IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7496411抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法
<>
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図1
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図2
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図3
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図4
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図5
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図6
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図7
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図8
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図9
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図10
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図11
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図12
  • 特許-抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】抗ブタTCN1モノクローナル抗体ならびにその作製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240530BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240530BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240530BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240530BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20240530BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20240530BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20240530BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240530BHJP
   G01N 33/53 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G01N33/53 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022507783
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020045318
(87)【国際公開番号】W WO2021030166
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】62/884,711
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マノジ・シャーマ
(72)【発明者】
【氏名】タティアナ・マリーヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ユリィ・スミルノフ
(72)【発明者】
【氏名】プラタップ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ベドツィク
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526973(JP,A)
【文献】特表2006-520466(JP,A)
【文献】米国特許第05843887(US,A)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,1977年,Vol.495,pp.336-348
【文献】PLoS ONE,2011年,Vol.6, No.5 e20638,pp.1-7
【文献】FEBS Journal,2005年,Vol.272,pp.3887-3898
【文献】Clinical Biochemistry,2007年,Vol.40,pp.1392-1397
【文献】Clinical Chemistry,2000年,46:10,pp.1643-1649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-19/00
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体またはその抗原結合断片は:
(A)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片;
(B)配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片;
(C)配列番号38のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号40のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号43のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号44のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号45のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片;
(D)配列番号50のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号51のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号55のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号56のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片;ならびに
(E)配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号69のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片
からなる群から選択される前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(A)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号3および20の少なくとも1つの少なくとも一部を含むブタTCN1のエピトープに特異的に結合する;
(B)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号21の少なくとも一部を含むブタTCN1のエピトープに特異的に結合する;
(C)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号22の少なくとも一部を含むブタTCN1のエピトープに特異的に結合する;または
(D)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号23の少なくとも一部を含むブタTCN1のエピトープに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片としてさらに定義される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
(A)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号7と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(B)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号25と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(C)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号37と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(D)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号49と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;または
(E)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号61と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
(A)の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号13と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(B)の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号30と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(C)の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号42と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;
(D)の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号54と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する;または
(E)の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号66と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項6】
(A)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号7および13のアミノ酸配列をそれぞれ有する;
(B)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号25および30のアミノ酸配列をそれぞれ有する;
(C)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号37および42のアミノ酸配列をそれぞれ有する;
(D)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号49および54のアミノ酸配列をそれぞれ有する;または
(E)の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号61および66のアミノ酸配列をそれぞれ有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
完全長免疫グロブリン分子、scFv、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、およびそれらの組合せから選択されるものとしてさらに定義される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
精製された抗体またはその抗原結合断片としてさらに定義される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による援用の記載
本出願は、2019年8月9日に出願された米国仮出願第62/884,711号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものである。上述の特許/特許出願の内容全体を参照によって本明細書に明示的に組み入れる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する陳述
該当なし。
【背景技術】
【0003】
コバラミンは必須栄養素であり、腸による吸収のためには内因子と結合しなければならないB群の天然の水溶性ビタミンである。ビタミンB12(シアノコバラミン)は、造血、神経代謝、DNAおよびRNA生成、ならびに炭水化物、脂肪、およびタンパク質代謝に必要である。ビタミンB12は代謝サイクルにおける鉄機能を改善し、コリン合成において葉酸を補助する。ビタミンB12代謝は葉酸の代謝と相互接続しており、ビタミンB12の欠乏は悪性貧血、巨赤芽球性貧血、および神経学的病変の原因となる。
【0004】
ハプトコリン、R因子、およびRタンパク質としても公知のトランスコバラミンI(TCN1)は、口の唾液腺によって産生される糖タンパク質である。体内では、TCN1は主に、TCN1/ビタミンB12複合体を産生することによって胃の中の酸分解からコバラミン(ビタミンB12)を守る役目を果たす。複合体がより中性の十二指腸に移動すると、膵臓プロテアーゼはTCN1を分解し、それにより遊離ビタミンB12を放出し、遊離ビタミンB12は今度は回腸細胞による吸収のために内因子に結合する。
【0005】
ブタ内因子(Hog Intrinsic Factor)(HIF)製剤は、典型的には診断的ビタミンB12アッセイで使用される。しかし、ブタTCN1(または、コブタ(Pig)TCN1、ブタ(Swine)TCN1、もしくはブタ(hog)Rタンパク質)は、ブタ胃粘膜の粗抽出物中の主なHIF関連タンパク質汚染物質であり、HIF製剤にブタTCN1が存在すると、HIF製剤が使用されるいずれのB12アッセイも完全性を損なう可能性がある。それ故に、HIF製剤に存在するいかなるTCN1も推定および/または除去されることが必要不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、現在、B12アッセイで使用されるHIF製剤からブタTCN1を推定および/または除去するのに利用可能な抗ブタTCN1モノクローナル抗体の商業的供給源はない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、当技術分野には、抗ブタTCN1モノクローナル抗体、ならびに従来技術の短所および欠点を克服する、HIF製剤からブタTCN1を推定および/またはブタTCN1を除去する新たな改善された方法のニーズがある。本開示が対象とするのは、そのような抗体、前記抗体を含有するキット、ならびに前記抗体を作製および使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】Allenら(J.Biоl.Chem.(1973)248(10):3670~3680頁)に従ってビタミンB12-セファロースのカラムでブタ胃粘膜の粗粉末抽出物から精製され、本開示の目的のために「部分的精製ブタRタンパク質」として呼ばれるビタミンB12結合タンパク質の全画分を示す図である。パネルA:還元条件のSDS-PAGEは、画分が天然ブタRタンパク質(幅の広い70~92kDaのバンド)、およびブタ内因子(幅の狭い55kDaのバンド)を含有することを示している。パネルB:等電点電気泳動は、両方のグリコシル化タンパク質--ブタRタンパク質およびブタ内因子--の等電点がほぼ同一であることを実証している(pI<4.5)。
図2】イノシシ由来のトランスコバラミンI(TCN1)(配列番号1)および内因子(HIF)(配列番号17)のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。ブタ内因子と相同性を共有しないペプチド29~39(本明細書ではR1とも呼ばれ、配列番号2に指定される)、ペプチド80~89(本明細書ではR2とも呼ばれ、配列番号3に指定される)、およびペプチド200~215(本明細書ではR3とも呼ばれ、配列番号4に指定される)をモノクローナル抗体生成のために選択した。
図3】タンパク質小球表面のペプチドR1、R2、およびR3の位置が、モデルTCN1結晶構造(PDB 4KKJ)の正面(パネルA)および上面(パネルB)図で示されている図である。
図4】異なるブタTCN1ペプチド-BSAコンジュゲートで免疫したA/Jマウスの免疫血清を、合成ペプチド、ペプチド-OVAコンジュゲート、または部分的精製天然ブタRタンパク質でコーティングしたELISAプレートで滴定した図である。見てわかるように、動物は全て、それぞれのペプチドおよびペプチド-ОVAコンジュゲートに対して高い抗体価を発現した;しかし、R1-BSAおよびR2-BSA動物由来の血清のみが部分的精製天然ブタRタンパク質を結合した。
図5】171B 1G5 mAbの抗原結合特性を示す図である。このモノクローナル抗体は、R2-BSAコンジュゲートに対して生成された。見てわかるように、171B 1G5 mAbはR2ペプチドに対して高度に特異的であり、天然および組換えブタTCN1タンパク質の両方を認識する。ブタ内因子に対する交差反応性は観察されなかった。
図6】部分的精製天然ブタRタンパク質で免疫したBalb/C(A)およびA/J(B)マウスの免疫血清を、合成ペプチドまたは部分的精製天然ブタRタンパク質でコーティングしたELISAプレートで滴定した図である。見てわかるように、両方のマウス株は、ブタTCN1に対して高い抗体価を発現したが、合成R1、R2、またはR3ペプチドに対しては発現しなかった。
図7】天然ブタTCN1に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択を示す図である。ハイブリドーマ上清を、recコブタTCN1および部分的精製天然ブタRタンパク質の両方の結合についてELISAでスクリーニングした。見てわかるように、171J 3F1および171J 3A6クローンによって産生されたモノクローナル抗体は、天然ブタRタンパク質よりはるかに良くrecコブタ(Pig)TCN1を結合した;モノクローナル抗体171J 9G7は両方の抗原を同じようによく認識し、171J 5H12 mAbは組換えRタンパク質より天然ブタRタンパク質を強く結合した。ブタ内因子に対する交差反応性は観察されなかった。
図8】ブタTCN1ペプチドマイクロアレイに対してアッセイしたマウスモノクローナル抗体のエピトープマッピングの概要を示す図である。エピトープマッピングの結果は、mAbがブタTCN1に対して特異的であることを確認するものであり、171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、および171J 5H12抗体に固有の線状エピトープが同定された。モノクローナル抗体171J 9G7は、いかなる線状ブタTCN1またはブタ内因子ペプチドも結合しなかった。
図9】171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、および171J 5H12抗体の線状エピトープの表面位置が、モデルTCN1結晶構造(PDB 4KKJ)の正面(パネルA)および上面(パネルB)図で示されている図である。
図10】従来の方法で作製した171B 1G5モノクローナル抗体対組換え作製171B 1G5モノクローナル抗体を使用した組換えコブタTCN1のELISA滴定結果を示す図である。見てわかるように、2つの滴定曲線を重ね合わせることができることから、このデータはモノクローナル抗体の正確な配列決定を確認するものである。
図11】ブタ胃粘膜の粉末粗抽出物から171J 5H12 mAbを用いたカラムで親和性精製された天然ブタRタンパク質を示す図である。パネルA:クマシーブルーRで染色された還元条件のSDS-PAGEは、天然ブタRタンパク質の試料(幅の広い70~92kDaのバンド)が均一であることを示している。パネルB:等電点電気泳動、BioSafe Coomassie染色は、天然ブタTCN1がpI<4.5の強酸性タンパク質であることを示している。
図12】モノクローナル抗体171J 5H12を用いるELISAアッセイを使用したブタ胃粘膜の粗抽出物中の天然ブタTCN1の検出を示す図である。検出限界は少なくとも1ng/mLである。
図13】171J 5H12 mAb-セファロースによるブタ内因子試料研磨を示す図である。171J 5H12モノクローナル抗体を用いた親和性樹脂での枯渇前および後のHIF試料を、天然ブタTCN1の存在についてELISAアッセイでテストした図である。見てわかるように、枯渇後、ブタTCN1汚染のレベルは、総タンパク質の2.7%から0.1%まで著しく減少した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の少なくとも1つの実施形態を例示的な表現および結果として詳細に説明する前に、本開示は、その応用において、以下の説明に記載される構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施もしくは実行することができる。そのため、本明細書で使用される表現は、最も広い可能性のある範囲および意味を与えることが意図され;ならびに実施形態は、例示的である-網羅的でないことが意図される。また、本明細書で使用される表現および用語は説明の目的のためであり、限定として見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0010】
特に本明細書で定義されない限り、本開示と関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数用語は複数形を含むものとし、複数用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載された細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションと関連して利用される命名法、およびそれらの手法は、当技術分野で周知であり一般的に使用されるものである。標準的な手法が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換に使用される(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応および精製手法は製造者の仕様書に従って、または当技術分野で一般的に達成されるようにもしくは本明細書に記載されているように行われる。上述の手法および手順は一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書全体にわたって引用され、論じられている様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているように行われる。例えば、参照によって本明細書に組み入れるSambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))およびColiganら Current Protcols in Immunology(Current Protcols、Wiley Interscience(1994))を参照。本明細書に記載された分析化学、合成有機化学、および医薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および手法は、当技術分野で周知であり一般的に使用されるものである。標準的な手法は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0011】
本明細書中に言及される全ての特許、公開特許出願、および非特許刊行物は、本開示が属する技術分野の当業者の技能のレベルを示している。本出願の任意の部分で参照される全ての特許、公開特許出願、および非特許刊行物は、個々の特許または刊行物が参照によって組み入れられると具体的および個別に示される場合と同程度に、その全体が参照によって明示的に組み入れられる。
【0012】
本明細書に開示される組成物、キット、および/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく作成され、実行される。組成物、キット、および/または方法は特定の実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく変形形態が組成物、キット、および/または方法に適用され、ならびに本明細書に記載された方法の工程または一連の工程において適用されることが当業者に明らかとなろう。当業者に明らかな全てのそのような類似した代替物および変更形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨、範囲、および概念内であると見なされる。
【0013】
本開示により利用されるとき、以下の用語は、特に指示のない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0014】
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む(comprising)」と合わせて使用される場合「1つ」を意味し得るが、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは1つを超える」の意味とも一致する。そのため、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が特に明らかに指示しない限り複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」への言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物、またはより大きい数の化合物を指すことがある。用語「複数」は、「2つ以上」を指す。
【0015】
用語「少なくとも1つ」の使用は、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに限定されない1つおよび1つを超える任意の量を含むと理解されるであろう。用語「少なくとも1つ」は、それが接続する用語に応じて100または1000またはそれ以上まで拡大し得;さらに、より高い上限値が満足のいく結果を生むこともあることため、100/1000の量は限定と見なされるべきではない。さらに、用語「X、Y、およびZの少なくとも1つ」の使用は、Xのみ、Yのみ、およびZのみ、ならびにX、Y、およびZの任意の組合せを含むと理解されるであろう。序数の用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、2つ以上の項目間を区別するためのみであり、例えば、別の項目と比べて1つの項目の任意の順序(sequence or order)もしくは重要性、または追加の任意の順序を示唆することを意味するものではない。
【0016】
特許請求の範囲の用語「または」の使用は、代替物のみを指すと明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するのに使用される。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかによって満たされる:Aは真である(または存在する)およびBは偽である(または存在しない)、Aは偽である(または存在しない)およびBは真である(または存在する)、ならびにAおよびBは両方とも真である(または存在する)。
【0017】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「1つの例(one example)」、「例えば」、または「例(an example)」への任意の言及は、実施形態と関連して記載される特定の要素、構成、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における語句「いくつかの実施形態では」または「1つの例」の出現は、必ずしも全てが例えば同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例への言及は全て、特許請求の範囲への限定として解釈されるべきではない。
【0018】
本出願全体を通して、用語「約」は、値が組成物/装置/デバイスに関する固有の誤差の変動、値を決定するのに使用される方法、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すのに使用される。例えば、ただし限定の目的ではなく、用語「約」が利用されるとき、指定された値は、そのような変動が開示された方法を実施するのに適切であり、当業者に理解されることから、明記された値からプラスまたはマイナス20パーセント、もしくは15パーセント、もしくは12パーセント、もしくは11パーセント、もしくは10パーセント、もしくは9パーセント、もしくは8ペーセント、もしくは7パーセント、もしくは6パーセント、もしくは5パーセント、もしくは4パーセント、もしくは3パーセント、もしくは2パーセント、もしくは1パーセント異なってもよい。
【0019】
本明細書および請求項で使用される場合、単語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含むの任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有するの任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含むの任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有するの任意の形態)は包括的またはオープンエンドであり、追加の引用されていない要素または方法工程を排除しない。
【0020】
用語「またはそれらの組合せ」は本明細書で使用される場合、該用語に先行して列挙された項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つを含むことが意図され、特定の文脈において順序が重要であるならば、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むことが意図される。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの、1つまたはそれ以上の項目または用語の反復を含有する組合せが明示的に含まれる。当業者は、文脈から特に明らかでない限り、いかなる組合せにおいても典型的には項目または用語の数に制限はないことを理解するであろう。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、その後に記載される事象もしくは状況が完全に生じること、またはその後に記載される事象もしくは状況がかなりの範囲もしくは程度まで生じることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、用語「実質的に」は、その後に記載される事象または状況が少なくとも80%の割合、または少なくとも85%の割合、または少なくとも90%の割合、または少なくとも95%の割合で生じることを意味する。用語「実質的に隣接する」は、2つの項目が互いに100%隣接すること、または2つの項目が互いに近接内にあるが、互いに100%隣接はしていないこと、または2つの項目の一方の一部は他方の項目に100%隣接はしていないが、他方の項目の近接内にあることを意味し得る。
【0022】
用語「類似体」および「誘導体」は本明細書で互換的に使用され、所与の化合物と同じ基本的炭素骨格および炭素官能性をその構造中に含むが、それに加えて1つまたはそれ以上の置換を含有することもできる物質を指す。用語「置換」は本明細書で使用される場合、化合物の少なくとも1つの置換基の残基Rとの置き換えを指すと理解されるであろう。ある特定の非限定的な実施形態では、Rは、H、ヒドロキシル、チオール、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択される)、C1~C4化合物(以下の1つ:場合により置換された直鎖、分枝または環状アルキル、および直鎖、分枝または環状アルケニルから選択され、任意選択の置換基は、1つまたはそれ以上のアルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルから選択される)を含んでもよく、これらの各々は場合により置換され、任意選択の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、カルボキシ、および-C(O)-アルキルの1つまたはそれ以上から選択される。
【0023】
用語「試料」は本明細書で使用される場合、本開示により利用される任意のタイプの生体試料を含むと理解されるであろう。利用される流体生体試料の例には、全血またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、喀痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸水、鼻咽頭液、それらの組合せなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
用語「特異的結合パートナー」は、本明細書で使用される場合、TCN1の検出の目的でこれと特異的に結合することができる任意の分子を指すと理解されるであろう。例えば、ただし限定としてではなく、特異的結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機マトリックス)、またはそれらの任意の組合せおよび/または誘導体、ならびにマクロフィリン結合医薬品に特異的に結合することができる任意の他の分子であってもよい。
【0025】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で使用される。用語「ポリペプチド」は本明細書で使用される場合、ポリペプチド配列の天然のタンパク質、タンパク質断片、または類似体を指す総称である。したがって、天然のタンパク質、タンパク質断片、および類似体はポリペプチド属の種である。用語「単離されたペプチド/ポリペプチド/タンパク質」は本明細書で使用される場合、cDNA、組換えRNA、またはそれらの合成起源もしくは一部の組合せのペプチド/ポリペプチド/タンパク質を指し、その起源、または派生元によって、「単離されたペプチド/ポリペプチド/タンパク質」は:(1)天然に見出される他のペプチド/ポリペプチド/タンパク質と結合していない、(2)同じ供給源由来の他のペプチド/ポリペプチド/タンパク質を含まない、例えば、マウスタンパク質を含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、および/または(4)天然には生じない。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アミノ官能性および酸官能性の両方を含み、天然に存在するアミノ酸のポリマーに含まれ得る、天然であれ合成であれ全ての分子を包含する。例示的なアミノ酸には、天然に存在するアミノ酸;その類似体、誘導体、および同類物;バリアント側鎖を有するアミノ酸類似体;ならびに上述のいずれかの全ての立体異性体が挙げられる。
【0027】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはその類似体である、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定義された遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾はポリマーの組み立ての前または後で与えられる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断される。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合などによってさらに修飾することができる。用語「単離された核酸」および「単離されたポリヌクレオチド」は互換的に使用される;核酸またはポリヌクレオチドは、これが:(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全部もしくは一部と結合していない、(2)天然には連結されないポリヌクレオチドに連結されている、または(3)より長い配列の一部として天然には生じないならば、「単離された」と見なされる。
【0028】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、これが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントがライゲートされる環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされるウイルスベクターである。ある特定のベクターは、これが導入される宿主細胞中で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込み、それにより宿主ゲノムと一緒に複製することができる。さらに、ある特定のベクターは、遺伝子の発現を駆動することができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単純に、「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0029】
用語「天然に存在する」は対象に適用されるように本明細書で使用される場合、対象が天然に見出されるという事実を指す。例えば、天然の供給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室で人によって意図的にまたはその他の方法で修飾されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、天然に存在する。用語「天然に存在する」は、本明細書では用語「天然(native)」と互換的に使用される。
【0030】
本明細書で言及される用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能におよび特異的に結合することを意味する。本発明の概念によりペプチド/ポリペプチド/タンパク質をコードするポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらの断片は、非特異的な核酸への大量の検出可能な結合を最小化するハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知のおよび本明細書で論じられる選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するのに使用される。一般に、本発明の概念のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および断片と、目的とする核酸配列の間の核酸配列相同性は、少なくとも80%、より典型的には、相同性の増加と共に少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%となるであろう。2つのアミノ酸配列は、それらの配列間に部分的または完全な同一性があれば相同である。例えば、85%の相同性は、2つの配列が最大一致で整列された場合、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。ギャップ(マッチされている2つの配列のいずれかの)は最大一致で許され;ギャップ長5以下が好ましく(ただし非限定的である)、2以下がより好ましい(ただし非限定的である)。あるいは、2つのタンパク質配列(またはそれらに由来する、少なくとも30アミノ酸長のポリペプチド配列)が、変異データマトリックスおよびギャップペナルティー6以上でプログラムALIGNを使用して(標準偏差単位で)5を超えるアライメントスコアを有するならば、該配列は相同(この用語が本明細書で使用される場合の)である。Dayhoff,M.O.、Atlas of Protein Sequence and Structure、101~110頁(第5巻、National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻の補遺2、1~10頁を参照。2つの配列またはその部分は、ALIGNプログラムを使用して最適に整列された場合、それらのアミノ酸が50%以上同一であるならば、より好ましくは相同である。用語「~に対応する」は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部と相同である(すなわち、厳密には進化的に関係のない同一である)こと、またはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書で使用される。対照的に、用語「~に相補的な」は、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同であることを意味するために本明細書で使用される。例示のために、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。
【0031】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列関係を記載するのに使用される:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的な同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基準として使用される定義された配列である;参照配列は、より大きな配列のサブセットであってもよく(例えば、配列表に示された完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントとして)、または完全なcDNAもしくは遺伝子配列を含んでもよい。一般に、参照配列は、少なくとも18ヌクレオチド長または6アミノ酸長、頻繁には少なくとも24ヌクレオチド長または8アミノ酸長、およびしばしば少なくとも48ヌクレオチド長または16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ(1)2つの分子間で類似した配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含んでもよく、(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間で異なる配列をさらに含んでもよいため、2つ(またはそれ以上)の分子間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つの分子の配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定および比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、少なくとも18個の隣接ヌクレオチド位置または6個のアミノ酸の概念上のセグメントを指し、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18個の隣接ヌクレオチドまたは6個のアミノ酸配列の参照配列と比較され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アライメントの参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して20パーセント以下の付加、欠失、置換など(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列するための配列の最適アライメントは、SmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math.、2:482頁(1981))の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.、48:443頁(1970))の相同性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman(Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)、85:2444頁(1988))の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Geneworks、もしくはMacVectorソフトウェアパッケージ、またはインスペクションによって行うことができ、様々な方法によって生成された最良のアライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高いパーセンテージの相同性をもたらす)が選択される。
【0032】
用語「配列同一性」は、比較ウィンドウにわたって2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が同一である(すなわち、ヌクレオチドごとまたは残基ごとに)ことを意味する。用語「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較し、両方の配列で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)または残基が生じる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中の位置の合計数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、該結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。用語「実質的な同一性」は本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示し、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18個のヌクレオチド(6個のアミノ酸)位置の比較ウィンドウ、頻繁には少なくとも24~48個ヌクレオチド(8~16個のアミノ酸)位置のウィンドウにわたって、参照配列と比較して少なくとも85パーセント配列同一性、例えば少なくとも90~95パーセント配列同一性、または少なくとも99パーセント配列同一性を有する配列を含み、配列同一性のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって参照配列の合計20パーセント以下となる欠失または付加を含み得る配列と参照配列を比較することによって算出される。参照配列はより大きな配列のサブセットであってもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、20個の従来のアミノ酸およびそれらの略号は従来の使用法に従う。参照によって本明細書に組み入れる、Immunology--A Synthesis(第2版、E.S.GolubおよびD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.(1991))を参照。20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)は、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸などの非天然アミノ酸、乳酸、および他の非従来型アミノ酸もまた、本開示のポリペプチドの適切な成分となり得る。非従来型アミノ酸の例には:ノルロイシン、4-ヒドロキシプロリン、α-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用されるポリペプチド表記では、標準的な使用法および慣例に従って左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0034】
ポリペプチドに適用されるとき、用語「実質的な同一性」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ重量を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合、少なくとも80パーセント配列同一性、例えば少なくとも90パーセント配列同一性、または少なくとも95パーセント配列同一性、または少なくとも99パーセント配列同一性を共有することを意味する。ある特定の(ただし非限定的な)実施形態では、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。特定の保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0035】
参照ポリペプチドの「バリアント」という用語は、参照ポリペプチドと比べて1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、欠失または挿入を有するポリペプチドを指す。アミノ酸置換は、「保存的」または「非保存的」であってもよい。「保存的」アミノ酸置換は、例えば、限定されるものではないがサイズおよび電荷などの類似した特性を有する別のアミノ酸による、ポリペプチド中のアミノ酸置換を指す。保存的置換は、側鎖に関連したアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般に、ファミリー:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンに分類される。より具体的にはファミリーは:セリンおよびスレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーであり;アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーであり;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族ファミリーであり;フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンとイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、スレオニンとセリンとの単離された置換、または構造的に関連したアミノ酸とのアミノ酸の類似した置換は、特に置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合、得られた分子の結合または特性に重大な影響を与えないと予想することは妥当である。アミノ酸変化が機能性ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、当業者によって容易に製造される。断片または類似体の好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界近くに生じる。構造ドメインおよび機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公開または専用配列データベースと比較して同定することができる。特定の(ただし非限定的な)実施形態では、構造および/または機能が公知の他のタンパク質に生じる配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンフォメーションドメインを同定するのに、コンピュータ比較法が使用される。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は公知である(Bowieら、Science、253:164頁(1991))。したがって、上述の例は、本開示による構造ドメインおよび機能ドメインを定義するのに使用される配列モチーフおよび構造的コンフォメーションを当業者が認識できることを実証するものである。
【0036】
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させ、および(5)そのような類似体の他の物理化学的または機能的特性を与えるまたは修飾するものである。類似体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な変異を含むことができる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(例えば、限定されるものではないが、保存的アミノ酸置換など)は、天然に存在する配列(例えば、限定されるものではないが、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分など)で行われる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変えるべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じるヘリックスを壊す傾向があるべきではなく、または親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊する傾向があるべきではない)。当技術分野で認識されているポリペプチド二次および三次構造の例は、それぞれ参照によって本明細書に組み入れる、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984));Introduction to Protein Structure(著作権)(BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));およびThorntonら(Nature 354:105頁(1991))に記載されている。
【0037】
用語「ポリペプチド断片」は本明細書で使用される場合、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列は天然に存在する配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。ポリペプチド断片は、参照ポリペプチドの長さに満たない任意の長さであってもよい。
【0038】
用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的には(ただし限定の目的ではなく)、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、上記のいずれかの断片、および上記のいずれかのコンジュゲートを、それらが分析物結合の所望の生物活性を示す限りにおいて包含する。故に、用語「抗体」または「抗体ペプチド」は、完全長免疫グロブリン分子(すなわち、インタクトな抗体)、または特異的抗原結合をめぐってインタクトな抗体と競合するその抗原結合断片を指す。抗原結合断片は、組換えDNA法、またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製される。抗原結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、限定されるものではないが、NANОBОDIES(登録商標)など)、およびインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片およびそのコンジュゲート、抗体代替タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体が挙げられる。例えば、Hudsоnら(Nature Med.(2003)9:129~134頁)を参照。抗体は、任意のタイプまたはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)もしくはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)であってもよい。
【0039】
抗体の「抗原結合断片」または「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に結合する能力を保持する抗体の1つまたはそれ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片によって果たされる。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、限定されるものではないが、NANOBODIES(登録商標)など)、単離CDRH3、およびインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体断片は、従来の組換え法および/または酵素法を使用して得られ、インタクトな抗体と同じように抗原結合についてスクリーニングされる。
【0040】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用される場合、その天然に存在するコンフォメーションで全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のより大きい方を指す。
【0041】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用される場合、その天然に存在するコンフォメーションで全ての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のより小さい方を指す。カッパおよびラムダ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0042】
用語「CDR」、およびその複数形「CDRs」は、抗体または抗体断片の相補性決定領域(CDR)を指し、抗体または抗体断片の結合特性を決定する。ほとんどの場合、3つのCDRが軽鎖可変領域(CDRL1、CDRL2およびCDRL3)に存在し、3つのCDRが重鎖可変領域(CDRH1、CDRH2およびCDRH3)に存在する。CDRは抗体分子の機能活性に寄与し、足場またはフレームワーク領域を含むアミノ酸配列によって分離される。様々なCDRのうち、CDR3配列、特にCDRH3は最も多様であり、したがって抗体特異性に最も強く寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの手法がある:(1)異種間配列多様性に基づくアプローチ(すなわち、その全体を参照によって組み入れる、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health、Bethesda、Md.(1987));および(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(その全体を参照によって組み入れる、Chothiaら、Nature、342:877頁(1989))。
【0043】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的結合することができるいかなるタンパク質決定基も含む。ある特定の実施形態では、エピトープは、抗体によって特異的に結合される抗原の領域である。エピトープ決定基は通常、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群を含む。ある特定の実施形態では、エピトープは、特異的三次元構造特徴(例えば、「コンフォメーショナルエピトープ」)、および特異的電荷特徴を有し得る。
【0044】
エピトープは、特定の抗体が両方のエピトープに特異的に結合するならば、もう1つのエピトープと「同一」として定義される。ある特定の実施形態では、異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが同一であるエピトープを含み得る。ある特定の実施形態では、同一であるエピトープが異なる一次アミノ酸配列を有し得る。同一のエピトープへの特異的結合をめぐって異なる抗体が競合する場合、異なる抗体は同一のエピトープに結合すると言われる。
【0045】
抗体がタンパク質および/または高分子の複合混合物中の抗原を優先的に認識する場合、抗体は抗原を「特異的に結合する」。ある特定の実施形態では、抗体は、特定のエピトープに特異的に結合する抗原結合部位を含む。ある特定のそのような実施形態では、異なる抗原がその特定のエピトープまたは近縁のエピトープを含む限り、抗体は異なる抗原を結合することができる。ある特定の場合では、例えば、異なる種由来の相同タンパク質が同一のエピトープを含み得る。ある特定の実施形態では、抗体は、10-6M、10-7M、10-8Mまたは10-9M以下の解離定数で抗原に特異的に結合する。抗体が受容体またはリガンド(すなわち、カウンター受容体)に特異的に結合する場合、抗体はリガンドへの受容体の接着を実質的に阻害し得る。本明細書で使用される場合、過剰な抗体が、リガンドに結合された受容体の量を少なくとも約20%、40%、60%または80%、85%、または90%低減するとき(インビトロ競合的結合アッセイで測定された場合)、抗体はリガンドへの受容体の接着を実質的に阻害する。
【0046】
「単離された」抗体は、産生された環境の成分から分離および/または回収されたものである。その産生環境の汚染成分は、診断的または治療的使用の妨げとなる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。ある特定の実施形態では、抗体は、測定可能なものとして少なくとも3つの異なる方法によって:1)ローリー法によって決定される抗体の50重量%超、例えば75重量%超、または85重量%超、または95重量%超、または99重量%超まで;2)スピニングカップシークエネーターの使用によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも10残基、例えば配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで;または3)クマシーブルーもしくは、あるいは、銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下のSDS-PAGEによって均一になるまで精製されるであろう。単離された抗体は、抗体が産生される環境の少なくとも1つの成分は存在しないため、組換え細胞内にインサイチュで抗体を含む。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって製造されるであろう。さらに、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない。しかし、単離された抗体は、他の関連する抗原に対して一部の交差反応性を有する可能性がある。
【0047】
用語「抗体変異体」は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が修飾されている抗体のアミノ酸配列バリアントを指す。そのような変異体は、抗体の重鎖または軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、例えば少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列と100%未満の配列同一性または類似性を必然的に有する。
【0048】
用語「モノクローナル抗体」は本明細書で使用される場合、同一のエピトープに特異的に結合する実質的に均一な抗体集団から得られた抗体を指す。すなわち、該集団を含む個々の抗体は、微量で存在し得る天然に存在する可能性がある変異を除いて同一である。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を対象とする。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、1つの作製方法でハイブリドーマ培養によって合成され、したがって他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、1つの実施形態では、本開示により作製されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature、256:495頁(1975))によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができる。
【0049】
本開示により利用されるモノクローナル抗体は、意図的な免疫化プロトコルの結果;疾患またはがんの過程で天然に抗体の産生をもたらす免疫応答の結果;ファージ由来抗体などを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法論によって作製することができる。上記に挙げたハイブリドーマ作製方法に加えて、本開示のモノクローナル抗体は、例えば、限定されるものではないが、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照);ファージディスプレイライブラリーからの抗体断片の単離(例えば、Clacksonら、Nature(1991)352:624~628頁;およびMarksら、J.Mol.Biol.(1991)222:581~597頁を参照);および様々な他のモノクローナル抗体作製手法(例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.)を参照)などの他の様々な方法によって産生することができる。
【0050】
抗体が得られると、例えば、個々のB細胞が同定され、および/またはモノクローナル抗体が産生されると、これらの抗体の可変領域をコードする配列が得られる。可変領域配列は、例えば、ハイブリドーマ、B細胞またはファージによって産生される抗体タンパク質を最初に配列決定し、コード核酸配列を決定して得ることができる。1つの実施形態では、免疫グロブリン可変領域(VHおよびVL)DNAまたはcDNAが代わりに配列決定される。抗体がハイブリドーマ細胞株または単離されたB細胞に由来する場合、可変領域をコードするcDNAは、例えば、Babcookら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843~7848頁(1996))、およびPCT公開第WO 92/02551号に記載された方法によってPCRを使用して増幅することができる。両方の参考文献の内容は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0051】
用語「中和抗体」または「中和する抗体」は、抗体が特異的に結合するエピトープを含むポリペプチドの少なくとも1つの活性を低減する抗体を指す。ある特定の実施形態では、中和抗体は活性をインビトロおよび/またはインビボで低減する。
【0052】
用語「抗原結合部位」は、抗原を特異的に結合することができる抗体の一部を指す。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は1つまたはそれ以上の抗体可変領域によって提供される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」は、対象種が、存在する優勢な種である(すなわち、モル基準で、対象種が組成物中の任意の他の個々の種より豊富である)ことを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約50%超、例えば約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および99%超を含むであろう。1つの実施形態では、対象種は、本質的に均一になる(従来の検出方法によって汚染種が組成物中に検出されない)まで精製され、組成物は本質的に単一の高分子種からなる。
【0054】
用語「薬剤」は、化学物質、化学物質の混合物、生体高分子、または生体物質から作られた抽出物を指す。ある特定の実施形態では、「薬剤」は本開示によるモノクローナル抗体であってもよい。
【0055】
用語「拮抗薬」は、タンパク質/酵素の活性を低減する薬剤を指す。用語「作動薬」は、タンパク質/酵素の活性を増加させる薬剤を指す。
【0056】
ここで、本発明の概念に移ると、ブタトランスコバラミンI(TCN1)上の固有の特異的エピトープが同定され、これらのエピトープおよび/またはブタTCN1の粗製剤に対するマウスモノクローナル抗体が生成された。HIF製剤はB12アッセイで一般的に使用されていることから、これらの抗体は(例えば、ただし限定の目的ではなく):粗ブタ腸壁製剤(ブタIFの単離において一般的に使用される)中のTCN1の推定;およびブタ内因子(HIF)製剤からのTCN1の除去(例えば、限定されるものではないが、親和性クロマトグラフィーの使用による)を含む、いくつかの潜在的用途を有する。
【0057】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関する。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、および/または20~23の少なくとも1つの少なくとも一部から選択されるブタTCN1のエピトープに特異的に結合する。
【0058】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、抗体は:(i)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1;(ii)配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2;(iii)配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3;(iv)配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1;(v)配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および(vi)配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3の1つまたはそれ以上を含む。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記の(i)~(vi)の2つ、3つ、4つ、または5つを含む。別の特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は上記の(i)~(vi)の全てを含む。
【0059】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、抗体は:(i)配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1;(ii)配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2;(iii)配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3;(iv)配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1;(v)配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および(vi)配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3の1つまたはそれ以上を含む。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記の(i)~(vi)の2つ、3つ、4つ、または5つを含む。別の特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は上記の(i)~(vi)の全てを含む。
【0060】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、抗体は:(i)配列番号38のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1;(ii)配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2;(iii)配列番号40のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3;(iv)配列番号43のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1;(v)配列番号44のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および(vi)配列番号45のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3の1つまたはそれ以上を含む。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記の(i)~(vi)の2つ、3つ、4つ、または5つを含む。別の特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は上記の(i)~(vi)の全てを含む。
【0061】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、抗体は:(i)配列番号50のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1;(ii)配列番号51のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2;(iii)配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3;(iv)配列番号55のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1;(v)配列番号56のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および(vi)配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3の1つまたはそれ以上を含む。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記の(i)~(vi)の2つ、3つ、4つ、または5つを含む。別の特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は上記の(i)~(vi)の全てを含む。
【0062】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関し、抗体は:(i)配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1;(ii)配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2;(iii)配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3;(iv)配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1;(v)配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2;および(vi)配列番号69のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3の1つまたはそれ以上を含む。特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記の(i)~(vi)の2つ、3つ、4つ、または5つを含む。別の特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は上記の(i)~(vi)の全てを含む。
【0063】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、(A)~(E)の群から選択される抗体またはその抗原結合断片に関し:(A)は、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片であり;(B)は、配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号31のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号33のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片であり;(C)は、配列番号38のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号40のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号43のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号44のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号45のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片であり;(D)は、配列番号50のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号51のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号52のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号55のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号56のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片であり;ならびに(E)は、配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号67のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、および配列番号69のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む抗体またはその抗原結合断片である。
【0064】
抗体またはその抗原結合断片は、ブタTCN1のあらゆるエピトープに特異的に結合し得る。例えば、限定するものではないが、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に示されるアミノ酸配列、またはその機能的等価物(例えば(限定されるものではないが)、配列番号1の少なくとも一部と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列など)のあらゆる部分に特異的に結合し得る。
【0065】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号2の少なくとも一部を含む。他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号3の少なくとも一部を含む。さらに他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号4の少なくとも一部を含む。さらに他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号20の少なくとも一部を含む。さらに他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号21の少なくとも一部を含む。さらに他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号22の少なくとも一部を含む。さらに他の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体/機能的断片が特異的に結合するブタTCN1のエピトープは、配列番号23の少なくとも一部を含む。
【0066】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、25、37、49、または61と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号7、25、37、49、または61と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する。
【0067】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、25、37、49、または61とアミノ酸約25個未満、アミノ酸約24個未満、アミノ酸約23個未満、アミノ酸約22個未満、アミノ酸約21個未満、アミノ酸約20個未満、アミノ酸約19個未満、アミノ酸約18個未満、アミノ酸約17個未満、アミノ酸約16個未満、アミノ酸約15個未満、アミノ酸約14個未満、アミノ酸約13個未満、アミノ酸約12個未満、アミノ酸約11個未満、アミノ酸約10個未満、アミノ酸約9個未満、アミノ酸約8個未満、アミノ酸約7個未満、アミノ酸約6個未満、アミノ酸約5個未満、アミノ酸約4個未満、アミノ酸約3個未満、アミノ酸約2個未満、またはアミノ酸約1個未満異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する。
【0068】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、上記の実施形態の代わりに、および/またはそれに加えて、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13、30、42、54、または66と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号13、30、42、54、または66と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0069】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号13、30、42、54、または66とアミノ酸約21個未満、アミノ酸約20個未満、アミノ酸約19個未満、アミノ酸約18個未満、アミノ酸約17個未満、アミノ酸約16個未満、アミノ酸約15個未満、アミノ酸約14個未満、アミノ酸約13個未満、アミノ酸約12個未満、アミノ酸約11個未満、アミノ酸約10個未満、アミノ酸約9個未満、アミノ酸約8個未満、アミノ酸約7個未満、アミノ酸約6個未満、アミノ酸約5個未満、アミノ酸約4個未満、アミノ酸約3個未満、アミノ酸約2個未満、またはアミノ酸約1個未満異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0070】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、25、37、49、もしくは61と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有し、および/または抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号13、30、42、54、もしくは66と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、25、37、49、もしくは61とアミノ酸約13個未満異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号13、30、42、54、もしくは66とアミノ酸約12個未満異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0071】
別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、25、37、49、もしくは61のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号13、30、42、54、もしくは66のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖可変領域を有する。
【0072】
別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号6と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号6と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を有する。
【0073】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号6とアミノ酸約100個未満、アミノ酸約90個未満、アミノ酸約80個未満、アミノ酸約75個未満、アミノ酸約70個未満、アミノ酸約65個未満、アミノ酸約60個未満、アミノ酸約55個未満、アミノ酸約50個未満、アミノ酸約45個未満、アミノ酸約40個未満、アミノ酸約35個未満、アミノ酸約30個未満、アミノ酸約25個未満、アミノ酸約24個未満、アミノ酸約23個未満、アミノ酸約22個未満、アミノ酸約21個未満、アミノ酸約20個未満アミノ酸、約19個未満、アミノ酸約18個未満、アミノ酸約17個未満、アミノ酸約16個未満、アミノ酸約15個未満、アミノ酸約14個未満、アミノ酸約13個未満、アミノ酸約12個未満、アミノ酸約11個未満、アミノ酸約10個未満、アミノ酸約9個未満、アミノ酸約8個未満、アミノ酸約7個未満、アミノ酸約6個未満、アミノ酸約5個未満、アミノ酸約4個未満、アミノ酸約3個未満、アミノ酸約2個未満、またはアミノ酸約1個未満異なるアミノ酸配列を含む重鎖を有する。
【0074】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、ならびにあるいはおよび/または上記の実施形態に加えて、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号12と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0075】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12とアミノ酸約45個未満、アミノ酸約40個未満、アミノ酸約35個未満、アミノ酸約30個未満、アミノ酸約25個未満、アミノ酸約24個未満、アミノ酸約23個未満、アミノ酸約22個未満、アミノ酸約21個未満、アミノ酸約20個未満、アミノ酸約19個未満、アミノ酸約18個未満、アミノ酸約17個未満、アミノ酸約16個未満、アミノ酸約15個未満、アミノ酸約14個未満、アミノ酸約13個未満、アミノ酸約12個未満、アミノ酸約11個未満、アミノ酸約10個未満、アミノ酸約9個未満、アミノ酸約8個未満、アミノ酸約7個未満、アミノ酸約6個未満、アミノ酸約5個未満、アミノ酸約4個未満、アミノ酸約3個未満、アミノ酸約2個未満、またはアミノ酸約1個未満異なるアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0076】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号6と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を有し、および/または抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号12と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号6とアミノ酸約47個未満異なるアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号12とアミノ酸約24個未満異なるアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0077】
別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する。
【0078】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体または機能的断片は、配列番号5と少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた重鎖、または配列番号24、36、48、もしくは60と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号5、24、36、48、もしくは60と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた重鎖可変領域を有する。
【0079】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、ならびに上記の実施形態の代わりにおよび/またはそれに加えて、抗体または機能的断片は、配列番号11と少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた軽鎖、または配列番号29、41、53、もしくは65と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号11、29、41、53、もしくは65と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、もしくは少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた軽鎖可変領域を有する。
【0080】
さらなる特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくは機能的断片は、配列番号5と少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた重鎖を有し、および/または抗体もしくは機能的断片は、配列番号11と少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた軽鎖を有する。さらなる特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくは機能的断片は、配列番号24、36、48、もしくは60と少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた重鎖可変領域を有し、および/または抗体もしくは機能的断片は、配列番号29、41、53、もしくは65とそれぞれ少なくとも約70%同一であるポリヌクレオチドによってコードされた軽鎖可変領域を有する。
【0081】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5と異なる配列によってコードされる重鎖、または配列番号24、36、48、もしくは60とヌクレオチド約100個未満、ヌクレオチド約90個未満、ヌクレオチド約80個未満、ヌクレオチド約75個未満、ヌクレオチド約70個未満、ヌクレオチド約60個未満、ヌクレオチド約50個未満、ヌクレオチド約45個未満、ヌクレオチド約40個未満、ヌクレオチド約35個未満、ヌクレオチド約30個未満、ヌクレオチド約225個未満、ヌクレオチド約20個未満、ヌクレオチド約15個未満、ヌクレオチド約10個未満、ヌクレオチド約9個未満、ヌクレオチド約8個未満、ヌクレオチド約7個未満、ヌクレオチド約6個未満、ヌクレオチド約5個未満、ヌクレオチド約4個未満、ヌクレオチド約3個未満、ヌクレオチド約2個未満、もしくはヌクレオチド約1個未満異なる配列によってコードされる重鎖可変領域を有する。
【0082】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、ならびに上記の実施形態の代わりにおよび/またはそれに加えて、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11と異なる配列によってコードされる軽鎖、または配列番号30、42、54、もしくは66とヌクレオチド約100個未満、ヌクレオチド約90個未満、ヌクレオチド約80個未満、ヌクレオチド約75個未満、ヌクレオチド約70個未満、ヌクレオチド約60個未満、ヌクレオチド約50個未満、ヌクレオチド約45個未満、ヌクレオチド約40個未満、ヌクレオチド約35個未満、ヌクレオチド約30個未満、ヌクレオチド約25個未満、ヌクレオチド約20個未満、ヌクレオチド約15個未満、ヌクレオチド約10個未満、ヌクレオチド約9個未満、ヌクレオチド約8個未満、ヌクレオチド約7個未満、ヌクレオチド約6個未満、ヌクレオチド約5個未満、ヌクレオチド約4個未満、ヌクレオチド約3個未満、ヌクレオチド約2未満、もしくはヌクレオチド約1個未満異なる配列によってコードされる軽鎖可変領域を有する。
【0083】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5とヌクレオチド約100個未満異なる配列によってコードされる重鎖、および/または配列番号11とヌクレオチド約70個未満異なる配列によってコードされる軽鎖を有する。さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号25、37、49、もしくは61とヌクレオチド約100個未満異なる配列によってコードされる重鎖可変領域、および/または配列番号29、41、53、もしくは65とそれぞれヌクレオチド約70個未満異なる配列によってコードされる軽鎖可変領域を有する。
【0084】
例えば(限定するものではないが)、ELISA、ウェスタンブロット、およびRIAならびに当技術分野で周知の他のタイプの適切なアッセイを含む、抗体の結合能を評価するための標準的なアッセイは当技術分野で公知である。抗体の結合動態(例えば、結合親和性)も、例えば(限定されるものではないが)Biacоre分析などによる当技術分野で公知の標準的なアッセイによって評価することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に記載された抗体は、約10-6M、約10-7M、約10-8M、約10-9M、または約10-10M以下の解離定数で上記の配列に結合する。1つの特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体は、約10-7M以下の解離定数でブタTCN1のエピトープに結合する。
【0085】
抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であってもよい。あるいは、抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル抗体またはその抗原結合断片であってもよい。
【0086】
ある特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長免疫グロブリン分子、scFv、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、およびそれらの組合せから選択されるものとしてさらに定義される。
【0087】
ある特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は単離される。特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は精製される。
【0088】
本開示はまた、上記本明細書に記載された抗体または機能的断片のいずれかと同一のエピトープに結合する抗体またはその機能的断片にも関する。
【0089】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)のエピトープに特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合断片を作製する方法にも関する。方法は、配列番号2~4および/または20~23の少なくとも1つのペプチドを含む抗原化合物でヒト以外の動物を免疫化する工程;ならびにヒト以外の動物の血漿から抗体またはその抗原結合断片を回収する工程を含む。
【0090】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、上記本明細書に記載された抗体またはその抗原結合断片のいずれかを産生するハイブリドーマに関する。
【0091】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)のエピトープに特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合断片を作製する方法に関する。該方法では、上記本明細書に記載されたハイブリドーマが培養されて、上記本明細書に記載された抗体またはその抗原結合断片のいずれかを産生する。少なくともある特定の非限定的な実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は回収される。
【0092】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、検出可能な標識に付着した、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片のいずれかを含むコンジュゲートにも関する。本開示により利用される検出可能な標識の非限定的な例には、酵素標識、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および微粒子標識、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。さらに、検出可能な標識は、直接的または間接的コンジュゲーションを介して抗体または機能的断片に付着することができる。
【0093】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、固体支持体に付着した、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片のいずれかを含むコンジュゲートにも関する。固体支持体への抗体/抗原結合断片の付着(直接的または間接的コンジュゲーションを介した)は、例えば(限定するものではないが)、カラムなどの親和性精製クロマトグラフィー基質をもたらす。
【0094】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片のいずれかをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0095】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片の重鎖または重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号5、24、36、48、または60と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号5、24、36、48、または60と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一である。
【0096】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、ならびに上記の実施形態の代わりにおよび/またはそれに加えて、抗体またはその抗原結合断片の重鎖または重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号11、29、41、53、または65と少なくとも約70%同一、例えば(限定されるものではないが)配列番号11、29、41、53、または65と少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約91%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一である。
【0097】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖もしくは重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号5、24、36、48、もしくは60と少なくとも約90%同一であり、および/または抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖もしくは軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号11、29、41、53、もしくは65とそれぞれ少なくとも約90%同一である。
【0098】
さらなる特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖もしくは重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号5、24、36、48、もしくは60と少なくとも約90%同一であり、および/または抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖もしくは軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドの一部は、配列番号11、29、41、53、もしくは65とそれぞれ少なくとも約90%同一である。
【0099】
別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖もしくは重鎖可変領域に対応する配列の部分、および/または抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖もしくは軽鎖可変領域に対応する配列の部分は、それぞれ配列番号5、24、36、48、もしくは60または配列番号11、29、41、53、もしくは65と、ヌクレオチド約100個未満、ヌクレオチド約90個未満、ヌクレオチド約80個未満、ヌクレオチド約75個未満、ヌクレオチド約70個未満、ヌクレオチド約60個未満、ヌクレオチド約50個未満、ヌクレオチド約45個未満、ヌクレオチド約40個未満、ヌクレオチド約35個未満、ヌクレオチド約30個未満、ヌクレオチド約25個未満、ヌクレオチド約20個未満、ヌクレオチド約15個未満、ヌクレオチド約10個未満、ヌクレオチド約9個未満、ヌクレオチド約8個未満、ヌクレオチド約7個未満、ヌクレオチド約6個未満、ヌクレオチド約5個未満、ヌクレオチド約4個未満、ヌクレオチド約3個未満、ヌクレオチド約2個未満、またはヌクレオチド約1個未満異なる。
【0100】
さらに別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖もしくは重鎖可変領域に対応する配列の部分は、配列番号5、24、36、48、もしくは60とヌクレオチド約100個未満異なり、および/または抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖もしくは軽鎖可変領域に対応する配列の部分は、配列番号11、29、41、53、または65とヌクレオチド約70個未満異なる。
【0101】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターに関する。
【0102】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む組換え宿主細胞に関する。本開示のある特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載またはさもなければ企図されるベクターのいずれかを含む組換え宿主細胞に関する。
【0103】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタトランスコバラミン-1(TCN1)に特異的に結合することができる抗体またはその抗原結合断片を作製する方法に関する。方法は:(a)ポリヌクレオチドによってコードされた抗体またはその抗原結合断片の発現を可能にする条件下の細胞培養で、本明細書に記載またはさもなければ企図される組換え宿主細胞のいずれかを培養する工程と;(b)細胞培養から抗体またはその抗原結合断片を単離する工程とを含む。
【0104】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタ内因子(HIF)製剤中に存在するTCN1を検出する方法に関する。方法は:TCN1がHIF製剤中に存在するならば抗体/TCN1複合体が形成される条件下で、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片のいずれかとHIF製剤を接触させる工程と;形成された抗体-TCN1複合体の量が、HIF製剤中に存在するTCN1の量に正比例する、形成されたいずれかの抗体/TCN1複合体を検出する工程とを含む。
【0105】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、上記本明細書に記載された標識は、抗体/TCN1複合体の検出において使用するための抗体/機能的断片に付着する。
【0106】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、ブタ内因子(HIF)製剤中に存在するTCN1を除去する方法に関する。方法は:TCN1がHIF製剤中に存在するならば抗体/TCN1複合体が形成される条件下で、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体またはその抗原結合断片のいずれかとHIF製剤を接触させる工程と;抗体/TCN1複合体をHIF製剤から除去する工程とを含む。
【0107】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、上記本明細書に記載しているように、HIF製剤からの抗体-TCN1複合体の除去を助ける固体支持体に結合される。
【0108】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、方法は、抗体/TCN1複合体からTCN1を溶出して、それによりHIF製剤からTCN1を精製する工程をさらに含んでもよい。このように、ブタ内因子製剤中に存在するTCN1を除去する方法は、ブタ内因子製剤からTCN1を精製する方法としても機能する。
【0109】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、本明細書に開示またはさもなければ企図される抗体/抗原結合断片および/または組成物(検出可能な標識または固体支持体に付着した抗体/抗原結合断片を含む組成物など)のいずれか、ならびに本明細書に記載されたアッセイ/方法、ならびに/またはTCN1がHIF製剤から推定および/もしくは除去された後で行われるビタミンB12アッセイで利用される任意の他の試薬を含有するキットも含む。例えば(ただし限定の目的ではなく)、キットは、HIFに結合する抗体またはその抗原結合断片をさらに含んでもよい。
【0110】
組成物/キット/方法のアッセイ成分/試薬は、それらを本開示により機能できるようにする任意の形態で提供される。例えば、ただし限定の目的ではなく、試薬のそれぞれは液体形態で提供され、キット内にバルクおよび/または単一のアリコート形態で配置される。あるいは、特定の(ただし非限定的な)実施形態では、試薬の1つまたはそれ以上は、単一のアリコート凍結乾燥試薬の形態でキット中に配置される。マイクロ流体デバイスでの乾燥試薬の使用は、その全体を参照によって本明細書に明示的に組み入れる、米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳細に記載されている。
【0111】
上記本明細書に詳細に記載されたアッセイ成分/試薬に加えて、キットは、本明細書に記載またはさもなければ企図される特定のアッセイのいずれかを実施するための他の試薬をさらに含有してもよい。これらの追加の試薬の性質は特定のアッセイフォーマットに依存し、その同定は十分に当業者の技能の範囲内であり;したがって、さらなるその説明は不要に思われる。また、キット中に存在する成分/試薬は、それぞれ別々の容器/コンパートメントに入っていてもよく、または成分/試薬の交差反応性および安定性に応じて、様々な成分/試薬が1つまたはそれ以上の容器/コンパートメントで組み合わされる。さらに、キットは、成分/試薬が配置されるマイクロ流体デバイスを含んでもよい。
【0112】
キット中の様々な成分/試薬の相対量は、アッセイ方法中に生じる必要がある反応を実質的に最適化する成分/試薬の濃度を提供するために、およびさらにアッセイの感度を実質的に最適化するために大きく異なり得る。適切な条件下で、キット中の1つまたはそれ以上の成分/試薬は、凍結乾燥粉末などの乾燥粉末として提供することができ、キットは、乾燥試薬を溶解するための賦形剤をさらに含んでもよい;この方法で、本開示による方法またはアッセイを行うための適切な濃度を有する試薬溶液は、これらの成分から得ることができる。陽性および/または陰性対照も、キットと共に含めることができる。さらに、キットは、キットの使い方を説明する書面による指示書のセットをさらに含んでもよい。こうした性質のキットは、本明細書に記載またはさもなければ企図される方法のいずれかにおいて使用することができる。
【実施例
【0113】
実施例が以下に示される。しかし、本開示は、本明細書に開示される特定の実験、結果、および実験手順への適用に限定されるべきではないことが理解されるべきである。むしろ、実施例は、様々な実施形態の1つとして単純に提供され、例示的であり、網羅的ではないことが意図される。
【実施例1】
【0114】
ブタTCN1のエピトープの同定および合成ペプチドを使用した抗ブタTCN1モノクローナル抗体の作製
ブタRタンパク質(TCN1)は、392個のアミノ酸(約46kDaのポリペプチド鎖Mwを含む)および最大約50%w/w炭水化物を含む糖タンパク質であり;そのアミノ酸配列は配列番号1に示される。TCN1は、酸感受性ビタミンB12が胃を通って移動する間にこれを保護する。
【0115】
本開示の目的のために、Mw 46.3kDaを有する組換え酵母産生非グリコシル化コブタTCN1タンパク質(LifeSpan Biоsciences,Inc.、LS-G23154、Seattle、WA)を本明細書では「recコブタ(Pig)TCN1」と呼ぶのに対し、ブタ胃粘膜の粗粉末抽出物から精製され、Mw約70~92kDaを有するグリコシル化ブタTCN1を、本明細書では「天然ブタ(Hоg)Rタンパク質」と呼ぶことにする。
【0116】
TCN1および内因子(IF)、ならびにTCN2は全て、K<1pmでコバラミン(B12)の生理活性形態に対して並外れた親和性を有する;しかし、それらは非機能的コバラミン類似体に対してそれぞれ異なる選択性を示す。IFおよびある程度TCNは、リガンド構造の変化に感受性を示し、このことはこれらのタンパク質が生理的に活性なコリノイドと不活性なコリノイドを区別するのを助ける。対照的に、TCN1は、ヌクレオチド部分をそっくり欠く多くの不完全型コリノイドをうまく結合することができる。担体への結合は、ヌクレオチドを含有するコバラミン分子の下部(α部位とも呼ばれる)を遮蔽する。対照的に、活性基を有するコバラミン(β部位)の上部表面は、ホロIFおよびホロHCの場合、外部化合物とのその反応性から判断されるように開いていると考えられる。
【0117】
ブタTCN1は、ビタミンB12アッセイで使用されるブタ内因子(HIF)製剤中の主な汚染物質である。ビタミンB12結合タンパク質は、Allenら(J.Biоl.Chem.(1973)248(10):3670~3680頁)によって記載されているように、ビタミンB12を結合しない胃タンパク質のほとんどからビタミンB12-セファロースでの親和性クロマトグラフィーを使用して分離することができる。図1は、ビタミンB12-セファロースのカラムでブタ胃粘膜の粗粉末抽出物から精製されたビタミンB12結合タンパク質の全画分を示す。還元条件のSDS-PAGE(パネルA)は、画分が天然ブタRタンパク質(幅の広い70~92kDaのバンド)、およびブタ内因子(幅の狭い55kDaのバンド)を含有することを示している。等電点電気泳動(パネルB)は、両方のタンパク質の等電点がほぼ同一であることを実証している(pI<4.5)。
【0118】
本開示の目的のために、ビタミンB12-セファロースのカラムでブタ胃粘膜の粗粉末抽出物から精製したビタミンB12結合タンパク質の全画分を、本明細書では「部分的精製天然ブタRタンパク質」と呼ぶことにする。
【0119】
イノシシ由来のトランスコバラミンI(TCN1)および内因子(HIF)のアミノ酸配列アラインメントを含有する図2に見られるように、2つのタンパク質のポリペプチド鎖は、31%の同一性および49%の相同性を共有する。
【0120】
2つのビタミンB12結合タンパク質を、硫酸アンモニウム分画、サイズ排除、またはイオン交換クロマトグラフィーなどの日常的な方法によって互いから分離することは極めて困難である。その理由は、2つのタンパク質が近い分子量およびほぼ同一の等電点を有するためである(図1)。ブタTCN1特異的モノクローナル抗体(mAb)を用いたカラムでの親和性クロマトグラフィーは、ブタTCN1およびHIFの分離を可能にするであろう。
【0121】
本発明者らの知る限り、唯一のマウスモノクローナル抗体、クローン3F10がヒトTCN1用に市販されており、ブタTCN1またはブタ内因子(HIF)用の利用可能なモノクローナル抗体はない。しかし、この抗ヒトTCN1抗体はブタTCN1と交差反応しない。
【0122】
天然ブタRタンパク質に特異的なモノクローナル抗体は、粗物質およびHIF製剤中のブタTCN1を推定するためのELISAの開発を可能にするであろう。コブタTCN1に対する抗体も、HIF製剤からのブタTCN1汚染物質の除去、および/または必要に応じて精製HIFの研磨で使用するための親和性カラム(または他の親和性基質)の開発を可能にするであろう。
【0123】
抗ブタRタンパク質モノクローナル抗体を用いた親和性カラムは、天然の供給源からの天然グリコシル化ブタRタンパク質の精製を可能にするであろう。本発明者らの知る限り、非グリコシル化酵母産生組換えコブタTCN1タンパク質のみが市販されており(LifeSpan Biоsciences,Inc.、LS-G23154、Seattle、WA)、天然ブタTCN1は現在利用できない。
【0124】
ブタTCN1上の固有の特異的エピトープを同定するために、イノシシ由来のTCN1(またはハプトコリン、受託番号P17830.2)および内因子(HIF、受託番号XP_003122730.2)のアミノ酸配列アラインメントを、ベーシックローカルアラインメント検索ツール(Basic Lоcal Alignment Search Tооl)(BLASTA)ソフトウェア(米国国立バイオテクノロジー情報センター、米国国立医学図書館、Bethesda、MD)を使用して行った。図2に示すように、HIFと相同性を共有しないいくつかのブタTCN1ペプチドを同定した。これらのペプチドをR1、R2、およびR3と名付けた。そのアミノ酸配列を表1に示す。
【0125】
TCN1分子上のR1、R2、およびR3エピトープの表面局在化を、Swiss Institute оf Biоinfоrmatics(Lausanne、Switzerland)製DeepView/Swiss-PdbViewerソフトウェアを使用して確かめた。シアノコバラミンとの複合体におけるヒトハプトコリンの2.35Å分解能での結晶構造(PDB 4KKJ、(Furgerら、J.Biоl.Chem.(2013)288(35):25466~25476頁))を3Dモデルとして使用してペプチドの位置を同定した。TCN1分子表面のR1、R2、およびR3ペプチドの位置、図3のモデル結晶構造の正面(パネルA)、および上面(パネルB)図に示す。
【0126】
FASTAソフトウェア(EMBL-EBI、Hinxton、Cambridge)によるR1、R2、およびR3ペプチドのアミノ酸配列の解析は、これらのペプチドがブタRタンパク質に固有のエピトープに相当することを確認した。故に、エピトープの1つに対する特異的マウスモノクローナル抗体をその後に開発した。
【0127】
【表1】
【0128】
上述のエピトープに対するモノクローナル抗体を作製するために、合成ペプチド、ならびにオボアルブミン(OVA)およびウシ血清アルブミン(BSA)との合成ペプチドそれぞれのコンジュゲートを、Biо-Synthesis,Inc.(Lewisville、TX)で表2に概説されているように製造した。ペプチドR2については、免疫原として使用するペプチドおよびそのコンジュゲートの合成のために、天然ブタTCN1配列に存在する2つのメチオニン残基をノルロイシンに修飾したことに注意されたい。
【0129】
抗体は、連邦規制およびIACUCプロトコルに従って生成した。マウス系は、インビトロでの診断応用で使用するための抗体の開発に非常にうまく機能しており、故に抗ブタTCN1抗体の作製に使用した。
【0130】
【表2】
【0131】
この実施例では、BSAにコンジュゲートしたR1、R2、またはR3ペプチドを含む免疫原を使用して、メスのBALB/cマウス、Swiss Webster(SW)マウス、またはA/Jマウスを腹腔内(IP)で免疫して、ブタTCN1ペプチドに対するモノクローナル抗体を作製した。マウスは、免疫原(50μg/投与/動物)の注射を3週間間隔で3回以上受けた。一次免疫は、完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した抗原を使用し、それに続くその後の追加免疫は、不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用して行った。
【0132】
最終注射の一週間後、マウスを採血し、ペプチド特異的抗体について、対応するオボアルブミンコンジュゲートおよび遊離ペプチドを用いて血清試料をELISAアッセイでテストした。全てのELISA工程は室温で行った。Nunc Maxi-Sorp(商標)平底ELISAプレートを、それぞれPBS中2および1μg/mLのペプチドまたはペプチド-OVAコンジュゲートを用いて、1ウェルあたり50μLで1時間コーティングした。プレートを軽く叩いて乾燥させ、1ウェルあたり200μLのブロッキング溶液(0.05%Tween 20を含有するPBS中0.5%カゼイン)を添加して、残りの結合部位を1時間ブロックした。0.05%Tween 20を含有するMilli-Q水でプレートを3回洗浄し、テストする抗体試料(血清、ハイブリドーマ上清、またはPBS抗体希釈液)を、1ウェルあたり容量50μLでプレートのウェルに入れた。1時間のインキュベーション後、プレートを上記のように再び洗浄し、ブロッキング溶液に1:3,000希釈したヤギ抗マウスIgG-HRPコンジュゲートを、1ウェルあたり50μLで1時間添加した。プレートを洗浄し、TMB基質(Moss、Pasadena、MD)を、1ウェルあたり100μLで15分間添加した。ELISAプレートリーダーを使用して650nmで試料の光学密度を測定した。
【0133】
血清試料は、ビタミンB12-セファロースで部分的に精製され、ブタ内因子で汚染された天然ブタRタンパク質試料との結合についてもテストした(図1)。この目的のために、ELISAプレートをPBS中1μg/mLの部分的精製天然ブタRタンパク質を用いて、1ウェルあたり50μLで1時間コーティングし、その後のELISA工程は上記のように行った。
【0134】
図4は、選択されたA/Jマウスのマウス採血滴定の結果を示す。マウス#C3、C1、およびC5を、それぞれR1-BSA、R2-BSA、およびR3-BSAで免疫した。見てわかるように、動物は全て、それぞれのペプチドおよびペプチド-OVAコンジュゲートに対して高い抗体価を発現したが、R1-BSAおよびR2-BSA免疫動物由来の血清のみは天然ブタRタンパク質を結合した。これらの結果は、合成R1およびR2ペプチドが天然ブタTCN1に対する免疫応答を誘発することを確認するものである。さらに、合成R3ペプチドに対応するエピトープは、天然の重度にグリコシル化されたタンパク質での抗体結合には容易に利用できない可能性がある。
【0135】
高い抗ペプチド抗体価を有するマウスをモノクローナル抗体生成に選択した。マウスは、同じ免疫原(PBS中25μg/投与/動物、IP)を用いて融合前に3日間連続で融合前ブーストを受けた。4日目にマウスを屠殺し、脾臓細胞を回収した。免疫脾細胞およびP3-X63Ag8.653マウス骨髄腫細胞(ATCC CRL-1580TM)を、ポリエチレングリコールの存在下で融合させた。融合細胞をHAT含有培地に懸濁し、約10~21日培養した。上記のようにそれぞれのペプチドでコーティングしたプレートを使用して、ハイブリドーマ上清を抗ペプチド抗体についてELISAでスクリーニングした。陽性クローンを限界希釈によってサブクローニングし、拡大し、凍結した。モノクローナル抗体を、プロテインAセファロース(GE Healthcare、Chicagо、IL)のカラムでハイブリドーマ上清から精製した。表3は、ブタTCN1ペプチドに対して生成されたいくつかのモノクローナル抗体の特性を示している。
【0136】
【表3】
【0137】
精製mAbを、対応するペプチド、部分的精製天然ブタRタンパク質、および組換えコブタTCN1(LifeSpan BiоSciences、LS-G23154、Seattle、WA)、およびブタ内因子への結合についてELISAアッセイでテストした。この目的のために、PBS中8μg/mLから開始する抗原の2倍希釈液を、室温でELISAプレートのウェルに1ウェルあたり50μLで1時間入れた。プレートを軽く叩いて乾燥させ、1ウェルあたり200μLのブロッキング溶液でブロックし、上記のように3回洗浄した。PBS中1μg/mLのブタTCN1ペプチドに対するモノクローナル抗体を、1ウェルあたり50μLで添加した。1時間のインキュベーション後、プレートを再び洗浄し、ブロッキング溶液に1:3,000希釈したヤギ抗マウスIgG-HRPコンジュゲートを、1ウェルあたり50μLで1時間添加した。プレートを洗浄し、TMB基質(Mоss、Pasadena、MD)を、1ウェルあたり100μLで15分間添加した。ELISAプレートリーダーを使用して650nmでプレートを読み取った。
【0138】
全ての抗ペプチドモノクローナル抗体は、対応する合成ペプチドへの強い用量依存的結合を実証したが、R2ペプチドに対して生成された171B 1G5 mAbのみは、組換えコブタTCN1および部分的精製天然ブタRタンパク質の両方を認識した。図5は、171B 1G5モノクローナル抗体による異なる抗原結合のELISA結果を示す。見てわかるように、171B 1G5モノクローナル抗体は、R2ペプチドならびに天然および組換えブタTCN1タンパク質の両方を結合した。該mAbはまた、ブタ内因子に対する交差反応性がないことも実証した。このテストの結果は、部分的精製ブタRタンパク質の試料がブタTCN1を含有し、抗ブタTCN1モノクローナル抗体の生成に使用できることを確認した。
【実施例2】
【0139】
天然の供給源由来のブタRタンパク質の粗製剤を使用した抗ブタTCN1モノクローナル抗体の作製
この実施例では、ビタミンB12-セファロースでブタ胃粘膜の粉末粗抽出物から部分的に精製された天然ブタRタンパク質の試料(図1)を使用して、5匹のBALB/cおよび10匹のA/Jメスマウスを免疫して、ブタRタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製した。マウスは、免疫原(50μg/投与/動物)の腹腔内注射を3週間間隔で3回受けた。一次免疫は完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した抗原を使用し、それに続くその後の追加免疫は、不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用して行った。
【0140】
最終注射の一週間後、マウスを採血し、ブタTCN1特異的抗体および合成ペプチドとの結合について、血清試料をELISAアッセイでテストした。171B 1G5 mAbを、コーティングしたELISAプレート上のブタTCN1タンパク質の存在に関する陽性対照として使用した(不図示)。部分的精製ブタRタンパク質で免疫した動物は全て、抗原に対して高い抗体価を発現した(>1:100,000)。図6は、異なる抗原でのBalb/C(パネルA)およびA/J(パネルB)マウス採血滴定の例を示している。見てわかるように、両方の株のマウスは、ブタTCN1に対して高い抗体価を発現したが、合成R1、R2、およびR3ペプチドとの結合は観察されなかった。これらの結果は、これらのペプチドが、天然グリコシル化ブタRタンパク質の免疫優性エピトープを提示しない可能性があることを示している。
【0141】
マウスは、同じ免疫原(PBS中10μg/投与/動物、IP)を用いて3日間連続で融合前ブーストを受け、4日目にマウス脾臓を回収し、凍結した。数年後、組換えコブタTCN1タンパク質が市販されるようになったとき、解凍免疫脾細胞は実施例1で上述した標準的な手順に従ってハイブリドーマ製剤に使用されるであろう。ハイブリドーマ上清を、1ウェルあたり50μL容量中1μg/mLでELISAプレートに吸着したrecコブタTCN1(LifeSpan BiоSciences、LS-G23154、Seattle、WA)および部分的精製天然ブタRタンパク質の両方の結合についてスクリーニングした。両方の抗原で陽性シグナルを出しているいくつかのハイブリドーマを選択した。図7に示すように、171J 3F1および171J 3A6クローンによって産生されたモノクローナル抗体は、天然ブタRタンパク質よりはるかに良くrecコブタTCN1を結合した;モノクローナル抗体171J 9G7は両方の抗原を同じようによく認識し、171J 5H12 mAbはrecコブタTCN1より天然ブタRタンパク質を強く結合した。モノクローナル抗体とブタ内因子との交差反応性は観察されなかった。ハイブリドーマを限界希釈によってサブクローニングし、拡大し、凍結した。モノクローナル抗体を、プロテインAセファロース(GE Healthcare、Chicagо、IL)のカラムでハイブリドーマ上清から精製した。
【0142】
モノクローナル抗体エピトープマッピングは、PEPperPRINT GmbH(Heidelbelg、Germany)によって、14個のアミノ酸のペプチド-ペプチド重複を有する線状15-merブタTCN(UniPrоt ID:P17630.2)およびブタ内因子(UniPrоt ID:F1RI90)ペプチドのマイクロアレイで行った。簡単には、ペプチドマイクロアレイを171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、171J 5H12、または171J 9G7モノクローナル抗体と1、10、および100μg/mLの濃度でインキュベーションし、その後、二次ヤギ抗マウスIgG(H+L)DyLight800抗体で染色し、LI-COR Odyssey Imaging Systemを用いて読み取った。マイクロアレイ画像解析およびペプチドのアノテーションは、PepSlide(登録商標)Analyzerにより行った。二次抗体による各ペプチドマイクロアレイ変異形の前染色は、メインのアッセイに干渉し得るバックグラウンド相互作用は何も示さなかった。
【0143】
mAbはどれも、100μg/mlの高い抗体濃度でさえ線状ブタ内因子ペプチドに対する応答を示さなかったが、171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、および171J 5H12抗体の固有の線状ブタTCN1エピトープを成功裏に同定した。2つ以上の抗体によって共有されるエピトープはなく、FASTAソフトウェア(EMBL-EBI、ヒンクストン、ケンブリッジ)によるそれらのアミノ酸配列の解析により、同定したエピトープは全てブタTCN1に固有であることが確認された。図8は、ブタTCN1ペプチドマイクロアレイに対してアッセイしたマウスmAbのエピトープマッピングの概要を示すしている。
【0144】
モノクローナル抗体171J 9G7は、100μg/mlの高い抗体濃度でさえ、線状ブタTCN1またはブタ内因子ペプチドに対する応答を示さなかった。この負の結果は、線状ペプチドによって模倣することができないエピトープの立体配座の性質またはより複雑な不連続の性質によって生じた可能性がある。
【0145】
TCN1特異的モノクローナル抗体の特性を表4に示す。
【0146】
【表4】
【0147】
TCN1分子表面の171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、および171J 5H12モノクローナル抗体に対する線状エピトープの位置を、実施例1で上述したように決定した。これらの位置を、モデル結晶構造の正面(パネルA)および上面(パネルB)図で図9に示す。見てわかるように、4つ全てのmAbのエピトープはタンパク質小球の同じ側に位置しており、故に、サンドイッチアッセイで天然ブタTCN1を検出するのに任意のmAbペアを今使用することを困難にしている。この結論は、ELISAおよびBiacоreペアリング実験によって確認された(データ不図示)。
【0148】
抗ブタTCN1モノクローナル抗体とTCN1タンパク質の間の相互作用の結合パラメータを、Biacоre T200 Cоntrоl Sоftware Versiоn 2.0.1(GE Healthcare Biо-Sciences、Pittsburgh、PA)を備えたBiacоre T200を使用して動態実験で決定した。抗ブタTCN1 mAbを、CM5センサーチップのフローセル2、3、および4でカルボキシメチルデキストラン表面に700~5、000RU密度でアミノカップリング化学を使用して固定した。対照抗体は、バルク効果を差し引くためにフローセル1に固定した。組換えコブタTCN1(LifeSpan BiоSciences、LS-G23154、Seattle、WA)または天然ブタRタンパク質に、固定化mAbを流速30μL/分で8分間表面に注射し、その後20分間解離させた。緩衝液ブランクをランニング緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、0.05% P-20、pH7.4)の注射により3通り実行し、フィッティング前にmAb結合データを二重参照するのに使用した。各結合サイクル後、10mMグリシン、pH2.0および0.1M重炭酸ナトリウム、pH8.5の2回連続注射、各30秒間、流速30μL/分によって表面を再生した。動態データを25~1600nM抗原濃度にわたって集め、単純1:1 相互作用モデルにグローバルフィッティングした。Biacоre T200 Evalutiоn Sоftware Versiоn 3.0(GE Healthcare Biо-Sciences)を使用して、ブタTCN1特異的mAb相互作用の結合パラメータを決定した。抗ブタTCN1モノクローナル抗体と、recコブタTCN1および天然ブタRタンパク質との結合の動態パラメータを表5に示す。見てわかるように、5つの抗体のうち3つが組換えコブタTCN1とのみ相互作用し、171J 5H12 mAbのみが極めて高い親和性で天然ブタRタンパク質を結合し、この抗原との非常に安定した複合体を形成した。モノクローナル抗体171J 9G7は両方の抗原を認識したが、組換えタンパク質に対する抗体の親和性は、天然タンパク質に対する親和性より500倍超高かった。
【0149】
これらの結果は、2つの抗原のグリコシル化の違いによって説明することができる。酵母産生組換えコブタTCN1(LifeSpan BiоSciences、LS-G23154、Seattle、WA)の分子量46.3kDaは、非グリコシル化ポリペプチド鎖の分子量に相当する。前述したように、天然ブタRタンパク質は重度にグリコシル化されており、最大50%w/w炭水化物を含む。グリコシル化は、一方では、171J 3F1、171J 3A6、および171B 1G5 mAbが天然抗原に結合するのを防ぎ、171J 9G7 mAbとグリコシル化ブタRタンパク質との相互作用の効果を低下させる。他方では、グリコシル化は天然ブタTCN1への171J 5H12 mAbの結合を促進し、炭水化物部分はこの抗体によって認識されるエピトープの重要な部分となる。この結論は、天然ブタRタンパク質の酵素的脱グリコシル化を用いた実験によって確認された(データ不図示)。
【0150】
【表5】
【実施例3】
【0151】
抗ブタTCN1モノクローナル抗体の配列決定
モノクローナル抗体171B 1G5、171J 3F1、171J 3A6、171J 5H12、および171J 9G7を産生する実施例1および2のように作製したハイブリドーマ細胞を得、TRIZOL(登録商標)試薬(Thermо Fisher Scientific、Waltham、MA)の技術マニュアルに従って全RNAをそこから単離した。全RNAを次いで、PRIMESCRIPT(商標)First Strand cDNA Synthesis Kit(Takara Biо USA,Inc.、Mоuntain View、CA)の技術マニュアルに従って、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマーまたはユニバーサルプライマーのどちらかを使用してcDNAに逆転写した。V、V、C、およびCの抗体断片を、GenScript(Piscataway、NJ)のcDNA末端の迅速増幅(RACE)の標準的操作手順(SOP)に従って増幅した。増幅抗体断片を、標準的なクローニングベクターに別々にクローニングした。コロニーPCRを行って的確なサイズのインサートを有するクローンをスクリーニングした。的確なサイズのインサートを有する5つ以上のコロニーを各断片について配列決定した。各クローンは、他のクローンに対して>99%の配列同一性を有した。異なるクローンの配列を整列させ、コンセンサス配列を得た。
【0152】
各モノクローナル抗体について得られた各DNAおよびアミノ酸配列に、表6に概説するように配列識別子を割り当てた。これらの配列には、各モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の両方のDNA配列、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列、重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列、ならびに重鎖および軽鎖可変領域の両方の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)のアミノ酸配列が含まれた。
【0153】
【表6】
【0154】
さらに、各モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列のV(D)J接合部のIMGT(登録商標)解析(ImMunоGeneTics情報システム、Mоntpellier、France)を表7に示す。
【0155】
【表7】
【0156】
モノクローナル抗体171B 1G5のアイソタイプは、マウスIgG2b、カッパであった。
【0157】
抗ブタTCN1モノクローナル抗体の配列情報を使用して、合成重鎖および軽鎖遺伝子を合成し、哺乳動物細胞で一過性に発現させて少量の組換え抗体を産生させた。発現抗体をプロテインA親和性カラムで精製し、上記のようにブタTCN1結合についてELISAアッセイでテストした。図10は、従来の方法で作製した171B 1G5モノクローナル抗体対組換え産生171B 1G5モノクローナル抗体を使用した、組換えコブタTCN1の例示的なELISA滴定結果を示す。見てわかるように、2つの滴定曲線を重ね合わせることができることから、図10のデータは、抗体について得られた配列が正確であることを確認するものである。
【実施例4】
【0158】
171J 5H12モノクローナル抗体を用いる親和性カラムでの粗製剤からの天然ブタTCN1タンパク質の精製
この実施例では、モノクローナル抗体171J 5H12を使用して、粗製剤から天然ブタRタンパク質を精製するための親和性吸着剤を製造した。親和性樹脂は、30mg抗ブタTCN1モノクローナル抗体171J 5H12を、製造者のプロトコルを使用して3gのCNBr-セファロース 4B Fast Flоw(GE Healthcare Biо-Sciences、#17-0981-01、Pittsburg、PA)に共有結合固定して製造し、PBS、pH7.4に再懸濁した。0.02%アジ化ナトリウムを含有する蒸留水220mLに粉末42gを懸濁して、ブタ胃粘膜の粗粉末抽出物の20%溶液を製造し、40℃で16時間撹拌した。得られた懸濁液を20,000g、1時間、40℃で遠心分離し、混濁した上清をペレットから静かに注ぎ、新しいチューブに移し、再び20,000g、40分間、40℃で遠心分離した。
【0159】
粗ブタ胃粘膜の清澄化水抽出物(約180mL)を171J 5H12 mAb-セファロース(約10mL)と混合し、室温で一晩、オービタルシェーカーで穏やかに撹拌した。親和性樹脂を、中型焼結ガラスディスクを含有するブフナー漏斗での真空吸引により上清から分離し、PBS、pH7.4で3回洗浄し、ガラスカラム(1.5×7.2cm、V=12.7mL)に充填した。カラムを100mL PBS、pH7.4と、それに続く0.1Mクエン酸ナトリウム100mL、pH5.0、流速10mL/分で洗浄した。結合タンパク質を0.1Mクエン酸ナトリウム100mL、pH2.2でカラムから溶出し、280nmでの吸収によって画分をモニターした。画分を含有するタンパク質をプールし、0.02%アジ化ナトリウム、pH7.4を含有する2回交換するPBS(各2L)に対して透析した。合計7.8mgのタンパク質を、ブタ胃粘膜の42g粗粉末抽出物から精製した。
【0160】
図11に示すように、天然ブタTCN1のように、171J 5H12 mAbを用いる親和性カラムで精製したタンパク質は、還元条件(パネルA)のSDS-PAGEで単一の70~92kDaの幅の広いバンドとして移動し、強い酸性の等電点を有する(pI<4.5、パネルB)。
【0161】
タンパク質の同定は、ゲルスライスの70~92kDaタンパク質のトリプシン消化によるBiо-Synthesys(Lewisville、TX)によって行った。ペプチドをナノキャピラリーLC-MS/MSによって分析し、その後データ検索を行った。試料中の主なタンパク質をブタトランスコバラミンIと同定し、ペプチドは67%ブタTCN1配列を占めた。
【0162】
この実施例は、モノクローナル抗体171J 5H12を親和性樹脂製造物に使用できることを実証するものである。そのような樹脂は、極めて温和な条件でブタ胃粘膜の粗抽出物から均一な天然ブタTCN1をシングルステップで単離するのに使用することができる。
【実施例5】
【0163】
171J 5H12 mAbを用いるELISAを使用した天然ブタTCN1の検出
この実施例では、ブタ内因子の粗製剤および精製試料中の天然ブタRタンパク質を検出するために、モノクローナル抗体171J 5H12をELISAアッセイで使用した。固定化171J 5H12モノクローナル抗体を用いるカラムで精製した天然ブタTCN1親和性(図11)を標準として使用して、標準滴定曲線を作成した。ELISA工程は全て室温で行った。Nunc Maxi-Sorp(商標)平底ELISAプレートを、PBS中2μg/mLのビタミンB12-BSAコンジュゲートを用いて、1ウェルあたり50μLで1時間コーティングした。プレートを軽く叩いて乾燥させ、1ウェルあたり200μLのブロッキング溶液でブロックし、上記のように洗浄した。テストする天然ブタTCN1(2000ng/mL)および試料の2倍希釈液をPBSで製造し、1ウェルあたり容量50μLでプレートのウェルに入れた。1時間インキュベーションし、プレートを洗浄した後、171J 5H12 mAbを1ウェルあたり50μLでPBS中1μg/mLで添加した。プレートを1時間インキュベートし、洗浄し、次いでブロッキング溶液に1:3,000希釈したヤギ抗マウスIgG-HRPコンジュゲートを、1ウェルあたり50μLで1時間添加した。プレートを再び洗浄し、TMB基質(Moss、Pasadena、MD)を1ウェルあたり100μLで15分間添加した。ELISAプレートリーダーを使用して650nmでプレートを読み取った。
【0164】
図12は、モノクローナル抗体171J 5H12を用いるELISAアッセイを使用したブタ胃粘膜の粗抽出物中の天然ブタTCN1の検出を実証するものである。見てわかるように、アッセイは試料中の天然ブタTCN1少なくとも1ng/mLの検出を可能にする。
【実施例6】
【0165】
171J 5H12 mAbを用いた親和性樹脂でのブタ内因子試料研磨
この実施例では、天然ブタTCN1に特異的なモノクローナル抗体171J 5H12を、ブタ内因子製剤からのブタTCN1汚染物質の除去、および/または必要に応じて精製HIFの研磨で使用するための親和性樹脂の開発に使用した。ブタ内因子の試料を実施例5に記載したELISAアッセイでテストし、低レベルのブタTCN1汚染を検出した。汚染物質を除去するために、固定化171J 5H12 mAbを用いる親和性樹脂で試料の枯渇を行った。実施例4に記載したように製造した171J 5H12-セファロース4B 100μLをHIF(1mg/mL)300μLに添加し、断続的に穏やかに混合しながら室温で5時間インキュベートした。親和性樹脂を3000gで15分間、室温で遠心分離して除去し、天然ブタTCN1の存在についてELISAアッセイで上清をテストした。図13は、171J 5H12 mAb-セファロースによるブタ内因子試料研磨の結果を示す。見てわかるように、枯渇後、ブタTCN1汚染のレベルは、総タンパク質の2.7%から0.1%まで減少した。
【0166】
したがって、本開示により、上に記載された目的および利点を十分に満たす組成物ならびにこれを産生および使用する方法が提供された。本開示は、上に記載された特定の図面、実験、結果、および言語と併せて記載されてきたが、多くの代替、変更、および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、本開示の趣旨および広い範囲内に入る全てのそのような代替、変更、および変形を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
0007496411000001.app