(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】塩化水素酸化反応工程用成型触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240530BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240530BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240530BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240530BHJP
C01B 7/04 20060101ALI20240530BHJP
C01G 23/047 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B01J23/63 M
B01J23/46 301M
B01J37/02 101D
B01J37/08
C01B7/04 A
C01G23/047
(21)【出願番号】P 2022539366
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2020014259
(87)【国際公開番号】W WO2021137399
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179875
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ジン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183237(JP,A)
【文献】特開2011-183238(JP,A)
【文献】特開2002-292279(JP,A)
【文献】特開2008-155199(JP,A)
【文献】特開2014-105128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/63
B01J 23/46
B01J 37/02
B01J 37/08
C01B 7/04
C01G 23/047
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素酸化反応工程用成型触媒であって、
前記
塩化水素酸化反応工程用成型触媒は成型担体100重量部に対して、ルテニウム酸化物1乃至10重量部及び金属酸化物を0.5乃至10重量部を含
み、
前記金属酸化物はセリアを含み、
前記塩化水素酸化反応工程用成型触媒はペレット形態であり、圧縮強度(crushing strength)が32乃至200Nである
ことを特徴とする塩化水素酸化反応工程用成型触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物
は、ジルコニアを含む
請求項1に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒。
【請求項3】
前記金属酸化
物は、セリア:ジルコニアの含有量比が1:0.5乃至1である
請求項2に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒。
【請求項4】
前記成型担体はアルミナ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくともいずれか1つ以上を含む
請求項1に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒。
【請求項5】
前記ペレット形態
は、直径が1乃至10mmである
請求項
1に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒。
【請求項6】
請求項1に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法であって、
金属酸化物添加剤及びルテニウム酸化物から選択される少なくともいずれか1つ以上を成型担体に含浸して製造され
、
前記含浸は、担体を成型し金属酸化物添加剤とルテニウム酸化物を同時に添加して含浸するか、または、担体を成型し金属酸化物添加剤を先に添加して含浸し、ルテニウム酸化物を後で添加して含浸し、
前記金属酸化物添加剤は、セリウムの錯塩を含む
ことを特徴とする塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法。
【請求項7】
前記含浸後に乾燥及び焼成することをさらに含む
請求項
6に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物添加剤は、ジルコニウムの錯塩をさらに含む
請求項
6に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法。
【請求項10】
前記成型担体はアルミナ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくともいずれか1つ以上を含む
請求項
6に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥は10℃乃至120℃で3時間乃至5時間の間行う
請求項
7に記載の塩化水素酸化反応用成型触媒の製造方法。
【請求項12】
前記焼成は350℃乃至700℃で行われる
請求項
7に記載の塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の触媒の存在下で塩化水素酸化反応による
ことを特徴とする塩素の製造方法。
【請求項14】
前記塩化水素酸化反応は280℃乃至380℃で行
う
請求項
13に記載の塩素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程であるディーコン法(Deacon process)で適用される成型触媒であって、過酷な反応条件に露出されても触媒の活性減少が少ないので耐久性が高く、触媒の機械的強度に優れて固定層触媒反応管での使用に適合した成型触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1868年Henry Deaconによって開発された塩化水素の触媒的気相酸化反応であるディーコン法(Deacon process)はポリウレタンとポリカーボネートの生産過程で生じた副産物である塩化水素を塩素に再生する環境に優しくエネルギー効率的な工程である。初期のディーコン法(Deacon process)で使用されるCuO/CuCl2触媒は活性が非常に低く400℃以上の反応温度で行わなければならず、反応中に活性物質である銅酸化物が揮発性の高い塩化銅系物質に転換された後、消失して触媒耐久性が低い問題点がある。
【0003】
1999年Sumitomo Chemicalはルチル型のチタニア担体に活性物質であるルテニウム酸化物をepitaxialな方向に担持した新しい種類のディーコン法(Deacon process)触媒を開発し、該触媒は300℃の低い反応温度でも塩素を生成する特徴を持つ。ただし、これは塩化水素酸化反応は発熱反応で反応管内部のHot-spotでは局部的に反応温度より高い温度が形成され、これは活性物質であるルテニウム酸化物の分散度を減少させる焼結現象を招いて長期間の反応運転時に触媒の活性が持続的に減少する問題点がある。
【0004】
上述のように、ディーコン法(Deacon process)で触媒の耐久性と活性、寿命などを満たすことは非常に難しい。また、かかる触媒の大半は反応器の形態や運転条件などが難しく使用に多くの制約がある。特に、粉末状の場合、固定層反応器に使用した場合、触媒層の前段と後段に差圧が生じて運転が不可能な問題が生じる場合もある。したがって、上記言及した様々な問題点を解決するために多様な触媒に対する研究は現在進行中である。
【0005】
例えば、特許文献1はルテニウムをベースとした担持された触媒を持つ気相酸化によって塩素を生成する方法に関し、触媒担体が50nmを超える気孔直径を持つ複数個の気孔を有し、触媒活性成分としてルテニウム、ルテニウム化合物を含有するナノ粒子を担持したことを開示している。
【0006】
特許文献2は酸化アルミニウムを含む支持体上に1つ以上の活性金属を含み機械的安定性の高い気相反応触媒に関し、上記支持体の酸化アルミニウム成分は実質的にα-アルミニウムオキシドを含むことを開示している。特に、触媒の総重量を基準として、α-Al203で製造された支持体上にa)0.001乃至10重量%のルテニウム、銅及び/又は金、b)0.1乃至10重量%のニッケル、c)0乃至5重量%の1つ以上のアルカリ土類金属、d)0乃至5重量%の1つ以上のアルカリ金属、e)0乃至5重量%の1つ以上の希土類元素、f)パラジウム、白金、イリジウム及びレニウムから選択されるものを含むことを特徴とし、上記触媒は塩化水素の酸化(ディーコン反応)に使用されることを言及している。
【0007】
特許文献3は触媒が支持体としてカ焼された二酸化スズと少なくとも1つのハロゲン含有ルテニウム化合物を含む酸素を使用した塩化水素の触媒的気相酸化による塩素の製造のための触媒及びその用途に関して開示している。
【0008】
最後に、非特許文献1はNH3によるNOxの選択的触媒還元のための触媒に関し、酸化反応用触媒としてCe-Zr-Ti oxide catalystについて言及している。
【0009】
前述のように、塩化水素酸化反応に使用される触媒は多様に研究開発されている。本発明ではディーコン法(Deacon process)で優れた触媒の耐久性と機械的強度を提供して反応器の形態、運転条件などにかかわらず使用に制約がなく、取り扱いが容易な塩化水素酸化反応用触媒の開発を提供するために完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】大韓民国公開特許第10-2012-0040701号(2012.04.27)
【文献】大韓民国公開特許第10-2011-0107350号(2011.09.30)
【文献】大韓民国公開特許第10-2013-0100282号(2013.09.10)
【非特許文献】
【0011】
【文献】A CeO2/ZrO2-TiO2 Catalyst for the Selective Catalytic Reduction of NOx with NH3 (Catalysts, pp.592.2018.08.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0013】
本発明の目的は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程で発生するルテニウム酸化物の焼結現象を解決して長時間の触媒運転にもかかわらず最初の触媒活性を維持することにある。
【0014】
本発明の目的は、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程でペレット形態の触媒で提供して工程過程でこれらが粉砕されないように高い機械的強度を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0016】
本発明の一実施例によれば、塩化水素酸化反応工程用成型触媒であって、上記成型触媒はルテニウム酸化物、金属酸化物添加剤及び成型担体を含めて提供される。
【0017】
本発明の一実施例によれば、金属酸化物添加剤及びルテニウム酸化物から選択される少なくともいずれか1つ以上を成型担体に含浸して製造されることを特徴とする塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の一実施例によれば、上記製造方法によって製造された塩化水素酸化反応用成型触媒が提供される。
【0019】
本発明の一実施例によれば、上記成型触媒の存在下で塩化水素酸化による塩素の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明による触媒は塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程で発生するルテニウム酸化物の焼結現象を解決して長時間の触媒運転にもかかわらず最初の触媒活性を維持できる。
【0021】
本発明による触媒は塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程でペレット形態の触媒で提供され、これらが工程過程で粉砕されないように高い機械的強度を提供できる。
【0022】
本発明による触媒は高い触媒活性及び耐久性を提供し、反応器の形態、運転条件などにかかわらず使用に制約がなく取り扱いの容易さを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されることはできない。ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【実施例】
【0024】
実施例1
【0025】
チタニア粉末(SAKAI社)20g、セルロース系有機バインダ(YUKEN社)0.4g、TiO2ゾル(SAKAI社)2.5g、DIW9.0gをまんべんなく混ぜて練ったものを押出した成型担体を100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された成型担体を2~3mm間隔で切った後、600℃電気炉で3時間焼成してTiO2成型担体を完成した。硝酸セリウム水和物(Kanto社)2.6gと塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW6.0gに同時に溶解した前駆体溶液をTiO2成型担体に含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された成型担体を350℃電気炉で3時間焼成してルテニウム酸化物含有量が2.6%、セリア含有量が5.0%の成型触媒を得た。すなわち、成型担体を先に製造した後、金属酸化物とルテニウム酸化物を同時に含浸した(方法2)で行った。
【0026】
実施例2
【0027】
まず実施例1と同じ方法でTiO2成型担体を備えた。硝酸セリウム水和物(Kanto社)2.6gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液をTiO2成型担体に含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された成型担体を600℃電気炉で3時間焼成してセリア含有量が5.0%の成型担体を得た。塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液を成型担体20gに含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。最終的には、乾燥された成型担体を350℃電気炉で3時間焼成してルテニウム酸化物含有量が2.6%、セリア含有量が5.0%の成型触媒を得た。すなわち、成型担体を先に製造した後、金属酸化物を添加した後、ルテニウム酸化物を含浸した(方法3)で行った。
【0028】
実施例3
【0029】
まず実施例1と同じ方法でTiO2成型担体を備えた。硝酸セリウム水和物(Kanto社)1.3gと塩化ジルコニウム水和物(Kanto社)1.3gをDIW6.0gに同時に溶解した前駆体溶液をTiO2成型担体に含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥させた。乾燥された成型担体を600℃電気炉で3時間焼成してセリア含有量が2.5%、ジルコニア含有量が2.5%の成型担体を得た。塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液を成型担体20gに含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。最終的には、乾燥された成型担体を350℃電気炉で3時間焼成してルテニウム酸化物含有量が2.6%、セリア含有量が2.5%、ジルコニア含有量が2.5%の成型触媒を得た。すなわち、成型担体を先に製造した後、金属酸化物を添加した後、ルテニウム酸化物を含浸した(方法3)で行った。
【0030】
実施例4(比較例)
【0031】
まず実施例1と同じ方法でTiO2成型担体を備えた。塩化ジルコニウム水和物(Kanto社)2.6gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液をTiO2成型担体に含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された成型担体を600℃電気炉で3時間焼成してジルコニア含有量が5.0%の成型担体を得た。塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液を成型担体20gに含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。最終的には、乾燥された成型担体を350℃電気炉で3時間焼成してルテニウム酸化物含有量が2.6%、ジルコニア含有量が5.0%の成型触媒を得た。すなわち、成型担体を先に製造した後、金属酸化物を添加した後、ルテニウム酸化物を含浸した(方法3)で行った。
【0032】
実施例5(比較例)
【0033】
硝酸セリウム水和物(Kanto社)2.6gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液をチタニア粉末(SAKAI社)20.0gに含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された粉末を350℃電気炉で3時間焼成してセリア含有量が5.0%の粉末担体を得た。粉末担体20g、セルロース系有機バインダ(YUKEN社)0.4g、TiO2ゾル(SAKAI社)2.5g、DIW9.0gをまんべんなく混ぜて練ったものを押出した成型担体を100℃オーブンで4時間乾燥した。乾燥された成型担体を2~3mm間隔で切った後、600℃電気炉で3時間焼成して成型担体を完成した。塩化ルテニウム水和物(KOJIMA)0.8gをDIW6.0gに溶解した前駆体溶液を成型担体20gに含浸させた後、100℃オーブンで4時間乾燥した。最終的には、乾燥された成型担体を350℃電気炉で3時間焼成してルテニウム酸化物含有量が2.6%、セリア含有量が5.0%の成型触媒を得た。すなわち、金属酸化物を先に添加した後、触媒成型後にルテニウム酸化物を含浸した(方法1)で行った。
【0034】
上記実施例の触媒能力の評価を下記のような条件で実験を進めた。
【0035】
実験例1-成型触媒の機械的強度評価
【0036】
成型触媒の機械的強度を評価するためにChatillonフォースゲージDFE2-025(100N×0.1)を用いて縦方向の圧縮強度を測定した。
【0037】
ヤスリを用いて製造された成型触媒サンプルの上段部と下段部を平らに削った後、測定用スタンドに該当成型触媒を垂直方向に位置させた。フォースゲージを5mm/secの下降速度で成型触媒と接触させて成型触媒が破壊される瞬間の圧縮強度を測定した。各成型触媒あたり15個のサンプルの圧縮強度を測定した後、最大値と最小値を除いた残りの値の平均値を記録した。これに対する結果を表1に示した。
【0038】
実験例2-成型触媒の活性評価
【0039】
成型触媒の活性を評価するために、Nickel 201材質の固定層反応管で塩化水素酸化反応を行った。
【0040】
実施例の成型触媒1.35gをアルミナペレット(Saint-Gobain社)7gで希釈した後、外径1inchチューブの固定層反応管に充填した。反応温度を触媒層を基準として300℃に設定し、常圧で100ml/minの速度で反応物である塩化水素と酸素気体を供給して塩化水素酸化反応を行った。反応開始後22時間が経って触媒の活性が十分に安定化状態に到達した後、反応管後段の気体を15%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることでサンプリングを5分間実行した。続いて、ヨウ素滴定法で塩素の生成量を測定して下記式1によって塩化水素の空時収量(space time yield(STY))を計算した。これに対する結果を表1に示した。
【0041】
【0042】
実験例3-成型触媒の熱的安定性評価
【0043】
成型触媒の耐久性を評価するために既存の反応温度(300℃)より高い反応温度(380℃)で塩化水素酸化反応を行った後、再度既存の反応温度(300℃)で反応を行うことで過酷な条件に露出される前後の触媒の活性を比較した。
【0044】
製造されたペレット成型触媒を充填した反応管を触媒層を基準として300℃の反応条件で22時間行って触媒の活性が十分に安定した状態に到達した後、塩素生成量を測定して転化率Aを計算した。続いて、触媒層を基準として380℃の過酷な条件を設定して24時間反応を行った後、再度触媒層温度を300℃に下げた後の塩素生成量を測定して転化率Bを計算した。転化率Aと転化率Bの比を用いて下記式2のように劣化度を計算して触媒の熱的安定性を比較した。
【0045】
【0046】
【0047】
表1の結果を見てみると、実施例1、2及び5の場合、圧縮強度又は空時収量に優れた結果を示した。ただし、実施例1の場合、触媒の機械的強度には優れるが、酸化反応の転化率が多少惜しい点があり、実施例5(比較例)の場合、空時収量において有利であるが触媒の機械的強度が脆く工程過程でパウダー状に粉砕されるおそれがあって商業化工程に使用するには無理があることが確認できる。一方、実施例2の場合、圧縮強度にも優れ酸化反応活性にも優れるので、商業化工程に非常に適合した触媒であることが確認できた。
【0048】
【0049】
実施例2乃至4の場合は金属酸化物を含めて前述の方法3によって製造した場合、全般的に触媒の強度、活性度及び劣化度に優れることが確認できた。特に、セリアとジルコニア金属酸化物を同じ含有量比で含む実施例3の場合、機械的強度と触媒耐久性のいずれにも優れ商業工程で長時間の触媒運転に最も適合した触媒であることが確認できた。よって、塩素の商業工程で発生するルテニウム酸化物の焼結現象を解決して長時間の触媒運転にもかかわらず最初の触媒活性を維持できることを確認した。
【0050】
したがって、本発明による成型触媒は特に、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程であるディーコン法(Deacon process)で、過酷な反応条件に露出されても触媒の活性減少が少ないので耐久性が高く、触媒の機械的強度に優れた成型触媒で提供できることを確認した。
【0051】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0052】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。
【発明を実施するための形態】
【0053】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0054】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0055】
本発明の一実施例によれば、塩化水素酸化反応工程用成型触媒であって、上記成型触媒はルテニウム酸化物、金属酸化物添加剤及び成型担体を含む塩化水素酸化反応工程用成型触媒が提供される。
【0056】
特に、本発明による成型触媒は金属酸化物添加剤の含有量比、含浸順序、含浸後の焼成温度を調節しながら成型した担体にルテニウム酸化物を担持して触媒の耐久性、機械的強度及び触媒の活性を調節または向上させたことを特徴とする。
【0057】
この場合、上記成型触媒は成型担体100重量部に対して、ルテニウム酸化物1乃至10重量部及び金属酸化物を0.5乃至10重量部を含むことを特徴とする。すなわち、少なくとも1種以上の金属酸化物を含めて触媒を成型することによって、触媒の活性と耐久性を大きく向上させることができる。
【0058】
本発明の一実施例によれば、上記金属酸化物添加剤はセリア、ジルコニア、アルミナ、シリカから選択される少なくともいずれか1つ以上を含むことを特徴とする。好ましくはセリアとジルコニアが提供されることができ、セリア:ジルコニアの含有量比は1:0.5乃至1で提供され得る。好ましくは1:1で提供され得る。上記範囲で金属酸化物が提供される場合、これは後述する実施例の表2の結果に照らして、セリアとジルコニア金属酸化物を同じ含量比で含む実施例3の場合、機械的強度と触媒耐久性のいずれにも優れ商業工程で長時間の触媒運転に最も適合した触媒であることを確認できる。
【0059】
本発明の一実施例によれば、上記金属酸化物はその前駆体の形態で提供され得る。例えば、セリウム前駆体が錯塩の形態で存在が可能で、セリウム化合物、特に硝酸セリウム、酢酸セリウム又は塩化セリウムなどのような金属塩を含むことができる。好ましくは硝酸セリウムが提供され、これに限定されない。前駆体の形態で担体に含浸された後、乾燥及び焼成のステップを経て最終成型触媒で提供される。
【0060】
本発明の一実施例によれば、上記成型担体はアルミナ、チタニア及びジルコニアから選択される少なくとも1つ以上を含むことができる。好ましくはチタニア担体を提供できる。
【0061】
上記チタニア担体は例えば、アナターゼ型チタニア又はルチル型チタニア、非晶質チタニア又はこれらの混合物が使用可能である。また、チタニア担体はアルミナ、ジルコニア又は酸化ニオブのような酸化物を含むことができる。好ましくはルチル型チタニアが提供され、例えばSAKAI社のチタニアが提供されることができ、これに限定されない。チタニア担体の比表面積は通常使用されるBET法によって測定されることができ、比表面積は5乃至300m2/g、好ましくは5乃至50m2/gが提供される。比表面積が上記範囲を超える場合は酸化ルテニウムの熱安定性の確保に困難が生じる可能性があり、上記範囲未満の場合は高分散が難しく、触媒の活性も低くなる問題があるので上記範囲が好ましい。
【0062】
上記アルミニウム担体の場合は好ましくはα-アルミナが提供される。これは低いBET比表面積を持つため、他の不純物の吸収が起きにくい点から好ましい。この場合、比表面積は10乃至500m2/g、好ましくは20乃至350m2/gが提供される。
【0063】
上記ジルコニア担体の場合には0.05乃至10μm範囲の細孔を持つものであって、比表面積は上記と同一である。
【0064】
本発明の一実施例によれば、上記触媒は粉末、粒子及びペレット形態から選択される少なくとも1つで提供されることができ、好ましくはペレット形態で提供され得る。この場合、上記ペレットの直径が大きすぎると触媒の活性度で不利なので直径は好ましくは1乃至10mmで提供されることが好ましい。
【0065】
本発明の一実施例によれば、上記成型触媒は圧縮強度(crushing strength)が5乃至200Nで提供される。
【0066】
本発明の一実施例によれば、成型触媒は下記化学式1による空時収率が提供される。
【0067】
【0068】
本発明の一実施例によれば、成型触媒は下記化学式2による劣化度が提供される。
【0069】
【0070】
上記圧縮強度、空時収量(STY)及び劣化度に対するデータは後述する実験例の結果から確認できる。すなわち、本発明による成型触媒は担体にセリア、ジルコニアなどの金属酸化物の含有量比、含浸順序、含浸後の焼成温度などを調節して成型した担体にルテニウム酸化物を担持して触媒の活性、耐久性及び機械的強度を向上させて提供する。これは、塩化水素の酸化反応による塩素の商業生産工程に非常に適合した触媒で提供できる。
【0071】
本発明の実施例によれば、成型触媒の場合、ルテニウムは酸化数は4で、好ましくは二酸化ルテニウム(RuO2)で提供され、塩化水素を酸化させて塩素を製造することに用いられる。ただし酸化数及び形態はこれに限定されない。
【0072】
一方、本発明の一実施例によれば、塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法が提供される。以下、前述した製造方法と同じ内容が適用されることができ、重複する範囲内で説明は省略することとする。また、製造方法でその順序は必要に応じて変形されることができ、これは当業者レベルで自由に変形製造が可能であることを意味する。
【0073】
本発明の一実施例によれば、金属酸化物添加剤及びルテニウム前駆体から選択される少なくともいずれか1つ以上を成型担体に含浸して製造されることを特徴とする塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法が提供される。
【0074】
本発明の一実施例によれば、上記塩化水素酸化反応工程用成型触媒の製造方法は必要に応じて乾燥及び焼成することをさらに含むことができる。さらに、金属酸化物添加剤の含浸順序、含浸後の焼成温度を異ならせて成型触媒の著しく向上した機械的強度を提供できる。後述した方法1乃至方法3によって提供され、好ましくは方法2又は方法3が提供され得る。
【0075】
本発明の一実施例によれば、上記含浸は金属酸化物添加剤を先に添加して担体を成型し、ルテニウム前駆体を後で添加して含浸すること(方法1)を特徴とする。例えば、金属酸化物添加剤が溶解された溶液を製造して担体に含浸させるステップ;1次乾燥及び焼成して粉末担体を得て成型するステップ;ルテニウム前駆体が溶解された溶液を製造して、上記成型された粉末担体に含浸させるステップ;及び2次乾燥及び焼成して最終的に成型された担体を得るステップ;を含めて提供され得る。
【0076】
本発明の一実施例によれば、上記含浸は先に担体を成型し、金属酸化物添加剤とルテニウム前駆体を同時に添加して含浸すること(方法2)を特徴とする。例えば、担体を成型するステップ;金属酸化物添加剤及びルテニウム前駆体が溶解された溶液を製造して、上記担体に含浸させるステップ;及び乾燥及び焼成して成型担体を得るステップ;を含めて提供され得る。
【0077】
本発明の一実施例によれば、上記含浸は担体を成型し金属酸化物添加剤を先に添加して含浸し、ルテニウム前駆体を後で添加して含浸すること(方法3)を特徴とする。例えば、担体を成型するステップ;金属酸化物添加剤から選択される少なくとも1つ以上が溶解された溶液を製造して、上記担体に含浸させるステップ;1次乾燥及び焼成して成型担体を得るステップ;ルテニウム前駆体が溶解された溶液を製造して、上記成型担体に含浸させるステップ;及び2次乾燥及び焼成して最終的に成型された担体を得るステップ;を 含めて提供され得る。
【0078】
本発明の一実施例によれば、上記方法1乃至方法3で提供される上記金属酸化物添加剤は塩化系、硝酸系、硫酸系化合物から選択される少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする。さらに詳しくはセリウム、ジルコニウム、アルミニウム、シリコンなどのその前駆体が錯塩の形態で提供されることができ、これらが塩化系、硝酸系、硫酸系化合物で提供され得る。
【0079】
例えば、セリウム前駆体が錯塩の形態で存在が可能で、セリウム化合物、特に硝酸セリウム又は塩化セリウムなどのような金属塩を含むことができる。好ましくは硝酸セリウムで提供されて担体に含浸された後、乾燥及び焼成のステップを経て最終的にセリアの形態で成型触媒に提供される。
【0080】
本発明の一実施例によれば、ルテニウム前駆体は好ましくはハロゲン化物が提供され、最も好ましくは塩化物を含む塩化ルテニウムが提供される。ルテニウム化合物は、場合によっては、ルテニウム化合物の水和物が提供されることができ、これに限定されない。
【0081】
上記塩化ルテニウムは粉末の形態で用いて溶媒中に混合されることができ、溶媒には固体担体が懸濁されて沈殿体を形成して固体担体に沈積されて担持される。上記の沈積時に提供される温度は0℃乃至100℃、好ましくは0℃乃至50℃であって、その圧力は通常適用される0.1乃至1MPa、好ましくは大気圧で提供される。担持は空気雰囲気下または窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素のような不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この時、水蒸気を含むことができる。好ましくは上記不活性ガス雰囲気下で行うことが提供されるが、これに限定されない。
【0082】
上記ルテニウム前駆体が溶解される溶媒は水、アルコール及びニトリルから選択される少なくとも1つ以上を含めて提供される。提供される水は蒸留水、イオン交換水又は超純水(DIW)のような高純度水が提供される。使用する水に不純物を含有する場合は不純物が触媒に付着して触媒の活性を低下させ得る。アルコールの場合は有機溶媒はモノアルコールである場合があり、C3以上の1次アルコールのものが提供される。好ましくはC3アルコール系有機溶媒を提供し、好ましくは1-プロパノールを提供し、溶液の高い濡れ性(wettability)と疎水性(hydrophobicity)を活用してヒドロキシ基(-OH)が存在するチタニア担体の外表面にのみルテニウム成分を担持でき、酸化チタン成型担体又は粉末担体表面に担持されるルテニウムの分散度を高められる効果を提供する。また、提供される溶媒の量に制限があるわけではないが、溶媒量が多すぎると乾燥時間が長くかかるので、溶媒の量は当業者レベルで自由に調節できる。
【0083】
本発明の一実施例によれば、上記方法2又は方法3で言及する担体を成型するステップは固形分の担体に有機バインダ、無機バインダ及び水を混合して成型して成型担体を製造できる。成型された触媒は固定層反応器に適用可能である。よって、成型された触媒は反応器の形態、運転条件などにかかわらず使用に制約がなく取り扱いの容易さを提供できる。特に、固定層反応器に適用するにあたり差圧が生じることなく使用が可能で、触媒活性を高め熱的安定性を強化して向上した耐久性及び機械的強度を提供できる。
【0084】
上記有機バインダはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ソジウムカルボキシメチルセルロース、精製デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、パラフィン、ワックスエマルジョン及び微結晶ワックスから選択される少なくとも1つ以上を含めて提供され、これに限定されない。上記有機バインダを含むことで成型性を向上させることができる。
【0085】
上記無機バインダはアルミナゾル(alumina sol)、シリカゾル(silica sol)、チタニアゾル(titania sol)及びジルコニアゾル(zirconia sol)から選択される少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする。上記無機バインダを含むことで機械的物性を向上させることができる。
【0086】
本発明の一実施例によれば、上記成型された担体は乾燥及び焼成を行って最終成型担体として完成されることができる。上記乾燥及び焼成は必要に応じてその順序と回数は調節が可能であることは無論である。
【0087】
上記乾燥の場合、10℃乃至120℃で3時間乃至5時間の間行われる。乾燥は回転及び攪拌をしながら乾燥させることができる。乾燥容器を振動させたり、容器内に具備された攪拌機を用いても可能であり、これに限定されない。乾燥温度の場合、通常適用される室温で100℃程度が提供され、圧力の場合、通常適用される0.1乃至1MPa、好ましくは大気圧が提供され得る。
【0088】
上記焼成の場合、350℃乃至700℃で2時間乃至6時間の間行い、それ以後は室温で冷却させて行われる。焼成温度は好ましくは350℃乃至700℃が提供される。また、焼成に提供される酸化性気体としては、例えば、酸素を含む気体が挙げられる。その酸素濃度は通常適用される1乃至30容量%程度が提供される。酸素源として一般に空気または純粋な酸素が提供され、必要に応じて不活性ガスまたは水蒸気が含まれ得る。酸化性ガスは好ましくは空気が提供されることができ、空気流下の電気炉で約350℃で焼成を約3時間程度経った後、室温で冷却する。上記焼成によってセリウムは酸化セリウムであるセリアに酸化され、酸化セリウムは比較的高温でも安全性を確保できる。酸化セリウム触媒を含む反応の場合、平均温度は250℃乃至600℃の範囲で、好ましくは300℃乃至550℃で熱的安定性が提供される。550℃を超える場合は塩素製造時に塩素転化率で不利で、300℃未満の場合はセリウムの触媒活性が低下するため、上記範囲で反応を調節して熱的安定性を確保することが好ましい。
【0089】
本発明の一実施例によれば、上記成型触媒の存在下で塩化水素酸化反応による塩素の製造方法が提供される。反応の方式は固定相方式又は流動相方式、気相反応などが提供され、好ましくは気相反応が提供される。この酸化反応は平衡反応であって、過度な高温で行うと平衡転化率が下がるため、比較的低温で行うことが好ましく、反応温度は通常100℃乃至500℃、好ましくは280℃乃至380℃が提供される。また、反応圧力は通常0.1乃至5MPa程度である。酸素源としては空気を使用してもよく純粋な酸素を使用してもよい。塩化水素に対する酸素の理論的なモル量は1/4モルであるが、通常は0.1乃至10倍の酸素が提供される。また、塩化水素の供給速度は触媒1Lあたりガス供給速度(L/h;0℃、1気圧換算)、すなわちGHSVで示し、通常10乃至20000h-1程度である。ただし、この時投入される触媒の量は主に温度、触媒の量及び製造される塩素生成物の量によって若干の変形は可能である。