(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】臨床分析装置の臨床決定支援
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240530BHJP
【FI】
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2022557702
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021057165
(87)【国際公開番号】W WO2021191093
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】パーフレメント,イアン・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ポルシュ,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,フロリアン
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-198790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0379405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床決定支援情報をユーザ(15)に提供するためのシステム(10)であって、前記システム(10)が、
臨床決定支援モジュール(40)を備えるポイントオブケア(POC)検査装置(50)であって、前記POC検査装置(50)および前記臨床決定支援モジュール(40)が、
内部インターフェース(30)を介して接続される、ポイントオブケア検査装置(50)と、
前記ユーザ(15)と前記POC検査装置(50)との間の検査モジュール(20)であって、前記検査モジュール(20)が、前記ユーザ(15)から前記POC検査装置(50)に検査を要求し、前記POC検査装置(50)から前記ユーザ(15)および前記臨床決定支援モジュール(40)に前記内部インターフェース(30)を介して完了した検査結果を送信するように構成されている、検査モジュール(20)と、
通信接続(60)を介して前記POC検査装置(50)の前記臨床決定支援モジュール(40)に外部データを提供するように構成された複数のデータソース(70)であって、前記臨床決定支援モジュール(40)が、前記外部データおよび前記完了した検査結果を使用して、前記ユーザ(15)に特に適合した臨床決定支援情報を決定して提供するように構成されている、複数のデータソース(70)と、
前記ユーザ(15)と通信するように構成されたユーザインターフェース(110)と、
前記POC検査装置(50)内に統合され、前記ユーザインターフェース(110)と通信するように構成された内部データベース(90)と、
前記臨床決定支援モジュール(40)による使用のために前記ユーザ(15)からデジタルバイオマーカーを捕捉するように構成された、前記POC検査装置(50)に組み込まれたセンサ(120)と、
前記ユーザインターフェース(110)および前記通信接続(60)と通信するように構成された二次データフィード(100)であって、前記二次データフィード(100)が、
前記センサ(120)によって作成された患者の現実世界データを含
み、
前記二次データフィード(100)は、前記患者の現実世界データを、前記通信接続(60)を介して前記臨床決定支援モジュール(40)へ提供する、二次データフィード(100)と
を備える、システム(10)。
【請求項2】
前記POC検査装置(50)が、血糖計、凝固計、血液ガス分析装置、または免疫分析装置のうちの1つである、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記臨床決定支援情報が、検査結果に基づく患者の食事推奨、リアルタイムの投薬調整、投薬推奨、治療推奨、診断、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1および2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記複数のデータソース(70)が、実験室情報システム(LIS)および/または病院情報システム(HIS)および/または電子医療記録(EMR)データおよび/または他の診断装置からのデータを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記通信接続(60)が、前記複数のデータソース(70)からの前記外部データを調和させ、共通データプロトコル出力(115)を前記臨床決定支援モジュール(40)に提供するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記二次データフィード(100)が、
患者の前記検査結果を取得するために使用される試料の品質および/または量に関するデータを含む、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記現実世界データが、患者の食事データ、患者の健康測定値、個人の患者のバイオマーカーデータ、患者のバイタルサイン、患者の睡眠周期、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記POC検査装置(50)に統合された出力ディスプレイ(80)であって、前記出力ディスプレイ(80)が、前記臨床決定支援モジュール(40)からの前記臨床決定支援情報を表示するように構成されており、検査結果を前記ユーザ(15)に表示するように構成されている、出力ディスプレイ(80)をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記臨床決定支援情報が、検査ルーチンにおける変更、治療アドバイス、健康予測情報、およびそれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載のシステム(10)。
【請求項10】
ユーザ(15)に臨床決定支援を提供する方法であって、
ポイントオブケア(POC)検査装置(50)に臨床決定支援モジュール(40)を提供することと、
前記臨床決定支援モジュール(40)によって、内部インターフェース(30)を介して前記POC検査装置(50)か
ら前記ユーザ(15)の検査結果を受信することと、
前記臨床決定支援モジュール(40)によって、通信接続(60)を介して複数のデータソース(70)か
ら外部データを受信することと、
患者の現実世界データを提供する前記ユーザ(15)からの二次データフィード(100)を、前記通信接続(60)へ提供することと、
前記臨床決定支援モジュール(40)によって、
前記受信した検査結果および外部データ
と、前記二次データフィード(100)からの前記患者の現実世界データとに基づいて臨床決定支援
情報を決定することと、
前記臨床決定支援モジュール(40)によって、前記ユーザ(15)に特に適合した前記臨床決定支援情報を提供することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記複数のデータソース(70)からの前記外部データを共通データプロトコル出力(115)へと調和させることと、
調和させた前記外部データを前記臨床決定支援モジュール(40)に提供することと
をさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、ポイントオブケア(POC)装置における臨床決定支援モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
特定の種類の診断検査には、ベッドサイド検査またはポイントオブケア(POC)検査がある。この種類の診断検査は、主に、病院、救急科、集中治療室、プライマリケア施設、医療センタ、患者の家、診療所、薬局、または緊急事態の現場など、患者ケアの現場で利用可能な機器を操作するために主に訓練された看護師または医療スタッフによって実行される。POC検査装置で得られた測定結果をすぐに利用できるようにし、結果を医療チームの全てのメンバーと即座に共有できるようにすることで大きなメリットが得られ、これにより、ターンアラウンドタイムを短縮してコミュニケーションを強化できる。
【0003】
POC検査装置は、世界中で確立されており、公衆衛生において重要な役割を果たしている。ポイントオブケア(POC)検査システムは、典型的には、大規模なインビトロ診断(IVD)システムよりもいくつかの利点を有する。POC検査システムは、小さくすることができ、容易に移動されることができ、場合によっては救命効果を伴って迅速且つ正確な結果を提供することができる。POC検査システムの潜在的な運用上の利点は、意思決定の迅速化、手術時間の短縮、術後ケア時間の短縮、救急室の時間の短縮、外来診療の訪問回数の減少、必要な病院のベッド数の減少、および専門家の時間の全体的な最適な使用を含む。
【0004】
一般に、ポイントオブケアシステムの目標は、中央ラボの外に堅牢で接続された使いやすいポイントオブケアソリューションを提供し、即時の結果を提供し、かくして病院の内外でより迅速に治療決定を下すことを可能にすることにより、医療専門家と患者の両方が臨床的成果および医療経済的成果の向上を達成できるようにすることである。ポイントオブケア検査システムは、装置上、患者/病棟モニタ上の電子医療記録、移動中の臨床医、および直接患者に、必要な場所に必要なときに迅速且つ正確な検査結果を提供するという臨床的ニーズを満たすソリューションを提供する。
【0005】
さらに、POC検査システムは、患者(典型的には、非専門家ユーザ)が自己検査およびその後の治療を行うことを可能にすることによって患者のセルフケアに革命をもたらし、大きな医学的および経済的利点をもたらした。
【0006】
しかしながら、POC検査システムは、典型的にはいくつかの欠点を有する。すなわち、POCシステム検査装置は、ほとんどの場合、専門的な医学的アドバイスをその場で提供することができず、個々の患者によって提供される複数のデータソースの診断可能性の全てを完全には使用しない。
【0007】
したがって、POC装置自体のモジュールとして機能する臨床決定支援システムのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
概要
ユーザに臨床決定支援を提供するためのシステムが提示される。システムは、ポイントオブケア(POC)検査装置を備えることができる。POC検査装置は、POC検査装置に組み込まれることができる統合臨床決定支援モジュールを備えることができる。POC検査装置および臨床決定支援モジュールは、検査モジュール-臨床決定支援モジュールインターフェースを介して接続される。システムはまた、ユーザとPOC装置との間の検査結果インターフェースを備えることができる。検査結果インターフェースは、ユーザからPOC装置に検査を要求し、POC装置からユーザおよび内部インターフェースを介して臨床決定支援モジュールに完了した検査結果を送信するように構成されることができる。システムはまた、通信接続部を介してPOC装置の臨床決定支援モジュールに外部データを提供するように構成された複数の多様なデータソースを備えることができる。臨床決定支援モジュールは、外部データおよび完了した検査結果を使用して、ユーザに特に適合した臨床決定支援情報を決定して提供するように構成されることができる。臨床決定支援情報は、POC装置の出力ディスプレイに表示されることができる。
【0009】
本明細書で使用される「ポイントオブケア(POC)」または「ポイントオブケア(POC)環境」という用語は、病院、救急部門、集中治療室、一次医療施設、医療センタ、患者の家、診療所、薬局、または緊急事態の場所を含むがこれらに限定されない治療を提供することができる、医療検査および/または医療手当てなどの医療または医療関連サービスが行われる患者ケアの場所またはその近くの場所を意味すると定義されることができる。患者ケアはまた、患者自身の住宅で実行されることもできる。
【0010】
本明細書で使用される「通信接続部」という用語は、WiFi(商標)、Bluetooth(商標)、GSM(商標)、UMTSもしくは他の無線デジタルネットワークなどの任意のタイプの無線ネットワーク、またはイーサネット(商標)などのケーブルベースのネットワークを含むことができる。特に、通信接続部は、インターネットプロトコル(IP)を実装することができる。例えば、通信接続部は、ケーブルベースのネットワークと無線ネットワークとの組み合わせを含むことができる。通信接続部はまた、クラウドネットワーキングサービスを含むことができる。
【0011】
POC検査装置は、例えば手持ち式とすることができるかまたはベンチトップ型分析装置として存在することができる分析装置とすることができる。典型的なPOC検査装置の例は、血糖計、凝固計、血液ガス分析器、免疫分析器などとすることができる。
【0012】
本明細書で使用される「メータ」/「分析装置」/「分析機器」という用語は、測定値を取得するように構成された任意の装置または装置構成要素を含むことができる。分析装置は、様々な化学的、生物学的、物理的、光学的または他の技術的手順を介して、試料またはその成分のパラメータ値を決定するように動作可能とすることができる。分析装置は、試料または少なくとも1つの分析物のパラメータを測定し、得られた測定値を返すように動作可能とすることができる。分析装置から返される可能性のある分析結果のリストには、試料中の分析対象物の濃度、試料中の分析対象物の存在(検出レベルを超える濃度に対応)、光学パラメータ、DNAまたはRNA配列、タンパク質または代謝産物の質量分析から得られたデータ、および様々なタイプの物理的または化学的パラメータを示すデジタル(yesまたはno)結果が含まれることができる。分析機器は、試料および/または試薬のピペッティング、投与、および混合をアシストするユニットを備えることができる。分析装置は、分析を実施するための試薬を保持するための試薬保持ユニットを備えることができる。試薬は、例えば、個々の試薬または試薬のグループを含む容器またはカセットの形態で配置されることができ、貯蔵区画またはコンベヤ内の適切な容器または位置に配置されることができる。それは、消耗品供給ユニットを備えることができる。分析装置は、ワークフローが特定のタイプの分析用に最適化されることができるプロセスおよび検出システムを含むことができる。そのような分析装置の例は、化学的または生物学的反応の結果を検出するため、または、化学的もしくは生物学的反応の進行を監視するために使用される臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器、核酸分析器である。
【0013】
臨床決定支援は、患者の試料の検査結果に基づく患者の食事推奨、例えばインスリン、投薬調整、投薬推奨、治療推奨、診断、またはそれらの組み合わせなどのリアルタイムの投薬計画変更を提供することを含むことができる。
【0014】
「試料」、「患者試料」、「生物学的試料」という用語は、対象の分析物を含む可能性のある材料を指す。患者試料は、血液、唾液、眼の水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、培養細胞などを含む生理液などの生物学的供給源に由来する。患者試料は、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈、溶解などのように、使用前に前処理されることができる。処理方法には、ろ過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加などがある。患者試料は、供給源から取得したまま直接使用されることも、前処理後に試料の特性を変更するために使用されることもできる。いくつかの実施形態では、最初に固体または半固体である生物学的材料は、それを適切な液体媒体で溶解または懸濁することによって液体にされることができる。いくつかの実施形態では、試料は、特定の抗原または核酸を含むことが疑われる可能性がある。
【0015】
臨床決定支援情報をユーザに提供するためのさらなるシステムも提示される。システムは、統合臨床決定支援モジュールを備えるポイントオブケア(POC)検査装置を備えることができる。POC検査装置および臨床決定支援モジュールは、検査モジュール-臨床決定支援モジュールインターフェースを介して接続される。システムはまた、ユーザとPOC検査装置との間に検査モジュールを備えることができる。検査モジュールは、ユーザからPOC検査装置に検査を要求し、POC検査装置から内部インターフェースを介してユーザおよび臨床決定支援モジュールに完了した検査結果を送信するように構成される。システムはまた、通信接続部を介してPOC検査装置の臨床決定支援モジュールに外部データを提供するように構成された複数のデータソースを備えることができる。臨床決定支援モジュールは、外部データおよび完了した検査結果を使用して、ユーザに特に適合した臨床決定支援情報を決定および提供するように構成される。システムはまた、ユーザと通信するように構成されたユーザインターフェースと、POC検査装置内に統合され、ユーザインターフェースと通信するように構成された内部データベースと、ユーザインターフェースおよび通信接続部と通信するように構成された二次データフィードとを備えることができる。二次データフィードは、現実世界ユーザデータを含む。
【0016】
複数の多様な外部データソースは、例えば、実験室情報システム(LIS)および/または病院情報システム(HIS)および/または電子医療記録(EMR)データなどの様々な異なるソースからのデータ、および/または、例えば、連続血糖モニタリングシステムおよび/または例えば心拍数や体温などの患者からのバイタル健康信号を監視する装置などの患者自身からのデータを含むことができる。
【0017】
「データ管理ユニット」または「データベース」は、データを格納および管理するためのコンピューティングユニットとすることができる。これは、実験室の複数の分析装置またはPOC検査装置によって処理される生物学的試料に関連するデータを含むことができる。データ管理ユニットは、LIS(実験室情報システム)および/またはHIS(病院情報システム)に接続されることができる。データ管理ユニットは、実験室内のユニット、または実験室装置と同じ場所に配置されたユニットとすることができる。それは、制御ユニットの一部であってもよい。それはまた、POC検査装置に統合されてもよい。あるいは、データベースは、遠隔地にあるユニットとすることができる。例えば、それは、通信接続部を介して接続されたコンピュータ内で具体化されることができる。
【0018】
場合によっては、通信接続部は、複数の多様なデータソースからの外部データを調和させ、共通のデータプロトコルをPOC検査装置内の臨床決定支援モジュールに提供するように構成されることができる。外部データは、例えば、データウェアハウスアプローチ、ETL(抽出、変換、およびロード)プロセス、データレイク、データ連合、データハブなどを使用するなど、当業者に知られている任意の方法を使用して調和させることができる。
【0019】
システムは、ユーザからの第2のデータフィードおよびPOC装置の内部データベースをさらに備えることができる。ユーザからの第2のデータフィードは、履歴データを取得するために内部データベースとインターフェース接続することができる。次いで、第2のデータフィードは、ひいては第2のデータフィードデータを臨床決定支援モジュールに提供することができる通信接続部と通信することができる。
【0020】
第2のデータフィードは、検査結果を取得するために使用される試料の品質に関するデータを含むことができる。例えば、POC装置は、カメラを使用して、試料が検査に使用されるのに十分な量および/または品質であるかどうかを決定することができる。
【0021】
第2のデータフィードは、リアルタイムのユーザデータを含むことができる。システムのリアルタイムデータは、食事データ、ユーザの健康測定値、パーソナルユーザバイオマーカーデータ、例えば、脈拍数、24時間心拍数などのユーザのバイタルサイン、ユーザの睡眠周期、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
システムは、POC装置の出力インターフェースをさらに備えることができる。出力インターフェースは、臨床決定支援モジュールからの臨床決定支援情報をユーザに表示するように構成されることができる。臨床決定支援情報は、検査ルーチンにおける変更、治療アドバイス、健康予測情報、およびそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、出力インターフェースは、試料検査結果をユーザに表示するように構成されることができる。
【0023】
システムは、臨床決定支援モジュールによる使用のためにユーザからデジタルバイオマーカーを捕捉するためにPOC検査装置に組み込まれたセンサをさらに備えることができる。センサは、例えば、カメラ、指紋スキャナ、網膜スキャナ、呼気分析装置などを含むことができる。
【0024】
臨床決定支援情報をユーザに提供するためのさらなるシステムも提示される。システムは、統合臨床決定支援モジュールを備えるポイントオブケア(POC)検査装置を備えることができる。POC検査装置および臨床決定支援モジュールは、検査モジュール-臨床決定支援モジュールインターフェースを介して接続される。システムはまた、ユーザとPOC検査装置との間に検査モジュールを備えることができる。検査モジュールは、ユーザからPOC検査装置に検査を要求し、POC検査装置から内部インターフェースを介してユーザおよび臨床決定支援モジュールに完了した検査結果を送信するように構成される。システムはまた、通信接続部を介してPOC検査装置の臨床決定支援モジュールに外部データを提供するように構成された複数のデータソースを備えることができる。臨床決定支援モジュールは、外部データおよび完了した検査結果を使用して、ユーザに特に適合した臨床決定支援情報を決定および提供するように構成される。複数のデータソースは、実験室情報システム(LIS)および/または病院情報システム(HIS)および/または電子医療記録(EMR)データおよび/または他の診断装置からのデータを含むことができる。システムはまた、ユーザと通信するように構成されたユーザインターフェースと、POC検査装置内に統合され、ユーザインターフェースと通信するように構成された内部データベースと、ユーザインターフェースおよび通信接続部と通信するように構成された二次データフィードとを備えることができる。二次データフィードは、現実世界ユーザデータを含む。
【0025】
臨床決定支援情報をユーザに提供する方法も提示される。本方法は、ポイントオブケア(POC)検査装置に統合臨床決定支援モジュールを提供することと、内部インターフェースを介してPOC検査装置から臨床決定支援モジュールへユーザの検査結果を受信することと、通信接続部を介して複数の多様なデータソースから臨床決定支援モジュールへ外部データを受信することと、臨床決定支援モジュールによって、受信した検査結果および外部データに基づいて臨床決定支援情報を決定することと、ユーザに特に適合した臨床決定支援情報を提供することと、を含むことができる。
【0026】
本方法は、POC検査装置の出力ディスプレイを介して臨床決定支援情報をユーザに表示することをさらに含むことができる。出力ディスプレイはまた、検査結果をユーザに表示することができる。
【0027】
本方法は、複数の多様なデータソースからの外部データを共通のデータプロトコルになるように調和させることと、調和させた外部データをPOC検査装置の臨床決定支援モジュールに提供することと、をさらに含むことができる。外部データは、例えば、データウェアハウスアプローチ、ETL(抽出、変換、およびロード)プロセス、データレイク、データ連合、データハブなどを使用して調和させることができる。
【0028】
本方法は、POC検査装置を介してユーザから通信接続部への二次データフィードを提供することをさらに含むことができる。次いで、通信接続部は、二次データを臨床決定支援モジュールに提供することができる。二次データフィードは、リアルタイムのユーザデータおよびPOC検査装置に収容された内部データベースに記憶された履歴ユーザデータを提供することができる。
【0029】
要約すると、本開示は、POC検査装置に組み込まれた統合臨床決定支援モジュールを介して臨床決定支援情報をユーザに直接提供することができ、スマートフォンにインストールされた一般的なアプリによく似ている。臨床決定支援モジュールを携帯型POC検査装置に組み込むことによって、臨床決定支援モジュールは、患者を取り囲むデータエコシステム全体を使用する能力を有する。換言すれば、組み込まれた臨床決定支援モジュールを備えたPOC検査装置は、複数の内部ソースおよび外部ソースから患者データを収集し、そのデータを患者のヘルスケア決定のための支援として使用する、事実上のデータハブとして機能することができる。システムはまた、収集された全てのデータを使用することによって、患者の医療検査手順および/またはプロトコルに対する変更を推奨する能力を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照符号で示される以下の図面と併せて読むと最もよく理解できる。
【0031】
【
図1】本開示の実施形態にかかる、組み込まれた臨床決定支援モジュールを有するPOC分析装置を備える臨床決定支援システムを概略的に示している。
【
図2】本開示の別の実施形態にかかる、臨床決定支援モジュールおよび二次データフィードを有するPOC分析装置を備える臨床決定支援システムを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
以下の実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、限定ではなく例示として開示が実施され得る特定の実施形態が示されている添付の図面を参照する。他の実施形態を利用することができ、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、論理的、機械的および電気的変更を行うことができることを理解されたい。
【0033】
最初に
図1を参照すると、
図1は、統合臨床決定支援モジュール40を備えたポイントオブケア(POC)分析装置/検査装置50を備える臨床決定支援システム10を概略的に示している。POC検査装置50は、例えば手持ち式とすることができるかまたはベンチトップ型分析装置として存在することができる分析装置とすることができる。典型的なPOC検査装置50の例は、血糖計、凝固計、血液ガス計、免疫分析器などとすることができる。
【0034】
ユーザ15は、典型的には、POC検査装置50に組み込まれた検査モジュール20を介して、患者試料をPOC検査装置50に送信し、患者試料検査結果をPOC検査装置から受信することができる。検査モジュール20は、ユーザ15から受信した患者試料の分析を実行するPOC検査装置50内に収容されたモジュールとすることができる。ユーザ15は、POC検査装置50と相互作用する必要がある任意の人とすることができる。例えば、ユーザ15は、例えば、検査を受ける患者を支援する医師、看護師、検査技師、ナースプラクティショナー、医師の助手などの医療専門家とすることができ、および/またはユーザ15は、患者自身とすることができる。検査モジュール20は、検査モジュール-臨床決定支援モジュール30を介して、ユーザ15から受信した患者試料の検査結果を臨床決定支援モジュール40に提供するとともに、検査結果をユーザ15に提供することができる。一実施形態では、検査モジュール20はまた、検査結果をユーザ15に表示するためにPOC検査装置50の出力ディスプレイ80と相互作用することもできる。
【0035】
臨床決定支援システム10は、大きく2つの主要セクションに分けることができる。1つのセクションは、POC検査装置50自体を、例えば検査モジュール20および臨床決定支援モジュール40などの任意の組み込みモジュールと共に備えることができる。
【0036】
第2のセクションは、共通データプロトコル出力115を介して臨床決定支援モジュール40に通信可能に接続された通信接続部60を備えることができる。通信接続部60は、臨床決定支援モジュール40が臨床決定支援情報を生成するのを支援することができる外部データを受信することができる。外部データは、例えば、実験室情報システム(LIS)および/または病院情報システム(HIS)および/または電子医療記録(EMR)などの複数の多様な外部データソース70から到来することができる。複数の多様な外部データソース70はまた、例えば、連続グルコースモニタリングシステムおよび他のそのような臨床データソースなどの臨床システムを含むことができる。
【0037】
一実施形態では、通信接続部60は、臨床決定支援システム10を効率的に支援するために、複数の多様な外部データソース70からの外部データを調和させ、複数の多様な外部データソース70からの外部データを、ひいては臨床決定支援モジュール40に送信されることができる共通のデータプロトコル出力115に正規化することができる。外部データは、例えば、データウェアハウスアプローチ、ETL(抽出、変換、およびロード)プロセス、データレイク、データ連合、データハブなどを使用して調和させることができる。
【0038】
換言すれば、臨床決定支援システム10は、様々な接続された装置から、または例えばPOC検査装置50上の検査モジュール20もしくは通信接続部60を介した複数の様々な外部データソース70などの他の統合されたモジュールから到来することができるリアルタイムの患者データを臨床決定支援モジュール40に常にまたは一定の時間に供給することができる完全に機能的なデータハブとして機能すると考えることができる。そのようなリアルタイムの患者データの例は、患者試料検査結果、食事に関する患者データ、患者の健康測定値、個人の患者バイオマーカーデータ、例えば心拍数などの患者のバイタルサイン、患者の睡眠周期、およびそれらの組み合わせとすることができる。
【0039】
臨床決定支援モジュール40によって定式化された臨床決定支援情報は、その特定のユーザ15に特に適合されたユーザ15に提供される。一実施形態では、臨床決定支援情報は、出力ディスプレイ80上でユーザ15に表示されることができる。臨床決定支援情報は、例えば、患者の試料の検査結果に基づいて患者の食事の推奨、例えばインスリンなどのリアルタイムの投薬計画の変更、調整、投薬推奨、治療推奨、診断、健康予測情報、またはそれらの組み合わせを提供することを含むことができる。
【0040】
さらに、様々な手段を介して臨床決定支援システム10に供給される患者データの全ては、患者データの全てが適切に匿名化されている場合、臨床決定支援システム10内の他のPOC検査装置を使用して他の患者の臨床決定支援を改善するために使用されることもできる。換言すれば、1つのPOC検査装置からの匿名化された患者データは、別のPOC検査装置に送信された複数の多様な外部データソースのうちの1つとすることができる。
【0041】
一実施形態では、臨床決定支援システム10は、臨床アドバイザによるアドバイス、すなわちリアルタイムデータ供給に基づいて、患者が自身の検査ルーチンを変更する必要があり得ることをユーザ15にアドバイスすることができる。この実施形態では、ユーザ15に提供される臨床決定支援情報は、患者の検査ルーチンを変更するために使用されることができる。別の実施形態では、ユーザ15に提供される臨床決定支援情報は、患者の治療アドバイスとすることができるかまたは健康予測情報であってもよい。
【0042】
一実施形態では、複数の多様な外部データソース70のうちの1つは、グルコースモニタリングシステムとすることができる。この実施形態では、臨床決定支援情報は、例えば、インスリン投与推奨とすることができる。この臨床決定支援は、臨床的グルコース管理および患者のセルフケアに非常に有用であり得る。例えば、患者が自身のグルコースモニタリングシステムの一部としてインスリンポンプを使用する場合、臨床決定支援情報が使用されて、インスリンポンプをその場で制御するのを助けることができる。さらに、臨床決定支援システムはまた、患者および他の多様な外部データソースによって供給された臨床データを使用して、例えば、低炭水化物および/または高タンパク質および/または植物ベースおよび/またはグルテンフリーの食事などの異なる食事選択肢の推奨など、必ずしも患者の医学的自己治療に関連しない追加のアドバイスを提供することができる。
【0043】
別の実施形態では、臨床決定支援システム10は、凝固検査レジームの一部とすることができる。この場合、いくつかの外部因子が患者の凝固状態に影響を及ぼすことができる。例えば、臨床決定支援システム10は、臨床決定支援情報の開発を支援するために、内部データベース90または他の外部データソースからの以前の凝固患者データを使用することができるだけでなく、臨床決定支援システム10はまた、例えば、患者の食事ログなどの他のデータソースにもアクセスすることができ、そのようなログが患者によって保持されている場合、患者の投薬ログにもアクセスすることができる。以前の凝固患者データを食事および投薬ログと組み合わせることによって、凝固検査レジームの臨床決定支援情報は、その特定の患者に適合したアドバイスを直接提供することができる。
【0044】
図2に概略的に示す別の実施形態では、臨床決定支援システム10は、統合臨床決定支援モジュール40および二次データフィード100を有するPOC分析装置/検査装置50を備える。この実施形態は、
図1に示す実施形態と同様であり、同じ特徴に対して同じ参照符号を使用する。しかしながら、
図2に示す実施形態は、POC検査装置50に統合された二次データフィード100および内部データベース90を備える。二次データフィード100は、POC検査装置50のユーザインターフェース110と通信する。ユーザインターフェース110は、ユーザ15からのリアルタイムデータおよび内部データベース90からの履歴データを受信する。次いで、ユーザインターフェース110は、二次データフィード100を介して通信接続部60と通信する。二次データフィード100は、追加の外部データソースと考えることができる。次いで、通信接続部60は、臨床決定支援情報をユーザ15に提供するのを支援するために、この二次データフィード100の情報を臨床決定支援モジュール40に提供する。
【0045】
一実施形態では、二次データフィード100は、患者の現実世界データを含むことができ、ユーザ/患者15から直接もたらされる。患者の現実世界データは、例えば、食事データ、健康測定値、さらには患者個人の病歴からのバイオマーカーデータを含むことができる。
【0046】
別の実施形態では、患者バイオマーカーデータは、POC検査装置50に組み込まれたセンサ120を介して取得されることができる。POC検査装置50のセンサ120は、例えば、カメラ、網膜スキャナ、指紋スキャナ、呼気分析装置を含むことができる。他のセンサ120も想定されて使用されることができる。次いで、この患者の現実世界データは、二次データフィード100を介して提供され、臨床決定支援モジュール40によって使用されて、ユーザ15に特に適合した臨床決定支援を提供することができる。
【0047】
別の実施形態では、二次データフィード100は、検査結果を取得するために使用される試料の品質および/または量に関するデータを含むことができる。例えば、この品質/量データは、バイオマーカーデータを取得するのと同様に、POC検査装置50に組み込まれたカメラによって取得されることができる。
【0048】
さらに、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されることができるときに本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上における本開示にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムが開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ媒体に記憶されることができる。したがって、具体的には、本明細書に開示される1つ、複数、またはさらには全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、好ましくはコンピュータプログラムを使用することによって実行されることができる。
【0049】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態における本開示にかかる方法を実行するために、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品がさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコードは、コンピュータ可読データ媒体に記憶されることができる。
【0050】
コンピュータまたはコンピュータネットワーク中に、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリ中にロードした後、本明細書に開示される1つ以上の実施形態にかかる方法を実行することができる、データ構造が記憶されて含まれるデータキャリアがさらに開示および提案される。
【0051】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に開示される1つ以上の実施形態にかかる方法を実行するために、プログラムコードが機械可読媒体に記憶されているコンピュータプログラム製品がさらに開示および提案される。本明細書中で用いられる場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上に存在することができる。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0052】
さらに、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上にかかる方法を実行するためのコンピュータシステムまたはコンピュータネットワークにとって可読な命令を含む変調されたデータ信号が開示および提案される。
【0053】
本開示のコンピュータによって実装される態様を参照して、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上にかかる方法の方法ステップの1つ以上または全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されることができる。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行されることができる。一般に、これらの方法ステップは、典型的には、試料の提供および/または特定の態様の測定の実行などの手作業を必要とする方法ステップを除く任意の方法ステップを含むことができる。
【0054】
さらに、少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークが開示および提案され、プロセッサは、本明細書に記載される実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように構成される。
【0055】
さらに、データ構造がコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載される実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように構成されたコンピュータロード可能なデータ構造が開示および提案される。
【0056】
さらに、データ構造が記憶される記憶媒体であって、データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業記憶装置へとロードされた後に本明細書に記載される実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように構成されている記憶媒体が開示および提案される。
【0057】
「好ましくは」、「一般的に」、および「典型的に」のような用語は、特許請求される実施形態の範囲を限定するため、または特定の特徴が特許請求される実施形態の構造または機能にとって重要、必須、またはさらに重要であることを意味するために本明細書では使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本開示の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替または追加の特徴を強調することを単に意図している。
【0058】
本開示を詳細に説明し、その特定の実施形態を参照することにより、添付の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると識別されるが、本開示は、必ずしも本開示のこれらの好ましい態様に限定されないことが企図される。