(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】色空間の3つの領域を有するディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240530BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240530BHJP
G09G 3/3208 20160101ALI20240530BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240530BHJP
G09F 9/302 20060101ALI20240530BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240530BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20240530BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20240530BHJP
H10K 59/32 20230101ALI20240530BHJP
【FI】
G09G5/00 520J
G09G5/00 550H
G09G3/20 641G
G09G3/3208
G09F9/30 365
G09F9/302 C
H10K59/35
H10K59/38
H10K50/852
H10K59/32
(21)【出願番号】P 2023528279
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 US2022073498
(87)【国際公開番号】W WO2023004234
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315010824
【氏名又は名称】オーレッドワークス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハマー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マードック マイケル ジェイ
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0091960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0278982(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101180889(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-3/38
G09G 5/00-5/42
G09F 9/00-9/46
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に従う発光が、最も彩度が高い色に従う色空間全体の外側境界、内側領域境界を有する彩度が低い色によって形成される内側領域、ならびに前記内側領域境界と前記外側境界との間の少なくとも1つの色が最も彩度が高い色と彩度が低い色との間のディザリングによって生成される中間領域、の3つの領域からなる色空間に対応
し、
各画素は、独立して扱われる少なくとも3つの部分画素を有し、前記中間領域内の色は、少なくとも1つの部分画素が輝度しきい値未満である最も彩度が高い色と、すべての部分画素が輝度しきい値を上回る発光を有する彩度が低い色と間のディザリングによって生成される、ことを特徴とする画素化カラーディスプレイ。
【請求項2】
請求項
1に記載のディスプレイであって、前記輝度しきい値は、その部分画素のための非発光の画像信号に対応する、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のディスプレイであって、前記ディザリングは、異なる比率の前記最も彩度が高い色および前記彩度が低い色を経時的にあるパターンで組み合わせることを含む時間的ディザリングである、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項4】
請求項
3に記載のディスプレイであって、1つの単一時間フレーム内で、所定の時間期間にわたって前記最も彩度が高い色の発光と前記彩度が低い色の発光とを交互にすることで色を組み合わせる時間的ディザリングを行う、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項5】
請求項
3に記載のディスプレイであって、前記最も彩度が高い色および前記彩度が低い色は交互の時間フレームで発光される前記時間的ディザリングを行う、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項6】
請求項
5に記載のディスプレイであって、前記最も彩度が高い色および前記彩度が低い色が発光する個々の時間フレームの持続時間が互いに異なる前記時間的ディザリングを行う、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項7】
請求項1に記載のディスプレイであって、前記ディザリングは、前記最も彩度が高い色または前記彩度が低い色のいずれかへの前記中間領域内の色の色マッピングを伴う空間的ディザリング方法である、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項8】
請求項1に記載のディスプレイであって、前記ディザリングは、前記中間領域内の色が、空間的に交互のパターンで配置することによって画素の空間的近傍において組み合わされる空間的ディザリングである、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項9】
請求項1に記載のディスプレイであって、前記最も彩度が高い色および前記彩度が低い色は同じ色相軸上にある、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項10】
請求項1に記載のディスプレイであって、前記中間領域におけるディザリングのために使用される彩度が低い色は、前記内側領域境界に沿って位置する色である、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項11】
請求項1に記載のディスプレイであって、OLEDディスプレイである、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項12】
請求項
11に記載のディスプレイであって、前記ディスプレイは、カラーフィルタアレイを有するマルチモーダル白色発光マイクロキャビティOLEDであり、発光ユニットの3つ以上のスタックを有する、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項13】
請求項1に記載のディスプレイであって、赤色、緑色、および青色光を発光する3つの部分画素が存在するか、または赤色、緑色、青色、および白色光を発光する4つの部分画素が存在する、ことを特徴とするディスプレイ。
【請求項14】
少なくとも1つの部分画素が輝度しきい値未満である最も彩度が高い色と、すべての部分画素が輝度しきい値を上回る発光を有する彩度が低い色との間のディザリングによって、画像信号に基づいて中間領域内の色を生成する、請求項1に記載のディスプレイのための画像コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、色空間の3つの領域を有するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
関連文献への相互参照
本出願は、代理人明細書OLWK-0025-USP1の下、2021年7月20日に出願の米国仮出願第63/223,635号の利益を主張する。
【0003】
ディスプレイ内のクロストークとは、1つの画素によって提供される発光輝度が意図せず別の画素の影響を受けるところである。これは、影響を受けた画素がもはや画像信号に従って正確な輝度を提供せず、そのため画像の品質が劣化し得ることから、望ましくない。クロストークの量および性質に応じて、色再現、コントラスト(最高輝度と最低輝度との差)、グレースケール、解像度、およびディスプレイ内の「ゴースト発生」などの重要な因子は、すべて悪影響を及ぼされ得る。
【0004】
画像を生成するために個々に制御された画素を伴う任意およびすべてのタイプのディスプレイは、ある程度クロストークによる影響を受け得る。例えば、クロストークは、LED、量子ドット、およびOLEDディスプレイにおける画像品質に影響を及ぼし得る。クロストーク問題は、ディスプレイタイプとは無関係である傾向がある。例えば、電子発光ディスプレイ(ELD)、バックライト付き液晶ディスプレイ(LCD)、マイクロLEDディスプレイを含む発光ダイオードディスプレイ(LED)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)、ステレオスコピックディスプレイ、および量子ドットディスプレイ(QLED)はすべて、クロストークからのある程度の画像劣化に悩まされ得る。クロストーク問題はまた、ディスプレイ内の光生成エンジンのタイプとは無関係である傾向があり、例えば、LED、OLED、量子ドットなどをベースにしたディスプレイはすべて影響を受け得る。典型的には、フラットパネルディスプレイ(すなわち、CRTではない)内の画素は、アクティブマトリクスまたはパッシブマトリクス設計など、何らかのタイプのマトリクスアドレッシングのいずれかによって制御される。これらの設計の両方が、クロストーク問題の対象となり得る。
【0005】
場合によっては、クロストークは、寄生容量または残余電流など、ディスプレイ自体の制御回路に起因し得る。しかしながら、これは、大半の設計にとっては大きな問題ではない傾向がある。
【0006】
すべてのディスプレイが同程度のクロストークに悩まされるわけではなく、いくつかのタイプは、クロストーク問題につながりなりやすい場合がある。特に、個々の画素が小さくかつ比較的互いの近くに位置するマイクロディスプレイ(典型的には、アクティブマトリクスデバイス)は、クロストーク問題の影響を受けやすい。同様に、垂直に積層された有機層を通じた電荷移動に依存するOLEDディスプレイもまた、側方移動に起因してクロストーク問題の影響を受けやすいことがある。これらの形式におけるクロストーク効果の議論は、Diethelmら、“Quantitative analysis of pixel crosstalk in AMOLED displays”、Journal of Information Display、19(2)、61(2018);Pennickら、“Modelling crosstalk through common semiconductor layers in AMOLED displays”、J.Soc.Info.Display、26(9)、546(2018);およびBragaら、“Modeling Electrical and Optical Cross-Talk between Adjacent Pixels in Organic Light-Emitting Diode Displays”、Soc.Info.Display Digest;50(S1)、Paper 3.3(2019)において見ることができる。
【0007】
一般的に言うと、クロストークが最も目立ち、最も懸念されるのは、発光が最少又はゼロ(“黒色”)又は発光が比較的少ない画素又は部分画素である。これは、クロストークから生じる、たとえ小さくとも、追加の意図しない光が、画素から意図的に入る低い発光または非発光と比較して、全体的な発光に対して非常に大きい割合となるためである。高発光を伴う画素への、クロストークから生じる少量の光の追加は、目立たないはずである。
【0008】
クロストークはまた、ある画素と、隣接するかまたは空間的に近い画素との発光の間に大きな差が存在する状況において、より問題になる。これは、輝度が低いか“黒色”(非発光または最低エミッタンス)である画素が、輝度が高いか、またはその最大レベルにある画素に近いということであり得る。クロストークの問題は、両方の輝度値が類似しているとしても、単色発光画素(例えば、赤色画素)が、異なる色(例えば、緑色画素)を発光する画素に近いという場合にも発生する可能性がある。さらには、隣接する点灯している画素とは異なる色の点灯していない画素が、クロストークのためにその異なる色を発光する場合、これにより、彩度の高い原色および二次色の彩度が低下する。
【0009】
発光量が少ない画素又は発光量のない画素が発光量が高い画素の近くに配置される一般的な状況が2つある。第一は、画像によるものである。大半の画像は相関している、すなわち、互いに近い画素は、多くの場合、同様の量の発光を有し、そのためクロストークの程度はその領域内では比較的低くなる、ということに留意されたい。例えば、大きい黒色パッチの中央や大きい白色パッチの中央ではクロストークがほとんどない。画像内の縁または境界にのみ、画素間の発光に大きい差がある。したがって、発光の相関領域は一様ではなく、クロストークに起因して境界沿いよりも中心において異なり得る。同じ問題は、色の混合が縁および境界に沿ってより顕著である相関した単色画素で発生する。
【0010】
2つ目の状況は、すべての画素が同時に点灯するのではなく、個々の画素をスキャンすることによって発光が行われるディスプレイである。そのようなデバイスの例としては、パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスディスプレイが挙げられる。そのようなディスプレイにおいて、画素は、列および行のマトリクスで配置される。アクティブマトリクスディスプレイにおいて、特定の行に沿った各画素のための、画像に従った必要な輝度に対応するデータ信号が作成される。次いで、スキャンラインは、データ信号がその特定の行に沿って画素へ移ることを可能にし、画素は、データ信号に基づいて必要な輝度を生成する。次いで、次の行のためのデータ信号が生成され、次の行のためのスキャンラインが活性化されるため、次の行内の画素は輝度を作成することができる。この行ごとのスキャンが繰り返されて画像全体が作成され、検出すべき視覚のしきい値内で発生する。しかしながら、クロストークは、その時点において“オフ”状態であるはずのいくつかの画素を発光させる。
【0011】
クロストークから生じる一般的な問題は、彩度の高い色において彩度が低下することである。色理論において、彩度(時として純度と称される)は、特定の色相の色の強さを指す。彩度の高い色相は、鮮やかで強い色を有する、一方、彩度の低い色相は、より落ち着いて灰色っぽく見える。彩度がまったくない場合、色相は灰色の色合いになる。色の彩度は、光の強度と、さまざまな波長のスペクトルの全体に亘ってどれくらい分布しているのかの組み合わせによって決定される。高彩度の色は、主として1つの色の光であり、他の色の光の少なくとも1つからの影響が最小限に抑えられた色である。画素化されたディスプレイに関して、高彩度色は、画素の少なくとも1つの色付けされた部分画素が、低輝度の異なる色の少なくとも1つの他の部分画素に対して高い輝度を有する場所である。彩度が高い色は、原色、または原色の組み合わせ(時として二次色と称される)であり得る。例えば、赤色の部分画素は、緑色および青色の部分画素に対して高い輝度を有し、高い彩度の赤色をもたらすことができる。または、赤色および緑色の部分画素は、青色部分画素に対して高輝度を有し、高い彩度の黄色をもたらすことができる。高輝度と低輝度の部分画素間の輝度の差が大きいほど、より彩度が高い色が現れる。しかしながら、クロストークによって、輝度が低い部分画素の輝度が必要以上に高くなり、これによって、彩度の低い(低彩度)色となる可能性がある。
【0012】
ディスプレイからの発光色に対するクロストークの影響は、その影響が目立つ場合にのみ重要である。ΔE(デルタE、dE)は、与えられた2つの色の視覚認知における変化の一般的な尺度であり、CIELABなどの均一の色空間内の2つの色の間の距離を特徴付けるためによく使用される。ΔEの丁度可知差異(JND)は、およそ1である。言い換えると、2つの色が1未満のΔEを有する場合、それらの間の差は、ほぼ知覚不可能であり、1より大きい場合、差は知覚可能である。残念ながら、人間の色認知の性質とCIELABのような色空間の制限により、色の視覚認知は異なる。それは、2つの黄色および2つの緑色の間において、同じΔEが異なって見える可能性が非常に高いことを意味する。そのことを念頭に、多くのΔE等式が長年にわたって開発されており、ΔEab(CIELAB)、ΔE76、ΔE94、ΔE00(CIE DE2000)、およびΔECMCを含む。
【0013】
クロストークはディスプレイ内の色の彩度を低下させるため、ディスプレイの色域に対する影響を例示することが有用である。
図1Aは、CIE1976 u’v’色度図内にいくつかの色度範囲三角形を示す。最も大きい三角形は、クロストークのないモデルディスプレイシステムの色域を示し、連続してより小さくなる三角形は、1、2、5、および10%クロストークのクロストークレベルを示し、それぞれの場合において色チャネル間で等しい。
図1Bは、より均一なCIELAB空間のa
*-b
*平面における同じ情報を示す。最も外側(クロストークなし)の環に対する
図1B内の内側環の各々の平均ΔE
00値は、それぞれ、1.4、2.3、5.1、および9.4である。したがって、このモデルの例では、1%のクロストークは、1.4ΔE
00の平均に相当し、これは、知覚される色の違いの視覚しきい値に近い値である。
【0014】
クロストークは、光学機構および化学/電気機構の両方によって引き起こされる可能性がある。クロストークの量を増加させてしまういくつかの光学プロセスとしては、デバイス内の光散乱や導波が挙げられる。光学クロスオーバーは、内部で光を発生させるあらゆるタイプのデバイスにおいて発生し得る。すべての画素に共通の層を有するOLEDに特化すると、クロストークを増加させてしまういくつかの化学/電気プロセスは、同じ層内のアクティブ画素領域から隣接する非アクティブ画素領域への横方向へのキャリア移動が含まれる。電荷のこのような移動は、隣接する画素内に電圧および電流を発生させ、光子を生成し、その画素からの望ましくない意図しない発光につながる可能性がある。
【0015】
すべての発光源からの画素間のクロストークの量は、その画素の発光の合計量の10%以下、好ましくは3%以下、および最も好ましくは1%以下であることが望ましい。DE00に関して、すべての発光源からの画素間のクロストークに起因する色誤差は、10DE00以下、好ましくは3.3DE00以下、または最も好ましくは1.3DE00以下でなければならない。
【0016】
クロストークが発生するメカニズムは複数あると考えられている。短距離モード(0.2~0.7μm)は、横方向の電荷キャリアと光学メカニズムの組み合わせであるように思われる。中距離モード(3~7μm)の相互作用は、主に横方向の電荷キャリア移動に起因すると思われるが、部分的に光学メカニズムによるものである可能性がある。長距離モード(50~200μm)の相互作用は、主にアクティブ画素領域から非アクティブ領域への光散乱によるものと思われる。画素ピッチに従う導波に基づいたクロストークへのさらに長距離の光学寄与が存在するということも考えられる。
【0017】
ディスプレイデバイス内の光学プロセスに起因するクロストークの問題を最小限にするためのいくつかの有用な方法としては、以下が挙げられる:
-光進行を画素内に制限すること、および異なる画素にわたる光進行を最小限にすることを助ける、画素定義層、散乱層、または他のタイプの画素間の光学バリアもしくは構造体の使用。例えば、米国特許第2021/0151714号、米国特許第2014/0103385号、米国特許第2020/0388658号、米国特許第10483310B2号、米国特許第20170038597A1号、米国特許第20190056618A1号、中国特許第110416247A号、中国特許第106783924号、中国特許第CN107346778号、および中国特許第110429196A号を参照。
-カラーフィルタアレイ(CFA)を有するデバイスにおいて、基板法線方向から高角度で進行する光を吸収するように明確に設計される光フィルタリング層の使用を含め、空気/ガラス界面と反射アノードとの間の光波誘導を低減するための最適化カラーフィルタ。例えば、米国特許第20160065914号を参照。加えて、ブラックマトリクスの使用は、クロストークを生成する近傍画素のカラーフィルタを通じて励起された1つの画素内で生成されるオフ角発光を低減することができる。
-散乱部位の低減によって低減される光散乱。特に、下部電極上またはその近くの小粒子デブリの量は最小限にされるべきである。散乱は、堆積のために使用される組成およびプロセスに依存し得るカソードまたはアノード内の粗さからも発生し得る(例えば、Shenら、“Efficient Upper-Excited State Fluorescence in an Organic Hyperbolic Metamaterial”, Nano Lett.、18(3)、1693-1698(2018)を参照)。
-電極表面全体は、アクティブ画素領域および画素間の両方にわたって可能な限り平坦かつ平滑であるべきである。特に、画素間にPDL(画素定義層)を形成し、画素領域内のアノードの表面の上に延びる突出部、こぶ、または他の構造体が、画素領域内へ光を散乱させて戻し、光が近傍(消灯)画素に入ることを防ぐのに有用であり得ることが知られている。しかしながら、この手法は、その構造体の上を覆うより厚いOLED層が存在するときはそれほど効果的ではない。より厚い層内に閉じ込められた光は、層内で内部反射される可能性がより高く、その結果として、光は構造体の上を反対側へと進行し得る。電極およびOLED層が均一に平坦である場合、ディスプレイの層内を導波している光は、それが吸収されるか、ディスプレイの縁に到達するまで、途切れずに続く可能性が高い。
-導波光のための層間吸収剤の使用。
-バックプレーンの絶縁体による光吸収。
OLEDデバイス内のキャリア移動に起因するクロストークの問題を最小限にするためのいくつかの有用な方法としては、以下が挙げられる:
-発信画素内のキャリア移動を制限し、異なる画素への任意のキャリア移動を最小限にするのを助ける、画素定義層、溝、分離器、分割器、または他のタイプの画素間の物理的バリアもしくは構造体の上述の使用。
-OLEDのセグメント化されたアノードの下の接地板の使用。例えば、米国特許第10128317号を参照。
-キャリア移動度の高い層で、層厚および層内の組成(“シート抵抗”を増加させるため)を変化させることによって横方向の電荷キャリア移動が低減される(例えば、HIL、HTL、CGL、ETL、およびEIL)。特に、電荷キャリア(正孔または電子のいずれか)は、アクティブ領域内で生成され、点灯領域と消灯領域との間のギャップをまたいで横方向に移動することができる。この問題は、電極のうちの1つの隣または近くの層において主に発生するように思われる。場合によっては、CGL(電荷生成層)もまた、それらが非常に高いキャリア移動度を有するために一因となり得る。アノードの上の共通HILおよびHTL層は、この問題に対する最大の原因であり得ると考えられる。正孔が、1つのアノードパッド上のHILの励起領域内に生成されると、それらは、近傍アノードパッドへと移動することができ、正孔に起因する結果として生じる電圧は、OLEDのしきい値電圧Vthを超えることができ、そのため、(名目上は消灯)画素が、その画素のための画像信号に関係なく光を発光するように思われる。加えて、電荷は、導電性アノードパッドに電子として入り、ほとんど横抵抗なしでアノードを通って横方向に流れることができる。アノードパッドの反対側では、電流は、次の消灯アノードパッドへのジャンプのために、HIL内へ(正孔として)戻ることができる。したがって、キャリア移動の問題は、単に隣接アノードパッド間のより短い距離に限定されるのではなく、より長い距離構成要素も同様に有し得る。この理由から、両方の電極の、および特に、アノードの、厚さおよび組成に対して細心の注意が払われなければならない。キャリア移動度の小さいより薄い有機層は、これらの望ましくないキャリア移動プロセスを最小限にするのに役立つ。例えば、米国特許第20170317308A1号を参照。
-電極セグメント間の領域により高い抵抗を有するように層を修正することによって、側方電荷キャリア移動を低減する。例えば、米国特許第2020177265l号を参照。
-高いキャリア移動度を有する有機層のための材料選択。特に、材料は、クロストークへのそれらの寄与を最小限にするように選択され得る。HILに追加されるp-ドーパント(例えば、F4-TCNQ、F6-TCNNQ、またはHAT-CN)のタイプおよびレベルは、この点に関して、ならびにHILまたはHTL内のHTMの選択に関して(例えば、NPBまたはスピロ-TTBなどの芳香族アミン化合物)重要であり得る。P-ドーパントのみ、または非ドープHILもまた効果的であり得る。場合によっては、非ドープHILおよびp-ドープHTLが使用され得る。MoO3などの無機HIL材料(有機材料と混合され得る)も利点を有し得る。例えば、米国特許第20170330918A1号、米国特許第20170301864A1号、および米国特許第20170301861A1号を参照。
-OLEDにおいては、HILからの電荷がアノードに入るのを妨げるバリアを作成するためのHILおよびアノードの設計が有利である。
【0018】
クロストークの低減のための1つの方法は、駆動信号の補償によるものである。元の画像信号は、所望の発光が達成されるように、クロストークに起因する各画素による光発光における差を補償するように調節され得る。しかしながら、これは、各画像内の各画素内に存在するクロストークの量が予測可能であり、画像信号が画像フレームごとに再計算されることを必要とする。これは、計算の需要と全体の演算時間を大幅に増加させる。これは、デバイスの費用を増加させるだけでなく、応答時間にも影響を及ぼす。そのような手法においては、この方法にだけ頼るディスプレイによって再現することができない高彩度の領域に色空間の部分が存在する可能性がある。一般に、デバイス特有の一次色度のための駆動信号を補償する色管理手法は、XTで制限されたディスプレイ色域内にある色を補償することに限定される。
【0019】
クロストークの低減の別の方法は、画素が“オフ”または最低発光状態にあるはずのときにはいつでも、画素の光生成部分に供給されているいかなる電圧または電流も除去すること、または消散させることによって、画素化されたディスプレイデバイス内のクロストークに起因する画素からの発光を防ぐことである。そのような解決策は、任意の種類のディスプレイに適用され得るが、任意の種類のOLEDディスプレイに適用されるとき、およびさらにより望ましくは、OLEDがカラーフィルタアレイと組み合わせて使用されるマルチモーダル(白色)OLEDである場合に、特に好適である。これは、マルチモーダルOLED内の共通層が、1つの“オン”画素から“オフ”であり得る別の近傍画素へのキャリア移動を可能にし、したがって、発光を引き起こすために近傍の“オフ”画素内に十分な電圧を作成するからである。これは、マイクロキャビティ構造体などのより厚いOLED構造体において特に顕著であるが、これは、マイクロキャビティOLED内の層が、必然的に厚く(マイクロキャビティを作成するため)、横方向のキャリア移動を促進するためであり、また3つ以上の発光ユニットのスタックを有するマルチモーダルOLEDディスプレイについても言えることであり、これらのマルチスタックOLEDを駆動するために必要とされる高電力が必要なためである。これは、指定された画素内に個々に配設されたR、G、およびB発光材料を伴うOLEDディスプレイに当て嵌まるが、すべての画素が共通OLED層を共有するOLEDディスプレイにも当てはまる。
【0020】
画素制御回路に関与するクロストークの問題に対する多くの解決策が提案されてきた。例えば、米国特許10,665,161号、米国特許第20100091001A1号、米国特許第8035580、中国特許第107134257B号、米国特許第10665161B2号、米国特許第9324264B2号、米国特許第20030112205A1号、米国特許第20200066815号、および米国特許第20180180951号、ならびにLinら、“UHD AMOLED Driving Scheme of Compensation Pixel and Gate Driver Circuits Achieving High-Speed Operation”、J.Elec.Devices Soc.、6、26(2017);Kimuraら、“New pixel driving circuit using self-discharging compensation method for high resolution OLED micro displays on a silicon backplane”、J.Soc. Info.Display、25(3)、167(2017);Kwakら、“Organic Light-Emitting Diode-on-Silicon Pixel Circuit Using the Source Follower Structure with Active Load for Microdisplays”、Japanese Journal of Applied Physics、50、03CC05(2011)はすべて、画素電極における過剰または望ましくない電荷が放電され得る様々な画素回路を説明する。これは、いかなる電荷もOLED層から離れる方へ放出することによって画素からの意図しない発光(すなわち、クロストークからの)を防ぐ。
【0021】
制御回路を使用して非発光画素からの発光を防ぐことに基づいた上述の方法は、ディスプレイが生成することができる最も高い彩度の色に最適に適用される。例えば、RGB画素システムにおいては、可能性のある最も彩度の高い色は、原色R、G、またはB部分画素の少なくとも1つが画像信号に従って非発光である場合である。しかしながら、そのような回路ベースの方法は、少なくとも1つの部分画素が画像に従って少なくともいくらかの少量(ゼロではない)の発光を有する色に適用するのはより困難である。この場合、(例えば、クロストークに起因して)過剰な(非意図的な)量の発光が存在したかどうかを決定し、部分画素電極における電荷に必要な調節を行う必要がある。これは、実際に達成するには非常に困難かつ高価である。
【0022】
しかしながら、最も彩度が高い色を発光する必要がある画素(少なくとも1つの部分画素が“オフ”にされる場合)のみにクロストーク低減する方法を適用すると、彩度が低い色が依然としてクロストークの影響を受ける場合であっても、ディスプレイが最も彩度が高い色を放出することを可能にすることから、依然として利点を有する。画像の最も彩度が高い色でクロストークがない、または減少しているが、クロストークの影響により同じ色相の他の色が劣化している状況では、発光され得る色の範囲にギャップまたは不連続が生ずる。
【0023】
共同譲渡された国際特許第2022/039889号は、データ信号が、クロストークを低減するために画素が非発光であるべきことを示すときにはいつでも、発光を防ぐ画素制御回路を説明する。
【0024】
米国特許第10,692,195号は、入力色域から能力の低い出力色域への色相保存色域マッピングの方法を説明する。特に、この参考文献は、明度及び彩度のマッピングを行うために色相均一性を有する中間色空間(例えば、IPT)を説明する。それは、色相均一性のために選択された中間色空間を使用し、輝度および彩度を一定の色相でマッピングすることを開示している。
【0025】
米国特許第2007/0081719号は、入力と出力との間で色の数を変更する(例えば、RGBからRGBCへ)ための方法を説明し、一部の色は、デバイスの色空間から細分された色領域から外れる。色変換方法は、3原色の組み合わせを使用し、複数の多面体を使用し、逆3×3行列を使用してそれぞれの目的の色を表現し、色域[0,1]内にあるものを見出し、これらの規則に基づいてRGBC値を演算する方法として説明される。
【0026】
米国特許第9,041,724B2号は、色空間の中間領域内の色のために黒白原色の時間的ディザリングについて説明している。黒/白線のある程度離れた中間領域を規定し、中間に近い色をレンダリングするときに有彩色原色でなく黒/白の混合として“仮想原色”を使用することの時間的な安定性および精度の向上に焦点を当てている。
【0027】
米国特許第9,569,872号は、コンピュータグラフィック命令のラスター化を説明する。ここでは命令が、色不連続性が存在する場合に細分され、その結果として部分命令は、連続的に変化する色を使用する。サイズは、空間次元にわたる色変化導関数の関数として選択され、色のスムーズな勾配を含むベクトル描画に関連する。
【0028】
米国特許第9,560,364号は、特別な処理のための量子化誤差の程度に基づいて、少数の“特別な”画素値を取っておく画像画素データの量子化に対処する方法を説明する。
【0029】
米国特許第9,363,517号は、最近使用された色インデックス値の効率性重視のメモリ、および色差に基づいて、以前に使用されたインデックスを再使用するかどうかを決定するための方法を開示する。
【0030】
米国特許第8,558,844号は、画像または“アセット”の画素の色が、元の色に十分に類似するときに代替色へと変化され得る方法を説明する。例は、各々が限られた色パレットと関連付けられ得る複数のアセットからなる3Dアバターに言及する。
【0031】
米国特許第7,821,580号は、画像の画素の残り(おそらくは、ゆがめられていない)とは異なって色のセットを調節する色処理システムを開示する。例は、肌の色合いの色だけを残しながら画像内の大半の色の彩度を増加させることを含む。
【0032】
上述の方法のいずれも、ディスプレイが部分画素の任意の組み合わせを使用して発光することができる最も彩度が高い色と彩度が低い色との間にギャップまたは不連続性が存在するディスプレイには好適ではない。色空間内のそのようなギャップは、望ましくない画像、および表示画像内の色アーティファクトを引き起こし得る。そのような場合、ディスプレイがギャップ内に入る少なくともいくつかの色を生成することができることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明のいくつかの重要な特徴は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0034】
発光が、最も彩度が高い色に従う色空間全体の外側境界、内側領域境界を有する彩度が低い色によって形成される内側領域、ならびに内側領域境界と外側境界との間の少なくとも1つの色が最も彩度が高い色と彩度が低い色との間のディザリングによって生成される中間領域、の3つの領域からなる色空間に対応した画素化されたカラーディスプレイ。画素は、少なくとも3つの部分画素、好ましくは、RGBまたはRGBWを有し得る。
【0035】
外側境界において色を発光する画素が、内側領域境界または内側領域内で色を発光する画素と比較して、クロストークが低減されている上記ディスプレイ。画素が非発光のための画像信号を有する少なくとも1つの部分画素を有するかどうかを判断し、その部分画素からの発光を低減または防止する画像コントローラを含む上記のいずれかのディスプレイ。発光の低減または防止の1つの好適な機構は、OLED電極の下部電極における電位を制御することを含み得る。
【0036】
OLEDディスプレイ、好ましくは、OLEDマイクロディスプレイである上記のいずれかのディスプレイ。OLEDは、カラーフィルタアレイを有するマルチモーダル(白色発光)マイクロキャビティであり得、発光ユニットの3つ以上のスタックを有し得る。
【0037】
中間領域内の色が、最も彩度が高い色(少なくとも1つの部分画素が、画像信号に従って発光を有さないか輝度しきい値未満である場合)と彩度が低い色(すべての部分画素が、輝度しきい値を上回る発光を有する)との間のディザリングによって生成される上記のいずれかのディスプレイ。輝度しきい値は、ゼロ(非発光)とすることができる。好ましくは、ディザリングは、外側境界に沿った最も彩度の高い色と彩度が低い色との間である。最も彩度が高い色と彩度が低い色が同じ色相軸上にあることが好ましい。
【0038】
ディザリングが、望ましくは同じ色相軸に沿って、最も彩度が高い色の外側境界または内側領域の内側領域境界のいずれかに中間領域内の色のカラーマッピングを含む空間的ディザリング方法である、上記のいずれかのディスプレイ。
【0039】
ディザリングが、内側領域および外側境界上にある色の対を組み合わせることによって、内側領域と外側境界との間の中間領域内の中間色を生成することを含む上記のいずれかのディスプレイ。中間色は、画像信号に従って、内側および外側の色(彩度の低い色と彩度の高い色)について異なる比率で組み合わせることによって生成することができる。
【0040】
ディザリングが時間的ディザリングであり、色がそれらの間で経時的にあるパターンを交互にとることによって画素内で組み合わされる上記のいずれかのディスプレイ。時間的ディザリングの1つの方法は、フレーム時間中のある期間にわたって外側境界の最も彩度が高い色を発光し、フレーム時間の残りの時間にわたってより彩度の低い色(特に、内側領域境界上の色)を発光するものである。より又は最も彩度が高い色および彩度の低い色に対する相対的なフレーム時間の制御は、画像信号に従って決定することができる。時間的ディザリングの別の方法は、最も彩度が高い色および彩度が低い色が、交互のフレームで発光されるか、または、(一方のためのあるフレーム数)および(他方のためのあるフレーム数)で発光される、というものである。時間的ディザリングの別の方法は、すべてのフレームについて一定時間にわたってクロストーク低減を有効にすると同時に、フレームレート全体を変化させることによるものである。これらの時間的ディザリング方法はいずれも、近傍画素が互いに位相がずれている場所が含まれることがある。
【0041】
色を空間的に交互のパターンで配置することによって画素の空間的近傍において色が組み合わされるようなディザリングである空間的ディザリングを含む上記のいずれかのディスプレイ。空間的に近傍にある個々の画素は、パターン化またはランダム化できる空間的配置を使用して、画像信号に従って内側領域および外側境界(彩度の低い色とより彩度が高い色)に分配することができる。パターン化された配置は、各タイプの画素の空間的比率、例えば、格子状に交互、を有するように設計できる。ランダム化された配置は、誤差拡散にあるような、近傍画素にわたって色誤差を累積させることによって生成することができる。
【0042】
異なるタイプのディザリングを組み合わせて中間色が生成される上記のいずれかのディスプレイ。1つの組み合わせ方法では、少なくとも1つの中間色が選択された数の時間単位またはサブフレームにわたって時間的ディザリングによって生成され、少なくとも1つの他の中間色が最も彩度が高い色の外側境界、内側領域境界、または時間的ディザリングによって生成される中間色のいずれかへ他の色を色マッピングする空間的色ディザリングによって生成される。
【0043】
ディスプレイの利用可能な色空間を改善する方法であって、最も彩度が高い色による利用可能な色空間の外側境界、内側領域境界を有する彩度が低い色によって形成される内側領域、ならびに最も彩度が高い色と彩度が低い色との間のディザリングによって内側領域境界と外側境界との間の中間色が生成される中間領域、の3つの色空間の領域を含む方法。本方法は、色空間内にギャップまたは不連続性が存在する任意のディスプレイに適用することができる。当該ギャップは、ディスプレイが最も彩度が高い色と彩度の低い色との間の色を発光することができないために生ずる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
特許請求の範囲は色空間および色再現を対象とするので、図の一部はカラーで見るのが最適であり、本特許または本出願には、許されるときはいつでもカラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。
【0045】
【
図1A】クロストークのレベルの関数として、クロストークによって引き起こされる色域低減の例を例示する図である。
【
図1B】クロストークのレベルの関数として、クロストークによって引き起こされる色域低減の例を例示する図である。
【
図2A】CIE1976 u’v’色度プロットとして、色空間内の画像画素に対する未補正のクロストークの影響を示す図である。
【
図2B】CIE1976 u’v’色度プロットとして、色空間内の画像画素に対する未補正のクロストークの影響を示す図である。
【
図3】
図2A-2Bによる色空間を使用したシミュレート画像に対する様々なレベルの未補正のクロストークの影響を示す図である。
【
図4】CIE1976 u’v’色度プロットとして、色空間内の最も彩度が高い画像画素に対する補正されたクロストークの影響を示す図である。
【
図5】クロストーク効果を、最も彩度が高い色についてのみ低減または除去し、彩度が低い色については低減または除去しないことによって引き起こされる色空間内のギャップが存在する、シミュレーション画像に対する様々なレベルのクロストークの影響を例示する図である。
【
図6】ディザリングが、中間領域内の色を内側領域および外側境界にマッピングするために使用されている、シミュレーション画像に対する様々なレベルのクロストークの影響を例示する図である。
【
図7A】
図6に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図7B】
図6に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図7C】
図6に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図7D】
図6に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図8】ディザリングが、中間領域内の色を、内側領域境界、外側境界、またはその間の中間レベルにマッピングするために使用されている、シミュレーション画像に対する様々なレベルのクロストークの影響を例示する図である。
【
図9A】
図8に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図9B】
図8に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図9C】
図8に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図9D】
図8に示されるシミュレーション画像についての対応するCIE1976 u’v’色度プロットを示す図である。
【
図10A】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的ディザリングを例示する図である。
【
図10B】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的ディザリングを例示する図である。
【
図10C】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的ディザリングを例示する図である。
【
図10D】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的ディザリングを例示する図である。
【
図11A】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的および時間的ディザリングを例示する図である。
【
図11B】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的および時間的ディザリングを例示する図である。
【
図11C】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的および時間的ディザリングを例示する図である。
【
図11D】ディスプレイ内のクロストークによって引き起こされる色不良を補償するために使用され得る空間的および時間的ディザリングを例示する図である。
【
図12A】説明される異なるディザリング方法のいくつかについての比色分析結果を示す図である。
【
図12B】説明される異なるディザリング方法のいくつかについての比色分析結果を示す図である。
【
図12C】説明される異なるディザリング方法のいくつかについての比色分析結果を示す図である。
【
図12D】説明される異なるディザリング方法のいくつかについての比色分析結果を示す図である。
【
図13】色相角度に対するDE00のプロットを示す図である。
【
図14】OLEDがマルチモーダルマイクロキャビティである、OLEDディスプレイ400の断面を示す図である。
【0046】
図において使用されるすべての画像は、パブリックドメインからのものである。(Shirley image public domain Eastman Kodak.Car photo CC license by Josh Mormann:www.flickr.com/photos/noego/165266135/in/photostream/.Flag photo CC license by Benson Kua:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rainbow_flag_breeze.jpg.)
【発明を実施するための形態】
【0047】
ディスプレイは、画像を作成するためのデバイスである。画像は、それを、人間の視覚の解像限界を下回るほどに十分に小さい個々の区域(画素)へと空間的に分割することによって再現することができる。次に、画像は、個々の画素に適切な量の輝度および色をある期間にわたって生成させることによって作成される。静的ではない画像の場合、個々の画素は、新しい情報で定期的に更新する必要がある。この更新周期がフレームレートである。ちらつきの発生を回避するために、フレームレートは、一般的に、人間の視覚系によって知覚されるよりも高速である。ディスプレイは、一般的に、画像ソースデータを画素に適した画像信号へと変換する画像コントローラと、画像を生成するために画像信号を個々の画素に送信する制御回路を含む。画像コントローラの例は、当該技術分野において周知である。
【0048】
画素化されたディスプレイは、別個の画素を有し、各画素が、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の、空間的に相関した部分画素を含み、各々が独立して動作し、所望の輝度(発光)レベルで異なる色を生成する。部分画素からの発光は、人間の視覚系によって一緒に組み合わされて画素から所望の色を生成する。画素化されたデバイスのための一般的なシステムは、R、G、およびB部分画素を使用するが、異なる色または色数を使用した部分画素に基づいた他のシステムが知られている。画素化されたデバイスの中には、RGBおよびW(RGBW)の4つの部分画素を使用するものがある。
【0049】
ディスプレイによって生成できる色の範囲は、ディスプレイによって生成できる色のすべてを含む色域によって特徴付けることができる。色域は、通常、色を数値として、典型的には2次元または3次元空間内の座標として記述される特定のカラーモデルまたはシステムによって定義される色空間において記述できる。ディスプレイの場合、いくつかの色空間は、様々な原色(すなわち、RGB)を混ぜ合わせて他の色を形成する加算的方法として記述される。一般的な色空間およびカラーモデルは、CIE1976 u’v’、CIE1931 xyz、およびCIE1931 XYZ、CIEUVW、CIELAB、およびCIELUVである。他の色空間モデルとしては、sRGB、Adobe RGB、Wide-gamut RGB色空間、Rec.2100、ProPhoto RGB、scRGB、DCI-P3、Rec.709、Rec.2020、Academy Color Encoding System(ACES)、YCbCr、YUV、YCoCg、ICtCp、HSV、HSL、LCh、IPT、CIELChab、およびCIELChuvが挙げられる。これらの色空間モデルのすべては、他のモデルと同様に、ディスプレイの色域を記述するために使用することができる。ディスプレイの色域は、色空間モデルにおいて記述されテイル場合、ディスプレイの色空間と称されることがある。
【0050】
色空間(例えば、色度図)の2D表現において、ディスプレイの色空間の外側境界は、すべてではないが2つ以上の原色の混合を含む、可能な限り彩度が高い原色によって決定される。他のすべての色は、色空間の外側境界内にある。原色は、例えば赤色、緑色、または青色のみを含む、単一色の光である。最も彩度が高い色は、そのカラーシステムにおいて使用される原色のうちの少なくとも1つが欠けている色である。二次色は、2つの原色の混合であるが、他の色が欠けている。外側境界は、ディスプレイによって生成することができる色空間の色彩のサイズを決定する。
【0051】
色空間(例えば、色度図)の2D表現において、同じ色相(任意の特定の色における成分の割合)のすべての色は、理論的には、色空間の外側境界の中心近くにある白色点(中間色、または等しい色割合の色の1つ)から同じ線に沿って存在しなければならない。これは、色相軸と呼ばれる。色度図において、輝度次元が図に表現されないことから、同じ2D座標は異なる輝度の複数の色を指すことができることに注意して、線としての色相軸の概念は、より一般的には、白色、黒色、および高彩度の色(3D色空間においても視覚化することもできる)によって決定される平面として表現することができる。白色点に最も近い色相軸に沿った点によって表される色は彩度が低く、点が外側境界の方へ移動するにつれて彩度が増加する。色相軸が外側境界に交わる点は、色空間内に存在する最も彩度が高い色である。3D色空間では、外側境界は複雑な多角形である場合があり、輝度および色相の組み合わせについて最も彩度が高い点の軌跡によって規定される。実際には、人間の視覚の色感度を単純化した表現を提供する色空間モデルにおける誤差に起因して、色空間内の色相軸に沿った色のすべてが視覚的に一定の色相のままであるとは限らないことに留意されたい。ディスプレイまたは色空間のタイプによっては、一定の視覚色相に対応する色相軸が色空間の白色点から外側境界上の特定の点までの直線の形態を取らない場合がある。その要因は、画像コントローラによって考慮され、適切な補正がディスプレイ信号に組み込まれる。色相軸は、色度色空間、または好ましくはCIELABもしくはIPTなどにより知覚的に正確な色空間にあるように近似することができる。
【0052】
しかしながら、画素化されたディスプレイ(RGBを使用するものなど)において、ディスプレイが特定の色相軸上で生成することができる最も彩度が高い色は、典型的には理論的な最も彩度が高い色よりも小さい。これは、部分的には、個々の部分画素が、一般的には、“純粋な”単一色の光を生成することができず、少量の他の色で汚染されることが理由である。これは、ディスプレイ内の様々な部分画素の発光プロファイルに起因する固有の限界である。したがって、特定のディスプレイがいかなるクロストーク効果もなしに発光することができる‘最も彩度が高い色’は、ディスプレイを構成する部分画素の発光特性に依存する。
【0053】
クロストークが存在すると、ディスプレイに利用可能な彩度をさらに低下させる可能性がある。彩度が高い色は、発光がほとんどないまたは全くない少なくとも1つの部分画素を有するはずである。クロストークは、部分画素に送信される画像信号に関係なく、これらの部分画素からの発光の量を増加させる可能性がある。これには、不要な色のレベルが増加するために色が純粋ではなくなり、色の彩度を減少させる効果を有する。クロストークの量が多いほど(および部分画素からの不要な発光が多いほど)、ディスプレイが生成することができる色の彩度は低くなる。
【0054】
表示されるべき画像が著しく劣化する可能性があるため、クロストークによって引き起こされる色の彩度の低下化は望ましくない。
図2A-2Bは、一連のモデル化色空間におけるディスプレイの色空間に対するクロストークの影響を例示する。画像画素(
図3に示される最上の旗画像から)のサンプリングは、CIE1976 u’v’色度空間内の点としてプロットされる。
図2Aは、ゼロクロストークでの正確な色の画像を示す参照カラーディスプレイの画素色度を示し、外部境界で囲まれたディスプレイの色空間内にぴったりと収まっている。
図2Bは、クロストークの影響を示し、ここでは、ディスプレイの色空間または利用可能な色度の範囲が、
図2A内の外側境界とは異なる外部境界によって囲まれている。
図2B内のディスプレイ(クロストークを伴う)で使用できる色空間は著しく小さくなっている。
【0055】
R、G、およびB強度の各々の一部が2つの他のチャネルに劣っているディスプレイ内のクロストークは、線形化されたRGB値に弱い非対角項を含む3×3行列を乗算することによってモデル化することができる。例えば、10%クロストークは、以下のように示すことができる。
【数1】
【0056】
当業者によく知られているように、非線形符号化(ガンマ符号化としても知られる)を正しく処理しながら、この形態の行列を使用して画像をシミュレートすることができる。sRGBなどの知られているエンコーディングで符号化された画像では、シミュレートされたクロストークの影響を受ける線形RGB値は、CIE1931 XYZ三刺激値、xyz色度値、またはCIE1976 u’v’色度値にさらに変換され、プロッティングまたは追加の演算を行うことができる。
【0057】
図3は、シミュレーションされた画像に対するクロストークの影響を示す。画像の最上行は参照であり、クロストークがゼロの正確な色の画像(
図2A内のように)を示し、後続の行は、ラベル付けされるようにクロストーク(XT)のレベルが5%、10%、および20%である画像を示す。実際には、
図2Aは、
図3の最上行内の旗画像からの画素のサンプリングの色度座標を示す。
図3内の画像は、クロストークに対する補正がなく、ディスプレイを不正確に取り扱ったことが理由で、色処理がその原色(クロストークの存在が理由ですべて劣化している)が参照(クロストークの存在なし)と同じであるかのように徐々に彩度が低下している。
【0058】
利用可能な最も彩度が高い色を表示する画素が画像に必要な場合、その画素の少なくとも1つの部分画素はそれが非発光となるように“オフ”にされる。クロストークが存在する場合、いくらかの発光が“オフ”部分画素から生成され、発光された色は彩度が低くなる。制御回路が、少なくともそのように装備されたディスプレイにおいては、クロストークの存在する場合でも、最も彩度が高い色における“オフ”部分画素からの発光を低減または防止するために使用することができる。
【0059】
しかしながら、最も彩度が高い色(少なくとも1つの部分画素が“オフ”である)を生成するディスプレイの能力を増大させることにおいて非常に効果的であるが、“オフ”である部分画素についてのみクロストークを低減または防止することは2つの限界を有する。第一に、それは、いかなる非電気効果(すなわち光学クロストーク)に起因するクロストークには影響しない。第二に、すべての部分画素がある程度“オン”であり、完全に“オフ”でないときの色に適用することができない。特に、彩度が高いが、可能な限り彩度が高くなっていない色は、その画素が彩度を高くするために要求されるレベルよりいくらか低い度合いの発光を伴う少なくとも1つの部分画素を有する。制御回路は、いくらかの発光が必要であることから(画像信号に従って)、その部分画素からの発光を防止するべきではなく、そのため、そのような状況においてクロストークを低減または除去することはできない。クロストークはこの部分画素からのさらなる発光を引き起こし得るため、発光される色の彩度はクロストークの量によって制限されるようになる。特に、最も彩度が高い色以外におけるクロストークによる補正がなければ、利用可能な色の彩度はせいぜい最も発光量が少ない部分画素におけるクロストークに起因する発光量によって制限される。
【0060】
図4は、
図2A-2Bに示した同じディスプレイの色空間に対する影響を示しており、この場合、画像が最も彩度が高い色を必要とする画素(すなわち、部分画素のうちの少なくとも1つが“オフ”にされる画素)においてはクロストークが除去されるが、他の彩度が低い色においては除去されない。彩度が低い色を発光する画素は、2つの状況から生じ得る。第1の状況は、画像信号が、少なくとも1つの部分画素に“オフ”であることを求めるが、クロストークが依然として存在し、その特定の画素において除去されていない場合である。第2の状況(より一般的である)は、画像信号に従って、その画素内の部分画素のすべてが少なくともいくらかの発光を有するが、少なくとも1つの部分画素の発光が最小発光に近いがこれをわずかに上回る場合である。クロストークは外部境界に沿った最も彩度が高い色については防止されるため、外側境界に沿った画素は
図2Aと同じである。しかしながら、クロストークの影響は、画像において彩度が低い色を必要とする画素に存在したままであり、クロストークを有するこれらの画素のための利用可能な色空間は内側領域境界を有する内側領域へと低減される(
図2Bにあるように)。したがって、上に列挙される様々な方法による、最も(または非常に高度に)彩度が高い色のみに対するクロストークの低減は、ディスプレイにおいて利用可能な色空間の全体的なサイズを維持することを可能にし、これは非常に望ましい。しかしながら、画像信号に起因するか、またはクロストークが依然として存在するかのいずれかの理由で、他の彩度が低い色においてクロストークが依然として存在することから、色空間内のギャップまたは不連続性が生ずる。このギャップ内の色は、ディスプレイによって直接生成することができない。
【0061】
説明のため、画像が、1つの画素が可能な限りに最も彩度が高い赤色を発光することを求め、別の画素が高い彩度の(しかしながら、最も彩度が高いものよりは低い)赤色を同じ輝度レベルで発光することを求め、第3の画素に依然としてより低い彩度の赤色を同じ輝度レベルで発光することを求めるRGBディスプレイについて検討する。この場合、100:0:0のR:G:B比で発光するように第1の画素に信号が送信され、90:5:5のR:G:B比で発光するように第2の画素に信号が送信され、60:20:20のR:G:B比で発光するように第3の画素に信号が送信される。各R、G、およびB部分画素は異なる最大輝度の能力があることから、これらのR:G:B比は、各部分画素に要求された絶対強度と同じではなく、単純化して、3つの例のすべてにおいて全体の輝度は同じであるが、彩度は異なることに留意されたい。次に、部分画素の間においてさらに5%クロストークを引き起こす同様のディスプレイについて検討すると、効果的に、低発光部分の画素の各々では発光が増加するが、高発光部分の画素ではクロストークによる影響を比較的受けない。この場合、画素に送信される信号は同じであり、クロストークは部分画素の間で一定かつ付加的であると仮定すると、第1の画素のRGB発光比は90:5:5であり、第2の画素の比は82:9:9であり、第3の画素の比は56:22:22である。クロストークのため、3つの画素例のすべてにおいて色の彩度は低下する。
【0062】
ここで、部分画素のうちの少なくとも1つがゼロ発光であり最も彩度が高い色についてのみクロストークが除去されているが、他の彩度が低い色については除去されていない同様のRGBディスプレイについて検討してみる。この場合、第1の画素は、依然として100:0:0の比を有する(クロストークなしの元のディスプレイに関して)。しかしながら、最も彩度が高い色よりも彩度が低い色についてはクロストークが除去されていないため、第2および第3の画素の比は依然として82:9:9および56:22:22となり、部分画素間に5%のクロストークが残る。この場合、(クロストークなしの最も彩度が高い色)と(クロストークを伴う彩度が低い色)との間の色を発光するディスプレイの能力においてギャップまたは不連続性が存在する。
【0063】
クロストークなしに最も彩度が高い色を発光することができるが、他の彩度が低い色にはクロストークが存在する任意のディスプレイにおいて、色空間の外側境界は、影響を受けない最も彩度が高い色に従う。しかしながら、クロストークが存在する色において、利用可能な色空間(内側領域)は、外側境界によって規定されるものよりも小さい。内側領域は、彩度が低い色の発光が必要な場合に、クロストークから生じる実際の色発光によって内側領域境界によって境界付けられる。したがって、そのようなディスプレイにおいて、色空間は、最も彩度が高い色の外側境界(発光にクロストークが伴わない)、および内側領域境界(発光が、所与の色相軸に沿ったクロストークの存在の観点から、達成可能な最大彩度である)を有する彩度が低い色の内側または内部領域(発光がクロストークを含む)を有する。この状況は、色空間の外側境界と内側領域との間に完全に含まれるギャップまたは不連続性を結果としてもたらす。そのようなディスプレイは、本質的に、このギャップまたは不連続性内に色の発光することができない。
【0064】
図5は、ディスプレイ内の色空間内にギャップを有することに起因するモデル化された画像に対する影響を例示し、クロストーク効果は、最も彩度が高い色についてのみ低減され、彩度が低い色については残っている。ギャップ内の色は、クロストークに起因して内側領域境界に効果的にクリップされる。これは、深刻な画像劣化およびアーティファクトを結果としてもたらす。
図3にあるように、上部画像は、参照であり、クロストークが3段階で増加する(ラベル付けされるように)レベルと共に、クロストークがゼロの正確な色の画像を示す。結果は、色域内の正確な色域画素(内側領域のクロストーク不彩度化色域内)と“最も彩度が高い”外側境界(少なくとも1つの部分画素が発光を有さない)に留まる色との間に不連続性があることを示す。内側領域と外側境界との間のギャップ内の色は、単純に内側領域境界へクリップされる(
図2Aおよび
図2Bにおける差のように)。不連続性は、旗のいくつかの部分と垂直方向の色のグラデーション(カラーパッチ間に明確な段差があり、上部近くにみられる)として示される。しかしながら、最も彩度が高い色は保持され、
図3にあるように失われない。
【0065】
ディスプレイによって提供される色空間内のギャップまたは不連続性の存在は望ましくないので、1つの解決策は、ディザリングプロセスによってこの空間内の少なくとも1つの色を近似することである。ディザリングは、限られた色空間を有するシステム(例えば、印刷システムおよび表示システム)において画像内に色深度の錯覚を生むために、多くの画像処理アプリケーションで使用される。ディザリングされた画像では、色空間内で利用可能ではない色は、利用可能なパレット内からのみ使用できる色を選択、混合、または一緒に拡散することによって近似される。人間の目は、色の生成された利用された色の混合を全体的な色空間の一部として認識する。利用可能な色空間内に内部ギャップを伴うディスプレイの場合、ディザリングは、ディスプレイから利用可能である色を使用して利用不可能な色を近似するために使用することができる。特に、ギャップ内の利用できない色は、利用可能な色の中から選択すること、または最も彩度が高い利用可能な色および彩度が低い利用可能な色を混合することによって生成されるディザリングプロセスによって近似することができる。望ましくは、ディザリングで使用される色の両方が同じ色相軸に沿って存在し、例えば、色相は一致し、彩度が異なる。望ましくは、ディザリングに使用される彩度が低い色は、内側領域境界にあり、もう一方は外側境界に沿ってある最も彩度が高い色である。
【0066】
ディザリングは、空間的(画素レイアウトまたは色空間のいずれかにおける)、時間的、または空間的および時間的の組み合わせとすることができる。ディザリングは、ディスプレイによって直接生成することができないギャップ内の欠落色を近似するために使用することができる。
【0067】
空間的ディザリングにより色を近似するための有用な方法の1つは、最も彩度が高い色の外側境界または同じ色相軸に沿った内側領域の境界のいずれかにギャップ内の色のカラーマッピングすることである(色空間的ディザリング)。画像コントローラは、まず、画像によって求められる色が中間ギャップ領域内にあるかどうかを判断し、次いで、内側領域境界または外側境界のいずれかのうちの最も近い境界と同じになるように色をマッピングする2レベルマッピングアルゴリズムを使用する。この場合、外側境界により近い欠落色は、最も彩度が高い色(外側境界)と同じになるように強化され、一方、内側領域境界により近い欠落色は、内側領域境界と同じになるように低減される。この方法は、適用が単純および容易であるが、連続的な色勾配を引き起こして画像のいくつかの部分において離散したステップとして表示される可能性がある。加えて、マッピングが色空間内の軸に沿っているため、これが実際には必ずしも視覚的に色相均一ではないことから、いくつかの色相誤差がもたらされることがある。
【0068】
このような色空間的ディザリングの方法の効果を
図6に示す。
図3と同様に、上部画像は参照であり、クロストークがゼロである正確な色の画像と、増加する3つのクロストークのレベル(ラベル付けされるように)とを示し、ここでは、2レベルマッピングアルゴリズムは、色空間の内側領域境界と外側境界との間のギャップ内に色を生成する。このアルゴリズムは、単純に、最も近い境界に欠落色をマッピングする。彩度が高い自動車は、外側境界まで増加される。青空の部分は外側境界まで増加され、一方、空のより彩度の低い部分は内側領域境界まで低減される。自動車は視覚的に完璧ではないとしても、それは、
図5の画像セットに対してはるかに改善される。肖像画は、彩度の高い影および唇を除きうまくいっている。色のグラデーションは、レベルが内側または外側境界にマッピングされて個別のステップまたはブロッキングを示している。マッピングが、u’v’色度空間内で直線に沿っており、必ずしも視覚的に色相が均一であるとは限らないため、いくつかの色相誤差がもたらされる(例えば、自動車のドア内のグラデーション)。
【0069】
図7A~
図7Dは、色空間内のギャップ内にあることが意図される画像色に対して2レベルマッピング補正を使用した
図6に示される画像についての対応するCIE1976u’v’色度プロット(
図2A~
図2Bに類似)を示す。
図7Aは、参照画像の画素の正確な比色分析を示す。ラベル付けされた3つのクロストークのレベル(
図7B~
図7D)は、ギャップ内の色が最も近い(内側または外側)境界に押し出されることを示している。
【0070】
上で論じられ、
図6および
図7A~
図7Dに示されたレベルマッピング解決法は、依然として、画像内にブロッキングアーティファクトをもたらし得る。理想的には、色空間におけるギャップ内の色は、そのようなブロッキングアーティファクトを回避するために、内側領域境界から外側境界まで同じ軸に沿って任意の点で近似できる必要がある。
【0071】
ギャップ内の追加の中間色の生成を可能にする1つの解決策は、時間的ディザリングである。この場合、ギャップを伴う色を生成するために、ディスプレイは、欠落色の原因となる画素からの発光が、最も彩度が高い色(外側境界)を発光することと、内側領域内のもの、特に内側領域境界に沿って存在する彩度が低い色を発光することとをすばやく交互に切り替えるようにさせる。2つの色をすばやく交互に切り替えると、各々が表示される相対的な時間に従って2つの色の間にある(人間の目にとって)任意の色を効果的に生成することができる。この方法は、内側領域と外側境界との間のギャップ内にある可能性がある色を連続的に視覚的に近似することができる。
【0072】
そのような時間的ディザリングは、いくつかの方式で、例えば、画像の単一フレーム内、または交互フレーム内で、達成することができる。
【0073】
画像の単一フレーム内での時間的ディザリングは、フレーム時間の一部においてクロストークを低減することを可能にするが、フレーム時間の別の部分においては可能にしないので、色空間のギャップ内に色を生成することができる。画像信号によって最も彩度が高い色についてクロストークの低減が有効になっている場合、その画素によって意図されるように最も彩度が高い色が発光される。しかしながら、その画素においてクロストークの低減が有効にされていない場合、クロストークは、画像信号(最も彩度が高い色を求める)が変更されていないままであったとしても、最も彩度が高い色を彩度が低い色(すなわち、内側領域境界)へと劣化させる。したがって、フレーム時間の一部の間、最も彩度が高い色(すなわち、外側境界に沿った)が発光され、時間の別の部分の間、彩度が低い色(すなわち、内側領域境界に沿った)が発光される。単一フレーム内の各発光の相対的な時間を制御することによって、2つの境界の間に存在する任意の色は視覚的に近似することができる。
【0074】
クロストークの低減がオンおよびオフである相対的なフレーム時間の制御は、画像信号にしたがってもよい。例えば、最も彩度が高い色内の部分画素が発光するべきではない場合、その部分画素への画像信号は、それを“オフ”(すなわち、CV=0)にする必要がある。そのような画像信号は、フルフレームのクロストークの低減機能を有効にする。しかしながら、依然として、非常に彩度が高いギャップ内の色の場合、低発光の部分画素の画像信号が対応する低発光を引き起こすように、すべての部分画素からいくらかの少量の発光が必要である。これらの場合において、クロストークの低減が有効にされる相対的な時間は画像信号に依存する。
【0075】
例えば、クロストークが4%に相当するディスプレイ(すなわち、クロストークのための調節がない場合、すべての部分画素はその部分画素に送信される実際のCVが0であるとしても、その近傍部分画素の少なくとも4%に相当する発光を有する)について検討する。意図した強度が1%の部分画素では、相対的な時間オン/オフは75:25であり、意図した強度が2%では、時間オン/オフは50:50であり、意図した強度が3%では、時間オン/オフは75:25であり、意図した強度が4%以上では、そのような彩度が低い色は内側領域内にあり、クロストークの存在による影響が少ないため、クロストークの低減を有効する必要がない。
【0076】
また、最も彩度が高い色のためのクロストークの低減が異なるフレーム内でオンまたはオフであるかを交互にとることによって時間的ディザリングを行うことができる。例えば、60Hzの標準ディスプレイフレームレートについて検討する。ディスプレイのフレームレートが120Hzに増加された場合、1つのフレームでフレーム全体にわたってクロストークの低減が有効になる可能性があるが、次のフレームにおいては、フレーム全体にわたってクロストークの低減が無効になる。120Hzでの2フレームは60Hzでの1フレームに相当するため、2つの中間の色に近似することになる。いくつかの連続的なフレームにわたって、多かれ少なかれ頻繁にクロストークの低減を有効にすることによって異なる色の比率を達成することができる。例えば、4つのフレームごとに1つのみでクロストークの低減を有効にすると、2つの極値の間の差の4分の1の色を近似する。この場合、より高速なフレームレート(すなわち、240Hz)が望ましい。
【0077】
時間的ディザリングの1つのバリエーションは、フレームレートを変化させることに基づいており、すべてのフレームについて固定時間にわたってクロストークの低減が有効にされる。例えば、ギャップ内の中間色では、1/120秒(60Hzフレームレートの50%)の固定時間にわたってクロストークの低減が有効にされる。しかしながら、1/120秒は、90Hzフレームの75%、または40Hzフレームレートの33%であるため、ギャップ内の異なる中間色が生成される。
【0078】
一般的に言えば、時間的ディザリングのレートは、人間の視覚系によって認識できるよりも低くなければならないが、これはすべての場合において必要なわけではないということに留意されたい。ちらつきは、(残像性にもかかわらず)人間の目によって変化が気付かれるのに十分に長い時間スケールで発生する場合であり、一般的には望ましくない。しかしながら、ちらつきは、画像の変化に伴う差の大きさおよび種類にも依存し、例えば、輝度のちらつき(より明るいものとより暗いものとの間)は、色のちらつき(同じ輝度における色の間)よりもはるかに目立つものである。望ましくは、本明細書に説明される時間的ディザリングは、輝度よりも彩度において大きく異なる色の対の間での交換を伴うので、時間的ディザリングは、高輝度と低(本質的にゼロ)輝度とを交互にとるパルス幅変調LEDシステムなどの時間的ディザリングを用いる他のシステムよりもはるかに目立たない。加えて、画像の色および輝度は、一般的に、境界を除き空間的に相関している(すなわち、色のパッチを構成する近傍画素がすべて、境界を除き類似した色および輝度を有する)ため、発生し得る小さな変化の全体的な知覚は不快ではない場合がある。さらに、画像内の大半の画素が高彩度ではない(すなわち、内側領域内)ため、それらは影響を受けない。これによって画像の小さい部分のみが影響を受け、画像の小さい領域における小さい変化は問題にならない場合がある。
【0079】
近傍画素間にいくらかの空間ブレンディングを追加することにより、上記の時間的ディザリング方法における任意のちらつき問題を軽減することも可能である。例えば、近傍画素の発光は、多くの場合に高度に相関していることから、発光がギャップ内に入る画素には、発光も同じくギャップ内に入る近傍画素を有する可能性が高い。そのような場合、上の時間的ディザリング方法のいずれも、互いに位相がずれている2つの近傍画素に適用することができる。これにより、ちらつきの出現が軽減される。
【0080】
別のタイプの好適なディザリング方法は、画素の物理的な空間関係に基づいた空間的ディザリングに基づくことができる。表示された画像の領域において、意図した発光がギャップ内に入る画素は、ある空間パターンで内側領域境界および外側境界(同等に、彩度が低い色とより彩度が高い色)に選択的にマッピングされ、通常の視覚距離から見て画素が小さい、例えば、視角度あたり25画素よりも小さい場合、中間色に混合されるように見える。空間パターンは、各タイプの画素の空間的比率、例えば、格子状に交互に配置されるように設計することができる。ランダム化された配置は、誤差拡散のように、近傍画素にわたって色誤差を蓄積させることによって生成できる。
【0081】
どの色が画素の近傍において組み合わされるかの選択は、望ましくは、画像のその部分の空間的構造に関与する画像信号によって決定することができる。
【0082】
ディザリングの様々な方法を組み合わせることができる。例えば、
図6および
図7に示されるような2レベルマッピングに基づいたディザリングは、改善された結果を提供するが、依然として、目立った色アーティファクトが発生する傾向がある。この問題は、内側領域と外側境界との間に追加の中間色点を追加することによってさらに低減することができる。これらの中間色は、例えば、上述の時間的ディザリングまたは物理空間的ディザリング方法のいずれかを使用して生成される。
【0083】
例えば、ギャップ内の色のための
図6および
図7におけるディザリングは、中間色を同じ軸上で内側領域境界または外側境界のいずれか近い方にマッピングする(2レベルマッピング)。しかしながら、少なくとも1つの中間色(別のディザリング方法によって生成される)がディスプレイに利用可能である3つ(またはそれより多くの)レベルマッピングを作成することが可能である。一般に、クロストークをより完璧に補正するには、中間レベルが多いほど好ましい。この場合、ギャップ内の任意の色は、同じ色相軸上で内側領域境界、中間色、外側境界のうち最も近いものにマッピングされる。このマッピングは、CIELABなどの均一な色空間またはIPTなどの色相線形色空間においても行うことができる。
【0084】
この種の組み合わせ方の例を
図8に示す。
図3と同様に、上の画像は参照であり、クロストークがゼロの正確な色の画像と、クロストークの3つの増加するレベル(ラベル付けされている)を示す。ここでは、3レベルマッピングアルゴリズムは、色空間の内側領域境界と外側境界との間のギャップ内に色を生成する。ギャップ内の色は、内側領域境界、外側境界、または2つの間の中間レベルにマッピングされる。中間レベルは、空間的および/または時間的ディザリングの様々な方法によって可能になる。ただし、この図では、視覚的な結果を表すためにシミュレートされている。
図6の画像と比較して、3レベルマッピングを追加すると、合成画像のすべての要素において全体的なゆがみがはるかに少なくなる。(前述の方法のように)いくつかの色相誤差がもたらされるが、それらはあまり目立たなくなる。中間レベルを増やすと、画像の歪みやアーティファクトがさらに低減する。
【0085】
図9A~
図9Dは、色空間内のギャップに3レベルマッピング補正を適用して、
図8に示す画像に対応するCIE1976 u’v’色度プロット(
図4に同様)を示す。
図9Aは、参照画像の画素の正確な比色分析を示す。ラベル付けされたクロストークの3つのレベル(
図9B~
図9D)は、ギャップ内の色が内側領域境界、中間色点、または外側境界に沿って1つの色にマッピングされることを示している。
【0086】
したがって、いくつかの色がディスプレイによって直接生成することができない色空間内のギャップを伴うディスプレイにおいて、外側境界は発光された最も彩度が高い色から形成され、内側領域および内側領域境界は発光された彩度の低い色から形成され、内側領域と外側境界との間の中間(ギャップ)領域における色はディスプレイが両方を直接的に発光することができる2つの色(すなわち、彩度度の高い色と彩度度の低い色)の間のディザリングによって近似される。望ましくは、ギャップ内の少なくとも1つの色がディザリングによって生成され、より望ましくは、2つ以上の色がディザリングによって生成され、最も望ましくは、ギャップ内の色の連続した範囲がディザリングによって生成される。これにより、ディスプレイは、望ましくないアーティファクトを低減しながら、画像内の色空間を最大化することができる。
【0087】
図10は、説明したディザリング方法のうちのいくつかを例示する。
図10Aは、画素の1次元ラインについての彩度対空間的位置の参照プロットを示す。この外観は、彩度が増加している滑らかな空間勾配、例えば、灰色から赤色への滑らかな勾配である。
図10Bは、彩度範囲を制限するクロストークの影響を示し、彩度値は、画素0~40については
図10Aと同じであり、その後、さらなる画素が彩度75(説明のため、単位は任意(a.u.)である)でクリップされ、この例では内側領域境界として機能する。
図10Cは、2レベルマッピングの結果を示しており、内側領域境界(彩度75)を超える意図した彩度(
図10Aを参照)の画素が2つのレベルにマッピングされ、内側領域境界(75)または外側境界(100)のうち個々の画素毎により近い方にマッピングされる。これは、画素60において離散したステップを結果としてもたらす。しかしながら、画素の空間範囲が一般的には人間の目の解像度に対して小さいため、局部的な空間統合の視覚的な結果は、破線で示すように、平滑化したステップになることが予想される。
図10Dは、空間的ディザリングを組み込んだ好ましいマッピング解決策を示す。ギャップ内の画素は、マッピングされた画素と意図した参照彩度との間の累積誤差を最小限にするため、それらの近傍を考慮して内側領域境界(75)または外側境界(100)のいずれかにマッピングされる。これは、内側領域と外側境界との間で行ったり来たりすることになり、内側領域境界ではより多くの画素が比較的より低い意図した彩度にあり(例えば、画素40~50)、外側境界ではより多くの画素が比較的より高い意図した彩度にある(例えば、画素70~80)。ここでも、破線は、局部的な空間統合の予想される視覚的な結果を示し、これは、幾分でこぼこが多いが、全体的な傾きにおいて
図10Aに示される参照と類似している。
【0088】
図11は、
図10と同様の例示であり、実際には、
図11Aは、
図10Aと同じ参照であり、
図11Bは、
図10Bに示されるようなクロストークから生じる同じクリッピングを示す。
図11Cは、参照の意図した彩度がギャップ内にある画素(75~100)が、内側領域境界(75)、中間レベル(87.5)、または外側境界(100)のうちの最も近いものにマッピングされる3レベルマッピングの結果を示す。これにより、2つの離散したステップが発生し、
図10Cにおける単一のステップよりも視覚的に平滑であり、破線によって示されるように2つの平滑化されたステップを視覚的に生成することが予想される。
図11Dは、参照の意図した彩度がギャップ内にある画素(75~100)が、それらの近傍を考慮して、内側領域境界(75)、中間レベル(87.5)、または外側境界(100)のいずれかにマッピングされる3レベルマッピングと組み合わせた空間的ディザリングの結果を示す。画素の彩度レベルは、意図した彩度に従って、これらの3つのレベルの間を行き来し、破線として示されるようなより平滑なグラデーションが予想される。
【0089】
図12は、説明された様々なディザリング方法のうちのいくつかの比色分析結果を示す。
図12Aは、
図3で使用された旗画像内の選された画素の正確な色の参照色度を示す。ラベル付けされた楕円は、彩度においては幅広く(おおまかに、図内の上下)、および色相においてはより狭く(おおまかに、図内の左右)色度空間内に分散される旗画像内の紫色の画素に対応する点の大群を示す。それらはまた、輝度においても様々であるが、その次元は色度図には示されない。
図12Bは、基本のクロストーク低減の結果を示しており、外側境界における幾つかの点が保持されるが、意図した色がギャップ内に入るほとんどの画素が内側領域境界にマッピングされる。このプロットに対応する画像は、
図5の3行目にあり、一貫した彩度の低下による劇的な劣化を示す。
図12Cは、2レベルマッピングの結果を示しており、意図した色がギャップ内にある画素は、内側領域境界または外側境界のうちの近い方にマッピングされる。このプロットに対応する画像は、
図6の3行目にあり、
図5と比較して、画素の一部が外側境界にマッピングされることから、旗の紫色の部分の彩度が保持されることを示し、
図6の一番上の行の参照画像よりも紫色がわずかにより彩度が高く、色相がわずかに異なるように見える。
図12Dは、3レベルマッピングの結果を示しており、意図した色がギャップ内に入る画素が内側領域境界、外側境界、または間の中間レベルのうちの最も近いものにマッピングされる。このプロットに対応する画像は、
図8の3行目にあり、
図5および
図6と比較して、旗の紫色の部分の彩度および色相が保持されることを示す。中間レベルの使用は、中間色を利用可能にし、画像画素の彩度が過剰および過少になることを回避することによって、色の再現精度を大いに改善するということに留意されたい。
【0090】
任意の部分画素に存在するクロストークの量は、近傍画素間の発光レベルおける差が大きくなるにつれて増加され、多くの場合には画素間の距離が増加されると減少する。最も彩度が高い色の場合、少なくとも1つの部分画素が発光しないようにする必要があり、画像コントローラによってクロストークの低減が有効され、その部分画素内においてクロストークによる発光が発生しないようにする。画像コントローラは、また、近傍または周囲の画素の相対的な画像信号を同時に決定し、発光がクロストークによる影響を受ける範囲にあるかどうかを決定することができる。
【0091】
例えば、画像コントローラは、(最も彩度が高い色を有する画素内で)ある特定の部分画素が発光するべきではないことを決定し、そのため、少なくとも1つの部分画素のための画像信号は非発光(すなわち、CV=0)のためのものであり、その部分画素のクロストークの低減を有効にする。彩度が低い色を発光する画素の場合、画像コントローラは、近傍部分画素のための画像信号をサンプリングする。ある部分画素のための画像信号が、近傍部分画素(例えば、内側領域の色のための)よりも大きいか、またはこれに等しい場合、クロストークは最小限に抑えられるため、その部分画素のためにクロストークの低減は有効にはされない。しかしながら、画像信号における差によって、発光された色がギャップ内に入るようなものである場合、相対的な差によって適切なレベルのディザリングを有効にする。
【0092】
原色の場合、Rは赤色光(>600nm、望ましくは、620~660nmの範囲)を示し、Gは緑色光(500~600nm、望ましくは、540~565nmの範囲)を示し、Bは青色光(<500nm、望ましくは、440~485nmの範囲)を示す。二次色の場合、Y(黄色)は、RおよびG光の両方を示すが、B光は示さず、C(シアン)は、R光なしでBおよびG光の両方を示し、M(マゼンタ)は、G光なしでBおよびR光の両方を示す。理論上、RGBシステムにおける最も彩度が高い色は、R、G、またはBのうちの少なくとも1つが存在せず、対応する部分画素が発光しない色である。例えば、最も彩度が高い色は、R(GまたはBが存在しない)、G(BまたはRが存在しない)、B(GまたはRが存在しない)、Y(Bが存在しない)、C(Rが存在しない)、M(Gが存在しない)であり得る。最も彩度が高い色は、輝度が高い必要はないということに留意されたい。例えば、(100%、0%、0%)のRGB強度組み合わせは、利用可能な最高の輝度、最高の彩度の赤色であり、(20%、0%、0%)のRGB強度組み合わせは、異なる(より低い)輝度の最高の彩度の赤色である。不足している色がある程度存在する場合はいつでも色の彩度が低くなる。特に明記しない限り、波長は、真空値で表現され、In-situ値ではない。
【0093】
アクティブマトリクスディスプレイは、一般的に、直交する列および行の2次元アレイで配置される個々の制御される部分画素のアレイを有すると理解される。しかしながら、“列”および“行”は、主観的な用語であり、任意の特定の配向を示唆せず、むしろ、単一の点においてのみ重複する個々の部分画素の2つのグルーピングを示唆するとさらに理解される。アクティブマトリクス技術において、“列”は、一般的に、アレイ内の垂直方向に整列されるものとして描かれ、“行”は、一般的に、アレイ内の水平方向に整列されるものとして描かれることが慣例である。同様に、慣例的に“データライン”と称され、垂直方向にあるものとして描かれる、“列”に沿ったすべての部分画素のための共通の電気的接続、ならびに、慣例的に“走査”または“選択”ラインと称され、水平方向にあるものとして描かれる、“行”に沿ったすべての部分画素のための共通の電気的接続が存在する。しかしながら、これらの慣例的な用語は、部分画素の実際の物理的場所を反映する場合とそうでない場合とがある。一般的に、画素に送信される“データ信号”または“画像信号”は、その画素によって必要とされる輝度の量を制御する一方、“走査または選択信号”は、“データ信号”が送信され、画素において受信されるタイミングを制御する、と理解される。
【0094】
画像コントローラは、通常、1つの画像信号に対して短い時間期間(“フレーム”)にわたってディスプレイを発光させ、その後、新規の画像信号に従ってディスプレイをリフレッシュする。こうして、動画は、経時的に一連のフレームで表示することができる。通常、フレーム時間は、顕著なちらつきを回避するために人間の視覚系の検出限界を下回るように選択され、画像ディスプレイにおけるその変化は平滑かつシームレスである。
【0095】
ディスプレイ内のデータまたは画像信号は、制御回路によって各部分画素に送信されて、その発光のレベルを制御する。これらの画像信号は、連続的ではなく、上限または最大レベルの発光を生成する信号と、発光を生成しないか、最小量の発光を生成する信号との間の何らかのレベル数へと量子化されるのが一般的である。これらのレベルは、Code値またはCV(他の呼称の中から)と呼ばれる。ディスプレイに使用される共通のシステムは、2つの極値の間に254の別個の中間レベルが存在するように、CV=0が非発光を示し、CV=255が最大発光を示すというものである。
【0096】
アクティブマトリクスディスプレイ内の部分画素は、通常、行または列に配置されるが、各々が異なる色を発光する空間的に相関する部分画素がグループとして組み合わされて個々の画素を形成する。それらの組み合わされた発光が、画素からの発光を形成する。画素内の部分画素は、任意のパターンで配置することができる。例えば、1つの列は、交互のGおよびRの部分画素から構成され、隣接する列は、B部分画素のみから構成され得る。あるいは、パターンは、R、G、およびB列を交互にするものであってもよい。場合によっては、本発明のクロストーク低減/ディザリング方法は、すべての部分画像ではなく、列または行のサブセットのみにしてもよい。例えば、それは、R列のみに適用することができ、GおよびB列には適用されない。クロストークの低減はまた、近傍画素の観点からも説明することができ、近傍画素は、水平、垂直、または直交方向に直接隣接するもの、ならびに任意の方向における近く、例えば、画素ピッチの最大20倍の物理的距離、または、ユーザから見て最大0.5度の視角にあるものを含む。クロストーク低減は、存在するクロストークの大きさ、特定の色におけるクロストークの可視性、または組み合わせのいずれかに従って、異なるR、G、およびB色チャネルに対して異なる方法で適用することができる。
【0097】
アクティブマトリクスディスプレイにおいて、各部分画素は、動作するために、他の部分画素の個々に制御された電極とは別個であり、少なくとも1つの個々に制御された電極を有さなければならない。言い換えると、各部分画素の個々に制御された電極部分は、すべての部分画素にわたって共通または連続的であるのに比較して、個々に制御された部分へと「セグメント化」または「分割」される。典型的には、発光素子への部分画素回路の電気的接続は、セグメント化された電極を通じてなされる。本説明の文脈において、“部分画素”は、単一の均一かつ最小のユニットとして作用し、それ以上は細分されないということに留意されたい。部分画素については、“オフ”は、画素から意図的に発行される光が存在しないように画像信号が設定されることを意味し、“オン”は、最小レベルを上回る少なくともいくらかの光が発光されることが意図されることを意味する。“オフ”である画素は、生成され得る最大発光が1%を、およびより好ましくは0.01%を、超えるべきではない。理想的には、“オフ”画素は、発光を全く有するべきではない。“オフ”画素は、“暗い”または“黒色”画素とも呼ばれ、これらは等価の用語である。
【0098】
すべての画素においてではなく、画素の1つのサブセットで何らかの方法によってクロストークを除去すると、色空間内にギャップをもたらす。望ましくは、クロストークに起因する最大の影響を示すために、クロストークの低減方法は、外側境界における最も彩度が高い色を発光する画素にのみ適用されるべきである。しかしながら、場合によっては、特に、クロストークの低減方法が画素のすべての発光を防止せず、望ましくない発光の量を低減するだけである場合、最も彩度が高い色に彩度が近い色にも同様にクロストークの低減を適用することが有用な場合がある。しかしながら、発光も防止し、そのためクロストークと画像信号に起因する低レベルの発光とを区別することができないクロストークの低減方法では、彩度が低い色を崩壊させて最も彩度が高い色とする。ディスプレイによっては、これでも許容できる結果が得られる場合がある。
【0099】
したがって、1)画素が非発光の画像信号を有する少なくとも1つの部分画素を有するかどうかを決定する制御回路を含み、2)次いで、その部分画素からの発光を低減または防止するディスプレイは、ギャップを少なくとも部分的に埋めるように利用可能な色をディザリングすることによって、結果として生じる色空間内のギャップを低減することで利益を得ることができる。特に、発光の低減または防止の機構の1つの例は、OLED電極の下部電極における電位を制御することを含むことができる。いくつかの実施形態において、特定の部分画素のための任意のクロストーク低減技術の適用は、画像信号に、特に、部分画素が“オフ”であるとされるかどうかに依存し得る。例えば、クロストーク低減は、少なくとも1つの部分画素の画像信号は非発光であり、その色度の最大輝度の1%~0.01%の間で選択された輝度しきい値未満に対応する完全な彩度の色に適用することができる。例えば、8ビットのsRGB様のカラーエンコーディングにおいて、1%強度は約CV26に対応し、0.01%は1CV未満に対応する。8ビットより大きい値を使用するか、異なる非線形エンコーディングを使用するかと、1%または0.01%が異なるCVに対応することになるため、クロストーク低減のしきい値は、輝度、パーセント輝度、またはCVで指定することができる。しかしながら、クロストーク低減技術の適用は、画像信号に関係のなく、これと独立したプロセスによって決定され得る。
【0100】
色空間内のギャップの原因は、クロストークによって引き起こされる彩度に対する影響という観点から論じられているが、ディスプレイの色空間内にギャップが生ずる唯一のメカニズムというわけではない。色空間内にギャップが生ずる他の原因は、大きい量子化ステップ、低いビット深度、異なる輝度または強度範囲を有する2つ以上の動作「モード」が含まれる可能性がある。色空間内にギャップを伴うディスプレイは、ギャップを引き起こす原因となるメカニズムに関係なく、利用可能な色をディザリングすることによってギャップを少なくとも部分的に埋めることにより、色空間内のギャップを低減することで利益を得ることができる。一部のディスプレイシステムは、別個のカラーステップが使用される。すなわち、同じ色相軸に沿って存在する色は連続的ではなく、小さなステップ(量子化)に分割される。多くの場合、ステップの差は小さく、そのため、目には明らかではない。この種の“ギャップ”は、ディスプレイに固有であり、部分的なクロストーク補正によって引き起こされる中間色を生成する必要がある色空間内のギャップとは異なる。
【0101】
色空間内のギャップを埋めるために利用可能な色をディザリングする技術は、何らかの理由で非連続的な色空間を有する任意のディスプレイにおいて使用することができる。不連続的な色空間の原因となるクロストーク低減のための補正を含むディスプレイに必ずしも限定されない。また、不連続的な色空間を引き起こすメカニズムとは関係なく不連続的な色空間を使用して、デジタルデータに基づいて画像を生成することができるプリンタおよび他の非ディスプレイデバイスを含む任意のデバイスに適用することができる。それは、RGBまたはRGBWデバイスに限定されず、B+Y、B+Orange、CMY、CMYK、および他の種類の色空間においても使用することができる。それは、単色デバイス、特に、緑色単カラーディスプレイに適用することができる。
【0102】
本出願は、以下を含み得る。
最も彩度が高い色による色空間全体の外側境界、および内側領域境界を有する彩度が低い色によって形成される内側領域を含むディスプレイ内の改善された色空間を生成する方法であって、
-内側領域と外側境界との間の中間領域内の少なくともいくつかの色は、よりまたは最も彩度が高い色と彩度が低い色との間のディザリングによって近似される、方法。
【0103】
上記方法は、色空間内にギャップまたは不連続性が存在する任意のディスプレイに適用することができる。ギャップは、最も彩度が高い色と彩度が低い色との間の色を発光することができないディスプレイによって引き起こされる可能性がある。
ディスプレイ内の改善された色空間を生成する方法であって、
-表示されるべき画像に基づいて、最も彩度が高い色に従う色空間全体の外側境界を決定するステップと、
-表示されるべき画像に基づいて、内側領域境界を有する彩度が低い色によって形成される内側領域を決定するステップと、
-内側領域と色空間の他の境界との間にギャップが存在するかどうかを決定するステップであって、ディスプレイが、本質的にギャップ内で色を発光することができないか否かを決定する、ステップと、
-内側領域と外側境界との間の色空間内のギャップが存在する場合、中間領域の色を形成するために、外側境界の最も彩度が高い色と彩度が低い色との間でのディザリングによって、ギャップ内に少なくとも1つの色を形成するステップと、を含む方法。
【0104】
上記方法では、ディザリングは、色空間内の点に関して空間的(色空間的ディザリング)、時間的、または相対的な画素位置に関して空間的(物理空間的ディザリング)、またはそれらの組み合わせとすることができる。彩度が低い色は、同じ色相軸に沿った内側領域境界に沿っていてもよい。色空間の外側境界を決定するステップは、画素の少なくとも1つの部分画素の画像信号が非発光または輝度しきい値未満、例えば、その色度における最大輝度の1%、またはCV=0もしくはCV<26に対応するかどうかを決定することを含むことができる。上記方法は、非発光、または最大輝度の1%のしきい値未満に対応する画像信号を有する任意の部分画素にクロストーク低減方法を適用する追加ステップを含むことができる。したがって、輝度しきい値が適用される場合、結果として生じる高彩度の発光は、“最も彩度が高い色”として含まれると考えられる。
【0105】
上記方法では、ディスプレイが、カラーフィルタアレイを備えたマルチモーダル(白色発光)マイクロキャビティであるOLEDであり、発光ユニットの3つ以上のスタックを有し、また5V以上のしきい値電圧Vthを有することができる。クロストーク低減方法は、その画像信号が非発光で対応するか、しきい値未満であるかに基づいて、OLED部分画素電極の下部電極における電位を制御することによる発光の低減または防止を含むことができる。
【0106】
クロストークは、ディスプレイによって生成することができない色の色空間内の“中間領域”または“ギャップ”を作成する可能性がある。内側領域と外側境界との間の色の差を意味するギャップのサイズは、通常、原色方向においてより大きく、輝度の影響も受ける。色域体積(ディスプレイによって可能になる色の範囲)は、一般的には、3D多面体のような立体であるためで、実際には、ギャップは、2つの3D多面体のような立体の間の空間であり、2Dで説明することは困難である。色度図(
図1Aに示す)またはCIELABのa
*b
*平面(
図1Bに示す)での2D投影は、ギャップの概念を示すが、ギャップの形状または程度を完全には示さない。
【0107】
クロストークおよび他の影響により、影響を受ける画素もあれば受けない画素もあるディスプレイ内の色空間内にギャップが引き起こされる可能性があるが、ギャップのサイズは必ずしもすべての色で一定ではない。ディスプレイの特徴に応じて、いくつかの色は、他のものよりも多く影響を及ぼされことがあり、ディスプレイの出力に色誤差をもたらす可能性がある。所望の彩度の高い色について、クロストークの結果として生ずる色とクロストークの低減を伴う結果として生じる色との差は、DE00などの色差に関して測定することができる。これは、
図13に示され、様々なレベルのクロストークを伴うsRGB様のディスプレイシステム(本質的に、原色および二次色を接続する色の軌跡、赤から、黄色、緑色、シアン、青、マゼンタへ、そして赤に戻る3D色空間内の環)内の最大の彩度色のセットについてDE00対CIELABの色相角をプロットしたものである。プロットされたDE00値は、基本的に、
図1Aに示された三角形の間の色差であり、輝度及び色度の差を考慮している。DE00内の各実線の高さは、ギャップのサイズを示しており、これは異なる色相角では異なり、破線は、クロストーク(XT)に対応するレベルでラベル付けされたすべての色相角にわたる平均DE00を示す。すべてのレベルのクロストークについて、ギャップのサイズに対応するDE00は、赤(色相角~28)、青(色相角~300)、およびマゼンタ(色相角~327)色でははるかに大きく、緑(色相角~139)、シアン(色相角~197)、および黄(色相角~105)色では小さい。ギャップサイズは、色相によって異なるため、クロストーク低減の必要性およびその適用は色相によって異なり得る。そのような状況において、中間領域(ギャップ)内に色を生成するためのディザリングの使用は、画像のいくつかの選択された色にのみ適用することができ、画像内のすべての色に適用されるわけではない。
【0108】
共通層を有するOLEDディスプレイでは、クロストークは、1つの部分画素から近傍部分画素への共通層を通じた横方向の電荷キャリア移動によって引き起こされる可能性がある。また、クロストークは、部分画素が小さく、高解像度を達成するために非常に高密度に充填されるマイクロディスプレイにおいては著しい問題になる可能性がある。共通層を有するOLEDマイクロディスプレイは、特に、許容できないレベルのクロストークにつながりやすい。望ましくは、OLEDは、カラーフィルタアレイを有するマルチモーダル(白色発光)マイクロキャビティであり、発光ユニットの3つ以上のスタックを有することができる。そのようなOLED構築は、製造可能性の容易さを維持しながら高レベルの輝度を達成することができる。
【0109】
好適なマルチモーダルマイクロキャビティOLEDは、
図14に例示される。
【0110】
図14は、R、G、およびB画素を作成するために、カラーフィルタアレイ(CFA)と共にすべての画素にわたって共通であるマルチモーダル(白色)OLEDマイクロキャビティを使用するディスプレイ400を例示する。マルチモーダルOLEDは、2つ以上の光の色を生成する。理想的には、マルチモーダルOLEDは、およそ等しい量のR、G、およびB光を有する白色光を生成する。通常、これは約0.33、0.33のCIE
x、CIE
y値に対応する。しかしながら、これらの値からのいくらかの変動は依然として許容され、RGB画素を作成するために使用されるカラーフィルタの特徴によっては望ましいことさえある。ディスプレイ400には、マイクロキャビティ効果も組み込まれている。この実施形態では、マルチモーダルOLEDスタックは、異なる色を発光する3つのOLED発光ユニットを含み、各ユニットは、反射表面と上部電極との間の距離が活性領域にわたって一定であるCGLによって別のユニットから垂直に分離される。そのような配置は、各々がCGLによって分離される3つの別個の発光ユニットが存在することから、“3つのスタック”を有すると呼ぶことができる。
【0111】
ディスプレイ400には、制御回路のアレイと、入力信号に従って部分画素に電力を供給する必要な構成要素を備えるシリコンバックプレーン103が存在する。トランジスタおよび制御回路を有する層103の上には、オプションの平坦化層105が存在してもよい。層105(存在する場合)の上には、電気接点107によって接続された個々の第1の電極セグメント109があり、これらはオプションの平坦化層を通って延び、個々の下部電極セグメント109と層103内の制御回路との間に電気接点を形成する。この実施形態では、下部電極セグメント109は、基板により近い反射層109Bと、OLED層により近い電極層109Aの2つの層を有する。個々の下部電極セグメント109は、横方向に互いに電気的に絶縁されている。セグメント化された下部電極セグメント109の上には、電子若しくは正孔注入層又は電子若しくは正孔輸送層などの非発光OLED層111である。赤色OLED光生成ユニット113は、OLED層111の上にある。層115は、赤色OLED光生成ユニット113と緑色OLED光生成ユニット117との間にあり、これらを分離する第1の電荷生成層(CGL)である。緑色光生成ユニット117の上には、緑色OLED光生成ユニット117と青色OLED光生成ユニット121との間に位置し、これらを分離する第2の電荷生成層119が存在する。青色OLED光生成ユニット121の上には、電子若しくは正孔輸送層又は電子若しくは正孔注入層、および半透明上部電極125などの非発光OLED層123がある。これにより、反射表面109Bの最上表面から半反射電極でもある半透明上部電極125の最低表面まで延びるOLEDマイクロキャビティ130が形成される。OLEDマイクロキャビティは、封入層127によって環境から保護される。この実施形態において、B、G、およびR光が下層の電極セグメントに供給される電極に従って発光されるように、OLEDマイクロキャビティ130によって生成されるマルチモーダル発光をフィルタリングするカラーフィルタ129B、129G、および129Rを有するカラーフィルタアレイが存在する。
【0112】
そのようなOLEDスタックのための好適な構築および材料は、周知であり、例えば、米国特許第7273663号、米国特許第9379346号、米国特許第9741957号、米国特許第9281487号、米国特許第2020/0013978号、および米国特許第11031577号はすべて、各々が中間接続層または電荷生成層によって分離される発光OLEDユニットの複数のスタックを有するOLEDスタックについて説明している。Springerら、Optics Express、24(24)、28131(2016)は、各ユニットが異なる色を有する、2つおよび3つの発光ユニットを有するOLEDスタックを報告している。最大6つの発光ユニットのOLEDスタックが、報告されている(Spindlerら、“High Brightness OLED Lighting”、SID Display Week 2016、San Francisco CA、May 23-27、2016)。そのようなディスプレイのための好適なバックプレーンも周知であり、市販されている;例えば、Choら、Journal of Information Display、20(4)、249-255、2019;https://www.ravepubs.com/oled-silicon-come-new-joint-venture/、2018年公開;およびXiao、“Recent Developments in Tandem White Organic Light-Emitting Diodes”、Molecules、24、151(2019)。
【0113】
クロストーク低減方法の適用は、しきい値電圧Vthが5V以上のOLEDディスプレイに特に有用である。そのような高電圧OLEDは、輝度が向上するが、高電圧はまた画素内でのキャリア移動の生成を促進し、近傍画素への移動が増加し、意図しない発光によるクロストークが増大する結果をもたらす。したがって、色空間は、クロストーク低減方法が最も彩度が高い色が発光されることを可能にするために適用されるとき、そのようなディスプレイにおいて著しく影響を与える可能性がある。OLEDスタックのしきい値電圧(Vth)は、著しい発光が開始した後に、電圧軸へ戻るI-V曲線の線形外挿によって推定することができる。この方法は、OLEDのためのI-V反応曲線がそれらの反応範囲にわたって完全に線形ではない場合があることが理由で正確ではないため、この様式で計算された値は正確ではない。一般的な範囲は、+/-10%である。
【0114】
ディザリングによる中間領域内の色の生成は、2つの異なる色に関与する。しかしながら、3つ以上の色を一緒にディザリングすることによって中間色を生成することが可能である。同じ色相軸に沿って存在する2つの色をディザリングすることが望ましいが、ディザリングが、異なる色相および/または異なる輝度レベルの彩度が低い色およびより彩度した色の選択に関与し得るということも可能である。
【0115】
説明された特徴はいずれも、不適合な場合を除いて、所望の通りに、限定なしに、任意の順序または程度に組み合わされ得るということに留意されたい。
【0116】
図3、
図5、
図6、および
図8で使用される色画像はすべて、
図3の一部としてリストされるソースからのパブリックドメイン内にある。これらの図に実証される視覚的な色効果は、B+W画像への変換中に失われるということに留意されたい。元の色画像は、必要に応じて利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
R 赤、G 緑、B 青、C シアン、M マゼンタ、Y 黄、XT クロストーク、400 マルチモーダルOLED、103 トランジスタおよび制御回路を含むバックプレーン、105 任意選択の平坦化層、107 電気接点、109 第1の(下部)電極セグメント、109A 電極層、109B 反射層、111 非発光OLED層、113 赤色OLED光生成ユニット、115 第1の電荷生成層(CGL)、117 緑色OLED光生成ユニット、119 第2の電荷生成層(CGL)、121 青色OLED光生成ユニット、123 非発光OLED層、125 第2の半透明(上部)電極、127 封入層、130 OLEDマイクロキャビティ、129B、129G、および129R カラーフィルタアレイ。