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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240530BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022529520
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2020014234
(87)【国際公開番号】W WO2021101077
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0150311
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ドン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, セ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドン ヨン
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-107231(JP,A)
【文献】特開2015-157480(JP,A)
【文献】特開2017-179149(JP,A)
【文献】特開2017-179150(JP,A)
【文献】特開2017-177604(JP,A)
【文献】特開2017-177601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物単量体及びジアミン単量体の反応から形成されたポリアミック酸のイミド化から誘導されるポリイミドフィルムであって、
前記二無水物単量体は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)を含み、
前記二無水物単量体は、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、二無水物単量体の総モル量を基準にして10モル%~90モル%で含み、
前記ジアミン単量体は、m-トリジン(m-TD)及び4,4’-オキシジアニリン(ODA)からなり、
前記m-トリジンと前記4,4’-オキシジアニリンとのモル比は、前者:後者=1:99~20:80であり、
前記ポリイミドフィルムの降伏強度は、50MPa~80MPaであり、
前記ポリイミドフィルムは、下記式1を満たし、2GPa~4.5GPaのモジュラスを有するポリイミドフィルム。
<式1>
21MPa/%≦A/B≦30MPa/%
前記式1中、Aは、ポリイミドフィルムの降伏強度であって、単位はMPaであり、Bは、ポリイミドフィルムの降伏点であって、単位は%である。
【請求項2】
前記ピロメリット酸二無水物は、二無水物単量体の総モル量を基準にして10モル%~90モル%で含まれる、請求項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムの降伏点は、2.2%~2.9%である、請求項1または2記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法であって、
前記方法は、
二無水物単量体、ジアミン単量体及び有機溶媒を混合して反応させ、ポリアミック酸溶液を形成し、
前記ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を混合してポリイミド前駆体組成物を形成し、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体上にキャストし、乾燥してゲルフィルムを製造し、並びに
前記ゲルフィルムを熱処理してポリイミドフィルムを形成する、
ステップを含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、100℃~700℃で行われる、請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリイミドフィルム及びその製造方法に関するものである。より詳細には、低い弾性率で高い降伏点を有し、繰り返し変形にも損傷が少ないポリイミドフィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーブド、ベンダーブル、フォルダブル、ローラブルなどのようなフレキシブルディスプレイは、最近、学界と産業界の両方から注目を集めている次世代ディスプレイである。フレキシブルディスプレイを構成する様々な種類の素材のうち、機能性フィルム/コーティング材料は、フレキシブルディスプレイを構成する重要な高分子基板材料であって、フレキシブルディスプレイの成功的な実現及び開発するために必ず必要な中核材料であるといえ、このような素材としてポリイミドが注目されている。
【0003】
ポリイミドは、主鎖にヘテロイミド環を有することを特徴とするポリマーであって、優れた耐熱性の他にも機械的物性、難燃性、耐薬品性、低誘電率などに優れ、コーティング材料、成形材料、複合材料などの幅広い用途に適用されている。
【0004】
フレキシブルディスプレイ用の高分子基板に求められる最も重要な物理的特性は、まさに柔軟性であるといえる。特に、このような高分子基板は、フレキシブルディスプレイが繰り返し変形を引き起こすカービング、ベンディング、フォールディング、ローリング、並びにストレッチングの過程でも損傷を引き起こさないだけでなく、様々な初期物性も失わななければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低い弾性率で高い降伏点を有し、繰り返し変形にも損傷が少ないポリイミドフィルムを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前述のポリイミドフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.一態様によれば、二無水物単量体及びジアミン単量体の反応から形成されたポリアミック酸のイミド化から誘導されるポリイミドフィルムであって、前記二無水物単量体は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を、二無水物単量体の総モル量を基準にして約10モル%~約90モル%で含み、前記ポリイミドフィルムは、下記式1を満たし、約2GPa~約4.5GPaのモジュラスを有するポリイミドフィルムが提供される。
【0008】
<式1>
約21MPa/%≦A/B≦約30MPa/%
【0009】
前記式1中、Aは、ポリイミドフィルムの降伏強度であって、単位はMPaであり、Bは、ポリイミドフィルムの降伏点であって、単位は%である。
【0010】
2.前記第1具現例において、前記二無水物単量体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をさらに含んでもよい。
【0011】
3.前記第2具現例において、前記ピロメリット酸二無水物は、二無水物単量体の総モル量を基準にして約10モル%~約90モル%で含まれてもよい。
【0012】
4.前記第1~第3具現例のいずれかにおいて、前記ジアミン単量体は、m-トリジン(m-TD)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン(PAPP)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0013】
5.前記第4具現例において、前記ジアミン単量体は、m-トリジン(m-TD)及び4,4’-オキシジアニリン(ODA)を約1:99~約20:80のモル比で含んでもよい。
【0014】
6.前記第1~第5具現例のいずれかにおいて、前記ポリイミドフィルムの降伏強度は、約50MPa~約80MPaであってもよい。
【0015】
7.前記第1~第6具現例のいずれかにおいて、前記ポリイミドフィルムの降伏点は、約2.2%~約2.9%であってもよい。
【0016】
8.別の態様によれば、前記第1~第7具現例のいずれかのポリイミドフィルムの製造方法であって、前記方法は、二無水物単量体、ジアミン単量体及び有機溶媒を混合して反応させ、ポリアミック酸溶液を形成し、前記ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を混合してポリイミド前駆体組成物を形成し、前記ポリイミド前駆体組成物を支持体上にキャストし、乾燥してゲルフィルムを製造し、並びに前記ゲルフィルムを熱処理してポリイミドフィルムを形成する、ステップを含んでよい。
【0017】
9.前記第8具現例において、前記熱処理は、約100℃~約700℃で行われてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリイミドフィルム及びその製造方法は、低い弾性率で高い降伏点を有するポリイミドフィルムを提供する効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を説明するにあたり、関連する公知技術の具体的な説明が、本発明の要旨を不要に曖昧にする可能性があると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0020】
本明細書で言及した「含む」、「有する」、「なされる」などが使用される場合、「~のみ」が使用されない限り、他の部分が追加されてもよい。構成要素を単数で表現した場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0021】
また、構成要素を解析するにあたり、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0022】
本明細書において、数値範囲を示す「a~b」で、「~」は、≧aかつ≦bと定義する。
【0023】
一態様によれば、ポリイミドフィルムが提供される。本発明の発明者は、二無水物単量体及びジアミン単量体の反応から形成されたポリアミック酸のイミド化から誘導されるポリイミドフィルムにおいて、ポリイミドフィルムが二無水物単量体として、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を約10モル%~約90モル%で含み、かつ下記式1を満たす場合、低いモジュラス(例えば、約4.5GPa以下のモジュラス)で高い降伏点(例えば、約2.2%以上の降伏点)を有し、その結果、ポリイミドフィルムに繰り返し変形が加えられても損傷の程度が少ないことを見出し、本発明を完成するようになった。
【0024】
二無水物単量体は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、二無水物単量体の総モル量を基準にして約10モル%~約90モル%(例えば、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%または90モル%)で含んでもよい。前記範囲において、ポリイミドフィルムの弾性区間を長くなり、低い弾性率で高い降伏点を有するポリイミドフィルムの製造が可能である。例えば、二無水物単量体は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、二無水物単量体の総モル量を基準にして約15モル%~約80モル%、他の例を挙げると、約20モル%~約70モル%、別の例を挙げると、約30モル%~約50モル%で含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
ポリイミドフィルムは、下記式1を満たしてもよい。
【0026】
<式1>
約21MPa/%≦A/B≦約30MPa/%
【0027】
前記式1中、Aは、ポリイミドフィルムの降伏強度であって、単位はMpaであり、Bは、ポリイミドフィルムの降伏点であって、単位は%である。A/Bが約21MPa/%未満の場合、降伏点が低く引張強度が低い問題があり、A/Bが約30MPa/%超過の場合、本発明が求める低いモジュラスを満たさない問題があり、その結果、ポリイミドフィルムに繰り返し変形が加えられる場合、損傷が多数生じる可能性がある。ここで、「降伏強度」及び「降伏点」は、ASTM D 882基準に基づき、引張速度を200mm/minとして引張試験機を用いて測定されてもよいが、これに限定されるものではない。一具現例によれば、A/B値は、21MPa/%、22MPa/%、23MPa/%、24MPa/%、25MPa/%、26MPa/%、27MPa/%、28MPa/%、29MPa/%または30MPa/%、他の具現例によれば、約21MPa/%~約29MPa/%、別の具現例によれば、約22MPa/%~約28MPa/%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
ポリイミドフィルムは、約2GPa~約4.5GPa(例えば、2GPa、2.1GPa、2.2GPa、2.3GPa、2.4GPa、2.5GPa、2.6GPa、2.7GPa、2.8GPa、2.9GPa、3GPa、3.1GPa、3.2GPa、3.3GPa、3.4GPa、3.5GPa、3.6GPa、3.7GPa、3.8GPa、3.9GPa、4GPa、4.1GPa、4.2GPa、4.3GPa、4.4GPaまたは4.5GPa)のモジュラスを有してもよい。ここで、「モジュラス」は、ASTM D 882基準に基づき、引張速度を200mm/minとして引張試験機を用いて測定されてもよいが、これに限定されるものではない。例えば、ポリイミドフィルムのモジュラスは、約2GPa~約4.2GPa、他の例を挙げると、約2.5GPa~約4.1GPa、別の例を挙げると、約2.5GPa~約4.0GPaであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
ポリイミドフィルムは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の二無水物単量体をさらに含んでもよい。このような二無水物単量体としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で様々な二無水物単量体が制限なく使用されてもよい。このような二無水物単量体の例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)などが挙げられる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の二無水物単量体は、二無水物単量体の総モル量を基準にして、例えば、約10モル%~約90モル%(例えば、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%または90モル%)、他の例を挙げると、約20モル%~約85モル%、別の例を挙げると、約30モル%~約80モル%、別の例を挙げると、約50モル%~約70モル%で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。例えば、ピロメリット酸二無水物は、二無水物単量体の総モル量を基準にして、例えば、約10モル%~約90モル%、他の例を挙げると、約20モル%~約85モル%、別の例を挙げると、約30モル%~約80モル%、別の例を挙げると、約50モル%~約70モル%で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
ジアミン単量体としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内で様々なジアミン単量体が制限なく使用されてもよい。このようなジアミン単量体の例としては、m-トリジン(m-TD)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン(PAPP)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
一具現例によれば、ジアミン単量体は4,4’-オキシジアニリンを含んでもよく、このような場合、低い弾性率で高い降伏点を有するポリイミドフィルムの製造が可能である。このとき、4,4’-オキシジアニリンの含有量は、例えば、ジアミン単量体の総モル数を基準にして0モル%超過~約100モル%(例えば、1モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%、または100モル%)、他の例を挙げると、約50モル%~約100モル%、別の例を挙げると、約70モル%~約100モル%、別の例を挙げると、約75モル%~約100モル%、別の例を挙げると、約80モル%~約100モル%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
他の具現例によれば、ジアミン単量体はm-トリジンを含んでもよく、このような場合、低い弾性率で高い降伏点を有するポリイミドフィルムの製造が可能である。このとき、m-トリジンの含有量は、例えば、ジアミン単量体の総モル数を基準にして0モル%超過~約100モル%(例えば、1モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%または100モル%)、他の例を挙げると、0モル%超過~約50モル%、別の例を挙げると、0モル%超過~約30モル%、別の例を挙げると、0モル%超過~約25モル%、別の例を挙げると、0モル%超過~約20モル%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
別の具現例によれば、ジアミン単量体は、m-トリジンと4,4’-オキシジアニリンとを含んでもよく、このような場合、m-トリジンと4,4’-オキシジアニリンとが発揮するそれぞれの効果がシナジーを引き起こし、低い弾性率で高い降伏点を有するポリイミドフィルムの製造が可能である。このとき、m-トリジンと4,4’-オキシジアニリンとのモル比は、約1:99~約99:1(例えば、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5、または99:1)、例えば、約1:99~約50:50、他の例を挙げると、約1:99~約30:70、別の例を挙げると、約1:99~約25:75、別の例を挙げると、約1:99~約30:70、別の例を挙げると、約1:99~約20:80、別の例を挙げると、約5:95~約20:80であってもよいが、これに限定されるものではない。m-トリジンと4,4’-オキシジアニリンとの合計量は、ジアミン単量体の総モル数を基準にして、例えば、約11モル%~約100モル%、他の例を挙げると、約50モル%~約100モル%、別の例を挙げると、約90モル%~約100モル%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
一具現例によれば、ポリイミドフィルムは、約50MPa~約80MPa(例えば、50MPa、55MPa、60MPa、65MPa、70MPa、75MPaまたは80Mpa)が降伏強度を有してもよい。例えば、ポリイミドフィルムの降伏強度は、約50MPa~約75MPa、他の例を挙げると、約50MPa~約70MPa、別の例を挙げると、約60MPa~約70MPaであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
一具現例によれば、ポリイミドフィルムは、約2.2%~約2.9%(例えば、2.2%、2.25%、2.3%、2.35%、2.4%、2.45%、2.5%、2.55%、2.6%、2.65%、2.7%、2.75%、2.8%、2.85%、または2.9%)の降伏点を有してもよい。例えば、ポリイミドフィルムの降伏点は、約2.2%~約2.7%、他の例を挙げると、約2.2%~約2.65%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
ポリイミドフィルムの厚さは、ポリイミドフィルムの用途、使用環境、物性などを考慮して適宜選択されてもよい。例えば、ポリイミドフィルムの厚さは、約10μm~約500μm、他の例を挙げると、約20μm~約50μm、別の例を挙げると、約40μm~約50μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
前述のポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの製造分野において通常使用されている様々な方法で製造されてもよい。例えば、ポリイミドフィルムは、二無水物単量体、ジアミン単量体及び有機溶媒を混合して反応させ、ポリアミック酸溶液を形成し、前記ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を混合してポリイミド前駆体組成物を形成し、前記ポリイミド前駆体組成物を支持体上にキャストし、乾燥してゲルフィルムを製造し、並びに前記ゲルフィルムを熱処理してポリイミドフィルムを形成する、ステップを含んで製造されてもよい。二無水物単量体、ジアミン単量体に関する説明は前述したので、その説明は省略する。
【0038】
まず、二無水物単量体及びジアミン単量体を反応させ、ポリアミック酸を製造することができる。より詳細には、二無水物単量体及びジアミン単量体を有機溶媒中で重合してポリアミック酸溶液を製造することができる。この場合、すべての単量体は一度に添加されるか、または各単量体は順次添加されてもよく、この場合、単量体間の部分的重合が起こることもある。
【0039】
有機溶媒としては、ポリアミック酸が溶解できる溶媒であれば特に限定されず、例えば、非プロトン性極性有機溶媒(aprotic polar organic solvent)であってもよい。非プロトン性極性有機溶媒の非限定的な例として、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチルピロリドン(NMP)、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用されてもよい。場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助溶媒を使用してポリアミック酸の溶解度を調節することもできる。一具現例において、有機溶媒はアミド系溶媒であってもよく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
その後、ポリアミック酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を混合してポリイミド前駆体組成物を形成することができる。
【0041】
脱水剤とは、ポリアミック酸に対する脱水作用によって閉環反応を促進するものであり、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’-ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して使用されてもよい。その中でも、入手の容易性、及びコストの観点から、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、乳酸無水物などの脂肪族酸無水物を単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0042】
イミド化剤とは、ポリアミック酸に対する閉環反応を促進する効果を有する成分を意味し、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、及び複素環式3級アミンなどが用いられる。その中でも、触媒としての反応性の観点から、複素環式3級アミンを使用されてもよい。その例としては、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどがあり、これらは単独でまたは2種以上混合して使用されてもよい。
【0043】
脱水剤及びイミド化剤の添加量は特に限定されるものではないが、脱水剤は、ポリアミック酸のうち、アミック酸基1モルに対して約0.5モル~約5モル(例えば、0.5モル、1モル、1.5モル、2モル、2.5モル、3モル、3.5モル、4モル、4.5モルまたは5モル)、例えば、約1.0モル~約4モルの割合で添加されてもよく、イミド化剤は、ポリアミック酸のうち、アミック酸基1モルに対して約0.05モル~約3モル(例えば、0.05モル、0.1モル、0.5モル、1モル、1.5モル、2モル、2.5モルまたは3モル)、例えば、約0.2モル~約2モルの割合で添加されてもよく、前記範囲でイミド化が十分であり、フィルム状にキャストすることが容易である。
【0044】
一具現例によれば、ポリアミック酸は、ポリイミド前駆体組成物の総重量を基準にして約5重量%~約35重量%(例えば、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、または35重量%)で含まれてもよい。前記範囲内において、前駆体組成物は、フィルムを形成するのに適した分子量及び溶液粘度を有する。前駆体組成物の総重量を基準にして、ポリアミック酸は、例えば、約10重量%~約30重量%、他の例を挙げると、約15重量%~約20重量%で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
一具現例によれば、ポリイミド前駆体組成物は、25℃で、約100,000cP~約500,000cP(例えば、100,000cP、150,000cP、200,000cP、250,000cP、300,000cP、350,000 cP、400,000cP、450,000cPまたは500,000cP)の粘度を有してもよい。前記範囲において、ポリアミック酸が所定の重量平均分子量を有するようにしながらも、ポリイミドフィルム製膜時に工程性に優れたものとすることができる。ここで、「粘度」はブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定されてもよい。前駆体組成物は、25℃で、例えば、約150,000cP~約450,000cP、他の例を挙げると、約200,000cP~約400,000cP、別の例を挙げると、約250,000cP~約350,000cPの粘度を有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
その後、ポリイミド前駆体組成物を支持体上にキャストし、乾燥してゲルフィルムを製造することができる。
【0047】
支持体は、当技術分野において通常使用される支持体が制限なく使用されてもよく、このような支持体の例としては、ガラス板、アルミニウム箔、無端(endless)ステンレスベルト、ステンレスドラムなどが挙げられる。
【0048】
乾燥は、例えば、約40℃~約300℃、他の例を挙げると、約80℃~約200℃、別の例を挙げると、約100℃~約180℃、別の例を挙げると、約100℃~約130℃の温度で行われてもよく、これによって脱水剤及びイミド化剤が活性化し、部分的に硬化及び/または乾燥が起こることによってゲルフィルムが形成されてもよい。ゲルフィルムは、ポリアミック酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有する。
【0049】
場合によっては、最終的に得られるポリイミドフィルムの厚さ及び大きさを調節し、配向性を向上させるためにゲルフィルムを延伸するステップをさらに含んでもよく、延伸は、機械搬送方向(MD)及び機械搬送方向に対する横方向(TD)のうち少なくとも1つの方向で行われてもよい。
【0050】
前記ゲルフィルムの揮発分含有量は、これに限定されるものではないが、約5重量%~約500重量%、例えば、約5重量%~約200重量%、他の例を挙げると、約5重量%~約150重量%であってもよく、前記範囲において、後にポリイミドフィルムを得るために熱処理する過程中、フィルム破断、色調ムラ、特性変動などの欠点が生じることを回避する効果がある。ここで、ゲルフィルムの揮発分含有量は、下記式2を用いて算出することができ、式2のうち、Cは、ゲルフィルムの重量、Dは、ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量を意味する。
【0051】
<式2>
(C-D)×100/D
【0052】
一具現例によれば、ゲルフィルムを熱処理するステップでは、ゲルフィルムを約50℃~約700℃、例えば、約150℃~約600℃、他の例を挙げると、約200℃~約600℃の範囲の可変的な温度で熱処理してゲルフィルムに残存する溶媒などを除去し、残っているほとんどのアミック酸基をイミド化してポリイミドフィルムを得ることができる。
【0053】
場合によっては、前記のように得られたポリイミドフィルムを約400℃~約650℃の温度で約5秒~約400秒間加熱して仕上げ、ポリイミドフィルムをさらに硬化することもでき、得られたポリイミドフィルムに残留し得る内部応力を緩和するために、所定の張力下でこれを行うこともできる。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明することにする。ただし、これは、本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されるものと解釈されてはいけない。
【0055】
実施例
実施例1~13及び比較例1~3
ジメチルホルムアミド(DMF)中に二無水物単量体として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、ピロメリット酸二無水物、ジアミン単量体として、m-トリジン(m-TD)と、4,4’-オキシジアニリン(ODA)とを下記表1に記載されたモル比率で混合した後、重合して固形分含有量が18.5重量%のポリアミック酸溶液を製造した。このとき、二無水物単量体とジアミン単量体とのモル数は実質的に等モルをなすようにした。
【0056】
このように製造されたポリアミック酸溶液に、アミック酸基1モル当たり3.5モル比の酢酸無水物及び1.1モル比のイソキノリンを添加してポリイミドフィルム製造用組成物を得て、前記組成物をドクターブレードを用いてSUSプレート(100SA、Sandvik社)上にキャストし、90℃で4分間乾燥してゲルフィルムを製造した。前記ゲルフィルムをSUSプレートと分離した後、250~380℃で14分間熱処理し、50μmの平均厚さを有するポリイミドフィルムを製造した。
【0057】
ただし、比較例3の場合、ポリイミドフィルムが製造されなかった。
【0058】
評価例:モジュラス(単位:GPa)、降伏点(単位:%)、降伏強度(単位:Mpa)の測定
【0059】
製造したポリイミドフィルムを15mm×50mmに切断して試験片を製造し、ASTM D 882基準に基づき、引張速度を200mm/分として引張試験機(Instron 5564、Instron社)を用いて室温(room temp.)でモジュラス、降伏点及び降伏強度を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
前記表1から確認できるように、BPDAの含有量及び式1による値が、本発明の範囲を満たす実施例1~13は、本発明の範囲に属する低いモジュラスを有すると共に高い降伏点を有し、その結果、ポリイミドフィルムに加えられる繰り返し変形に対する損傷の程度が少ないことが容易に予測される。
【0062】
一方、BPDAの含有量が本発明の範囲に及ばず、式1による値が本発明の範囲に及ばない比較例1のポリイミドフィルムは、降伏点が2.16%と低かった。BPDAの含有量が本発明の範囲に属するが、式1による値が本発明の範囲から外れる比較例2のポリイミドフィルムは、モジュラスが4.6GPaと高かった。したがって、比較例1、2のポリイミドフィルムは、繰り返し変形が加えられる場合、損傷の程度が大きいことが予測される。
【0063】
一方、BPDAの含有量が、本発明の範囲を超過する比較例3の場合、前述の製造方法の適用時にポリイミドフィルムの製造が不可能であった。
【0064】
本発明の単なる変形または変更は、この分野における通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更はいずれも、本発明の領域に含まれるものと認められる。