(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】TRKA阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20240530BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240530BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240530BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/444
A61P25/04
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2022572743
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021033853
(87)【国際公開番号】W WO2021242677
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,デイビッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】リンダー,ライアン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】マレット-サンス,ライア
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/148344(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/143652(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/143653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式:
【化2】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
疼痛の治療のための、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記疼痛が、術後疼痛、神経障害性疼痛、関節リウマチ疼痛、及び変形性関節症疼痛からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記疼痛が、慢性疼痛である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、疼痛の治療剤。
【請求項9】
前記疼痛が、術後疼痛、神経障害性疼痛、関節リウマチ疼痛、及び変形性関節症疼痛からなる群から選択される、請求項8に記載の治療剤。
【請求項10】
前記疼痛が、慢性疼痛である、請求項8に記載の治療剤。
【請求項11】
疼痛の治療のための医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
前記疼痛が、術後疼痛、神経障害性疼痛、関節リウマチ疼痛、及び変形性関節症疼痛からなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疼痛が、慢性疼痛である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、薬学的組成物を調製するためのプロセス。
【請求項15】
以下の構造の化合物のヘミコハク酸塩。
【化3】
【請求項16】
結晶である、請求項15に記載のヘミコハク酸塩。
【請求項17】
12.6度、及び22.2度からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて10.5度の回析角(2θ)におけるX線回折スペクトルの実質的なピークによって特徴付けられ、前記回析角の許容誤差が、0.2度である、請求項15又は16に記載のヘミコハク酸塩。
【請求項18】
請求項15又は16に記載のヘミコハク酸塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項19】
請求項15又は16に記載のヘミコハク酸塩を含む、疼痛の治療剤。
【請求項20】
前記疼痛が、術後疼痛、神経障害性疼痛、関節リウマチ疼痛、及び変形性関節症疼痛からなる群から選択される、請求項19に記載の治療剤。
【請求項21】
前記疼痛が、慢性疼痛である、請求項19に記載の治療剤。
【請求項22】
疼痛を治療するための医薬を製造するための、請求項15又は16に記載のヘミコハク酸塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、医学の分野にある。具体的には、本発明は、トロポミシン受容体キナーゼA(TrkA)を阻害する化合物、そのような化合物を含む組成物、及び疼痛の治療のためにそのような化合物を使用する方法に関する。本化合物、及びその使用方法は、侵害受容性/炎症性、神経障害性、神経形成性、又は混合された病因の急性若しくは慢性疼痛を治療し得る。
【0002】
米国特許出願公開第2013/0336964号は、ヒト疼痛系におけるTrkA及び神経成長因子(NGF)の役割を説明している。したがって、TrKAを標的とし、かつ阻害することは、疼痛の治療に有用であり得る。(例えば、WO2015/15148344、WO2015/143652、WO2015/143653、WO2015/143654、WO2015/159175、及びWO2015/170208を参照)。TrkAに結合及び/又は阻害し、疼痛を治療するように設計された抗体も開発されている。(例えば、米国特許第10,618,974号、米国特許出願公開第2013/0336961号、米国特許第7,601,818号、WO2000/73344及びWO2016/087677を参照)。ヒトTrkAのタンパク質配列は、米国特許出願公開第2013/0336961号に提供されている。
【0003】
持続性疼痛は、主要な健康問題であり、生活の質の大幅な喪失を引き起こす。持続性疼痛は、異なるレベルの重症度を示し得、背部損傷又は変性椎間板疾患、片頭痛、関節炎、糖尿病性神経障害、がん、及び他の疾患などの様々な病状と関連している。軽度の疼痛は、現在、アセトアミノフェン、アスピリン、及び他の(典型的には市販の)薬剤で治療されている。中程度の疼痛は、コルチゾール及びプレドニゾンなどのコルチコステロイド薬を使用して制御され得る。既存の治療の有効性及び/又は忍容性に関する問題は、周知であり、例えば、コルチコステロイドは、体重増加、不眠症、及び免疫系衰弱を含む、顕著な悪影響を示す。中程度又は重度の疼痛は、モルヒネ及びフェンタニルなどのオピオイドで治療され得るが、アヘン剤の長期使用は、依存症、耐性及び身体依存症の発症を含む、いくつかの重大な欠点によって制限される。オピオイドの潜在的な過剰使用は、オピオイドを使用する、かつ中毒であり得る人々の数が増えているという観点から、「オピオイド蔓延」として特徴付けられてきた。
【0004】
現在の疼痛療法は、効果が不十分であることが多く、及び/又は深刻な望ましくない副作用(依存症など)を有するため、新しい分子標的に指向した薬物を開発する緊急の必要性が存在する。具体的には、常習性及び/又は依存症を引き起こす可能性が低い新しい疼痛治療薬を開発する緊急の医学的必要性がある。更に、特に疼痛/慢性疼痛の治療のために、1つ以上の改善された薬理学的特性、例えば、安全性、効力、有効性、又は許容性を提供し得る新しいTrkA阻害剤が必要とされている。今日まで、TrkAシグナル伝達を標的とする薬剤は、疼痛の治療のために承認されていない。したがって、代替的な抗TrkA抗体などの、TrkAシグナル伝達を阻害することができる薬剤がまだ必要とされている。
【0005】
本実施形態は、疼痛の治療に有用なTrkA阻害剤である化合物を提供する。具体的には、本発明の実施形態は、式のTrkA阻害化合物(「式I」)::
【化1】
を提供する。
【0006】
式Iの化合物に加えて、本発明の実施形態は、式Iの化合物の1つ以上の薬学的に許容される塩、及びTrKA阻害剤としての塩の使用を提供する。
【0007】
本発明の実施形態は、疼痛の治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的塩を含む薬学的組成物の使用を更に提供する。薬学的組成物は、式Iの化合物又は薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含み得る。
【0008】
本発明の実施形態は、疼痛の治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物の使用を更に提供する。
【0009】
本発明の実施形態は、患者への投与により疼痛を治療する方法を更に提供する。具体的には、本発明は、疼痛を治療する方法であって、疼痛の治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、又はその薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。別の実施形態では、本方法は、筋骨格又は神経障害に起因する急性又は慢性疼痛を治療するための、式Iの化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、又はその薬学的組成物を提供する。疼痛の具体的で非限定的な例としては、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0010】
本発明の実施形態は、療法における使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。別の実施形態は、疼痛の治療における使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、起源が筋骨格性又は神経障害性である急性又は慢性の疼痛である。疼痛の具体的で非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0011】
更に、本発明は、疼痛を治療するための医薬の製造における、その薬学的組成物の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、起源が筋骨格性又は神経障害性である急性又は慢性の疼痛であり得る。疼痛の具体的で非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0012】
本実施形態はまた、式Iの化合物のヘミコハク酸塩である化合物も提供する。
【0013】
加えて、いくつかの実施形態は、結晶性である式Iの化合物のヘミコハク酸塩を有する。いくつかの実施形態では、ヘミコハク酸塩は、12.6度、及び22.2度からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて10.5°の回析角(2θ)におけるX線回折スペクトルの実質的なピークによって特徴付けられ、回析角の許容誤差が、0.2度である。
【0014】
本発明の実施形態は、疼痛の治療における使用のための式Iのヘミコハク酸塩を含む薬学的組成物の使用を更に提供する。薬学的組成物は、式Iのヘミコハク酸塩と、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含み得る。
【0015】
本発明の実施形態は、疼痛の治療における使用のための式Iのヘミコハク酸塩を含む薬学的組成物の使用を更に提供する。
【0016】
本発明の実施形態は、患者への投与時に疼痛を治療する方法を更に提供する。具体的には、本実施形態は、疼痛を治療する方法であって、疼痛の治療を必要とする患者に、有効量の式Iのヘミコハク酸塩又はその薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。別の実施形態では、本方法は、筋骨格又は神経障害に起因する急性又は慢性疼痛を治療するための式Iのヘミコハク酸塩又はその薬学的組成物を提供する。疼痛の具体的で非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0017】
本発明の実施形態は、療法における使用のための式Iのヘミコハク酸塩又はその薬学的組成物を提供する。別の実施形態は、治療疼痛に使用するための式Iのヘミコハク酸塩を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、起源が筋骨格性又は神経障害性である急性又は慢性の疼痛である。疼痛の具体的で非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0018】
更に、本実施形態は、疼痛を治療するための医薬の製造における式Iのヘミコハク酸塩又はその薬学的組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、疼痛は、起源が筋骨格性又は神経障害性である急性又は慢性の疼痛であり得る。疼痛の具体的で非限定的な例としては、例えば、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、変形性関節症疼痛、神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害性疼痛(DNP)、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性腰痛(腰仙部神経根症(LSR)又は坐骨神経痛と称されることもある)を含む慢性腰痛(CLBP)、並びに内臓痛(例えば、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎(膀胱痛)、又は慢性骨盤痛など)が挙げられる。
【0019】
有効量は、既知技法の使用によって、かつ同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により容易に決定され得る。患者のための有効量を決定する際には、患者の体重、年齢、及び健康状態全般;関与する具体的な疾患又は障害;疾患又は障害の関与度又は重症度の程度;個々の患者の応答;投与される化合物;投与の様式;投与される調製の生物学的利用能特性;選択された投薬計画;併用薬の使用;並びに他の関連する状況を含むが、これらに限定されない、多数の要因が考慮される。
【0020】
本発明の化合物は、化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される薬学的組成物として製剤化され得る。好ましくは、そのような組成物は、経口投与用である。かかる薬学的組成物及びそれを調製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい)。
【0021】
本実施形態の化合物及び薬学的に許容される塩は、例えば、非神経根性(非神経因性)及び神経根性疼痛CLBP、DNP、及びLSRを含む、術後疼痛、神経障害性疼痛、関節リウマチ性疼痛、及び変形性関節症性疼痛を含む、疼痛のクラスを治療することが予想される。本発明の式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩又は薬学的組成物は、他の形態の疼痛の治療にも有用であり得る。本明細書で交換可能に使用される場合、「治療」及び/又は「治療すること」及び/又は「治療する」は、本明細書に記載の障害の進行の緩徐化、妨害、抑止、制御、停止、又は逆転が存在し得る全てのプロセスを指すことを意図するが、全ての障害の症状の完全な排除を必ずしも示すものではない。治療は、疼痛の予防も含み得る。治療は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、又はその薬学的組成物を、TrkA活性の低減から利益を得るであろうヒトの疾患又は状態を治療するために投与することを含み、上記治療は、(a)疾患の更なる進行を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること、(b)疾患を緩和すること、すなわち、疾患若しくは障害の退縮を引き起こすこと、又はその症状若しくは合併症を緩和すること、及び/又は症状の疾患の発生を予防することを提供する。本明細書で使用される治療は、疼痛の発生を低減させること、疼痛又は疼痛の1つ以上の症状を改善すること、疼痛又は疾患の1つ以上の症状を緩和すること、疼痛の発症を遅らせることを明示的に含む。治療には、いくつかの状況では、疼痛の治療も含まれるが、必ずしも疼痛を引き起こす基礎疾患又は状態を修正しない。
【0022】
本明細書で使用される疼痛の「発生を低減させること」は、疼痛の持続時間及び/又は頻度を低減させることのいずれかを意味する(例えば、個体における術後疼痛までの時間を遅らせる又は増加させることを含む)。当業者によって理解されるように、個体は、治療に対するその応答に関して異なり得るので、例えば、「個体において関節リウマチ疼痛又は変形性関節症疼痛の発生を低減する方法」は、そのような投与がその特定の個体における発生においてそのような低減を引き起こす可能性が高いという合理的な予想に基づいて、化合物又は薬学的に許容される塩を投与することを反映する。
【0023】
疼痛の治療にはまた、疼痛の重症度を低減すること、並びにこの状態に一般的に使用される他の薬物及び/又は療法(例えば、アヘン剤を含む)の必要性及び/又は量(例えば、曝露)を低減することも含まれる。
【0024】
疼痛又は疼痛の1つ以上の症状(関節リウマチ疼痛又は変形性関節症疼痛など)を「寛解」とは、化合物又は薬学的に許容される塩を投与しない場合と比較して、疼痛の1つ以上の症状が軽減又は改善されることを意味する。「寛解」には、症状の持続時間の短縮又は低減も含まれる。
【0025】
疼痛又は疼痛の1つ以上の症状(関節リウマチ疼痛又は変形性関節症疼痛など)の「緩和」とは、本発明による化合物又は薬学的に許容される塩で治療された個体又は個体の集団における術後疼痛の1つ以上の望ましくない臨床症状の程度を軽減することを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、疼痛の発症を「遅延させること」とは、術後疼痛、関節リウマチ疼痛、又は変形性関節症疼痛などの疼痛の進行を保留する、妨げる、緩徐化する、遅らせる、安定させる、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、病歴及び/又は治療される個体に応じて、様々な長さの時間であり得る。当業者に明らかであるように、十分又は有意な遅延は、個体が疼痛を発症しないという点で、事実上、予防を包含し得る。症状の発症を「遅延させる」方法は、方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠において症状が発症する可能性を低減し、かつ/又は所与の時間枠において症状の程度を低減する方法であり得る。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な数の対象を使用した臨床研究に基づく。
【0027】
本明細書で使用される「疼痛」は、急性及び慢性の疼痛、並びに炎症性要素を伴う任意の疼痛を含む、任意の病因の疼痛を指す。非限定的な疼痛の例としては、術後(post-surgical)疼痛、術後(post-operative)疼痛(歯痛を含む)、片頭痛、頭痛及び三叉神経痛、火傷、創傷又は腎臓結石と関連する疼痛、外傷に関連する疼痛(外傷性頭部損傷を含む)、神経障害性疼痛、関節リウマチ、変形性関節症などの筋骨格障害と関連する疼痛(例えば、非神経根性(非神経障害性)及び神経根性CLBP、DNP、及びLSR(坐骨神経痛)、強直性脊椎炎、血清陰性(非リウマチ)関節症、非関節性リウマチ及び関節周囲障害、並びにがんと関連する疼痛(「突出痛」及び末期がんと関連する疼痛を含む)、末梢神経障害及び帯状疱疹後神経痛が挙げられる。(上記のもののいくつかに加えて)炎症性成分を伴う疼痛の例としては、リウマチ痛、粘膜炎と関連する疼痛、及び月経困難症が挙げられる。
【0028】
本明細書で定義されるように、疼痛は、筋骨格性及び神経障害性起源の両方の慢性疼痛を明確に含む。疼痛には、急性疼痛及び突然の疼痛も含まれる。疼痛レベルを測定するための疼痛スケールは周知であり、例えば、McConnell,S.et al,“The Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC):A Review of Its Utility and Measurement Properties”Arthritis Care & Research,45:453-461,2001、及びHaefeli.15(Suppl 1):S17-S24に開示されているものなどである.
【0029】
「術後疼痛」(「切開後」又は「外傷後疼痛」と交換可能に呼ばれる)は、個体の組織への切り傷、刺し傷、切開、裂傷、又は創傷などの外的外傷(侵襲的又は非侵襲的にかかわらず、全ての外科的処置から生じるものを含む)から生じる又は起因する疼痛を指す。本明細書で使用される場合、術後疼痛は、外部の身体的外傷なしに発生する(生じる又は由来する)疼痛を含まない。いくつかの実施形態では、術後疼痛は内的又は外的(末梢を含む)疼痛であり、創傷、切り傷、外傷、裂傷、又は切開は、偶発的に(外傷性創傷と同様に)又は故意に(外科的切開と同様に)発生し得る。本明細書で使用される場合、「疼痛」は、侵害受容及び痛覚を含み、疼痛スコア及び当該技術分野で周知の他の方法を使用して、疼痛を客観的及び主観的に評価することができる。本明細書で使用される場合、術後疼痛には、異痛症(すなわち、通常は非有害な刺激に対する反応の増加)及び痛覚過敏(すなわち、通常の有害又は不快な刺激に対する反応の増加)が含まれ、これは、熱的又は機械的(触覚)であり得る。いくつかの実施形態では、疼痛は、熱的感受性、機械的感受性、及び/又は安静時痛を特徴とする。いくつかの実施形態では、術後疼痛は、機械的に誘導される疼痛又は安静時痛を含む。他の実施形態では、術後疼痛は、安静時痛を含む。当該技術分野で周知のように、疼痛は、一次性又は二次性疼痛であり得る。
【0030】
本明細書で交換可能に使用される場合、「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、ヒト、より詳細には、それを必要としている患者を指す。ある特定の実施形態では、患者は、TrkA活性の低減から利益を得るであろう疾患、障害、又は状態(例えば、疼痛、例えば、一次性若しくは二次性頭痛、及び/又は片頭痛(慢性片頭痛を含む))を更に特徴とする。別の実施形態では、患者は、上記の状態、又はTrkA活性の低減から利益を得るであろう状態を発症するリスクがあると更に特徴付けられる。
【0031】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、当該分野で周知の標準的条件下での本発明の化合物の適切な遊離塩基及び適切な薬学的に許容される酸の、好適な溶媒中での反応によって形成され得る。例えば、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)、Bastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,”Organic Process Research and Development,4:427-435(2000)、及びBerge,S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)を参照されたい。
【0032】
式Iの化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、又はその薬学的組成物は、当業者に知られている様々な手順によって調製され得、そのうちのいくつかは、以下の調製及び実施例で説明されている。以下の調製及び実施例における各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収され得る。以下の調製及び実施例において、全ての置換基は、別途示されない限り、すでに定義した通りである。試薬及び出発材料は、当業者であれば容易に入手可能なものである。本発明の範囲を限定することなく、本発明の態様を更に例示するために、以下の調製及び実施例が提供される。加えて、当業者は、当業者が調製することができる好適な出発材料又は中間体を使用することによって、式Iの化合物を調製し得ることを理解する。
【0033】
特定の略語が本明細書で使用される場合があり、別途指定されない限り、以下の意味を有する。「aa」はアミノ酸を指す。「ACN」はアセトニトリルを指す。「Ac」はアセチルを指す。「hBDNF」は、ヒト脳由来神経栄養因子を指す。「CAS#」は、Chemical Abstracts Registry番号を指す。「DCM」は、塩化メチレン又はジクロロメタンを指す。「DIPEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指す。「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す。「D-PBS」は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を指す。「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を指す。「ESMS」及び「ES/MS」は、エレクトロスプレー質量分析法を指す。「Et」はエチルを指す。「Et2O」はジエチルエーテルを指す。「EtOAc」は酢酸エチルを指す。「EtOH」はエタノール又はエチルアルコールを指す。「h」又は「hr」は時間(単数又は複数)を指す。「HATU」は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートを指す。「hTrk」は、ヒトトロポミシン受容体キナーゼを指す。「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指す。「IC50」は、その薬剤について可能な最大阻害応答の50%を生じる薬剤の濃度を指す。「LC-ES/MS」とは、タンデム型エレクトロスプレー質量分析法による液体クロマトグラフィーを指す。「min」は分(単数又は複数)を指す。「Me」はメチルを指す。「MeOH」はメタノール又はメチルアルコールを指す。「min」は分(単数又は複数)を指す。「n-BuLi」はn-ブチルリチウムを指す。「OAc」はアセテート又はアセトキシを指す。「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水を指す。「RT」は室温を指す。「SD」は標準偏差を指す。「秒」は時間の単位としての秒を指す。「SEM」は、平均値の標準誤差を指す。「SFC」は、超臨界流体クロマトグラフィーを指す。「SH2」はSrc Homolgy 2ドメインを指す。「THF」はテトラヒドロフランを指す。「Tris」は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又は2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオールを指す。「tR」は保持時間を指す。「U/mL」は、1ミリリットル当たりの単位を指す。「U2OS」は、ヒト骨骨肉腫上皮細胞又は細胞株を指す。「v/v」は、溶媒濃度の比としての体積対体積を指す。
【0034】
調製及び実施例
下記の調製及び実施例は、本発明を更に例示し、本発明の様々な化合物の典型的な合成を表す。試薬及び出発材料は、容易に入手可能であるか、又は当業者によって容易に合成され得る。調製及び実施例は、限定ではなく例示として記載されており、当業者によって様々な変更がなされ得ることを理解されたい。
【0035】
LC-ES/MSは、AGILENT(登録商標)HP1100液体クロマトグラフィーシステム上で実施する。エレクトロスプレー質量分析測定(ポジティブ及び/又はネガティブモードで取得される)は、HP1100 HPLCとインターフェース接続するMass Selective Detector四重極質量分析計で行われる。LC-MS条件(低pH):カラム:PHENOMENEX(登録商標)GEMINI(登録商標)NX C18 2.1mm×50mm、3.0μ、勾配:5~100%Bで3分間、次いで100%Bで0.75分間、カラム温度:50℃±10℃、流速:1.2mL/分、溶媒A:0.1%HCOOH含有脱イオン水、溶媒B:0.1%ギ酸含有ACN、波長214nm。代替LC-MS条件(高pH):カラム:XTERRA(登録商標)MS C18カラム2.1×50mm、3.5μm、勾配:5%の溶媒Aで0.25分間、勾配:5%~100%の溶媒Bで3分間、及び100%の溶媒Bで0.5分間、又は10%~100%の溶媒Bで3分間、及び100%の溶媒Bで0.75分間、カラム温度:50℃±10℃、流速:1.2mL/分、溶媒A:10mMのNH4HCO3 pH9、溶媒B:ACN、波長:214nm。
【0036】
別途指定されない限り、分取逆相クロマトグラフィーは、Mass Selective Detector質量分析計及びLEAP(登録商標)オートサンプラ/画分コレクタを装備したAGILENT(登録商標)1200LC-ES/MSで行われる。高pH法を、75×30mmのPHENOMENEX(登録商標)GEMINI(登録商標)-NX、10×20mmのガードを有する5μm粒径カラムで実施する。流量85mL/分。溶離液は、アセトニトリル中10mMの重炭酸アンモニウム(pH10)である。
【0037】
NMRスペクトルは、Bruker AVIII HD400MHz NMR Spectrometerで実施し、残留溶媒[CDCl3、7.26ppm、(CD3)2SO、2.05ppm]を参照標準として使用して、ppmで報告されるCDCl3溶液又は(CD3)2SO溶液として得る。ピーク多重度が報告される場合、次の略語を使用することができる。s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br-s(ブロード一重線)、dd(二重線の二重線)、dt(三重線の二重線)。結合定数(J)は、報告される場合、ヘルツ(Hz)で報告される。
【0038】
調製1
2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【化2】
2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸(5g、23mmol)をMeOH(100mL)中に溶解し、H
2SO
4の濃縮水溶液(200μL、4mmol)を添加する。得られた混合物を、48時間、撹拌しながら加熱還流する。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を水で希釈し、EtOAcで抽出する。有機抽出物を、飽和NaHCO
3水溶液及び飽和NaClで連続的に洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、表題化合物を得る(5.2g、収率99%)。
1Hnmr(CDCl
3):δ3.993(s,3H),7.447(d,1H),7.507(d,1H),8.091(t,1H)。
【0039】
調製2
2-フルオロ-5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【化3】
2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(5.1g、23mmol)を濃H
2SO
4水溶液(25mL)に溶解し、得られた混合物を撹拌しながら0℃まで冷却する。7M HNO
3(2.5mL、40mmol)の水溶液を0℃で15分間かけて滴下し、得られた混合物を1時間撹拌しながら室温まで温める。反応混合物を氷上に注ぎ、得られた沈殿物を濾過によって収集し、水で洗浄し、真空吸引で風乾する。濾過ケーキをEtOAc(100mL)中に溶解し、有機混合物を、飽和NaHCO
3水溶液及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄する。有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(5.8g、収率95%)を黄色固体として得る。
1Hnmr(CDCl
3):δ4.043(s,3H),7.672(d,1H),8,598(d,1H)。
【0040】
調製3
5-アミノ-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【化4】
2-フルオロ-5-ニトロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(5.8g、21.7mml)をMeOH(150mL)に溶解し、混合物にN
2を吹き込む。Pd/C(500mg)を添加し、反応混合物を密封し、得られた混合物を、H
2のバルーン下、周囲温度及び圧力で4時間撹拌する。反応混合物をN
2でパージし、珪藻土の床で濾過し、メタノール濾液を減圧下で濃縮する。得られた粗残留物を、ヘキサン中5~60%EtOAcの勾配で溶出させる、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望のクロマトグラフィー画分を蒸発させた後に表題化合物を得る(3.5g、68%収率)。ESMS(m/z):236(M-H)。
【0041】
調製4
5-ブロモ-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【化5】
CuBr
2(3.15g、14.1mmol)及び亜硝酸イソアミル(2.2mL、16mmol)を、ACN(30mL)に溶解させた5-アミノ-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(3g、12.7mmol)の溶液に添加し、得られた混合物を、室温で2時間撹拌する。反応混合物をヘキサンで希釈し、珪藻土を通して濾過し、収集された濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、ヘキサン中5~40%EtOAcの勾配で溶出させる、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望のクロマトグラフィー画分を蒸発させた後に表題化合物を得る(3.8g、収率71%)。
1Hnmr(CDCl
3):δ3.996(s,3H),7.521(dd,1H),8.272(t,1H)。
【0042】
調製5
2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【化6】
1-メチル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(1.0g,4.8mmol)及びメチル5-ブロモ-2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸(1.3g、4.3mmol)を、撹拌棒を装備したマイクロ波バイアル中の1M水性K
3PO
4(2mL、2mmol)を含むTHF(6mL)に懸濁し、混合物にN
2を5分間スパージする。メタンスルホナト(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリ-イソプロピル-1,1’-ビフェニル)(2’-メチルアミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)(190mg、0.2mmol)を添加し、バイアルをテフロンキャップで密閉する。得られた混合物を、マイクロ波反応器内で、100℃にて4時間照射する。反応混合物を室温まで冷却し、DCM中5~100%MeOH(MeOH中10%v/vの2M NH
3を含む)の勾配で溶出する精製のためにシリカゲルに直接負荷し、所望のクロマトグラフ画分を蒸発させた後、表題化合物(1.1g、収率85%)を白色固体として得る。ESMS(m/z):303(M+H)。
【0043】
調製6
2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸
【化7】
固体LiOH(1.0g、41mmol)を、2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(1.1g、3.7mmol)のEtOH(50mL)及びH
2O(10mL)中溶液に添加し、得られた反応混合物を、室温で2時間撹拌する。混合物を、5N HClで酸性化し、EtOAcで抽出する。有機抽出物を、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物を白色固体(1.1g、収率99%)として得る。ESMS(m/z):298(M+H)。
【0044】
調製7
5-ブロモ-4-ヨード-ピリジン-3-カルボン酸塩酸塩
【化8】
THF(350mL)及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(41mL、240mmol)との混合物を、N
2下で、撹拌しながら-50℃まで冷却する。ヘキサン中のn-BuLiの2.5M溶液(81mL、220mmol)を、温度を-40℃未満に維持しながら少しずつ添加し、得られた混合物を、-50℃で10分間撹拌する。温度を-40℃未満に維持しながら、5-ブロモピリジン-3-カルボン酸(20.0g、99.0mmol)を、少しずつ添加する。得られた反応混合物を-50℃で撹拌し、I
2(30.2g、119mmol)のTHF(300mL)溶液に、N
2下、わずかな圧力で、-50℃にて、撹拌しながら、カニューレにより添加する。得られた混合物を、N
2下で4時間撹拌しながら室温まで加温する。反応混合物を、水(20mL)でクエンチし、溶媒のほとんどをN
2流下で蒸発させる。得られた残留物を、NaOHの1N水溶液(250mL)に注ぐ。得られた塩基性混合物を、Et
2O:EtOAc(1:1、約250mL)で洗浄し、分離した水層を、5N HCl水溶液でpH約1に酸性化する。得られた沈殿物を、濾過によって収集し、MeOHで粉末化し、濾過によって回収し、濾過ケーキを、Et
2O及びヘキサンで洗浄し、風乾して、表題化合物(20.0g、収率55%)を黄褐色固体として得るが、これは更なる精製をすることなく使用するのに十分であり、次の工程でそのまま使用される。ESMS(m/z):(
79Br/
81Br)328/330(M+H)。
【0045】
調製8
5-ブロモ-4-ヨード-ピリジン-3-カルボン酸メチル
【化9】
50mLのRBFに、5-ブロモ-4-ヨード-ピリジン-3-カルボン酸(2.8g、8.5mmol)、アセトン(23mL)、K
2CO
3(1.8g、12.8mmol)、及び硫酸ジメチル(891μL、9.3mmol)を添加する。混合物を、室温で一晩撹拌する。反応混合物を、珪藻土で濾過し、アセトン及びEtOAcですすぎ、濾液を、減圧下で濃縮する。得られた残留物を、イソヘキサン中の0~100%EtOAc(2%Et
3Nを含む)の勾配で溶出する、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分を蒸発させた後に表題化合物(2.15g、収率70.5%)を結晶性黄色固体として得る。
1Hnmr((CD
3)
2SO):δ3.906(s,3H),8.592(s,1H),8.862(s,1H)。
【0046】
調製9
5-ブロモ-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸メチル
【化10】
References:Bioorg.Med.Chem.Lett.,2017,27(16),3817;Bioorg.Med.Chem.Lett.,2016,26(1),160.
【0047】
5-ブロモ-4-ヨード-ピリジン-3-カルボン酸メチル(710mg、2.1mmol)、CsF(630mg、4.1mmol)、LiCl(176mg、4.1mmol)、テトラキス(トリフェニル)-ホスフィン)パラジウム(0)を含む25mLマイクロ波容器(120mg、0.1mmol)を排気し、窒素でパージする(真空/窒素の2サイクル)。1,4-ジオキサン(18mL、210.8mmol)を添加し、窒素を混合物に吹き込み、トリブチル(2-ピリジル)スタンナン(540μL、1.7mmol)を添加する。密閉した反応混合物を、加熱ブロック中で125℃まで加熱し、一晩加熱する。得られた混合物を、室温で48時間撹拌する。粗混合物を、珪藻土で濾過し、EtOAcですすぎ、濾液を減圧下で濃縮する。得られた残留物を、イソヘキサン中の0~70%EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、所望のクロマトグラフィー画分の蒸発後に表題化合物(318mg、52%収率)を金色の油状物として得る。ESMS(m/z):(79Br/81Br)292/294(M+H)。
【0048】
調製10
2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化11】
2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)安息香酸(33.1g、115mmol)、NH
4Cl(8.0g、150mmol)、HATU(57g、142.4mmol)、DIPEA(44mL、252mmol)及びDMF(300mL)を丸底フラスコ中で合わせ、室温で1時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、得られた沈殿物を濾過により収集し、水で洗浄し、50℃で真空乾燥して、表題化合物(24g、収率72%)をオフホワイトの結晶性固体として得る。濾液を、減圧下で濃縮し、水で希釈する。得られた混合物を、EtOAcで抽出し、有機層を飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残留物をEtOAcで粉末化し、濾過により収集し、風乾して、更なる表題化合物(5.4g、収率16%)を白色の結晶性固体として得る。表題化合物を、以前に回収された表題物質と合わせる(29.0g、全収率92%)。ESMS(m/z):288(M+H)。
【0049】
調製11
5-[[2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ]-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸メチル
【化12】
25mLマイクロ波バイアルに、2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(282mg、1mmol)、CsCO
3(800mg、2.5mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(150mg、0.2mmol)及び4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(190mg、0.3mmol)をチャージする。バイアルを密閉し、真空/窒素の2サイクルに供し、1,4-ジオキサン(8mL)中の5-ブロモ-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸メチル(240mg、0.8mmol)を添加する。窒素を混合物に5分間吹き込み、混合物を、加熱ブロック中、130℃で一晩加熱する。混合物を珪藻土で濾過し、EtOAc及びMeOHで順次すすぎ、濾液を濃縮して、褐色油状物を得る。得られた残渣を、MeOH中で希釈し(総量8.5mlまで)、珪藻土の床で濾過し、10mM NH
4CO
3を含む水中の5~100%ACNの勾配で溶出するC18シリカゲル(PHENOMENEX(登録商標)Gemini、5μ、30x100mm、60mL/分、210nm)上での分取HPLCにより精製し、9分間かけて(合計1回の注入)NH
4OH水溶液でpH約9に調整し、所望のクロマトグラフィー画分を蒸発させた後に表題化合物(40mg、収率8.5%)を得る。ESMS(m/z):500(M+H)。
【0050】
調製12
5-[[2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ]-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸
【化13】
5-[[2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ]-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸メチル(40mg、0.07mmol)をMeOH(5mL)に溶解し、NaOHの2M水溶液(5mL、10mmol)で処理し、得られた混合物を30分間撹拌する。反応物を2M HClの水溶液で酸性化し、DCMで抽出する。有機層を分離し、疎水性フリットを通して乾燥させ、減圧下で濃縮して、淡黄色固体を得る。水相を、更に20%MeOH/DCMで抽出し、層を分離し、有機抽出物をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、前の有機相と合わせ、濃縮して、表題化合物(40mg、118%粗収率)を、更なる精製なしで使用するのに好適な淡黄色の固体として得る。ESMS(m/z):486(M+H)。
【0051】
実施例1
5-[[2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ]-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボキサミド
【化14】
5-[[2-フルオロ-5-(1-メチルピラゾール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ]-4-(2-ピリジル)ピリジン-3-カルボン酸(40mg、0.08mmol)を、無水DMF(2mL)に溶解させる。HATU(58mg、0.2mmol)及びNH
4Cl(55mg、1.0mmol)、並びにDIPEA(270μL、1.6mmol)を添加する。反応混合物を室温で60分間撹拌し、MeOH中で希釈し(総量6mLまで)、珪藻土で濾過し、10mM NH
4CO
3を含む水中の15~100%ACNの勾配で溶出するC18シリカゲル上での分取HPLC(PHENOMENEX(登録商標)Gemini 5μ、30×100mm、60mL/分、220nm)により精製し、NH
4OH水溶液で9分かけてpH約9に調整し、所望のクロマトグラフィー画分を蒸発させた後に表題化合物を得る(25mg、収率56%)。ESMS(m/z):485(M+H)。
【0052】
アッセイ
hTrkキナーゼ阻害剤を調べるためのヒトトロポミオシン受容体キナーゼ(hTrkA、hTrkB、hTrkC)アッセイ
非リン酸化hTrkキナーゼドメイン(hTrkA、アミノ酸:441-796、hTrkB、アミノ酸:526-838又はhTrkC、アミノ酸:510-825)とフルオレセイン標識ポリGT基質(poly-GT、Invitrogen)との反応は、フルオレセイン標識リン酸化生成物を生成する。リン酸化チロシン生成物へのテルビウム標識抗体(Invitrogen)の結合により、テルビウムとフルオレセインとが近接し、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)が増加する。阻害剤の存在下では、リン酸化生成物の形成が低減され、TR-FRET値が減少する。
【0053】
hTrkキナーゼ活性の阻害:ヒトトロポミオシン受容体hTrkキナーゼの活性を、供給元の指示に従ってTR-FRET技術(Invitrogen)を使用して定量化する。簡単に説明すると、用量応答研究用の化合物は、アコースティック分注装置Echo Access(Labcyte)を使用してジメチルスルホキシドで連続希釈され(20濃度で1:2)、ProxiPlate-384plusプレート(PerkinElmer)に分注される。hTrkA、hTrkB又はhTrkCのキナーゼドメインを添加し、プレートを室温(RT)で1時間インキュベートする。次に、ATP及びpoly-GTを添加し、プレートを室温で1時間インキュベートする。EDTA及びテルビウム標識抗体を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした後、ENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer)を使用して、TR-FRETシグナルを検出する。520~495nmでの蛍光の比率を計算する。
【0054】
データ分析:データを%阻害に変換し、4パラメータロジスティック曲線フィッティングプログラム(GENEDATA SCREENER(登録商標)v13.0.5)を使用し、式Y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+10^((LogIC50-X)*HillSlope))により、濃度応答曲線の上下範囲から相対IC50値を計算する。曲線の上部は100%阻害であり、非選択的hTrkキナーゼ阻害剤([最終]=7.9uM)である内部標準で処理されたキナーゼウェルによって定義され、曲線の下部は0%阻害であり、化合物の不在下でのキナーゼウェルによって定義される。
【0055】
この手順で使用される内部標準は、N-[5-[7-[(1S)-2-ヒドロキシ-1-メチル-エチル]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボニル]-3-ピリジル]-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]アセトアミドである。
【化15】
【0056】
この内部標準は、CAS Registry Number 1402438-37-2として市販されている。この内部標準は、米国特許第8,846,698号の教示を使用して作製することもできる。
【0057】
ヒトトロポミオシン受容体キナーゼ(hTrk)阻害剤によるヒト骨骨肉腫上皮細胞におけるSH2ドメインタンパク質動員のインビトロ阻害
hTrkA、TrkB又はTrkCの活性化は、PathHunter(登録商標)(DiscoverX)酵素フラグメント相補技術を使用して調べられる。このアプローチでは、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)ProLink(PK)の1つのフラグメントがTrk受容体のC末端に融合され、β-galの残りのフラグメントと融合されたホスホチロシンSH2ドメインタンパク質と共発現され、酵素受容体(EA)も、ヒト骨骨肉腫上皮(hU2OS)細胞中で、p75神経栄養受容体(DiscoverX)を発現する。アゴニストによるhTrk受容体の活性化は、受容体のリン酸化をもたらす。SH2-EA融合タンパク質は、リン酸化されたhTrk受容体に結合し、その結果PK及びEAを補完して活性β-gal酵素を形成する。β-gal酵素活性を、PathHunter(登録商標)検出キット(DiscoverX)中で化学発光基質を使用して定量的に測定する。ヒト神経成長因子(hNGF、PeproTech)、ヒト脳由来神経栄養因子(hBDNF、PeproTech)、及び組換えヒトニューロトロフィン-3タンパク質(hNT-3、PeproTech)を、それぞれ、hTrkA、hTrkB、又はhTrkC受容体のアゴニストとして使用する。
【0058】
細胞培養:hTrk受容体及びp75(PathHunter(登録商標)システム、DiscoverX)を発現する培養hU2OS細胞を、AssayComplete(商標)U2OS Cell Culture Kit 11(DiscoverX)中で、約80%コンフルエンスまで増殖させる。アッセイの前日に、AssayComplete(商標)Cell Detachment Reagent(DiscoverX)を使用して細胞を剥がし、AssayComplete(商標)Cell Plating 16 Reagent(DiscoverX)で正しい細胞濃度(250,000/ml)まで回収し、5K/ウェルで384ウェルポリ-D-リジンコーティング白色プレート(BD Biosciences)上に播種する。細胞プレートを、37℃で一晩インキュベートする。
【0059】
hTrkキナーゼ活性の阻害:hTrkA及びhTrkCキナーゼの活性は、供給元の指示に従ってPathhunter(登録商標)技術(DiscoverX)を使用して定量化する。簡単に説明すると、アッセイの日に、用量応答研究用の化合物を、アコースティック分注装置Echo Access(Labcyte)を使用してジメチルスルホキシド(10濃度について1:3)で連続希釈し、細胞プレートに分注し、その後室温(RT)で1時間インキュベートする。hTrKA-p75細胞における研究のために、組換えヒトNGF-β(PeproTech)をEC80濃度([最終]=27ng/ml)で細胞に添加し、プレートを室温で3時間インキュベートする。Pathhunter(登録商標)検出試薬(DiscoverX)を添加し、暗所で室温で1時間インキュベーションした後、700nmでENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer)でプレートを読み取る。ヒト脳由来神経栄養因子(hBDNF、PeproTech、[最終]=20ng/ml)又は組換えヒトニューロトロフィン-3タンパク質(hNT-3、PeproTech、[最終]=29ng/ml)を、それぞれhTrkB-p75又はhTrkC-p75細胞における研究のアゴニストとして使用する。
【0060】
データ分析:データを%阻害に変換し、4パラメータロジスティック曲線フィッティングプログラム(GENEDATA SCREENER(登録商標)v13.0.5)を使用し、式Y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+10^((LogIC50-X)*HillSlope))により、濃度応答曲線の上下範囲から相対IC50値を計算する。曲線の上部は、100%阻害であり、アゴニスト刺激のないウェルによって定義される。曲線の下部は、0%阻害であり、阻害剤の不在下でのアゴニスト刺激(hNGF、hBDNF、又はhNT)ウェルによって定義される。
【表1】
【0061】
これらのデータは、実施例1の化合物が、インビトロでhTrkAの強力な阻害剤であること及びhTrkAに対して選択的であることを示す。
【0062】
実施例1のヘミコハク酸共結晶形成の調製
フラスコに、実施例1の化合物16g(33.0mmol、1当量)を添加する。THF(288mL)及び水(32mL)を添加する。この混合物を55℃まで加熱し、溶液を得る。溶液をポリッシュフィルタで濾過し、9:1v:vTHF:水(2×16mL)ですすぐ。
【0063】
別のフラスコに、コハク酸(3.9g、33.0mmol、1当量)及びエタノール(80mL)を添加する。溶液が得られるまで混合する。
【0064】
実施例1の化合物の溶液を、頭上撹拌及び蒸留ヘッドを有するフラスコに移し、9:1v:v THF:水(16mL)ですすぐ。コハク酸溶液を、EtOHに添加する。溶液を加熱還流し、蒸留を開始する。300mLの留出物を収集した後、固形物が混合物から結晶化する。EtOH(160mL)を戻し、撹拌する。熱を止める。室温まで冷却する。濾過し、EtOH(4×16mL)ですすぐ。ウェットケーキを、真空下、50℃で乾燥する。実施例1の化合物のヘミコハク酸塩である白色固体を単離する(16.58g、30.5mmol、収率92.5%)。
【0065】
共結晶形成
以下は、ヘミコハク酸共結晶の結晶化プロセスの説明である。当業者は、同様のプロセスを使用して遊離塩基を結晶化し得ることを理解するであろう(当業者によって認識されるように、必要に応じて変更を伴って)。
【0066】
フラスコに、実施例1のヘミコハク酸共結晶(40.1g、72.2mmol、1当量)を添加する。DMSO(120mL)を添加し、50℃まで加熱して溶液を得る。溶液を研磨し、DMSO(2×約2mL)ですすぐ。
【0067】
別のフラスコにコハク酸(14.5g、123mmol、1.7当量)及びEtOH(980mL)を添加する。溶液が得られるまで混合する。
【0068】
結晶化容器に、DMSO(20mL)及びコハク酸EtOH(140mL)溶液の一部分を添加する。50℃まで加熱する。実施例1の化合物のヘミコハク酸塩の種結晶(1.4g)を添加し、撹拌する。
【0069】
結晶化容器の温度を50℃に維持しながら、DMSO中の実施例1の化合物の溶液及びEtOH中のコハク酸の溶液を別々の供給流で4時間かけて結晶化容器に添加する。共添加終了後、混合物をゆっくりと20℃まで冷却する。20℃で撹拌し、次いで濾過し、コハク酸のEtOH溶液ですすぐ(2mg/mLコハク酸EtOH溶液、4×70mLすすぎ)。ウェットケーキを、50℃で真空乾燥する。実施例1の化合物のヘミコハク酸共結晶である白色固体を単離する(38.2g、70.3mmol、種の量に対して補正された収率92%)。
【0070】
NMR:1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.14(s,1H),10.66(d,J=3.1Hz,1H),9.08(s,1H),8.70-8.63(m,1H),8.61(s,1H),8.06(s,1H),7.94-7.85(m,2H),7.83(d,J=10.6Hz,1H),7.80(d,J=2.2Hz,1H),7.60-7.52(m,2H),7.46-7.38(m,1H),6.46-6.41(m,1H),3.93(s,3H),2.43(s,2H)。
【0071】
マススペクトル:実測値485.0m/z、理論値485.1
【0072】
結晶形態のX線粉末回折(XRPD)
結晶性固体のXRPDパターンは、40kV及び40mAで動作する、CuKα源及びVantec検出器を装備したBruker D8 Endeavor X線粉末回折計で得られる。試料を、4~42 2θ°で、0.009 2θ°の工程サイズ及び0.5秒/工程の走査速度で、0.3°の一次スリット開口、及び3.9°の粒径分布(PSD)開口を使用して、走査する。乾燥粉末は、石英試料ホルダーに充填され、滑らかな表面は、ガラススライドを使用して得られる。結晶形態回折パターンは、周囲温度及び相対湿度で収集される。結晶ピーク位置は、8.853及び26.774 2θ°のピークを有する内部NIST 675標準に基づいて全体パターンシフト後、MDI-Jadeで決定される。結晶学の分野では、任意の所与の結晶形に関して、結晶形態及び晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して、回折ピークの相対強度が変化し得ることは周知である。優先配向の効果が存在する場合、ピーク強度は改変されるが、多形体の特徴的なピーク位置は不変である。例えば、The United States Pharmacopeia #23,National Formulary #18,pages 1843-1844,1995を参照されたい。更に、任意の所与の結晶形態について、角度ピーク位置がわずかに変動し得ることも結晶学技術分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度の変動、試料変位、又は内部標準の存在若しくは不在によってシフトすることができる。この場合、±0.2 2θ°のピーク位置変動性は、示された結晶形態の明確な同定を妨げることなく、これらの潜在的な変動を考慮に入れると推定される。結晶形態の確認は、顕著なピークの任意の固有の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0073】
実施例1のヘミコハク酸型(3848608)RS7-H81933-069AのXRPD
実施例1のヘミコハク酸の調製された試料は、CuKα放射線を用いるXRPDパターンによって、以下の表Aに記載される回折ピーク(2-シータ値)を有するものとして、特に、0.2度の回折角の公差で、12.6度、及び22.2度からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて10.5度でピークを有するものとして特徴付けられる。
【表2】
【0074】
比較例
以下の2つの分子は、米国特許第9,815,846号から、その特許に記載された方法及び手順を使用して作製された。具体的には、米国特許第9,815,846号の実施例89及び141が調製され、以下の構造を有する:
【0075】
米国特許第9815846号の実施例89
【化16】
米国特許第9815846号の実施例141
【化17】
【0076】
米国特許第9815846号からのこれらの2つの化合物は、TrkA、TrkB及びTrkCのそれらの結合を決定するために、アッセイ(その手順は上に概説された)で実行された。データを以下の表2に示す(かつ、上記の表1に見られる実施例1のデータと比較する))。
【表3】
【0077】
表2のデータから分かるように、実施例1の化合物は、TrkAの強力な結合剤であり、TrkAに対して選択的である。米国特許第9815846号の実施例89は、TrkAに対して強力であるが、TrkB及びTrkCに対しては実施例1ほど選択的ではない。米国特許第9815846号の実施例141は、TrkB及びTrkCよりもTrkAに対して同様の選択性を有するが、標的のTrkAに対してより強力ではない。しかしながら、2つのピリジン環が存在する米国特許第9815846号の実施例141の化合物は合成的に達成するのが難しく、米国特許第9815846号に概説されている技術を使用してキログラムスケールでこの分子を作製することはおそらく不可能であろう。実際、以下の論文は、このタイプの2ピリジン系を創製することの難しさを示す。
【0078】
Xinlan A.F.Cook,Antoine de Gombert,Janette McKnight,Loic R.E.Pantaine,Michael C.Willis,“The 2-Pyridyl Problem:Challenging Nucleophiles in Cross-Coupling Arylations”,Angew.Chem.Int.Ed.2020,59,2-26。
【0079】
更に、米国特許第9815846号を調べると、実施例152は、次の構造を有する。
【化18】
【0080】
米国特許第9815846号の実施例152と実施例141との違いは、実施例141がピリジン環を有するのに対し、実施例152はフェニル環を有することである。米国特許9815846の表2に記載されているこれら2つの分子について列挙されたTrkA IC50値を比較すると、実施例141(ピリジン環を有する)の列挙された値は14nMであるのに対し、実施例152(フェニル環を有する)は列挙された値が0.069nMである。したがって、(実施例141のピリジン環ではなく)実施例152のフェニル環を使用することにより、TrkAの効力に200倍を超える劇的な効果がある(例えば、14を0.069で割ると202.9)。しかしながら、本実施例1の分子(米国特許第9815846号の実施例141のようにピリジン環も有する)と比較すると、本実施例1は、良好な効力及び選択性を有する。