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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】カニューレ挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20240530BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A61M5/158 500
A61M25/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022564013
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2020030872
(87)【国際公開番号】W WO2021221679
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521442637
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ジマー、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョードル、ブレンダ エル.エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アイソム、テイラー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】グラス、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、レスリー
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0094025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0041371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動静脈瘻にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入器であって、
複合針であって
針と、
拡張器であって、前記針の少なくとも先端が前記拡張器の遠位端を越えて延びる状態で、前記針の上方に配置される、拡張器と、
前記拡張器の近位端部分の周囲に位置する針ハブと
を含む複合針と、
複合カニューレであって、
カニューレと、
前記カニューレの近位端部分の周りに位置するカニューレハブであって、前記カニューレ挿入器は、前記カニューレ挿入器を用いた少なくともカニューレ挿入のために前記複合針と前記複合カニューレとの嵌合状態に配置可能であり、前記嵌合状態は、前記カニューレハブの近位端部分が前記針ハブの遠位端部分に連結され、前記拡張器が前記カニューレ内に配置された状態である、カニューレハブと
を含む複合カニューレと
を備え
前記針ハブは、遠位壁を有する空洞を取り囲むハウジングを含み、前記針の近位端および前記拡張器の近位端の各々は、前記遠位壁に連結されているカニューレ挿入器。
【請求項2】
前記複合針は、前記針内に配置されたアクセスガイドワイヤをさらに備え、前記アクセスガイドワイヤは、前記空洞から前記針ハブの前記遠位壁の貫通孔を通って延びている、請求項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項3】
前記複合針は、前記アクセスガイドワイヤの遠位端を前記針の前記先端を越えて前進させるように、または前記ガイドワイヤの前記遠位端を前記針の先端より近位側の前記針の遠位端部分内に引き込むように構成されたガイドワイヤアクチュエータをさらに備える、請求項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項4】
前記ガイドワイヤアクチュエータは、前記針ハブの長手方向スロット内に摺動可能に配置されたスライダを含み、前記スライダは、前記針ハブの前記空洞内で前記アクセスガイドワイヤの近位端部分に連結された延長部を含む、請求項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項5】
前記カニューレは、可撓性ポリマー材料から形成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項6】
前記カニューレの遠位端部分は、前記カニューレ挿入器の前記嵌合状態において前記拡張器のテーパから連続するように構成されたテーパを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項7】
前記カニューレハブが分岐しており、前記カニューレハブが少なくとも一次アーム及び二次アームを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項8】
前記カニューレハブの前記一次アームは一次アーム管腔を含み、前記カニューレハブの前記二次アームは二次アーム管腔を含み、前記一次アーム管腔及び前記二次アーム管腔の各管腔は、前記カニューレのカニューレ管腔に流体接続されている、請求項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項9】
前記カニューレハブの前記一次アームおよび前記二次アームの各アームは、ルアーコネクタで終端する、請求項又はに記載のカニューレ挿入器。
【請求項10】
前記カニューレ挿入器の嵌合状態において前記針ハブの前記遠位端部分に連結された前記カニューレハブの前記近位端部分は、前記針ハブの前記遠位端部分に位置する穴内に配置された前記カニューレハブの前記一次アームの前記ルアーコネクタである、請求項に記載のカニューレ挿入器。
【請求項11】
動静脈瘻にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入器であって、
複合針であって
アクセスガイドワイヤと、
前記アクセスガイドワイヤの上方に配置された針と、
拡張器であって、前記針の少なくとも先端が前記拡張器の遠位端を越えて延びる状態で、前記針の上方に配置される、拡張器と、
遠位壁を有する空洞を取り囲むハウジングを含む針ハブであって、前記針の近位端および前記拡張器の近位端の各々が前記遠位壁に連結されている、針ハブと、
前記アクセスガイドワイヤの遠位端を前記針の前記先端を越えて前進させるように、または前記アクセスガイドワイヤの前記遠位端を前記針の前記先端より近位側の前記針の遠位端部分内に引き込むように構成されるガイドワイヤアクチュエータであって、前記針ハブの長手方向スロット内に摺動可能に配置されたスライダを含み、前記スライダが、前記針ハブの前記遠位壁の貫通孔を通って前記針ハブの前記空洞内に延びる前記アクセスガイドワイヤの近位端部分に連結された延長部を含む、ガイドワイヤアクチュエータと
を含む複合針と、
複合カニューレであって、
カニューレと、
前記カニューレの近位端部分の周りのカニューレハブであって、前記カニューレ挿入器は、前記カニューレ挿入器による少なくともカニューレ挿入のために前記複合針と前記複合カニューレとの嵌合状態に配置可能であり、前記嵌合状態は、前記針ハブの遠位端部分の穴内に配置された前記カニューレハブの近位端部分に位置するルアーコネクタを有する前記カニューレ内に、前記拡張器が配置された状態である、カニューレハブと
を含む複合カニューレと
を備えるカニューレ挿入器。
【請求項12】
前記カニューレの遠位端部分は、前記カニューレ挿入器の前記嵌合状態において前記拡張器のテーパから連続するように構成されたテーパを含む、請求項11に記載のカニューレ挿入器。
【請求項13】
前記カニューレハブが分岐しており、前記カニューレハブが少なくとも一次アームおよび二次アームを含む、請求項11又は12に記載のカニューレ挿入器。
【請求項14】
前記カニューレハブの前記一次アームは一次アーム管腔を含み、前記カニューレハブの前記二次アームは二次アーム管腔を含み、前記一次アーム管腔及び前記二次アーム管腔の各管腔は、前記カニューレのカニューレ管腔に流体接続されている、請求項13に記載のカニューレ挿入器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
既存の透析針は、透析中に定位置に残される鋭い先端を有する硬質(例えば、金属)である。そのような透析針の鋭い先端は、鋭い先端が不正確に前進させられるか、または患者が透析中に動く場合、浸潤(例えば、血管壁の穿刺)をもたらし得、後者は、透析治療処置の持続時間に起因する可能性が高い。浸潤の可能性を低減するための装置が必要である。本願では、上記に対処するカニューレ挿入器及びその方法が開示される。
【発明の概要】
【0002】
動静脈瘻にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入器が本明細書に開示される。カニューレ挿入器は、いくつかの実施形態では、複合針および複合カニューレを含む。複合針は、針と、拡張器と、針ハブとを含む。拡張器は、針の少なくとも先端が拡張器の遠位端を越えて延びる状態で、針の上方に配置される。針ハブは、拡張器の近位端部分の周囲に位置する。複合カニューレは、カニューレと、カニューレの近位端部分の周囲に位置するカニューレハブとを含む。カニューレ挿入器は、少なくともカニューレ挿入器によるカニューレ挿入のために、複合針と複合カニューレとの嵌合状態を有する。カニューレ挿入器の嵌合状態は、カニューレハブの近位端部分が針ハブの遠位端部分に連結された状態でカニューレ内に配置された拡張器を含む。
【0003】
いくつかの実施形態では、針ハブは、遠位壁を有する空洞を取り囲むハウジングを含む。針の近位端および拡張器の近位端の各々は、遠位壁に連結される。
いくつかの実施形態では、複合針は、針内に配置されたアクセスガイドワイヤをさらに含む。アクセスガイドワイヤは、空洞から針ハブの遠位壁の貫通孔を通って延びる。
【0004】
いくつかの実施形態では、複合針はガイドワイヤアクチュエータを含む。ガイドワイヤアクチュエータは、アクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端を越えて前進させるように、またはアクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端より近位側の針の遠位端部分内に引き込むように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤアクチュエータは、針ハブの長手方向スロット内に摺動可能に配置されたスライダを含む。スライダは、針ハブの空洞内でアクセスガイドワイヤの近位端部分に連結された延長部を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、カニューレは、透析治療処置中に患者の快適性を向上させるように構成される、可撓性ポリマー材料から形成される。
いくつかの実施形態では、カニューレの遠位端部分は、テーパを含む。カニューレのテーパは、カニューレ挿入器の嵌合状態において拡張器のテーパから連続するように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、カニューレハブは分岐している(例えば、二股に分かれている)。分岐される場合、カニューレハブは、少なくとも一次アームおよび二次アームを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、カニューレハブの一次アームは、一次アーム管腔を含み、カニューレハブの二次アームは、二次アーム管腔を含む。一次アーム管腔及び二次アーム管腔の各管腔は、カニューレのカニューレ管腔に流体接続される。
【0009】
いくつかの実施形態では、カニューレハブの一次アームおよび二次アームの各アームは、ルアーコネクタで終端する。
いくつかの実施形態では、カニューレ挿入器の嵌合状態において針ハブの遠位端部分に連結されたカニューレハブの近位端部分は、針ハブの遠位端部分に位置する穴内に配置されたカニューレハブの一次アームのルアーコネクタである。
【0010】
動静脈瘻にカニューレを挿入するためのカニューレ挿入器が本明細書に開示される。カニューレ挿入器は、いくつかの実施形態では、複合針および複合カニューレを含む。複合針は、アクセスガイドワイヤと、針と、拡張器と、針ハブとを含む。針は、アクセスガイドワイヤの上方に配置される。拡張器は、針の少なくとも先端が拡張器の遠位端を越えて延びる状態で、針の上方に配置される。針ハブは、遠位壁を有する空洞を取り囲むハウジングを含む。針の近位端および拡張器の近位端の各々は、遠位壁に連結される。ガイドワイヤアクチュエータは、アクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端を越えて前進させるように、またはアクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端より近位側の遠位端部分内に引き込むように構成される。ガイドワイヤアクチュエータは、針ハブの長手方向スロット内に摺動可能に配置されたスライダを含む。スライダは、アクセスガイドワイヤの近位端部分に連結された延長部を含み、延長部は、針ハブの遠位壁の貫通孔を通って針ハブの空洞内に延びる。複合カニューレは、カニューレと、カニューレの近位端部分の周囲に位置するカニューレハブとを含む。カニューレ挿入器は、少なくともカニューレ挿入器によるカニューレ挿入のために、複合針と複合カニューレとの嵌合状態を有する。カニューレ挿入器の嵌合状態は、針ハブの遠位端部分の穴内に配置されたカニューレハブの近位端部分に位置するルアーコネクタを有するカニューレ内に配置された拡張器を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、カニューレの遠位端部分は、テーパを含む。カニューレのテーパは、カニューレ挿入器の嵌合状態において拡張器のテーパから連続するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、カニューレハブは分岐している(例えば、二股に分かれている)。分岐される場合、カニューレハブは、少なくとも一次アームおよび二次アームを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、カニューレハブの一次アームは、一次アーム管腔を含み、カニューレハブの二次アームは、二次アーム管腔を含む。一次アーム管腔及び二次アーム管腔の各管腔は、カニューレのカニューレ管腔に流体接続される。
【0014】
また、カニューレ挿入器を用いて患者にカニューレを挿入する方法も本明細書に開示されている。本方法は、いくつかの実施形態では、カニューレ挿入器取得ステップと、穿刺確立ステップと、アクセスガイドワイヤ前進ステップと、組織拡張ステップと、カニューレ前進ステップと、針引き抜きステップとを含む。カニューレ挿入器取得ステップは、カニューレ挿入器を取得することを含む。カニューレ挿入器は、カニューレ挿入器の嵌合状態において複合針および複合カニューレを含む。穿刺確立ステップは、複合針の針の先端を患者の血管に挿入することによって経皮穿刺を確立することを含む。アクセスガイドワイヤ前進ステップは、複合針のガイドワイヤアクチュエータを用いて、アクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端を越えて血管腔内に前進させることを含む。組織拡張ステップは、針の上方に配置された複合針の拡張器を用いて、穿刺を取り囲む組織を拡張させることを含む。カニューレ前進ステップは、拡張器、針、およびアクセスガイドワイヤを通って複合カニューレのカニューレを血管腔の中へ前進させることを含む。針引き抜きステップは、複合カニューレを所定の位置に残したまま、血管腔から複合針を引き抜くことを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、アクセスガイドワイヤ前進ステップは、針ハブの長手方向スロット内に配置されたスライダを遠位側に摺動させることを含む。スライダは、針ハブの空洞内でアクセスガイドワイヤの近位端部分に連結された延長部を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法はアクセスガイドワイヤ引き込みステップをさらに含む。アクセスガイドワイヤ引き込みステップは、針引き抜きステップの前に、ガイドワイヤアクチュエータを用いて、アクセスガイドワイヤの遠位端を針の先端より近位側の針の遠位端部分内に引き込むことを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は確実化ステップをさらに含む。確実化ステップは、複合針および複合ハブが、針ハブの遠位端部分の穴内に配置されたカニューレハブの一次アームのルアーコネクタと適切に嵌合されることを確実にすることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、確実化ステップは、拡張器の遠位端部分のテーパがカニューレの遠位端部分のテーパに沿って続くことを確実にすることを含む。
いくつかの実施形態では、組織拡張ステップは、カニューレの遠位端部分を用いて組織を拡張することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、血管は動静脈瘻である。
いくつかの実施形態では、方法は、透析装置接続ステップおよび透析開始ステップをさらに含む。透析装置接続ステップは、複合カニューレを透析装置のチューブセットに接続することを含む。透析開始ステップは、複合カニューレを介して透析を開始することを含む。
【0020】
本明細書で提供される概念のこのよう特徴および他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に説明する添付の図面および以下の説明を考慮して、当業者にとってより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器の第1の等角図を示す。
図2】いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器の第2の等角図を示す。
図3】いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器の平面図を示す。
図4】いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器の側面図を示す。
図5】いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器の複合針から離間した複合カニューレの等角図を示す。
図6】いくつかの実施形態による複合針から離間した複合カニューレの側面図を示す。
図7】いくつかの実施形態による複合針の近位端部分の等角断面図を示す。
図8】いくつかの実施形態による複合カニューレの等角断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択で、本明細書に開示される他の多数の実施形態のいずれかの特徴と組み合わせるか、または置換することができる特徴を有することができることも理解されたい。
【0023】
本明細書で使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、用語は、本明細書で提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般に、複数の特徴または複数のステップのグループ内の異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用され、連続的な限定または数値制限を提供するものではない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」、などのラベルは、便宜上使用されており、例えば、特定の固定位置、向き、又は方向を意味するものではない。代わりに、そのような表記は、例えば、相対的な位置、向き、又は方向を反映するために使用される。単数形の「一」、「1つ」、および「前記」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の参照も含む。
【0024】
「近位」に関しては、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部分」は、カテーテルが患者に使用される場合、臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位長さ(proximal length)」は、カテーテルが患者に使用される場合、臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、ニードルの「近位端」は、カテーテルが患者に使用される場合、臨床医の近くにあるように意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの近位端を含むことができるが、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0025】
「遠位」に関しては、例えば、本明細書に開示されているカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部分」は、カテーテルが患者に使用される場合、患者の近くにあるか、または患者内にあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位長さ(distal length)」は、カテーテルが患者に使用される場合、患者の近くまたは患者内にあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、ニードルの「遠位端」は、カテーテルが患者に使用される場合、患者の近くまたは患者内にあるように意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含むことができるが、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0026】
他に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
上述したように、既存の透析針は、透析中に定位置に残される鋭い先端を有する硬質(例えば、金属)である。そのような透析針の鋭い先端は、鋭い先端が不正確に前進させられるか、または患者が透析中に動く場合、浸潤(例えば、血管壁の穿刺)をもたらし得、後者は、透析治療処置の持続時間に起因する可能性が高い。浸潤の可能性を低減するための装置が必要である。
【0027】
本願では、上記に対処するカニューレ挿入器及びその方法が開示される。
カニューレ挿入器
図1乃至図4は、いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器100の異なる図を示す。図5及び図6は、いくつかの実施形態によるカニューレ挿入器100の複合針104から離間した複合カニューレ102の異なる図を示す。図7は、いくつかの実施形態による複合針104の近位端部分の等角断面図を示す。図8は、いくつかの実施形態による複合針カニューレ102の等角断面図を示す。
【0028】
カニューレ挿入器100は、少なくとも動静脈瘻にカニューレを挿入するように構成される。図示のように、カニューレ挿入器100は、複合カニューレ102と複合針104とを含む。複合針104および複合カニューレ102を、順次、以下に記載される各部分について説明するが、カニューレ挿入器100における複合針104および複合カニューレ102の相互関連性を考慮すると、複合針104および複合カニューレ102の各部分間には何らかの重複が存在する。
【0029】
図示されるように、複合針104は、針ハブ106、拡張器108、針110、およびアクセスガイドワイヤ112を含む。複合針104は、アクセスガイドワイヤ112を作動させる(例えば、前進または引き込む)ためのガイドワイヤアクチュエータ114をさらに含むことができる。
【0030】
針ハブ106は、人が下手投げの態様で懐中電灯を保持し得るように、片手で保持されるように構成される。実際、針ハブ106は、以下に説明するように、カニューレ挿入器100を用いて経皮的穿刺を確立しながら、片手の指で支えることができるハンドルとして寸法決めされ且つ形成されたハウジング116を含む。
【0031】
ハウジング116は、空洞118を取り囲み、近位壁120および遠位壁122によって空洞118を覆うことにより、アクセスガイドワイヤ112の少なくとも近位端部分のための無菌の囲いを形成する。加えて、針ハブ106の遠位端部分は、以下に説明されるように、カニューレハブ142の一次アーム146のコネクタと嵌合するように構成される穴126を含む、ハウジング116の延長部124を含む。
【0032】
ハウジング116は、ガイドワイヤアクチュエータ114が複合針104内に存在する場合にガイドワイヤアクチュエータ114のスライダ136用の長手方向スロット128を含むことができる。ガイドワイヤアクチュエータ114が存在しない場合、アクセスガイドワイヤ112を、遠位壁122内の貫通孔130等の近位壁内120および遠位壁122内の貫通孔を介して前進させたり又は引き込んだりすることができる。
【0033】
拡張器108は、針110によって確立された穿刺を取り囲む組織を拡張するように構成されたテーパ132を有する遠位端部分を含む。拡張器108の近位端部分は、針ハブ106内に設けられる。実際、拡張器108の近位端は、針ハブ106のハウジング116の遠位壁122に連結される。拡張器108は、針110の少なくとも先端134が拡張器108の遠位端を越えて延びる状態で、針110の上方に配置される。
【0034】
針110は、針110の先端134を患者の血管に挿入することによって経皮的穿刺を確立するように構成された先端134(例えば、面取りした先端)を有する遠位端部分を含む。針110の近位端部分は、針ハブ106内に設けられる。実際、針110の近位端は、針ハブ106のハウジング116の遠位壁122に連結される。拡張器108は、アクセスガイドワイヤ112の上方に配置される。拡張器108の存在により、針110は、既存の透析針よりも小さくてもよい。これにより、患者および新人臨床医の不安を同様に低減することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、針110は格納式である。そのような実施形態では、針110は、遠位壁122内の貫通孔130を通過し、空洞118の中に入り、空洞118で、針110は、圧縮された圧縮ばね内に配置されて該圧縮ばねに連結される。作動されると、針引き込みアクチュエータは、圧縮ばねが伸長することを可能にしながら、圧縮された圧縮ばねを解放することによって、針110を針ハブ106の中に引き込む。
【0036】
アクセスガイドワイヤ112は、新人臨床医が針110を正しい位置に適切に前進させていることを確実にすることによって、針110による経皮的穿刺を確立する際の最初の穿刺の成功を容易にするように構成される。アクセスガイドワイヤ112は、カニューレ挿入器100の嵌合状態又は展開準備完了状態において針110内に配置される。実際に、アクセスガイドワイヤ112は、針ハブ106のハウジング116の遠位壁122内の貫通孔130を介して、少なくとも空洞118から針110内に延びる。例えば、ガイドワイヤアクチュエータ114が複合針104内に存在する場合、アクセスガイドワイヤ112の近位端部分は、ガイドワイヤアクチュエータ114のスライダ136に連結され、アクセスガイドワイヤ112の残りの部分は、針ハブ106のハウジング116の遠位壁122内の貫通孔130を介して、空洞118から針110内に延びる。ガイドワイヤアクチュエータ114が存在しない場合、アクセスガイドワイヤ112はさらに、針ハブ106のハウジング116の遠位壁120内の貫通孔を介して空洞118内に延びる。
【0037】
いくつかの実施形態では、最初の穿刺の成功は、ハウジング116の半透明部分またはチャネルによって針110の管腔に流体接続されるハウジング116内の窓を通して等、血液フラッシュバックの視覚的確認によってさらに容易となる。
【0038】
存在する場合、ガイドワイヤアクチュエータ114は、アクセスガイドワイヤ112の遠位端を針110の先端134を越えて前進させるように、またはアクセスガイドワイヤ112の遠位端を針110の先端134より近位側の針110の遠位端部分内に引き込むように構成される。ガイドワイヤアクチュエータ114は、針ハブ106のハウジング116の長手方向スロット128内に摺動可能に配置されたスライダ136を含むことができる。スライダ136は、針ハブ106の本体の空洞118内でアクセスガイドワイヤ112の近位端部分に結合された延長部138を含む。
【0039】
複合カニューレ102は、カニューレ140と、カニューレ140の近位端部分の周囲に位置するカニューレハブ142とを含む。
カニューレ140は、テーパ144を有する遠位端部分を含む。拡張器108のテーパ132と同様に、カニューレ140のテーパ144は、針110で確立された穿刺を取り囲む組織を拡張するように構成される。実際、カニューレ140のテーパ144は、カニューレ挿入器100の嵌合状態において拡張器108のテーパ132から連続するように構成される。カニューレ140は、透析中に患者の快適性を向上させるように構成される可撓性ポリマー材料のような可撓性材料から形成される。実際、カニューレ140は、透析中に定位置に残される鋭い先端を有する硬質(例えば、金属)である既存の透析針と対照的なものである。そのような透析針の鋭い先端は、鋭い先端が不正確に前進させられるか、または患者が透析中に動く場合、浸潤(例えば、血管壁の穿刺)をもたらし得、後者は、透析治療処置の持続時間に起因する可能性が高い。
【0040】
カニューレハブ142は分岐(例えば、二股に分かれている)してもよい。分岐している場合、カニューレハブ142は、少なくとも一次アーム146および二次アーム148又はサイドアームを含む。カニューレハブ142の一次アーム146は、一次アーム管腔150を含み、カニューレハブ142の二次アーム148は、二次アーム管腔152を含む。一次アーム管腔150及び二次アーム管腔152の各管腔は、カニューレ140のカニューレ管腔154に流体接続される。図示されるように、カニューレハブ142の一次アーム146および二次アーム148の各アームは、ルアーコネクタのようなコネクタで終端する。コネクタは、以下に説明される針引き抜きステップに従って複合針104が複合カニューレ102から取り外された後、管腔を密閉するための弁を含むことができる。これにより、血液または他の体液で隣接領域を汚染することなく透析治療処置を実行することができるため、それに関連する健康リスクを未然に防ぐことができる。加えて、弁は、透析構成要素が複合カニューレ102から切り離されるか、または引き抜かれるとき等、コネクタが閉鎖システムに接続されていないとき、空気が複合カニューレ102に進入することを防止する。
【0041】
カニューレ挿入器100は、少なくともカニューレ挿入器100によるカニューレ挿入のために、複合針104と複合カニューレ102との嵌合状態または展開準備完了状態を有する。カニューレ挿入器100の嵌合状態は、カニューレハブ142の近位端部分が針ハブ106の遠位端部分に連結された状態で複合カニューレ102のカニューレ140内に配置された複合針104の拡張器108を含む。具体的に、カニューレ挿入器100の嵌合状態において針ハブ106の遠位端部分に連結されたカニューレハブ142の近位端部分は、針ハブ106の遠位端部分に位置する穴126内に配置されたカニューレハブ142の一次アーム146のコネクタである。
【0042】
方法
カニューレ挿入器100の方法は、カニューレ挿入器100で患者にカニューレを挿入することを含む。そのような方法は、カニューレ挿入器取得ステップと、穿刺確立ステップと、アクセスガイドワイヤ前進ステップと、組織拡張ステップと、カニューレ前進ステップと、針引き抜きステップとを含む。
【0043】
カニューレ挿入器取得ステップは、カニューレ挿入器100を取得することを含む。上述したように、カニューレ挿入器100は、好ましくはカニューレ挿入器100の嵌合状態において、複合針104および複合カニューレ102を含む。
【0044】
本方法は、確実化ステップをさらに含むことができる。確実化ステップは、複合針104および複合ハブが、針ハブ106の遠位端部分の穴126内に配置されたカニューレハブ142の一次アーム146のコネクタと適切に嵌合されることを確実にすることを含む。また、確実化ステップは、拡張器108の遠位端部分のテーパ132がカニューレ140の遠位端部分のテーパ144に沿って連続することを確実にすることを含み得る。また、確実化ステップは、ガイドワイヤ112の遠位端が複合針104の針110の先端134を越えて延びないことを確実にすることを含み得る。実行される場合、確実化ステップは、穿刺確立ステップの前に実行されるべきである。
【0045】
穿刺確立ステップは、複合針104の針110の先端134を患者の血管(例えば、動静脈瘻)に挿入することによって経皮穿刺を確立することを含む。
アクセスガイドワイヤ前進ステップは、複合針104のガイドワイヤアクチュエータ114を用いて、アクセスガイドワイヤ112の遠位端を針110の先端134を越えて血管腔内に前進させることを含む。
【0046】
アクセスガイドワイヤ前進ステップは、針ハブ106の長手方向スロット128内に配置されたスライダ136を遠位側に摺動させることを含む。スライダ136は、針ハブ106の空洞118内でアクセスガイドワイヤ112の近位端部分に結合された延長部138を含む。
【0047】
組織拡張ステップは、針110の上方に配置された拡張器108のテーパ132を用いて、穿刺を取り囲む組織を拡張させることを含む。また、組織拡張ステップは、カニューレ140のテーパ144を用いて組織を拡張することを含む。
【0048】
カニューレ前進ステップは、拡張器108、針110、およびアクセスガイドワイヤ112を通って複合カニューレ102のカニューレ140を血管腔の中へ前進させることを含む。
【0049】
本方法は、アクセスガイドワイヤを引き込むステップをさらに含むことができる。アクセスガイドワイヤ引き込みステップは、好ましくは針引き込みステップの前に、ガイドワイヤアクチュエータ114を用いて、アクセスガイドワイヤ112の遠位端を針110の先端134より近位側の針110の遠位端部分内に引き込むことを含む。
【0050】
針引き抜きステップは、カニューレハブ106の一次アーム146のコネクタを針ハブ142の遠位端部分の穴126から取り外し、複合カニューレ102を定位置に残しながら複合針104を血管腔から引き抜くことを含む。
【0051】
方法は、透析装置接続ステップおよび透析開始ステップをさらに含む。透析装置接続ステップは、複合カニューレ102を透析装置のチューブセットに接続することを含む。透析開始ステップは、複合カニューレ102を介して透析を開始することを含む。
【0052】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されており、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書で提供される概念の範囲を制限することは意図されていない。当業者は、より広い態様において、付加的な適応をおこなったり、および/または改変を行ったりすることを理解することができ、これらの適応および/または改変も包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から外れて実施されてもよい。
図1
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図8