(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】端処理電線製造装置、及び、端処理電線製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20240530BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240530BHJP
H01R 43/28 20060101ALI20240530BHJP
H01R 43/05 20060101ALI20240530BHJP
H01R 43/052 20060101ALI20240530BHJP
B23D 33/02 20060101ALN20240530BHJP
B23D 15/02 20060101ALN20240530BHJP
B23D 33/00 20060101ALN20240530BHJP
B26D 3/00 20060101ALN20240530BHJP
【FI】
H02G1/12 053
H02G1/14
H01R43/28
H01R43/05
H01R43/052
B23D33/02 C
B23D15/02
B23D33/00 H
B26D3/00 603Z
(21)【出願番号】P 2023149988
(22)【出願日】2023-09-15
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022172948
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022182257
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228257
【氏名又は名称】日本オートマチックマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】木下 順夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】但野 洋一
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-198676(JP,A)
【文献】特開2019-58011(JP,A)
【文献】実開平4-118711(JP,U)
【文献】特開2014-192911(JP,A)
【文献】特開2014-176248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H02G 1/14
H01R 43/28
H01R 43/05
H01R 43/052
B23D 33/02
B23D 15/02
B23D 33/00
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を送給する電線送給部(10)と、
送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断した端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、
被覆剥離された電線の先端部を端処理する端処理部(60)と、
電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20)と、を備える端処理電線製造装置(1)であって、
さらに、前記電線切断皮剥き部(4)と前記端処理部(60)との間で、電線端部の旋回経路に沿って配置されており、旋回方向の交差方向に対向する一対の案内板(161U・161B)を有する旋回ガイド(160)を備え、
対向する前記一対の案内板(161U・161B)同士の間隔が、前記端処理部(60)の側で比較的広く、前記電線切断皮剥き部(4)の側で比較的狭いことを特徴とする端処理電線製造装置(1)。
【請求項2】
前記旋回ガイド(160)が、前記電線切断皮剥き部(4)寄りの部分において、電線長手方向(繰り出し方向)の先方向に延びている先方向延長部(161P)を有することを特徴とする請求項1記載の端処理電線製造装置(1)。
【請求項3】
前記旋回ガイド(160)内において、1側
端処理部(60)から電線切り剥き部(4)に向かう電線の旋回中に、前記電線を長手方向に繰り出すことを特徴とする請求項1又は2記載の
端処理電線製造装置(1)。
【請求項4】
芯線及び外周被覆を有する電線を、ある長さに切断し、次いで被覆を剥ぎ、その後に端処理を行う方法であって、
請求項1
又は2記載の端処理電線製造装置(1、201)を用い
ることを特徴とする端処理電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を切断しその端部の被覆(皮)を剥く装置や、被覆剥離した後に電線端子を圧着する装置などに関する。特には、一本の製品電線を製造する時間(タクトタイム)を短縮し生産性を高め、あるいは電線被覆の剥きカス除去などに改良を加えた端子圧着電線の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネス業界においては、電線を所要の長さに切断し、切断部の前後の被覆を剥き取り(ストリップし)、その後に接続用コネクタ端子を圧着接続する工程(切断・皮剥き・端子圧着工程)は、ワイヤーハーネスに用いられる多量の電線の大半が通過する、作業量が極めて多い基本的な工程である。この切断・皮剥き・端子圧着工程では、他の工程以上の生産効率向上と、品質向上が要求されてきた。その要求に応えるため、電線の自動処理機械は、改善と進化を続けてきた。今回、その改善のひとつとして、電線切断用ブレード駆動機構や、電線案内機構、さらに剥きカスのエアブロー機構などの構造と動作について、新規技術を提案する。
【0003】
電線の切断・皮剥き・端子圧着工程に用いる自動処理装置の従来例が、特開2014-7043に開示されている。この機械は、電線送給部や電線切断部、電線先端(トップ)の皮剥き部、1側電線(先端は切断され、後端は電線リールにつながった状態の電線)の旋回式搬送部、端子圧着機などを備える。この従来例の装置も、切断・皮剥き・端子圧着工程の生産効率向上と品質向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電線の切断・皮剥き工程、あるいはその後の端子圧着工程を含む端子圧着電線製造工程における、生産効率向上と品質向上を図ることのできる、あるいは電線被覆の剥きカス排出性能などの諸性能を向上できる、装置又は方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」、並びに、明細書の一部においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0007】
本発明の第一の電線切断皮剥き装置(4)は、 電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃(42)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(41・43)を具備する電線切断皮剥き装置(4)であって、 前記電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動されるスライドブロック(45)と、 該スライドブロック(45)に取付けられた、前記皮剥き刃(41・43)を保持する皮剥き刃ホルダー(441)と、 前記スライドブロック(45)に搭載された、前記切断刃(42)を保持する切断刃ホルダー(443)、及び、該切断刃ホルダー(443)を前記交差方向に往復駆動する切断刃駆動アクチュエータ(44)と、 を備え、 前記スライドブロック(45)を往復駆動する機構が電動であり、 前記切断刃駆動アクチュエータ(44)の駆動により、前記切断刃(42)が電線を切断し、その後に電線から回避し、 電線切断後に電線を長手方向に移動させて皮剥き長さをセットし、 次いで皮剥き刃(41・43)が電線の被覆に切り込み、 次いで電線を長手方向に移動させて被覆を剥き取ることを特徴とする。
【0008】
上記切断刃駆動アクチュエータ(44)を駆動する「交差方向」は、一般的には電線長手方向の直角方向であり、標準的には上下方向(地球重力の方向)である。ただし、これに限定されない。アクチュエータ駆動方向は、一般的には、スライドブロック(45)の駆動方向と同じである。ただし、これに限定されない。
上記切断刃駆動アクチュエータ(44)は、好ましくは空圧シリンダである。空圧シリンダは、比較的に、高速・高加速、省スぺース、低価格、配管取り回し容易などの利点がある。
【0009】
切断刃は、次の理由により、ストロークが長い。すなわち、切断完了位置では一対の刃が十分にオーバーラップし、回避位置(電線フィード待機位置)では、V字型などの対向する切り刃が、電線が進行する空間から十分に逃げて、不用意に刃が電線に触れ電線が傷付くようなことを防止する必要がある。また、切断刃は、精密位置決めする(例えばモータ+ボールネジによる)必要はない。一方、皮剥き刃は、電線の種類(径・被覆厚さ)に応じて、切り込み位置(一対の刃が近接してオーバーラップした位置)を、精密に調整しなければならない。このような各刃の特性に応じて、本発明の好ましい実施形態においては、電動とシリンダ駆動を組み合わせた。
【0010】
従来の通常の電線切断皮剥き装置では、電線カット用ブレード及び被覆ストリップ用ブレードを取付けた、一体の取付け部品を上下スライド自在に設け、モータ駆動による上下刃の開閉移動で、カット(電線切断)やストリップ(被覆剥離)を行う。本発明の1形態では、電線カット用ブレードを切断刃駆動アクチュエータ(44)(空圧シリンダなど)で単独・高速動作させることにより、皮剥き刃(41・43)の停止中にも、また逆方向への移動中にも、切断刃42を移動させることができるため、切断・被覆剥離工程の時間を短縮できる。さらに、下記のように周辺装置の改良と組み合わせることで、電線切断皮剥き端子圧着工程全体の動作タクトを、より短縮し、装置の生産性を向上させることができる。さらに、切断刃(242)のみを単独で電線進行経路から退避させることができるので、電線
図23・
図24を参照しつつ後述するように、皮剥き長さが、「皮剥き刃-切断刃間隔」よりも長い加工(ロングストリップ)を行うことも容易である。
【0011】
周辺装置の改良
(1)切断刃駆動アクチュエータ(44)の駆動前におけるスライドブロック(45)の事前下降による、切断距離(切断刃ストローク)の縮小。
(2)被覆屑吸引口の2側圧着機(90)側への配置。
(3)電線旋回ユニットの軌道の改良による、工程削減と無駄な前後動作削減(戻り旋回)。
(4)電線旋回ガイド(160)による、電線の暴れ防止と電線送給の安定化。
【0012】
本発明の第一の端子圧着電線製造装置(1)は、 電線を送給する電線送給部(10)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断した端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、 被覆剥離された電線の先端部に端処理する端処理部(60)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20)と、を備える端処理電線製造装置(1)であって、 さらに、前記電線切断皮剥き部(4)と前記端処理部(60)との間で、電線端部の旋回経路に沿って配置されており、旋回方向の交差方向に対向する一対の案内板(161U・161B)を有する旋回ガイド(160)を備え、 対向する前記一対の案内板(161U・161B)同士の間隔が、前記端処理部(60)の側で比較的広く、前記電線切断皮剥き部(4)の側で比較的狭いことを特徴とする。
【0013】
上記端処理電線製造装置(1)においては、前記旋回ガイド(160)が、前記電線切断皮剥き部(4)寄りの部分において、電線長手方向(繰り出し方向)の先方向に延びている先方向延長部(161P)を有することが好ましい。
先方向延長部(161P)において、斜めフィードされた、あるいは旋回・横行を停止して単純繰出しされた、電線先端部を案内する。これにより、斜めフィードや単純フィードで伸び出た電線先端部の揺れを低減し、電線繰出し時の送りトラブルや、端処理部(端子)の傷付きを防止する。
【0014】
上記旋回方向は、標準的には水平方向であるが、これに限定されない。上記交差方向は、標準的には上下方向であるが、これに限定されない。対向する一対の案内板(カバー)は、その対向する空間内に、電線先端部(トップ)や、圧着された端子の動きを規制する(揺れ・踊り・首振りを抑える)。旋回中に電線の長手方向送り(繰り出し)を行うこともあり(斜めフィード)、その場合は、旋回ガイド(160)は、長手方向にも電線端部をガイドする。なお、本明細書でいう「端処理」は、端子圧着の他に、半田付けや電気溶接、超音波溶着、コネクタハウジングへの挿入などの端処理を含む。
【0015】
端処理(端子圧着)完了時は、電線端部の振れ・曲がりが相当ある。この状態で旋回ガイド(160)の入り口側に電線が入る。そして、狭くなる旋回ガイドを進む間に、電線の振れ・曲がりが抑えられて小さくなり、電線切断皮剥き部(4)において対向する一対の切断刃・皮剥き刃の間に案内される。これにより、電線トップ部の首振り(揺れ)を抑制でき、圧着された端子などの端処理部の傷付き防止や設備異常予防、タクトタイム短縮(次述)などの効果がある。
【0016】
電線端部は、旋回の進行方向の交差方向(典型的には上下方向)の揺れと、左右方向(進行方向)の揺れを含むいわば回転運動をする。これは、残留している電線のリール巻き癖による。上記交差方向(典型的には上下方向)の揺れを旋回ガイドの案内板で抑えてやれば、上記進行方向(典型的には左右方向)の揺れも小さくなる。こうなると、刃部における電線端部の揺れの落ち着きを待つ時間を短縮できる。
【0017】
さらに、電線の旋回速度を早くでき、この点でもタクトタイム短縮につながる。さらに、電線旋回進入の際の電線と刃の接触を避けるための、皮剥き刃退避寸法を小さくでき、精密な送り位置制御が求められる皮剥き刃の送り時間を短縮できる。例として、電線揺れの抑制により、0.01sec単位のタクトタイム短縮も可能である。
【0018】
旋回ガイド(160)は、電線や、圧着された端子(端処理部)に傷が付くのを防止する効果もある。さらに、電線が大きく振れることがなくなり、設備トラブルの防止にもなる。旋回ガイド(160)は、表面の滑らかな材料(冷延ステンレス鋼板など)で作製することが好ましい。
【0019】
上記端処理電線製造装置(1)においては、前記旋回ガイド(160)内において、1側端処理部(60)から電線切り剥き部(4)に向かう電線の旋回中に、前記電線を長手方向に繰り出すことが可能である。
【0020】
旋回ガイド(160)で電線旋回搬送時の電線トップ部の首振り(揺れ・しなり・暴れ)を抑制することにより、斜めフィード(測長送給されつつ旋回される)に伴うトラブル(圧着端子の傷発生、電線・端子の引っ掛かりによる設備停止)を防止する。そのため、安定的に電線の斜めフィードを多用でき、斜めフィード可能な電線種類(線径・線長など)を増やすことができるとともに、斜めフィードの電線繰り出し寸法を長くできる。その結果、多種の端処理電線(ワイヤーハーネス)について、電線切断・タクトタイムを短縮でき、生産性を向上できる。
【0021】
「斜めフィードモード」の一具体例では、端処理(トップ端子の圧着)後における電線旋回搬送の戻り動作途中の、切断皮剥き部(4)(原点位置、電線送給位置)への到達前に、1側クランプ(25)の前後機構(23)や送給部(10)が、電線フィードを開始する。斜めフィードのみで電線が所定長さまで出ない場合は、電線送給位置にて測長終了まで電線送給する。なお、「標準モード」では、旋回中の電線フィードは行わず、原点到着後に電線を長さ測定しつつ、所定長さまでフィードする。
【0022】
本発明の第二の端処理電線製造装置(1)は、 電線を送給する電線送給部(10)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断した端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、 被覆剥離された電線の端部を端処理する端処理部(60・90)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20・70)と、を備える端処理電線製造装置(1)であって、 前記クランプ搬送部(20・70)が、 電線を把持するクランプ(25・71)と、 該クランプを、電線長手方向に駆動する長手駆動手段(23・73)と、 該長手駆動手段を、旋回駆動する旋回駆動手段(21・75)と、を具備し、 前記長手駆動手段(23・73)が、前記クランプ(25・71)の旋回中に、該クランプを長手方向に動かすことを特徴とする。
【0023】
後記の「発明を実施するための形態」においては、「長手駆動手段(23・73)」については、「前後機構23・73」と呼ぶ。「旋回駆動手段(21・75)」は、「旋回機構21・75」と呼ぶ。なお、「前後機構23・73」は、旋回時は、
図1などに示す前後方向に対して傾いた姿勢となり、厳密な前後方向にクランプ25・71を動かすものではない。
【0024】
クランプの電線把持機構・各駆動手段・機構は、モータやシリンダ、減速機、ボールスクリュー・ナット、リニアガイド、リンク機構など、公知の部品・部材を用いて構成できる(特開2014-7043など参照)。必要に応じて、クランプ搬送部(20・70)や排出クランプ(81)(後述)は、クランプの昇降機構を含むものであってもよい。
【0025】
本発明の第二の端処理電線製造装置(1)の一実施形態においては、 1側端処理部(60)において1側電線W1の先端部が端処理された後、 1側クランプ(25)が旋回して前記1側端処理部(60)から前記切断皮剥き部(4)に向き合う位置に戻る際に、該1側クランプ(25)が前記長手駆動手段(23)によって前記電線送給部(10)から遠ざかる方向に移動されることができる。
【0026】
旋回中に、クランプ(25)が長手駆動手段(23)によって電線送給部(10)から遠ざかる方向に移動されることにより、クランプからの電線突出し寸法を変えずに電線送給長さを長くする(電線を先に繰り出す)ことができる。このため、電線端部・端子の暴れ・振れを抑制しながら、電線旋回中に電線フィード(斜めフィード)を行うことができる。
【0027】
さらに、前記電線送給部(10)の電線送給により、前記1側クランプ(25)からの電線突出し寸法を増やして電線フィードを行うこともできる。
クランプ(25)の前移動と、クランプからの1側電線W1の突出しを併用することにより、電線のフィードを稼ぐことができる。
【0028】
本発明の第二の端処理電線製造装置(1)の他の実施形態においては、 前記切断皮剥き部(4)から繰り出された両端切断・皮剥きされた2側電線W2を、2側クランプ(71)で把持して2側端処理部(90)に搬送旋回して、2側電線W2の後端部に端処理し、 その後、前記2側クランプ(71)が逆方向に旋回して前記切断皮剥き部(4)に戻る際に、排出クランプ(81)に2側電線W2を渡すとともに、前記2側クランプ(71)が、前記長手駆動手段(73)によって前記切断皮剥き部(4)に近づく方向に移動されることができる。
【0029】
2側クランプ(71)が切断皮剥き部(4)から電線を受け取る前に、2側クランプを後退して(元側に突き出して)、切断皮剥き部(4)から繰り出されてくる電線トップを迎え・受け取る。この電線をクランプが受取る時に、クランプから突き出した電線後端部の長さが短くなるので、電線端部・端子の暴れ・振れが小さくなる。そのため、クランプへの電線受け渡しが安定する。なお、2側端処理部への旋回途中で、2側クランプ(71)が先側にスライド(前進)し(電線を突出し)、端子とクランプの間に、排出クランプの掴み部を確保することとしてもよい。
【0030】
本発明の第三の端処理電線製造装置(1)は、 電線を送給する電線送給部(10)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、 被覆剥離された電線の端部を端処理する端処理部(90)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(70)と、を備える端処理電線製造装置(1)であって、 前記クランプ搬送部(70)が、 クランプ(71)と、 該クランプを駆動する駆動手段(73・75)と、 前記クランプの、前記電線切断皮剥き部(4)の反対側に設けられた、電線の側方に寄って電線の揺れを抑える開閉式の電線揺れ抑え(719)と、を具備することを特徴とする。
【0031】
切断皮剥き部(4)から2側に出てくる(送給される)電線は、スパイラルに揺れながら出てくる。電線揺れ抑え(719)は、切断皮剥き部(4)から出てくる電線の側方に寄って電線の揺れ(暴れ・跳ね上がり)を抑え、安定的に電線をクランプが受け取れる。また、電線搬送時(旋回時など)にも電線の揺れを抑制し、電線後端の端処理(端子圧着など)時及び、電線排出のための受渡しを安定した状態で行える。また、2側電線搬送における端処理部の保護(圧着端子変形防止)を図れる。例えば、2側電線W2の先に付いているトップ端子の暴れを低減し、端子の変形・傷発生を防止する効果も期待できる。
【0032】
本発明の第四の端処理電線製造装置(1)は、 電線を送給する電線送給部(10)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断された端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、 被覆剥離された電線の端部を端処理する端処理部(60・90)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20・70)と、 端処理された電線を払い出す排出部(81)と、 を備える端処理電線製造装置(1)であって、 前記排出部(81)が、電線を把持する排出クランプ(81)、及び、該排出クランプの駆動手段(817)、を具備し、 電線搬送2側のクランプ搬送部(70)が、端処理完了後、前記電線切断皮剥き部(4)への戻り途中で排出準備開始し、 前記電線が受け渡し地点に到達しない前に、前記排出クランプ(81)が把持可能状態にて前記受け渡し地点に近づくことを特徴とする。別言すれば、前記2側クランプ(71)が排出クランプ(81)への電線渡し位置に到達する前の時点で、前記排出クランプ(81)が前記2側クランプから電線を受け取る動作を開始する。
【0033】
前記電線が受け渡し地点に到達しない前に、前記排出クランプ(81)が把持可能状態にて前記受け渡し地点に近づくことにより、受け渡し時間を短縮できる。
【0034】
本発明の第二の電線切断皮剥き装置(4)は、 電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃(42)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(41・43)を具備する電線切断皮剥き装置(4)であって、 前記電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動される、前記皮剥き刃(41・43)を保持する皮剥き刃ホルダー(441)と、 切込みの入った電線を前記皮剥き刃(41・43)から離れる方向に移動させて、電線から被覆剥きカスをこそげ落とす電線クランプ部(20・70)と、 皮剥きした被覆(剥きカス)を吸引して排出する、前記皮剥き刃(41・43)の側方に配置された吸引ダクト(50)と、 前記皮剥き刃(41・43)の、前記吸引ダクト(50)の反対側の側方に配置された、電線の進入する通路を開閉する入口ゲート(412)と、を具備することを特徴とする。
【0035】
皮剥き刃ホルダー(441)に、電線の進入する通路を開閉する入口ゲート(412)(吸引補助部品)を取付け、皮剥き刃開時は電線通過部を確保し、皮剥き刃閉時はブレードの動きに連動し通路を塞ぐことで、吸引ダクト(50)が吸引する空間の開口を狭くする。これにより、被覆屑の吸引性向上と、剥きカスの拡散の低減を図った。
【0036】
本発明の第二の電線切断皮剥き装置(4)においては、前記入口ゲート(412)が、前記皮剥き刃ホルダー(441´)に載置固定されており、該ホルダー(441´)とともに昇降することが好ましい。
この例においては、皮剥き刃ホルダー(441)に入口ゲート(412)を取付け、皮剥き刃の上下可動を利用し、ブレード開時は電線通過部の開口を確保し、ブレード閉時はブレードの動きに連動し通路を塞ぐことで、被覆屑の吸引性向上と剥きカス拡散の低減を図ることができる。
【0037】
本発明の端処理電線の製造方法は、芯線及び外周被覆を有する電線を、ある長さに切断し、次いで被覆を剥ぎ、その後に端処理を行う方法であって、前記の切断皮剥き装置(4)を用いるか、前記の端処理電線製造装置(1)を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電線の切断・皮剥き工程、あるいはその後の端子圧着工程を含む端処理電線製造工程における、生産効率向上と品質向上を図ることのできる装置又は方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施の形態に係る切断皮剥き装置4を含む端子圧着電線製造装置1の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態の電線切断皮剥き装置4の全体構造を示す斜視図である。
【
図3】
図2の電線切断皮剥き装置4の切断刃42や皮剥き刃41・43の部分を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図3の皮むき装置における皮むき工程を説明する図であり、(A)は電線が各刃の間に進入した状態、(B)は長さ決めカット時において切断刃が電線に近づいた状態、(C)は長さ決めカット後(切断完了)の状態、(D)は皮剥き刃が電線に接した状態、(E)は皮剥き刃が電線の被覆に切り込んで、次いで電線を皮剥き刃から前後に遠ざけて皮剥きしようとしている状態、(F)は皮剥き完了状態である。
【
図5】本発明の実施形態に係る端子圧着電線製造装置における、旋回ガイド160から刃部140、剥きカス吸引ダクト50に至る正面図である。
【
図6】
図5の装置の、旋回ガイド160出口部やブレードユニット、剥きカス吸引ダクト50を拡大して示す正面図である。
【
図7】旋回ガイド160の平面形状、並びに、本発明の実施形態に係る電線切断・皮剥き・端子圧着装置の斜めフィードモードにおける、電線トップ部の旋回中繰り出し状況を説明するための平面図である。
【
図8】2側クランプ71の動作の一例を説明するための平面図である。
【
図9】2側クランプ71及びそれに付設された電線揺れ抑え719を示す斜視図である。
【
図10】電線揺れ抑え719の作用を説明するための正面図である。(A)は揺れ抑え719が開いた状態であり、(B)は揺れ抑え719が閉じつつある状態であり、(C)は揺れ抑え719が閉じた状態である。
【
図11】実施形態の排出クランプ81の構成と動作を説明するための斜視図である。(A)は排出クランプ81が2側電線W2に接近しているところであり、(B)はクランプ81が電線W2を掴む直前であり、(C)はクランプ81が電線W2を把持したところである。
【
図12】
図11の排出クランプ81が2側電線W2を受取る動作の詳細を表す正面図である。(A)は排出クランプ81が電線受け取り待機位置にいるところであり、(B)は2側電線W2が受取り位置に接近して、クランプ81が電線W2を掴む直前であり、(C)はクランプ81が電線W2を掴んだ(受け取った)ところである。
【
図13】刃部140の入口ゲート412の構成と動作を表す正面図である。(A)は開(下降)状態であり、(B)は閉(上昇)状態である。
【
図14】別実施形態(非旋回型、電線平行横移動型)に係る端子圧着電線製造装置の機器配置の概略を示す平面図である。
【
図15】(A)は、被覆屑SIを皮剥き刃241・243から吹き飛ばすエアブロー手段を備える切断皮剥き装置204の要部の平面断面図である。(B)は、エアブローブロック381と皮剥き刃241・243、被覆屑SIの詳細を拡大して示す平面断面図である。
【
図17】
図15に示す装置のエアブローブロック381の上下動作を示す正面図であって、(A)は上昇時(電線横行時)を示し、(B)は下降時(切断皮剥きのエアブロー時)を示す。
【
図18】第二実施形態の端子圧着電線製造装置の、電線フィード状態における、切断皮剥き部204の周りの図であって、(A)は平面断面図、(B)は側面断面図である。
【
図19】
図18の装置の、2側電線クランプのクランプ状態における、切断皮剥き部204の周りの図であって、(A)は平面断面図、(B)は側面断面図である。
【
図20】比較的小型の端子を電線トップに圧着した電線の場合における、ガイド板360から切断皮剥き部204に至る電線の横移動及びフィードの様子を示す平面図である。
【
図21】比較的大型の端子を電線トップに圧着した電線の場合における、ガイド板360から切断皮剥き部204に至る電線の横移動及びフィードの様子を示す平面図である。
【
図22】皮剥き長さが通常の(比較的短い)場合における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
【
図23】片側の端部の皮剥き長さがきわめて長い場合(片側ロングストリップ)における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
【
図24】両側の端部が皮剥き長さがきわめて長い場合(両側ロングストリップ)における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1;端子圧着電線製造装置、4;切断皮剥き部(装置)、10;電線送給部、
20;クランプ搬送部、21;旋回機構(旋回駆動手段)、23;前後機構(長手駆動手段)、25;1側クランプ
40;ブレードユニット、41;皮剥き刃、42;切断刃、43;皮剥き刃、
44;シリンダ(切断刃駆動アクチュエータ)
45;スライドブロック、45h;ピン、45m;ボルト孔、45r;端面
47;ボールスクリュー、50;剥きカス吸引ダクト、50d;板
60;1側圧着機(端子圧着部、端処理部)
70;クランプ搬送部、71;2側クランプ、73;前後機構(長手駆動手段)、
75;旋回機構(旋回駆動手段)
81;排出クランプ
90;2側圧着機(端子圧着部、端処理部)
140;刃部、141・142;舌状片
160;旋回ガイド、160d;左端、
161U;上板(案内板)、161B;下板(案内板)、161W; 前壁、161Wm;境、161x;右端
412;入口ゲート、412b;立上り片、412d;上端、
413;ネジ、415;ボルト、440;プレート
441;皮剥き刃ホルダー、441g;凹部、
443;切断刃ホルダー、443g;刃固定部、443k;延長部、
443y;ロッド連結部、
445;ネジ、448;シリンダロッド、448b;リングフック部
711;クランプツメ、712;支点、714;ツメアーム、715;リンク、
716;クランプブロック、717;エアシリンダ、719;電線揺れ抑え
811;クランプツメ、812;支点、815;リンク、816;クランプブロック、
817;エアシリンダ
SI;被覆屑、W1;1側電線、W2;2側電線、CW;芯線、
TL1;大型の1側端子、TS1;小型の1側端子
204;切断皮剥き装置、210;電線送給部、
220;1側電線搬送部(1側クランプ搬送部)、221;横行機構、
223;前後機構、225;1側クランプ
240;ブレードユニット、241・243;皮剥き刃、241b´・243b´;刃型凹部、
242;切断刃、
250;剥きカス吸引ダクト、260;1側端子圧着機(1側端処理部)
269;1側電線端部検出器
270;2側電線搬送部(2側クランプ搬送部)、271;2側クランプ、271b・271c;ツメ
272;クランプ移動手段(アーム)、
273;クランプ前後機構、274;横行機構
281;排出クランプ、282;排出トレー
290;2側圧着機(2側端処理部)、299;2側電線後端部検出器
341・342;舌状片
360;ガイド板、 360b;左側端部(斜面)、360f;後側部(斜面)
360j;前側・右側部分(平面)、360p;先方向延長部
380;エアブロー手段、381;エアブローブロック、381b・c;エアブロー孔
381h;空気導孔、381j;空気導孔、383;管路接続部材、383b;空気流路
387;空気圧チューブ
390;線受け、390U;上板、390B;下板、390W;左壁
392;線受け移動手段、394;カバー
541;皮剥き刃ホルダー、543;切断刃ホルダー
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1を参照して、本発明の電線切断皮剥き装置(部)4や端子圧着機60・90を含む端子圧着(端処理)電線製造装置の全体構成を説明する。
図1の各方向は、次のように呼ぶ。
図の上下方向;電線送給方向、前後方向
図の左右方向;左右方向、横方向
図の上方向;前、先
図の下方向;後、元
【0042】
端子圧着電線製造装置1は、機台(テーブル)3上に設置されており、下記の各主要部を備えている。
電線送給部10;
図1の下方に配置されており、コイル状に巻かれた電線束(図示されず)から電線を引き出して、図の上方に電線を送給する(電線を長手方向に繰り出す)。
【0043】
1側電線搬送部20;送給された電線の先端(トップ)をクランプする1側クランプ(ヘッド)25や、同クランプ25を電線長手方向にスライド(前後進)させる前後機構23、同機構23を旋回させる旋回機構21を有する。1側クランプ25は、送給され所定長さに切断される電線の後行部分(後端はまだリールにつながっている電線、「1側電線」という)の先端を把持し、切断皮剥き部4と1側端子圧着機60との間で搬送する(搬送経路は矢印参照)。なお、1側クランプ25の把持ツメは、エアシリンダ駆動による開閉構造となっており、電線送給繰り出し合わせた把持ツメ開閉を行うものである。1側電線搬送部20の前後機構23には、電線の繰り出し(太矢印参照)を案内するチューブ(図示されず)が配設されている。
【0044】
電線切断皮剥き部4;送給部10から1側電線搬送装置20を通って送り込まれた電線を、所定の長さに切断するとともに、電線切断部の先端(トップ)及び後端(テール)の被覆を皮剥き(ストリップ)する。切断皮剥き部4の図の右側には、皮剥きした被覆(剥きカス)を吸引して排出する吸引ダクト50が付設されている。
【0045】
1側圧着機(端処理部)60;切断・皮剥きされた1側電線の先端に端子を圧着する。1側圧着機60の図の右側(切断皮剥き部4寄りの側)には、1側電線端部検出器(光学式検査)69が付設されている。同検出器(光学式検査)69は、電線トップの皮剥き状態や端子の圧着状態、防水栓挿入状態を確認するものである。
【0046】
2側電線搬送部70;電線切断皮剥き部40において所定の長さに切断された電線(2側電線という)の後端(テール)をクランプする2側クランプ71や、同クランプ71を電線軸方向に出し引きする前後機構73、同機構73を旋回させる旋回機構75を有する。2側クランプ71は、2側電線の後端を、切断皮剥き部4と2側圧着機90との間で搬送する。2側電線搬送装置70の近くには、
図1には示されていないが、両端に端子を圧着した電線(製品)を払い出す排出機構(排出クランプ81、
図11・
図12参照)も設けられている。
【0047】
2側圧着機(端処理部)90;切断・皮剥きされた2側電線の後端に端子を圧着する。2側圧着機90の図の左側(切断皮剥き部4寄りの側)には、2側電線後端部検出器(光学式検査)99が付設されている。同検出器(光学式検査)器99は、2側電線後端の皮剥き状態や端子の圧着状態、防水栓挿入状態を確認するものである。
【0048】
図2を参照しつつ、実施形態の電線切断皮剥き部(装置)4を説明する。
図2は、同部4の全体構造を示す斜視図である。この
図2における左右の方向は、図を見る者にとっての方向であって、
図1の左右とは整合しない。
図2には、各々上下一対の前端皮剥き刃41・41´、切断刃42・42´、及び、後端皮剥き刃43・43´が、処理される電線の長手方向(電線送給方向、前後方向)に並んで示されている(いわゆる切断刃・皮剥き刃のタンデム配置)。各刃41・42・43の集合体のことをブレードユニットということもある。
【0049】
各刃41・42・43は、上下に延びる長方形の板状であり、刃ホルダー441・443に、それらの基部が固定されている。各刃の先端部(基部の反対側、上の刃の下端部・下の刃の上端部)には、切り刃が形成されている。また、刃の先端部は、左右方向の中央部がV字状に凹んでいる。このV字状部分によって、上下の刃が交差して前後にオーバーラップする際に、電線が刃の左右方向中心にセンタリングされる。
【0050】
皮剥き刃41・43のホルダー441は、平面視でU字型をしており、その前後端面に、各刃が固定されている。ホルダー441の右側端面は、スライドブロック45の端部左側面に当てられて固定されている。スライドブロック45は、ボールスクリュー47によって上下駆動される(詳細後述)。ホルダー441のU字の中の凹部441gは、切断刃42及びそのホルダー443が上下に動く空間となっている。
【0051】
切断刃42の基部(切り刃の反対側部分)は、切断刃ホルダー443の後側面に固定されている。ホルダー443は、切断刃42の側の四角く分厚い板状の刃固定部443g、その上部に接続する延長部443k、および、その上部に接続するロッド連結部443yを有する。同連結部443yは、エアシリンダ44のシリンダロッド448に接続されており、切断刃42・ホルダー443は、エアシリンダ44によって上下駆動される。
【0052】
この実施形態の電線切断皮剥き装置4の特徴は、電線の長手方向の交差方向(実施形態では上下方向)に往復駆動されるスライドブロック45に搭載された、切断刃42、及び、それを保持する切断刃ホルダー443を、上記方向に往復駆動するシリンダ44を備えることである。
【0053】
上記の「交差方向」は、一般的には長手方向の直角方向であり、標準的には上下方向である(ただしそれに限定されず、水平方向であってもよい)。本実施形態においては、スライドブロック45は、精密な位置決めが可能な機構、すなわち、モータ(図示されず)とボールスクリュー47により、開閉移動される。というのは、上下に対向する一対の皮剥き刃41・43は、互いに近付く位置(閉位置)において、刃先が電線の芯線には食い込まず、被覆には適切な深さまで切込むという、微妙な位置で停止しなければならないからである。電線の径・被覆厚さは多種多様であるので、それらに応じて、皮剥き刃は、精密な切り込み位置制御を要する。
【0054】
具体的な構造としては、本実施形態の切断皮剥き装置4は、上下に延びるコラム48を主な構造体として構成されている。同コラム48には、同じく上下に延びるボールスクリュー47が、回転自在に取付けられている。ボールスクリュー47には、その上部と下部で、反対方向のらせん溝が切られている。そのらせん溝には、上下のスライダ459・459´の内部のボールナット(図示されず)が螺合している。この構成により、ボールスクリュー47が、ある方向及びその反対方向に回転すると、上下のスライダ459・459´は、互いに近づくか又は遠ざかるように、往復駆動される。
【0055】
一方、切断刃42は、電線を完全に切断すればよいのであるから、上下一対の刃がオーバーラップする閉位置の位置決め精度がそれほど求められない。そこで、切断刃は、対向する一対の刃が空圧シリンダ(切断刃駆動アクチュエータ)で高速駆動するようにしている。切断刃42の開位置(電線から遠ざかった回避位置)は、V字型などの対向する切り刃が、電線の存在・進行する空間から相当逃げていないと、不用意に刃が電線に触れて電線が傷付くおそれがある。このような事情により、切断刃はストロークが長いので、移動速度を早くして作動時間を短くし、タクトタイムを短縮することが重要である。このような各刃の特性に応じて、本実施形態においては、電動とシリンダ駆動を組み合わせてある。なお、シリンダをスライドブロックに搭載することにより、電動ボールネジの動作によるスライドブロックの動きと組み合わせることがで、電線切断までの時間(距離)を短縮することが可能となる。また、配置構造や部品点数の面からは、スライドブロックとの干渉防止構造や構成部品数を削減できる。
【0056】
次に、
図3・
図4を参照しつつ、切断刃42と皮剥き刃41・43の動作の一例を説明する。
図3は、切断刃42と皮剥き刃41・43のセット(ブレードユニット40)と、切断・皮剥きされる電線Wの側面図である。電線Wに付記された矢印は、電線Wの送給方向である。図には、「後」から「前」方向に並んだ、それぞれ上下一対の第一皮剥き刃41・切断刃42・第二皮剥き刃43が示されている。各刃は、前述の機構により、上下に駆動される。
図3の状態は、電線Wが送給されてきたところある。
【0057】
図4は、皮むき装置における皮むき工程を説明する図であり、(A)は電線が各刃(退避)の間に進入した状態、(B)は切断刃42及び皮剥き刃41・43が電線に近づいた状態、(C)は長さ決めのための切断完了状態、(D)は切断刃が退避し皮剥き長さが設定された状態、(E)は皮剥き刃が電線被覆に切込んだ状態、(F)は電線を前後に引いて(皮剥き刃から遠ざけて)皮剥きし終わった状態である。
【0058】
図4(A)の電線が各刃の間に進入したときの状態では、切断刃42及び皮剥き刃41・43は、電線Wの進路から退避している(上刃は上に、下刃は下に逃げている)。電線Wは、図示省略されているが、前側の端部(先端、トップ)に、前工程で端子が圧着されている(電線先端に圧着された端子をトップ端子T1という)。そして、製品の長さ寸法に対応した長さだけ、前に送られている。なお、この(A)の状態から(F)の状態まで、1側クランプ25及び2側クランプ71は、切断皮剥き部4の前後で電線Wを把持している(図示省略)。
【0059】
図4(B)は、切断刃42及び皮剥き刃41・43が、電線に少し近づいた状態である。この(B)の状態への(A)からの移動は、モータ・ボールねじの駆動(スライドブロック45のスライド)により行われる。この(B)の状態で、皮剥き刃41・43のV字状の切り刃の両先端が、ほぼ電線送給の軸線の高さになっている。そのため、電線Wの左右方向の揺れは、皮剥き刃41・43の外には出ないように規制されている。
【0060】
図4(C)は、電線長さ決めのための切断が完了した状態である。切断刃42・42´は、
図4(B)の状態からエアシリンダ44によって高速駆動され、
図4(C)では、上下刃の切り刃の幅方向中央部がオーバーラップしている。前述したとおりであるが、切断後の先行電線を2側電線W2といい、後行電線を1側電線W1という。
【0061】
図4(D)は、切断刃42・42´が、エアシリンダ44の駆動により、電線から逃げて退避した状態である。また、電線Wを、その皮剥き長さに対応して、長手方向に移動させた状態である。すなわち、1側電線W1は(C)の切断時よりも後側に引かれており、2側電線W2は(C)の切断時よりも前側に引かれている。各電線の引き動作は、各電線の端部を把持する各クランプ25・71の前後動作による。皮剥き刃41・43は、電線の被覆の表面に近付いている。
上記の
図4(C)及び(D)の工程において、切断刃42を空圧シリンダ44で単独・高速動作させることにより、皮剥き刃41・43の停止中にも、また逆方向への移動中にも、切断刃42を移動させることができるため、切断・被覆剥離工程の時間を短縮できる。さらに、本実施形態の切断皮剥き装置4では、皮剥き長さが「皮剥き刃-切断刃間隔」よりも多少長い加工を行うことも容易である。すなわち、各電線クランプ25・71が切断皮剥ぎ装置4との干渉及び、反対面の電線等の干渉による曲がりが発生しない範囲で、電線切断・切断刃42退避後に、交互に1側電線W1を前進させたり、2側電線W2を後退させたりしても、電線の前後端が切断刃42に当たることはない。
【0062】
図4(E)は、皮剥き刃41・43を電線被覆に切込んだ状態である。この(E)の状態への(D)からの移動は、モータ・ボールねじの駆動(スライドブロック45のスライド)により行われる。
【0063】
図4(F)は、電線を前後に引いて(皮剥き刃から遠ざけて)、皮剥きし終わった状態である。各電線の引き動作は、各電線の端部を把持する各クランプ25・71の前後動作による。剥いた被覆カス(図示されず)は、皮剥き刃41・43の内側(切断刃42側)から、剥きカス吸引ダクト50内に負圧吸引され、排出される。
【0064】
本実施形態の切断皮剥き装置4では、エアシリンダとボールネジの直動動作を、それぞれ単独動作可能(同時動作も可能)に組合せた動作となっている。その結果の一例では、1タクト(
図4の(A)~次の(A)まで)の間の切断刃42の移動距離が10mmと、切断刃・皮剥き刃一式同一動作の比較例の場合の14.5mmと比べて、4.5mm短くなった。この移動距離の差を、切断刃42の平均移動速度300mm/秒で割ると、その時間差は、0.015秒となる。その他の電線切断皮剥き工程で時間短縮、さらに、後述の、周辺装置における改善と組み合わせることで、全体動作タクトを有意に短縮することができ、生産性を向上できる。
【0065】
図5~
図7を参照しつつ、1側電線W1を1側圧着機60から切断皮剥き部4に案内する構成、すなわち旋回ガイド160から刃部140に至る構成、について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る端子圧着電線製造装置における、旋回ガイド160から刃部140、剥きカス吸引ダクト50にわたる部分の正面図(電線送給方向に見た図)である。
【0066】
図6は、
図5の装置の、旋回ガイド160出口部や、刃部140を拡大して示す正面図である。
図7は、旋回ガイド160の平面形状、並びに、本発明の実施形態に係る電線切断・皮剥き・端子圧着装置の斜めフィードモードにおける、電線トップ部の旋回中繰り出し状況を説明するための平面断面図である。
【0067】
図5には、左から右に延びる旋回ガイド160、その先の刃部140、さらにその右の剥きカス吸引ダクト50が示されている。旋回ガイド160の左端160dの左側には、図示省略されているが、1側圧着機60が存在しており、同機においては、1側電線W1の先端部へのトップ端子T1の圧着が行われる。刃部140は、上下の皮剥き刃41・41´、及び、上下の切断刃42・42´の総称である。
【0068】
旋回ガイド160は、電線先端部の旋回経路に沿って配置され、旋回方向(標準的には水平方向、非限定)の交差方向(標準的には上下方向、非限定)において、電線を案内する案内板(カバー)である。電線旋回中に電線の長手方向送り(繰り出し)を行うこともあり(斜めフィード)、その場合は、旋回ガイド160は長手方向にも電線端部をガイドする。旋回ガイドは、ステンレス冷延鋼板など、表面が滑らかな材料で構成することが好ましい。
【0069】
旋回ガイド160は、上下に対向する上板161Uと下板161B、及び、両板の図の奥端(前端)につながる直立した面状の前壁161Wを有する。同ガイド160の送給部10の側(後側)は、壁が無く、素通しとなっている。なお、前壁161Wは、旋回ガイド160の左端160dから、同ガイドの左右ほぼ中央の境161Wmまで存在しており、同境161Wmの右側は、奥側(前側)の壁のない素通しとなっている。
【0070】
旋回ガイド160の上板161Uと下板161Bとの間の寸法(ガイド高さ)は、左(1側圧着機の側)から右(切断皮剥き部4の側)に向かって小さく(低く)なっている。つまり、旋回ガイド160は、正面視で、圧着機側が上下幅広で、切断皮剥き部側が上下幅狭のラッパ状である。このラッパ状の空間の中を、トップ端子T1の付いた1側電線W1が、上下に案内されながら送られる。
【0071】
旋回ガイド160の圧着機側(左端160d、電線入口)の高さHAは、圧着機から開放されて揺れている電線トップ部を、十分に受け入れられる高さ、例えば40mmである。旋回ガイド160の切断皮剥き部4の側(右端161x、電線出口)の高さHBは、例えば10mmである。なお、上記の入口・出口は、電線がトップ端子T1圧着後に、1側圧着機69から切断皮剥き部4に戻る際の概念である。電線が切断皮剥き部4から1側圧着機60に向かう際は、入出の概念は反対になる。
【0072】
端子圧着後の1側電線W1は、
図8に一例を示すように、1側クランプ25(
図1も参照)によって旋回しながら、旋回ガイド160の内側を通過して、切断皮剥き部4に送られる。このとき、端子付き電線の先端部は、その揺れ(首振れ・躍り)が小さくなりながら、刃部140の電線フィード通路に送り込まれる。なお、電線は、リールの巻き癖が残っているため、トップ部が回るように揺れるので、上下の揺れを抑えてやれば、付随的に左右の揺れも小さくなる。これにより、刃部140に送り込まれた電線の左右の揺れも落ち着きやすくなり、この電線の落着きを待つ時間(電線長手方向送給や電線切断を待つ時間)が短くなり、その分もタクトタイムを短縮できる。
【0073】
図6・
図3を参照しつつ、刃部140の詳細について説明する。
図6・3は、刃部140とその周辺を拡大して示す図であって、
図6は正面図であり、
図3は側面断面図である。
【0074】
この刃部140は、
図3に一番分かり易く示すように、金属薄板(一例)からなる舌状片141・141´・142・142´を含む。後側の上の舌状片141は、上の第一皮剥き刃41と、上の切断刃42の間に右から左に(
図3の紙面の裏から表に)差込まれている。後側の下の舌状片141´も、同様に、下の皮剥き刃41´と、下の切断刃42´の間に差込まれている。前側の上下の舌状片142・142´の各々も、同様に、上下の切断刃42・42´の各々と、皮剥き刃43・43´の各々の間に差込まれている。
【0075】
各舌状片は、正面図で見た形態においては、
図6に示すように、剥きカス吸引ダクト50の上下の板50d・50d´の左側に連なるように、片持ちで接続されている。
【0076】
図7を参照しつつ、1側電線W1の、1側圧着機60から切断皮剥き部4に至る動きの一例を説明する。
図7は、1側電線W1の動きの一例(斜めフィード)と、旋回ガイド160の平面形状を表す平面図である。図中には、旋回及び長手方向フィードを行っている1側電線W1-1~4や、その先端に圧着されているトップ端子T1-1~4、及び、1側クランプ25-1~4が示されている。
【0077】
図7の一番上に描かれている電線W1-1は、端子圧着後に旋回を開始しているところである。電線W1は、1側クランプ25に把持されている。同クランプ25は、前後機構23の上で電線長手方向に前後スライド可能であり、前後機構23は旋回機構21により旋回可能である。一番上のクランプ25-1は、最前進位置からやや後退した状態である。なお、上から2~4番目の電線については、前後機構23や旋回機構21は、図示省略している。
【0078】
図の上から2番目の電線W1-2は、図の下に少し旋回している。また、電線W1-2及び端子W1-2は、電線を把持するクランプ25-2とともに、電線長手方向に少し(長さS1の分だけ)前進している。2番目の電線W1-2の端子T1-2は、旋回ガイド160の中に入っており、その揺れが抑制されている。
【0079】
図の上から3番目の電線W1-3は、さらに図の下に少し旋回している。電線を把持しているクランプ25-3は、二番目のクランプ25-2の位置から前進せず、電線長手方向位置の同じ位置にある。一方、電線W1-3は、送給部10(
図1参照)によって電線長手方向に少し(長さS2の分だけ)繰り出されており、トップ端子T1-3のクランプ25-3からの突出し寸法は、長くなっている(斜めフィードされている)。ただし、この状態において、同端子T1-3は、旋回ガイド160の電線切断皮剥き部4寄りの先方向延長部161Pに入っており、斜めフィード時も揺れ低減、送りトラブル・端子傷つき防止を図っている。
【0080】
図の上から4番目の電線W1-4は、さらに図の下に旋回し、切断皮剥き部4に至って、刃部140の中に入っている。電線を把持しているクランプ25-4は、二番目のクランプ25-2の位置から前進せず、電線長手方向位置の同じ位置にある。この状態で、電線W-4は、電線切断のための所定の長さになるよう、電線長手方向に繰り出される。
【0081】
図5~
図7に示す端子圧着電線製造装置1においては、端子圧着後において、端部の振れ・曲がりが相当ある1側電線W1が、ラッパの口のように広がった旋回ガイド160の入り口側に入る。そして、徐々に狭くなる(低くなる)旋回ガイド160を進む間に、電線の振れ・曲がりが抑えられ、電線切断皮剥き部4において上下に対向する一対の切断刃42・皮剥き刃41・43の間に案内される。電線端部は上下(旋回の進行方向の交差方向)揺れ・左右(その進行方向)揺れを含む回転運動であるが(電線のリール巻き癖による)、上下揺れを旋回ガイドの案内板で抑えて、やれば、左右方向の揺れも小さくなる。
【0082】
本実施形態においては、旋回ガイド160による1側電線W1の旋回案内、及び、刃部への旋回最終段階での電線進入案内により、電線送給時(繰り出し時)にも、電線跳ね上がり・暴れを抑制できる。そのため、電線しなり・電線トップ部の首振り(揺れ)を抑制でき、斜めフィードに伴うトラブル(圧着端子の傷発生、電線・端子の引っ掛かりによる設備停止)を防止できる。その結果、安定的に斜めフィードを多用でき、斜めフィード可能な電線種類(線径など)の増や、斜めフィードの繰り出し寸法増を達成でき、多種の端子圧着電線(ワイヤーハーネス)について製造タクトタイムを短縮できる。
【0083】
電線が対向する一対の刃の間に来るのを待っている切断刃・皮剥き刃の開き=回避寸法は、できるだけ狭いほうが、刃の電線切断・被覆切り込み駆動の寸法・時間が短くなって、駆動タクトタイムが短くなる。さらに、旋回速度を早くしても、刃部での電線揺れ落ち着きが早い場合には、旋回速度UP・刃部での電線端部落ち着き待ち時間の短縮も可能である。これにより、電線製造のタクトタイム短縮(約0.01sec)も達成可能である。さらに皮剥き刃退避寸法を小さくでき、皮剥き刃の電動送り時間を短縮できる。切断ユニットの2重アクチェータによる効果などを含めて、全体タクト短縮が、電線サイズ0.5平方mmの一例で、約0.81秒から0.7秒に短縮可能なことを確認した。
【0084】
図8を参照しつつ、2側クランプ71の動作について説明する。
図8は、2側クランプ71の動作の一例を説明するための模式的な平面図である。なお、2側クランプ71の構成及びその電線揺れ抑え719については、
図9を参照しつつ後述する。
【0085】
この実施形態における2側クランプ71の動作の特徴は、次のとおりである。すなわち、2側クランプ(71)が、切断皮剥き部4から出てくる電線後端部を迎えて受け取る前に、同クランプが後退する(送給元側に突き出る)。これにより、電線受け取り時、及び、その後の旋回時において、クランプから突出しでいる電線の寸法が短くなるので、電線揺れ・振れ・暴れが小さく、電線受け取りが安定する。
【0086】
図8の左上には、切断皮剥き部4の皮剥き刃41・43と切断刃42が示されている。切断皮剥き部4の前側に配置されている2側クランプ71は、同切断皮剥き部4から出てくる電線(先端にトップ端子T1が圧着されている)の後端部を受け取る。この際、電線揺れ抑え719(
図9・
図10を参照しつつ後述)にて電線の暴れを抑え、2側クランプ71は電線を把持する。この電線受け取り時点では、電線は、まだ切断も、2側電線後端(テール)の皮剥きもされていない。
【0087】
次に、電線は切断刃42で切断され、次いで2側クランプ71-1が少し前進して(前後機構73による)、皮剥き長さが調整される(
図4(C)・(D)参照)。この状態が、
図10の2側電線W2-1の状態である。なお、2側クランプ71-1と同じ位置に描かれている2側クランプ71-5は、これから説明する一連のクランプ動作が終わって、次の電線を受取ろうとしている状態のクランプを示している。
【0088】
続いて、2側クランプ71がさらに前進して、電線被覆を剥ぎ取る(被覆の剥きカスを皮剥き刃43の後側に残す、
図4(E)~(F)参照)。この状態が、2側電線W2-2と2側クランプ71-2の状態である。なお、2側クランプ71-2の前進寸法は、この図の縮尺に対応するものではない(
図8は、模式的な図である)。
【0089】
次いで、2側クランプ71-2は、圧着機(90)に向かって、図の下方(右方向)に旋回移動する(旋回機構75により駆動される)。なお、旋回途中にて、2側電線後端部用の検出器99(
図1参照)にて皮剥き状態などの検査を行う。
2側クランプ71-2は、圧着機(90)の位置まで旋回すると、電線を圧着位置まで前進させ、2側圧着機90の前にくる(符号71-3)。ここで、2側電線W2-3の後端にテール端子T2を圧着する。
【0090】
圧着をおこなった後、2側クランプ71-3は、切断皮剥き部4の方に向かって戻り旋回動作を開始する。戻り旋回途中においては、排出クランプ81への渡し位置において、2側クランプ71-4は、排出クランプ81に、完成した両端端子圧着電線W2-4(製品)を渡す。なお、排出クランプ81に関しては、
図11・
図12を参照しつつ後述する。
【0091】
この排出クランプへの渡し位置(2側クランプ71-4)から、切断皮剥き部4の前の位置(2側クランプ71-5)の間で、旋回中に、2側クランプ71は後退する(送給元側に突き出る)。これにより、次の電線を受け取ったときに、クランプから突出しでいる電線の寸法が短くなり、電線揺れ・振れ・暴れが小さくなって、電線受け取り・搬送が安定する。
【0092】
図9・
図10を参照しつつ、2側クランプ71及びその電線揺れ抑え719の構成・作用を説明する。
図9は、2側クランプ71及びそれに付設された電線揺れ抑え719を示す斜視図である。
図10は、電線揺れ抑え719の作用を説明するための正面図である。(A)は揺れ抑え719が開いた状態であり、(B)は揺れ抑え719が閉じつつある状態であり、(C)は揺れ抑え719が閉じた状態である。
【0093】
2側クランプ71は、電線を把持する左右一対のクランプツメ711を有する。同ツメは、リンク715とエアシリンダ717によって、一対のツメの中央上部の支点712(
図10参照)を中心にして、開閉される。ツメ711やリンク715、エアシリンダ717は、クランプブロック716に取付られている。同ブロック716は、前後機構73、旋回機構75(
図1参照)によって、
図8に示すように、旋回・前後進する。
【0094】
ツメ711の根元は、前側のツメアーム714(リンク715の一部)に接続されている。ツメアーム714の前側には、電線揺れ抑え719が、前側に張り出すように接続されている。電線揺れ抑え719は、
図10(A)の下部に見られるように、開状態において、左右に広がる翼状のものである。揺れ抑え719は、左右一対の板からなる。揺れ抑え719は、
図10(C)の閉状態では、対向するガニ股状である。電線揺れ抑え719は、切断皮剥き部4から繰り出されてくる2側電線W2の、クランプツメの前方の上に存在する。
【0095】
図10を参照しつつ、電線揺れ抑え719の作用を説明する。
図10(A)の開状態(
図9の状態も同じ)では、2側クランプ71の下に電線が繰り出されてくるところであり、揺れ抑え719はツメ711とともに、2側電線W2の上で開いている。このときは、電線は、まだ切断・皮剥き前の1側電線W1であり、尾端方向は電線リールまでつながった長い電線である。この1側電線W1の後部を、1側クランプ25(
図1参照)が把持して支えている。そのため、長い片持ち状の電線の先端部は、図中に放射矢印で示したように、前後・左右に揺れている(スパイラルの動きをしながら電線は繰り出される)。
【0096】
ここから、電線揺れ抑え719は、
図10(B)に示すように、左右の羽根が、閉じるように、下に回動していく。その閉じ過程で、電線は、揺れ抑え719の下面に当たって、電線の揺れ(しなり)が抑えられる。すなわち、クランプ動作に電線揺れ抑え719(電線ガイド)が追従することにより、電線をセンタに寄せる。そして、クランプ閉じ時における、ツメに対する電線の反力を抑える。
【0097】
図10(C)は、電線揺れ抑え719が全閉となった状態である(ツメ711は閉じて電線を把持している)。揺れ抑え719の両側の板は、電線1の左右両側に隙間を隔てて垂下している。この隙間は、電線揺れを抑えつつ、端子への圧迫のない(端子を変形させない)程度である。なお、短い製品では、
図9の状態よりも、トップ端子T1が後側にきて、揺れ抑え719に挟まれることもある。そこで、クランプ閉時、一対の電線揺れ抑え719(ガイド)間に一定の距離を持たせることにより、端子の動きを押えながら端子の変形を防止する。
【0098】
図11・
図12を参照しつつ、排出クランプ81(払出し装置)について説明する。
図11は、実施形態の排出クランプ81の構成と動作を説明するための斜視図である。(A)は排出クランプ81が2側電線W2に接近しているところであり、(B)はクランプ81が電線W2を掴む直前であり、(C)はクランプ81が電線W2を把持したところである。
図12は、
図11の排出クランプ81が2側電線W2を受取る動作の詳細を表す正面図である。(A)は排出クランプ81が電線受け取り待機位置にいるところであり、(B)は2側電線W2が受取り位置に接近して、クランプ81が電線W2を掴む直前であり、(C)はクランプ81が電線W2を掴んだ(受け取った)ところである。
なお、
図11・
図12における方向「左右」は、図を見る者にとっての方向であって、他の図の「左右」とは整合しないこともある。
【0099】
排出クランプ81は、電線を把持する左右一対のクランプツメ811を有する。同ツメは、リンク815とエアシリンダ817によって、一対のツメの中央上部の支点812を中心にして、開閉される。ツメ811やリンク815、エアシリンダ817は、クランプブロック816に取付られている。同ブロック816は、上下機構・前後機構・旋回機構(図示されず)によって、上下・旋回・左右進する。
【0100】
図11(A)では、テール端子T2が圧着された2側電線W2は、2側クランプ71に把持されている。この2側電線W2と2側クランプ71の状態は、
図8における電線W2-4とクランプ71-4の状態である。そして、排出クランプ81のツメ811は、テール端子T2と2側クランプ71との間の電線の上まで来て、ツメ811が開いている。ここから、排出クランプ81はさらに下降して行く。
【0101】
図11(B)では、排出クランプ81は、(A)の状態から下がって、電線W2を掴む直前である。
図11(C)では、排出クランプ81は、(B)の状態からさらに下がって(実際は
図14に示すように右から左に横行しながら)、クランプツメ811が、電線W2のテール端子T2と2側クランプ71との間で、電線を把持したところである。ここから、図示はしていないが、2側クランプ71が開いて電線を離し、排出クランプ81が2側電線W2を把持して、製品トレー(図示されず、
図1におけるテーブル3の前方にある)まで運ぶ。そこで、排出クランプ81が2側電線W2を離して、製品トレーに払い出す。
【0102】
図12を参照しつつ、排出クランプ81が2側電線W2に接近して電線を掴む(受け取る)詳細動作を説明する。
図12(A)では、排出クランプ81は電線受け取り待機位置におり、その下に、2側電線W2が、左から右に移動(旋回)して来ているところである。
【0103】
図12(B)では、2側電線W2が受取り位置の下に接近しており、クランプ81が電線W2を掴む直前である。ここで、2側電線W2が受取り位置に到達する前の時点(直前の時点)で、排出クランプ81の下降、及び、閉の動作が開始している。これにより、2側電線W2の排出クランプ81への受け渡しの時間を短くしている(一例で 0.05秒の短縮)。
図12(C)では、クランプ81のツメ811が電線W2を掴んで(受け取って)いる。この後に、排出クランプ81は2側電線W2を排出トレーに払い出す。
【0104】
図13を参照しつつ変形例における吸引補助部品(刃部140の入口ゲート412)について説明する。
図13は、刃部140の入口ゲート412の構成と動作を表す正面図である。(A)は開(下降)状態、(B)は閉(上昇)状態である。
【0105】
入口ゲート412は、正面視でアングル型(逆L字型)の部材であって、下の皮剥き刃ホルダー441´の上に載置固定されており、同ホルダー441´とともに昇降自在である。入口ゲート412の立上り片412bは、皮剥き刃41・43や切断刃42の左側に近接した位置において、ホルダー441´の上面で真上に立ち上がっている。同立上り片412bの前後方向(
図15の紙面の裏表方向)の幅は、前後の皮剥き刃41・43の間の間隔とほぼ同じ寸法である。
【0106】
入口ゲートの立上り片412bの上端412dは、
図13(A)の開(下降)状態では、旋回ガイド160の下端(両者はほぼ同じ高さ)と、ほぼ同じ高さである。(B)の閉(上昇)状態では、立上り片412bの上端412dは、旋回ガイド160の上端と、ほぼ同じ高さである。
【0107】
上記の各部の上下方向の関係により、
図13(A)の入口ゲート412の開(下降)状態では、旋回ガイド160の右端161x(端子圧着後の電線の出口)は、全開であり、これらの部位を、電線は支障なく通過できる。一方、
図13(B)の閉(上昇)状態では、旋回ガイド160の右端161x(端子圧着後の電線の出口)は、立上り片412bによって閉じられている。
【0108】
この変形例においては、下ブレードブロック(下の)に入口ゲート412(吸引補助部品)を取付け、ストリップ刃の上下可動を利用し、ブレード開時は電線通過部の開口を確保し、ブレード閉時はブレードの動きに連動し通路を塞ぐことで、被覆屑の吸引性向上と剥きカス拡散の低減を図った。
【0109】
次に、被覆屑のエアブローの改良例を含む実施形態を説明する。
図14は、別実施形態(非旋回型、電線平行横移動型)に係る端子圧着電線製造装置の機器配置の概略を示す平面図である。
図15(A)は、被覆屑SIを皮剥き刃241・243から吹き飛ばすエアブロー手段を備える切断皮剥き装置204の要部の平面断面図である。
図15(B)は、エアブローブロック381と皮剥き刃241・243、被覆屑SIの詳細を拡大して示す平面断面図である。
図16は、
図15に示す装置の要部の側面断面図である。
図17は、
図15に示す装置のエアブローブロック381の上下動作を示す正面図であって、(A)は上昇時(電線横行時)を示し、(B)は下降時(切断皮剥きのエアブロー時)を示す。
【0110】
この実施形態の切断皮剥き装置(204)は、 電線(W1・W2)の長手方向に沿って配列された、前記長手方向に交差する方向に対向する一対の刃を有する、電線切断刃(242)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(241・243)と、 前記電線を長手方向(前後方向)に移動させる前後機構(223・273)と、 該皮剥き刃(241・243)で生じる剥きカス(SI1・SI2)を吸引して排出する吸引ダクト(250)を備え、 さらに、前記皮剥き刃(241・243)を介して前記吸引ダクト(250)に対向して配置された、前記皮剥き刃(241´・243´)の刃型凹部(241b´・243b´)の底に向けてエアブローを加える手段(380)を備えることを特徴とする。
【0111】
図14の機器配置図において、
図1の符号に200を足した符号の示す部分は、
図1の端子圧着電線製造装置と同様の部分である。以下、主に、
図1の装置1と
図14の装置204の異なる事項を説明する。
【0112】
電線送給部210は1側クランプ225の前後機構223上に搭載されている。1側電線搬送部220は、1側の電線クランプ(ヘッド)225及び、同クランプ225の前後機構223を横行させる横行機構221を有する。横行時の1側クランプ225に保持された電線の長手方向(軸線)は、電線切断皮剥き部204における電線繰出し方向と、平面視で平行である。1側クランプ225は、1側電線の先端を把持し、電線切断皮剥き部204と1側端子圧着機260との間を往復する。
【0113】
電線切断皮剥き部204は、
図1と同様に、電線を所定の長さに切断するとともに、電線切断部の先端(トップ)及び後端(テール)の被覆を皮剥き(ストリップ)する。また、剥きカスを吸引して排出する吸引ダクト250が付設されている。符号269は、1側電線端部検出器(光学式検査)である。
【0114】
2側電線搬送部270も、1側電線搬送部220と同様に、横行機構274を有する。符号271は2側の電線クランプである。符号273は、同クランプ271を電線軸方向に出し引きする前後機構273である。2側クランプ271は、2側電線の後端を、切断皮剥き部204から2側圧着機290に搬送する。符号281は、両端端子圧着完了した電線(製品)を、排出トレー282に排出する排出クランプである。符号299は、2側電線後端部検出器(光学式検査)である。
【0115】
図15(A)や
図16に示すように、この切断皮剥き装置204は、電線W1・W2を切断する切断刃242と、その前後の皮剥き刃241・243からなるブレードユニット240を備えている。各刃は、上下一対の、それぞれ近接・離反する上下方向に駆動される刃である。なお、本明細書においては、特に下の刃に具体的に言及する場合には、符号に´を加えて表記する(下後側皮剥き刃241´など)。´のない符号は、上下の刃の一組を呼ぶ場合と、特に上の刃を呼ぶ場合がある。
【0116】
図15・
図16に示す電線は、切断された後に、端部が皮剥きされた状態である。
図15(B)に分かり易く示すように、後行電線W1(1側電線という)の先端(トップ)は芯線CW1が出ており、後側の皮剥き刃241の前側(切断刃242側)に剥きカスSI1が付着している。同じく、先行電線W2(2側電線という)の後端(テール・尾端)には芯線CW2が出ており、前側(2側)の皮剥き刃242の後側(切断刃242側)に剥きカスSI2が付着している。皮剥き動作の手順については、
図22や
図23、
図24を参照されたい。
【0117】
被覆屑SIのエアブロー手段380は、二か所のエアブロー孔381b・cを有するエアブローブロック381を主に構成されている。同ブロック381は、ブレードユニット240の上側部分の左側(1側圧着機260の存在している側、
図14参照)に、昇降可能に設けられている。そして、エアブロー孔381b・cは、前後の皮剥き刃241・243の対向する内側(切断刃242の存在する側)の部分に向けて空気を噴射する。エアブローブロック381の昇降については、電線Wが切断皮剥き部204から左に出て1側圧着機260に向かう際、及び、電線Wが1側圧着機260から切断皮剥き部204に戻る際には、ブロック381は上昇している。エアブローする際には、エアブローブロック381は下降している。
【0118】
図15(B)や
図17(B)に分かり易く示すように、エアブローブロック381は、全体として直方体状ものである。ブロック381の前後方向の幅は、ほぼ前後の皮剥き刃241・243の外側幅と同じ程度であり、左右方向の幅は、ほぼ切断刃242の幅と同じ程度である。エアブローブロック381の高さは、
図17(B)に分かり易く示すように、上下の舌状片341・341´の間の高さとほぼ同じである。
【0119】
エアブロー孔381b・cは、
図15(B)に示すように、前側と後側の二か所に開いている。同孔381b・cの奥は、空気導孔381hにつながっている。空気導孔381hは、エアブローブロック381内を前後方向に延びており、後側で左右方向の空気導孔381jにつながっている。その元側は、管路接続部材383を経て、空気圧チューブ387(
図17参照)につながっている。
【0120】
後側のブロー孔381bは、前後方向中央寄りから後側かつ右側(反1側圧着機260側、剥きカス吸引ダクト250の側)の斜め方向を向くように穿たれている。そして、同孔の向いている方向の先は、ほぼ上昇しきった状態(上下皮剥き刃241・241´が重なって閉鎖した状態)の前下後側皮剥き刃241´の刃型凹部241b´の底に向いている。その刃型凹部241b´の底は、剥かれた被覆屑SI1の根元が皮剥き刃241´・241に付着している部位である。なお、この図の例では、エアブロー孔381b中心線と、電線軸線の直交面(皮剥き刃正面)とのなす角度α=20°、刃型凹部241b´の平面視での傾斜角β=30°である。
【0121】
前側のブロー孔381cの向いている方向と前側上下皮剥き刃243・243´、刃型凹部243b´の関係や、角度αと角度βとの関係は、上述の後側のブロー孔381bと後側の皮剥き刃241・241´の場合を前後反転させた状態と同様である。
【0122】
皮剥き(被覆ストリップ)寸法、すなわち剥きカスSIの長さは、短いもので 1.0mmである。一方、刃型凹部241b´の深さは1.5mmである。そのため、刃型凹部241b´底に付着した剥きカスSIの頭は、ほとんど刃型凹部241b´から外に出ないこともある。そのため、単に漠然と皮剥き刃241のあたりに向けてエアブローを吹き付けるだけでは、剥きカスSIを吹き飛ばす(付着を引きはがす)効果が十分でない。そこで、本実施形態では、皮剥き刃241の刃型凹部241b´の底を直撃してえぐるようなエアブローとしている。
【0123】
エアブローのタイミングは、皮剥き刃241・243が互いに近接する上下死点位置に達した後、上下死点から離れ始める(上下刃が開き始める)時点である。具体的には、皮剥き刃241・243が上下死点から0.2mm変位した(0.4mm開いた)時点でエアブローを行っている。ブローの時間は100ms程度である。実験の結果、この時点・時間が、剥きカス飛ばしの完全性と、圧縮空気消費量削減の点で、好適と判明した。
【0124】
図17に示すように、エアブローブロック381は、皮剥き刃ホルダー541の下面に固定されており、同ホルダー541とともに昇降する。
図17(A)は上昇した状態であり、
図17(B)は下降した状態である。
図17(A)の上昇状態では、エアブローブロック381の下面と、ガイド板360との間は開いており、その間を電線Wが自由に左右に横行する。
【0125】
エアブローブロック381下位置のときは、剥きカスSIの飛ぶ空間は、左側がエアブローブロック381によってほぼ閉ざされ、前後は皮剥き刃241・243によってほぼ閉ざされ、上下は舌状片341・342によってほぼ閉ざされる。そのため、剥きカスSIが外に飛び出るような事態を防止できる。また、吸引ダクト250の開口部面積が少ない程、隙間からの空気の流れにより大気圧と負圧の差が大きくなり、吸引力が上がり、被覆カスの回収効率が上がる。
【0126】
エアブロー手段380の構成、及び、皮剥き動作(被覆剥離動作)との同期の関係をまとめれば次のとおりである。すなわち、被服剥離部の閉鎖動作と一緒に、エアブロー吹出位置が上下剥離刃の閉鎖位置に向かって移動し、かつ、上下剥離刃閉鎖時における被覆屑が発生する位置付近に向けてエアブローにより、被覆屑除去作用の強化と、被覆屑の飛散防止を併せて達成できた。具体的には、吸引ダクト250の吸引口の舌状片341・342と、上下剥離刃241・243が閉鎖状態にて、被覆屑吸引口に向けてエアを吹き出すことにより、被覆屑の回収が向上し、屑飛散防止をより徹底できた。
【0127】
次に、主に
図18・
図19を参照しつつ、切断皮剥き部204周りの電線搬送案内の構造及び作用について説明する。
図18は、第二実施形態の端子圧着電線製造装置の、電線フィード状態における、切断皮剥き部204の周りの図であって、(A)は平面断面図、(B)は側面断面図である。
図19は、
図18の装置の、2側電線クランプのクランプ状態における、切断皮剥き部204の周りの図であって、(A)は平面断面図、(B)は側面断面図である。
【0128】
本発明の他の端処理電線製造装置(201)は、 電線を送給する電線送給部(210)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(204)と、 切断・被覆剥離された1側(後行)電線の先端部を端処理する1側端処理部(260)、及び、2側(先行)電線の後端部を端処理する2側端処理部(290)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(220・270)と、を備える端処理電線製造装置(201)であって、 さらに、前記電線切断皮剥き部(204)の1側端処理部(260)の側(左側)において、電線横移動経路の下方に広がる、下に垂れた電線を受けて前記電線切断皮剥き部(204)に案内するガイド板(360)をさらに備えることを特徴とする端処理電線製造装置(201)。
【0129】
本発明の他の電線切断皮剥き装置(204)は、 さらに、前記電線切断皮剥き部(204)の前側(電線フィード方向)に配置された、フィードされる電線(W1)の進行経路の下側に(好ましくはさらに進行経路の上側や1側端処理部側にも)延びており、フィード時に下に垂れる電線を受ける(好ましくはさらに電線の上・横への暴れを低減する)線受け(390)と、 前記線受け(390)を、前記切断皮剥き部(204)に近づく位置と、同部から遠ざかる位置との間で移動させる線受け移動手段(392)と、 前記線受け(390)が前記切断皮剥き部(204)に近づく際には、前記クランプ(271)を電線進行経路から退避させ、前記線受け(390)が前記切断皮剥き部(204)から遠ざかる際には、前記クランプ(271)を電線進行経路に進出させる、前記クランプ(271)の移動手段(272・273)と、を備えることを特徴とする。次述する実施形態では、線受け380は、電線長手方向垂直断面が横コの字形(2側圧着機に向かう方向が開いている)の案内部材である。同案内部材の内側にて電線(W1)を通すことで、電線フィード時の電線の暴れを低減する。
【0130】
図18(A)や
図19(A)に示すように、切断皮剥き装置204の左側(1側端子圧着機260のある側、
図14参照)には、電線横移動経路の下側に広がるガイド板360が設けられている。ガイド板360は、平面視で略L字型の板である。左側端部360bは、左側下がりの斜面360bとなっており(
図17(A)参照)、後側部は後ろ下がりの斜面360fとなっている。いずれの斜面も、電線の先端部(トップ端子T1)が下がり気味になって斜面360b・360fに当たったときに、電線先端を上方向に持ちあげる作用がある。ガイド板360の他の部分、前側・右側部分は平面360jとなっている。同平面360jの高さは、
図18(B)や
図19(B)に示すように、下側の舌状片341´・342´の上面の高さと同じになっている。
【0131】
切断皮剥き部204の前側には、2側クランプ271や線受け390が存在している。2側クランプ271は、
図18の電線フィード時には、線受け390の後端部の下に退避しており、
図19の電線クランプ時には、線受け390とほぼ同じ高さに上がっている。線受け390は、
図18の電線フィード時には、切断皮剥き部204に近寄っており、
図19の電線クランプ時には、切断皮剥き部204から前側に離れている。
【0132】
2側クランプ271は、
図19(A)に示すように、電線を把持する一対のツメ271b・271cを有している。同ツメの根元には、ツメ開閉機構(いわゆる市販のエアーチャックなど)を内蔵するアーム272に支持されている。同アームは、傾動・前後・横行の3軸可動機構に搭載されている。アーム272を前後軸周りに回動させることにより、2側クランプ271を上昇(
図19)・下降(
図18)させる。アーム272を前後動させることにより、電線の前進・後退動作を行う(
図22・
図23・
図24における皮剥きの動作など)。アーム272を横移動(左行・右行)させることにより、切断皮剥き部204と圧着機290との間の横移動や、排出トレーへの排出などを行う。傾動・前後・横行機構は、市販のアクチュエータやリニアガイドなどで構成できる。
【0133】
線受け390は、上下に対向する上板390Uと下板390B、及び、両板の図の奥端(前端)につながる直立した面状の左壁390Wを有する。同線受け390の右側(2側圧着機290の側、
図14参照)は、壁が無く、素通しとなっている。上板390Uの後端部は、後ろ上方向に傾斜しており、下板390Bの後端部は、後ろ下方向に傾斜している。両傾斜は、ラッパ型に後側に向かって口を開いており、電線W1の先端(トップ)が下を向いていても、線受け390に入りやすくなっている。上板390Uと下板390Bの入り口ラッパ部を除く部分の高さは、切断皮剥き部204の上下の舌状片341・341´・342・342´の間の間隔よりも大きい。
【0134】
電線フィード時には、切断皮剥き部204から前側に出た電線・端子は、直後の線受け390内に入って、前側に進む(フィードされる)。これにより、2側の電線横搬送時に電線を横に滑らせるカバー394の下に電線が潜り込むのを防止している。また、線受け390は、電線フィード時の暴れを抑えるものでもある。すなわち、線受け390の上板390Uの作用は、電線フィード時の上方向に電線が暴れを抑えるものである。左壁390Wは、前側に行くほど右側に寄っている。これは、電線フィード時の初期状態における横方向暴れ抑えとなるもので、設置された機器等との衝突を防ぐ役目と、上方向の抑えるとなる面の線受け390Uに続くものとなっている。
【0135】
次に、
図20・
図21を参照しつつ、電線W1の1側圧着機260から切断皮剥き部204への搬送及びフィード動作を説明する。
図20は、比較的小型の端子(例えば、信号用コネクタの極間ピッチが2.54mmピッチ以下の端子)を電線トップに圧着した電線の場合における、ガイド板360から切断皮剥き部204に至る電線の横移動及びフィード(電線長手方向繰出し)の様子を示す平面図である。
図21は、比較的大型の端子(例えば、電源や社債用コネクタの極間ピッチが3.96mmピッチ以上の端子)を電線トップに圧着した電線の場合における、ガイド板360から切断皮剥き部204に至る電線の横移動及びフィード(電線長手方向繰出し)の様子を示す平面図である。
【0136】
図20(A)の前段階において、比較的小型の1側端子TS1を1側圧着機260(
図14参照)で圧着後、後側に1側クランプ225が後退し、圧着機から端子・電線を抜いて、横移動しても圧着機に引っかからないようにする。次いで、1側クランプ225が右方向に横移動開始する。そして、1側端子TS1がガイド板360の上に来ているのが
図20(A)の状態である。クランプ横移動開始後、所定時間で1側クランプ225が前方向に縦移動開始する。これが
図20(B)の状態である。このとき、1側クランプ225の横移動は続いている。
【0137】
図20(C)は、1側クランプ225と1側電線W1が、切断皮剥き部204の各刃の横方向(左右)センターまで到達したところである。また、
図20(B)における1側クランプ225が前移動開始してから、所定時間後に電線フィードを開始し、1側電線W1が相当前に繰出されたところである。なお、1側電線W1が、切断刃242や皮剥き刃241・243の上下刃の間に入り始める時点では、電線や端子の仕様によって、1側端子TS1は、上下の切断刃242や皮剥き刃241・243の間に入っていく場合もあれば、前側の皮剥き刃243よりも前に出ている場合もある。
【0138】
次に、
図21を参照しつつ、比較的大型の1側端子TL1の場合を説明する。この場合、横移動の前半段階、
図21(A)・(B)は、既に説明した比較的小型の1側端子TS1の横移動の場合、すなわち
図20(A)・(B)と同様である。ただし、
図21(B)の状態で1側クランプ225の横移動は停止する。そして、
図21(C)の段階では、1側クランプ225の所定位置までの前進と、1側電線W1の所定長さまでのフィードのみが行われる。その後、
図21(D)に示すように、横移動のみで、1側電線W1は切断皮剥き部204に搬送される。
【0139】
これは、比較的大型の1側端子TL1の場合、上下の切断刃242・皮剥き刃241・243や、舌状片141・142の間に入りづらい(引っかかる)ので、安全を見て、大型の1側端子TL1が前側皮剥き刃243よりも前に出てから、切断皮剥き部204に電線を横移動させて入れるのである。なお、電線W1フィードの中後半や、フィード完後の横移動時は、1側端子TL1は、線受け390の中(上)にあり、電線に反りや暴れがあっても、端子引っ掛かりなどのトラブルが生じる可能性は低い。
【0140】
本実施形態における、戻り搬送ガイド360による電線フィード開始位置と、吸引口250bへの1側電線W1の搬送についてまとめると、以下のとおりである。
図5の実施形態においては、旋回動作における電線ガイド(符号160、旋回ガイド)であったが、本実施形態では、電線の横(平行)搬送動作における戻り搬送(1側圧着機160から切断皮剥き部204への搬送)の動作に対応した電線ガイドとなっている。
図5の実施形態においては上下にあったガイド板が、下側のみの形状となっている。端子形状(大きさなど)に応じて、電線のフィード(繰出し)開始位置が電線ガイド360上面にて行われ、その後、剥きカス吸引ダクト250の吸引口250bの舌状片341、342の間に電線が案内される。
【0141】
次に、
図22・
図23・
図24を参照しつつ、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作のいくつかの例を説明する。
図22は、皮剥き長さが通常の(比較的短い、一例10mm未満)場合における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
図23は、片側の端部の皮剥き長さがきわめて長い(一例10~20mm)場合(片側ロングストリップ)における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
図24は、両側の端部が皮剥き長さがきわめて長い場合(両側ロングストリップ)における、切断刃242と皮剥き刃241・243の動作を示す側面断面図である。
電線Wに付記された矢印は、電線Wの送給方向である。図には、「後」から「前」方向に並んだ、それぞれ上下一対の後側皮剥き刃241・切断刃242・前側皮剥き刃243が示されている。各刃は、前述の機構により、上下に駆動される。
【0142】
図22は、通常の皮むき工程を説明する図であり、(A)は電線が各刃の上下刃(退避状態)の間に進入した状態、(B)は切断刃242及び皮剥き刃241・243が電線に近づいた状態、(C)は電線長さ決めのための切断が完了した状態、(D)は皮剥き長さが設定された状態、(E)は皮剥き刃が電線被覆に切込んだ状態、(F)は電線を前後に引いて(皮剥き刃から遠ざけて)皮を剥き終わった状態である。
【0143】
この例では、
図22(A)~(F)における切断刃242、及び、皮剥き刃241・243の上下動は、スライドブロック(
図2の符号45と同様のもの)を、モータ・ボールねじ駆動する(スライド)ことにより行われる。電線の長手方向移動は、(D)から(F)の状態まで、1側クランプ225及び2側クランプ271が、切断皮剥き部204の前後で電線Wを把持して前後移動することにより、行われる。
【0144】
図22(C)の電線長さ決めのための切断が完了した後は、切断後の先行電線を2側電線W2といい、後行電線を1側電線W1という(前述と同じ)。
図22(F)において、剥いた被覆カス(図示されず)は、皮剥き刃241・243の内側(切断刃242側)から、エアブローで飛ばされたのち、剥きカス吸引ダクト250(
図15(A)参照)に負圧吸引され排出される。
【0145】
本発明の他の電線切断皮剥き装置(204)は、 電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃(242)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(241・243)を具備する電線切断皮剥き装置(204)であって、 前記電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動されるスライドブロックと、 該スライドブロックに取付けられた、前記皮剥き刃(241・243)を保持する皮剥き刃ホルダー(541)と、 前記スライドブロックに搭載された、前記切断刃(242)を保持する切断刃ホルダー(543)、及び、該切断刃ホルダーを前記交差方向に往復駆動する切断刃駆動アクチュエータと、 を備え、 前記スライドブロックを往復駆動する機構が電動であり、 電線切断後に、前記切断刃駆動アクチュエータの駆動により、前記切断刃(242)が電線から回避し、 電線切断後に、電線の切断端部を、前記切断刃(242)の前後方向位置を越えて長手方向に送ってロングストリップの皮剥き長さをセットし、 次いで皮剥き刃(241・243)を電線の被覆に切り込み、 次いで電線を長手方向に移動させて被覆を剥き取ることを特徴とする。
【0146】
次に、
図23を参照しつつ、片側ロングストリップ(1側電線W1のトップの皮剥き長さは短く、2側電線W2のボトムの皮剥きは長い)の場合を説明する。
図23の(D´)の前まで(電線切断まで)は、
図22の(A)~(C)と同じである。
図23(D´)においては、切断刃242を空圧シリンダ(
図2の符号44と同様のもの)で、電線から離れる方向へ単独退避させる。
【0147】
続いて、(E´)で、2側電線W2を、その後端が切断刃242の前後方向位置から後ろに少し出るくらいまで後退させる。こうできるのは、(D´)で切断刃242を電線通過ラインから退避させていたためである。次に、(F´)では、皮剥き刃241・243を電線被覆に切込む。次いで、(G´)では、1側電線W1を前進させ、2側電線W2を後退させ、電線被覆を剥く。このように、本実施形態の切断皮剥き装置204では、皮剥き長さが「皮剥き刃-切断刃間隔」よりも長い加工(ロングストリップ)を行うことも容易である。
【0148】
次に、
図24を参照しつつ、両側ロングストリップの場合を説明する。
図24の(ア)の前まで(電線切断まで)は、
図22の(A)~(C)と同じである。
図24(ア)においては、切断刃242を空圧シリンダ(
図2の符号44と同様のもの)で、電線から離れる方向へ単独退避させる。
【0149】
続いて、
図24(イ)で、2側電線W2を、その後端が切断刃242の前後方向位置から後ろに少し出るくらいまで前進させるとともに、1側電線W1を後側皮剥き刃241よりも後ろに引っ込める。そして、(ウ)で、前側皮剥き刃243を電線被覆に切込む。次いで、(エ)では、2側電線W2を前進させ、電線被覆を剥く。この段階で、2側電線W2の後端(テール)のロングストリップが完了する。
【0150】
(オ)では、各刃を電線通路から退避させた後、1側電線W1を前進させ、その先端が切断刃242の前後方向位置から前に出す。(カ)では、後側皮剥き刃241を1側電線W1の被覆に切込む。(キ)では、1側電線W1を後退させ、被覆を剥ぎ取る。(ク)では、各刃を電線通路から退避させる。(ケ)では、切断刃242を、エアシリンダ駆動により、電線通路に近寄らせる。この状態が、電線の切断皮剥き部204への進行を待つ状態である。
【0151】
以上述べたように、本実施形態の切断皮剥き装置204にあっては、スライドブロック駆動用と切断刃242駆動用の二重アクチェータの動作シーケンスを調整することで、配置された前後ストリップ刃241・243の相互間の寸法範囲内でのロングストリップ動作が容易となる。また、前述のとおり、剥離刃への電線被覆屑付着による屑飛散と除去機能低下を防止することができる。これにより、皮剥き刃の過剰切込み設定などに起因する芯線の傷発生を防止することができる。また、機械本体の故障発生などの、剥離刃への被覆屑付着によるトラブルを防止することができる。さらに、ワイヤーハーネス加工機の生産の効率化と省エネ化に貢献できる。