAら、Mol Endocrinol 22:2689~702(2008)
【文献】Cochraneら、J Am Soc Nephrol 16:3623~30(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GDF8(ミオスタチン)、アクチビンB、アクチビンAB、インヒビンA、インヒビンB、GDF3
、GDF11、Nodal、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、及びBMP10等の多数の他のリガンドが、ActRIIBに結合してそれを活性化する。ActRIIBとそのリガンドとの相互作用をブロックするこ
とにより、有益な生理学的効果をもたらすことができる。例えば、GDF8は、骨格筋の発達及び維持において中心的な役割を果たし、筋肉量の負の調節因子として作用する[McPherron ACら(1997). Nature 387(6628):83~90]。ActRIIB-Fc(すなわち、IgG Fcドメインへの融合により安定化されたIIB型受容体であるActRIIBの細胞外部分)の投与により骨格筋質
量の有意な増加が起こり、マウスにおいて筋肉質量及び筋肉強度の測定を改善する[Lee SJら(2005) Proc Natl Acad Sci U S A 102(50):18117~18122]。Mstn(ミオスタチン)欠損マウスでは、ActRIIB-Fcの効能は弱められるが除去されず、これは、ミオスタチンに加えて他のActRIIBリガンドも、筋肉成長の負の調節因子として機能する可能性があることを
実証する。したがって、臨床上の利益を提供できる更にActRIIBシグナル伝達阻害剤が求
められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インヒビンβA及びインヒビンβAを含有する二量体、例えばアクチビンA、
アクチビンAB等と結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、とりわけ、アクチビンAが
媒介するシグナル伝達を阻害すること、アクチビンAが媒介するシグナル伝達の阻害によ
り有益な臨床転帰をもたらすことに関して有用であり、例えば、アクチビンAの活性及び/又はシグナル伝達によって引き起こされる、又はそれらに関する疾患及び障害を処置することに関して有用である。本発明の抗体はまた、ActRIIA及びActRIIB受容体の他のリガンドの阻害剤、例えばGDF8阻害剤と併せた使用に関する有用性も有する。
【0008】
本発明の抗体は、全長であってもよいし(例えば、IgG1又はIgG4抗体)、又は抗原結合部位のみを含んでいてもよく(例えば、Fab、F(ab')2又はscFvフラグメント)、官能性に影響を与える、例えば残留したエフェクター機能を除去するように改変されてもよい[Reddyら、J Immunol 164:1925~1933 (2000)]。
【0009】
本発明は、25℃での表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合、約500nM未満の結合
会合平衡定数(binding association equilibrium constant)(Ka)及び約5pM未満の解離平
衡定数(KD)でアクチビンAと特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合フラグ
メントを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、25℃での表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合、約4pM未満
のKDでアクチビンAと特異的に結合する。本発明のいくつかの実施形態において、単離さ
れた抗体又はその抗原結合フラグメントは、約500nM未満の結合会合平衡定数(Ka)でアク
チビンAと特異的に結合する。
【0010】
本発明は、アクチビンAと特異的に結合し、少なくとも1つのアクチビンA受容体のアク
チビンAへの結合をブロックする、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントを提供
する。本発明のいくつかの実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、25℃でのインビボにおける受容体/リガンド結合バイオアッセイで測定した場合
、約80pM未満のIC50値でアクチビンAのアクチビンA受容体への結合をブロックする。本発明のいくつかの実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、25℃でのインビボにおける受容体/リガンド結合バイオアッセイで測定した場合、約60pM未
満のIC50値でアクチビンAのアクチビンA受容体への結合をブロックする。また本発明は、アクチビンAと特異的に結合し、アクチビンAによる少なくとも1つのアクチビンA受容体の活性化をブロックする、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントも提供する。本発明のいくつかの実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、アクチビンAのアクチビンII型受容体への結合を有意にブロックしない。本発明のいくつか
の実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、アクチビンIIA
型受容体(ActRIIA)、アクチビンIIB型受容体(ActRIIB)、及びアクチビンI型受容体からなる群より選択されるアクチビンA受容体へのアクチビンAの結合を阻害する。本発明のいくつかの実施形態において、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、アクチビンAが媒介するSMAD複合体シグナル伝達の活性化を阻害する。
【0011】
本発明は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、106、114、122、130、138、154、162、170、178、186、194、及び202からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可
変領域(HCVR)、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
また本発明は、配列番号10、26、42、58、74、90、146、及び210からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントも提供する。
【0013】
また本発明は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/90、106/90、114/90、122/90、130/90、138/146、154/146、162/146、170/146、178/146、186/146、194/146、及び202/210からなる群より選択されるHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)配列対を含む、
抗体又はその抗原結合フラグメントも提供する。
【0014】
また本発明は、配列番号8、24、40、56、72、88、104、112、120、128、136、144、160、168、176、184、192、200、及び208からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;並びに配列番号16、32、48、64、80、96、152、及び216からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む、抗体又は抗体の抗
原結合フラグメントも提供する。
【0015】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗体の抗原結合部位は、配列番号8/16、24/32
、40/48、56/64、72/80、88/96、104/96、112/96、120/96、128/96、136/96、144/152、160/152、168/152、176/152、184/152、192/152、200/152、及び208/216からなる群より選択されるHCDR3/LCDR3のアミノ酸配列対を含む。
【0016】
また本発明は、配列番号4、20、36、52、68、84、100、108、116、124、132、140、156、164、172、180、188、196、及び204からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号6、22、38、54、70、86、102、110、118、126、134、142、158、166、174、182、190、198、及び206からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、148、及び212からなる群より選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しく
は少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;並びに配列番号14、30、46、62、78、94、150、及び214からなる群より
選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは
少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを更に含む、抗体又はそのフラグメントも提供する。
【0017】
ある特定の非限定的な例示的な本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号4-6-8-12-14-16(例えばH4H10423P);20-22-24-28-30-32(例えばH4H10424P);36-38-40-44-46-48(例えばH4H10426P);52-54-56-60-62-64(例えばH4H10429P);68-70-72-76-78-80(例えばH4H10430P);84-86-88-92-94-96(例えばH4H10432P2;100-102-104-92-94-96(例えばH4H10433P2);108-110-112-92-94-96(例えばH4H10436P2);116-118-120-92-94-96(例えばH4H10437P2);124-126-128-92-94-96(例えばH4H10438P2);132-134-136-92-94-96(例えばH4H10440P2);140-142-144-148-150-152(例えばH4H10442P2);156-158-160-148-150-152(H4H10445P2);164-166-168-148-150-152(H4H10446P2);172-174-176-148-150-152(H4H10447P2);180-182-184-148-150-152(H4H10448P2);188-190-192-148-150-152(H4H10452P2);196-198-200-148-150-152(H4H10468P2);及び204-206-208-212-214-216(H2aM10965N)からなる群よりそれぞれ
選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含
む。
【0018】
関連する実施形態において、本発明は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/90、106/90、114/90、122/90、130/90、138/146、154/146、162/146、170/146、178/146、186/146、194/146、及び202/210からなる群より選択される重鎖及び軽鎖可変
領域(HCVR/LCVR)配列内に含有される重鎖及び軽鎖CDRドメインを含む、アクチビンAと特
異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを包含する。HCVR及びLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法及び技術は当業界において周知であり、本明細書で
開示された特定のHCVR及び/又はLCVRのアミノ酸配列内のCDRを同定するのに使用することができる。CDRの境界を確認するのに使用できる例示的な慣例的手法としては、例えば、Kabatの定義、Chothiaの定義、及びAbMの定義が挙げられる。概説すれば、Kabatの定義は
、配列の変異性に基づいており、Chothiaの定義は、構造的なループ領域の位置に基づい
ており、AbMの定義は、KabatのアプローチとChothiaのアプローチとの折衷案である。例
えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md. (1991);Al-Lazikaniら、J Mol Biol 273:927~948 (1997);及びMartinら、PNAS (USA) 86:9268~9272 (1989)を参照されたい。公開データベー
スも、抗体内のCDR配列を同定するのに利用可能である。
【0019】
また本発明は、抗アクチビンA抗体又はその一部をコードする核酸分子も提供する。例
えば、本発明は、Table 1(表1)に列挙されているHCVRのアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0020】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているLCVRのアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0021】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているHCDR1のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているHCDR1の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0022】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているHCDR2のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているHCDR2の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0023】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているHCDR3のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているHCDR3の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0024】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているLCDR1のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているLCDR1の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0025】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているLCDR2のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているLCDR2の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0026】
また本発明は、Table 1(表1)に列挙されているLCDR3のアミノ酸配列のいずれかをコー
ドする核酸分子も提供し、ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているLCDR3の核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそ
れらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。
【0027】
また本発明は、HCVRをコードする核酸分子であって、HCVRは、3つのCDRのセット(すな
わち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3のアミノ酸配列のセットは、Table
1(表1)に列挙されている例示的な抗アクチビンA抗体のいずれかで規定された通りである、核酸分子も提供する。
【0028】
また本発明は、LCVRをコードする核酸分子であって、LCVRは、3つのCDRのセット(すな
わち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列のセットは、Table
1(表1)に列挙されている例示的な抗アクチビンA抗体のいずれかで規定された通りである、核酸分子も提供する。
【0029】
また本発明は、HCVR及びLCVRの両方をコードする核酸分子であって、HCVRは、Table 1(表1)に列挙されているHCVRのアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRは、Table 1(表1)に列挙されているLCVRのアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む、核酸分子も提供する。ある特定の実施形態において、核酸分子は、Table 2(表2)に列挙されているHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列、及びTable 2(表2)に列挙されているLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれらの実質的に類似した配列を含む。本発明のこの態様に係るある特定の実施形態において、核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードし、ここでHCVR及びLCVRはどちらも、Table 1(表1)に列挙されている同じ抗アクチビンA抗体から誘導される。
【0030】
また本発明は、抗アクチビンA抗体の重鎖又は軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現
することができる組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわちTable 1(表1)に記載されているようなHCVR、LCVR、及び/又はCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを包含する。また、このようなベクターが導入された宿主細胞、同様に、抗体又は抗体フラグメントの産生を許容する条件下で宿主細胞を培養すること、及びそのようにして産生された抗体及び抗体フラグメントを回収することによる、抗体又はその部分の産生方法も本発明の範囲内に包含される。
【0031】
本発明は、改変された炭水化物含量を有する抗アクチビンA抗体を包含する。いくつか
の用途において、望ましくない糖鎖付加部位を除去するための改変が、有用であり得る。いくつかの用途において、糖鎖付加パターンを変更するための改変が有用な場合があり、例えば、オリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠失させるため、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるために、抗体を改変してもよい[Shieldら、J Biol Chem 277:26733 (2002)を参照]。他の用途において、補体依存性細胞傷害(CDC)を改変するために、
ガラクトシル化の改変がなされてもよい。いくつかの用途において、エフェクター機能を最小化するために、抗体は、改変された糖鎖付加パターンを有していてもよい。例えば、更にグリコシル化又はシアル化された抗体を得るために、抗体を改変してもよい。
【0032】
別の態様において、本発明は、アクチビンAと特異的に結合する組換えヒト抗体又はそ
のフラグメント、及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗アクチビンA抗体及び第2の治療剤の組合せである組成物を特徴とする。一実施形態において、第2の治療剤は、抗アクチビンA抗体と有利に組み合わされるあらゆる薬剤である。抗アクチビンA抗体と有利に組み合わされる可能性がある例示
的な薬剤としては、これらに限定されないが、アクチビンA活性を阻害する他の薬剤(例えば、他の抗体又はその抗原結合フラグメント、ペプチド阻害剤、小分子アンタゴニスト等)、及び/又はアクチビンAと直接結合しないが、アクチビンAが媒介するシグナル伝達を妨害、ブロック又は弱化する薬剤が挙げられる。一実施形態において、第2の治療剤は、ActRIIA及び/又はActRIIB受容体の別のリガンド(例えば、GDF8、アクチビンB、アクチビンAB、インヒビンA、インヒビンB、GDF3、GDF11、Nodal、BMP2、BMP4、及び/又はBMP7)の活性を、阻害、妨害、ブロック及び/又は弱化する。一実施形態において、第2の治療剤は、抗GDF8アンタゴニスト(例えば、ヒト抗GDF8抗体又はその抗原結合フラグメント)である。本発明の抗アクチビンA抗体と共に使用するための例示的な抗GDF8剤としては、ヒト抗GDF8
抗体[例えば、US2011-0293630A1に記載されているようなHCVR/LCVR又はCDRのアミノ酸配
列のいずれかを含む抗GDF8抗体{例えば、H4H1657N2、これは、配列番号217を含むHCVRの
重鎖相補性決定領域(HCDR)(例えば、それぞれ配列番号218、219、及び220に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3配列)と、配列番号221を含むLCVRの軽鎖相補性決定領域(LCDR)(例えば、
配列番号222、223、及び224に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3配列)とを有する抗GDF8抗体である}]が挙げられる。追加の組合せ療法及び本発明の抗アクチビンA抗体を含む共製剤(co-formulation)は、本明細書の他所で開示される。
【0033】
本発明の追加の態様において、アクチビンA特異的結合ドメイン及びGDF8特異的結合ド
メインを含む抗原結合分子が提供される。本発明のこの態様の一実施形態において、抗原結合分子は、アクチビンAと特異的に結合する第1の可変ドメイン及びGDF8と特異的に結合する第2の可変ドメインを含む二重特異性抗体である。
【0034】
更に別の態様において、本発明は、抗アクチビンA抗体又は本発明の抗体の抗原結合部
位を使用してアクチビンA活性を阻害するための治療方法であって、治療有効量の本発明
の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を投与する工程を含む、治療方法を提供する。処置される障害は、アクチビンAの活性又はシグナル伝達の除去、阻害又
は低減によって改善、緩和、阻害又は予防されるあらゆる疾患又は状態である。本発明の抗アクチビンA抗体又は抗体フラグメントは、アクチビンAとアクチビンII型受容体(例え
ば、アクチビンIIA型受容体及び/又はアクチビンIIB型受容体)との相互作用;アクチビンAとアクチビンI型受容体との相互作用;アクチビンAとII型及びI型受容体の両方との相互作用をブロックする;又はそれ以外の方法でアクチビンAのシグナル伝達活性を阻害するように機能し得る。
【0035】
また本発明は、患者における、アクチビンA活性に関する、又はアクチビンA活性によって引き起こされる疾患又は障害を処置するための医薬品の製造における、本発明の抗体の抗アクチビンA抗体又は抗原結合部分の使用も包含する。また本発明は、アクチビンA抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与する工程による、対象における筋肉の量又は強度を増加させるための方法も提供する。また本発明は、アクチビンA特異的結合タンパ
ク質及びGDF8特異的結合タンパク質を対象に投与する工程、又はアクチビンA特異的結合
ドメイン及びGDF8特異的結合ドメインを含む抗原結合分子を対象に投与する工程による、対象における筋肉の量又は強度を増加させるための方法も提供する。
【0036】
また本発明は、アクチビンA特異的結合タンパク質(例えば、抗アクチビンA抗体)をそれを必要とする対象に投与する工程による、筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害を処置、予防及び/又は緩和するための方法も包含する。関連する態様において、本
発明の方法は、アクチビンA特異的結合タンパク質及びGDF8特異的結合タンパク質(例えば、抗アクチビンA抗体及び抗GDF8抗体)をそれを必要とする対象に投与する工程によって、筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害を処置、予防及び/又は緩和すること
を包含する。また本発明の方法は、アクチビンA特異的結合ドメイン及びGDF8特異的結合
ドメインを含む抗原結合分子をそれを必要とする対象に投与する工程によって、筋肉の量又は強度の減少を特徴とする疾患又は障害を処置、予防及び/又は緩和することも包含す
る。本発明の方法を使用して処置、予防及び/又は緩和することができる筋肉の量又は強
度の減少を特徴とする疾患又は障害としては、サルコペニア、悪液質[例えば、特発性の
悪液質又は別の状態(例えば、がん、慢性腎不全、又は慢性閉塞性肺疾患)に続発する悪液質]、筋肉の傷害、筋肉の消耗及び/又は萎縮[例えば、不使用、固定、ベッド安静、傷害
、医学的処置、外科的介入(例えば、股関節骨折、股関節置換、及び膝置換)及び人工呼吸の必要性によって引き起こされるか、又はそれらに関連するもの]、がん、肥満症、糖尿
病、関節炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、骨粗鬆症、変形性関節症、オステオペニア、並びに代謝症候群(例えば、糖尿病、肥満症
、栄養障害、臓器の萎縮、慢性閉塞性肺疾患、及び食欲不振の1つ又は複数)が挙げられる。
【0037】
また本発明は、アクチビンA(すなわち、インヒビンβA二量体)に特異的結合タンパク質、例えば抗アクチビンA抗体又はその抗原結合フラグメントをそれを必要とする対象に投
与する工程による、インヒビンβAを含有する分子(例えば、インヒビンβAを含有する二
量体、例えば、アクチビンA、アクチビンAB等)の活性によって引き起こされる、促進される、増悪する、又は悪化する疾患又は障害を処置、予防及び/又は緩和するための方法も
包含する。本発明の一態様において、本発明の方法は、抗アクチビンA抗体をそれを必要
とする対象に投与する工程による、腎線維症を処置、予防及び/又は緩和する方法を包含
する。本発明の特定の態様において、本発明の方法は、抗アクチビンA抗体をそれを必要
とする対象に投与する工程による、慢性腎疾患[例えば、高血圧、糖尿病、糸球体腎炎、
遺伝性疾患(多発性嚢胞腎疾患等)、腎臓の奇形、自己免疫疾患(例えば、狼瘡)、又は閉塞(例えば、腎結石、腫瘍、前立腺肥大)、又は繰り返される尿路感染の結果として]によっ
て引き起こされる腎線維症を処置、予防及び/又は緩和する方法を包含する。本発明の追
加の態様は、抗アクチビンA抗体をそれを必要とする対象に投与する工程による、敗血症
、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患、良性又は悪性の褐色細胞腫、子宮類線維腫/平滑筋腫
、子癇前症、ケロイド、肥厚性瘢痕、又は肺動脈の高血圧を処置、予防及び/又は緩和す
る方法を包含する。本発明の追加の態様は、抗アクチビンA抗体をそれを必要とする対象
に投与する工程による、アクチビンA活性によって引き起こされる、促進される、増悪す
る、又は悪化する悪液質を処置、予防及び/又は緩和する方法を包含する。本発明の追加
の態様は、抗アクチビンA抗体をそれを必要とする対象に投与する工程による、アクチビ
ンA活性によって引き起こされる、促進される、増悪する、又は悪化する体重の減少を処
置、予防及び/又は緩和する方法を包含する。
【0038】
他の実施形態は、以下に記載の詳細な説明の総論から明らかになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1の抗アクチビンA抗体(「抗体試料」)を抗ヒトFCでコーティングしたセンサーチップに適用し、続いてアクチビンAに前もって結合させた第2の抗アクチビンA抗体の溶液(1μM)中に出現させる、抗体交差競合アッセイの結果を示すマトリックスである。試験された各抗体組合せごとの結合応答(0.22から1.84の数値)を表す。白色のボックス中に黒色の活字で表示した結合応答は、アクチビンAの結合に関して競合がないことを示し、これは別個の結合領域であることを示唆している。
図2】パネルAは、アイソタイプ対照抗体と比較した、平均のピーク強縮力(tetanic force)に対する21日の抗GDF8抗体処置(H4H1657N2、10mg/kg又は30mg/kg)の作用を示す。一元配置分散分析(ANOVA)、それに続いてチューキー検定を使用してデータを分析した。*は、アイソタイプ対照に対してp<0.05の有意性である(n=6、対応のないスチューデントt検定);n.s.=アイソタイプ30mg/kgと比較して統計学的に有意ではない。パネルBは、所定範囲の周波数(40から100Hz)にわたる電流で刺激したときの、3週間にわたりアイソタイプ対照抗体で処置したマウス(n=6)に対する、H4H1657N2で処置したマウス(10mg/kg)における前脛骨筋(TA)の筋肉のピーク強縮力の増加を示す。データは、平均ピーク力±SEMとして表される。
図3】パネルAは、後肢懸垂誘発筋萎縮からの回復期中におけるH4H1657N2の作用を評価するための実験の設計を示す。パネルBは、後肢懸垂から7日後の回復後のH4H1657N2で処置したマウス及びアイソタイプ対照抗体で処置したマウス(HLS+7Rec)の、後肢懸垂から7日後の回復期間のないマウス(HLS)及び対照マウス(非HLS対照)と比較したTA及び腓腹筋(GA)の筋肉質量におけるパーセンテージ変化を示す。値は、対照非HLS値±SEMに対する平均パーセンテージ変化として表される。一元配置分散分析(ANOVA)、それに続いてチューキー検定を使用してデータを分析した。*=非HLS群に対してp<0.05の有意性。#=HLS群に対してp<0.05の有意性。
図4】パネルAは、アクチビンAを過剰発現するマウスの体重に対する(アイソタイプ対照と比較した)抗アクチビンA抗体H4H10446P2投与の作用を示す。二元配置分散分析(反復測定ANOVA+ボンフェローニ多重比較検定)、それに続いてチューキー検定を使用してデータを分析した。*=アイソタイプ対照に対してp<0.05;#=アクチビンA+アイソタイプ対照に対してp<0.05。パネルBは、アクチビンAを過剰発現するマウスにおける(アイソタイプ対照と比較した)前脛骨筋(TA)及び腓腹筋(GA)の筋肉質量に対する抗アクチビンA抗体H4H10446P2の作用を示す。一元配置分散分析(ANOVA)、それに続いてチューキー検定を使用してデータを分析した。*=ベクター+アイソタイプ対照に対してp<0.05;#=アクチビンA+アイソタイプ対照に対してp<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を説明する前に、説明される特定の方法及び実験条件は変更が可能であることから、本発明はこのような方法及び条件に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0041】
特に他の指定がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用されるように、用語「約」は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が、列挙された値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、「約100」という表現は、
本明細書で使用される場合、99及び101並びにその間にある全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を包含する。
【0042】
本明細書で説明したものに類似した、又は等価なあらゆる方法及び材料が本発明の実施又は試験で使用することができるが、ここでは好ましい方法及び材料を説明する。
【0043】
抗原特異的な結合タンパク質
本発明は、抗原特異的な結合タンパク質を含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、アクチビンA特異的結合タンパク質を含む組成物を提供する。
【0044】
表現「抗原特異的な結合タンパク質」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原と特異的に結合する少なくとも1つのドメインを含むタンパク質を意味する。抗原特異的な結
合タンパク質の例示的なカテゴリーは、抗体、抗体の抗原結合部位、特定の抗原と特異的に相互作用するペプチド(例えば、ペプチボディ)、特定の抗原と特異的に相互作用する受容体分子、及び特定の抗原と特異的に結合する受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質を包含する。
【0045】
本発明は、アクチビンAと特異的に結合する抗原特異的な結合タンパク質、すなわち「
アクチビンA特異的結合タンパク質」を包含する。アクチビンは、ベータサブユニット、
すなわちインヒビンβA、インヒビンβB、インヒビンβC、及び/又はインヒビンβEを含
むホモ及びヘテロ二量体分子である。βAサブユニットは、配列番号226のアミノ酸配列を有し、βBサブユニットは、配列番号228のアミノ酸配列を有する。アクチビンAは、2つのβAサブユニットのホモ二量体であり、アクチビンBは、2つのβBサブユニットのホモ二量体であり、アクチビンABは、1つのβAサブユニットと1つのβBサブユニットとのヘテロ二量体であり、アクチビンACは、1つのβAサブユニットと1つのβCサブユニットとのヘテロ二量体である。アクチビンA特異的結合タンパク質は、βAサブユニットと特異的に結合する抗原特異的な結合タンパク質であり得る。βAサブユニットは、アクチビンA、アクチビンAB、及びアクチビンAC分子中に見出されることから、「アクチビンA特異的結合タンパ
ク質」は、アクチビンAに加えてアクチビンAB及びアクチビンACにも特異的に結合する抗
原特異的な結合タンパク質であり得る(上記結合タンパク質はβAサブユニットと相互作用するため)。それゆえに、本発明の一実施形態によれば、アクチビンA特異的結合タンパク質は、アクチビンA;又はアクチビンA及びアクチビンAB;又はアクチビンA及びアクチビンAC;又はアクチビンA、アクチビンAB及びアクチビンACとは特異的に結合するが、他のActRIIBリガンド、例えばアクチビンB、GDF3、GDF8、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、BMP10、GDF11
、Nodal等とは結合しない。したがって、本発明の一実施形態において、アクチビンA特異的結合タンパク質は、アクチビンAに特異的に結合するが、アクチビンB又はアクチビンC
とは有意に結合しない。別の実施形態において、アクチビンA特異的結合タンパク質はま
た、アクチビンBにも結合することができる(βBサブユニット、すなわちインヒビンβBと交差反応するために)。別の実施形態において、アクチビンA特異的結合タンパク質は、アクチビンAに特異的に結合するが、ActRIIBの他のいずれのリガンドにも結合しない結合タンパク質である。別の実施形態において、アクチビンA特異的結合タンパク質は、アクチ
ビンAに特異的に結合するが、いずれの骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP2、BMP4、BMP6、BMP9、BMP10)にも結合しない結合タンパク質である。別の実施形態において、アクチ
ビンA特異的結合タンパク質は、アクチビンAに特異的に結合するが、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)スーパーファミリーの他のいずれのメンバーにも結合しない結
合タンパク質である。
【0046】
また本発明は、GDF8と特異的に結合する抗原特異的な結合タンパク質、すなわち「GDF8特異的結合タンパク質」も包含する。用語「GDF8」(「成長分化因子-8」及び「ミオスタ
チン」とも称される)は、配列番号225のアミノ酸配列を有するタンパク質(成熟タンパク
質)を意味する。本発明によれば、GDF8特異的結合タンパク質は、GDF8と特異的に結合す
るが、他のActRIIBリガンド、例えばGDF3、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、BMP10、GDF11、ア
クチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、Nodal等とは結合しない。
【0047】
本発明の状況において、ActRIIB受容体のリガンド結合部分を含むActRIIB-Fc(例えば、「ACE-031」)等の分子は、GDF8、アクチビンA及びアクチビンABの他にも複数種のリガン
ドと結合することから、このような分子は「アクチビンA特異的結合タンパク質」又は「GDF8特異的結合タンパク質」とみなされない。
【0048】
本明細書においてタンパク質、ポリペプチド及びタンパク質フラグメントという記述は
全て、非ヒト種由来であると明確に述べられない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド又はタンパク質フラグメントのヒトバージョンを指すことが意図される。
【0049】
2つの異なる抗原特異的な結合ドメインを有する抗原結合分子
また本発明は、2つの異なる抗原特異的な結合ドメインを含む抗原結合分子も包含する
。特定には、本発明は、アクチビンA特異的結合ドメイン及びGDF8特異的結合ドメインを
含む抗原結合分子を包含する。用語「抗原特異的な結合ドメイン」は、本明細書で使用される場合、(i)抗体の抗原結合フラグメント分子、(ii)特定の抗原と特異的に相互作用す
るペプチド(例えば、ペプチボディ)、及び/又は(iii)特定の抗原と特異的に結合する受容体のリガンド結合部分を含むか又はそれらからなるポリペプチドを包含する。例えば、本発明は、アクチビンAと特異的に結合する第1の重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)対を含む1つのアームと、GDF8と特異的に結合する第2のHCVR/LCVR対を含む別のアームとを
有する二重特異性抗体を包含する。
【0050】
特異的な結合
用語「特異的に結合する」又は同種の用語は、本明細書で使用される場合、抗原特異的な結合タンパク質又は抗原特異的な結合ドメインが、通常の試験条件下で、500pM又はそ
れ未満の解離定数(KD)を特徴とする特定の抗原との複合体を形成し、他の非関連抗原とは結合しないことを意味する。「非関連抗原」は、互いに95%未満のアミノ酸同一性を有す
るタンパク質、ペプチド又はポリペプチドである。2つの分子が互いに特異的に結合する
かどうかを決定するための方法は当業界において周知であり、このような方法としては、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴、及び同種のものが挙げられる。例えば、抗原特異的な結合タンパク質又は抗原特異的な結合ドメインは、本発明の状況で使用される場合、表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未
満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約4pM未満、約2pM未満、約1pM未満、約0.5pM未満、約0.2pM未満、約0.1pM未満、又は約0.05pM未満のKDで、特定の抗原(例えば、アクチビンA及び/若しくはAB、又はGDF8)又はその部分と結合
する分子を包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、抗原特異的な結合タンパク質又は抗原特異的な結合ドメインが、特定された分子と「結合しない」(例えば、「GDF11と結合しない」、「BMP9と結合しない」、「BMP10と結合しない」等)とは、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃でその分子への結合に関して試験した場合、タンパク質又は結合ドメインが、このようなアッセイ又はそれと等価なアッセイにおいて50.0nMより大きいKDを提示するか又はまったく結合を提示できない場合のことである。
【0052】
用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書で使用される場合、例えばBIAcore(商標)シ
ステム(GE Healthcare社、Piscataway、NJのBiacore Life Sciences division)を使用し
てバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化を検出することによる、リアルタイムの相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0053】
用語「KD」は、本明細書で使用される場合、特定のタンパク質-タンパク質相互作用(例えば、抗体-抗原相互作用)の平衡解離定数を意味する。特に他の指定がない限り、本明細書で開示されたKD値は、25℃での表面プラズモン共鳴アッセイによって決定したKD値を指す。
【0054】
抗体及び抗体の抗原結合フラグメント
上記で示したように、抗原特異的な結合タンパク質は、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントを含んでいてもよいし、又はそれからなっていてもよい。更に、2つの異なる抗原
特異的な結合ドメインを含む抗原結合分子のケースにおいて、抗原特異的な結合ドメインの一方又は両方が、抗体の抗原結合フラグメントを含んでいてもよいし、又はそれからなっていてもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アクチビンに結合する抗体」又は「抗アクチビンA抗体
」は、アクチビンAタンパク質の可溶性フラグメントと結合し、更にアクチビンのβAサブユニットを含有するアクチビンヘテロ二量体にも結合し得る抗体及びその抗原結合フラグメントを包含する。
【0056】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原(例えば、アクチビンA)に特
異的に結合するか又はそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むあらゆる抗原結合分子又は分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫
グロブリン分子、加えてそれらの多量体(例えば、IgM)を包含する。各重鎖は、重鎖可変
領域(本明細書ではHCVR又はVHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又
はVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含
む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と名付けられたより高度に保存された領域に散在する、相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変性領域に更に細かく分類できる
。各VH及びVLは、以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端から
カルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される。本発明の様々な実施形
態において、抗アクチビンA抗体(又はその抗原結合部位)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と
同一であってもよいし、又は自然に若しくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの比較分析(side-by-side analysis)に基づき規定する
ことができる。
【0057】
また用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、全長抗体分子の抗原結合フラグメントも包含する。抗体の「抗原結合部位」、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語及び同種のものは、本明細書で使用される場合、あらゆる天然に存在する、酵素によって得ることができる、合成の、又は遺伝子工学的に改変された、抗原と特異的に結合して複合体を形成するポリペプチド又は糖タンパク質を包含する。抗体の抗原結合フラグメントは、タンパク質分解による消化、又は抗体の可変ドメイン及び任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組換え遺伝子工学技術等のあらゆる好適な標準的技術
を使用して、例えば全長抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは、公知で
あるか、及び/又は例えば商業的な供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーなど)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。DNAを配列決定して、化学的に、又は分子生物学技術を使用して操作することにより、例えば、1つ若し
くはそれより多くの可変及び/若しくは定常ドメインを好適な立体配置に配置すること、
又はコドンを導入する、システイン残基を作り出す、アミノ酸を改変する、付加する、若しくは欠失させること等が可能である。
【0058】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラ
グメント;及び(vii)抗体の高度可変領域[例えば、CDR3ペプチド等の単離された相補性決
定領域(CDR)]、又は拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模擬するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。また他の加工された分子、例えばドメイン特異的な抗体、単一のドメイン抗体、ドメインが欠失した抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、二重特異
性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ(例えば1価ナノボディ、2価ナノボディ等)、小モジュール免疫薬(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメイン等も、
本明細書で使用されるような表現「抗原結合フラグメント」内に包含される。
【0059】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含むと予
想される。可変ドメインは、あらゆるサイズ又はアミノ酸組成を有していてもよく、一般的に、1つ又は複数のフレームワーク配列に隣接するか又はそれと共にフレーム内に存在
する少なくとも1つのCDRを含むと予想される。VHドメインとVLドメインとが連結した抗原結合フラグメントにおいて、VH及びVLドメインは、あらゆる好適な配置で互いに相関して配置されていてもよい。例えば、可変領域が二量体であり、VH-VH、VH-VL又はVL-VL二量
体を含有していてもよい。その代わりに、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVH又はVLドメインを含有していてもよい。
【0060】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常
ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有していてもよい。
本発明の抗体の抗原結合フラグメント内で見出される可能性がある可変及び定常ドメインの非限定的な例示的立体配置としては、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが挙げられる。上記で列挙した例示的な立体配置のいずれかを包含する可変及び定常ドメインのあらゆる立体配置において、可変及び定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよいし、又は全部若しくは一部のヒンジ若しくはリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変及び/又は定常ドメイン間にフレキシ
ブル又はセミフレキシブルな連結をもたらす少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40
、60個又はそれより多くの)アミノ酸からなっていてもよい。更に、本発明の抗体の抗原
結合フラグメントは、互いに、及び/又は1つ若しくは複数の単量体のVH又はVLドメインと非共有結合で連結された(例えば、ジスルフィド結合によって)、上記で列挙した可変及び定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでいてもよい。
【0061】
全長抗体分子の場合と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性であってもよいし、又は多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。多重特異性抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むと予想され、ここ
で各可変ドメインは、別の抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書で開示された例示的な二重特異性抗体の様式を含めあらゆる多重特異性抗体の様式が、当業界において利用可能な慣例的技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの状況で使用するのに適している可能性がある。
【0062】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害活性(CDC)又は抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞傷害活性」(CDC)は、補体の存在下で本発明の抗体により抗原発現細胞が溶解することを指す。「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識することにより標
的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。CDC及びADCCは、当業界において周知で
あり利用可能なアッセイを使用して測定することができる。[例えば、米国特許第5,500,362号及び5,821,337号、並びにClynesら、PNAS USA 95:652~656 (1998)を参照]。抗体の
定常領域は、補体を固定し細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、細胞傷害を媒介することが抗体にとって望ましいかどうかに基づいて、抗体のアイソタイプを選択してもよい。
【0063】
本発明のある特定の実施形態において、本発明の抗アクチビンA抗体は、ヒト抗体であ
る。用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変及び定常領域を有する抗体を包含することが意図されている。本発
明のヒト抗体は、例えばCDR、特定にはCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配
列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム又は部位特異的
変異誘発によって、又はインビボで体細胞変異によって導入された変異)を包含していて
もよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系から誘導されたCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフト
化された抗体を包含することを意図していない。
【0064】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態において、組換えヒト抗体であり得る。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、組換え法によって調製される、発現される、作り出される、若しくは単離される全てのヒト抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下で更に説明される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下で更に説明される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体[例えば、Taylorら、Nucl Acids Res 20:6287~6295 (1992)を参照]、又
はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む他のあらゆる
手段によって調製された、発現された、作り出された、若しくは単離された抗体を包含することが意図されている。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変及び定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(又は、ヒトIg配列に関し
てトランスジェニックの動物が使用される場合、インビボでの体細胞変異誘発)に供され
、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列から誘導されそれらと関連する一方で、インビボにおけるヒト抗体の生殖細胞系レパートリー中に自然に存在しない可能性がある配列である。
【0065】
ヒト抗体は、ヒンジの不均質性に関連する2つの形態で存在する場合がある。1つの形態において、免疫グロブリン分子は、鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって二量体が一緒に保持されている、およそ150~160kDaの安定な4つの鎖のコンストラクトを含む。第2の形
態において、二量体は鎖間のジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合でカップリングされた軽鎖及び重鎖で構成される約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。
これらの形態は、親和性精製の後でさえも分離が極めて困難であった。
【0066】
様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、これに限定されないが、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連する構造的な差に起因する。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第2の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用
して典型的に観察されるレベルに有意に低下させる可能性がある(Angalら、Molecular Immunology 30:105 1993)。本発明は、所望の抗体の形態の生産を改善するために、ヒンジ
、CH2又はCH3領域中に例えば産生において望ましい可能性がある1つ又は複数の変異を有
する抗体を包含する。
【0067】
本発明の抗体は、単離された抗体であり得る。「単離された抗体」は、本明細書で使用される場合、その天然の環境の少なくとも1種の成分から、同定、分離及び/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、又は抗体が自然に存在す
るか又は自然に産生される組織又は細胞から分離又は除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。また単離された抗体は、組換え細胞内の自然の位置に存在する抗体も包含する。単離された抗体は、少なくとも1回の精製又は単離工程に供さ
れた抗体である。ある実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞性材料及び/又は
化学物質を実質的に含んでいなくてもよい。
【0068】
本発明は、中和及び/又はブロッキング抗アクチビンA抗体を包含する。「中和」又は「ブロッキング」抗体は、本明細書で用いられる場合、そのアクチビンAへの結合が、(i)ア
クチビンAとアクチビンA受容体(例えば、アクチビンIIA型受容体、アクチビンIIB型受容
体、アクチビンI型受容体等)との相互作用を妨害する;(ii)アクチビン-アクチビン受容体複合体の形成を妨害する;及び/又は(iii)アクチビンAの少なくとも1つの生物学的機能の
阻害をもたらす抗体を指すことが意図されている。アクチビンA中和又はブロッキング抗
体によって引き起こされる阻害は、適切なアッセイを使用して検出可能である限り、必ずしも完了していなくてもよい。本明細書において、アクチビンAの阻害を検出するための
例示的なアッセイは、実施例で説明される。
【0069】
本明細書で開示された抗アクチビンA抗体は、抗体が誘導された対応する生殖細胞系配
列と比較した場合、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域中に、1つ又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含んでいてもよい。このような変異は、本明細書で開示されたアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースより入手可能な生殖細胞系配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、1
つ又は複数のフレームワーク及び/若しくはCDR領域内の1つ又は複数のアミノ酸が、抗体
が誘導された生殖細胞系配列の対応する残基に、又は別のヒト生殖細胞系配列の対応する残基に、又は対応する生殖細胞系残基の保存的アミノ酸置換に変異している(このような
配列変化は、本明細書では集合的に「生殖細胞系変異」と称する)、本明細書で開示され
たアミノ酸配列のいずれかから誘導される抗体及びその抗原結合フラグメントを包含する。当業者は、本明細書で開示された重鎖及び軽鎖可変領域の配列から開始して、1つ又は
複数の個々の生殖細胞系変異又はそれらの組合せを含む多数の抗体及び抗原結合フラグメントを容易に生産することができる。ある特定の実施形態において、VH及び/又はVLドメ
イン内のフレームワーク及び/又はCDR残基の全てが、抗体が誘導された元の生殖細胞系配列で見出される残基に復帰変異している。他の実施形態において、ある特定の残基のみが、例えば、FR1の最初の8つのアミノ酸内若しくはFR4の最後の8つのアミノ酸内で見出された変異した残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内で見出された変異した残基のみが、元の生殖細胞系配列に復帰変異している。他の実施形態において、フレームワーク及び/
又はCDR残基の1つ又は複数が、異なる生殖細胞系配列(すなわち、抗体が当初誘導された
生殖細胞系配列とは異なる生殖細胞系配列)の対応する残基に変異している。更に、本発
明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ以上の生殖細胞系変異のあらゆる
組合せを含有していてもよく、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖細胞系配列の対応する残基に変異しているが、元の生殖細胞系配列とは異なるある特定の他の残基は維持されるか、又は異なる生殖細胞系配列の対応する残基に変異している組合せを含有していてもよい。1つ又は複数の生殖細
胞系変異を含有する抗体及び抗原結合フラグメントが得られたら、例えば結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニスト又はアゴニスト的な生物学的性質の改善又は強化(場合により)、免疫原性の低下等の1つ又は複数の所望の性質に関してそれらを容易に試
験することができる。この一般的な方式で得られた抗体及び抗原結合フラグメントは、本発明の範囲内に包含される。
【0070】
また本発明は、1つ又は複数の保存的置換を有する、本明細書で開示されたHCVR、LCVR
、及び/又はCDRのアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗アクチビンA抗体も包含
する。例えば、本発明は、本明細書で開示されたHCVR、LCVR、及び/又はCDRのアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば10個又はそれ未満、8個又はそれ未満、6個又はそれ未満、4個又はそれ未満等の保存的アミノ酸置換を含む、HCVR、LCVR、及び/又はCDRのアミノ酸
配列を有する抗アクチビンA抗体を包含する。
【0071】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域中の特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が、1つより多くのエピト
ープを有していてもよい。したがって、異なる抗体が、抗原上の異なる領域に結合することもあり、異なる生物学的作用を有することもある。エピトープは、立体構造エピトープ
又は直線状エピトープのどちらであってもよい。立体構造エピトープは、直線状のポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に近接したアミノ酸によって生産される。直線状エピトープは、ポリペプチド鎖中で隣接するアミノ酸残基によって生産されたエピトープである。ある特定の環境において、エピトープは、抗原上に糖類部分、ホスホリル基、又はスルホニル基を包含し得る。
【0072】
用語「実質的な同一性」又は「実質的に同一な」は、核酸又はそのフラグメントに対して述べられる場合、適切なヌクレオチド挿入又は欠失と共に別の核酸(又はその相補鎖)と最適に並べたときに、以下で論じられるようにFASTA、BLAST又はGap等のあらゆる周知の
配列同一性のアルゴリズムによって測定した場合、少なくとも約95%、より好ましくは少
なくとも約96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列の同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の場合において、参照核酸分子によってコードされたポリペプチドと同じ又は実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする可能性がある。
【0073】
用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似した」は、ポリペプチドに適用される場合、2つのペプチド配列が、例えばデフォルトのギャップウェイトを使用したGAP又はBESTFITプログラムによって最適に並べられたときに、少なくとも95%の配列同一性、更により好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置が、保存的アミノ酸置換により異なっている。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を
有する別のアミノ酸残基で置換されている置換である。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能性を実質的に変化させないと予想される。保存的置換により2つ以上
のアミノ酸配列が互いに異なるケースにおいて、配列同一性パーセント又は類似性の程度は、置換の保存的性質について補正するために上方調整される可能性がある。この調整をなすための手段は当業者周知である。例えば、Pearson, W.R.、Methods Mol Biol 24:307~331 (1994)を参照されたい。化学的性質が類似した側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグル
タミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側
鎖:リシン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、及び(7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタ
ミンである。その代わりに、保存的な置き換えは、Gonnetら、Science 256:1443~1445 (1992)で開示されたPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有するあらゆる変化で
ある。「中等度に保存的な」置き換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて非負の値を有するあらゆる変化である。
【0074】
ポリペプチドに関する配列の類似性は、配列同一性とも称され、典型的には配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、様々な置換、欠失及び保存的アミノ酸置換などの他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列をマッチングする。例えば、GCGソフトウェアは、異なる生物種由来の相同なポリペプ
チド等の密接に関連したポリペプチド間、又は野生型タンパク質とそれらの変異タンパク質との間の配列相同性又は配列同一性を決定するのにデフォルトパラメーターで使用できるGap及びBestfit等のプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。また、GCGバージョン6.1中のプログラムである、デフォルト又は推奨されたパラメーターを使用したFASTAを使用して、ポリペプチド配列を比較することもできる。FASTA(例え
ば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリー配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域
のアライメント及び配列同一性パーセントを提供する[例えばPearson, W.R.、Methods Mo
l Biol 132:185~219 (2000)を参照]。異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベ
ースと本発明の配列を比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用した、コンピュータープログラムであるBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschulら、J Mol Biol 215:403~410 (1990)及びAltschulら、Nucleic Acids Res 25:3389~402 (1997)を参照されたい。
【0075】
抗体の生物学的特性
本発明は、アクチビンAと高親和性で結合する抗アクチビンA抗体及びその抗原結合フラグメントを包含する。例えば、本発明は、例えば、本明細書において実施例3で規定した
ようなアッセイ様式を使用した表面プラズモン共鳴で測定した場合、約30nM未満のKDでアクチビンAと結合する(例えば、25℃又は37℃で)抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを
包含する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書において実施例3で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したア
ッセイを使用した表面プラズモン共鳴で測定した場合、約25nM未満、約20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約500pM未満、約250pM未満、約240pM未満、約230pM未満、約220pM未満、約210pM未満、約200pM未満、約190pM未満、約180pM未満、約170pM未満、約160pM未満、約150pM未満、約140pM未満、約130pM未満、約120pM未満、約110pM未満、約100pM未満、約95pM未満、約90pM未満、約85pM未満、約80pM未満、約75pM未満、約70pM未満、約65pM未満、約60pM未満、約55pM未満、約50pM未満、約45pM未満、約40pM未満、約35pM未満、約30pM未満、約25pM未満、約20pM未満、約15pM未満、約10pM未満、約9pM未満、約8pM未満、約7pM未満、約6pM未満、約5pM未満、約4pM未満、又は約3pM未満のKDでアクチビンAと結合する。
【0076】
また本発明は、アクチビンAが媒介する細胞内シグナル伝達を阻害する、抗アクチビンA抗体及びその抗原結合フラグメントも包含する。例えば、本発明は、例えば、本明細書において実施例6で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したアッセイを使用した細胞ベースのブロッキングバイオアッセイで測定した場合、約4nM未満のIC50値での、アクチビンAのアクチビンI型又はII型受容体への結合を介してSMAD複合体シグナル伝達経路の活性化を阻害する抗アクチビンA抗体を包含する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書において実施例6で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したアッセイを使用した細胞ベースのブロッキングバイオアッセイで測定した場合、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約500pM未満、約250pM未満、約240pM未満、約230pM未満、約220pM未満、約210pM未満、約200pM未満、約190pM未満、約180pM未満、約170pM未満、約160pM未満、約150pM未満、約140pM未満、約130pM未満、約120pM未満、約110pM未満、約100pM未満、約95pM未満、約90pM未満、約85pM未満、約80pM未満、約75pM未満、70pM未満、約65pM未満、約60pM未満、約55pM未満、約50pM未満、約49pM未満、約48pM未満、約47pM未満、約46pM未満、約45pM未満、約44pM未満、約43pM未満、約42pM未満、約41pM未満、約40pM未満、又は約39pM未満のIC50値での、アクチビンAのアクチビンI型又はII型受容体への結合を介してSMAD複合体シグナル伝達経路の活性化を阻害する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書において実施例6で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したアッセイを使用した細胞ベースのブロッキングバイオアッセイで測定した場合、約50nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、又は約1nM未満のIC50値での、アクチビンBのアクチビンI型又はII型受容体への結合を妨害することによってアクチビンBのシグナル伝達活性を阻害する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書において実施例6で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したアッセイを使用した細胞ベースのブロッキングバイオアッセイで測定した場合、約500pM未満、約450pM未満、約440pM未満、約430pM未満、約420pM未満、約410pM未満、約400pM未満、約390pM未満、約380pM未満、約370pM未満、約360pM未満、約350pM未満、約340pM未満、約320pM未満、約310pM未満、約300pM未満、約290pM未満、約280pM未満、約270pM未満、約260pM未満、約250pM未満、約240pM未満、約230pM未満、約220pM未満、約210pM未満、約200pM未満、約190pM未満、約180pM未満、約170pM未満、約160pM未満、約150pM未満、又は約140pM未満のIC50値での、アクチビンABのアクチビンI型又はII型受容体への結合を介してSMAD複合体シグナル伝達経路の活性化を阻害する。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書において実施例6で規定したようなアッセイ様式又は実質的に類似したアッセイを使用した細胞ベースのブロッキングバイオアッセイで測定した場合、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約750pM未満、約700pM未満、約650pM未満、約600pM未満、又は約580pM未満のIC50値での、アクチビンACのアクチビンI型又はII型受容体への結合を介してSMAD複合体シグナル伝達経路の活性化を阻害する。
【0077】
本発明の抗体は、上述の生物学的特性の1つ若しくは複数、又はあらゆるそれらの組合
せを有していてもよい。本発明の抗体の他の生物学的特性は、本明細書に記載の実施例を含めた本発明の開示を検討することにより当業者には明白であると予想される。
【0078】
Fcバリアントを含む抗アクチビンA抗体
本発明のある特定の実施形態によれば、例えば中性pHと比較して酸性pHでFcRn受容体への抗体結合を強化又は軽減する1つ又は複数の変異を含むFcドメインを含む抗アクチビンA抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2又はCH3領域中に変異を含む抗アクチビンA抗体であって、変異が、酸性環境中での(例えば、pHが約5.5から約6.0の範囲のエンドソーム中での)FcRnへのFcドメインの親和性を増加させる、抗アクチビンA抗体を包含する。このような変異は、動物に投与した場合に、抗体の血清中半減期の増加をもたらす可能性がある。このようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、250位(例えば、E
又はQ);250位及び428位(例えば、L又はF);252位(例えば、L/Y/F/W又はT)、254位(例えば
、S又はT)、及び256位(例えば、S/R/Q/E/D又はT)における改変;又は428位及び/若しくは433位(例えば、H/L/R/S/P/Q又はK)及び/若しくは434位(例えば、A、W、H、F又はY[N434A、N434W、N434H、N434F又はN434Y])における改変;又は250位及び/若しくは428位における改変;又は307位若しくは308位(例えば、308F、V308F)、及び434位における改変が挙げられ
る。一実施形態において、改変は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)の改変;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の改変;433K(例えば、H433K)及
び434(例えば、434Y)の改変;252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の改変;250Q及び428Lの改変(例えば、T250Q及びM428L);並びに307及び/又は308の改変(例えば、308F又は308P)を含む。更に別の実施形態において、改変は、265A(例えば、D265A)及び/又は297A(例えば、N297A)の改変を含む。
【0079】
例えば、本発明は、250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L);252Y、254T及び256E(例えば、M252Y、S254T及びT256E);428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);257I及び311I(例
えば、P257I及びQ311I);257I及び434H(例えば、P257I及びN434H);376V及び434H(例えば、D376V及びN434H);307A、380A及び434A(例えば、T307A、E380A及びN434A);並びに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)からなる群より選択される変異の1つ又は複数の対又は群
を含むFcドメインを含む抗アクチビンA抗体を包含する。前述のFcドメインの変異、及び
本明細書で開示された抗体の可変ドメイン内の他の変異のあらゆる可能な組合せが、本発明の範囲内で考慮される。
【0080】
また本発明は、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗アクチビンA抗体であって、キメラCH
領域は、1つより多くの免疫グロブリンアイソタイプのCH領域から誘導されたセグメント
を含む、抗アクチビンA抗体も包含する。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2
又はヒトIgG4分子から誘導されたCH2ドメインの一部又は全部を、ヒトIgG1、ヒトIgG2又
はヒトIgG4分子から誘導されたCH3ドメインの一部又は全部と組み合わせて含む、キメラCH領域を含んでいてもよい。ある実施形態によれば、本発明の抗体は、キメラヒンジ領域
を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4ヒンジ領域から誘導された「上部ヒンジ」のアミノ酸配列(EUナンバリングに従って216位から227位のアミノ酸残基)を、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4のヒンジ領域から誘導された「下部ヒンジ」配列(EUナンバリングに従って228位から236位のアミノ酸残基)と組み合わせて含んでいてもよい。ある実施形態によれば、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG4の上部ヒンジから誘導されたアミノ酸残基と、ヒトIgG2の下部ヒンジから誘導されたアミノ酸残基とを含む。本明細書で説明されるようなキメラCH領域を含む抗体は、ある特定の実施形態において、抗体の治療的性質又は薬物動態学的性質に悪影響を及ぼすことなく改変されたFcエフェクター機能を示す可能性がある。(例えば、2013年2月1日付
けで出願された米国仮出願第61/759,578号を参照)。
【0081】
エピトープマッピング及び関連技術
本発明は、アクチビンA内で(例えば、アクチビンII型受容体結合部位内で)見出された1つ又は複数のアミノ酸と相互作用する抗アクチビンA抗体を包含する。抗体が結合するエ
ピトープは、アクチビンのβAサブユニット内に位置する3個又はそれより多くの(例えば
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個又はそれより
多くの)アミノ酸の単一の連続した配列からなっていてもよい。その代わりに、エピトー
プは、アクチビンA二量体内に位置する複数の不連続なアミノ酸(又はアミノ酸配列)から
なっていてもよい。
【0082】
抗体がポリペプチド又はタンパク質内の「1つ又は複数のアミノ酸と相互作用する」か
どうかを決定するのに、当業者公知の様々な技術を使用することができる。例示的な技術としては、例えば、慣例的なクロスブロッキングアッセイ、例えばAntibodies、Harlow及びLane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)に記載のもの、アラニンス
キャニング変異分析、ペプチドブロット分析[Reineke、Methods Mol Biol 248:443~463 (2004)]、及びペプチド切断分析が挙げられる。加えて、エピトープ切り出し、エピトー
プ抽出及び抗原の化学修飾等の方法を採用してもよい[Tomer、Protein Science 9:487~496 (2000)]。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用できる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。概説すれば、水素/重水素交換方法は、対象のタンパク質を重水素で標識すること、続いて重水素で標識したタンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体
で保護された残基(重水素で標識されたままである)を除き全ての残基で水素-重水素交換
を起こさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析に供することにより、抗体が相互作用する特異的なアミノ酸に相当する重水素で標識された残基を明らかにする。例えば、Ehring、Analytical Biochemistry 267(2):252~259 (1999);Engen及びSmith、Anal. Chem.73:256A~265A (2001)を参照されたい。
【0083】
本発明は、本明細書で説明される具体的な例示的な抗体(例えば、H4H10423P、H4H10424P、H4H10426P、H4H10429P、H4H10430P、H4H10432P2、H4H10433P2、H4H10436P2、H4H10437P2、H4H10438P2、H4H10440P2、H4H10442P2、H4H10445P2、H4H10446P2、H4H10447P2、H4H10448P2、H4H10452P2、H4H10468P2、H2aM10965N等)のいずれかと同じエピトープに結合する抗アクチビンA抗体を更に包含する。同様に、本発明はまた、本明細書で説明される具体的な例示的な抗体(例えば、H4H10423P、H4H10424P、H4H10426P、H4H10429P、H4H10430P、H4H10432P2、H4H10433P2、H4H10436P2、H4H10437P2、H4H10438P2、H4H10440P2、H4H10442P2、H4H10445P2、H4H10446P2、H4H10447P2、H4H10448P2、H4H10452P2、H4H10468P2、H2aM10965N等)のいずれかと、アクチビンAへの結合に関して競合する抗アクチビンA抗体も包含する。例えば、本発明は、本明細書に記載の実施例5で規定したような「ビン1」の1つ又は複数の抗体(例えば、H4H10423P、H4H10446P2、H4H10468P2及びH4H10442P2)と、アクチビンAへの結合に関して交差競合する抗アクチビンA抗体を包含する。また本発明は、本明細書に記載の実施例5で規定したような「ビン2」の1つ又は複数の抗体(例えば、H4H10429、H4H10430P、H4H10432P2、H4H10436P2、及びH4H10440P2)と、アクチビンAへの結合に関して交差競合する抗アクチビンA抗体も包含する。
【0084】
抗体が、参照抗アクチビンA抗体と同じエピトープに結合するか、又は参照抗アクチビ
ンA抗体と結合に関して競合するかどうかは、当業界において公知の本明細書で例示され
た慣例的な方法を使用することによって容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参照抗アクチビンA抗体と同じエピトープに結合するかを決定するために、
参照抗体をアクチビンA(又はβAサブユニットを含有するヘテロ二量体)に結合させる。次に、アクチビンAに結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が、参照抗アクチビンA抗体との飽和結合後にアクチビンAに結合することができる場合、試験抗体は、参照抗ア
クチビンA抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方で、試
験抗体が、参照抗アクチビンA抗体との飽和結合後にアクチビンAに結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照抗アクチビンA抗体と結合されるエピトープと同じエ
ピトープに結合する可能性がある。次いで追加の慣例的な実験(例えば、ペプチド変異及
び結合分析)を実行して、観察された試験抗体の結合の欠如が、実際に参照抗体と同じエ
ピトープへの結合に起因するのかどうか、又は立体的なブロック(又は別の現象)が観察された結合の欠如に関与するのかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、BIAcore、フローサイトメトリー又は当業界において利用可能な他のあらゆる定量的又は
定性的な抗体結合アッセイを使用して行うことができる。本発明のある特定の実施形態によれば、競合結合アッセイで測定した場合、例えば1倍、5倍、10倍、20倍又は100倍過量
の一方の抗体が、他方の結合を、少なくとも50%、ただし好ましくは75%、90%、又は更に99%阻害する場合、それら2つの抗体は同じ(又はオーバーラップする)エピトープに結合す
る[例えば、Junghansら、Cancer Res.50:1495~1502 (1990)を参照]。その代わりに、一
方の抗体の結合を低減又は除去する抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を低減又は除去する場合、それら2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。
一方の抗体の結合を低減又は除去するアミノ酸変異の部分集合のみが、他方の結合を低減又は除去する場合、それら2つの抗体は「オーバーラップするエピトープ」を有する
とみなされる。
【0085】
抗体が、参照抗アクチビンA抗体と結合に関して競合する(又は結合に関して交差競合する)かどうかを決定するために、上記で説明した結合方法は2つの方向で行われる。第1の
方向において、参照抗体を、飽和条件下でアクチビンAタンパク質(又はβAサブユニット
を含有するヘテロ二量体)に結合させ、続いて試験抗体のアクチビンA分子への結合を評価する。第2の方向において、試験抗体を、飽和条件下でアクチビンAに結合させ、続いて参照抗体のアクチビンAへの結合を評価する。両方の方向において、第1の(飽和)抗体のみがアクチビンAに結合することができる場合、試験抗体及び参照抗体はアクチビンAへの結合に関して競合すると結論付けられる(例えば、本明細書に記載の実施例4で説明される、試験アクチビンA抗体をセンサーチップ上に捕捉して、次いで前もってアクチビンAと結合させた参照アクチビンA抗体を含有する溶液中に浸すアッセイ様式を参照)。当業者であれば理解していると予想されるように、参照抗体と結合に関して競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合することができるとは限らないが、オーバーラップ又は隣接するエピトープと結合することにより参照抗体の結合を空間配置的にブロックする可能性がある。
【0086】
本発明の抗アクチビンA抗体は、アクチビンII型受容体のための結合部位内又はその近
傍のアクチビンA上のエピトープに結合して、アクチビンAとアクチビンII型受容体との相互作用を直接ブロックしたり、アクチビンAとアクチビンI型受容体との相互作用を間接的にブロックしたりすることができる。本発明の抗アクチビンA抗体は、アクチビンI型受容体のための結合部位内又はその近傍のアクチビンA上のエピトープに結合して、アクチビ
ンAとアクチビンI型受容体との相互作用を直接ブロックすることができる。本発明の一実
施形態において、アクチビンI型受容体結合部位における又はその近傍のアクチビンAに結合する本発明の抗アクチビンA抗体は、アクチビンAとアクチビンAII型受容体との相互作
用をブロックしない。
【0087】
ヒト抗体の調製
完全ヒトモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体を生成するための方法は当業界において公知である。ヒトアクチビンAに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、
あらゆるこのような公知の方法を本発明の状況で使用することができる。
【0088】
VELOCIMMUNE(商標)技術、例えば、又は完全ヒトモノクローナル抗体を生成するための
あらゆる他の公知の方法を使用して、最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するヒトアクチビンAに対する高親和性キメラ抗体が単離される。以下の実験の章で示すよう
に、抗体は、親和性、選択性、エピトープ等の所望の特性に関して特徴付けされ選択される。必要に応じて、完全ヒト抗アクチビンA抗体を生成するために、マウス定常領域は、
所望のヒト定常領域、例えば野生型又は改変されたIgG1若しくはIgG4で置き換えられる。選択された定常領域は具体的な使用に従って様々であってもよいが、高親和性の抗原結合及び標的特異性特性は可変領域に存在する。ある特定の場合において、完全ヒト抗アクチビンA抗体は、抗原陽性B細胞から直接単離される。
【0089】
生物学的等価物
本発明の抗アクチビンA抗体及び抗体フラグメントは、記載された抗体のアミノ酸配列
とは異なるがヒトアクチビンAに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク
質を包含する。このようなバリアント抗体及び抗体フラグメントは、親配列と比較した場合、1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体の生物活性
と本質的に等価な生物活性を提示する。同様に、本発明の抗アクチビンA抗体をコードす
るDNA配列は、開示された配列と比較した場合、1つ又は複数のヌクレオチド付加、欠失、又は置換を含むが、本発明の抗アクチビンA抗体又は抗体フラグメントと本質的に生物学
的に等価な抗アクチビンA抗体又は抗体フラグメントをコードする配列を包含する。この
ようなバリアントアミノ酸及びDNA配列の例は上記で論じられている。
【0090】
2つの抗原-結合タンパク質又は抗体が、例えば、類似の実験条件下において同じモル用量を単回用量又は多回用量のいずれかで投与した場合、吸収の速度及び程度が有意な差を示さない医薬等価物又は医薬代替物である場合、それらは生物学的に等価なものとみなされる。いくつかの抗体は、その吸収の程度においては等価であるが、それらの吸収速度においては等価ではない場合も、等価物又は医薬代替物とみなされると予想され、更に、このような吸収速度の差が意図的であり、ラベルに反映され、例えば慢性使用時に有効な体内薬物濃度の達成にとって必須ではなく、研究される特定の薬物製品にとって医学上重要ではないとみなされるために、生物学的に等価なものとみなされる場合もある。
【0091】
一実施形態において、2つの抗原-結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び効力において臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0092】
一実施形態において、患者が、切り換えを行わない継続的な療法と比較した場合、免疫原性の臨床的に有意な変化、又は有効性の減少などの予測される有害作用の危険の増加を起こすことなく参照生成物と生物学的な生成物とを1回又は複数回切り換えることができ
る場合、2つの抗原-結合タンパク質は生物学的に等価である。
【0093】
一実施形態において、2つの抗原-結合タンパク質は、それら両方が、1つ又は複数の使
用条件に関して共通の1つ又は複数の作用メカニズムによって、このようなメカニズムが
公知の程度に作用する場合、生物学的に等価である。
【0094】
生物学的等価性は、インビボ及びインビトロの方法によって実証することができる。生物学的等価性の尺度としては、例えば、(a)血液、血漿、血清、又は他の生体液中の抗体
又はその代謝産物の濃度が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボの試験;(b)ヒトのインビボにおける生物学的利用率データとの関連がすでに示されており、それを合理的に予測する、インビトロの試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理効果が時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボの試験;及び(d)抗体の安全性、効能、又は生物学的利用率若しくは生物学的等価性を確立する、適切な対象を置いた臨床試験が挙げられる。
【0095】
本発明の抗アクチビンA抗体の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基又は配列
の様々な置換を作製すること、又は生物活性に必要ではない末端又は内部の残基又は配列を欠失させることによって構築することができる。例えば、生物活性に必須ではないシステイン残基を欠失させたり又は他のアミノ酸で置き換えたりして、再生時における不必要な又は不正確な分子内のジスルフィド架橋の形成を予防することができる。他の状況において、生物学的に等価な抗体は、抗体の糖鎖付加特性を改変するアミノ酸変化、例えば、糖鎖付加を除去したり又は移転させたりする変異を含む、抗アクチビンA抗体バリアント
を包含し得る。
【0096】
種選択性及び種交差反応性
本発明は、ある実施形態によれば、ヒトアクチビンAに結合するが他の種由来のアクチ
ビンAに結合しない抗アクチビンA抗体を提供する。また本発明は、1つ又は複数の非ヒト
種由来のヒトアクチビンA及びアクチビンAに結合する抗アクチビンA抗体も包含する。例
えば、本発明の抗アクチビンA抗体は、ヒトアクチビンAに結合することができ、場合によって、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル(cynomologous)、マーモセット、アカゲザル又はチンパンジーのアクチビンAの1つ又は複数に結合するものでもよいし、又は結合しないものでもよい。本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、ヒトアクチビンA(例えば、アクチビンA又はβAサブユニットを含有するヘテロ二量体)とカニクイ
ザル[例えば、マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis)]のアクチビンAとに特異的に結合する抗アクチビンA抗体が提供される。
【0097】
イムノコンジュゲート
本発明は、細胞毒素、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射線同位体等の治療的部分にコンジュゲートした抗アクチビンAのモノクローナル抗体(「イムノコンジュゲート」)を包含
する。細胞毒性物質は、細胞に有害なあらゆる薬剤を包含する。イムノコンジュゲートを形成するための好適な細胞毒性物質及び化学療法剤の例は当業界において公知である(例
えば、WO05/103081を参照)。
【0098】
多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性であってもよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってもよいし、又は1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原-結合ドメインを含有していてもよい。例
えば、Tuttら、J Immunol 147:60~69 (1991);Kuferら、Trends Biotechnol 22:238~244
(2004)を参照されたい。本発明の抗アクチビンA抗体は、別の機能的な分子、例えば別のペプチド又はタンパク質に連結されていてもよいし、又はそれらと共に発現されてもよい。例えば、抗体又はそのフラグメントを1つ又は複数の他の分子実体、例えば別の抗体又
は抗体フラグメントに機能的に連結して(例えば、化学的カップリング、遺伝学的な融合
、非共有結合性の会合又は別の方法によって)、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を生産してもよい。例えば、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームが
ヒトアクチビンA又はそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他方のアーム
が第2の治療標的に特異的であるか、又は治療的部分にコンジュゲートしている二重特異
性抗体を包含する。本発明の一実施形態は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトアクチビンA又はそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームがGDF8に特
異的である二重特異性抗体を包含する。
【0099】
本発明の状況で使用できる例示的な二重特異性抗体様式は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用を含み、ここで第1及び第2のIgCH3ドメインは
アミノ酸が互いに少なくとも1つ異なっており、アミノ酸の差がない二重特異性抗体と比
較した場合、少なくとも1つのアミノ酸の差がプロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減する(例えば、米国特許第8,586,713号を参照)。一実施形態において、第1のIgCH3ドメ
インはプロテインAと結合し、第2のIgCH3ドメインは、プロテインAの結合を低減するか又はなくす変異、例えばH95Rの改変(IMGTのエクソンナンバリングによる;EUナンバリングではH435R)を含有する。第2のCH3は、Y96F改変(IMGTによる;EUではY436F)を更に含んでいてもよい。第2のCH3内で見出され得る更なる改変としては、IgG1抗体のケースでは、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体のケースでは、N44S、K52N、及びV82I(IMGT;EUではN384S、K392N、及びV422I);並びにIgG4抗体のケースでは、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、V82I、及びL105P(IMGTによる;EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、V422I
、及びL445P)が挙げられる。上述した二重特異性抗体様式のバリエーションは、本発明の範囲内と考えられる。
【0100】
本発明の状況で使用できる他の例示的な二重特異的な様式としては、これらに限定されないが、例えば、scFvベースの、又は二重特異性抗体の二重特異的な様式、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-holes)、共通の軽鎖(例えば、ノブ-イントゥ-ホールを有する共通の軽鎖等)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及びMab2の二重特異的な様式が挙げられる(前述の様式の総論に関しては、例えば、Kleinら、mAbs 4:6、1~11 (2012)、及びそこで引用された文献を参照)。また二重特異性抗体
は、例えばペプチド/核酸のコンジュゲーションを使用して構築することもでき、この場
合、直交的な化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的な抗体-オリゴ
ヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いでこのコンジュゲートを規定された組成、原子価及び幾何学的配置を有する多量体の複合体に自己集合させる。[例えば、Kazaneら、J
Am Chem Soc. 135(1):340~346 (2013)を参照]。
【0101】
治療製剤及び投与
本発明は、本発明の抗アクチビンA抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成
物を提供する。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、並びに改善された移動、送達、耐性及び同種のものをもたらす他の薬剤と共に配合される。多数の適切な製剤は、全ての薬剤師に公知の処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAで見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペー
スト、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)を含有する小胞[LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies社、Carlsbad, CA等]、DNAコンジュゲート、無水の吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、並びにカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA、J Pharm Sci Technol 52:238~311 (1998)も参照されたい。
【0102】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及び大きさ、標的とする疾患、状態、投与経路、並びに同種のものに応じて変更し得る。好ましい用量は、典型的には、体重又は体
表面積に従って計算される。成人の患者においてアクチビンA活性に関連する状態又は疾
患を処置するために本発明の抗体が使用される場合、通常は約0.01から約20mg/kg体重、
より好ましくは約0.02から約7、約0.03から約5、又は約0.05から約3mg/kg体重の単回用量で、本発明の抗体を静脈内投与することが有利な場合がある。状態の重症度に応じて、処置の頻度及び持続時間を調整することができる。抗アクチビンA抗体の投与にとって有効
な投薬及びスケジュールは、経験的に決定することができる。例えば、定期的な評価によって患者の進行をモニタリングしてもよく、それに従って用量を調整してもよい。更に、当業界において周知の方法を使用して、投薬の種間スケーリングを行うことができる[例
えば、Mordentiら、Pharmaceut Res 8:1351 (1991)]。
【0103】
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル中への封入、本発明の抗体又は他の治療用タンパク質を発現することできる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスなどの様々な送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するのに使用することができる[
例えば、Wuら、J Biol Chem 262:4429~4432 (1987)を参照]。また本発明の抗体及び他の治療活性を有する成分は、遺伝子治療技術によっても送達することができる。導入方法としては、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、あらゆる便利な経路によって、例えば、点滴又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘
膜等)を介した吸収によって投与されてもよいし、他の生物活性物質と共に投与されても
よい。投与は、全身でもよいし、又は局所でもよい。
【0104】
本発明の医薬組成物は、標準的なニードル及びシリンジを用いて皮下又は静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイス(pen delivery device)が、本発明の医薬組成物の送達に容易に適用される。このようなペン型送達デバイス
は、再使用可能なものでもよいし、又は使い捨てでもよい。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されてカートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。次いでペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジがない。そうではなく、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内の貯蔵容器中に保持されている医薬組成物で予め充填された状態になっている。貯蔵容器中の医薬組成物がなくなると、デバイス全体が廃棄される。
【0105】
多数の再使用可能なペン型及びオートインジェクター型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例としては、ごく一部の名称を挙げれば、これらに限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford, Inc.社、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems社、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商
標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.社、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk社、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk社、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson社、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis社、Frankfurt、Germany)などがある。本発明
の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てのペン型送達デバイスの例としては、ごく一部の名称を挙げれば、これらに限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis
社)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk社)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly社)、SURECLICK(商標)オートインジェクター(Amgen社、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier社、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.社)、及びHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs社、Abbott Park IL)などがある。
【0106】
ある特定の状況において、医薬組成物は、制御放出系中で送達させてもよい。一実施形
態において、ポンプを使用してもよい[Langer、上記;Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987)を参照]。別の実施形態において、ポリマー材料を使用してもよい。Medical Applications of Controlled Release、Langer及びWise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。更に別の実施形態において、制御放出系は、組成物の標的の近傍に配置することができることから、全身用量の一部のみしか必要ではない(
例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出系は、Langer、Science 249:1527~1533 (1990)による総論で論じられている。
【0107】
注射製剤としては、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴注入等のための剤形を挙げることができる。これらの注射製剤は、公然知られた方法によって調製することができる。例えば、注射製剤は、例えば、注射剤に慣習的に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に、上述した抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化することによって調製することができる。注射剤用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張溶液等があり、これらは、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、
エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシ
エチレン(50mol)付加物)]等と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、
例えば、ゴマ油、ダイズ油等が採用され、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射剤は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0108】
有利には、上述した経口又は非経口で使用するための医薬組成物は、活性成分の用量を適合させるのに適した単位用量で、剤形に調製される。このような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤等が挙げられる。含有される前述の抗体の量は、一般的に、単位用量の剤形1つ当たり約5から約500mgであり、特
に注射剤の形態では、前述の抗体が約5から約100mgで含有され、他の剤形の場合は約10から約250mgで含有されることが好ましい。
【0109】
抗体の治療的使用
本発明の抗体は、アクチビンAの発現、シグナル伝達、若しくは活性に関連するか若し
くはそれらが媒介する、又はアクチビンAとアクチビンA受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、アクチビンI型受容体等)との相互作用をブロックすること、若しくは別の方法でアク
チビンAの活性及び/若しくはシグナル伝達を阻害することによって処置可能な、あらゆる疾患又は障害の処置、予防及び/又は緩和にとってとりわけ有用である。例えば、本発明
は、アクチビンAとは特異的に結合するが他のActRIIBリガンドとは結合しないことによって、又はアクチビンA及びGDF8とは特異的に結合するが他のActRIIBリガンドとは結合しないことによって、個体における筋肉の強度/力及び/若しくは筋肉量及び/若しくは筋機能
を増加させるか、又は代謝(炭水化物、脂質及びタンパク質のプロセシング)を有利に変更することにより治癒、軽減又は改善することができる状態又は苦痛を処置する方法を提供する。例えば、本発明は、アクチビンA特異的結合タンパク質を対象に投与する工程によ
って、対象における筋肉の強度/力及び/若しくは筋肉量及び/若しくは筋機能を増加させ
るための、又は対象における筋肉の量若しくは強度の減少を特徴とする疾患若しくは障害を処置するための方法を包含する。また本発明は、アクチビンA特異的結合タンパク質及
びGDF8特異的結合タンパク質を対象に投与する工程によって、対象における筋肉の強度/
力及び/若しくは筋肉量及び/若しくは筋機能を増加させるための、又は対象における筋肉の量若しくは強度の減少を特徴とする疾患若しくは障害を処置するための方法も包含する。本明細書で開示又は言及されたアクチビンA特異的結合タンパク質及び/又はGDF8特異的結合タンパク質のいずれかは、本発明のこれらの態様の状況で使用することができる。例えば、本発明の治療方法は、抗アクチビンA抗体及び/又は抗GDF8抗体を対象に投与する工
程を包含する。
【0110】
したがって、本明細書で説明される処置方法の状況において、抗アクチビンA抗体は、
単剤療法として(すなわち、治療剤のみとして)又は1つ若しくは複数の追加の治療剤(例えば、抗GDF8抗体)と組み合わせて投与されてもよく、これらの更なる例は本明細書の他所
で説明される。
【0111】
アクチビンA特異的結合タンパク質及びGDF8特異的結合タンパク質を対象に投与する工
程を含む方法において、アクチビンA特異的結合タンパク質及びGDF8特異的結合タンパク
質は、同じ時間又は実質的に同じ時間に、例えば、単回の治療的投薬で、又は同時若しくは互いに約5分未満以内に投与される2回の別個の投薬で対象に投与されてもよい。その代わりに、アクチビンA特異的結合タンパク質及びGDF8特異的結合タンパク質は、逐次的に
、例えば、別個の治療的投薬で、互いに約5分より長く時間を隔てて対象に投与されても
よい。
【0112】
また本発明は、アクチビンA特異的結合ドメイン及びGDF8特異的結合ドメインを含む抗
原結合分子を対象に投与する工程によって、対象における筋肉の強度/力及び/若しくは筋肉量及び/若しくは筋機能を増加させるための、又は対象における筋肉の量若しくは強度
の減少を特徴とする疾患若しくは障害を処置するための方法も包含する。本明細書で開示又は言及された抗原結合分子のいずれかは、本発明のこの態様の状況で使用することができる。例えば、本発明の治療方法は、アクチビンAと特異的に結合するHCVR/LCVRの対を含む第1の可変ドメイン、及びGDF8と特異的に結合するHCVR/LCVRの対を含む第2の可変ドメ
インを含む二重特異性抗体を対象に投与する工程を包含する。
【0113】
本発明の組成物は、例えば、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、及び細胞傷害/細胞増殖抑制剤などの1種又は複数の追加の治療剤と共に対象に投与されてもよい。追加の治療剤は、本発明のアクチビンAに特異的及びGDF8特異的結合
タンパク質の投与の前に、それと同時に、又はその後に投与されてもよい。
【0114】
本発明の組成物で処置できる例示的な疾患、障害及び状態としては、これらに限定されないが、サルコペニア、悪液質(特発性の悪液質、又は他の状態、例えばがん、慢性腎不
全、若しくは慢性閉塞性肺疾患に続発する悪液質のいずれか)、筋肉の傷害、筋肉の外傷
、筋肉の消耗及び筋萎縮、例えば、不使用(例えば、筋肉の)、固定、ベッド安静、傷害、医学的処置又は外科的介入(例えば、股関節骨折、股関節置換、膝置換、及び他の関節、
腱、又は靱帯の傷害、例えば前十字靭帯(ACL)及び/又は内側側副靭帯(MCL)の断裂等)によって引き起こされるか又はそれらに関連する筋肉の萎縮又は消耗、筋ジストロフィー(例
えば、筋緊張性、デュシェンヌ、ベッカー、肢帯型、顔面肩甲上腕型(FSHD、またランド
ゥジー-デジュリーヌ疾患としても公知)、先天性、眼咽頭型、末端、エメリー-ドライフ
ス型等)、グルココルチコイド誘発性ミオパチー、卒中リハビリテーション(例えば、卒中による片側不全麻痺のためのリハビリテーション)又は人工呼吸の必要性が挙げられる。
また本発明の組成物は、がん、肥満症、糖尿病、関節炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、骨粗鬆症、変形性関節症、オステオペニア、及び代謝症候群(これらに限定されないが、糖尿病、肥満症、栄養障害、臓器の萎縮、慢
性閉塞性肺疾患、及び食欲不振等)等の疾患を処置、予防又は緩和するのにも使用するこ
とができる。本発明の組成物を使用して予防、処置及び/又は緩和することができる追加
の疾患、障害、及び状態としては、敗血症、慢性心不全、良性及び悪性褐色細胞腫、子宮類線維腫/平滑筋腫、子癇前症、ケロイド及び肥厚性瘢痕、並びに肺動脈の高血圧が挙げ
られる。
【0115】
改善された結合及び活性の特異性
本発明は、複数の(例えば、3つ又はそれより多くの)ActRIIBリガンドと結合する分子の投与に関連する有害作用を引き起こすことなく、対象における筋肉の強度/力及び/若しくは筋肉量及び/若しくは筋機能を増加させるための、又は対象における筋肉の量若しくは
強度の減少を特徴とする疾患若しくは障害を処置するための、又はアクチビンA活性によ
って引き起こされる、促進される、又は悪化する疾患又は障害を処置するための方法を包含する。言い換えれば、抗アクチビンA抗体又はその抗原結合タンパク質を使用する方法(例えば、ここで抗アクチビンA抗体はアクチビンAにのみ有意に結合する)は、複数のActRIIBリガンドと結合する分子を用いた場合に見られる不要な作用又は有害作用を引き起こすことなく、疾患又は障害を処置することができる。例えば、ACE-031(Acceleron Pharma, Inc.社、Cambridge、MA)と称される臨床用分子は、IgGのFcドメインに融合したActRIIBの細胞外部分からなる多量体(この分子は、本明細書では「ActRIIB-Fc」とも称される)である。ActRIIB-Fcは、アクチビンAに加えて他のActRIIBリガンド、例えば、アクチビンB、GDF8、GDF11、BMP9、BMP10、及びTGFβ等とも結合し、ヒト患者に投与されると様々な有害作用を引き起こすことが公知である。重要なことに、本発明者らは、意外にも、アクチビンA及びGDF8を特異的に阻害すること(例えば、抗アクチビンA抗体及び抗GDF8抗体を投与
することによって)、それと同時に他のActRIIBリガンド、例えばアクチビンB、GDF11、BMP9、BMP10、及びTGFβを阻害しないことが、ActRIIB-Fc等の結合剤に関連する有害作用を引き起こすことなく、ActRIIB-Fcの投与により観察された増加と少なくとも等しい筋肉量の増加をもたらすことを発見した。
【0116】
組合せ療法及び製剤
本発明は、本明細書で説明される抗アクチビンA抗体のいずれかを、1種又は複数の追加の治療活性を有する成分と組み合わせて含む組成物及び治療製剤、並びにこのような組合せをそれを必要とする対象に投与する工程を含む処置方法を包含する。また本発明は、本明細書で説明される抗アクチビンA抗体のいずれかを、1種又は複数の追加の治療活性を有する成分と組み合わせて含む組成物及び治療製剤、並びにこのような組合せをそれを必要とする対象に投与する工程を含む処置方法も包含する。例えば、本発明の抗アクチビンA
抗体はまた、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイド、ステロイド、酸素、抗酸化剤、金属キレート化剤、IFN-ガンマ、及び/又はNSAIDと組み合わせて投与されてもよいし、及び/又はそれらと共に配合されてもよい。また本発明の抗アクチビンA抗体は、放射線処置及び/又は従来の化学療法(例えば、がんを処置する方法又は腫瘍増殖を阻害する方法の状況における)も包含する処置レジメンの一部として投与されてもよい。上述
の追加の治療活性を有する成分はいずれも、例えばサルコペニア、悪液質、筋肉の傷害、筋肉の消耗及び筋萎縮等の、抗アクチビンA抗体投与が有益であるあらゆる疾患又は障害
を処置するために、本発明の抗アクチビンA抗体のいずれかと組み合わせて投与されても
よい。また上述の追加の治療活性を有する成分はいずれも、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8
抗体)と共に本発明の抗アクチビンA抗体のいずれかと組み合わせて投与されてもよい。
【0117】
追加の治療活性を有する成分は、本発明の抗アクチビンA抗体の投与の前に対象に投与
されてもよい。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の、1週間前、72時間前、60時間
前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、又は1分未満前に投与される場合、第1の成分は、第2の成分の「前に」投与されるとみなすことができる。他の実施形態において、追加の治療活性を有する成分は、本発明の抗アクチビンA抗体の投与の後に対象に
投与されてもよい。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の、1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合、第1の成分は、
第2の成分の「後に」投与されるみなすことができる。更に他の実施形態において、追加
の治療活性を有する成分は、本発明の抗アクチビンA抗体の投与と同時に対象に投与され
てもよい。「同時の」投与は、本発明の目的のために、例えば、単一の剤形で、又は別個
の剤形で、互いに約30分又はそれ未満以内に対象に投与される、抗アクチビンA抗体及び
追加の治療活性を有する成分の対象への投与を包含する。別個の剤形で投与される場合、各剤形を同じ経路を介して投与してもよい(例えば、抗アクチビンA抗体と追加の治療活性を有する成分の両方を、静脈内、皮下、硝子体内等に投与してもよい)。その代わりに、
各剤形を異なる経路を介して投与してもよい(例えば、抗アクチビンA抗体を局所的に(例
えば、硝子体内に)投与し、追加の治療活性を有する成分を全身投与してもよい)。いずれの場合においても、本発明の開示の目的のために、単一の剤形で、同じ経路により別個の剤形で、又は異なる経路により別個の剤形で成分を投与することは全て、「同時投与」とみなされる。本発明の開示の目的のために、追加の治療活性を有する成分の投与の「前に」、それと「同時に」、又はその「後に」(これらの用語は本明細書の上記で定義された
通りである)抗アクチビンA抗体を投与することは、追加の治療活性を有する成分と「組み合わせて」抗アクチビンA抗体を投与することとみなされる。
【0118】
本発明は、本発明の抗アクチビンA抗体が、本明細書の他所で説明されるような追加の
治療活性を有する成分の1種又は複数と共に配合されている医薬組成物を包含する。
【0119】
投薬
一般的には、活性成分(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンA抗体と組み合わせ
て与えられる抗GDF8抗体、又はアクチビンAとGDF8とに特異的に結合する二重特異性抗体)の対象に投与することができる量が、治療有効量である。成句「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、以下のパラメーター:体重、筋肉量(例えば、前脛骨筋[TA]の筋肉量、腓腹筋[GA]の筋肉量、四頭筋[Quad]の筋肉量等)、筋肉の強度/力、及び/又は筋機能の1つ又は複数における検出可能な増加をもたらす、抗原特異的な結合タンパク質及び/又は
抗原結合分子の用量を意味する。例えば、アクチビンA特異的結合タンパク質及び/又はGDF8特異的結合タンパク質の「治療有効量」は、例えば本明細書に記載の実施例7で例示し
たように、例えば、試験対象に投与した場合、対照で処置した対象と比較して、少なくとも2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%又はそれより多くのTA又はGA筋肉量の増加を引き起こす、アクチビンA特異的結合タンパク質及び/又はGDF8特異的結合タンパク質の量を包含する。
【0120】
本発明の抗体(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンA抗体と組み合わせて与えら
れる抗GDF8抗体、又はアクチビンAとGDF8とに特異的に結合する二重特異性抗体)のケースにおいて、治療有効量は、約0.05mgから約600mg;例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、
約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg
、約800mg、約810mg、約820mg、約830mg、約840mg、約850mg、約860mg、約870mg、約880mg、約890mg、約900mg、約910mg、約920mg、約930mg、約940mg、約950mg、約960mg、約970mg、約980mg、約990mg、又は約1000mgのそれぞれの抗体であり得る。
【0121】
個々の用量中に含有される本発明の抗体(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンA
抗体と組み合わせて与えられる抗GDF8抗体、又はアクチビンAとGDF8とに特異的に結合す
る二重特異性抗体)の量は、患者の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわち
、mg/kg)で表すことができる。例えば、本発明の抗アクチビンA、抗GDF8及び/又は抗アク
チビンA/抗GDF8二重特異性抗体は、患者の体重1kg当たり約0.0001から約50mg(例えば0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、10.5mg/kg、11.0mg/kg、11.5mg/kg、12.0mg/kg、12.5mg/kg、13.0mg/kg、13.5mg/kg、14.0mg/kg、14.5mg/kg、15.0mg/kg、15.5mg/kg、16.0mg/kg、16.5mg/kg、17.0mg/kg、17.5mg/kg、18.0mg/kg、18.5mg/kg、19.0mg/kg、19.5mg/kg、20.0mg/kg等)の用量で患者に投与されてもよい。
【0122】
本発明の組成物は、等量のアクチビンA特異的結合タンパク質及びGDF8特異的結合タン
パク質を含んでいてもよい。その代わりに、組成物中のアクチビンA特異的結合タンパク
質の量は、GDF8特異的結合タンパク質の量より少なくてもよいし、又はそれより多くてもよい。当業者は、慣例的な実験を使用して、所望の治療効果を生じさせるのに必要な、本発明の組成物中の個々の成分の適切な量を決定することができると予想される。
【0123】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によれば、活性成分(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンA抗体と組み合わせて投与される抗GDF8抗体、抗アクチビンA抗体と、例えば抗GDF8抗体などの本明細書で述べられた追加の治療活性を有する薬剤のいずれかとの組合せを含む医薬組成物、又はアクチビンAとGDF8とに特異的に結合する二重特異性抗体)の多回用量が、規定された時間経過にわたり対象に投与されてもよい。本発明のこの態様に係る方法は、本発明の活性成分の多回用量を対象に逐次投与する工程を含む。「逐次投与」は、本明細書で使用される場合、予め決められた間隔(例えば、時間、日、週又は月)で隔てられた異なる時期に、例えば異なる日に、活性成分の各用量を対象に投与することを意味する。本発明は、活性成分の単一の初回用量、続いて活性成分の1回又は複数の第2の用量、任意選択で続いて1回又は複数の活性成分の第3の用量を患者に逐次投与する工程を含む方法を包含する。
【0124】
用語「初回用量」、「第2の用量」、及び「第3の用量」は、活性成分、例えば本発明の抗アクチビンA抗体、又は本発明の組合せ療法、例えば抗アクチビンA抗体及び抗GDF8抗体の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり、「第2の用量」は、初回用量の後に
投与される用量であり、「第3の用量」は、第2の用量の後に投与される用量である。初回、第2及び第3の用量は全て、同じ量の活性成分、例えば抗アクチビンA抗体を含有してい
てもよいが、一般的には投与頻度の観点から互いに異なっていてもよい。しかしながら、ある特定の実施形態において、初回、第2及び/又は第3の用量に含有される活性成分、例
えば抗アクチビンA抗体の量は、処置の経過中、互いに異なっている(例えば、必要に応じて多く又は少なく調整される)。ある特定の実施形態において、2種以上(例えば、2、3、4、又は5種)の用量が、処置レジメンの開始時に「負荷用量」として投与され、続いてより少ない頻度でその後の用量(例えば「維持量」)が投与される。
【0125】
本発明のある特定の例示的な実施形態において、第2及び/又は第3の用量はそれぞれ、
直前の用量から、1から26週後(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2
、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2週後、又はそれより多くの週後)に投与される。成句「直前の用量」は、本明細書で使用される場合、複数回投与の順番において、その順番中のすぐ次の用量の投与の前に、その間に用量を含めずに患者に投与される、活性成分、例えば抗アクチビンA抗体の用量を意味する。
【0126】
本発明のこの態様に係る方法は、本発明の活性成分、例えば抗アクチビンA抗体の、あ
らゆる数の第2及び/又は第3の用量を患者に投与する工程を含んでいてもよい。例えば、
ある特定の実施形態において、1回のみの第2の用量が患者に投与される。他の実施形態において、2回以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、又はより多くの)第2の用量が患者
に投与される。同様に、ある特定の実施形態において、1回のみの第3の用量が患者に投与される。他の実施形態において、2回以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、又はそれ
より多くの)第3の用量が患者に投与される。
【0127】
複数の第2の用量を含む実施形態において、各第2の用量は、他の第2の用量と同じ頻度
で投与されてもよい。例えば、第2の用量はそれぞれ、直前の用量から、1から2週間後又
は1から2カ月後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の第3の用量を含む実施形態に
おいて、各第3の用量は、他の第3の用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、第3の
用量はそれぞれ、直前の用量から2から12週間後に患者に投与されてもよい。本発明のあ
る特定の実施形態において、第2及び/又は第3の用量が患者に投与される頻度は、処置レ
ジメンの経過にわたり変更が可能である。また投与頻度も、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、処置の経過中に医師によって調整することができる。
【0128】
本発明は、第1の頻度(例えば、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、月1回、2カ月毎に1回等)で2から6回の負荷用量が患者に投与され、それに続いてより少ない頻度で2回以上の維持量が患者に投与される投与レジメンを包含する。例えば、本発明のこの態様によれば、負荷用量が月1回の頻度で投与される場合、維持量は、6週毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回等で患者に投与されてもよい。
【0129】
抗体の診断的な使用
本発明の抗アクチビンA抗体は、例えば診断目的で、試料中のアクチビンA又はアクチビンAを発現する細胞を検出及び/又は測定することにも使用することができる。例えば、抗アクチビンA抗体又はそのフラグメントは、アクチビンAの異常な発現(例えば、過剰発現
、過小発現、発現の欠如等)を特徴とする状態又は疾患を診断するのに使用することがで
きる。アクチビンAに関する例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を
本発明の抗アクチビンA抗体と接触させることを包含していてもよく、ここで抗アクチビ
ンA抗体は、検出可能な標識又はレポーター分子で標識されている。その代わりに、診断
用途で、非標識の抗アクチビンA抗体は、それ自身検出可能に標識されている二次抗体と
組み合わせて使用してもよい。検出可能な標識又はレポーター分子は、放射線同位体、例えば3H、14C、32P、35S、若しくは125I;蛍光若しくは化学発光部分、例えばフルオレセインイソチオシアネート、若しくはローダミン;又は酵素、例えばアルカリホスファターゼ
、ベータ-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、若しくはルシフェ
ラーゼであり得る。試料中のアクチビンAを検出又は測定するのに使用できる具体的な例
示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞分類法(FACS)が挙げられる。
【0130】
本発明に係るアクチビンA診断アッセイに使用できる試料としては、正常状態又は病的
状態下で検出可能な量のアクチビンAタンパク質又はそのフラグメントを含有する患者か
ら入手できるあらゆる組織又は体液試料が挙げられる。一般的に、最初にアクチビンAの
ベースライン又は標準レベルを確立するために、健康な患者(例えば、異常なアクチビンAのレベル又は活性に関連する疾患又は状態に罹っていない患者)から得られた特定の試料
中のアクチビンAのレベルが測定されると予想される。次いでこのアクチビンAのベースラインレベルは、アクチビンA関連の疾患又は状態を有する疑いのある個体から得られた試
料中で測定されたアクチビンAのレベルと比較することができる。
【実施例
【0131】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法及び組成物をどのように作製し使用するかの十分な開示と説明を提供するために記載され、本発明者らが自身の発明として認めるものの範囲を限定することは意図していない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関する精度を保証するための努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるものとする。特に他の指定がない限り、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセルシウス度で示され、圧力は、大気圧か又はそれに近い圧力である。
【0132】
(実施例1)
アクチビンAに対するヒト抗体の生成
ヒト免疫グロブリンの重鎖及びカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、アクチビンAタンパク質(インヒビンβA二量体)を含む免疫原を、免疫反応を刺激するためのアジュバントと共に直接投与した。抗体の免疫反応を、アクチビンA特異的イムノアッセイによってモニタリングした。所望の免疫反応が達成されたら、
脾細胞を集め、マウス骨髄腫細胞と融合させることにより、その生存能力を保存し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。アクチビンA特異的抗体を産生する細胞株を同定するため
に、ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングして選択した。この技術を使用して、数種の抗アクチビンAキメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。この方式で得られた例示的な抗体は、H2aM10965Nである。その後、キメラ
抗体由来のヒト可変ドメインをヒト定常ドメインにクローニングすることにより、本明細書で説明されるような完全ヒト抗アクチビンA抗体を作製した。
【0133】
また抗アクチビンA抗体も、US2007/0280945A1で説明されているようにして、骨髄腫細
胞に融合させずに抗原陽性B細胞から直接単離した。この方法を使用して、数種の完全ヒ
ト抗アクチビンA抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びヒト定常ドメインを有する抗体)
を得た。この方式で生成した例示的な抗体を、以下のように名付けた:H4H10423P、H4H10429P、H4H10430P、H4H10432P2、H4H10440P2、H4H10442P2、H4H10436P2、及びH4H10446P2。
【0134】
この実施例の方法に従って生成した例示的な抗アクチビンA抗体のある特定の生物学的
性質を、以下に記載の実施例で詳細に説明する。
【0135】
(実施例2)
重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列
Table 1(表1)に、選択された抗アクチビンA抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配
列の対並びにそれらの対応する抗体の識別子を記載する。Table 2(表2)に、それに対応する核酸配列の識別子を記載する。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
本明細書において、抗体は、典型的に以下の命名法に従って記述される:Fcの接頭語(例えば「H1M」、「H2aM」、「H4H」)、それに続いて数の識別子(例えば、Table 1(表1)及び2で示されるように、「10423」、「10424」、又は「10426」)、それに続いて「P」、「P2」又は「N」の接尾語。したがって、この命名法によれば、抗体は、本明細書では例えば
「H4H10423P」、「H4H10432P2」、「H2aM10965N」等のように述べることができる。本明
細書で使用される抗体名に付けられたH1M、H2M及びH4Hという接頭語は、抗体の特定のFc
領域アイソタイプを示す。例えば、「H2aM」抗体はマウスIgG2aのFcを有し、それに対し
て「H4H」抗体はヒトIgG4のFcを有する。当業者には理解されていると予想されるが、特
定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換できるが(例えば、マウスIgG2aのFcを有する抗体は、ヒトIgG4等を有する抗体に変換できる)、い
ずれの場合においても、可変ドメイン(CDRを包含する)は、Table 1(表1)に示される数の
識別子によって示されているが、同じままと予想され、結合の性質は、Fcドメインの性質には関係なく同一であるか又は実質的に類似していると予測される。
【0139】
以下の実施例で使用される対照コンストラクト
以下の実施例では、比較目的で抗アクチビンA対照分子が取り入れられた。本明細書で
は対照1と名付けられた対照抗体は、US8,309,082に記載されているような「A1」の重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を有するヒト抗アクチビンA抗体である。対照2は、米国特許出願第2012/0237521号A1でMOR8159として開示された抗ヒトアクチビン受容体IIB型抗体(抗ActR2B mAb)である。対照3は、R&D Systems社、Minneapolis、MN(カタログ番号MAB3381)からのマウス抗アクチビンAモノクローナル抗体である。対照4は、アクチビンIIB型受容体-Fc
融合分子[C末端ヒトIgG1のFc融合タンパク質を用いて生産された可溶性アクチビンRIIB受容体の細胞外ドメイン(NP_001097のE23-P133、続いてGly-Serリンカー、続いてC末端ヒトIgG1のFc融合体)]であり、その配列は、配列番号227として提供される。
【0140】
(実施例3)
表面プラズモン共鳴によって決定される場合のヒトアクチビンAへの抗体結合
選択され精製された抗ヒトアクチビンAモノクローナル抗体への抗原結合に関する結合
親和性及び速度定数を、25℃及び37℃でのリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore T200又はBiacore 4000、GE Healthcare Life Sciences社、Piscataway、NJ)
アッセイを使用して決定した。マウスFc(接頭語H2aM)又はヒトFc(接頭語H4H)のいずれか
として発現された抗体を、それら各々の抗Fcセンサー表面上に捕捉した(mAb捕捉様式)。Biacore CM5センサーチップへの直接のアミンカップリングを介して作り出した、ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(GE Healthcare社、番号BR-1008-38)又はマウス抗ヒトIgGモ
ノクローナル抗体(GE Healthcare社、番号BR-1008-39)表面上のいずれかに抗アクチビンA抗体を捕捉した。ランニング緩衝液及び試料緩衝液の両方として、HBS-EP(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%界面活性剤P20、pH7.4)又はPBS-P(10mMのリン酸ナトリウム、2.7mMのKCl、137mMのNaCl、0.02%NaN3、0.05%界面活性剤P20、pH7.4)のいずれかを使用して動力学的実験を実行した。捕捉された抗体表面の全面にわたり、様々な濃度(50か
ら0.2nMの範囲の4倍希釈)のアクチビンA(R&D Systems社、番号338-AC-050/CF)、アクチビンB(R&D Systems社、番号659-AB-025/CF)、アクチビンAB(R&D Systems社、番号1006-AB-005)、アクチビンAC(R&D Systems社、番号4879-AC/CF)、又はインヒビンE(Novus Biologicals社、番号H00083729-P01)のいずれかを注入することによって、抗原-抗体会合速度を測定した。抗体-抗原会合を240秒モニタリングし、同時に緩衝液中の解離を600秒モニタリ
ングした。動力学的会合及び解離速度定数を、Scrubberソフトウェアバージョン2.0cを使用してデータを加工及びフィッティングすることによって決定した。次いで結合平衡解離定数(KD)及び解離半減期(t1/2)を、以下のように動力学的速度定数から計算した:KD(M)=kd/ka及びt1/2(分)=[ln2/(60*kd)]。Table 3(表3)からTable 10(表10)に、異なる抗アクチビンAモノクローナル抗体ごとの動力学的結合パラメーターを示す。(NB=使用された条件
下で結合は観察されなかった;NT=試験されなかった)。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
【表7】
【0146】
【表8】
【0147】
【表9】
【0148】
【表10】
【0149】
Table 3(表3)及びTable 4(表4)で示されるように、本発明の抗アクチビンA抗体は、25
℃で3.18pM未満(すなわち、≦3.18E-12)から745pM(すなわち、7.45E-10)の範囲のKD値及
び37℃で2.18pM未満(すなわち、≦2.18E-12)から1.77nM(1.77E-09)の範囲のKD値でアクチビンAに結合した。Table 5(表5)及びTable 6(表6)で示されるように、数種の抗アクチビ
ンA抗体(すなわち、H4H10432P2、H4H10442P2、H4H10430P2、H4H10446P2、及びH4H10468P2)は、25℃又は37℃で測定可能なアクチビンBへの結合を実証しなかった。いくつかの抗体
は、25℃でおよそ18.5pM(すなわち、1.85E-11)から33.1nM(すなわち、3.31E-08)の範囲のKD値[Table 7(表7)]、及び37℃でおよそ44.3pM(すなわち、4.43E-11)から24.2nM(すなわ
ち、2.42E-08)[Table 8(表8)]での測定可能なアクチビンA Bへの結合を実証した。いくつかの抗体は、25℃でおよそ99.7pM(すなわち、9.97E-11)から11.8nM(すなわち、1.18E-08)[Table 9(表9)]及び37℃でおよそ462pM(すなわち、4.62E-10)から22.5nM(すなわち、2.25E-08)[Table 10(表10)]の範囲のKD値での、測定可能なアクチビンACへの結合を実証した
。更に、試験された本発明の抗アクチビンA抗体は、インヒビンEへの測定可能な結合を実証しなかった(データ示さず)。
【0150】
(実施例4)
表面プラズモン共鳴によって決定される場合のTGF-ベータファミリーメンバーへの抗体結合
アクチビンA mAbを、TGF-ベータファミリーメンバーのパネルへの結合交差反応性に関
して試験した。結合実験のために、Biacore 4000機器を使用した。抗体H4H10429P、H4H10430P、H4H10436P2、H4H10442P2、H4H10446P2;対照4[C末端ヒトIgG1のFcタグを用いて生産されたActR2B可溶性エクトドメインタンパク質(ActR2B-hFc;配列番号227)];及びアイソタイプ対照抗体を、まずモノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE社、カタログ番号BR-1008-39)とのアミンカップリングにより誘導体化したBiacore CM4バイオセンサーチップ上で捕
捉した。全てのBiacore結合研究を、HBS-Tランニング緩衝液(0.01MのHEPES、pH7.4、0.5MのNaCl、3mMのEDTA、0.5mg/mlウシ血清アルブミン、0.05%v/v界面活性剤P20)中で行った
。ヒトTGF-ベータファミリーメンバーリガンドを、R&D Systems社から購入した(アクチビンA、番号338-AC;アクチビンB、番号659-AB;アクチビンAB、番号1066-AB;アクチビンAC、番号4879-AC;BPM2、番号355-BM;hBMP4、番号314-BP;hBMP6、番号507-BP;hBMP7、番号354-BP;hBMP9、番号3209-BP;hBMP10、番号2926-BP;hGDF8、番号788-G8;hGDF11、番号1958-GD)。全ての結合測定を37℃で行った。抗体又は可溶性受容体のそれぞれにおいて60~200共
鳴単位(RU)の範囲の捕捉レベルを得た。捕捉された抗体表面の全面にわたり、TGF-ベータファミリーリガンドを3.1nMから200nMの範囲の濃度で注入した。Table 11(表11)に、200nMの分析物を注入した場合の結合値を示す。
【0151】
【表11】
【0152】
200nMで注入されたTGF-ベータファミリーリガンドに対する捕捉されたアクチビンA抗体の観察された結合応答を、陰性対照抗体(アイソタイプ対照mAb)の結合応答と比較したと
ころ、それによりバックグラウンドレベルの非特異的結合の尺度がもたらされ、更にActR2B-hFcの結合応答と比較したところ、試験されたTGF-ベータファミリーメンバーのパネル全体に結合することが観察され、それゆえに陽性対照であるリガンド-結合タンパク質と
して役立つ[Table 11(表11)]。この比較から、数種の抗体(例えば、H4H10430、H4H10442
、H4H20446)が、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンACには結合したが、アクチビンB又はBMP若しくはGDFリガンドには感知できるほど結合しなかったことが見出された。ま
た、いくつかの抗体が、より広い交差反応性で追加のTGF-ベータファミリーリガンドと結合したことも見出された。例えば、H4H10429Pは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビ
ンAB、アクチビンACに、更にBMP9及びBMP10にも感知できるほどに結合した。H4H10436P2
は、明らかなアクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンAC、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、及びBMP10への結合を示した。これらのデータから、アクチビンAリガンドでマ
ウスを免疫化した後、TGF-ベータファミリーリガンドに対して異なる結合特異性を有する抗体を得ることができることが示される。
【0153】
(実施例5)
抗アクチビンA抗体の交差競合分析
9つの抗体(H4H10446P2、H4H10468P2、H4H10442P2、H4H10423P、H4H10430P、H4H10429P
、H4H10432P2、H4H10436P2及びH4H10440P2)のパネルの、ヒトアクチビンAへの結合に関して互いに競合する能力を評価するために、交差競合アッセイを行った。このアッセイには、2つのアイソタイプ対照抗体及び2つの対照アクチビンA抗体、対照1(US8,309,082に記載されているような「A1」の重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を有するヒト抗アクチビンA抗
体)並びに対照3(MAB3381、R&D Systems, Inc.社、Minneapolis、MNより入手可能)も包含
された。製造元の説明書に従って(ForteBio Corp.社、Menlo Park、CA)、Octet HBST緩衝液(0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/v界面活性剤P20、0.1mg/mL
のBSA)中、1000rpmのマイクロタイタープレートの振盪速度を用いて全てのアッセイを25
℃で行った。簡単に言えば、各抗アクチビンA抗体の10μg/mL溶液中にチップを5分浸漬することによって、およそ1.8nMの結合応答をもたらす量の抗アクチビンA抗体を、抗ヒトFc抗体でコーティングされたOctetセンサーチップ(Fortebio社、番号18-0015)上で捕捉した。チップを無関係の抗体の50μg/mL溶液中で5分インキュベートすることによって、チッ
プ上の全ての残存した抗hFc結合部位をブロックした。次いでセンサーチップを、1μMの
第2の抗アクチビンA抗体と予め結合させたアクチビンAの50nM溶液(R&D Systems社、番号338-AC/CF)を含有するウェルに浸した。第2のアクチビンA抗体/アクチビンA溶液のアクチ
ビンA抗体でコーティングされたセンサーチップへの結合を1000rpmで5分モニタリングし
た。抗アクチビンAでコーティングしたセンサーチップに結合するmAb/アクチビンA複合体の応答を比較し、様々な抗アクチビンAモノクローナル抗体の競合/非競合挙動を決定した。図1に結果を示す。
【0154】
図1において、競合結合応答は黒色又は薄灰色の陰影で示され、対応する抗体対がアク
チビンAへの結合に関して互いに競合することが提示される。黒色のフォントを含む薄灰
色のボックスは、同じ抗体間の自己競合に関する結合応答を表す。白色のフォントを含む黒色のボックスは、結合順とは無関係に両方向でアクチビンA結合に関して競合する抗体
を表す。黒色のフォントを含む濃い灰色のボックスは、アイソタイプ対照(すなわち、非
結合)抗体に関する読取値を表し、これは、アイソタイプ対照抗体の抗アクチビンA抗体-
アクチビンA複合体への結合の欠如(アイソタイプ対照抗体がOctetセンサーチップに結合
しているとき)又はアイソタイプ対照抗体のアクチビンAへの結合の欠如(アイソタイプ対
照抗体がアクチビンAを含むウェル中で第2の抗体として使用されているとき)を提示する
。黒色のフォントを含む白色のボックスは、抗体間で競合がないことを表し、これは、抗体が、アクチビンA上の別個の結合エピトープを有することを示唆する。
【0155】
4つの抗体、H4H10446P2、H4H10468P2、H4H10442P2、及びH4H10423Pは、二方向で、アクチビンAへの結合に関して互いに競合する。加えて、これらの4つの抗体は、結合に関して対照1又は対照3と競合しない。これらの4つのアクチビンA抗体のうち3つ、すなわちH4H10446P2、H4H10468P2、及びH4H10442P2は、他のいかなるアクチビンA抗体とも交差競合しない。また4つの抗体のうち1つ(H4H10423P)も、二方向で、アクチビンAへの結合に関してH4H10430Pと競合する。5つの抗体、H4H10430P、H4H10429、H4H10432P2、H4H10436P2、及びH4H10440P2は、二方向で、アクチビンAへの結合に関して、互いに、加えて対照1及び対照3と競合する。これらの5つの抗体のうち4つ(すなわち、H4H10429、H4H10432P2、H4H10436P2、及びH4H10440P2)は、他のいかなるアクチビンA抗体とも交差競合せず、それに対してH4H10423Pは、上述したようにH4H10430Pとも交差競合する。
【0156】
この実施例の結果から、本発明の抗アクチビンA抗体は、エピトープの結合特性に基づいて2つの別個の「ビン」に分類することができることが示される。ビン1は、H4H10423P、H4H10446P2、H4H10468P2及びH4H10442P2を包含する。ビン2は、H4H10429、H4H10430P、H4H10432P2、H4H10436P2、及びH4H10440P2を包含する。更に、各ビンからの1つの抗体、すなわち、H4H10423P及びH4H10430Pは、互いに交差競合する。この実施例の結果は、ビン1の抗体は、ビン2の抗体とは別個のアクチビンA上の領域に結合することを示唆する。
【0157】
(実施例6)
抗アクチビンA抗体を用いたアクチビンAが媒介する受容体活性化及びSMAD複合体シグナル伝達の阻害
本発明の抗アクチビンA抗体を更に特徴付けるために、アクチビンIIA型及びIIB型受容
体(それぞれActRIIA及びActRIIB)の活性化並びにそれに続くアクチビンI型受容体のリン
酸化及び活性化を検出するためのバイオアッセイを開発した。ActRIIA及びActRIIBとアクチビンとの相互作用は、がん細胞の増殖の調節、転移及び胚性幹細胞の分化などの多様な細胞プロセスの誘導を引き起こす[Tsuchida, K.ら、Cell Commun Signal 7:15(2009)]。I型受容体のリン酸化及び活性化は、SMAD2及び3タンパク質のリン酸化を引き起こし、それにより遺伝子の転写調節をもたらす活性化されたSMAD複合体が形成される。
【0158】
アクチビンII型受容体へのアクチビン結合を介したSMAD複合体シグナル伝達経路の活性化を検出するために、ヒトA204横紋筋肉腫細胞株(ATCC、番号HTB-82)を、Smad2/3-ルシフェラーゼレポータープラスミド(CAGAx12-Luc;Dennler、1998)でトランスフェクトして、A204/CAGAx12-Luc細胞株を作り出した。10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン及び250μg/mLのG418が補充されたMcCoy's 5A(Irvine Scientific社、番号9090)中でA204/CAGAx12-Luc細胞を維持した。バイオアッセイのために、A204/CAGAx12-Luc細胞を、低血清培地、0.5%FBS及びOPTIMEM(Invitrogen社、番号31985-070)中、細胞10,000個/ウェルで96-ウェルアッセイプレートに植え付け、37℃及び5%CO2で一晩インキ
ュベートした。リガンド用量反応を決定するために、アクチビンA(R&D Systems社、番号338-AC)、アクチビンB(R&D Systems社、番号659-AB)、アクチビンAB(R&D Systems社、番号1066-AB)及びアクチビンAC(R&D Systems社、番号4879-AC/CF)を1:3で100から0.002nMに連続希釈し、アクチビンを含有しない対照と共に開始して細胞に添加した。アクチビンA、
アクチビンB、アクチビンAB、及びアクチビンACが、A204/CAGAx12-Luc細胞株を、それぞ
れ99pM、47pM、19pM、及び4.4nMのEC50値で活性化することが観察された。阻害を測定す
るために、適切なアイソタイプ対照抗体のいずれかを含有するか又は抗体を含有しない対照試料を含めて、抗体を、100から開始して0.002nMに、1000から開始して0.02nMに、又は300から開始して0.005nMに1:3で連続希釈し、100pMのアクチビンA、50pMのアクチビンB、30pMのアクチビンAB又は4nMのアクチビンACの一定濃度で細胞に添加した。また対照4(ActRIIB-hFc;配列番号227)も、このアッセイにおける陽性ブロッキング対照として使用した
。37℃及び5%CO2で5.5時間インキュベートした後、OneGlo基質(Promega社、番号E6051)を添加し、次いでVictor X(Perkin Elmer社)機器を使用してルシフェラーゼ活性を検出した。Prism 5ソフトウェア(GraphPad社)での非線形回帰(4-パラメーターロジスティックス)
を使用して結果を分析した。
【0159】
Table 12(表12)で示されるように、本発明の抗アクチビンA抗体は、100pMのアクチビンAを39pMから3.5nMの範囲のIC50値でブロックし、一方で対照1は83pMのIC50値でブロック
した。本発明の抗アクチビンA抗体の部分集合を、アクチビンB、AB、及びACのブロックに関して試験した。試験された9つの抗体のうち4つが、50pMのアクチビンBを130pMから100nMの範囲のIC50値でブロックした。アクチビンBのブロッケージに関して試験された本発明の5つの抗体は、高い抗体濃度でのみブロックしたが、一方で対照1は、いかなる測定可能なアクチビンBのブロッケージも示さなかった。試験された本発明の8つの抗体は、30pMのアクチビンABを100pMから8.2nMの範囲のIC50値でブロックしたが、一方で対照4は540pMのIC50値でブロックした。1つの抗体、H4H10423Pは、アクチビンABの弱いブロッケージしか
実証しなかった。試験された8つの抗体のうち7つは、4nMのアクチビンACを580pMから6.5nMの範囲のIC50値でブロックしたが、一方で対照4は1.1nMのIC50値でブロックした。1つの抗体、H4H10423Pは、アクチビンACのいかなるブロッケージも実証しなかった。マウスIgG(mIgGアイソタイプ対照)及びヒトIgG(hIgGアイソタイプ対照)陰性対照はどちらも、受容
体のリガンド活性化をブロックしなかった。
【0160】
【表12】
【0161】
またA204/CAGAx12-Luc細胞を使用したバイオアッセイは、GDF8(R&D Systems社、カタログ番号788-G8/CF)及びGDF11(R&D Systems社、カタログ番号1958-GD-010/CF)によっても刺激することが可能であった。これらのリガンドのアクチビンA抗体での機能的な阻害に関
して試験するために、このアッセイを上述した条件を使用して、ただし活性化リガンドの代わりにGDF8又はGDF11を用いて行ったところ、それぞれ188pM及び84pMのEC50値を得た。このアッセイにおいて、一定濃度の0.50nMのGDF8又は0.40nMのGDF11による活性化が、対
照4によりそれぞれ298pM及び214pMのIC50値で完全にブロックされた。これらの同じ一定
濃度のリガンドを使用したところ、最大100nMの抗体で試験した場合、アクチビンA抗体、H4H10446P2及びH4H10430PによるGDF8又はGDF11のどちらの阻害も観察されなかった。別の日に、このアッセイにおいて、アクチビンA抗体H4H10429P及びH4H10436P2を、一定濃度の250pMのGDF8又は250pMのGDF11の存在下で阻害に関して試験したところ、最大150nMの試験されたアクチビンA抗体と共に細胞をインキュベートした後、阻害は観察されなかった。
このアッセイにおいて、GDF8及びGDF11単独は、それぞれ124pM及び166pMのEC50値を表示
した。これらのデータは、アクチビンA抗体H4H10446P2、H4H10430P、H4H10429P及びH4H10436P2はGDF8又はGDF11を機能的に阻害しないことを実証する。
【0162】
(実施例7)
アクチビンA抗体を使用した骨格筋肥大の刺激
ミオスタチン特異的なアンタゴニスト、抗GDF8抗体H4H1657N2(US2011-0293630A1を参照)、又はH4H1657N2と異なる抗アクチビンA抗体との組合せの投与により誘発された骨格筋
肥大をCB17SCIDマウスで評価した。アイソタイプ適合対照抗体での処置と比べた肥大の程度を測定した。これらの研究には、C末端ヒトIgG1のFcドメインを用いて生産されたヒトActRIIBの細胞外ドメイン(対照4、配列番号227)での処置も包含された。対照4は、インビ
ボで筋肉肥大を誘導すること、更に、複数のTGF-ベータファミリーメンバーリガンドと結合してそれらの活性をブロックすることがこれまで示されている[Souza, TAら、Mol Endocrinol 22:2689~702(2008);Lee, SJら、Proc Natl Acad Sci U.S.A. 102(50):18117~22(2005)]。
【0163】
8つの研究で、合計で8つの本発明の抗アクチビンA抗体及び対照1を、H4H1657N2と組み
合わせて、又は単独で、アイソタイプ対照、対照4、H4H1657N2単独、又は対照2(US2010/0272734A1に記載の抗体MOR08159のVH/VLを有する抗アクチビンRIIB抗体)処置群と比較して試験した。この研究のために、およそ10週齢の雄CB17SCIDマウス(Taconic社、番号CB17SC-M)を、体重に従って、マウス5匹の6つの群に均一に分けた。Table 13(表13)で説明され
るような各研究でマウスの群を処置した。
【0164】
【表13A】
【0165】
【表13B】
【0166】
研究1~5、7、及び8のために、抗体及び対照4を、10mg/kgの各タンパク質の用量で実験の第1週中に2回(0及び3日目)及び10mg/kgの各タンパク質の用量で第2週中に1回(7日目)、皮下投与した。第3週中の抗体又は対照4の最後の用量(14日目)を、研究番号1及び番号2については8mg/kgで、又は研究番号3~番号8については10mg/kgで皮下投与した[Table 13(
表13)]。21日目に、マウスを安楽死させ、各マウスの総体重を測定した。研究6について
は、以前の研究1~5のための抗体を投与したが、21日目に追加の注入を行って28日目まで処置を延長した。各マウスから前脛骨筋(TA)及び腓腹筋(GA)の筋肉を切り出し重さを量った。組織の質量を開始時の体重に正規化し、アイソタイプ対照抗体処置群の平均質量に対する質量の平均パーセント変化を計算した。Table 14(表14)~Table 21(表21)に要約した結果は、アイソタイプ対照に対する平均パーセント増加±標準誤差として表される。
【0167】
【表14】
【0168】
Table 14(表14)で示されるように、第1の研究において、対照4は、検査された全ての筋肉において有意な肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、TA質量において45.80±1.47%、及びGA質量において31.91±1.4%の増加であった。H4H1657N2単独での処置も、TA(19.54±2.67%の増加)及びGA(26.46±3.63%の増加)筋肉質量において肥大を誘発したが、対照4より有効性は低かった。H4H1657N2+H4H10442P2の組合せは、対
照4で処置したマウスと比較した場合、平均TA(40.76±2.59%)及びGA(30.62±2.32%)の筋
肉質量において類似の増加を誘発した。H4H1657N2/H4H10423P及びH4H1657N2/H4H10432P2
の組合せによる処置は、H4H16757N2/H4H10442P又は対照4の処置により誘発された増加ほ
ど大きな平均TA質量の増加を誘導しなかった。
【0169】
【表15】
【0170】
Table 15(表15)で示されるように、第2の研究において、対照4は、検査された全ての筋肉において肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、平均TA質量において43.47±2.37%及び平均GA筋肉質量において29.24±2.22%の増加であった。この研究において、H4H1657N2単独での処置も、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較し
た場合、TA及びGAの平均筋肉質量の増加を誘発したが(それぞれ16.7±2.73%及び18.54±3.48%)、これらの平均増加は、対照4処置群に関して観察されたものより小さかった。H4H1657N2/H4H10429P及びH4H1657N2/H4H10436P2の組合せによる処置は、平均TA(それぞれ34.14±2.55%及び29.31±1.59%)及び平均GA(それぞれ26.24±3.11%及び26.55±2.41%)の増加
を誘発し、この増加は、H4H1657N2又は対照4単独のいずれかに関して観察された増加の間であった。H4H1657N2/H4H10440P2の組合せは、この研究における他の2つの組合せ又は対
照4処置により誘発された増加ほど大きなTA又はGAの平均質量の増加を誘導しなかった。
【0171】
【表16】
【0172】
Table 16(表16)で示されるように、第3の研究において、対照4は、検査された全ての筋肉において肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、平均TA筋肉質量において39.90±3.58%、及び平均GA筋肉質量において34.01±2.87%の増加であった。H4H1657N2単独での処置も、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、TA(14.19±3.19%)及びGAの平均筋肉質量(15.73±0.58%)の増加を誘発したが、これらの平均増
加は、対照4処置群に関して観察されたものより小さかった。H4H1657N2/H4H10446P2の組
合せによる処置は、TA(40.01±3.67%)及びGA(31.29±2.60%)の平均筋肉質量において、対照4で処置したマウスの場合と類似の増加を誘発した。H4H1657N2/H4H10430Pの組合せによ
る処置は、TA(28.30±3.27%)及びGA(21.55±2.30%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、H4H1657N2単独及びH4H1657N2/H4H10446P2の組合せによる処置に関して観察され
たものの間であった。
【0173】
【表17】
【0174】
Table 17(表17)で示されるように、第4の研究において、アイソタイプ対照で処置した
マウスと比較した場合、検査された筋肉においてH4H1657N2は肥大を誘発し、平均TA筋肉
質量において21.05±2.64%及び平均GA筋肉質量において22.85±2.28%の増加であった。この研究において、H4H10430P単独での処置は、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較
した場合、筋肉質量をわずかに増加させたが、その値は統計学的に有意ではなかった。それぞれ10mg/kg及び2mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10430Pの組合せによる処置は、TA(39.02
±3.55%)及びGA(27.57±1.26%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この誘発は、TA筋肉においてH4H1657N2又はH4H10430P単独に関して観察されたものより大きかった。それぞれ10mg/kg及び10mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10430Pの組合せによる処置は、TA(40.20±2.48%)及びGA(22.46±5.03%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、これは、TA筋肉においてH4H1657N2
又はH4H10430P単独に関して観察されたものより大きかった。それぞれ10mg/kg及び25mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10430Pの組合せによる処置は、TA(44.92±5.70%)及びGA(30.22±2.97%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、これは、TA筋肉においてH4H1657N2又はH4H10430P
単独に関して観察されたものより大きかった。
【0175】
【表18】
【0176】
Table 18(表18)で示されるように、第5の研究において、アイソタイプ対照で処置した
マウスと比較した場合、検査された筋肉においてH4H1657N2は肥大を誘発し、平均TA筋肉
質量において25.4±1.35%及び平均GA筋肉質量において22.82±1.97%の増加であった。こ
の研究において、H4H10446P2単独での処置は、低レベルの筋肉肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、平均TA筋肉質量において3.70±1.67%及び平均GA筋肉質量において2.70±1.06%の増加であった。それぞれ10mg/kg及び2mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10446P2の組合せによる処置は、TA(51.29±4.20%)及びGA(39.24±3.08%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、H4H1657N2又はH4H10446P2単独に関して観察され
たものより大きかった。それぞれ10mg/kg用量でのH4H1657N2及びH4H10446P2の組合せによる処置は、TA(49.64±4.08%)及びGA(35.56±3.39%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、H4H1657N2又はH4H10446P2単独に関して観察されたものより大きかった。それぞ
れ10mg/kg及び25mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10446P2の組合せによる処置は、TA(49.79±5.46%)及びGA(35.14±3.49%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、H4H1657N2又はH4H10446P2単独に関して観察されたものより大きかった。
【0177】
【表19】
【0178】
Table 19(表19)で示されるように、第6の研究において、対照4は、検査された全ての筋
肉において肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、平均TA質量において47.34±2.63%及び平均GA筋肉質量において32.17±3.81%の増加であった。この研究において、H4H1657N2単独での処置も、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較し
た場合、それぞれ17.21±2.97%及び21.57±1.90%のTA及びGAの平均筋肉質量の増加を誘発したが、これらの平均増加は、対照4処置群に関して観察されたものより小さかった。こ
の研究において、対照1単独での処置は、低レベルの筋肉肥大を誘発し、アイソタイプ対
照で処置したマウスと比較した場合、平均TA筋肉質量において4.54±2.25%及び平均GA筋
肉質量において2.72+1.30%の増加であった。それぞれ10mg/kg及び10mg/kgでのH4H1657N2
及び対照1の組合せによる処置は、TA(30.06±5.51%)及びGA(30.72±3.64%)の平均筋肉質
量の増加を誘発し、この増加は、H4H1657N2又は対照1単独に関して観察されたものより大きかった。
【0179】
【表20】
【0180】
Table 20(表20)で示されるように、第7の研究において、対照4は、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、検査された全ての筋肉において肥大を誘発し、平均TA質量において34.43±5.92%及び平均GA筋肉質量において14.86±3.65%の増加であった。この研究において、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、検査された筋肉において対照2単独での処置は肥大を誘発し、平均TA質量において36.75±3.88%及び平均GA筋
肉質量において26.41±3.16%の増加であった。それぞれ10mg/kg及び10mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10430Pの組合せによる処置は、TA(33.13±2.02%)及びGA(22.82±1.34%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、ActRIIB-Fc単独及び対照2単独に関して観察された
増加との間であった。それぞれ10mg/kg及び10mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10446P2の組合
せによる処置は、TA(41.28±2.76%)及びGA(29.21±2.62%)の平均筋肉質量の増加を誘発した。
【0181】
【表21】
【0182】
Table 21(表21)で示されるように、第8の研究において、対照4は、検査された全ての筋肉において肥大を誘発し、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、平均TA質量において53.74±5.31%及び平均GA筋肉質量において39.39±4.56%の増加であった。この研究において、H4H1657N2単独での処置も、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較し
た場合、それぞれ18.44±2.30%及び21.17±1.72%のTA及びGAの平均筋肉質量の増加を誘発したが、これらの平均増加は、対照4処置群に関して観察されたものより小さかった。こ
の研究において、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、検査された筋肉において対照2単独での処置は肥大を誘発し、平均TA質量において39.90±1.69%及び平均GA
筋肉質量において25.87±2.72%の増加であった。それぞれ10mg/kg及び25mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10423Pの組合せによる処置は、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較した場合、TA(36.33±3.67%)及びGA(28.18±3.11%)の平均筋肉質量の増加を誘発した。それぞれ10mg/kg及び25mg/kgでのH4H1657N2及びH4H10430Pの組合せによる処置は、TA(43.83±1.56%)及びGA(31.24±1.90%)の平均筋肉質量の増加を誘発し、この増加は、対照4単独及び
対照2単独に関して観察された増加の間であった。
【0183】
これらの研究は、ミオスタチン阻害剤と共に抗アクチビンA抗体を投与することは、試
験された用量及び注入頻度において、ミオスタチン阻害剤単独での処置より有意に大きい程度に骨格筋肥大を更に増加させることができることを示す。
【0184】
(実施例8)
アクチビンA抗体を使用したアクチビンA結合のブロックキング
アクチビンAと、その受容体であるActRIIB及びActRIIA、加えてその内因性アンタゴニ
ストであるフォリスタチンとの相互作用をブロックする、選択された抗アクチビンA抗体
の能力を、Biacore 3000機器を使用して決定した。この実験のために、対照4[C末端ヒトFcタグと共に発現されたヒトActRIIB(配列番号227)]、C末端ヒトFcタグと共に発現された
ヒトActRIIA(hActRIIA-Fc;R&D Systems社、番号340-R2-100)、又はフォリスタチン-288(R&D Systems社、番号5836-FS-025)を、Biacore CM5のセンサー表面にアミンカップリング
した。5nMの固定濃度でのアクチビンA(R&D Systems社、番号338-AC)を、単独で、又は60nM(アクチビンAの12倍過剰なモル濃度)の最終濃度でのアクチビンA抗体、hActRIIA-Fc、hActRIIB-Fc、若しくはアイソタイプ対照抗体と混合されて、室温で1時間インキュベートした。次いで抗体-アクチビンA混合物を、20μL/分の流速で、アミンカップリングした対照4、hActRIIA-Fc、又はフォリスタチン-288表面の全面に注入した。注入開始後の150秒で
結合シグナル(RU)を測定し、このシグナルから陰性対照の参照表面に関して測定されたRU値を引いて、特異的結合シグナルを決定した。各抗アクチビンA抗体の存在下における受
容体又はアンタゴニスト表面に対する遊離のアクチビンA結合のパーセンテージを、抗体
の非存在下における5nMアクチビンAからの特異的結合シグナルで割った観察された特異的結合シグナルの比率として計算した。
【0185】
【表22】
【0186】
Table 22(表22)で示されるように、試験された7つの本発明の抗アクチビンA抗体のうち6つ並びに対照1及び対照3の両方が、アクチビンA(Actin A)のフォリスタチン-288への結
合をブロックした。本発明の1つの抗体、H4H10423Pは、アクチビンAのフォリスタチン-288への結合を予防しなかった。対照4及びhActRIIA-Fcは、アクチビンAのフォリスタチン-288への結合をより高い濃度でブロックした。
【0187】
【表23】
【0188】
Table 23(表23)で示されるように、試験された7つの本発明の抗アクチビンA抗体のうち4つ並びに対照1及び対照3の両方が、hActRIIA-FcのアクチビンAへの結合をブロックした
。本発明の3つの抗体、H4H10442P2、H4H10446P2、及びH4H10423Pは、アクチビンAのhActRIIA-Fcへの結合を予防しなかった。対照4及びhActRIIA-Fcは、アクチビンAのhActRIIA-Fcへの結合をブロックした。
【0189】
【表24】
【0190】
Table 24(表24)で示されるように、試験された7つの本発明の抗アクチビンA抗体のうち4つ並びに対照1及び対照3の両方は、アクチビンAのhActRIIB-Fcへの結合をブロックした
。本発明の2つの抗体、H4H10442P2及びH4H10446P2は、アクチビンAのhActRIIB-Fcへの結
合を予防しなかった。本発明の1つの抗体、H4H10423Pは、試験された抗体のより高い濃度で、アクチビンAのhActRIIB-Fcへの結合を部分的にブロックする能力を実証した。hActRIIB-Fc及びhActRIIA-Fcの両方は、アクチビンAのhActRIIB-Fcへの結合をブロックした。
【0191】
(実施例9)
筋肉量及び運動能力に対するH4H1657N2の作用
老化した雄C57BL/6マウス(19月齢)で、筋肉量及び運動能力に対する抗GDF8抗体であるH4H1657N2の作用を評価した。
【0192】
マウスを、4つの群(n=6~8匹/群)、不活発群又は運動群に無作為に分け、H4H1657N2又
はアイソタイプ対照抗体の皮下用量(10mg/kg)を21日にわたり週2回(6回の注射)で与えた
。運動群中のマウスに、3週連続して週5日、10m/分で5°の傾斜のExer 6Mトレッドミル(Columbus Instruments社、Columbus、OH)で、20分からなる1日1回のトレーニングセッションを含む運動レジメンを行った。3週間の処置の最後に、全ての4つの群で、トレッドミルでの消耗試験を使用して持久力を測定した。二元配置ANOVA、続いてチューキーのHSD検定を用いてデータを分析した。筋肉質量を正規化した質量として報告した(すなわち、筋肉
質量を、実験開始時に測定された体重に正規化した)。Table 25(表25)に、四頭筋に関す
る結果を、アイソタイプ対照抗体群と比較した各群の平均%変化(±標準誤差)として示す
【0193】
【表25】
【0194】
Table 25(表25)で見られるように、H4H1657N2処置は、四頭筋の質量において有意な増
加をもたらした(H4H1657N2群の両方で、アイソタイプ対照に対してp<0.01の有意性)。後
脚筋肉群の質量(TA、GA)の増加は、アイソタイプ対照抗体と比較して、運動した(それぞ
れ17.4%、12.5%)及び不活発の(それぞれ14.1%、11.6%)老化マウスで見られた。アイソタ
イプ対照抗体が与えられた運動した老化マウスと不活発な老化マウスとの間に筋肉質量のわずかな増加が観察されたが、統計学的に有意ではなかった[Table 25(表25)]。
【0195】
また運動持久力に対するH4H1657N2処置の作用も、19月齢の雄C57BL/6マウスで検査された[Table 26(表26)]。
【0196】
【表26】
【0197】
運動した老化マウスにおいて、H4H1657N2は、アイソタイプ対照群と比較して、トレッ
ドミルでのランニング時間(50.2分に対して73.2分)及び距離(0.93kmに対して1.33km)で測定した場合、持久力の有意な増加も誘発した[Table 26(表26)]。しかしながら、不活発マウスでは、H4H1657N2は、アイソタイプ対照群と比較して持久力を有意に増加させなかっ
た。
【0198】
筋肉質量研究の場合と同様に、H4H1657N2は、トレッドミルのランニング時間及び距離
で測定した場合、運動したマウスのみで持久力の有意な増加を誘発したが、不活発マウスでは誘発されなかった。これらの結果は、H4H1657N2は、運動トレーニングと組み合わせ
た場合、身体能力の成果を増加させることを示す。
【0199】
(実施例10)
マウスにおける骨格筋の質量及び等尺性筋力に対するH4H1657N2の作用
9週齢の雄C57BL/6マウスで、骨格筋肥大を誘導するH4H1657N2の能力をインビボで評価
した。
【0200】
H4H1657N2又はアイソタイプ対照抗体の繰り返しの皮下用量を10又は30mg/kgのいずれかで3週間にわたり週2回(n=6)投与した。21日間のH4H1657N2処置により、等しい用量で投与されたアイソタイプ対照を受けたマウスと比較して、それぞれ4.7±2.3%(n.s.)及び7.1±1.5%(n.s.)の体重増加が生じた。個々の筋肉質量は、アイソタイプ対照(10mg/kg及び30mg/kg)と比較して、以下のように増加した:前脛骨筋(19.4±4.9%**及び20.6±1.5%**)、腓
腹筋:(14.9±2.9%**及び25.3±1.9%***)、及び四頭筋(17.7±3.6%*及び26.2±3.8%**)。(全ての統計データはチューキーの事後検定を併用した一元配置ANOVAによる[*p<.05;**p<.01;***p<.001;n.s.=統計学的に異なっていない])。
【0201】
前脛骨筋(TA)の筋肉量の増加に付随して、エクスビボでの等尺性筋力の増加が起こったことから、筋肉の機能及び質量の両方を維持する能力が示される。H4H1657N2又はアイソ
タイプ対照抗体の繰り返しの皮下用量(3週間にわたり週2回10mg/kgで投与、n=6/群)で予
め処置したマウスを個々に麻酔してイソフルランガス下で維持しながら、TA筋肉を切り出し、常に25℃に維持した酸素添加した乳酸加リンゲル液槽中に置いた。TAの上端を槽中に浸された支柱にしっかり縛りつけ、同時に遠位の腱を305Cのレバーアーム(Cambridge Systems社)に縛りつけた。TAをわずかに伸長させて、最小電圧での1Hzの刺激により生じた力を試験することにより最適な長さを決定した。TA筋肉を、繰り返し伸長させて力の低下が起こるまで刺激し、前の位置まで弛緩させた。次いで一連の1HZの刺激において電圧を徐
々に増加させ、最大の力の出力を達成した。最適な長さ及び電圧が決定されたら、TA筋肉を周波数を増加させながら(40~100Hz)400ミリ秒刺激し、最大強縮力を決定した。各強縮刺激間に、TA筋肉に2分の休息期間を与えた。
【0202】
10mg/kg及び30mg/kg用量でのアイソタイプ対照抗体で21日間処置したマウスからのTA筋
肉は、それぞれ892.6±37及び906.1±37.8の平均ピーク強縮力を生じた。H4H1657N2で処
置したマウスからのTA筋肉は、それぞれ1041.3±31.7及び1003.3±35.7mNの平均ピーク強縮力を生じた。これらの力の値は、アイソタイプ対照と比較した、平均ピーク強縮力における16.7%*(10mg/kg)及び10.7%n.s(30mg/kg)の増加を表す(図2A)。ピーク強縮力に対するH4H1657N2処置の全体的な薬物作用は、10mg/kg用量と30mg/kg用量の両方においてアイソ
タイプ対照とは統計学的に異なっていた(10mg/kg用量は図2Bに示す)。(図2A:チューキー
の事後検定を併用した一元配置ANOVAによる統計的分析[*p<.05;n.s.=統計学的に異なっていない]。図2B:二元配置ANOVA及びシダックの事後検定による統計的分析[p>0.0001])。
【0203】
(実施例11)
H4H1657N2は後肢懸垂(HLS)誘発萎縮からの回復を改善する
1歳のC57BL/6雄マウスで、7日の後肢懸垂(HLS)誘発萎縮からの回復期中における骨格筋の質量に対するH4H1657N2の作用を評価した。
【0204】
0日目に、7日の継続期間中に両方の後肢が地面に触れないように、18匹のマウスを尾で吊り下げた。マウスを、食物及び水の利用が自由な特殊なケージ中に入れた。同時に、1
つの追加のマウス6匹の群を通常のケージに入れたままにし、対照(非HLS対照)として役立てた。7日目に、吊り下げたマウスを降ろしてHLS中に失われた体重のパーセンテージにより3つの群(それぞれn=6)に無作為に分けた。7日目に、HLSに応答した萎縮のパーセンテージを評価するために、非HLS対照群及び1つのHLS群(HLS群)からの筋肉質量を得た。2つの
残存するHLS群(それぞれn=6)を通常のケージ中で8日間(すなわち、実験の7日目から15日
目)そのまま回復させ、7日目及びs10日目(すなわち、回復から0日及び3日後)に10mg/kg
用量のH4H1657N2又はアイソタイプ対照のいずれかで皮下処置した(それぞれHLS+7Rec+H4H1657N2及びHLS+7rec+アイソタイプ対照)。15日目に(すなわち、回復の8日後)、HLS誘発萎縮後の回復のパーセンテージを評価するために筋肉質量を得た。
【0205】
図3Bで見られるように、7日間のHLSにより、非HLS対照群と比較した場合、前脛骨筋(TA)及び腓腹筋(GA)(HLS群)の両方において質量の有意な損失が起こった(それぞれ-13.7%*及び-14.8%*)。回復の8日後、HLS+7rec+アイソタイプ対照群は、非HLS対照群と比較した場
合、TA及びGA筋肉量(-6.3%及び-7.5%)の損失を維持したが、それに対してHLS+7Rec+H4H1657N2群は、非HLS群と比較した場合、質量の増大(4.7%及び5%)を示した。
【0206】
2つの回復群(すなわち、HLS+7Rec+H4H1657N2対HLS+7rec+アイソタイプ対照)を比較すると、TA及びGA質量に対するH4H1657N2の作用は、アイソタイプ対照抗体で見られた作用と
統計学的に異なっていなかった。しかしながら、HLS+7rec+アイソタイプ対照群の筋肉量
はHLS群又は非HLS対照群と統計学的に異なっていなかったが、HLS+7Rec+H4H1657N2群は、HLS群と比較した場合、より統計学的に大きいTA及びGA質量を有していた。(全ての統計データはチューキーの事後検定を併用した一元配置ANOVAによる[*は、非HLSに対してp<0.05;##は、HLSに対してp<0.01)。
【0207】
(実施例12)
抗アクチビンA抗体及びActRIIB-FcによるBMP受容体I型及びII型活性化の阻害
骨形成タンパク質(BMP)は、TGF-βスーパーファミリーに属し、BMP受容体I型及びII型
で構成される細胞表面上の受容体複合体を活性化することによって多くの生理学的プロセスの調節に関与する。受容体の活性化により、SMADタンパク質のリン酸化及びリガンドへの応答性を有する遺伝子の転写活性化が起こる。
【0208】
これまでにBMP2に応答することが示されているマウス骨髄間質細胞株であるW-20-17細
胞におけるBMPシグナル伝達の調節を検出するためのバイオアッセイを開発した。ルシフ
ェラーゼレポーター(すなわち、BMP-応答要素(BRE(2X)-ルシフェラーゼ-IRES-GFP))を安
定して発現するように細胞を加工し、高いGFP発現に関してソートした。得られた安定な
細胞株はW-20-17/BRE-lucと称され、これを10%FBS、DMEM、Pen/Strep、及び200μg/mlG418中で維持した。これらの細胞を使用して、BMP活性化と抗アクチビンA抗体及びActRIIB-hFc(対照4、配列番号227)によるこの活性化の阻害を測定した。
【0209】
W-20-17/BRE-luc細胞株を使用して、4つの抗アクチビンA抗体及びActRIIB-hFcのBMPシ
グナル伝達を阻害する能力を評価した。バイオアッセイのために、W-20-17/BRE-luc細胞
を96-ウェルアッセイプレート上に10,000細胞/ウェルで植え付け、37℃及び5%CO2で一晩
インキュベートした。次の日、BMP2、BMP4、BMP6、BMP9又はBMP10を1:3で連続希釈し、100nMから0.002nMで細胞に添加した(用量反応のためにBMP対照なしも包含する)。抗アクチ
ビンA抗体又はActRIIB-hFcによるBMPの阻害のために、抗体又はActRIIB-hFcを1:3で1000nMから0.02nMに連続希釈し[抗体なし、対照抗体、又はActRIIB-hFcの陰性対照(すなわち、hFcでタグ付けされた無関係のタンパク質、「対照タンパク質」)を包含する]、提示され
たように、100pMのBMP2、100pMのBMP4、10nMのBMP6、800pMのBMP9又は4nMのBMP10と共に
細胞に添加した。Victor X(Perkin Elmer社)を用いて37℃及び5%CO2でのインキュベート
の5.5時間後にルシフェラーゼ活性を検出し、Prism 5ソフトウェア(GraphPad社)での非線形回帰(4-パラメーターロジスティックス)を使用して結果を分析した。
【0210】
以下のTable 27(表27)で示されるように、H4H10446P2及びH4H10430Pは、試験されたBMPのどれも阻害しなかったが、それに対して試験された他のアクチビンA抗体(H4H10429及びH4H10436P2)及びActRIIB-hFcは全て、いくつかのBMPのある程度の阻害を示した。H4H10429Pは、それぞれ8.1nM及び3.5nMのIC50値でBMP9及びBMP10の阻害を示したが、BMP2、BMP4
及びBMP6を阻害しなかった。H4H10436P2は、抗体の最大濃度でBMP2及びBMP4の弱い阻害並びに>100nMのIC50値でのBMP10の阻害を示したが、BMP6及びBMP9のいかなる阻害も示さな
かった。ActRIIB-hFcは、2nM及び1nMのIC50値でのBMP9及びBMP10の阻害を示したが、BMP2、BMP4、及びBMP6を阻害しなかった。対照分子[すなわち、アイソタイプ対照抗体(対照mAb)及びhFcでタグ付けされた無関係のタンパク質(対照タンパク質)]はどちらも、BMPのい
ずれの阻害も見られなかったが、それに対してBMP2、BMP4、BMP6、BMP9、又はBMP10単独(すなわち、抗体又はhFcタグを有するタンパク質なし)は、それぞれ34pM、63pM、4.5nM、260pM、及び2.5nMのEC50値でW-20-17/BRE-luc細胞を活性化した。
【0211】
【表27】
【0212】
(実施例13)
インビボで抗アクチビンA抗体H4H10446P2での処置は腎線維症を低減する
腎線維症の片側尿管結紮(UUO)マウスモデルで、特異的な本発明の抗アクチビンA抗体、H4H10446P2の腎線維症に対する作用を決定した。UUOモデルは、右の腎機能をそのままに
しながら左の尿管を完全に結紮することによって開発された。簡単に言えば、ケタミン/
キシラジン麻酔下のマウスにおいて、側腹切開により左の尿管にアクセスし、5-0の絹糸
を使用して5mm間隔で尿管の近位の3分の1に2本の結紮糸を付けることにより、UUOを行っ
た。類似の様式で、ただし尿管に結紮糸をまったく付けない偽手術を行った。このモデルにおいて、UUOから14日以内に腎臓において重度の線維症が発症し、ヒドロキシプロリン
法と称される試料中のヒドロキシプロリン量の直接測定により腎臓のコラーゲンを測定することによって、これを評価した。ヒドロキシプロリンは、コラーゲンに特有の成分であり、ほとんどの哺乳動物の組織においてコラーゲンのアミノ酸組成のおよそ14.4%を占め
る[Cochraneら、J Am Soc Nephrol 16:3623~30(2005)]。ヒドロキシプロリン法によりコラーゲン含量を測定するために、最初に凍結した腎臓試料を真空室を使用して一晩乾燥させた。次いで乾燥させた腎臓組織試料を氷冷したNaCl/NaHCO3溶液中でホモジナイズし、
次いで6MのHClを使用して加水分解した。その後試料を真空遠心分離機を使用して乾燥さ
せ、次いで0.1MのHClを使用して再度水和した。再度水和した試料中のヒドロキシプロリ
ンを、300mMのクロラミンT(Sigma社、番号857319)を用いて酸化し、次いでエールリッヒ
試薬[60%過塩素酸(Sigma社、番号311413)中の、3.5Mのp-ジメチルアミノベンズアルデヒ
ド(FW:149.19、Sigma社、番号39070)]を添加して発色させた。最後に、分光光度計を使用して、558nmで試料の吸光度を測定し、これを公知の濃度を有するヒドロキシプロリン標
準(Sigma社、番号H5534)と比較して、腎臓のヒドロキシプロリン含量を決定した。次いで測定されたヒドロキシプロリン値に6.94の係数を掛けて、コラーゲン値を決定した。UUO
から14日に、実質損傷の結果として乾燥腎臓質量が減少した。16週齢の雄C57BL/6マウス(Taconic farms, Inc.社)に偽(n=10)又はUUO(n=20)手術を行った。UUO手術を受けたマウスを次いで2つの群に分けた。各UUO群は、H4H10446P2(40mg/kg、n=10)又はいかなる公知の
マウスタンパク質にも結合していないアイソタイプ対照抗体(40mg/kg、n=10)のいずれか
の皮下注射を、手術前の日から始めて、手術後の1、3、6、8、10、及び13日に受けた。偽手術を受けたマウスは、この時間中にUUO群と同じスケジュールを使用してビヒクル(滅菌PBS)を受けた。手術から14日目に全てのマウスを屠殺した。腎臓質量を測定し、液体窒素を使用して腎臓を急速冷凍し、コラーゲン含量を測定するまで-80℃で維持した。ヒドロ
キシプロリン法を使用して腎臓のコラーゲン含量を測定し、次いで総腎臓コラーゲン(μg)又は腎臓質量に正規化した腎臓コラーゲン(μg/mg乾燥質量)のいずれかとして表した。
チューキーの多重比較検定を併用した一元配置ANOVAを使用して統計的分析を行った。以
下のTable 28(表28)において、結果は、各処置群の総腎臓コラーゲン、正規化した腎臓コラーゲン、及び乾燥腎臓質量を要約し、これらを平均±SEMとして表した。
【0213】
【表28】
【0214】
Table 28(表28)で示されるように、総腎臓コラーゲンと腎臓質量に正規化した腎臓コラーゲンはどちらも、偽の操作をされたマウスと比較して、UUOマウスにおいて有意に増加
した。H4H10446P2で処置したUUOマウスは、アイソタイプ対照抗体で処置したUUOマウスと比較して、総腎臓コラーゲンと腎臓質量に正規化した腎臓コラーゲンの両方において有意な低減を示し(線維化したコラーゲンのおよそ45%の低減)、これは、抗アクチビンA抗体により腎臓において線維症の減少が起こることを示している。H4H10446P2で処置したUUOマ
ウスは、アイソタイプ対照抗体で処置したUUOマウスと比較して乾燥腎臓質量の増加を示
し、これは、抗アクチビンA抗体で処置したマウスにおける実質の保存を示している。
【0215】
(実施例14)
アクチビンAを過剰発現するマウスにおける体重及び筋肉量に対するH4H10446P2の作用
マウスにおいて高いレベルのアクチビンAを中和することにおけるH4H10446P2の効能を
評価するために、全長アクチビンAをコードするDNAコンストラクトの流体力学的送達(HDD;hydrodynamic delivery)により、C57BL/6マウス(10週齢)でアクチビンAを過剰発現させ
た。マウスを3つの群(n=5~6/群)に無作為に分け、1つの群にはアイソタイプ対照抗体の
存在下で生理食塩水/2.5μgのDNAコンストラクト対照の混合物を注射し、2つの群にはア
イソタイプ対照抗体又はH4H10446P2の存在下でアクチビンAを含有する生理食塩水/2.5μgのDNAコンストラクトの混合物を注射した。0日目にDNAコンストラクトを注射し、0日目及び4日目に抗体を2.5mg/kg(2回の注射で)で7日間投与した。筋肉質量を正規化した質量と
して報告した(すなわち、筋肉質量を、実験開始時に測定された体重に正規化した)。体重に関する結果は、開始時の体重からの平均の変化として示される。前脛骨筋(TA)及び腓腹筋(GA)の筋肉に関する結果は、図4で、コンストラクト対照+アイソタイプ対照抗体群のHDD送達と比較した、各群における平均パーセント変化(±標準誤差)として示される。一元
又は二元配置ANOVAとそれに続くチューキーのHSD検定でデータを分析した。
【0216】
図4で見られるように、HDD後の7日に、アイソタイプ対照抗体で処置したマウスにおけ
るアクチビンAの送達は、体重(-10.81±2.46%)並びに脛骨筋及び腓腹筋の質量(それぞれ-13.96±1.85%及び-10.34±1.51%)の有意な減少をもたらした(アイソタイプ対照に対してp<0.01の有意性)。H4H10446P2で処置したマウスにおけるアクチビンAの送達は、7日間の処置の最後に、体重(-1.49±1.98%)並びに脛骨筋及び腓腹筋の質量の有意な減衰をもたらした(それぞれ-2.57±1.26%及び-1.77±2.42%)。
【0217】
本発明は、本明細書で説明した具体的な実施形態による範囲に限定されない。実際に、前述の説明及び添付の図面から、本明細書で説明されたものに加えて本発明の様々な変更形態が当業者には明らかになると予想される。このような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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