(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】塗工用ダイおよび塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240530BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240530BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2022500245
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046916
(87)【国際公開番号】W WO2021161649
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020021931
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄祐
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 鷹則
(72)【発明者】
【氏名】丸山 浩
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107606(JP,A)
【文献】特開2005-270704(JP,A)
【文献】特開2008-264765(JP,A)
【文献】特開2004-160274(JP,A)
【文献】特開2014-229479(JP,A)
【文献】特開2018-183748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
B05C 7/00-21/00
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗工体に第1塗料および第2塗料を塗布する塗工用ダイであって、
第1本体と、
第2本体と、
前記第1塗料を一時的に溜める第1マニホールドと、
前記第2塗料を一時的に溜める第2マニホールドと、
前記第1本体と前記第2本体との間に配置され、前記塗工用ダイおよび前記被塗工体が並ぶ第1方向と交わる第2方向に長く、前記第1塗料および前記第2塗料を前記被塗工体に向けて吐出する吐出口と、
前記第1本体および前記第2本体に挟まれ、前記吐出口に近づくにつれて前記第1本体および前記第2本体が接近するように厚みが薄くなる中間部材と、
前記第1本体および前記中間部材に挟まれ、前記第1マニホールドから前記吐出口に向かう第1流路を区画する第1シムと、
前記第2本体および前記中間部材に挟まれ、前記第2マニホールドから前記吐出口に向かう第2流路を区画する第2シムと、
前記第1流路および前記第2流路が合流し、前記吐出口と連通する合流路と、を備え、
前記第1シムは、前記第2方向で前記吐出口を挟んで並ぶ一対の第1腕部を有し、
前記第2シムは、前記第2方向で前記吐出口を挟んで並ぶ一対の第2腕部を有し、
各第1腕部は、前記第1シムの厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第1雌部と、前記第1雌部と前記第2方向に並び前記第1雌部よりも厚い第1雄部と、を先端に有し、
各第2腕部は、前記第2シムの厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第2雌部と、前記第2雌部と前記第2方向に並び前記第2雌部よりも厚い第2雄部と、を先端に有し、
前記第1雌部および前記第2雄部と、前記第1雄部および前記第2雌部とは互いに係合する、
塗工用ダイ。
【請求項2】
前記第1雌部および前記第2雌部は、前記第1方向で前記塗工用ダイの外側に向かうにつれて厚みが徐々に薄くなるテーパ状である、
請求項1に記載の塗工用ダイ。
【請求項3】
前記第1雌部に配置されて前記第1本体および前記第2雄部で挟まれて圧縮されるシール部材、および前記第2雌部に配置されて前記第2本体および前記第1雄部で挟まれて圧縮されるシール部材の少なくとも一方を備える、
請求項1または2に記載の塗工用ダイ。
【請求項4】
前記第2シムは、前記第1シムよりも前記被塗工体の搬送方向の下流側に配置され、
前記第2雄部は、前記第2方向において前記第1雄部よりも前記吐出口側に配置され、前記第1方向で前記塗工用ダイの外側に向かうにつれて前記吐出口から離れる方向に傾斜するテーパ部を前記吐出口側を向く側面に有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗工用ダイ。
【請求項5】
前記被塗工体は、二次電池の集電体であり、
前記第1塗料および前記第2塗料の少なくとも一方は、二次電池の電極スラリーである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗工用ダイ。
【請求項6】
被塗工体に第1塗料および第2塗料を塗布する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗工用ダイと、
前記塗工用ダイへ前記第1塗料を供給する第1供給装置と、
前記塗工用ダイへ前記第2塗料を供給する第2供給装置と、を備える、
塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工用ダイおよび塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリチウムイオン二次電池等の製造分野では、1つの塗工用ダイで異なる塗液を積層して塗布する2層塗工装置が知られている。2層塗工装置に用いられる塗工用ダイについて、例えば特許文献1には、第1本体と、第2本体と、第1本体および第2本体で挟まれる断面三角形状の中間本体と、第1本体に設けられる第1塗料の液溜め部から延びる第1液通路と、第1液通路に連通した第1吐出口と、第2本体に設けられる第2塗料の液溜め部から延びる第2液通路と、第2液通路に連通した第2吐出口と、を有し、第1吐出口から吐出した第1塗料と第2吐出口から吐出した第2塗料とを積層して被塗工体に塗布する積層ダイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
上述した従来の塗工用ダイは、各塗料を吐出するための吐出口を別々に有する。この場合、上層塗膜を形成する塗料の吐出口は、下層塗膜を形成する塗料の吐出口よりも、下層塗膜の厚み分だけ被塗工体から離間させる必要がある。しかしながら、吐出口が被塗工体から遠ざかると、被塗工体に到達した時点での塗料の吐出圧が不十分になって、高精度な塗膜形成が困難になる。
【0005】
このため、上層塗膜用の吐出口を被塗工体から離間させられる距離には限界がある。一方で、上層塗膜用の吐出口を被塗工体に近づけると、下層塗膜用の吐出口と被塗工体との隙間(塗工ギャップ)が過度に狭くなってしまうおそれがある。下層塗膜用の吐出口と被塗工体との塗工ギャップが狭いと、塗料に含まれる異物が塗工ギャップに引っ掛かり、塗膜にスジができたり被塗工体が切断されたりしてしまい、高精度な塗膜形成が困難になる。
【0006】
本開示のある態様は、塗工用ダイである。この塗工用ダイは、被塗工体に第1塗料および第2塗料を塗布する塗工用ダイであって、第1本体と、第2本体と、第1塗料を一時的に溜める第1マニホールドと、第2塗料を一時的に溜める第2マニホールドと、第1本体と第2本体との間に配置され、塗工用ダイおよび被塗工体が並ぶ第1方向と交わる第2方向に長く、第1塗料および第2塗料を被塗工体に向けて吐出する吐出口と、第1本体および第2本体に挟まれ、吐出口に近づくにつれて第1本体および第2本体が接近するように厚みが薄くなる中間部材と、第1本体および中間部材に挟まれ、第1マニホールドから吐出口に向かう第1流路を区画する第1シムと、第2本体および中間部材に挟まれ、第2マニホールドから吐出口に向かう第2流路を区画する第2シムと、第1流路および第2流路が合流し、吐出口と連通する合流路と、を備える。第1シムは、第2方向で吐出口を挟んで並ぶ一対の第1腕部を有し、第2シムは、第2方向で吐出口を挟んで並ぶ一対の第2腕部を有する。各第1腕部は、第1シムの厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第1雌部と、第1雌部と第2方向に並び第1雌部よりも厚い第1雄部と、を先端に有する。各第2腕部は、第2シムの厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第2雌部と、第2雌部と第2方向に並び第2雌部よりも厚い第2雄部と、を先端に有する。第1雌部および第2雄部と、第1雄部および第2雌部とは互いに係合する。
【0007】
本開示の他の態様は、塗工装置である。この塗工装置は、被塗工体に第1塗料および第2塗料を塗布する上記態様の塗工用ダイと、塗工用ダイへ第1塗料を供給する第1供給装置と、塗工用ダイへ第2塗料を供給する第2供給装置と、を備える。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【0009】
本開示によれば、2層塗工において塗膜の形成精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る塗工装置の模式図である。
【
図2B】
図2Bは、第1部材を組み付けていない塗工用ダイの斜視図である。
【
図4】
図4は、塗工用ダイの吐出口を含む領域を拡大して示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態2に係る塗工用ダイにおける第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、第1腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、塗工用ダイにおける第1腕部および第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、第2腕部の先端部を拡大して示す斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態3に係る塗工用ダイの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、実施の形態3に係る塗工用ダイの一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る塗工装置の模式図である。塗工装置1は、塗工用ダイ2と、第1供給装置4と、第2供給装置6と、を備える。
【0013】
塗工用ダイ2は、被塗工体8に第1塗料10および第2塗料12を塗布する器具である。塗工用ダイ2は、第1塗料10を一時的に溜める第1マニホールド14と、第2塗料12を一時的に溜める第2マニホールド16と、を有する。また、塗工用ダイ2は、第1塗料10および第2塗料12を被塗工体8に向けて吐出する吐出口18を有する。吐出口18は、塗工用ダイ2および被塗工体8が並ぶ第1方向A(つまりダイの吐出方向)と交わる第2方向Bに長く、後述する第1本体42および第2本体44が並ぶ第3方向Cに狭いスリット状である。
【0014】
本実施の形態に係る塗工装置1は、二次電池の電極板を製造するために用いられる。二次電池の電極板は、集電体に電極スラリーを塗布して乾燥させたシート状の電極素材である。したがって本実施の形態では、被塗工体8は、二次電池の集電体である。また、第1塗料10および第2塗料12の少なくとも一方は、二次電池の電極スラリーである。一例として、第1塗料10および第2塗料12は、組成の異なる電極スラリーである。また他の例として、第1塗料10は電極スラリーであり、第2塗料12は耐熱材としてのセラミック材料等を含有する耐熱層用の塗料である。集電体は、例えば金属箔である。電極スラリーは、例えば正極活物質または負極活物質と、溶媒等との混合物である。一般的なリチウムイオン二次電池の場合、正極の電極板は、アルミ箔上に、コバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等の正極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。また、負極の電極板は、銅箔上に、黒鉛等の負極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。
【0015】
塗工用ダイ2は、吐出口18がバックアップロール20の周面と所定の間隔をあけて対向するように配置される。被塗工体8は、バックアップロール20の回転によって、バックアップロール20と吐出口18とが対向する位置に連続搬送される。本実施の形態では、被塗工体8は、バックアップロール20と吐出口18との隙間に鉛直方向下方から鉛直方向上方に進むように搬送される。
【0016】
第1供給装置4は、塗工用ダイ2へ第1塗料10を供給する装置である。第1供給装置4は、第1タンク22と、第1供給管路24と、第1ポンプ26と、第1バルブ28と、を有する。第1タンク22は、第1塗料10を貯留する。第1供給管路24は、第1タンク22と第1マニホールド14とを接続する。第1供給管路24には、第1ポンプ26が設けられ、第1ポンプ26の駆動により第1タンク22から塗工用ダイ2側に第1塗料10が送られる。また、第1供給管路24における塗工用ダイ2と第1ポンプ26との間には、第1バルブ28が設けられる。第1バルブ28の開閉によって、塗工用ダイ2への第1塗料10の供給と非供給とを切り替えることができる。
【0017】
第2供給装置6は、塗工用ダイ2へ第2塗料12を供給する装置である。第2供給装置6は、第2タンク30と、第2供給管路32と、第2ポンプ34と、第2バルブ36と、を有する。第2タンク30は、第2塗料12を貯留する。第2供給管路32は、第2タンク30と第2マニホールド16とを接続する。第2供給管路32には、第2ポンプ34が設けられ、第2ポンプ34の駆動により第2タンク30から塗工用ダイ2側に第2塗料12が送られる。また、第2供給管路32における塗工用ダイ2と第2ポンプ34との間には、第2バルブ36が設けられる。第2バルブ36の開閉によって、塗工用ダイ2への第2塗料12の供給と非供給とを切り替えることができる。
【0018】
第1供給装置4および第2供給装置6は各バルブと各タンクとを接続する戻し管路を有し、各バルブは間欠バルブで構成されてもよい。間欠バルブは、タンクから供給される塗料を各供給管路を介して塗工用ダイ2に供給する状態と、各タンクから供給される塗料を戻し管路を介してタンクに戻す状態とを切り替え可能である。間欠バルブが塗工用ダイ2に塗料を供給することで、塗工用ダイ2から塗料を吐出して被塗工体8に塗膜38を形成することができる。間欠バルブがタンクに塗料を戻すことで、塗工用ダイ2からの塗料の吐出を停止して被塗工体8に塗膜38の非形成部40を形成することができる。非形成部40は、電極のセンターリードの貼り付け等に用いられる。なお、第1供給装置4および第2供給装置6の構造は、上述のものに限定されない。
【0019】
図2Aは、塗工用ダイ2の斜視図である。
図2Bは、第1部材を組み付けていない塗工用ダイ2の斜視図である。
図3は、塗工用ダイ2の分解斜視図である。
図4は、塗工用ダイ2の吐出口を含む領域を拡大して示す断面図である。塗工用ダイ2は、第1本体42と、第2本体44と、吐出口18と、中間部材46と、第1シム48と、第2シム50と、合流路52と、を備える。
【0020】
第1本体42は、第2方向Bに長い長尺状であり、第1マニホールド14と、第1供給管路24が接続される接続部54と、を有する。第1マニホールド14は、第1本体42の第2本体44側を向く表面に第2方向Bに長い凹部を有し、この凹部が第1マニホールド14を構成する。第1マニホールド14は、第2方向Bに長い矩形状の開口を有する。第1供給管路24は、接続部54を介して第1マニホールド14に連通される。なお、第1マニホールド14および接続部54は、中間部材46に設けられてもよい。
【0021】
第2本体44は、第2方向Bに長い長尺状であり、第2マニホールド16と、第2供給管路32が接続される接続部56と、を有する。第2マニホールド16は、第2本体44の第1本体42側を向く表面に第2方向Bに長い凹部を有し、この凹部が第2マニホールド16を構成する。第2マニホールド16は、第2方向Bに長い矩形状の開口を有する。第2供給管路32は、接続部56を介して第2マニホールド16に連通される。なお、第2マニホールド16および接続部56は、中間部材46に設けられてもよい。
【0022】
第1本体42は、被塗工体8の搬送方向(バックアップロール20の回転方向)の上流側に配置され、第2本体44は、被塗工体8の搬送方向の下流側に配置される。また、本実施の形態の塗工用ダイ2は、第1本体42が鉛直方向下方、第2本体44が鉛直方向上方に位置するように姿勢が定められる。また、バックアップロール20の周面と対向する第1本体42と第2本体44との隙間に吐出口18が配置される。したがって、吐出口18が延びる第2方向Bは水平方向である。
【0023】
中間部材46は、第2方向Bに長い長尺状であり、第1本体42および第2本体44に挟まれる。中間部材46は、吐出口18に近づくにつれて第1本体42および第2本体44が接近するように厚みが薄くなる。本実施の形態の中間部材46は、第2方向Bから見て、吐出口18に近づくにつれて細くなる三角形状である。例えば、中間部材46は、第2方向Bから見て二等辺三角形状あるいは直角三角形状である。
【0024】
第1シム48は、略U字状のシートであり、第1本体42および中間部材46に挟まれる。第1シム48は、第1マニホールド14から吐出口18に向かう第1流路58を区画する。具体的には、第1シム48は、枠部60と、一対の第1腕部62と、を有する。第1本体42、第1シム48および中間部材46の配列方向(第3方向C)から見て、枠部60は、第1マニホールド14の開口の周縁部のうち、吐出口18側で第2方向Bに延びる辺を除いた3辺を囲う。一対の第1腕部62は、枠部60の第2方向Bにおける両端からバックアップロール20側に延びる。第1流路58は、枠部60の内周面と、一対の第1腕部62の互いに対向する面と、第1本体42および中間部材46の互いに対向する面と、で区画される。したがって、一対の第1腕部62は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ。
【0025】
第2シム50は、略U字状のシートであり、第2本体44および中間部材46に挟まれる。したがって、第2シム50は、第1シム48よりも被塗工体8の搬送方向の下流側に配置される。第2シム50は、第2マニホールド16から吐出口18に向かう第2流路64を区画する。具体的には、第2シム50は、枠部66と、一対の第2腕部68と、を有する。第3方向Cから見て、枠部66は、第2マニホールド16の開口の周縁部のうち、吐出口18側で第2方向Bに延びる辺を除いた3辺を囲う。一対の第2腕部68は、枠部66の第2方向Bにおける両端からバックアップロール20側に延びる。第2流路64は、枠部66の内周面と、一対の第2腕部68の互いに対向する面と、第2本体44および中間部材46の互いに対向する面と、で区画される。したがって、一対の第2腕部68は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ。
【0026】
合流路52は、塗工用ダイ2の内部で第1流路58および第2流路64が合流する空間である。合流路52は、第1方向Aにおいて中間部材46の頂角と吐出口18との間に配置されて、吐出口18と連通している。第1マニホールド14から第1流路58を流れて合流路52に至った第1塗料10と、第2マニホールド16から第2流路64を流れて合流路52に至った第2塗料12とは、合流路52内で積層される。合流路52内で積層された第1塗料10および第2塗料12は、積層された状態で吐出口18から吐出されて被塗工体8に塗布される。これにより、2層構造の塗膜38が形成される。第1流路58は、第2流路64よりも被塗工体8の搬送方向の上流側に配置される。このため、第1塗料10が塗膜38の下層を構成し、第2塗料12が塗膜38の上層を構成する。
【0027】
続いて、第1シム48および第2シム50の構造について詳細に説明する。
図5Aおよび
図5Bならびに
図6Aおよび
図6Bは、第1腕部62および第2腕部68の先端部を拡大して示す斜視図である。
図5Aおよび
図5Bは、第2方向Bにおける吐出口18の一端側に配置される第1腕部62および第2腕部68を図示している。
図6Aおよび
図6Bは、第2方向Bにおける吐出口18の他端側に配置される第1腕部62および第2腕部68を図示している。また、
図5Aおよび
図5Bは、第1本体42側から観察した各腕部を、
図6Aおよび
図6Bは、第2本体44側から観察した各腕部を図示している。本実施の形態では、第2方向Bにおける吐出口18の一端側に配置される第1腕部62および第2腕部68と、他端側に配置される第1腕部62および第2腕部68とは、第2方向Bにおける吐出口18の中心を通り第1方向Aに延びる仮想線を対称軸とする線対称の形状を有する。
【0028】
各第1腕部62は、第1雌部70と、第1雄部72と、を先端に有する。前記「先端」は、第1方向Aで中間部材46の頂部よりも吐出口18側の領域を意味する。第1雌部70と第1雄部72とは、第2方向Bに並ぶ。第1雌部70は、第1腕部62の先端において第1シム48の厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた部分である。一方、第1雄部72は、第1腕部62の先端において第1シム48の厚み方向に切り欠かれていない部分である。したがって、第1雌部70は第1雄部72よりも薄く(厚みが0の場合も含む)、第1雄部72は第1雌部70よりも厚い。また、少なくとも第1雄部72は、第1方向Aにおいて吐出口18と実質的に同じ位置まで延びている。
【0029】
本実施の形態では、各第1腕部62の先端のうち第2方向Bにおける一部の領域が、第1シム48の厚み方向で全部が切り欠かれており、この切り欠かれた部分が第1雌部70を構成している。つまり、第1雌部70の厚みは0である。一方、第1雄部72は、第1シム48の厚みと同じ厚みを有する。したがって、各第1腕部62は、第1方向Aで吐出口18と略同一の位置まで突出する凸部(第1雄部72)と、第1方向Aで吐出口18から退避した凹部(第1雌部70)とが第2方向Bに並んだ先端形状を有する。
【0030】
各第2腕部68は、第2雌部74と、第2雄部76と、を先端に有する。第2雌部74と、第2雄部76とは、第2方向Bに並ぶ。第2雌部74は、第2腕部68の先端において第2シム50の厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた部分である。一方、第2雄部76は、第2腕部68の先端において第2シム50の厚み方向に切り欠かれていない部分である。したがって、第2雌部74は第2雄部76よりも薄く(厚みが0の場合も含む)、第2雄部76は第2雌部74よりも厚い。また、少なくとも第2雄部76は、第1方向Aにおいて吐出口18と実質的に同じ位置まで延びている。
【0031】
本実施の形態では、各第2腕部68の先端のうち第2方向Bにおける一部の領域が、第2シム50の厚み方向で全部が切り欠かれており、この切り欠かれた部分が第2雌部74を構成している。つまり、第2雌部74の厚みは0である。一方、第2雄部76は、第2シム50の厚みと同じ厚みを有する。したがって、各第2腕部68は、第1方向Aで吐出口18と略同一の位置まで突出する凸部(第2雄部76)と、第1方向Aで吐出口18から退避した凹部(第2雌部74)とが第2方向Bに並んだ先端形状を有する。
【0032】
各第1腕部62と各第2腕部68とは、第1方向Aで吐出口18に近づくにつれて互いに接近していく。そして、中間部材46の頂部よりも吐出口18側で、第1雌部70および第2雄部76と、第1雄部72および第2雌部74とが互いに係合する。つまり、各第1腕部62の第1雌部70および第1雄部72と、各第2腕部68の第2雌部74および第2雄部76とは、第2方向Bで互い違いに配列されている。したがって、第1雌部70と第2雄部76とは第2方向Bで同じ位置に配置され、第1雄部72と第2雌部74とは第2方向Bで同じ位置に配置される。第1方向Aにおける吐出口18と中間部材46の頂角との間の領域で第1腕部62の先端と第2腕部68の先端とが合流すると、互いに対向する第1雌部70と第2雄部76とが重なり、互いに対向する第1雄部72と第2雌部74とが重なる。
【0033】
第1雌部70と第2雄部76とが重なることで、第1腕部62と第2腕部68とが第3方向Cに膨らむことなく、第2雄部76の吐出口18側への進出が許容される。また、第1雄部72と第2雌部74とが重なることで、第1腕部62と第2腕部68とが第3方向Cに膨らむことなく、第1雄部72の吐出口18側への進出が許容される。
【0034】
また、第1雌部70および第2雄部76を係合させ、第1雄部72および第2雌部74を係合させることで、第1雄部72の第1雌部70側を向く側面72aと、第2雄部76の第2雌部74側を向く側面76aとを互いに当接させることができる。つまり、第2方向Bから見て、各第1腕部62の先端と各第2腕部68の先端とが重なり合う。これにより、合流路52に到達した第1塗料10および第2塗料12が、塗工用ダイ2の第2方向Bの端部から漏れ出ることを抑制することができる。
【0035】
本実施の形態では、各第2腕部68の第2雄部76が、第2方向Bにおいて第1雄部72よりも吐出口18側に配置される。したがって、吐出口18は、第1本体42、第2本体44、および一対の第2腕部68の第2雄部76によって区画される。吐出口18は、第2方向Bに長い略矩形状であり、被塗工体8の搬送方向の上流側で第2方向Bに延びる第1辺は、第1本体42の先端部で構成される。また、搬送方向の下流側で第2方向Bに延びる第2辺は、第2本体44の先端部で構成される。また、第3方向Cに延びて第1辺および第2辺の端部をつなぐ2辺は、各第2雄部76の互いに対向する側面76bで構成される。したがって、吐出口18の第3方向Cの寸法は、第2雄部76の厚みで決まる。
【0036】
第2雄部76は、吐出口18側を向く側面76bにテーパ部78を有する。テーパ部78は、第1方向Aで塗工用ダイ2の外側(被塗工体8側)に向かうにつれて吐出口18から離れる方向に傾斜する。吐出口18を形成する側面76bの先端にテーパ部78を設けることで、第2方向Bで吐出口18の延在範囲の外側に、塗料を垂れさせることができる。これにより、塗膜38の幅方向(第2方向B)の端部の厚みが過大になることを抑制できる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る塗工用ダイ2は、第1塗料10を溜める第1マニホールド14を有する第1本体42と、第2塗料12を溜める第2マニホールド16を有する第2本体44と、塗工用ダイ2および被塗工体8が並ぶ第1方向Aと交わる第2方向Bに長く、第1塗料10および第2塗料12を被塗工体8に向けて吐出する吐出口18と、第1本体42および第2本体44に挟まれ、吐出口18に近づくにつれて第1本体42および第2本体44が接近するように厚みが薄くなる中間部材46と、第1本体42および中間部材46に挟まれ、第1マニホールド14から吐出口18に向かう第1流路58を区画する第1シム48と、第2本体44および中間部材46に挟まれ、第2マニホールド16から吐出口18に向かう第2流路64を区画する第2シム50と、第1流路58および第2流路64が合流し、吐出口18と連通する合流路52と、を備える。
【0038】
第1シム48は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ一対の第1腕部62を有し、第2シム50は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ一対の第2腕部68を有する。各第1腕部62は、第1シム48の厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第1雌部70と、第1雌部70と第2方向Bに並び第1雌部70よりも厚い第1雄部72と、を先端に有する。各第2腕部68は、第2シム50の厚み方向に少なくとも一部が切り欠かれた第2雌部74と、第2雌部74と第2方向Bに並び第2雌部74よりも厚い第2雄部76と、を先端に有する。そして、第1雌部70および第2雄部76と、第1雄部72および第2雌部74とが互いに係合する。つまり、第1腕部62および第2腕部68は、それぞれの先端に互い違いに凹部と凸部とを有し、一方の腕部の凹部と他方の腕部の凸部とが係合する。本実施の形態では、凹部および凸部は、各シムの厚み方向の凹凸であるとともに、各シムの面方向の凹凸でもある。
【0039】
また、本実施の形態に係る塗工装置1は、被塗工体8に第1塗料10および第2塗料12を塗布する、上記構成を備える塗工用ダイ2と、塗工用ダイ2へ第1塗料10を供給する第1供給装置4と、塗工用ダイ2へ第2塗料12を供給する第2供給装置6と、を備える。
【0040】
塗工用ダイ2の内部に設けた合流路52で第1塗料10と第2塗料12とを合流させた後に1つの吐出口18から吐出する構造とすることで、第1塗料10と第2塗料12とに別々の吐出口を設けたダイに課せられていた塗工ギャップの制約を緩和することができる。つまり、吐出口を1つにすることで、吐出口が2つの場合に比べて吐出口の第3方向Cの総寸法を小さくすることができ、塗工ギャップの許容範囲を広げることができる。これにより、上層塗膜用の吐出口と被塗工体8との大きい塗工ギャップにより生じ得る上層塗膜用塗料の吐出圧の低下と、下層塗膜用の吐出口と被塗工体8との小さい塗工ギャップにより生じ得るスジの発生や被塗工体の切断と、を抑制することができる。よって、2層塗工において塗膜38の形成精度を高めることができる。
【0041】
また、第1シム48の第1雌部70と第2シム50の第2雄部76とを係合させ、第1シム48の第1雄部72と第2シム50の第2雌部74とを係合させて、第1雄部72と第2雄部76とを交差させることで、合流路52内の塗料が塗工用ダイ2の第2方向Bの端部から漏れ出ることを抑制することができる。よって、塗膜38の形成精度をより高めることができる。また、塗料が無駄に消費されることを抑制することができる。また、塗料の漏れを第1シム48および第2シム50の一部分で抑制しているため、塗料漏れを防ぐための部材を別に設ける場合に比べて、部品点数を削減でき、また塗工用ダイ2の構造の簡素化を図ることができる。
【0042】
また、第2シム50は、第1シム48よりも被塗工体8の搬送方向の下流側に配置され、第2雄部76は、第2方向Bにおいて第1雄部72よりも吐出口18側に配置される。そして、第2雄部76は、第2腕部68の先端に向かうにつれて吐出口18から離れる方向に傾斜するテーパ部78を吐出口18側を向く側面76bに有する。これにより、塗膜38の膜厚の均一化を図ることができる。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態2は、第1雌部70および第2雌部74の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0044】
図7Aは、実施の形態2に係る塗工用ダイ2における第1腕部62および第2腕部68の先端部を拡大して示す斜視図である。
図7Bは、第1腕部62の先端部を拡大して示す斜視図である。
図8Aは、塗工用ダイ2における第1腕部62および第2腕部68の先端部を拡大して示す斜視図である。
図8Bは、第2腕部68の先端部を拡大して示す斜視図である。
図7A、
図7B、
図8Aおよび
図8Bは、第2方向Bにおける吐出口18の一端側に配置される第1腕部62および/または第2腕部68を図示している。
【0045】
また、
図7Aは第1本体42側から観察した各腕部を図示し、
図7Bは第2本体44側から観察した第1腕部62を図示し、
図8Aは第2本体44側から観察した各腕部を図示し、
図8Bは第1本体42側から観察した第2腕部68を図示している。また、第2方向Bにおける吐出口18の他端側に配置される第1腕部62および第2腕部68は、一端側の第1腕部62および第2腕部68と、第2方向Bにおける吐出口18の中心を通り第1方向Aに延びる仮想線を対称軸とする線対称の形状を有するため図示を省略する。
【0046】
第1シム48は、一対の第1腕部62を有する。一対の第1腕部62は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ。各第1腕部62は、第1雌部70と、第1雄部72と、を先端に有する。第1雌部70と第1雄部72とは、第2方向Bに並ぶ。本実施の形態の第1雌部70は、第1腕部62の先端において第1シム48の厚み方向に一部が切り欠かれた部分である。切り欠き量は、第1方向Aで塗工用ダイ2の外側(被塗工体8側)に向かうにつれて徐々に増えている。このため、第1雌部70は、第1方向Aで塗工用ダイ2の外側に向かうにつれて厚みが徐々に薄くなるテーパ状である。第1雄部72は、第1腕部62の先端において第1シム48の厚み方向に切り欠かれていない部分である。したがって、第1雌部70は第1雄部72よりも薄く、第1雄部72は第1雌部70よりも厚い。
【0047】
第2シム50は、一対の第2腕部68を有する。一対の第2腕部68は、第2方向Bで吐出口18を挟んで並ぶ。各第2腕部68は、第2雌部74と、第2雄部76と、を先端に有する。第2雌部74と第2雄部76とは、第2方向Bに並ぶ。本実施の形態の第2雌部74は、第2腕部68の先端において第2シム50の厚み方向に一部が切り欠かれた部分である。切り欠き量は、第1方向Aで塗工用ダイ2の外側に向かうにつれて徐々に増えている。このため、第2雌部74は、第1方向Aで塗工用ダイ2の外側に向かうにつれて厚みが徐々に薄くなるテーパ状である。第2雄部76は、第2腕部68の先端において第2シム50の厚み方向に切り欠かれていない部分である。したがって、第2雌部74は第2雄部76よりも薄く、第2雄部76は第2雌部74よりも厚い。
【0048】
各第1腕部62と各第2腕部68とは、第1方向Aにおいて吐出口18に近づくにつれて互いに接近していく。そして、合流路52において第1雌部70および第2雄部76と、第1雄部72および第2雌部74とが互いに係合する。つまり、第1腕部62および第2腕部68は、それぞれの先端に互い違いに凹部と凸部とを有し、一方の腕部の凹部と他方の腕部の凸部とが係合する。本実施の形態では、凹部および凸部は、各シムの厚み方向の凹凸である。
【0049】
この状態で、第1雌部70のテーパ面が第2雄部76の表面に当接し、第2雌部74のテーパ面が第1雄部72の表面に当接する。これにより、第1腕部62と第2腕部68との接触面積を増やすことができ、合流路52内の塗料が塗工用ダイ2の第2方向Bの端部から漏れ出ることをより抑制することができる。
【0050】
(実施の形態3)
実施の形態3は、塗工用ダイ2がシール部材を備える点を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0051】
図9Aおよび
図9Bは、実施の形態3に係る塗工用ダイ2の一部を拡大して示す斜視図である。本実施の形態に係る塗工装置1は、シール部材80を備える。シール部材80は、エチレンプロピレンゴム等の可撓性の高い材料で構成されるパッキンである。シール部材80は、第1雌部70および第2雌部74の少なくとも一方に配置される。
図9Aおよび
図9Bには、第1雌部70に配置されたシール部材80が図示されている。第1雌部70は、第2方向Bにおける一部に切り欠き部82を有し、切り欠き部82にシール部材80が嵌め込まれている。
【0052】
第1雌部70に配置されるシール部材80は、加圧前の状態で第1シム48の厚みよりも厚い。そして、第1本体42および第2雄部76で挟まれて圧縮される。シール部材80の一部は、第1本体42と中間部材46とで挟まれて圧縮される。シール部材80が第2雌部74に配置される場合、シール部材80は、加圧前の状態で第2シム50の厚みよりも厚く、第2本体44および第1雄部72で挟まれて圧縮される。シール部材80の一部は、第2本体44と中間部材46とで挟まれて圧縮される。これにより、第1腕部62と第2腕部68との隙間をシール部材80で塞ぐことができ、合流路52内の塗料が塗工用ダイ2の第2方向Bの端部から漏れ出ることをより抑制することができる。
【0053】
図9Aに示すように、合流路52の近傍にシール部材80が配置される場合、シール部材80は、合流路52側の側面が第1方向Aで塗工用ダイ2の外側に向かうにつれて合流路52に近づくように傾斜することが好ましい。例えば、シール部材80は、中間部材46の主表面の法線方向から見て、合流路52側に斜辺が位置し、第1腕部62の先端側に底辺が位置する略直角三角形状である。これにより、シール部材80を合流路52に近づけて合流路52からの塗料の漏れをより抑制しながら、シール部材80と合流路52との間に介在する第1腕部62の強度が低下することを抑制することができる。
【0054】
図9Bに示すように、塗工用ダイ2の第2方向Bにおける端部の近傍にシール部材80が配置される場合、シール部材80の形状は特に限定されない。例えば、シール部材80の形状としては、組み付け姿勢の制限が少ない正方形状等が採用される。これにより、シール部材80の組み付け作業の簡略化を図ることができる。
【0055】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 塗工装置
2 塗工用ダイ
4 第1供給装置
6 第2供給装置
8 被塗工体
10 第1塗料
12 第2塗料
14 第1マニホールド
16 第2マニホールド
18 吐出口
38 塗膜
42 第1本体
44 第2本体
46 中間部材
48 第1シム
50 第2シム
52 合流路
58 第1流路
62 第1腕部
64 第2流路
68 第2腕部
70 第1雌部
72 第1雄部
74 第2雌部
76 第2雄部
78 テーパ部
80 シール部材