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特許7496433変化する環境でオーディオを向上するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】変化する環境でオーディオを向上するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240530BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10K15/04 302F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022559344
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 US2021025507
(87)【国際公開番号】W WO2021202956
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/083083
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/014,502
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/125,132
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ダーシー,ダニエル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ユイ,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォー,クララ イー-フオン
(72)【発明者】
【氏名】マリー,ステュワート
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,リービン
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-086200(JP,A)
【文献】特開2001-136239(JP,A)
【文献】特表2011-505750(JP,A)
【文献】特表2017-529198(JP,A)
【文献】特表2014-519274(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104900236(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/12
G10L 21/00-21/18
H04M 1/00-1/253
H04M 1/58-1/62
H04M 1/66-1/82
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル装置のユーザのために、環境ノイズを伴う使用のため前記モバイル装置を設定する方法であって、
前記ユーザから、前記環境ノイズのケース識別を受信するステップと、
前記ユーザから、前記環境ノイズのノイズレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズの会話ブーストレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズのグラフィックイコライザ設定を受信するステップと、
前記ユーザが前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を設定している間、前記モバイル装置から、前記ユーザのサンプルオーディオを再生するステップと、
プロファイル内のノイズレベルにおける前記ケース識別の前記会話ブーストレベル及びグラフィックイコライザ設定を、前記モバイル装置に格納するステップであって、前記装置は、前記ユーザにより前記プロファイルが選択されるとき、前記会話ブーストレベル及びグラフィックイコライザ設定を用いてオーディオメディアを再生するよう構成される、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズをシミュレートするステップと、
前記サンプルオーディオを再生するステップの前に、前記シミュレートした環境ノイズを前記サンプルオーディオとミキシングするステップと、
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シミュレートするステップは、格納された予め記録された環境ノイズをメモリから読み出すステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記格納された予め記録された環境ノイズはバイノーラルフォーマットである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記モバイル装置上で、前記ケース識別、前記ノイズレベル、前記会話ブーストレベル、及び前記グラフィックイコライザ設定を設定するためのグラフィカルユーザインタフェース制御を提示するステップ、を更に含む請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記プロファイルは、前記ケース識別及び前記ノイズレベルの両方に対応する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ユーザのためにモバイル装置のオーディオを調整する方法であって、
前記ユーザからプロファイル選択を受信するステップであて、前記プロファイル選択は、少なくとも環境ノイズ条件に関連する、ステップと、
前記ユーザから前記環境ノイズ条件のノイズレベルを受信するステップと、
前記ノイズレベルに基づき、前記モバイル装置にあるメモリから、会話ブーストレベル及びグラフィックイコライザ設定を読み出すステップと、
前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を用いて前記オーディオのレベルを調整するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記モバイル装置上で、環境ノイズ条件に対応するプロファイルを選択するためのグラフィカルユーザインタフェース制御を提示するステップ、を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8に記載の方法のうちの少なくとも1つで、ソフトウェア又はファームウェアで実行するよう構成される装置。
【請求項10】
コンピュータにより読み取られると、請求項1~8に記載の方法のうちの少なくとも1つを実行するよう前記コンピュータに指示する非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記装置は、電話機である、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、セルラフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイルゲームシステム、ウェアラブル装置、及び小型メディアプレイヤ、のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記ソフトウェア又はファームウェアは、前記装置のオペレーティングシステムの一部である、請求項9、11、又は12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記ソフトウェア又はファームウェアは、前記装置上でスタンドアロンプログラムを実行する、請求項9、11、又は12のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記方法は、モバイル装置のオペレーティングシステムにより実行される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、国際特許出願番号第PCT/CN2020/083083号、2020年4月2日出願、米国仮特許出願番号第63/014,502号、2020年4月23日出願、及び米国仮特許出願番号第62/125,132号、2020年12月14日出願の優先権を主張する。これらの出願は、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、メディアコンテンツのオーディオ再生のための改良に関する。特に、本開示は、様々な環境で、特にモバイル装置上で再生されるメディアコンテンツのオーディオのための好適なノイズ補償の設定及び適用に関する。
【背景技術】
【0003】
会話を有するメディア(映画、テレビ番組、等)のオーディオ再生は、通常、家庭や劇場のような比較的静かな環境で楽しまれるように制作されている。しかしながら、人々が彼らのモバイル装置により外出先でそのようなコンテンツを消費することが益々一般的になっている。これは、非常に多くの環境ノイズがあるとき(車両のノイズ、人混み、等)、又はモバイルハードウェアのオーディオ品質限界若しくは使用されるオーディオ再生機器の種類(ヘッドフォン等)により、俳優が何を言っているのか理解するのが困難になるため、問題になっている。
【0004】
一般的な解決策は、ノイズ除去ヘッドフォン/イヤフォンを使用することである。しかしながら、これは、高価なソリューションになり、ユーザが聞きたい可能性のある環境ノイズ(車のクラクション、サイレン、叫び声の警告、等)を遮断してしまうという欠点を有する。
【発明の概要】
【0005】
種々のオーディオ処理システム及び方法が、本明細書に開示される。
【0006】
第1の態様によると、モバイル装置のユーザのために、環境ノイズを伴う使用のため前記にモバイル装置を設定する方法であって、
前記ユーザから、前記環境ノイズのケース識別を受信するステップと、
前記ユーザから、前記環境ノイズのノイズレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズの会話ブーストレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズのグラフィックイコライザ設定を受信するステップと、
前記ユーザが前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を設定している間、前記モバイル装置から、前記ユーザのサンプルオーディオを再生するステップと、
プロファイル内のノイズレベルにおける前記ケース識別の前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を、前記モバイル装置に格納するステップであって、前記装置は、前記ユーザにより前記プロファイルが選択されるとき、前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を用いてオーディオメディアを再生するよう構成される、ステップと、
を含む方法が記載される。
【0007】
第2の態様によると、ユーザのためにモバイル装置のオーディオを調整する方法であって、
前記ユーザからプロファイル選択を受信するステップであて、前記プロファイル選択は、少なくとも環境ノイズ条件に関連するステップと、
前記ユーザから前記環境ノイズ条件のノイズレベルを受信するステップと、
前記モバイル装置にあるメモリから、会話ブーストレベル及びグラフィックイコライザ設定を読み出すステップと、
前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を用いて前記オーディオのレベルを調整するステップと、
を含む方法が記載される。
【0008】
本明細書に記載された方法の一部又は全部は、1つ又は複数の非一時的媒体に記憶された命令(例えば、ソフトウェア)に従って1つ又は複数の装置によって実行され得る。このような非一時的媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、等を含むがこれらに限定されない、本願明細書に記載のようなメモリ装置を含んでよい。従って、本開示に記載された主題の種々の革新的な態様は、ソフトウェアを格納した非一時的媒体で実施することができる。ソフトウェアは、例えば、本願明細書に開示されるような、制御システムの1つ以上のコンポーネントにより実行可能であってよい。ソフトウェアは、例えば、本願明細書に開示される方法のうちの1つ以上を実行するための命令を含んでよい。
【0009】
本開示の少なくとも幾つかの態様は、装置又は装置を介して実施することができる。例えば、1つ以上の装置は、本願明細書に開示した方法を少なくとも部分的に実行するよう構成されてよい。幾つかの実装では、機器は、インタフェースシステム及び制御システムを含んでよい。インタフェースシステムは、1つ以上のネットワークインタフェース、制御システムとメモリシステムとの間の1つ以上のインタフェース、制御システムと別のデバイスとの間の1つ以上のインタフェース、及び/又は1つ以上の外部デバイスインタフェースを含んでもよい。
【0010】
本願明細書に記載の主題の1つ以上の実装の詳細は、添付の図面及び以下の説明において説明される。他の特徴、態様、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。以下の図面の相対的寸法は縮尺通りに描かれないことがある。種々の図面における参照番号及び呼称と同様に、一般に、種々の図面における参照番号及び呼称は同様の要素を示すが、種々の参照番号は、種々の図面間における種々の要素を必ずしも示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ケース固有オーディオ設定を設定するための例示的なフローチャートを示す。
【0012】
図2】ケース固有オーディオ設定を利用するための例示的なフローチャートを示す。
【0013】
図3】環境ノイズを合成することを含む、ケース固有オーディオ設定を設定するための例示的なフローチャートを示す。
【0014】
図4】主観テスト経験により取得される非調整及び調整オーディオの例示的な比較を示す。
【0015】
図5A】ある種類のコーデックに適用される会話ブーストの例示的な周波数応答曲線であって、出力の会話セグメントの応答曲線を示す。
図5B】ある種類のコーデックに適用される会話ブーストの例示的な周波数応答曲線であって、出力の非会話セグメントの応答曲線を示す。
【0016】
図6A図5A及び5Bと異なる種類のコーデックに適用される会話ブーストの例示的な周波数応答曲線であって、出力の会話セグメントの応答曲線を示す。
図6B図5A及び5Bと異なる種類のコーデックに適用される会話ブーストの例示的な周波数応答曲線であって、出力の非会話セグメントの応答曲線を示す。
【0017】
図7】本願の方法のための例示的なグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【0018】
図8】本願の方法の例示的なハードウェア/ソフトウェア構成示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ノイズの多い環境(環境ノイズ)でメディア再生(オーディオ又はオーディオ/ビジュアル)中の明瞭な会話を提供するという問題に対するソリューションが、特定のノイズレベル及びタイプ(環境タイプ)における特定のユーザのプロファイル内の会話ブースト及びイコライザ設定を生成し及び使用することにより、本願明細書に記載される。
【0020】
本願明細書で使用される用語「モバイル装置」は、オーディオ再生が可能な及び携帯して複数の場所で使用することが可能なユーザの装置を表す。例えば、携帯電話機、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイルゲームシステム、ウェアラブル装置、小型メディアプレイヤ、等を含む。
【0021】
本願明細書で使用される用語「環境条件」又は「ケース」又は「ケース識別」は、モバイル装置上でオーディオメディアを聴く楽しみを妨害することもあり又はそうでないこともあるノイズの多い場所/環境のカテゴリを表す。例えば、家庭(例えば「デフォルト」)、居住地域(例えば、ウォーキング)、公共交通機関、騒々しい屋内環境(例えば、空港)、等を含む。
【0022】
用語「会話ブースト」は、非会話成分の無視できる増幅を伴う、オーディオの会話成分の一般的な音声増幅の適用を表す。例えば、会話ブーストは、再生されているオーディオを連続的に監視し、会話の存在を検出し、オーディオコンテンツの話されている部分の明瞭さを向上する処理を動的に適用するアルゴリズムとして実行できる。幾つかの実施形態では、会話ブーストは、オーディオ信号から特徴を分析し、パターン認識システムを適用して、刻一刻と会話の存在を検出する。会話が検出されると、会話スペクトルが必要に応じて変更されて、聴者が会話をより簡潔に聞くことができるように、会話コンテンツを強調する。
【0023】
用語「等化」又は「グラフィックイコライザ」又は「GED」は、オーディオの周波数に基づく振幅調整を表す。真のGEDでは、振幅設定は、スライダにより設定され、スライダの位置が該スライダの制御する周波数範囲に対応する。しかし、本願明細書では、GEDは、特定の周波数応答曲線を与える、グラフィックイコライザが有し得る特定の設定も表す。
【0024】
本願明細書で使用される用語「メディア」又は「コンテンツ」は、オーディオコンテンツを有する何らかのものを表す。これは、音楽、映画、ビデオ、ビデオゲーム、電話の会話、警報、等であり得る。特に、本願明細書に記載のシステム及び方法は、会話成分と非会話成分の組み合わせを有するメディアについて、最も有用であるが、システム及び方法は任意のメディアに適用できる。
【0025】
図1は、異なる環境条件(ケース)についてプロファイルを生成する例示的なフローチャートを示す。ユーザは、装置ユーザインタフェース(UI)から設定を開始することを選択し(110)、例示的な再生サンプルがユーザのために再生される(140)。このサンプルは、システムにより又はユーザにより選択できる。ユーザは、どんな音量で再生されるかを選択する(141)。ユーザは、次に、自動で又は手動で(ユーザが選択する)、異なる環境ノイズケース(デフォルト、ウォーキング、公共交通機関、空港、等)を使用できる(142)。システムは、全部のケース、又は1つの選択されたケースを含む選択部分集合を利用できる。選択されたケースがデフォルトケースではない場合、ユーザは、それらの現在の状況について推定環境ノイズレベル(125)、会話ブーストレベル(130)、及び組み合わせてユーザに彼らの主観意見において最適聴取経験を与えるグラフィックイコライザ(graphic equalizer (GEQ))設定(135)を入力する。これらの設定125、130は、任意の順序で(必ずしも図示の順序ではない)複数回行うことができ、会話成分を有するオーディオのサンプル再生140に基づき設定される。会話ブースト及びGEQ設定130、135がユーザの好みに従い設定されると、それらは、将来の使用のために、プロファイルのデータベース/メモリ145に格納される。システムは、次に、全部の適用可能なケースが設定されたかどうかを決定できる(115)。設定された場合、設定は終了する(150)。設定されていない場合、次に、システムは、次のケース142に進み、そのケースについて設定処理を繰り返す。幾つかの実施形態では、保存された設定プロファイルは、また、注入されたノイズレベルに基づきインデックス付けされる(125)。
【0026】
幾つかの実施形態では、会話ブーストレベル及び/又はGEQ設定は、可能な設定の短いリストからの、各々1つの値である。例えば、0~5の範囲からの「3」である。幾つかの実施形態では、設定は、設定に関連する実数値、(例えば、特定の周波数範囲で)例えば+10dBである。
【0027】
図2は、本願明細書に記載の方法に従い生成されたプロファイルを使用する例示的なフローチャートを示す。ユーザは、彼らのメディアを開始し(205)、彼らの現在の状況を最適に記述するケースプロファイルを選択する(210)。プロファイルが環境ノイズレベルに基づきインデックス付けされている場合、それも選択できる。次に、システムは、選択したケース(及び、適用可能な場合には、ノイズレベル)に一致するプロファイルを、データベース/メモリ25から読み出す(210)。システムは、次に、再生がモビリティ状況(つまり、会話ブースト及びGEQ調整を必要とする状況)であるかどうかを決定する(220)。この決定は、ユーザ入力、装置識別、位置データ、又は他の手段からできる。システムが、モビリティ状況ではないと決定した場合、ユーザにとって環境ノイズ250存在するとき、再生されているメディア245からの通常の再生/ミキシングが生じる(240)。これは、新しいプロファイルが読み出され(210)、再び処理が開始する点である、ケースプロファイルが変更されるまで続く(255)。幾つかの実施形態では、ケース切り換え255により又はその前に、新しいモビリティ状態チェックが実行され、モビリティ状況が存在する場合に処理が単に繰り返される。モビリティ状況が存在すると分かった場合(220)、会話ブースト230及びGEQ調整235がミキシング240に適用され、メディア再生245を調整して、環境ノイズ250にも拘わらず明瞭な会話を提供する。
【0028】
図3は、(図1及び2に提供されたようなメディアと実際の環境ノイズの実際のミキシングとは異なり)メディアと環境ノイズの仮想的ミキシングのための合成環境ノイズの使用を含む、プロファイルを生成する例示的なフローチャートを示す。システムは、図1のものと同様であるが、ユーザがノイズのある場所でプロファイルを生成しているか又は比較的ノイズの少ない環境(例えば、家庭)からのケースを予め設定しているかを調べるためのチェックが行われる(310)点が異なる。このチェックは、ユーザに問い合わせることにより、又はモバイル装置が「家庭」にあることを決定する位置サービスにより、決定できる。幾つかの実施形態では、システムは、常に、ユーザが比較的ノイズの少ない環境にいると想定している。ユーザがその場所にいない場合、ユーザ又はシステムにより、ケース(環境ノイズ状態)が選択される(320)。そのケースの環境ノイズは、合成される(330)。幾つかの実施形態では、これは、データベース/メモリ340に保存された予め記録されたノイズであることができ、又はそれに基づくことができる。このノイズは再生サンプル350に追加され、ノイズレベル360が、ユーザが経験すると予想されるレベルについて、ユーザにより設定できる。それにより、シミュレートされるノイズを調整する(330)。会話ブーストレベル370及びGEQレベル380は、その場(at-location)設定が実行されるのと同じ方法で設定できる。設定は、次に、将来の使用のためにデータベース/メモリ390に保存される。幾つかの実施形態では、記録された環境ノイズは、環境音源(ambisonic source)から取り入れられ、バイノーラルフォーマットにレンダリングされる。
【0029】
図4は、システムが生成できる知覚差の例、及び基準状態に対して行われた比較が性能を評価するためにどのように使用できるかを示す。分かるように、会話ブーストは、ブースト無しの基準状態よりも好適であり、会話の明瞭さを向上し、会話を理解することが重要であるメディアについてユーザに取って有益な調整を行う。例えば、図4は、レベル2の会話向上(dialog enhancement(DE))415が、高いレベルのユーザの好み405及び主観的明瞭さ410を示し、従って、多くのユーザにとって好適な設定であり得る。
【0030】
図5A及び5B、並びに図6A及び6Bは、会話ブーストの例示的なグラフを示す。図5A及び5Bは、メディアの会話成分についての異なる会話ブースト設定のグラフを示す。図示のように、異なる設定は異なる曲線を示す。これに対して、図5B及び図6Bは、同じ異なる会話ブースト設定であるが、メディアの非会話成分のグラフを示す。異なる設定の曲線の間には無視できる差しかない(つまり、会話ブーストは、非会話成分をブーストしない)。図5A及び5Bは、図6A及び6Bよりも小さなレベル間隔を有する会話ブーストレベルを表す。異なる曲線は、環境がどのくらいノイズが多いかに依存して使用できる。環境ノイズが騒々しいほど、再生コンテンツ全体により多くの会話ブーストを有するという観点で、曲線がより活動的になる。図5Aは、オーディオの会話成分について、高い周波数510より低い周波数505で会話ブーストレベルが強いブーストを示す応答曲線を示す。これに対して、図6Aは、低い周波数605と比べて、高い周波数610で、強いブーストを示す。両方の場合に、図5B及び6Bは、非会話成分が全周波数に渡り、無視できるブーストしか有しないことを示す。
【0031】
図7は、プロファイルを設定するための例示的なUI(具体的に、この場合には、グラフィカルユーザインタフェース(GUI))を示す。モバイル装置700において、設定のための入力は、使用を容易にするために、簡略化された形式で提示できる。ノイズレベル制御710は、例えばノイズ無しの0からノイズレベルが増加するにつれて均等に増大する、有限数(例えば、0~5)のノイズレベルとして提示できる(実際のdB又は知覚的段階で)。会話ブースト設定720は、ブースト無しから最大ブーストまで、グラフィカルスライダとして提示できる。同様に、GEQ設定730は、予め設定されたGEQ設定(例えば、「明朗」、「浅い」、「深い」、等のトーン)を選択するために、1つの値の単一の範囲に簡略化できる(ここではスライダとして示される)。ケース740は、(テキストを有する又は有しない)アイコンとして示すことができる。例えば、「デフォルト」は家として示すことができ、「ウォーキング」は人と共に示すことができ、「公共交通機関」は電車又はバスとして示すことができ、「屋内の場所」は(空港を示すために)飛行機と共に示すことができる。他のケース及びアイコンが使用でき、アイコンはユーザに該アイコンが表すケースへの素早い参照を提供する。
【0032】
図8は、実施形態による、本願明細書に記載される特徴及び処理を実施する例示的なモバイル装置アーキテクチャを示す。アーキテクチャ800は、限定ではないが、デスクトップコンピュータ、消費者オーディオ/ビジュアル(AV)機器、無線放送機器、モバイル装置(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ウェアラブル装置)、を含む任意の電子装置に実装することができる。示される例示的な実施形態では、アーキテクチャ800は、スマートフォンのためのものであり、プロセッサ801、周辺機器インタフェース802、オーディオサブシステム803、スピーカ804、マイクロフォン805、センサ806(例えば、加速度計、ジャイロ、気圧計、磁気計、カメラ)、位置プロセッサ807(例えば、GNSS受信機)、無線通信サブシステム808(例えば、Wi-Fi、Bluetooth、セルラ)、及びタッチコントローラ810及び他の入力コントローラ811を含むI/Oサブシステム809、タッチ面812、及び他の入力/制御装置813を含む。メモリインタフェース814は、プロセッサ801、周辺機器インタフェース802、及びメモリ815(例えば、フラッシュ、RAM、ROM)に結合される。メモリ815は、限定ではないが、オペレーティングシステム命令816、通信命令817、GUI命令818、センサ処理命令819、電話命令820、電子メッセージング命令821、ウェブ閲覧命令822、オーディオ処理命令823、GNSS/ナビゲーション命令824、及びアプリケーション/データ825、を含むコンピュータプログラム命令及びデータを格納する。オーディオ処理命令823は、本願明細書に記載されたオーディオ処理を実行するための命令を含む。より多くの又は少ないコンポーネントを有する他のアーキテクチャも、開示の実施形態を実装するために使用できる。
【0033】
システムは、リモートサーバからのサービス駆動型として、装置上のスタンドアロンプログラムとして、メディアプレイヤアプリケーションに統合されて、又はオペレーティングシステムの音声設定の部分のようなオペレーティングシステムの部分として含まれて、提供できる。
【0034】
本開示の多くの実施形態が記述されてきた。しかしながら、本開示の真意及び範囲から逸脱することなく種々の修正を行うことができると理解されるであろう。したがって、他の態様は特許請求の範囲の範囲内にある。
【0035】
本願明細書に記載されたように、本発明の実施形態は、従って、以下に列挙される例示的な実施形態)のうちの1つ以上に関連してよい。従って、本発明は、限定ではないが、本発明の幾つかの部分の構造、特徴、及び機能を記載する以下の列挙される例示的な実施形態(EEE)を含む本願明細書に記載された形式のうちのいずれかにおいて具現化されてよい。
【0036】
EEE1:モバイル装置のユーザのために、環境ノイズを伴う使用のため前記にモバイル装置を設定する方法であって、
前記ユーザから、前記環境ノイズのケース識別を受信するステップと、
前記ユーザから、前記環境ノイズのノイズレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズの会話ブーストレベルを受信するステップと、
前記ユーザから、前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズのグラフィックイコライザ設定を受信するステップと、
前記ユーザが前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を設定している間、前記モバイル装置から、前記ユーザのサンプルオーディオを再生するステップと、
プロファイル内のノイズレベルにおける前記ケース識別の前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を、前記モバイル装置に格納するステップであって、前記装置は、前記ユーザにより前記プロファイルが選択されるとき、前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を用いてオーディオメディアを再生するよう構成される、ステップと、
を含む方法。
【0037】
EEE2:前記ノイズレベルにおける前記環境ノイズをシミュレートするステップと、
前記サンプルオーディオを再生するステップの前に、前記シミュレートした環境ノイズを前記サンプルオーディオとミキシングするステップと、
を更に含むEEE1に記載の方法。
【0038】
EEE3:前記シミュレートするステップは、格納された予め記録された環境ノイズをメモリから読み出すステップを含む、EEE2に記載の方法。
【0039】
EEE4:前記格納された予め記録された環境ノイズはバイノーラルフォーマットである、EEE項3に記載の方法。
【0040】
EEE5:前記モバイル装置上で、前記ケース識別、前記ノイズレベル、前記会話ブーストレベル、及び前記グラフィックイコライザ設定を設定するためのグラフィカルユーザインタフェース制御を提示するステップ、を更に含むEEE1~EEE4のいずれかに記載の方法。
【0041】
EEE6:
前記プロファイルは、前記ケース識別及び前記ノイズレベルの両方に対応する、EEE1~EEE5のいずれかに記載の方法。
【0042】
EEE7:ユーザのためにモバイル装置のオーディオを調整する方法であって、
前記ユーザからプロファイル選択を受信するステップであて、前記プロファイル選択は、少なくとも環境ノイズ条件に関連するステップと、
前記ユーザから前記環境ノイズ条件のノイズレベルを受信するステップと、
前記モバイル装置にあるメモリから、会話ブーストレベル及びグラフィックイコライザ設定を読み出すステップと、
前記会話ブーストレベル及び前記グラフィックイコライザ設定を用いて前記オーディオのレベルを調整するステップと、
を含む方法。
【0043】
EEE8:前記モバイル装置上で、環境ノイズ条件に対応するプロファイルを選択するためのグラフィカルユーザインタフェース制御を提示するステップ、を更に含むEEE7に記載の方法。
【0044】
EEE9:EEE1~EEE8に記載の方法のうちの少なくとも1つで、ソフトウェア又はファームウェアで実行するよう構成される装置。
【0045】
EEE10:コンピュータにより読み取られると、EEE1~EEE8に記載の方法のうちの少なくとも1つを実行するよう前記コンピュータに指示する非一時的コンピュータ可読媒体。
【0046】
EEE11:前記装置は、電話機であるEEE9に記載の装置。
【0047】
EEE12:前記装置は、セルラフォン、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイルゲームシステム、ウェアラブル装置、及び小型メディアプレイヤ、のうちの少なくとも1つである、EEE9に記載の装置。
【0048】
EEE13:前記ソフトウェア又はファームウェアは、前記装置のオペレーティングシステムの一部である、EEE9、EEE11、又はEEE12のいずれかに記載の装置。
【0049】
EEE14:前記ソフトウェア又はファームウェアは、前記装置上でスタンドアロンプログラムを実行する、EEE9、EEE11、又はEEE12のいずれかに記載の装置。
【0050】
EEE15:前記方法は、モバイル装置のオペレーティングシステムにより実行される、EEE1~EEE8のいずれかに記載の装置。
【0051】
本開示は、本明細書に記載された幾つかの革新的な側面、及びこれらの革新的な側面が実施され得る文脈の例を記述する目的のための特定の実施を対象とする。しかしながら、本願明細書における教示は、種々の異なる方法で適用できる。更に、記載される実施形態は、種々のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、等で実装されてよい。例えば、本願の態様は、少なくとも部分的に、機器、1つより多くの装置を含むシステム、方法、コンピュータプログラムプロダクト、等で実現されてよい。したがって、本願の態様は、ハードウェアの実施形態、ソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、等を含む)、及び/又はソフトウェアとハードウェアの態様の両者を組み合わせる実施形態の形式を取ってよい。このような実施形態は、本願明細書では、「回路」、「モジュール」、「装置」、「機器」、又は「エンジン」と呼ばれてよい。本願の幾つかの態様は、コンピュータ可読プログラムコードを実装された1つ以上の非一時的媒体に具現化されたコンピュータプログラムプロダクトの形式を取ってよい。このような非一時的媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、ポータブルコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、光記憶装置、磁気記憶装置、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含んでよい。したがって、本開示の教示は、本願明細書に図示された及び/又は記載された実装に限定されず、むしろ広範な適用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8