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特許7496467着色樹脂成型品、着色フィルム、着色インキおよび印刷フィルム
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  • 特許-着色樹脂成型品、着色フィルム、着色インキおよび印刷フィルム 図1
  • 特許-着色樹脂成型品、着色フィルム、着色インキおよび印刷フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】着色樹脂成型品、着色フィルム、着色インキおよび印刷フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20240530BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240530BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240530BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240530BHJP
【FI】
C08J5/00
C08J5/18
C09B67/20 F
C09B67/20 G
C09D11/037
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023183806
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】藤山 英子
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-511636(JP,A)
【文献】特表2013-534945(JP,A)
【文献】特表2010-520929(JP,A)
【文献】特表2008-527052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08K
C08L
C09D
C09B 67/20,67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂、前記透明樹脂中に含有される高散乱性の赤色着色剤、および前記透明樹脂中に含有される低散乱性の青色着色剤を有しており、D65光源を用いた10°視野における黒下地上での色相角が0°~70°であり、白下地上での前記色相角が200°~270°であることを特徴とする、着色樹脂成型品。
【請求項2】
黒下地上および白下地上での各彩度がそれぞれ3以上、150以下であることを特徴とする、請求項1記載の着色樹脂成型品。
【請求項3】
前記赤色着色剤が弁柄であることを特徴とする、請求項1または2記載の着色樹脂成型品。
【請求項4】
前記青色着色剤がフタロシアニン系着色剤であることを特徴とする、請求項1または2記載の着色樹脂成型品。
【請求項5】
請求項1または2記載の着色樹脂成型品からなることを特徴とする、着色フィルム。
【請求項6】
請求項1または2記載の着色樹脂成型品を含有することを特徴とする、着色インキ。
【請求項7】
請求項6記載の着色インキの印刷物からなることを特徴とする、印刷フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒い下地上でほぼ赤色から茶色に見え、白い下地上でほぼ青色に見える着色樹脂成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを用いた「サフィレット」と呼ばれる人工宝石が知られている。この人工宝石は、見る角度によってブラウンやブルーに変化する微妙な二色性効果を有する。しかし現在、サフィレットの製造方法の知識は失われている。
【0003】
一方、二色性効果を樹脂成型品を用いて再現する方法として、偏光を用いた電圧のオンオフによって発色する液晶性調光フィルムなどが知られている。また、パールなどの光輝材を用いることにより、見る角度や下地色によって色相が変化する二色性効果も知られている。その他にも、下地の色変化に応じて色相を変えることについては、蛍光染顔料でも黄色が緑色方向に変わるといった変動も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-107467号公報
【文献】WO2021/095881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、偏光を用いた液晶性調光については、調光のために電子機器が必要になる。また、パールなどの光輝材や蛍光染顔料を用いた樹脂成型品も、調光には限界があり,また特別な光輝剤を必要とする。このため、透明樹脂に着色剤を含有させた樹脂成型品であって、光輝剤や蛍光染料、蛍光顔料を必要とせず、下地の色のみを変えることにより、サフィレットのような微妙な二色性効果を有する着色樹脂成型品が望まれる。
【0006】
本発明の課題は、透明樹脂に着色剤を含有させた樹脂成型品であって、光輝剤や蛍光性の染料、顔料を必要とせず、黒下地上の色と白下地上の色とが変化する二色性効果を有する着色樹脂成型品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る着色樹脂成型品は、透明樹脂、前記透明樹脂中に含有される高散乱性の赤色着色剤、および前記透明樹脂中に含有される低散乱性の青色着色剤を有しており、D65光源を用いた10°視野における黒下地上での色相角(hab:CIE1976a,b hue-angle)が0°~70°であり、白下地上での前記色相角が200°~270°であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記着色樹脂成型品からなることを特徴とする、着色フィルムに係るものである。
【0009】
また、本発明は、前記着色樹脂成型品を含有することを特徴とする、着色インキに係るものである。
【0010】
また、本発明は、前記着色インキの印刷物からなることを特徴とする、印刷フィルムに係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために、弁柄(ベンガラ)などの高散乱性の赤色着色剤と、シアニンブルーなどの低散乱性の青色着色剤とを透明樹脂中に混合し、調整することで、黒下地上でほぼ赤色から茶色に見え、白下地上ではほぼ青色に見えるような二色性を示す着色樹脂成型品を作製することに成功した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を説明するための色相図を示す。
図2】着色樹脂成型品の測色方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(透明樹脂)
「透明樹脂」とは、可視光の反射や吸収が少なく、また樹脂内部で可視光が拡散せずに透過するような樹脂であることが一般に知られている。
透明樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。こうした熱可塑性樹脂としては、一般的な樹脂成型品を製造するために用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリスチレン;ABS;ポリアミド;ポリメチルメタクリレート;ポリウレタン;ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、非晶性の熱可塑性樹脂を用いてもよく、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
透明樹脂は、熱可塑性樹脂以外に、熱硬化性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、2官能以上のビニル重合性官能基をもつ単量体を重合して得られるスチレン系樹脂や(メタ)アクリレート樹脂等の従来公知の熱硬化性樹脂であってよい。
【0015】
(高散乱性の赤色着色剤および低散乱性の青色着色剤)
本発明では、透明樹脂中に、高散乱性の赤色着色剤および低散乱性の青色着色剤を含有させることで、黒下地上での色相角と白下地上での色相角を異なる色彩に調整できる。
【0016】
ここで、赤色着色剤とは、D65光源を用いた10°視野における色相角(hab:CIE1976a,b hue-angle)が0°~70°であることを意味する。赤色着色剤の前記色相角は、20°以上であることが更に好ましく、また、50°以下であることが更に好ましい。
【0017】
また、青色着色剤とは、D65光源を用いた10°視野における色相角(hab:CIE1976a,b hue-angle)が180°~360°であることを意味する。青色着色剤の前記色相角は、225°以上であることが更に好ましく、また、315°以下であることが更に好ましい。また、各色相角は、後述する樹脂成型品の色相角と同様にして測色するが、この測色の際には、白下地および黒下地は用いない。
【0018】
本発明で用いる赤色着色剤は高散乱性であり、青色着色剤は低散乱性である。
ここで、散乱性が低い青色着色剤の場合には、樹脂成型品を光線が透過しなくなるまで青色着色剤を濃厚にすると、樹脂成型品の明度が低くなる。これは青色着色剤の散乱性が低いので、光線の散乱がすくない。このため、樹脂成型品を光線が透過しなくなるようにするためには、青色着色剤の濃度を高くする必要がある。この結果、青色着色剤の濃度が高くなることから、その時点での着色樹脂成型品の明度が低くなるからである。一方、高散乱性の赤色着色剤の場合には、樹脂成型品を光線が透過しなくなるまで濃厚にしても、樹脂成型品の明度が比較的高いままである。これは着色剤の散乱性が高いと、着色剤の濃度が比較的低くとも光線が透過しにくくなる。ゆえに、樹脂成型品を光線が透過しない段階でも明度は比較的に高いままになる。
【0019】
具体的には、各着色剤の散乱性は以下のように測定する。
まず、各着色剤を透明樹脂(透明な軟質塩化ビニル樹脂)中に練り込み、完全には透けていない試験片を作成する。試験片の厚さは1mmとする。ここで、「完全には透けていない試験片」の可視光の全光線透過率は1%以下とする。
【0020】
この状態で、各試験片について、CIE1976L*a*b*色空間に規定される明度(L)を測定する。そして、赤色着色剤の明度(L)が15以上である場合を「高散乱性」とする。高散乱性の赤色着色剤の明度(L)は、実際上の観点からは、90以下であることが多い。また、青色着色剤の明度(L)が10以下である場合を「低散乱性」とする。低散乱性の青色着色剤の明度(L)は、実際上の観点からは、1以上であることが多い。
【0021】
これらの明度を測色する際には、測定対象である各着色剤を、透明な軟質塩化ビニル樹脂に調合し、厚さ1mmの試験片を作製する。そして、図2に示すように、コニカミノルタ製「CM-36dG」上に各試験片(着色組成物)を設置する。ただし、白下地および黒下地は設けない。具体的な測色条件としては、D65光源、視野角10°で照明径・測定径のサイズにLAV、測定方式にSCE方式を用いる。
【0022】
高散乱性の赤色着色剤としては、黄味弁柄や紫味弁柄のような弁柄類、カドミウム赤、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料の有機顔料類等を例示できる。
また、低散乱性の青色着色剤としては、α型銅フタロシアニンブルーやβ型銅フタロシアニンブルーなどの銅フタロシアニン類、群青類、コバルトブルー類、青色染料等を例示できる。
【0023】
(着色樹脂成型品の色相角)
本発明においては、図1の模式図に示すように、D65光源を用いた10°視野における黒下地上での樹脂成型品の色相角(hab:CIE1976a,b hue-angle)が0°~70°であり、白下地上での色相角が200°~270°である。すなわち、本発明の樹脂成型品は、黒下地上と白下地上で顕著な色相角差を有しており、二色性を発現するものである。
更には、本発明の樹脂成型品は、白下地上と同様に、透過色での色相角も200°~270°とすることが可能である。
【0024】
着色樹脂成型品の色相角は以下のようにして測定する。
すなわち、測定対象である各着色剤を、透明な軟質塩化ビニル樹脂に調合し、厚さ1mmの試験片を作製する。そして、図2に示すように、コニカミノルタ製「CM-36dG」上に各試験片(着色組成物)を設置する。そして、各試験片と測定部との間に、白下地(エバーズEVER-WHITE9582)または黒下地(EVER-BLACK0005)を介在させ、測色を実施する。
具体的な測色条件としては、照明径・測定径のサイズにLAV、測定方式にSCE方式を用いる。
【0025】
好適な実施形態においては、黒下地上および白下地上での樹脂成型品の各彩度(C*ab:CIE1976 a,b chroma)をそれぞれ3以上、150以下とする。
【0026】
一般に色調を表す方法として、国際照明委員会(CIE)が策定した、目で見える色を色空間として表現する、CIE L表色系(色空間)がある(図1参照)。このCIE L*a*b*表色系においては、色を3つの座標で表現し、明度が「L*」、赤(マゼンタ)~緑が「a*」(正がマゼンタ、負が緑味)、黄~青を「b*」(正が黄味、負が青味)にそれぞれ対応する。
【0027】
実際に透明樹脂中に各種着色剤を練り込んで見た結果、白下地上で有彩色であった場合(つまり彩度がある程度高い場合)には、黒下地上では白下地上と類似の色相になる場合が多く、あるいは黒下地上では彩度の低い黒い色となることが多いことがわかった。これに対して、本発明の樹脂成型品は、白下地上でも黒下地上でもある程度高い彩度を示すことができるものであった。具体的には、黒下地上および白下地上での樹脂成型品の各彩度(C*ab:CIE1976 a,b chroma)をそれぞれ3以上、150以下とする。これら各彩度は、3以上であることが更に好ましく、また20以下であることが更に好ましい。
【0028】
これら彩度を測定するには、各着色樹脂成型品の測色と同様にして、図2に示すようにして測定する。
【0029】
樹脂成型品における各成分の好適比率を以下に示す。
(1) 高散乱性の赤色着色剤の質量を1.000とした場合:
低散乱性の青色着色剤の質量は0.040~0.500が好ましく、0.045~0.400が更に好ましく、0.050~0.320が特に好ましい。また、透明樹脂の質量は、800~5000が好ましく、900~4500が更に好ましく、1000~4000が特に好ましい。
【0030】
(2) 赤色着色剤の前記明度(L)が25以上であり、質量を1.000とした場合
低散乱性の青色着色剤の質量は0.040~0.500が好ましく、0.045~0.400が更に好ましく、0.100~0.320が特に好ましい。また、透明樹脂の質量は、800~5000が好ましく、900~4500が更に好ましく、1000~4000が特に好ましい。
【0031】
(3) 赤色着色剤の前記明度(L)が15以上、25未満(特には24.999以下)であり、質量を1.000とした場合
低散乱性の青色着色剤の質量は0.040~0.500が好ましく、0.045~0.400が更に好ましく、0.050~0.320が特に好ましい。また、透明樹脂の質量は、800~5000が好ましく、900~4500が更に好ましく、1000~4000が特に好ましい。
【0032】
(他の添加剤)
本発明の着色樹脂成型品は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の添加剤を含有してもよい。例えば、分散剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消し剤などが含有されていてもよい。着色樹脂成型品中に含まれる樹脂の量を100質量部としたとき、他の添加剤の含有量は5質量部以下が好ましく、0質量部であってもよい。
【0033】
(着色樹脂成型品の製造)
本発明の着色樹脂成型品は、一般に、樹脂と着色剤とを、バンバリーミキサー、ナウターミキサー、混練ロール、又は一軸、二軸押し出し機などにより、溶融混合、分散処理することによって、得ることが出来る。また混練前に分散均一化する目的で、タンブラーミキサー、ブレンダー、高速混合機で予備分散を行ってもよい。
【0034】
得られた着色樹脂成型品の成形方法としては、限定されないが、射出成形、射出圧縮成形、圧空成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、押し出し成形等の公知の方法で、所定の形状に成形される。このとき、目的に応じて熱安定剤,耐候安定剤,滑剤,顔料分散剤,静電気防止剤などの添加剤を添加することができる。また、高意匠性等、成形物に必要な目的に応じて、他の顔料や染料を添加することができる。
【0035】
成形機を使用し、一般的なフィルム成形方法やシート成形方法によって着色樹脂成型品を成形することで、フィルム状又はシート状の成形体を製造することができる。成形機としては、押出成形機、中空成形機、真空成形機、圧空成形機、圧縮成形機、カレンダー成形機等を使用することができる。フィルム状成形体及びシート状成形体の厚みは、用途に応じて適宜調整すればよい。具体的には、0.1~500μmとすることが好ましく、1~100μmとすることがさらに好ましい。
【0036】
積層フィルムを共押出成形する場合は、各層を構成する樹脂が、それぞれ加熱溶融され、異なる押出機やポンプ等からそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に接着する。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィードブロック等のTダイを用いることができる。
【0037】
また、紡糸機を使用して着色樹脂成型品を紡糸することで、繊維状の成形体を製造することができる。繊維状の成形体の繊維径は、用途に応じて適宜調整すればよい。具体的には、1~1,000μmとすることが好ましく、1~500μmとすることがさらに好ましく、5~200μmとすることが特に好ましい。繊維状の成形体は、適当な長さに裁断してもよいし、束ねて繊維束としてもよい。さらに、布や不織布に加工することもできる。
【0038】
(本発明の着色樹脂成型品の好適な用途)
本発明の着色成型品は、二色性を有しているので、二色性を利用している多種類の用途に好適に利用できる。すなわち、二色性を意匠や装飾として利用する用途に広く利用可能であり、各種部品、容器外面に形成できる。また、二色性を有する特殊な性質を持つことから、偽造防止部材への使用が期待される。
【0039】
具体的には、例えば、本発明の着色樹脂成型品からなる着色フィルムは、各種物体に対してはりつけることができる。
また、本発明の着色樹脂成型品を含有する着色インキは、各種物体に印刷することで、二色性を有する印刷フィルムを形成することができる。こうした着色インキには、種々の有機溶媒および各種の公知添加剤を含有させることができる。
【実施例
【0040】
(各着色剤)
表1に示す各着色剤を用意した。ただし、各着色剤の前記明度(L)および色相角を測定し、表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(本発明実施例および比較例の着色樹脂成型品の製造)
表2に示す各例の配合の各着色剤と透明軟質ビニル樹脂とを混合し、ロール成形することで、各樹脂成型品を製造した。ただし、各着色剤を効率よく分散させるため、予め加工した塩化ビニル樹脂用潤性粉末着色剤ディスコールを使用した。厚さ1mmの着色樹脂成型品を製造した。ただし、表2に示す数値は、赤色着色剤の質量を1.000としたときの各成分の質量比率を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
(各着色樹脂成型品の測色結果)
白下地・黒下地上での各着色樹脂成型品の測色を前述のようにして行った。そして、D65光源、10°視野でのCIE1976によるL*a*b*色空間のC*ab、habを算出し、その結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3より、白下地と黒下地での色差(ΔE: CIE1976L*a*b*colour diffrence)、Δhab、色相差(ΔH ab:CIE 1976 a,b hue-difference)を算出し、その結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例1~4の着色樹脂成型品は、白下地上ではほぼ青色、黒下地ではほぼ赤色から茶色に目視することが出来る程、彩度が高く(C ab>>3.00)、その色相角habの差Δhabは140°以上に達している。すなわち、下地の色を変えることにより、着色樹脂成型品の色相が大きく変化し、顕著な二色性を示すことに成功した。
【0049】
比較例1の着色樹脂成型品、比較例2の着色樹脂成型品では、顕著な二色性は示されなかった。
【0050】
実施例5は、実施例1~4の黄味弁柄を紫味弁柄に変更した例である。この場合にも顕著な二色性を達成することに成功した。
【0051】
実施例6は、実施例1~4のβ型銅フタロシアニンブルーを変更し、黄味弁柄とα型銅フタロシアニンブルーを配合した着色樹脂成型品である。また、実施例7は、実施例1~4の赤色着色剤、青色着色剤の両方を変更した例である。いずれも顕著な二色性を達成することに成功した。
【0052】
比較例3は、黄味弁柄のみを配合した着色樹脂成型品であり、低散乱性の青色着色剤が配合されてない。この場合には、着色樹脂成型品は二色性を示さなかった。
【要約】
【課題】透明樹脂に着色剤を含有させた樹脂成型品であって、光輝剤や蛍光性の染料、顔料を必要とせず、黒下地上の色と白下地上の色とが変化する二色性効果を呈する着色樹脂成型品を提供する。
【解決手段】着色樹脂成型品は、透明樹脂、透明樹脂中に含有される高散乱性の赤色着色剤、および透明樹脂中に含有される低散乱性の青色着色剤を有する。D65光源を用いた10°視野における黒下地上での色相角が0°~70°であり、白下地上での前記色相角が200°~270°である。
【選択図】 図1
図1
図2