(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】レーザー転写プリントを用いた交互積層による物体の製造方法及び3Dプリント装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/135 20170101AFI20240530BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240530BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240530BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240530BHJP
【FI】
B29C64/135
B29C64/268
B29C64/321
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2023518321
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020076421
(87)【国際公開番号】W WO2022063393
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】クラウス、エラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス、ノイビルト
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/184525(WO,A1)
【文献】特表2018-534185(JP,A)
【文献】国際公開第2012/146634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板(28)と、少なくとも1つのレーザー光源(50)と、少なくとも1つのキャリアシリンダ(51)とを備えた3Dプリント装置で、レーザー転写印刷によって物体を層ごとに製造する方法であって、
前記キャリアシリンダ(51)の材料は、前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)に対して透明であり、前記レーザー光源(50)は前記キャリアシリンダ(51)上に配置されており、
(a)前記キャリアシリンダ(51)の外面の少なくとも一部を、少なくとも1つの印刷材料(54)を塗布してコーティングすること、
(b)前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)により前記キャリアシリンダ(51)に照射して、塗布された前記印刷材料(54)の少なくとも一部を前記キャリアシリンダ(51)から剥離させ、前記基板(28)、その上に位置する外装部品(7)、又は、先に塗布された印刷材料層へ転写すること、
(c)前記工程(b)において転写された印刷材料(54)を硬化させることにより、印刷材料層を形成すること、及び
(d)物体が完全に構築されるまで、前記(a)~(c)の工程を繰り返すこと、
を含み、
前記レーザー照射を、
(i)前記キャリアシリンダ(51)の外側からキャリアシリンダ(51)の両方の壁を通して、前記キャリアシリンダ(51)の下側に塗布された印刷材料(54)に直接あてることを特徴とする、方法。
【請求項2】
連続ベルト(9)が、前記基板(28)上に摺動可能に配置されており、工程(b)において、前記印刷材料(54)が前記キャリアシリンダ(51)から剥離され、前記連続ベルト(9)、その上に配置された外装部品(7)又は先に塗布された印刷材料層に転写される、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)
の前に、前記キャリアシリンダ(51)に塗布された印刷材料(54)
を電位φ1
に帯電
させ、前記基板(28)
を電位φ3
に帯電
させ、
ここで、φ1及びφ3が反対の極性を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記外装部品(7)の表面、先に塗布された印刷材料層の表面及び/又は
連続ベルト(9)の表面が、電位φ2に追加的に帯電し、前記φ2と前記φ1とは反対の極性を有し、前記φ2は、工程(b)において転写された前記印刷材料(54)上の電荷の少なくとも一部分が印刷すべき表面上で中和するように選ばれる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記キャリアシリンダ(51)が回転し、工程(a)において、塗布システム(52)により前記印刷材料(54)からなる層がキャリアシリンダ(51)に塗布され、工程(b)の後に剥離しなかった印刷材料(54)が除去システム(53)によりキャリアシリンダ(51)から除去される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷材料が、シリコーン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリニトリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリラクチド、
及びポリヒドロキシアルカノエート
からなる群から選択される1種以上
の物体形成材料、前記物体形成材料を1種以上含む混合物、溶液、分散物又は共重合体
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記印刷材料が、架橋性シリコーンエラストマー組成物、シリコーンゲル、シリコーン樹脂、シリコーンオイル及びシリコーン分散液からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記印刷材料が、物体が構築された後に除去される1つ以上の支持材料を追加的に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー照射(50a)の焦点(50b)が、前記印刷材料(54)と前記キャリアシリンダ(51)との間の界面の上方0.01mmから10mmの範囲内でキャリアシリンダ内にあるように選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板(28)が、工程(b)用の連続ベルト(9)を塗布されたキャリアシリンダ(51)から特定の距離に固定する摺動可能な
吸引基板である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(28)、
連続ベルト(9)、前記外装部品(7)又は先に塗布された印刷材料層上の印刷されるべき表面が、工程(b)の前、且つ電位φ2又はφ3への任意の充電の前に、予備放電モジュール(29)により静電放電される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリアシリンダ(51)の材料が、ガラス、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメット-アクリレート、ZnSe、ZnS、BaF2、CaF2、Ge、KBr、NaCl、MgF2、LiF及びSiからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
レーザー転写プリントにより物体を製造する3Dプリント装置であって、
少なくとも1つのレーザー光源(50)と、
前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)に対して透明な材料からなる少なくとも1つのキャリアシリンダ(51)と、
前記キャリアシリンダ(51)の外面の少なくとも一部に、少なくとも1つの印刷材料(54)を塗布してコーティングするように設定された少なくとも1つの塗布システム(52)と、
少なくとも1つの基板(28)と、
を備え、
前記レーザー光源(50)は、前記キャリアシリンダ(51)の上に配置されており、前記キャリアシリンダ(51)に塗布された前記印刷材料(54)の少なくとも一部を剥離させ、前記基板(28)、その上に配置された外装部品(7)、又は先に塗布された印刷材料層へ転写されるように、前記キャリアシリンダ(51)を照射するように設定されており、
前記レーザー照射が、
(i)前記キャリアシリンダ(51)の外側からキャリアシリンダ(51)の両方の壁を通して、前記キャリアシリンダの下側に塗布された印刷材料(54)を直接あてることを特徴とする、3Dプリント装置。
【請求項14】
連続ベルト(9)が、前記基板(28)上に摺動可能に配置されている、請求項13に記載の3Dプリント装置。
【請求項15】
前記キャリアシリンダ(51)に塗布された印刷材料(54)の表面、前記基板(28)の表面及び/又は印刷される対象表面を、それぞれ独立して特定の電位φに充電するように設定された少なくとも1つの充放電モジュール(23)を備える、請求項13又は14に記載の3Dプリント装置。
【請求項16】
前記
印刷材料(54)を硬化させるように設定された少なくとも1つの硬化モジュール(22)を備える、請求項13~15のいずれか一項に記載の3Dプリント装置。
【請求項17】
前記キャリアシリンダ(51)から剥離されていない印刷材料(54)を除去するように設定された少なくとも1つの除去システム(53)を備える、請求項13~16のいずれか一項に記載の3Dプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー転写プリントを用いた交互積層による物体製造のための新規な3Dプリント方法、及びそれを行うための3Dプリント装置に関する。本発明は、キャリアシリンダから塗布された印刷材料にレーザーを照射し、剥離して基板上に転写する。その後、印刷材料層を硬化させ、物体が完全に構築されるまでこの操作を繰り返す。本発明の方法によれば、印刷品質を損なうことなく、印刷可能な多種材料から製造された物体を高効率(1kg/時以上)で印刷することが可能である。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンターは、3次元物体を1層ずつ積み重ねていく装置である。1又は複数の液体若しくは固体の材料から、CAD(コンピュータ支援設計)を用いて、規定された形状にしたがいコンピュータ制御下で造形される。造形工程では、物理的又は化学的に硬化若しくは固化する工程が実施される。3Dプリンターの代表的な材料は、プラスチック、合成樹脂、セラミック、金属である。3Dプリンターは、産業、研究、また消費者分野でも使用されている積層造形法の一つである。
【0003】
第一に、3Dプリンターは、試作品や模型の製作、数個のサンプルしか必要としない物体の作製に適している。医療やスポーツの分野では、個々に合わせた形状が重要とされているものの他の方法では全く作れない場合がある。例えば、内部が格子状になっているような物体である。
【0004】
3Dプリントは、射出成形方法と比較して、金型やフォームの複雑な製作が不要であるという利点がある。3Dプリントは、材料除去による加工(旋盤、穴あけ、研削、フライスなど)のような方法と比較して、ブランクを加工する必要がなく、材料の損失がほとんどないという利点がある。
【0005】
付加製造法(3Dプリント)には、成形品の層の自動的な付加的構築の特徴を共有する多数の技法が含まれる(A. Gebhardt, Generative Fertigungsverfahren [Additive Manufacturing Methods], Carl Hanser Verlag, Munich 2013)。すべての付加製造法の前提条件は、成形品の仮想モデルとみなすことができるデジタル3Dデータセットの形態で、所望の成形品の幾何学及び任意のさらなる特性(例えば、色、材料組成)を作成することである。このモデリングは、好ましくは、様々な3D-CAD構築方法(コンピュータ支援設計)により行われる。3D-CADモデルの作成に使用される入力データは、例えば、CT測定(コンピュータ断層撮影)又はMRT測定(磁気共鳴断層撮影)の結果としての3D測定データであってもよい。3D-CADデータセットは、その後、材料、方法、及びシステム固有のデータによって補完される必要があるものの、これは、適切なフォーマット(STL、CLI/SLC、PLY、VRML、AMFフォーマットなど)でインターフェースを介して付加製造ソフトウェアに転送されることによって実現される。このソフトウェアは、幾何学的情報を使用して、構築された空間におけるコンポーネントの最適な向きや支持構造などを考慮した仮想スライスを作成する。このデータセットにより、積層造形に使用する機械(3Dプリンター)に直接対応することができる。
【0006】
例えば、以下のようなソフトウェアの手順を例示できる。
1. CAD形式による部品の構築
2. STLデータ形式への書き出し
3. 3Dモデルを印刷面に平行なスライスに分割し、GCodeを生成
4. GCodeをプリントコントローラーに送信
【0007】
付加製造方法は、多数の材料及びその組み合わせ(例えば、金属、プラスチック、セラミック、ガラス)に対して利用可能である。例えば、物体の積層造形には、以下のような確立された方法が既に複数存在する。
・プラスチックや特定合成樹脂のFDM(Fused Deposition Modeling)。
・液状合成樹脂の立体造形
・金属、ポリマー、セラミックのレーザー焼結
・金属用電子ビーム溶融
【0008】
同様に、印刷材料の液滴を吐出する(ジェット噴射と呼ばれる)か、又はストランドの連続押し出し(ディスペンス法又は押し出し法と呼ばれる)によって堆積させ、その後、例えば、紫外線の作用による硬化又は他の方法による連結を行う方法が知られている。
【0009】
標準的な3Dプリント方法は、例えば、国際公開2006/020685 A2、国際公開2013/091003 A1、国際公開2015/059502 A1、及び国際公開2016/071241 A1に記載されている。
【0010】
これまで知られている3Dプリント法は、いずれも、効率良く精密な物体を製造するのには適していない。特に不利な点は、個々の技術のスループットが低いこと(1kg/hをはるかに下回る)、可能な印刷材料、特にその化学的及び物理的特性に関する制限(例えば、種類、粘度、フィラー含有量、溶媒含有量に関する制限)である。
【0011】
1kg/hを超えるスループットで物体を製造でき、同時に多数のプリント材料(物体形成材料又はサポート材料)に適した、十分に精密な3Dプリント方法は、現在までに知られていない。
【0012】
中国特許出願公開110666169 Aは、バッチ式動作で、レーザー移動法を介して3D物体を製造する3Dプリント装置が開示されている。これは、3Dプリント材料としての金属をマグネトロンスパッタリングにより別工程で個々のキャリアに塗布し、レーザー及び移動装置において手動でクランプすることを含む。この方法は連続プリントができない。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、高いスループットかつ最小の印刷時間で高品質の印刷が可能な付加的3Dプリント方法を提供することである。特に、プリント材料が軌道誤差なく意図した目標位置に配置されるようにすると同時に、多数の異なるプリント材料に適するようにすることを目的とする。
【0014】
上記した目的は、驚くべきことに、本発明の方法及び本発明の装置によって達成される。本発明は、物体の印刷品質を損なうことなく、1kg/hを超える高いスループットで物体を印刷することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、3Dプリント物品を製造するための複合材製造プラントシステムの工程図である。
【
図2】
図2は、3Dプリントユニットの構造図である。
【
図5】
図5は、LIFT-3D印刷モジュールの着脱操作と印刷材料の位置決めの様子を示した図である。
【
図6】
図6は、LIFT-3D印刷モジュールのプリント素材の工程手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、少なくとも1つの基板(28)と、少なくとも1つのレーザー光源(50)と、少なくとも1つのキャリアシリンダ(51)とを備えた3Dプリント装置で、レーザー転写印刷によって物体を層ごとに製造する方法であって、
前記キャリアシリンダ(51)の材料が、前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)に対して透明であり、
(a)前記キャリアシリンダ(51)の外面の少なくとも一部に、少なくとも1つの印刷材料(54)を塗布してコーティングすること、
(b)前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)により前記キャリアシリンダ(51)に照射して、塗布された前記印刷材料(54)の少なくとも一部を前記キャリアシリンダ(51)から剥離させ、前記基板(28)、その上に位置する外装部品(7)、又は、先に塗布された印刷材料層へ転写すること、
(c)前記工程(b)において転写された印刷材料(54)を硬化させることにより、印刷材料層を形成すること、及び
(d)物体が完全に構築されるまで、前記(a)~(c)の工程を繰り返すこと、
を含み、
前記レーザー照射を、
(i)前記キャリアシリンダ(51)の外側からキャリアシリンダ(51)を通して印刷材料(54)に直接あてる、又は、
(ii)前記キャリアシリンダ(51)内から1つ以上のミラーを介して印刷材料(54)にあてる、
ことを特徴とする、方法に関する。
【0017】
更に、本発明は、レーザー転写プリントにより物体を製造する3Dプリント装置であって、
少なくとも1つのレーザー光源(50)と、
前記レーザー光源(50)からのレーザー照射(50a)に対して透明な材料からなる少なくとも1つのキャリアシリンダ(51)と、
前記キャリアシリンダ(51)の外面の少なくとも一部に、少なくとも1つの印刷材料(54)を塗布してコーティングするように設定された少なくとも1つの塗布システム(52)と、
少なくとも1つの基板(28)と、
を備え、
前記レーザー光源(50)は、前記キャリアシリンダ(51)に塗布された前記印刷材料(54)の少なくとも一部を剥離させ、前記基板(28)、その上に配置された外装部品(7)、又は先に塗布された印刷材料層へ転写されるように、前記キャリアシリンダ(51)を照射するように設定されており、
前記レーザー照射が、
(i)前記キャリアシリンダ(51)の外側からキャリアシリンダ(51)を通して印刷材料(54)を直接あてる、又は
(ii)前記キャリアシリンダ(51)内から1つ以上のミラーを介して印刷材料(54)にあてる、
ことを特徴とする、3Dプリント装置に関する。
【0018】
物体の交互積層造形のための本発明の方法は、好ましくは本発明の3Dプリント装置によって実施される。以下の説明は、本発明の方法の文脈で説明された特徴が3Dプリント装置についても同様に開示され、逆に、3Dプリント装置の文脈で説明された特徴は本発明の方法についても同様に開示されるように理解されるべきである。
【0019】
標準的なレーザー転写印刷プロセス(LIFT=laser induced forward transfer)は、文献に十分に記載されており、先行技術の一部をとなっている。例えば、国際公開2020/156632 A1に記載されている。
【0020】
基板(28)は、好ましくは、キャリアシリンダ(51)の下に配置される。
【0021】
一実施形態では、キャリアシリンダ(51)を構成する印刷モジュール(20)は印刷動作中も固定され、基板(28)は移動可能なように構成される。しかし、この配置は、安定性が低く、印刷体に動的な影響を与えるため、あまり好ましくない。この配置では、印刷モジュール全体が固定されたままであっても、キャリアシリンダ自体は回転可能なままである。
【0022】
印刷材料の正確な局所的位置決めは、好ましくは、基板(28)のZ方向(
図5の上下軸に対応)及びY方向(
図5の左右軸に対応)の移動、並びにレーザー光源(50)によるX方向(
図5の前後軸に対応)の偏向によって実施する。
【0023】
代替の実施形態では、基板(28)が固定され、印刷モジュールは移動可能なように構成される。
【0024】
印刷材料の正確な局所的位置決めは、好ましくは、Z方向及びY方向への印刷モジュール(20)の移動、及びX方向へのレーザー光源(50)による偏向を介して実施される。
【0025】
特に好ましい実施形態では、キャリアシリンダ(51)と、そして基板(28)とを構成する印刷モジュール(20)は、1つ以上の方向(X、Y及び/又はZ)に移動可能であるように構成される。
【0026】
印刷材料の正確な局所的位置決めは、好ましくは、Z方向における基板(28)の移動及びY方向における印刷モジュール(20)の移動、並びにX方向におけるレーザー光源(50)による偏向を介して行われる。この配置は、技術的に最も実施しやすく、したがって、他の配置よりも好まれる。
【0027】
また、1つ以上の部品が1つ以上の方向(X、Y、Z)に可動するように構成され、1つ以上の部品が任意に固定されるように構成された配置を組み合わせた変形も可能である。
【0028】
位置データは、全体コントローラ(14)を介して、位置決め・偏向システムに伝達される。
【0029】
レーザー光源は、好ましくは、レーザー照射(50a)がキャリアシリンダ(51)の両壁を通してキャリアシリンダの下側に塗布された印刷材料に直接向けられるように、キャリアシリンダ(51)の上に配置される。
【0030】
あるいは、レーザー光源(50)はまた、キャリアシリンダに対して任意の位置(内部又は外部)にあってもよい。この場合、レーザー照射は、好ましくは、キャリアシリンダ内の1つ又は複数のミラーによって、一方の壁を通してキャリアシリンダに塗布される印刷材料に照射される。
【0031】
ミラーは、可動ないし非可動に構成することができ、好ましくは可動である。可動ミラーは、レーザー照射を印刷材料の特定の領域に可変的に照射できるという利点を有する。特定の実施形態では、キャリアシリンダ内に少なくとも1つの可動ミラーが存在する。
【0032】
キャリアシリンダ(51)は、好ましくは50mm~300mmの範囲の外径を有し、より好ましくは70mm~150mmの範囲、特に好ましくは80mm~120mmの範囲にある。
【0033】
キャリアシリンダ(51)は、中実の構成としてもよいし、中空の構成としてもよい。キャリアシリンダ(51)は、好ましくは、中空構成である。その場合、キャリアシリンダ(51)の厚み、好ましくは1mm~20mmの範囲であり、より好ましくは3mm~15mmの範囲であり、特に好ましくは6mm~12mmの範囲である。
【0034】
キャリアシリンダ(51)の長さは、好ましくは20mm~600mmの範囲であり、より好ましくは100mm~400mmであり、特に好ましくは150mm~300mmの範囲である。
【0035】
キャリアシリンダ(51)の幾何学的寸法のばらつきの許容範囲は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは10μm以下の範囲である。
【0036】
キャリアシリンダ(51)の表面粗さ(Ra)は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(例えば、キーエンス社製VK-X1000)により測定して、好ましくは10μm以下、より好ましくは100nm以下とする。
【0037】
表面は好ましくは研磨され、所望により反射防止コーティングが施されることもある。
【0038】
キャリアシリンダ(51)に塗布される印刷材料層(54)の厚さは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは10μm~500μmであり、特に好ましくは50μm~150μmである。
【0039】
キャリアシリンダ(51)と基板(28)との距離h(
図5参照)は、好ましくは20μm~600μmであり、より好ましくは80μm~400μm、特に好ましくは100μm~200μmの範囲にある。
【0040】
公知のLIFT法の実施において、その多くは、印刷材料とキャリアシステムとの界面へのレーザー照射の焦点合わせに言及されている。シリコーン組成物を用いた実施では、レーザー焦点(50b)の位置がキャリアシリンダ内で、印刷材料とキャリアシリンダとの間の界面の上にあることで、より良好な印刷画像が得られる。ここでの焦点位置は、キャリアシリンダ/印刷材料界面の上方で数マイクロメートルから数ミリメートルの範囲にある。レーザー照射を界面上、界面内、界面下に集光すると、最初は剥離が生じるが、続いてターゲット表面にかなりの熱を加えることなり、場合によっては、塗布した印刷材料(58)の焼き付きや熱劣化が生じる。
【0041】
レーザー照射の焦点は、好ましくは、印刷材料とキャリアシリンダとの間の界面の上方で、0.01mm~10mm、好ましくは0.1mm~5mm、特に好ましくは1mm~3mmの範囲内のキャリアシリンダ内にあるように選択される。
【0042】
標準的なレーザー光源は、例えばNd:YAGレーザー(ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)で、NIR(近赤外線)領域のレーザー光を放射する。これらの波長は、不透明な媒体に適用するため多くのレーザーシステムで使用される。ここでの利点は、キャリアシリンダにガラスや石英ガラスなどのキャリア材料を使用するである。欠点は、透明なシリコーンエラストマーに、カーボンブラック、グラファイト、CNTなどの吸収体を添加する必要があることである。電気的に非導電性の吸収剤は、例えばドイツのFEW Chemicals GmbHから市販されている。
【0043】
特定の好ましい実施形態において、レーザーによる照射は、MIR(中赤外領域)において効果的に行われる。ここで適切なレーザー光源は、8~12μm、好ましくは10.6μmの波長範囲内にある(CO2レーザー)。この具体的な構成では、透明なシリコーンエラストマーや可変支持体は、吸収体を追加することなく使用することができる。しかし、技術的には、キャリアシリンダは、対応する波長に対して光学的に透明であることが好ましい。ここでは、波長10.6μmのZnSeガラス(zinc selenide)を優先的に使用する。特に、界面には反射防止膜を使用することが好ましい。これらは、例えば、LASER COMPONENTS GmbH(ドイツ)から入手可能である。
【0044】
キャリアシリンダの材料は、好ましくは、ガラス、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ZnSe、ZnS、BaF2、CaF2、Ge、KBr、NaCl、MgF2、LiF及びSiからなる群から選ばれる。
【0045】
しかし、ここでは、キャリアシリンダの材料としてシリコンを使用することが特に好ましい。特に好ましくは、単結晶形態の超高純度シリコンを使用することであり、好ましくは格子配列が規定されているシリコンである。特に好ましいのは、1000Ω・cmを超える比抵抗を有するゾーンメルト法(フロートゾーン法)により製造されたシリコンである。このような超高純度シリコンは、例えば、ドイツのWacker Chemie AGから入手可能である。単結晶シリコンは、例えば、ドイツのSiltronic AGから入手可能である。
【0046】
硬化方法は、印刷材料に応じて選択する必要がある。硬化は、好ましくは、熱、電磁放射線及び/又は水分の供給によって行われる。特に、シリコーン組成物を使用する場合には、電磁放射線、例えばIR、UV及び/又はUV-VIS放射線による硬化が特に好ましい。印刷材料としての熱可塑性プラスチックの場合、冷却による硬化も可能である。
【0047】
3Dプリント装置は、好ましくは、印刷材料を硬化させるように設定された少なくとも1つの硬化モジュールを含む。
【0048】
また、レーザー光源のレーザー光を介して印刷材料を硬化させることもできる。
【0049】
また、印刷材料の部分的な初期硬化など、後の修正に対応できるよう、異なる硬化方法を選択することもできる。
【0050】
また、個々の印刷材料は、異なる方法で硬化させてもよい。
【0051】
さらなる実施形態においては、印刷後に印刷体を機械的に伸縮させながら未硬化の印刷材料の硬化を行ってもよい。
【0052】
この場合、未硬化の印刷材料の領域を介して電気的接触が行われ、その適用後に硬化が行われる。
【0053】
強誘電体ポリフッ化ビニリデン(PDF)膜の製造から、電界や機械的変形による改質の方法と例は、当業者に知られている。
【0054】
硬化はまた、高エネルギー放射線、例えば電子ビーム又はコバルト60放射線を用いて効果的に行うことができる。電子ビーム硬化の多数の方法は、先行技術で知られている。
【0055】
好ましい実施形態においては、連続ベルト(9)が基板上に移動可能に配置されている。工程(b)において、印刷材料は、次に、連続ベルト(9)、その上に配置された外付け部品(7)、又は予め塗布された印刷材料層(58)へ移送される。連続ベルト(9)は、3Dプリント装置の異なるモジュール(印刷モジュール、硬化モジュール、検査ユニットなど)への導入と搬送を可能にする。
【0056】
3Dプリント装置は、好ましくは、少なくとも1つのベルト供給装置(10)と、連続ベルト(9)のためのベルト格納手段(18)とを備える。
【0057】
さらなる実施形態では、3Dプリント装置は、少なくとも1つの配置ユニット(8)及び/又は除去ユニット(13)を備え、これらのユニットは、外付け部品(7)及び/又はプリント物体(12)を基板(28)上又は連続ベルト(9)上に配置するため、及び/又はそれらを基板(28)又は連続ベルト(9)から除去するために設定される。
【0058】
連続ベルトによる連続的な方法の代替として、本方法はバッチ式に実施することも可能である。これは、印刷されるべき、印刷された部品を手動で位置決めしたり、取り除いたりする。
【0059】
特に、シリコーン組成物を使用する場合、帯電の定義と静電界の追加印加による拡張が有利であることが分かっている(EF LIFT = electric field laser-induced forward transfer)。ここで達成されるのは、印刷材料とターゲット表面の追加帯電による剥離と位置決めの改善である。EF LIFTの使用は、例えば、国際公開2020/156632 A1に記載されている。
【0060】
したがって、工程(b)の前に、キャリアシリンダに塗布された印刷材料を電位phi_1に帯電させ、基板を電位phi_3に帯電させることが特に好ましい(ここで、phi_1とphi_3とは反対の極性を有する)。以下、phiではなくφという記号を使用する。
【0061】
さらなる実施形態では、外装部品、先に塗布された印刷材料層及び/又は任意の連続ベルトの表面は、電位φ2に追加的に帯電し、ここでφ2及びφ1は反対の極性を有し、φ2は、工程(b)で転写された印刷材料上の電荷の少なくとも一部分が印刷される表面上で中和されるように選択される。
【0062】
この基板は、好ましくは、工程(b)において、連続ベルトを塗布されたキャリアシリンダから特定の距離に固定する可動吸引基板である。
【0063】
印刷されるべき基板、連続ベルトの表面、外添成分の表面及び/又は先に塗布された印刷材料層の表面は、好ましくは、工程(b)の前に、適切であれば電位φ2又はφ3にチャージする前に、予備放電モジュールによって静電的に放電させる。
【0064】
したがって、3Dプリント装置は、キャリアシリンダ、基板の表面及び/又は印刷されるターゲット面(例えば連続ベルト)に適用される印刷材料をそれぞれ独立して特定の電位φにチャージするように設定された少なくとも1つの充放電モジュールを含んでいるのが好ましい。
【0065】
本発明の文脈における「チャージ」という用語は、電位の上昇又は下降を意味すると理解される。また、0Vの電位に充電又は放電することも含まれる。
【0066】
特にシリコーン組成物に対応するイオン化システムは、例えば国際公開2018/072809 A1に記載されている。
【0067】
キャリアシリンダは、好ましくは回転し、回転するキャリアシリンダに、工程(a)で印刷材料からなる層を塗布システムにより塗布し、工程(b)で回転するキャリアシリンダから剥離されなかった印刷材料を除去システムによって除去する。
【0068】
3Dプリント装置は、好ましくは、キャリアシリンダ(51)から剥離されなかったプリント材料を除去するように設定された少なくとも1つの除去システムを備える。
【0069】
ローラー用の塗布及び除去システムは、オフセット印刷及び凹基板印刷の分野から当業者に知られている。そのようなシステムは、例えば、ドイツのハイデルベルガー・ドラックマシーネン社から商業的に入手可能である。
【0070】
別の実施形態では、キャリアシリンダは手動でコーティングされるが、自動コーティングが優先される。
【0071】
3Dプリント装置の特定の実施形態では、キャリアシリンダ(51)、塗布システム(52)、除去システム(53)及び/又は3Dプリント装置の構築空間は、加熱可能及び/又は冷却可能であるように構成される。
【0072】
好ましくは、除去システム(53)により除去された印刷材料は、工程(a)のキャリアシリンダのコーティングのために再利用される。
【0073】
好ましくは、除去システム(53)によって除去された印刷材料は、再利用の前に少なくとも1つの処理ユニット(64)によって処理され、処理操作は、粉砕、フィルタリング、脱気、湿潤、デモイストニング、添加剤の添加、及び印刷材料の物理的及び/又は化学的特性の測定のうちの1以上の工程を備えてもよい。
【0074】
したがって、3Dプリント装置は、好ましくは、除去システム(53)によって除去された印刷材料(54)を再利用するために処理するように設定された少なくとも1つの処理ユニット(64)を備える。
【0075】
印刷材料が2つ以上の成分からなる場合、各成分は、好ましくは、工程(a)の前に、計量ユニット(61、62)から1つ以上の混合システム(63、57)へ供給される。
【0076】
除去システム(53)によって除去された印刷材料(54)は、好ましくは、混合システム(63、67)に混合される。
【0077】
印刷材料の種類や構成は、特に制限を受けるものではない。
【0078】
印刷材料は、好ましくは、印刷材料の全質量を基準として、5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の溶剤を含む。
【0079】
適切な溶媒は先行技術で知られており、商業的に入手可能である。溶媒は、印刷材料の化学組成に応じて選択する必要がある。溶媒は、例えば、水又は水溶液であってもよい。あるいは、溶媒は、例えば、有機溶媒であってもよい。好ましくは、3~20個の炭素原子を有する有機溶媒が挙げられる。溶媒の例としては、脂肪族炭化水素、例えばノナン、デカリン及びドデカン;芳香族炭化水素、例えばメシチレン、キシレン及びトルエン;エステル、例えば酢酸エチル及びブチロラクトン;エーテル、例えばn-ブチルエーテル及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル;ケトン、例えばメチルイソブチルケトン及びメチルペンチルケトン;ならびに前記溶媒の組合せがある。
【0080】
好適な印刷材料としては、例えば、シリコーン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリニトリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノエート、及び前述の物体形成材料の1種以上を含む混合物、溶液、分散物又はコポリマーからなるもののうち、1種又は複数が挙げられる。シリコーン組成物を使用することが優先される。
【0081】
特に好ましくは、架橋性シリコーンエラストマー組成物、シリコーンゲル、シリコーン樹脂、シリコーンオイル及びシリコーンディスパージョンからなる群から少なくとも1つの印刷材料を選択する。
【0082】
更に、印刷材料として1以上の支持体を使用することもでき、この支持体は物体が構築された後に再び取り除かれることになる。
【0083】
使用される物体形成用印刷材料は、原則として、先行技術で知られているシリコーン組成物のいずれでもよい。シリコーン組成物は、好ましくは、その架橋が、レーザー転写印刷に使用されるレーザーによる照射だけでは誘発されないように選択される。
【0084】
例えば、付加架橋型、過酸化架橋型、縮合架橋型、放射線架橋型のシリコーンエラストマー組成物を使用することが可能である。優先順位は、ペルオキシド架橋又は付加架橋の組成物に与えられる。特に好ましいのは、付加架橋型組成物である。
【0085】
シリコーンエラストマー組成物は、1液型又は2液型で配合することができる。シリコーンエラストマー組成物は、熱、UV光及び/又は水分の供給によって架橋される。好適な例としては、以下のシリコーンエラストマー組成物が挙げられ、HTV(付加架橋)、HTV(放射線架橋)、LSR、RTV 2(付加架橋)、RTV 2(縮合架橋)、RTV 1、TPSE(熱可塑性シリコーンエラストマー)、チオール-エン及びシアノアセタミド-架橋系が例示される。
【0086】
最も単純な場合の付加架橋型シリコーン組成物は、
(A)脂肪族炭素-炭素多重結合を有するラジカルを有する少なくとも1種の線状化合物、
(B)Si結合水素原子を有する少なくとも1つの直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、
又は、(A)及び(B)に代えて、又は(A)及び(B)に加えて、(A)及び(B)に加えて、
(C)脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi-結合水素原子を有するSi-C結合ラジカルを有する少なくとも1つの線状オルガノポリシロキサン化合物、及び
(D)少なくとも1つのヒドロシリル化触媒、
を含む。
【0087】
特定の実施形態において、シリコーン組成物は、例えば国際公開2018/177523 A1に記載されているように、フッ素化側基を有するシリコーンエラストマー組成物である。この実施形態では、成分(A)、(B)及び/又は(C)は、好ましくは、フッ素化側基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキシ基及び/又はビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキ基を少なくとも2.5mol%、より好ましくは少なくとも5mol%含む。
【0088】
シリコーン組成物は、1成分型シリコーン組成物であってもよいし、2成分型シリコーン組成物であってもよい。後者の場合、組成物の2つの成分は、任意の組み合わせで任意の成分を含むことができ、一般に、1つの成分が脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合を有する水素及び触媒を同時に含まない、すなわち本質的に成分(A)、(B)及び(D)又は(C)及び(D)を同時に含まないという条件がある。
【0089】
周知のように、組成物に使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は、架橋が可能であるように選択される。例えば、化合物(A)は少なくとも2個の脂肪族不飽和ラジカルを有し、(B)は少なくとも3個のSi結合水素原子を有するか、化合物(A)は少なくとも3個の脂肪族不飽和ラジカルを有し、シロキサン(B)は少なくとも2個のSi結合水素原子を有するか、化合物(A)と(B)の代わりに、脂肪族不飽和ラジカルとSi結合水素原子を上記の比率で有するシロキサン(C)を使用します。また、脂肪族不飽和ラジカルとSi結合水素原子を上記の比率で有する(A)及び(B)と(C)の混合物も可能である。
【0090】
使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及び好ましくは少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、あるいはこれらの混合物であることができる。
【0091】
シリコーンフリー有機化合物(A)としては、例えば、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン・4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルンテン、ビシクロ[2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1.4-ジビニルベンゼン、3-メチル-1,5-ヘプタジエン、3-フェニル-1,5-ヘキサジエン、3-ビニル-1,5-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-4,5-ジエチル-1,7-オクタジエン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリ(ヒドロキシメチル)-プロパントリアクリラート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリルウレア、トリアルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H、3H、5H)-トリオン、ジアリルマロン酸、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポケチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコ)メタクリル酸等が挙げられる。
【0092】
シリコーン組成物は、構成成分(A)として、少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有することが好ましく、ここで、脂肪族不飽和有機ケイ素化合物としては、付加架橋性化合物で日付まで使用されるもののいずれもが使用でき、例えば、ウレアセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステルアミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシラリーレンセグメント及び/又はカルボランセグメント及びエーテル基含有シリコーングラフト共重合体のようなものでよい。
【0093】
使用される脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSi-C結合ラジカルを有する有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは一般式(I)の単位から形成される直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンである。
R4
aR5
bSiO(4-a-b)/2 (I)
(式中、
R4は、同一又は異なり、独立して、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない有機又は無機のラジカルであり、
R5は、同一又は異なり、独立して、少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素多重結合を有する一価の置換又は非置換のSi-C-結合炭化水素ラジカルであり、
a=0、1、2又は3であり
b=0、1、2のいずれかであるが、
a+bの和が3以下であり、1分子あたり少なくとも2個のR5ラジカルが存在することを条件とする。)
【0094】
R4ラジカルは、1価又は多価ラジカルであってよく、ここで、多価ラジカル、例えば2価、3価及び4価のラジカルは、次に、複数、例えば2、3又は4個の、式(I)のシロキシ単位を互いに結合し得る。
【0095】
R4のさらなる例は、一価のラジカルである-F、-Cl、-Br、-OR6、-CN、-SCN、-NCO、及び酸素原子又はC(O)-基によって中断されていてもよいSiC結合の置換又は非置換の炭化水素ラジカル、及び式(I)のように両端にSi結合の二価のラジカルでる。R4ラジカルがSiC結合した置換炭化水素ラジカルからなる場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有ラジカル、シアノラジカル、-OR6、-NR6-、-NR6
2、-NR6-C(O)-NR6
2、-C(O)-NR6
2、-C(O)R6、-C(O)OR6、-SO2-Ph及びC6F5である。ここでR6は、独立して同一又は異なり、水素原子又は1~20個の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルであり、Phは、フェニルラジカルである。
【0096】
R4ラジカルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル等アルキル基、n-ヘキシル基、ヘプチル基などのヘキシル基、ヘプタ基のラジカル、n-ヘプチルラジカル、n-オクチルラジカル等のオクチル基、2,2,4-トリメチルペンチルラジカル等のイソオクチル基、n-ノニルラジカル等のノニル基、n-デシルラジカル等デシル基、n-ドデシルラジカル等のドデシル基、n-オクタデシルラジカル等のオクタデシル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル等のシクロアルキル基、フェニル等のアリール基など、ナフチル、アントリル、フェナントリルラジカル、o-、m-、p-トリルラジカル、キシリルラジカル、エチルフェニルラジカル等のアルカリル基、ベンジルラジカル、α-、β-フェニルエチルラジカル等のアラルキル基が挙げられる。
【0097】
置換R4ラジカルとしては、例えばハロアルキル基であり、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピルラジカル、2,2,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピルラジカル、ヘプタフルオロイソプロピルラジカル、ハロアルキルラジカル、例えばo、m、p-クロロフェニルラジカル、-(CH2)-N(R6)C(O)NR6
2、-(CH2)n-C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)R6、-(CH2)o-C(O)OR6、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)-C(O)-(CH2)pC(O)CH3、-(CH2)-O-CO-R6、-(CH2)-NR6-(CH2)p-NR6
2、-(CH2)-O-(CH2)pCH(OH)CH2OH、-(CH2)o(OCH2CH2)pOR6、-(CH2)o-SO2-Ph及び(CH2)o-O-C6F5、ここでR6及びPhは上記した定義に適合し、o及びpは0から10までの同一又は異なる整数を表す。
【0098】
式(I)のように両端にSi結合した2価のラジカルとしてのR4の例は、水素原子の置換による追加の結合があるという点で、R4ラジカルについて上記した1価の例から派生したものである。そのようなラジカルとしては、-(CH2)-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-CH2-、-C6H4-、-CH(Ph)-CH2-、-C(CF3)2-、-(CH2)o-C6H4-(CH2)o-、-(CH2)o-C6H4-C6H4-(CH2)o-、-(CH2O)p、(CH2CH2O)o、-(CH2)o-Ox-C6H4-SO2-C6H4-Ox-(CH2)o-(xは0又は1を表し、Ph、o及びpは上記の定義を有する)等が挙げられる。
【0099】
R4ラジカルは、好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さず、~18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した任意に置換されたヒドロカルビルラジカル、より好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さず、1~6の炭素原子を有する一価のSiC結合したヒドロカルビルラジカル、特にメチル又はフェニル基である。
【0100】
式(I)のR5ラジカルは、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)しやすい任意の基を含んでいてもよい。
【0101】
R5ラジカルがSiC結合の、置換されたヒドロカルビルラジカルからなる場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノラジカル、及びOR6(R6は上記定義を有する)である。
【0102】
R5ラジカルは、好ましくは、ビニル、アリル、メタリル、1-プロペニル、5-ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、ビニルシクロヘキシル、ジビニルシクロヘキシル、ノルボルネニル、ビニルフェニル及びスチリルラジカル等の2~16個の炭素原子を有するアルケニル及びアルキニル基であり、特に好ましくはビニル、アリル及びヘキシニル基である。
【0103】
構成成分(A)の分子量は、広い範囲、例えば102~106g/molの間で変化してもよい。例えば、構成成分(A)は、1’2-ジビニルテトラメチルジシロキサンのような比較的分子量の小さいアルケニル官能性オリゴシロキサンでもよいが、例えば105g/molの分子量(NMRを用いて決定した数平均)を有する鎖位又は末端にSi結合ビニル基を有する高分子量のポリジメチルシロキサンであってもよい。また、構成成分(A)を形成する分子の構造は固定されておらず、より詳細には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は、線状、環状、分岐状、あるいは樹脂状、網状であってもよい。直鎖状及び環状ポリシロキサンは、好ましくは、式R4
3SiO1/2、R5R4
2SiO1/2、R5R4SiO1/2及びR4
2SiO2/2の単位からなる(R4及びR5は上記定義を有する)。分岐及びネットワーク状のポリシロキサンは、更に三官能性及び/又は四官能性単位を含み、式R4SiO3/2、R5SiO3/2及びSiO4/2のものが好ましい。もちろん、成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物も使用可能であることは言うまでもない。
【0104】
成分(A)として特に好ましいのは、0.01~500000Pa・s、より好ましくは0.1~100000Pa・sの粘度を有するビニル官能性の本質的に線状のポリジオルガノシロキサンである、いずれの粘度も、25℃、コーン基板システム、CP50-2コーン、開角2°、せん断速度1s-1を備えた校正レオメーターによってDIN EN ISO 3219:1994 及び DIN 53019に従って測定される。
【0105】
使用される有機ケイ素化合物(B)は、付加架橋性組成物にもこれまで使用されてきた水素官能性有機ケイ素化合物のいずれであってもよい。
【0106】
使用するSi結合原子を有するオルガノポリシロキサン(B)は、一般式(III)の単位からなる直鎖状、環状又は分岐状のオルガノポリシロキサンが好ましい。
R4
cHdSiO(4-c-d)/2 (III)
(式中、
R4は、上記定義と同じであり、
cは0、1、2又は3であり
dは0、1又は2であるが、
ただし、c+dの合計が3以下であり、1分子あたり少なくとも2個のSi結合を持つ水素原子が存在する。)
【0107】
使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に基づいて、0.04~1.7重量%の範囲でSi結合水素を含む。
【0108】
構成成分(B)の分子量も同様に、広い範囲、例えば102~106g/molの間で変化することができる。例えば、構成成分(B)は、テトラメチルジシロキサンのような比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサンの他、鎖位又は末端にSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサンやSiH基を有するシリコーンレジンであってもよい。
【0109】
また、構成成分(B)を形成する分子の構造は固定されておらず、より詳細には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーであるSiH含有シロキサンの構造は、線状、環状、分枝状、又はその他樹脂状、網状であってもよい。直鎖状及び環状ポリシロキサン(B)は、好ましくは、式R4
3SiO1/2、HR4
2SiO1/2、HR4SiO2/2及びR4
2SiO2/2の単位からなる(ここでR4は上記定義を有する)。分岐及びネットワーク状ポリシロキサンは、更に三官能性及び/又は四官能性の単位を含み、式R4SiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のものが好ましい(ここでR4は上記定義を有する)。
【0110】
もちろん、構成要素(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することできる。特に、構成要素(B)を形成する分子は、義務的なSiH基に加えて、任意に同時に脂肪族不飽和基も含んでいてもよい。特に好ましいのは、低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン、更に高分子量のSiH含有シロキサン、例えばポリ(ヒドロメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロメチル)シロキサン、25℃での粘度が10~20000mPa・sである(粘度は、DIN EN ISO 3219:1994年で測定した粘度及びDIN 53019に準拠し、コーン基板システム、CP50-2コーン、開口角2°、せん断速度1s-1を備えた校正レオメーターによって測定される)、又はメチル基の一部が3,3,3-トリフルオロプロピル又はフェニル基で置き換えられた類似のSiH含有化合物がある。
【0111】
構成成分(B)は、架橋性シリコーン組成物中に、SiH基と(A)由来の脂肪族不飽和基とのモル比が0.1~20、より好ましくは0.3~2.0となるような量で存在することが好ましい。
【0112】
使用した成分(A)、(B)は、市販品又は標準的な方法で製造できる。
【0113】
シリコーン組成物は、成分(A)及び(B)ではなく、脂肪族炭素-炭素多重結合とSi結合水素原子を同時に含むオルガノポリシロキサン(C)を含有することができる。また、シリコーン組成物が、3成分(A)、(B)及び(C)の全てを含有することも可能である。
【0114】
シロキサン(C)を使用する場合、好ましくは一般式(IV)、(V)及び(VI)の単位で構成される。
R4
fSiO4/2 (IV)
R4
gR5SiO3-g/2 (V)
R4
hHSiO3-h/2 (VI)
(式中、
R4及びR5は、上記の定義と同様であり、
f=0,1,2,3のいずれかであり、
g=0、1又は2であり、
h=0、1、2のいずれかであるが、
1分子あたり少なくとも2個のR5ラジカルと少なくとも2個のSi結合水素原子が存在することを条件とする)
【0115】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、MP樹脂と呼ばれるSO4/2、R4
3SiO1/2、R4
2R5SiO1/2及びR4
2HSiO1/2単位からなるものであり、これらの樹脂は更にR4SiO3/2とR4
2SiO単位とを含むことができる(R4及びR5は上記定義したとおりである)。R4
2R5SiO1/2、R4
2SiO及びR4HSiO単位から本質的になる線状のオルガノポリシロカンも挙げられる。
【0116】
オルガノポリシロキサン(C)は、好ましくは0.01~500000Pa・s、より好ましくは0.1~100000Pa・sの平均粘度を有し、いずれの場合も粘度は25℃で、コーン基板システム、CP50-2コーン、開角2°、せん断速度1s-1を備えた校正レオメーターによってDIN EN ISO 3219: 1994及びDIN 53019に従って測定される。
オルガノポリシロキサン(C)は、市販されているか、標準的な方法で製造することができる。
【0117】
付加架橋型シリコーン組成物は、
・それぞれの場合において、少なくとも1つの化合物(A)、(B)及び(D)である、
・各場合に少なくとも1つの化合物(C)及び(D)である、及び
・それぞれの場合において、少なくとも1つの化合物(A)、(B)、(C)及び(D)である、
から選択することができる。ここで、
(A)は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有するラジカルを少なくとも2つ含む有機化合物又は有機ケイ素化合物である、
(B)は、少なくとも2個のSi結合水素原子を含む有機ケイ素化合物である、
(C)は、脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSi-C結合ラジカルとSi-結合水素原子を含む有機ケイ素化合物であり、
(D)は、ヒドロシリル化触媒である。
【0118】
シリコーン組成物は、シリコーン組成物の全質量を基準として、(A)を通常30~95重量%、好ましくは30~80重量%、より好ましくは40~70重量%含有する。
【0119】
シリコーン組成物は、シリコーン組成物の全質量を基準として、(B)を通常0.1~60重量%、好ましくは0.5~50重量%、より好ましくは1~30重量%含む。
【0120】
シリコーン組成物が成分(C)を含む場合、シリコーン組成物の全質量を基準として、製剤中に(C)が通常30~95重量%、好ましくは30~80重量%、より好ましくは40~70重量%存在することになる。
【0121】
成分(D)の配合量は、成分の総重量に応じて、白金族金属の0.1~1000ppm、0.5~100ppm又は1~25ppmとすることができる。
【0122】
シリコーン組成物中に存在する全ての成分の量は、ここでは、シリコーン組成物の全質量を基準として、その合計が100重量%を超えないように選択される。
【0123】
使用されるヒドロシリル化触媒(D)は、当該技術分野で知られている触媒のいずれであってもよい。成分(D)は、白金族金属、例えば白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム、有機金属化合物又はそれらの組合せであってよい。成分(D)の例としては、ヘキサクロロ白金(IV)酸、白金ジクロリド、白金アセチルアセトナートなどの化合物や、マトリックス又はコアシェル構造でカプセル化された前記化合物の錯体などが挙げられる。オルガノポリシロキサンの低分子化された白金錯体としては、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体などが挙げられる。更に、白金ホスファイト錯体、白金ホスフィン錯体、アルキル白金錯体などが挙げられる。これらの化合物は、樹脂マトリックスに封入することができる。
【0124】
成分(D)の濃度は、記載された方法で必要とされる熱を発生させるために、接触時に成分(A)と(B)のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分である。成分(D)の量は、成分の総重量に対して、白金族金属の0.1~1000ppm、0.5~100ppm又は1~25ppmの間であってよい。白金族金属の成分が1ppm未満であると、硬化速度が低くなる場合がある。白金族金属を100ppm以上使用すると、不経済であるか、又は接着剤製剤の安定性を低下させる可能性がある。
【0125】
シリコーン組成物は、好ましくは、一般式(VII)の白金錯体を含有する。
R3
3Pt{CpR4
5-r-t[(CR2)nSiR1
oR2
p]t[SiR7
sR8
3-s]r} (VII)
(式中、
Cpはシクロペンタジエニルラジカルを意味し、
nは1~8の整数であり、
oは0、1、2又は3であり。
pは0、1、2又は3であるが、o+p=3であり、
rは1、2、3、4又は5であり、好ましくは1、2又は3、より好ましくは1又は2、特に1であり、
tは0、1、2、3又は4、好ましくは0又は1、より好ましくは1であるが、r+t≦5、好ましくは3であり、
sは0、1又は2であり、好ましくは2であり、
Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は一価の非置換又は置換のヒドロカルビルラジカルであり、
R1は、同一でも異なっていてもよく、ヘテロ原子で中断されていてもよい一価の非置換又は置換のヒドロカルビルラジカルであり、
R2は同一でも異なっていてもよく、加水分解性基又は酸素結合性シロキシラジカルであり、
R7は同一でも異なっていてもよく、ヘテロ原子で中断されていてもよい一価の非置換又は置換された脂肪族飽和ヒドロカルビルラジカル、又は酸素結合したシロキシラジカルであり、
R8は、同一でも異なっていてもよく、脂肪族不飽和の任意に置換されたラジカルを表し、
R3は同一でも異なっていてもよく、一価の非置換又は置換された、脂肪族飽和ヒドロカルビルラジカルであり、
R4は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、SiC結合シリルラジカル、又はヘテロ原子で中断されていてもよい非置換又は置換ヒドロカルビルラジカルである。
【0126】
このような式(VII)の白金錯体の例としては、
トリメチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)トリメチル[((2-メチルアリル)ジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(2-トリメトキシシリル)エチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV).トリメチル[(3-トリメトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-ジメトキシメチルシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]-プラチナ(IV)、
トリメチル[(4-トリメトキシシリル)ブチル-(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(2-トリメトキシシリル)-1-メチルエチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]-プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-トリメトキシシリル)-2-メチル-2-プロピル(アリルジムチルシリル)シクロペンタジエニル]-プラチナ(IV)、
トリメチル[ビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[ビス(2-メチルアリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(トリメトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
トリメチル[(2-トリメトキシシリル)エチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-トリメトキシシリル)プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(4-トリメトキシシリル)ブチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(2-トリメトキシシリル)-1-メチル-エチルビス(アリルジムチルシリル)シクロペンタジエニル]-プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-トリメトキシシリル)-2-メチル-2-プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]-プラチナ(IV)、
トリメチル[トリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV).
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(トリアセトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-ビストリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル](アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル-プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-トリエトキシシリル)プロピル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(3-トリエトキシシリル)プロピルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリメチル[(トリエトキシシリル)メチルトリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリエチル[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリス(トリメチルシリルメチル)[(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチル(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチルビス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]プラチナ(IV)、
トリエチル[トリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、及び
トリエチル[(トリメトキシシリル)メチルトリス(アリルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]白金(IV)、
等が挙げられる。これらの白金錯体は、例えば、国際公開2016/030325 A1に記載されている。
【0127】
さらなる実施形態では、シリコーン組成物は、過酸化物架橋性シリコーン材料である。これらのシリコーン材料は、(成分Dとして)有機過酸化物の添加によって有機的に架橋されることができる。その場合、シリコーン組成物は、少なくとも成分(A)及び(D)からなる。この場合、シリコーンゴム化合物中の成分(D)の含有量は、好ましくは0.1重量%以上20重量%以下である。成分(D)に使用される架橋剤は、当技術分野で知られている対応する典型的な過酸化物のいずれでもよい。成分(D)の例は、ジアルキルパーオキサイド、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである、 α-ヒドロキシペルオキシ-α’-ヒドロキシジシクロヘキシルペルオキシド、3,6-ジシクロヘキシリデン-1,2,4,5-テトロキサン、ジ-tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルトリピルパーオキシド、tert-ブチルトリエチル5-メチルパーオキシド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイドやα,α’-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-m/p-ジイソプロピルベンゼンなどのアルキルアラルキルパーオキサイド、アルキルアシルパーオキサイド等のt-ブチルパーベンゾエート、及びジベンゾイルパーオキサイド、ビス(2-メチルベンゾイルパーオキサイド)、ビス(4-メチルベンゾイルパーオキサイド)及びビス(2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド)等のジアシルパーオキサイドが挙げられる。ビニルに特化した過酸化物を優先的に使用し、その最も重要な代表はジアルキル及びジアラルキル過酸化物である。
【0128】
特に好ましくは、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンとジクミルペルオキシドを使用する。個々の過酸化物又は異なる過酸化物の混合物を使用することが可能である。構成成分(D)中の過酸化架橋性シリコーンゴム化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の間である。したがって、架橋剤(D)が0.1重量%~5.0重量%で存在し、シリコーン組成物の全質量を基準として、それぞれの場合に有機過酸化物又は有機過酸化物の混合物であることを特徴とする架橋性シリコーンゴム化合物が好ましい。
【0129】
組成物は、任意に、過酸化物及び付加架橋性組成物の製造のために今日まで使用されてもいるすべてのさらなる添加剤を含むことができる。
【0130】
これらの添加剤はまた、当該技術分野で知られている縮合架橋型シリコーンエラストマー組成物のいずれかに添加されている可能性がある。この架橋の態様のより詳細な説明は、例えば、欧州特許出願0787766 A1に記載されている。
【0131】
任意成分の例としては、(E)フィラーなどが挙げられる。
【0132】
シリコーン組成物の成分として使用できる補強フィラーの例は、少なくとも50m2/gのBET表面積を有するヒュームド又は沈殿シリカ、又はネスブラック及びアセチレンブラックなどのカーボンブラック及び活性炭であり、少なくとも50m2/gのBET表面積を有するヒュームド及び沈殿シリカに優先権が付与される。言及されたシリカフィラーは、親水性を有するか、又は公知の方法によって疎水化されることができる。架橋性組成物中の積極的な補強フィラーの含有量は、シリコーン組成物の全質量を基準として、0重量%~70重量%、好ましくは0重量%~50重量%の範囲にある。
【0133】
より好ましくは、架橋性シリコーンゴムコンパウンドは、フィラー(E)が表面処理されていることを特徴とする。表面処理は、先行技術で知られている微細に分割されたフィラーを疎水化する方法によって達成される。疎水化は、例えば、ポリオルガノシロキサンへの組み込みの前に、又はその他、in situ法によりポリオルガノシロキサンの存在下で行うことができる。いずれの方法も、バッチプロセス又は連続的に実施することができる。好ましく使用される疎水化剤は、フィラー表面と反応して共有結合を形成することができるか、又はフィラー表面に永久的に物理吸着することができる有機ケイ素化合物である。疎水化剤の例は、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシランなどのアルキルクロロシラン類である、 オクタデシルトリクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロラシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;トリメチルシラノール;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ジオルガノ(ポリ)シロキサン;トリメチルシロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン、シラノール又はアルコキシ末端基を有するジメチルポリシロキサンなどの線形ジオルガノポリシロキサン;ジシラザン類、例えばヘキサアルキルジシラザン、特にヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシラザン;環状ジメチルシラザン、例えばヘキサメチルシクロトリスシラザンが挙げられる。また、更に上に規定された疎水化剤の混合物を使用することも可能である。疎水化を促進するために、別の選択肢は、触媒的に活性な添加剤、例えばアミン、金属水酸化物及び水を加えることである。
【0134】
疎水化は、例えば、1つの疎水化剤又は2つ以上の疎水化剤の混合物を用いて1段階で行うことができるが、1つ以上の疎水化剤を多段階で用いることもできる。
【0135】
好ましい充填剤(E)は、表面処理の結果、シリコーン組成物の全質量を基準として、少なくとも0.01重量%~20重量%以下、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%の炭素含有量を有する。特に好ましいのは、充填剤(E)が、充填剤の全質量に基づいて、0.01重量%~2重量%のSi-結合性脂肪族不飽和基を有する表面処理シリカであることを特徴とする架橋性シリコーンゴム化合物である。例えば、Si結合したビニル基などである。シリコーンゴムコンパウンドにおいて、構成成分(E)は、好ましくは単一の微細分割フィラーとして、又は同様に好ましくは複数の微細分割フィラーの混合物として使用される。
【0136】
シリコーン組成物は、任意に、構成成分として、シリコーン組成物の全質量を基準として、最大70重量%、好ましくは0.0001%~40重量%の割合で、さらなる添加物を含有し得る。これらの添加物は、例えば、不活性充填剤、シロキサン(A)、(B)及び(C)以外の樹脂性ポリオルガノシロキサン、補強及び非補強充填剤、殺菌剤、香料、レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤及び電気特性に影響を与える薬剤、分散助剤、溶剤、付着促進剤、顔料、色素、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、粉砕石英、珪藻土、粘土、チョーク、リトポン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、カルボン酸の金属塩、金属粉、繊維、ガラス繊維などのナノファイバー、ポリマー繊維、ポリマー粉末、金属粉、染料、顔料などの添加物が挙げられる。
【0137】
これらのフィラーは、更に熱伝導性又は電気伝導性を有することができる。電気伝導性フィラーは、例えば、電気伝導性シリコーン層を製造するために使用され、この層は、センサー、アクチュエーター又は他のEAPシステムにおいて電極層として機能し得る。熱伝導性フィラーの例としては、窒化アルミニウム;酸化アルミニウム;チタン酸バリウム;酸化ベリリウム;窒化ホウ素;ダイヤモンド;グラファイト;酸化マグネシウム;微粒子金属、例えば銅、金、ニッケル、銀;炭化ケイ素;炭化タングステン;酸化亜鉛及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。熱伝導性フィラーは先行技術で知られており、商業的に入手可能である。例えば、CB-A20S及びAl-43-Meは、昭和電工から市販されている異なる粒子サイズのアルミナフィラーであり、AA-04、AA-2及びAAl8は、住友化学から市販されているアルミナフィラーである。銀フィラーは、米国マサチューセッツ州アテルボロのMetalor Technologies U.S.A. Corp.から市販されており、窒化ホウ素フィラーは、米国オハイオ州クリーブランドのAdvanced Ceramics Corporationから市販されている。
【0138】
補強用フィラーとしては、シリカや短繊維、例えばケブラー(登録商標)短繊維などが挙げられる。異なる粒径と異なる粒度分布を有するフィラーを組み合わせて使用することが可能である。
【0139】
また、シリコーン組成物は、1種又は2種以上の任意成分を含有してもよい。任意成分の例としては、(F)1種以上の溶媒、(G)1種以上の抑制剤などが挙げられる。
【0140】
シリコーン組成物は、更に任意に、(F)1種以上の溶媒を含むことができる。しかし、溶媒がシステム全体に悪影響を及ぼさないことを保証する必要がある。好適な溶媒は、当該技術分野で知られており、商業的に入手可能である。溶媒は、例えば、3~20個の炭素原子を有する有機溶媒であってよい。溶媒の例としては、脂肪族炭化水素、例えばノナン、デカリン及びドデカン;芳香族炭化水素、例えばメシチレン、キシレン及びトルエン;エステル、例えば酢酸エチル及びブチロラクトン;エーテル類、例えばn-ブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ケトン類、例えばメチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、シリコーンオイル、例えば線状、分岐状、環状のポリジメチルシロキサン、及びこれらの溶剤の組み合わせが挙げられる。接着剤製剤中の特定の溶剤の最適な濃度は、日常的な試験で容易に決定することができる。化合物の重量に応じて、溶媒の量は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0重量%~95重量%、又は1重量%~95重量%であってよい。
【0141】
阻害剤(G)及び安定剤は、シリコーン組成物の処理時間、開始温度及び架橋速度を目標通りに制御する役割を果たす。これらの阻害剤及び安定剤は、付加架橋組成物の分野では非常によく知られている。一般に使用される阻害剤の例は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールなどのアセチレン性アルコール、3-メチル-1-ドデシン-3-オール、1,3などのポリメチルビニコロシロキサンです、5,7-テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサンなどのメチルビニル-SiO1/2基及び/又はR2ビニルSiO1/2端基を有する低分子シリコーン油、トリアルキルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸アルキル、フマル酸ジアリル、フマル酸ジエチルなどのフマル酸アルキル、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、有機過酸化物、有機硫黄酸化物、有機アミン、ジアミン、アミド、ホスフィン、ホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン、オキシム等が挙げられる。これら添加される阻害剤(E)の効果は、その化学構造によって異なるため、濃度を個別に決定する必要がある。インヒビター及びインヒビター混合物は、好ましくは、混合物の総重量に基づいて0.00001%~5%、好ましくは0.00005%~2%、より好ましくは0.0001%~1%の割合で加えられる。
【0142】
シリコーン組成物の全成分が混合された後、1s-1のせん断速度での動的粘度は、10mPa・s~1000Pa・s、好ましくは100mPa・s~100Pa・s、より好ましくは200mPa・s~50Pa・sである(粘度は、コーン基板システム、25℃で開角2°、1s-1のせん断速度を備えたCP50-2コーンによる校正レオメーターによってDIN EN ISO 3219: 1994及びDIN 53019に従って測定される)。
適切な測定器の例としては、Anton Paar GmbH, Austriaから入手可能なMCR302レオメーターが挙げられる(ギャップ幅105μm)。
【0143】
本発明の架橋性シリコーン組成物は、容易に入手可能な出発材料を用いて簡単な方法で製造することができ、したがって経済的に実行可能であるという利点を有する。架橋性組成物は、1成分製剤として25℃及び常圧で良好な貯蔵安定性を有し、高温でのみ急速に架橋するというさらなる利点を有する。シリコーン組成物は、2成分製剤の場合、2成分が混合された後、25℃及び周囲圧力で長期間にわたって加工可能なまま、すなわち極めて長いポットライフを示し、高温でのみ急速に架橋する架橋性シリコーン組成物をもたらすという利点を有している。
【0144】
市販されているシリコーン組成物の例としては、(材料の粘度によっては、加工性を良くするために溶剤を添加する場合がある)、WACKER Chemie AGの材料であるELASTOSIL(登録商標)Pシリーズ(7010、7600、7613、7161-160、7616-195、7618、7619、7622、7623、7624、7628、7629、7630、7633、7636、7642-220、7670、671、 7676、7682、7683/15、7683/25、7683/47、7683/50、7683/55、7684/60、7685、7686、7687、7688、7700、7710、7720、7731、7742、7770、7707 US、7915など)、ELASTOSIL(登録商標)Mシリーズ(4115、4125、4370、4400、4440、4441、4470、4600、4601、4615、4630、4635、4640、4645、4641、4643、4644、4670、4647、4648、4670)、ELASTOSIL(登録商標)RTシリーズ(601、602、604、607、615、617、619、620、622、623、624、625、626、627、628、629、630、633、646、670、672、675、678、685、他。))、ELASTOSIL(登録商標)SOLARシリーズ(2000、2200、2202、3210など。)、ELASTOSIL(登録商標)LRシリーズ(3003/03,3003/05,3003/10,3003/20,3070/20,3844/20,3846/20,3856/20,3003/30,3004/30,3005/30,3040/30,3044/30,3065/30、3070/30,3071/30,3072/30,3843/30,3844/30,3846/30,3856/30,3003/40,3003/50,3003/60,3003/70,3003/80,3003/85,3004/40,3004/50,3004/60,3004/70,3005/40,3005/50,3005/60,3040/40,3040/50,3040/60,3043/40,3043/50,3043/60,3043/70,3015/70,3023/60,3092/65,3094/60,3065/50,3066/40,3066/60,3066/80,3070/40,3070/50,3070/60,3071/40,3071/50,3071/60,3072/40,3074/60,3076/70,3170/40,3841/50,3842/40,3842/50,3842/60,3842/70,3162等)、ELASTOSIL(登録商標)FLRシリーズ(3900/40、3900/60、3905/40、3905/60等)、ELASTOSIL(登録商標)Rシリーズ、WACKER SILGEL(登録商標)シリーズ(610、611、612、613、616、619など)、SEMICOSIL(登録商標)シリーズ、POWERSIL(登録商標)シリーズ、LUMISIL(登録商標)シリーズ、GENIOMER(登録商標)シリーズ、SILPURAN(登録商標)シリーズ、DEHESIVE(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0145】
また、上記の架橋性シリコーン組成物に加えて、非硬化性シリコーン組成物、例えばシリコーンオイルも追加層の塗布に使用可能である。この場合、ドイツWACKER Chemie AGのWACKER(登録商標)AK SILICONOELシリーズ、POWERSIL(登録商標)FLUID TRシリーズ、SILFAR(登録商標)シリーズが使用可能である。
一般的には、シリコーン系のPSA(感圧接着剤)が使用可能である。
【0146】
異なる用途の場合であっても、支持体又は分離層として非硬化性印刷材料を使用することが有利である。これらの組成物は、その後、すすぎ及び/又は加熱により、印刷体から、又は印刷体から、残留物なしに除去することができる。ここで好適な印刷材料の例は、ポリエチレングリコール(PEG)である。ポリエーテルからなる好適な支持体は、例えば、国際公開2017/020971 A1及び国際公開2018/036640 A1に記載されている。
【0147】
ここでも、ワックス、蜜蝋、ワセリン、パラフィン、樹脂、ゼラチン、及び一般に熱的に溶融可能な塊が代替支持材料となり得る。ここでは、ポリエチレングリコール(PEG)又はワックスを使用することに特に好ましいとされている。ワックスからなる適切な支持体は、例えば、国際公開2018/153467 A1に記載されている。
【0148】
上記のように、架橋機構は自由に選択することができ、また組み合わせることもできる。この文脈において、国際公開93/00405 A1及びPCT出願PCT/EP2020/060378(まだ未公開)は、UV架橋及び湿気架橋の様々な組み合わせを挙げる。ここでの利点は、UVアクセス可能な組成物の架橋と、影付き組成物の後架橋である。これらの積極的な架橋効果は、UV不透過性印刷材料を用いた印刷戦略/印刷方法にとって有利であると考えられる。ここでは、配置された構成要素及び/又は幾何学的形状又はその周辺における印刷材料の影響によってシャドーイングが効果的に行われ、これによってUV架橋が防止されることが可能である。
【0149】
印刷材料のさらなる形態として、水性シリコーンディスパージョンを挙げることができる。
【0150】
好ましくは、工程(b)の前に、基板、連続ベルト、外来成分、又は以前に適用された印刷材料層が、1つ以上のセンサモジュールによって検出され得る。
【0151】
また、工程(b)及び/又は工程(c)の後に、印刷された基板、印刷された連続ベルト及び/又は印刷された外装部品を1つ又は複数のセンサモジュールによって検出することも所望により可能である。
【0152】
したがって、3Dプリント装置は、基板(28)、連続ベルト(9)、外装部品(7)、以前に塗布された印刷材料層又は印刷対象物を検査するように設定された1つ又は複数の検査ユニット(3、5)を備える。
【0153】
本発明の方法又は本発明の装置は、以下の方法を利用することも同様に可能である。
・例えば国際公開2017108208 A1に記載されているような、印刷中の印刷材料の検出又は幾何学的測定、
・例えば国際公開2018014948 A1に記載されているような、印字ヘッドと印字面との間の距離を決定するための共焦点測定装置による高さの測定、
・例えばPCT/EP2019/077812(未公開)に記載されているような、印刷される表面のトポグラフィの決定、及びそれに依存する印刷材料の配置の制御。
【0154】
この場合、後処理は、熱処理、照射、表面コーティング、彫刻、切断、セグメントの分割及び除去、個々の部品の組み立て、洗浄、支持材料の除去のうち1つ又は複数の方法から選択される。
【0155】
したがって、3Dプリント装置は、プリント後のプリント対象物を後処理するように設定された少なくとも1つの後処理装置(4、6)を備える。
【0156】
好ましい実施形態では、3Dプリント装置は、例えばピックアンドプレースユニット、プリントユニット、硬化ユニット、処理ユニット、検査ユニット、後処理ユニット、及び/又は除去ユニットなど、上記及び図を参照して詳細に説明したユニットの1つ以上を含む複合生産工場システムである。
【0157】
対象物は、例えば、国際公開2010015547 A1に記載されているように、好ましくは、熱処理される。
【0158】
特定の実施形態では、印刷材料は、1つ以上のセグメントが物体の1つ以上の印刷面に形成されるように適用され、その各々は物体形成材料又は支持材料のみからなる。
【0159】
また、特定の特性を持つ一定の混合比を得るために、異なる印刷材料を互いに印刷することも可能です(例えば、ショアA硬度20の材料をショアA硬度60の材料と混合して、ショアA硬度40の材料を得ることができる)。
【0160】
物体形成材料である印刷材料は、例えば、物体の1つ以上の印刷面内に1つ以上のセグメントが形成され、各セグメントが2つ以上の物体形成材料の混合物からなり、各セグメントにおいて物体形成材料の混合比が一定であるように適用することができる。
【0161】
更に、硬度勾配(例えばShoreA 20からShoreA 60)、導電勾配(例えば電気伝導性から電気非伝導性)、磁気勾配(例えば磁気から非磁性)などの勾配が得られるように印刷材料を互いに印刷することもできる。
【0162】
更に、物体の1つ以上の印刷面内に1つ以上のセグメントが形成されるように、個々の印刷材料の印刷ボクセルを適用することが可能であり、各セグメントは2つ以上の物体形成印刷材料の混合物からなり、物体形成印刷材料の混合比率は各セグメントにおいて勾配を受ける。
【0163】
このようなセグメント及びグラデーションの説明は、例えば、国際公開2019/063094 A1に開示されている。
【0164】
以下、添付の図を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0165】
複合製造プラントシステムのスキームを
図1に示す。印刷されるブランク/外装部品(7)は、自動ピックアンドプレースユニット(8)により連続ベルト(9)上に正確に位置決めされ、連続ベルト(9)によりプラントアセンブリに導入される。連続ベルトは、ここでベルト収納手段/ベルトフィーダー(10)から引き出され、機械的な張力を保った状態で保管される。3Dプリントユニット(2)に導入された後、プリントされるブランク/外付け部品(7)がプリントされ、及び/又は新しい個々の3D部品がプリントされる。
【0166】
この印刷工程を経て、製造された部品は、連続ベルト(9)によって検査装置(3)へ搬送される。ここで各種測定が行われ、部品のチェックが行われる。
【0167】
検査装置(3)でチェックされた後、ベルトコンベア(9)で後処理装置(4)に搬送される。ここでは、様々な後処理を行うことができる。好ましくは、後架橋処理と熱処理である。
【0168】
その後、ベルトコンベア(9)で第2検査ユニット(5)に搬送され、再度測定される。その後、(9)によって最終処理装置(6)に移送される。
【0169】
最終処理装置(6)では、システムから排出される前のすべての物理的な最後のステップが実行される。この場合、以下のステップを実施することが好ましい。
-熱処理、支持体の離型
-レーザ、超音波ナイフによる部品の切断
-刻印、印刷材料の番号
-濯ぎ
-表面処理(プラズマ処理)
【0170】
すべての印刷部品(11)及び/又は新たに作成された3D印刷体(12)が排出された後、自動除去ユニット(13)を使用して部品を除去する。システム終了後、連続ベルトはベルト収納手段(18)に回収される。
【0171】
複合製造システム(1)に存在する全てのユニット(8、2、3、4、5、6、13)は、データインターフェース/データ接続(15)を介して全体コントローラ/データ処理システム(14)に接続される。すべてのプロセスデータ、印刷データ、測定データ及び印刷ジオメトリ等は、異なる連結及びデータプロセスに従って、データ処理システム(14)において処理される。データベースシステム(16)は、品質管理及び製品の文書化のために、関連するすべてのプロセスデータ及び測定データを保存する。すべてのデータとプロセスパラメータは、入力システム(17)を介して入力される。
【0172】
図2は、プリントユニット(2)の斜視図を描いている。ロック(25)を用いて、ブランク(7)を有する連続ベルト(9)は、プリントユニット(2)に供給され、プリントユニット(2)から除去される。予備放電モジュール(29)により、導入された全ての部品とコンベアベルト(9)は、印刷前に静電放電される。印刷モジュール(20)により、プリント材料及び/又は支持材料が配置される。硬化モジュール(22)により、印刷材料の架橋が行われる。静電帯電/放電モジュール(23)により、配置された材料、印刷されるブランク(本体)(7)、印刷されたブランク(本体)(11)及び3D印刷された個々の部品(12)が、静電的に規定された方法で電位φ2まで帯電される。センサーモジュール(21)を使用して、幾何学的及び物理的データが検出され、プリントプロセスに使用される。すべてのモジュールは、移動軸Y(24)によってステージ(27)上をY方向に移動される。ステージ(27)は、連続ベルト(9)を吸引基板(28)で固定する。ステージ(27)は移動軸Z(26)を介してZ方向に正確に移動され、印刷されるターゲット面(59)からのそれぞれの距離が確定される。ここでの調整精度は、1mm未満の範囲内の印刷精度及び層厚に対応する。好ましくは0.1mm未満、より好ましくは0.01mm未満である。
【0173】
図3は、検査ユニット(3)の斜視図を示している。ロック(25)を用いて、印刷されたブランク(11)と3D印刷された個別部品(12)を有する連続ベルト(9)は、検査ユニットに供給され、検査ユニットから取り除かれる。印刷されたブランク(11)と3D印刷された個々の部品(12)は、センサーモジュール(30)を使って測定されます。連続ベルト(9)は、ここで再び固定され、接触板(34)と移動軸Z(33)の真空板(35)を用いて位置調整及び平面度に関して調整される。分離のさらなる調整とX方向(ページの平面内)の移動のために、センサーモジュール(30)の移動軸X、Z(32)が使用される。異なるZ移動ユニットを使用する利点は、異なるタスクのために異なる精度及び異なる速度の軸を使用することである。
【0174】
センサモジュール(30)は、可変の構成であってよい。それは、様々な光学的距離測定手段、レーザー三角測量センサー、共焦点センサー、超音波、IR測定技術、偏光測定技術、光学スペクトロメーター及び/又は電磁気測定技術、例えば渦電流センサー又は同軸センサーを含んでもよい。
【0175】
検査装置で以下のパラメータを決定することが好ましい。
-成分測定(共焦点、レーザー三角法、超音波法)
-導電率(渦電流、電磁気測定法)
-硬化状態(透過法によるIRスペクトロメトリー)
【0176】
2つの検査ユニット(3)、(4)は同等の構造であり、同一又は異なる特性を判定することができる。
【0177】
図4は、後処理ユニット(4)の斜視図を示している。ロック(25)を用いて、印刷されたブランク(11)及び3D印刷された個々の部品(12)を有する連続ベルト(9)は、後処理ユニットに供給され、後処理ユニットから取り除かれる。2つの硬化モジュール(40)、(44)を使って、本体(11)、(12)の後処理が行われる。上部後処理ユニット(40)の位置決めは、ここでは移動軸Y(41)と移動軸Z(42)により行われる。下部後処理ユニット(44)の位置決めは、移動軸Z(45)により行われる。センサーモジュール(43)により、プロセスパラメータ(例えば表面温度)が非接触で測定される。
後処理は、印刷材料の完全な架橋を実現するために行われる。
【0178】
ここで、後処理モジュールは、例えば、以下のように装備することができる。
-熱
-照射(例:UV、UVレーザー、NIR/MIRレーザー)
-電子線
【0179】
処理時間、処理方法、処理モジュールは、プリント素材やプリント素材組成によって異なる。
【0180】
図5は、印刷モジュール(20)を断面で示した図である。レーザー光源(50)によって、印刷材料層/電極材料層(54)は、ここでは放射線透過性のキャリアシリンダ(51)からレーザー照射(50a)によって切り離される。剥離は、剥離領域(55)において行われる。レーザー照射(50a)はここで加熱を誘発し、印刷材料/電極材料(54)の少なくとも一つの成分の蒸発/ガス形成/熱膨張/を引き起こす。標準的なLIFTプロセスの場合、印刷材料層(54)の剥離は、剥離した印刷材料(57)をターゲット表面(59)上に配置するのに十分である。キャリアシリンダ(51)の反時計回りの回転により、印刷材料(54)の正確な層が塗布システム(52)により塗布される。レーザー(51)による剥離の後、残りの印刷材料と剥離領域(56)は除去システム(53)に移動し、ここですべての残留量の印刷材料がキャリアシリンダ(51)から除去される。ここで除去された材料は、再加工され再利用される。
【0181】
シリコーンエラストマーによるLIFTプロセスの特定の場合、この剥離及び位置決めの改善は、印刷材料(54)及びターゲット表面領域(59)の追加充電によって達成することができる。これは、プリント材料(54)を電位(φ1)で、ターゲット表面を電位(φ2)で、真空基板(28)を電位(φ3)でチャージすることを含む。ここで、電位の極性は、逆の電荷となるように選択する。互いに距離(h)のある層の電荷は、電界(E)を生じさせる。この電界は、プリント材料(54)に対して、ターゲット表面(59)の方向へ力を及ぼす。したがって、剥離した印刷材料(57)は、静電気力によって加速され、ターゲット表面(59)の方向に移動する。剥離された印刷材料(57)は、剥離時及び衝撃時にかなりの機械的剪断力を受ける。有利な材料組成(剪断減粘性シリコーン)は、連続的な印刷材料層(58)の形成において、ここで有利な効果を発揮する。
剪断薄膜化シリコーン組成物は、例えば、国際公開2017/081028A1、国際公開2017/089496 A1及び国際公開2017/121733 A1に記載されている。更に、配置された印刷材料(58)に残存する電荷の静電気力は、真空基板(28)の方向に作用する。ターゲット表面(59)の電位(φ2)の表面には、配置されたプリント材料(58)の電荷レベルよりも小さい程度の電荷が存在することが、緩和のために有利である。材料(58)上に残る電荷は、場(E)への影響ができるだけ小さく、しかし印刷材料(58)の緩和が促進又は改善されるように選択されるべきである。
【0182】
公知のLIFT法の多くの実行において、印刷材料(54)とキャリアシステム(51)の界面へのレーザー照射の集束について言及されている。シリコーンを用いた実行では、キャリアの上方に焦点を合わせることで、より良好な印刷画像が得られる。ここでの焦点(50b)は、キャリアシリンダ(51)/印刷材料(54)の界面より数マイクロメートルから数ミリメートルの範囲にある。レーザー照射を界面上、界面内、界面下に集光すると、最初は剥離(55)が生じるが、続いてターゲット表面(59)が更に加熱され、その結果、適用した印刷材料(58)の燃焼や熱変性につながる場合がある。
【0183】
レーザー照射(50a)は、位置決めされた印刷材料を加熱し、点架橋するためにも利用可能である。印刷材料の投与はここではオフにされ、印刷材料層のないキャリアシリンダは純粋に透過性がある。デフォーカスすることで、導入されたエネルギーは印刷面に向けられ、定義された直径で制御された方法で適用される。その結果、別の硬化装置(IR、オーブンなど)が必要ない。
【0184】
更に、制御された電力の導入により、レーザーシステム(50)による架橋だけでなく、多種多様な異なる印刷材料の溶融、融合、焼結、彫刻及び切断を実現できる。このように、ユニット(6)で上述したような硬化とその後のプロセスステップを1つの装置で組み合わせることも可能である。
【0185】
特定の実行において、印刷材料/支持材料は、ワックス又はPEGのような熱的に溶ける材料と一緒に使用される。これには、キャリアシリンダ(51)、塗布システム(52)、除去システム(53)の加熱が必要である。ここで、キャリアシリンダ(51)内に加熱要素があること、及び/又は任意の熱供給システム(例えば、熱キャリアオイル又は熱風)を使用することが可能である。
【0186】
特定の実施形態では、キャリアシリンダ及びプリンタの構築された空間が冷却されることがある。本実施形態の目的は、印刷材料の不要な架橋を可能な限り防止することである。
【0187】
図6は、印刷材料のマテリアルフローを示す図である。供給システム(60)は、新鮮な印刷材料(複数可)を印刷システムに供給する。システム(60)は、A成分とB成分からなる2成分印刷材料1つに対して2つの計量ユニット(61)(62)で構成されている。混合システム(63)は、2つの材料(A、B)を混合し、さらなる混合システム(67)へ供給するために使用される。混合システム(67)は、新しい印刷材料と再処理された印刷材料とを混合する。こうして混合された印刷材料は、プリントヘッド(2)、又は塗布システム(52)へ供給される。リサイクル物処理装置(64)では、除去システム(53)からのリサイクル物が再加工される。処理装置(64)は、機械的(第1)処理装置(65)と第2処理装置(66)とから構成される。機械的な処理は、粉砕及びフィルタリングからなる。第2の処理操作は、脱気、湿潤又は脱湿気、及び任意に印刷材料配合のさらなる構成要素(例えば、溶剤、水、触媒、架橋剤など)の添加からなる。
【0188】
本発明の利点を再度要約すると以下の通りである。
-1つの印刷システムで、異なる特性(例:異なる粘度)及び組成を持つ可変印刷材料の使用が可能。
-1kg/h以上の高い材料スループットが可能。
-高速で機械的に動く要素が少ないため、摩耗が少ない(例えば、噴射方式のようなノズルが不要)。
-塗布システムとレーザーにより、ボクセルサイズと層厚を自在に調整できる。
-固定されたキャリアシリンダの安定した距離調整により、高い印刷品質を実現できる(例えば、フィルムキャリアの扁平化がない)。
-小型シリンダーを使用できるため、機械的公差が小さい。
-レーザー光源のサイズと構造スペースが、上部フリーシリンダー表面での放射線の通過の点で制限されない。
-搬送システム上の印刷材料のクリアエリアが少ない(空気との接触が少ない)。
-高精度(可能なボクセルサイズ)
-オプションの連続ベルトを使用することで、複数の手動操作ステップを省くことができる。
-電子線を任意に使用することで、架橋触媒を使用せずに印刷材料を迅速に架橋することができる。
-硬化/付加用レーザー(50)の使用は、付加製造プロセスにおける新たな自由度を可能にする。これにより、例えば、新しい硬化戦略(点架橋を確立できる)、1つの装置で除去、塗布、硬化を並行して行うことができる。
【実施例】
【0189】
以下に示す実験は、本発明の原理における個々の機能モードの比較を示すために実施したものである。これらの実験は、本発明をよりよく理解するためのものであり、上記で詳述し、図を参照して説明した本発明に関して限定的であると考えるべきではない。
【0190】
LIFT工程は、TROTEC Laser Deutschland GmbHの標準的なレーザーグラビア装置で実施した。ここで採用されたシステムは、デュアルレーザー光源(60W、10.6μm、CO2レーザー;20W、1.06μm、ファイバーレーザー)を備えたSpeedy 100flexx 60/20 シリーズである。印刷材料キャリアは、ドイツ・シルトロニック社の標準的な300mm高抵抗研磨シリコンウェハを使用した。印刷材料のフィルムへの塗布は、スイスのZehntner GmbHのZUA 2000ユニバーサルアプリケータを備えたZAA2300自動フィルムアプリケータを使用して達成した。使用した印刷材料は、ドイツWACKER Chemie AGのRTV-2シリコーンであるELASTOSIL(登録商標)RT 625 A/Bである。
【0191】
<実験1:LIFT法>
ドクターブレードシステムを使用して、厚さ100μm、寸法150x150mmの均質な層をウェハの中央部に片面ずつ塗布しました。ウェハのエッジ部分には、印刷材料がない状態である。印刷する表面として、コーティングされておらず、洗浄されたガラス板をレーザーの切断スペースに挿入した。コーティングされたウェハは、切断側のコーティングされていないガラス板と対向して、200μmの距離でガラス板上に配置される。ここでは、100μmの顕微鏡基板などのスペーサーで距離を調整する。レーザーシステムの制御ソフトウェアで選択される印刷原板は、グレー領域や陰影のない2次元的に塗りつぶされた幾何学的なものである。更に、グラビアモードのレーザー出力は、60Wのレーザーの場合、20~40%の間で十分である。レーザー速度は、30%から60%の間で選択する必要がある。焦点は、コーティングやウェハの界面から2~3mm上にあることが望ましい。このようにして、レーザーによって選択された形状を転写することが可能になった。
【0192】
<実験2:EF LIFT法>
ガラス板上にシリコーンフィルム(ELASTOSIL(登録商標)フィルム、厚さ100μm、WACKER Chemie AGより入手可能)を水膜で固定した。次に、CM LITEシリーズの高電圧充電装置、HDR充電電極からなるSimco-Ion社の充電システムにより、シリコーンフィルムの上面を-300 Vに充電した。帯電の測定は、静電気測定器SK050とキーエンス社製評価装置SK1000で確認した。ウェハ上の印刷材料層で+100Vまで同等の帯電を行った。印刷材料のチャージ後及びチャージ中に、意図しない放電がないこと、及び半導体ウェハが安全に取り扱われることを保証する必要がある。その後、2枚の基板はレーザーの切断スペースに再び配置される。印刷材料のシリコーンフィルムからの距離は、スペーサーを用いて100~400μmの範囲内で選択することができる。LIFT操作は、上記の説明から類推して実施することが望ましい。言及した帯電がなければ、剥離したプリント材料は、ある程度、不完全又は非特異的な方法で転写された。更に、帯電は、より均質な堆積と転写された層のより良い結合を達成した。
【0193】
<実験3:レーザーによる硬化>
シリコンウェハを剥離し、転写された層をレーザーで直接照射して架橋した。レーザーの出力は、グラビアモードで60Wのレーザーで10~40%の間で、ここでは十分である。レーザー速度は10%から60%の間で選択すべきである。焦点は、コーティング又はウェハの界面から1~2mm上にあるべきである。完全な架橋を行うには、複数回のレーザー照射が必要な場合がある。また、部分的な架橋や、パス回数やレーザー出力による架橋度合いの調整も可能である。
【符号の説明】
【0194】
1. 3Dコンポジット製造工場
2. 3Dプリントユニット
3. 検査ユニット
4. 後処理装置
5. 検査ユニット
6. 最終処理装置
7. 印刷用ブランク(本体)
8. ピックアンドプレイスユニット
9. 連続ベルト
10. ベルト収納手段/ベルトフィーダー
11. 印刷されたブランク(本体)
12. 3Dプリンターによる個別部品/3Dプリンターによるボディ
13. 取り外しユニット
14. 全体コントローラー/データ処理システム
15. データインターフェース/データ接続
16. データベースシステム
17. 入力システム
18. ベルトの記憶媒体
19. 未使用
20. 印刷モジュール
21. センサモジュール
22. キュアリングモジュール
23. 静電気帯電・放電モジュール
24. ロック
25. 移動軸Y
26. 移動軸Z
27. ステージ
28. 真空基板
29. 予備吐出モジュール
30. センサモジュール
31. 移動軸Y
32. センサモジュールの移動軸Z
33. ステージの移動軸Z
34. ステージ
35. バキューム基板
36. 未使用
37. 未使用
38. 未使用
39. 未使用
40. 上部後処理モジュール
41. 上部後処理モジュールの移動軸Y
42. 上部後処理モジュールの移動軸Z
43. センサモジュール
44. 下部後処理モジュール
45. 下部後処理モジュールの移動軸Z
46. 未使用
47. 未使用
48. 未使用
49. 未使用
50. レーザー光源
50a. レーザー照射
50b. レーザー照射の焦点位置
51. キャリアシリンダ
52. アプリケーションシステム
53. 除去システム
54. プリント材料層
55. 印刷材料の剥離領域
56. キャリアシリンダ上の剥離した印刷材料の領域
57. プリントボクセル/切り離したプリント素材
58. 位置決めされた印刷材料
59. 印刷される面
60. 印刷材料供給部
61. 反応成分Aの印刷材料用投与ユニット
62. 反応成分Bの印刷材料用投与ユニット
63. ミキシングシステム
64. リサイクル処理装置
65. 機械式(第1)処理装置
66. 第2の処理系
67. 新旧素材対応ミキサー
68. 未使用
69. 未使用