(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】プロセス流体流測定装置の流体流干渉装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/40 20060101AFI20240530BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240530BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20240530BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20240530BHJP
B33Y 80/00 20150101ALN20240530BHJP
【FI】
G01F1/40
B22F10/28
B22F12/50
B22F10/85
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2023528729
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 US2021042181
(87)【国際公開番号】W WO2022103453
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】ケニヨン,ナサニエル カーク
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203203633(CN,U)
【文献】中国実用新案第205317269(CN,U)
【文献】中国実用新案第208383202(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/34-1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体流測定装置の流体流干渉装置であって、
第1の面を有する第1の壁と、
前記第1の壁の前記第1の面の近位端に配置されて第1の頂点を構成する近位端を有する第2の壁と、
前記第1の壁の前記第1の面の前記近位端からある距離で前記第2の壁と平行に配置されて対応する付加的な頂点を構成する少なくとも1つの付加的な壁と、
を備え、
前記第1の壁の遠位端ならびに第2の壁の遠位端および少なくとも1つの付加的な壁の遠位端の少なくとも一方が流量計導管の内壁に接触するように構成された、流体流干渉装置。
【請求項2】
前記第1の壁の前記第1の面に接触するとともに前記第2の壁まで延び、前記少なくとも1つの付加的な壁と交差したリブをさらに備え、
前記リブが、前記第1の壁、前記第2の壁、および前記少なくとも1つの付加的な壁と垂直に配置された、請求項1に記載の流体流干渉装置。
【請求項3】
前記リブが、前記第1の壁の前記遠位端から前記第1の面に沿って前記第2の壁まで直線状に延びた、請求項2に記載の流体流干渉装置。
【請求項4】
前記リブ上に配置されたアンカーボスをさらに備え
、前記アンカーボスが、アンカー用の少なくとも1つの孔をさらに含む、請求項2に記載の流体流干渉装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの付加的な壁が、第3の壁および付加的な壁を含む、請求項1に記載の流体流干渉装置。
【請求項6】
各孔が対応する頂点と位置合わせされた、
請求項4に記載の流体流干渉装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの付加的な壁の切断面上に配置された前記リブ中の切り欠きをさらに備え、前記切り欠きが、前記少なくとも1つの付加的な壁と隣り合う、請求項2に記載の流体流干渉装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの付加的な壁の切断面と隣り合う前記リブの各面が、切断ガイドを含む、請求項2に記載の流体流干渉装置。
【請求項9】
前記第2の壁および前記少なくとも1つの付加的な壁がそれぞれ、特定のh/D比点に配置された、請求項1に記載の流体流干渉装置。
【請求項10】
プロセス流体流測定装置の流体流干渉装置を製造する方法であって、
第1の面を有する第1の壁を用意することと、
前記第1の壁の前記第1の面の近位端に第2の壁を配置して第1の頂点を構成することと、
前記第1の壁の前記第1の面の前記近位端からある距離で前記第2の壁と平行に少なくとも1つの付加的な壁を配置して対応する付加的な頂点を構成することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの付加的な壁それぞれを前記第1の壁から前記第2の壁まで直線状に延びたリブと交差させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リブおよび前記第1の壁を前記少なくとも1つの付加的な壁の切断面に沿って指定のh/D比まで切り裂くことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体流干渉装置を単一の自立構造として構成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
プロセス流体流を測定するためのシステムであって、
入口および出口を有する流体流導管と、
請求項1に記載の流体流干渉装置と、
前記流体流干渉装置の両側のプロセス流体差圧を検知するように配設された差圧センサと、
を備えた、プロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項15】
前記第1の壁の
前記第1の面に接触するとともに前記第2の壁まで延び、前記少なくとも1つの付加的な壁と交差して配置したリブをさらに備え、
前記リブが、前記第1の壁、前記第2の壁、および前記少なくとも1つの付加的な壁と垂直に配置された、請求項14に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項16】
前記リブ上に配置されたアンカーボスをさらに備え、前記アンカーボスが、アンカー用の少なくとも1つの孔をさらに含む、請求項15に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項17】
各孔が、対応する頂点と位置合わせされた、請求項16に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項18】
前記流体流干渉装置が、前記アンカーで前記流体流導管に固定された、請求項16に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項19】
前記第1の壁が、前記流体流導管の前記入口側または前記出口側に配置され、前記第2の壁および/または前記少なくとも1つの付加的な壁が、前記流体流導管の反対側に配置された、請求項18に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【請求項20】
前記第2の壁および/または前記少なくとも1つの付加的な壁がそれぞれ、特定のh/D比点に配置された、請求項14に記載のプロセス流体流を測定するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセス制御測定装置と関連する。より詳細に、本発明は、プロセス流体の流体流を測定する装置と関連する。
【背景技術】
【0002】
プロセス変数のリモート検知または制御のため、プロセス変数送信器等のフィールド装置が多くの工業で使用されている。このようなプロセス変数は一般的に、スラリー、液体、蒸気、ガス等の流体、化学物質、パルプ、石油、医薬品、食品等の流体処理プラントと関連付けられる。プロセス変数には、圧力、温度、流量、濁度、密度、濃度、化学補償、および他の特性を含み得る。フィールド装置の他の例としては、バルブ、アクチュエータ、ヒータ、およびコントローラが挙げられる。
【0003】
工業プロセス流体流測定装置は一般的に、複数の構成要素を必要とする。たとえば、ある種のプロセス流体流送信器は、導管内の流体流中に配設された流体干渉装置を具備する。そして、プロセス流送信器は、流体導管において、オリフィス板、vコーン、または調節用オリフィス板等の流体干渉装置の前後の差圧を測定し、そこを通過する流体の質量流または体積流を計算する。流体干渉装置は、その干渉の上流側と下流側との間に、流体の流量と関連する差圧を発生させる。その後、プロセス変数流体流送信器は、流体流情報をプロセスコントローラ(制御室に配置されたコンピュータあるいは現場に据え付けられた別のフィールド装置であってもよい)に伝達する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェッジ式流量計は通常、ウェッジ形状の流体干渉装置を用いることによりパイプを制限して差圧信号を生成するパイプスプール式の流量計である。計器分岐部は、一般的にリモートシールを介して、差圧信号を差圧送信器に送信する。ウェッジ式流量計の利点のひとつとしては、ウェッジ要素の摩滅がオリフィス板よりもはるかに低速である。オリフィス板にはあまり適さない粘性流、侵食流、または粒子含有流の流量測定には通常、ウェッジが使用される。最も一般的なウェッジ流量計設計のうちの2つが外部ウェッジ要素および内部ウェッジ要素である。
【0005】
外部ウェッジ要素は一般的に、アングルバーにより構成され、流量計本体のV字状スロットに溶接される。外部ウェッジ流量計の利点は、特殊な製造機器も工具類もほとんど必要とされない点である。外部ウェッジ要素のサイズは、V字状スロットのサイズおよび使用するアングルバーのサイズによって制御可能である。外部ウェッジ流量計の欠点としては、関係する形状の公差および溶接変形による流量測定の精度低下の可能性がある。外部ウェッジは、妥当な測定精度を得るために校正の必要がある。
【0006】
内部ウェッジ要素は、流量計本体中へと摺動して適所にアンカリングされる。ウェッジ要素の外径は、ウェッジ流量計の導管本体の内径よりもわずかに小さくサイズ規定され、内部でウェッジ要素が摺動可能となっている。内部ウェッジの丸みを帯びたウェッジ形状は、ウェッジ要素の固定/保持が難しいため、従来の機械加工法すなわちフライス加工、コンピュータ数値制御(CNC)等には適さない。内部ウェッジは通常、まず旋盤上でバーの外径をウェッジ流量計の内径に合わせて加工した後、ワイヤ放電加工(EDM)によってバー材からウェッジ形状を切り出すことにより作製される。このように構成された内部ウェッジの利点は、製造公差の改善によって、外部ウェッジよりも精度が高い点である。内部ウェッジの欠点としては、材料の浪費、ウェッジ要素の大きな重量および密度、特殊なEDMプロセス能力の必要性、ならびに大きなバー材の在庫および加工の必要性による材料の取り扱いリスクが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書のいくつかの態様によれば、プロセス流体流測定装置の流体流干渉装置は、第1の面を有する第1の壁を備える。第1の壁の第1の面の近位端には、近位端を有する第2の壁が配置されている。この配置は、第1の壁と第2の壁との間で第1の頂点を構成する。第1の壁の第1の面の近位端からある距離には、第2の壁と平行に少なくとも1つの付加的な壁が配置されている。この少なくとも1つの付加的な壁および第1の壁の配置は、対応する付加的な頂点を構成する。
【0008】
本明細書のいくつかの態様によれば、プロセス流体流測定装置の流体流干渉装置を製造する方法は、第1の面を有する第1の壁を用意することと、第1の壁の第1の面の近位端に第2の壁を配置して第1の頂点を構成することと、を含む。さらに、第1の壁の第1の面の近位端からある距離で第2の壁と平行に少なくとも1つの付加的な壁を配置して対応する付加的な頂点を構成する。
【0009】
本明細書のいくつかの態様によれば、プロセス流体流を測定するためのシステムは、入口および出口を有する流体流導管を備える。流体流干渉装置は、流体流導管の本体中、入口と出口との間に配置されている。流体流干渉装置は、第1の面を有する第1の壁を備える。第1の壁の第1の面の近位端には、近位端を有する第2の壁が配置されている。この配置は、第1の壁と第2の壁との間で第1の頂点を構成する。第1の壁の第1の面の近位端からある距離には、第2の壁と平行に少なくとも1つの付加的な壁が配置されている。この少なくとも1つの付加的な壁および第1の壁の配置は、対応する付加的な頂点を構成する。また、流体流干渉装置の両側のプロセス流体差圧を検知するように、差圧センサが配設されている。
【0010】
この概要は、以下の詳細な説明に別途記載の一連の概念を簡素化して紹介するためのものである。この概要は、特許請求の範囲に係る主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定する意図もなければ、特許請求の範囲に係る主題の範囲の決定の補助としての使用も意図しない。特許請求の範囲に係る主題は、背景に記載のありとあらゆる欠点を解決する実施態様に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
プロセス流体流測定装置の模式的な一実施形態を示した図である。
【
図2A】流体流干渉装置としての内部ウェッジ要素を備えた流体流導管の切り取り図である。
【
図2B】
図1の差圧送信器および制御室の一実施形態を示した図である。
【
図2C】
図1の差圧送信器の簡略ブロック図である。
【
図4A】流体流干渉装置の一実施形態を示した図である。
【
図4B】流体流干渉装置の一実施形態を示した図である。
【
図6】流体流干渉装置のリブの一実施形態を示した図である。
【
図7】流体流干渉装置の一実施形態の断面図である。
【
図8】流体流干渉装置の一実施形態を示した図である。
【
図9】流体流干渉装置の一実施形態を示した切り取り図である。
【
図10】流体流干渉装置を異なるh/D比に変更した一実施形態を示した図である。
【
図11】流体流干渉装置を製造する方法の一実施形態を示した図である。
【
図12】流体流干渉装置の一実施形態を示した図である。
【
図13】付加製造システムの一実施形態を示した図である。
【
図14】流体流導管用の流体流干渉装置を作成する方法の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、入口および出口を有するパイプ等の流体流導管10ならびに差圧送信器70を有する流量計9を備えたプロセス制御システム100の模式図である。流体流導管10の本体2内には、ウェッジ要素として具現化された流体流干渉装置1が配置されている。
図1に示すように、図中では、流体流導管10の入口8Aから出口8Bへの方向に流体が流れる。流体流干渉装置1により導入される狭窄の結果、流体流干渉装置1の両側に差圧が生じる。差圧は、流量と関連するものであり、差圧送信器70により測定され、流量測定結果に変換される。
【0013】
図2Aは、流体流干渉装置1としての内部ウェッジ要素を有するプロセス制御システム100の流体流導管10の切り取り図である。フランジ3は、差圧信号すなわち接続部7Aを通じた高圧信号および接続部7Bを通じた低圧信号を差圧送信器70に送信する。流体流干渉装置1の両側で高圧信号すなわち圧力P1および低圧信号すなわち圧力P2を検知するため、センサ75(
図2B参照)が配設されている。
【0014】
図2Bは、差圧(DP)送信器70および制御室72を含むプロセス制御システム100の例示的な一実施形態を示している。差圧送信器70は、プロセス流体中の圧力P1と圧力P2との間の圧力差を検知するセンサ75を具備しており、制御ループ73を介して電子信号を制御室72に中継する。また、本例において、制御室72は、電源71から制御ループ73を介して、電力を差圧送信器70に供給する。また、制御ループ73によれば、通信システム76による制御室72と差圧送信器70との間の通信も可能になる。種々の実施形態において、制御ループ73は、4~20mA電流ループまたはプロセス制御業界標準HART(登録商標)もしくはフィールドバス(Fieldbus)ループ等の2線式通信回路である。他の実施形態においては、WirelessHART(登録商標)等の無線ネットワークを介して、差圧送信器70および制御室72が通信する。さらに他の実施形態においては、差圧送信器70と有線または無線リンクされた携帯装置によって、差圧送信器70の出力を読み取り可能である。
【0015】
差圧送信器70は、送信回路77、センサ75、および電子機器ハウジング78を具備する。送信回路77は、制御ループ73での通信のため、配線79を通じて、電子機器ボード80に対して電子的に接続されている。送信回路77は、制御ループ73を介して、圧力センサ75により生成された圧力電気信号を制御室72に、もしくはLCDスクリーン81等のローカルディスプレイに、または両者に送信するための構成要素を具備する。送信回路77は、制御ループ73に適合するフォーマットとなるようにセンサ75の出力を調節する。
【0016】
センサ75は、接続部7Aおよび7Bを通じてプロセス流体に接続されている。プロセスフランジ83は、チャネル84Aおよび84Bならびにコネクタ85Aおよび85Bを具備する。センサモジュール86は、隔離管87Aおよび87Bならびに隔離ダイヤフラム88Aおよび88Bを具備する。隔離管87Aおよび87Bは、第1の端部でセンサ75と結合され、第2の端部で隔離ダイヤフラム88Aおよび88Bと結合された通路を備える。隔離ダイヤフラム88Aおよび88Bは、通常はセンサモジュール86の基部にボルト締めまたは固定されたプロセスフランジ83と接続されている。
【0017】
図2Cは、DP送信器70を示した簡略ブロック図である。DP送信器70は、データバス66を通じて一体的に結合されたセンサモジュール86および電子機器ボード80を具備する。センサモジュール電子機器67には、プロセス流体の圧力P1およびP2を受信し、差圧と関連する出力58をアナログ-デジタル変換器82に供給するセンサ75を含む。また、温度補償に使用可能な任意選択としての温度センサ89をセンサモジュールメモリ90と併せて示している。電子機器ボード80には、マイクロコンピュータシステムもしくはマイクロプロセッサ74、電子機器モジュールメモリ91、デジタル-アナログ信号変換器92、ならびにデジタル通信ブロック95を含む。
【0018】
図2Cには、センサ75のプロセス流体への結合に用いられる毛細管すなわち「充填」管
93および94も示している。隔離ダイヤフラム88Aおよび88Bは、毛細管93および94中を搬送される充填流体に対して応答的に適用されるプロセス流体からの圧力PlおよびP2をそれぞれ受ける。この充填流体を通じて、プロセス流体の圧力がセンサ75に印加される。
【0019】
内部ウェッジ要素として成形された流体流干渉装置1のサイズによって、流体流導管10内に異なるh/D比が生じる結果、所与の流量に対して異なる差圧信号が得られる。
図3A~
図3Dに示すように、h/D比は、流体流導管10の内壁と流体流干渉装置1すなわちウェッジ要素の頂点との間の空間の高さhと流体流導管10の本体2の内部径Dとの比を表す。ほとんどのウェッジ式流量計製造業者は、0.20と0.60との間で0.05または0.10刻みのh/D比を提供することにより、反復を有限値に抑えつつ、ほとんどのバリエーション需用を満たしている。最適なウェッジ要素のサイズを規定するには、流量の各用途を個別的に確認する。所与の内部流体流導管10すなわちパイプの直径D内の所与の差圧に対応するウェッジ要素の決定時に考慮し得る要因としては、最小、通常、および最大のレイノルズ数、永久圧力損失、流量測定精度、通常/最大流量における目標差圧値、ならびに送信器差圧範囲が挙げられる。
【0020】
図3A~
図3Dは、流体流干渉装置1が本体2中に配置された流体流導管10の模式断面図である。具体的に、
図3A~
図3Dは、流体流導管10のh/D比を示している。h/D比は、流体流に対して開放されたパイプ面積をウェッジすなわち制限部の頂点での閉塞と比較して示すものである。
図3Aは、ウェッジ流量計における比が約0.5であることを示しており、本体2において利用可能な空間の流体流干渉装置1からの高さhが本体2の内部の径Dの約半分である。
図3Bは、流体流導管10の本体2内部が見られる
図3Aの前方模式断面図である。図中では、流体流干渉装置1があっても、流体流導管10の約半分が流体流に対して開放されている。
【0021】
図3Cおよび
図3Dは、h/D比の変更による
図3Aのバリエーションを示している。
図3Cは、小さなh/D比すなわち0.2を示しており、流体流干渉装置1によって残る流体流導管10内の空間の高さhが本体2の直径Dの半分を下回る。
図3Dは、大きなh/D比すなわち0.6を示しており、流体流干渉装置1によって残る流体流導管10の本体2内の空間の高さhが本体2の直径Dの半分を上回る。
【0022】
図4Aおよび
図4Bは、各所に配置された複数の壁すなわち離散h/D比と関連付けられた特定のh/D比点を有する流体流干渉装置1の実施形態を示している。特定のh/D比の壁の切断面に沿って切断し、特定のh/D比の外側の流体流干渉装置1の付加的な壁およびリブの材料を除去することにより、特定のh/D比が得られる。材料は、アンカリング、構造的堅牢性、および関連するh/D比の壁に必要な箇所にのみ最小限に抑えられる。これにより材料の量が抑えられ、内部ウェッジ要素の軽量化および低密度化が可能となる。
【0023】
図4Aは、複数の壁を有する内部ウェッジ要素として具現化された流体流干渉装置1を示している。各壁は、すべの方向における構造的剛性を与えている。流体流干渉装置1は、第1の壁11すなわち上流壁および第2の壁15すなわち下流壁を具備する。第1の壁の近位端13は、第1の頂点60において、第2の壁の近位端16に対して角度αで配置されている。第3の壁18等の少なくとも1つの付加的な壁が第2の壁15と平行に配置されて第2の頂点61を有し、第3の壁の近位端21は、第1の壁の近位端13からある距離19で第1の壁11の第1の面12上に配置されている。非限定的な一実施形態において、各頂点60、61の内部には、頂点の摩耗すなわち流体流40による摩耗によって、侵食性の用途に使用する場合の流体流干渉装置1の完全性を損なうことがないように、大型のフィレット41すなわち肉厚部を含む。
【0024】
更なる実施形態においては、第1の壁の遠位端14から第2の壁の遠位端17まで、少なくとも1つの構造リブ22が直線状に配置され、第3の壁の遠位端20と交差している。リブは1つのみを図示しているものの、より多くのリブが含まれていてもよい。リブ22は、第1の壁11および第2の壁15と垂直に配置され、第3の壁18と交差している。非限定的な一実施形態において、リブ22は、第1の壁11の第1の面12に沿って延びている。
図4Aの実施形態に示すように、リブ22は、第1の壁11の第1の面12の長さに沿って延びている。リブ22はさらに、第2の壁の内面23の長さに沿って延びている。
【0025】
更なる実施形態において、リブ22は、第3の壁の切断面32に沿って配置された少なくとも1つの切り欠き30すなわち鋸ガイド切り欠きを含む。切り欠き30は、リブ22が第3の壁の切断面32に沿って第3の壁の遠位端20まで連続して延びることがないようにするためのリブ22のエリアであってもよい。
【0026】
流体流干渉装置1の上記構成によれば、流体流干渉装置1が異なるh/D比要件に対応するように変更され得るため都合が良い。帯鋸または同等物が第3の壁の切断面32に沿ってリブ22を切り裂き、指定のh/D比すなわち第3の壁18を残しつつ、リブ22の一部および第2の壁15の全体を切り取るようにしてもよい。残ったウェッジは、第1の壁11および第3の壁18を含み、第3の壁の切断面32に沿って平坦となるように研削およびフライス加工されるようになっていてもよい。
【0027】
図4Bは、
図4Aの特徴を含む一方、第1の壁の近位端13からある距離25で第2の壁15および第3の壁18と平行かつ両者間に配置され、対応する付加的な頂点62を有する少なくとも1つの付加的な壁24をさらに含む。
図4Bには付加的な壁24のみを示しているものの、壁がさらに反復されていてもよい。リブ22は、第3の壁18と同様に、付加的な壁24と直角に交差するように配置されている。
【0028】
更なる実施形態において、流体流干渉装置1は、第1の壁11と第3の壁18との間で構造リブ22上に配置されたアンカーボス31をさらに含む。アンカーボス31は任意選択として、スタッド、ボルト等のアンカー35(
図9)用の複数の開始孔63、64、65を含んでいてもよい。各開始孔63、64、65は、頂点60、61、62に対応する。アンカー35は、流体流干渉装置1を流体流導管10の本体2に接続する。代替実施形態において、アンカーボス31は、単一の開始孔63を含む。この構成において、開始孔63は、適当なh/D比の壁の頂点と合致していなくてもよい。
【0029】
一実施形態において、第1の壁11の長さは、第2の壁15の長さと実質的に等しい。第3の壁18および付加的な壁24の高さ等、付加的な壁の高さは、その壁から第1の壁の近位端13までの距離を第1の壁11の長さから差し引いたものと実質的に等しい。本実施形態において、第2の壁15は、第3の壁18および付加的な壁24よりも高い。
【0030】
図5は、第2の壁15および付加的な壁24それぞれに隣り合う切り欠き30すなわち鋸ガイドスロットをさらに示した流体流干渉装置1の一実施形態の側面図である。
図4Aで論じた通り、切り欠き30は、所与のh/D比の壁すなわち第3の壁18および/または付加的な壁24の切断可能面の近くに配置されている。切り欠き30は、多様な形状に形成されていてもよい。
図5に示す実施形態は、端部が鋭くない切り欠き30を示している。他の実施形態は、端部が鋭い切り欠き30を含んでいてもよい。切り欠き30は、第3の壁の切断面32または付加的な壁の切断面33に対して帯鋸または他の切断要素が自然に進行し得るようにする。切り欠き30の端部が鋭くない構成では、切断要素がさらにガイドされるため、流体流干渉装置1の切断性が向上する。この構成により、リブ22は、切断要素55(
図6に示す)が当該リブ22を通って壁に沿う場合に、流体流干渉装置1の第1の壁11に至って通過するための最小抵抗の経路である。この追加または代替として、切断ガイドは、リブ22の所定の切断点に導入され得るミシン目38または別の材料削減を含むか、または、そのようなものとして具現化される。
【0031】
図6は、流体流干渉装置1の代替または追加の実施形態を示しており、リブ22が第3の壁の切断面32および/または付加的な壁の切断面33に沿って、リブ22の少なくとも一方側に切断ガイドとしてテーパ28を有することにより、切断要素55の切断ガイドを提供する。テーパ28は、h/D比のウェッジ壁すなわち第3の壁の切断面32および付加的な壁の切断面33に隣り合って配置されている。この構成では、リブ材料の厚さおよび壁材料の厚さを利用して、矢印56で示すように、壁の縁部とそのまま同一平面になる経路上に切断要素55を保つ。切断要素55の両側の余分な材料すなわちテーパ28の外側の壁およびリブ材料によって、切断要素55が所望の経路56に押しやられ、ブレードのふらつきに抗し得る。
【0032】
上記実施形態によれば、単一の流体流干渉装置において複数のh/D比が製造されることから、わずかな流体流干渉装置のみで複数のh/D比を製造可能となるため都合が良い。特定のh/D比が望まれる場合は、後段のカスタマイズすなわち流体流干渉装置1の製造後の変更の一部として、要求のh/D比を有する流体流干渉装置1が作成され得る。
【0033】
図7にさらに示すのは、
図4Bに示したものと同様な流体流干渉装置1の一実施形態の断面図であり、アンカーボス31を通る流体流干渉装置1の断面を示している。アンカーボス31の断面には、各h/D比の壁すなわち第2の壁15、第3の壁18、および/または付加的な壁24の対応する頂点60、61、62の上方の箇所におけるアンカー35用の開始孔63、64、65を含む。後段のカスタマイズの一部として、適当な開始孔にアンカー35の雌ねじをタップする。開始孔63、64、65の直径は、アンカー孔の掘削および適当な開始孔へのタップに際して、タップされたアンカー孔のねじ山とその他の未使用開始孔が干渉しないものとする。
図7は、第1の壁11および第2の壁15の頂点と対応する第1の頂点60が第1の開始孔63と位置合わせされた様子を示している。第1の壁11および第3の壁18の頂点に対応する第2の頂点61は、第2の開始孔64と一致する。第1の壁11および付加的な壁24の頂点に対応する第3の頂点62は、第3の開始孔65と位置合わせされている。
【0034】
図8は、
図4Bに示したものと同様な流体流干渉装置1の一実施形態を示している。流体流干渉装置1は、リブ22および各頂点60、61、62の交点において各リブ22の両側に配置された少なくとも1つの排出孔45を含む。一実施形態において、排出孔45は、高圧側および低圧側をつなぐ代わりに、リブ22の両側の領域をつないでいる。各排出孔45は、流体流干渉装置1からの凝縮物または液体の排出を可能にする。この構成は、流体流干渉装置1内で水分が凍結して膨張することを防止するのに役立つ。
【0035】
図9は、流体流干渉装置1が本体2に取り付けられた流体流導管10の切り取り図であって、流体流干渉装置1の外径34が本体2の内部径29(少なくとも第1の壁11の遠位端14ならびに第2の壁15の遠位端17および少なくとも1つの付加的な壁18、24の遠位端20、26の少なくとも一方が本体2の内径29)と同一平面またはそれをわずかに下回って本体2の内径29で湾曲するように形成されていてもよい。流体流干渉装置1は、流体流導管10への挿入およびアンカー35による適所へのアンカリングが可能である。矢印40の方向の流体流において、第1の壁11は、流体流干渉装置1の上流側に配置されており、第2の壁15、第3の壁18、および任意の付加的な壁24は、流体流干渉装置1の下流側に配置されている。また、アンカーボス31が少なくとも1つのアンカー35を保持することにより、流体流導管10に対する流体流干渉装置1の固定および取り付けを行う。
【0036】
図10は、特定のh/D比が要求または要望される場合に、流体流干渉装置1を異なるh/D比に変更した一実施形態を示している。流体流干渉装置1は、後段のカスタマイズが行われるように構成されている。これは、h/D比の異なる5~10個の部品の代わりに、1つまたは2つの容易に変更可能な部品のストックを用意することによって異なる流体流導管サイズに対応可能であることを意味する。発注された注文を満たすために特定のh/D比が必要となった場合は、流体流干渉装置1を要求されたh/D比に変更可能である。第3の壁18、付加的な壁24、および/または第1の壁11上の残部50は、研削またはフライス加工によって、平坦化または平滑化可能である。
【0037】
非限定的な一例において、要求されたh/D比が流体干渉装置の製造時の既定値である場合、言い換えると、第2の壁15である場合は、後段のカスタマイズとしての切断および研削作業が不要である。非限定的な一例として、流体流干渉装置1が既定のh/D比0.2で製造され、注文がh/D比0.2の流体流干渉装置である場合は、流体流干渉装置1を要求されたh/D比0.2とするための切断作業も研削作業も不要である。本例においては、流体流干渉装置1が変更されず、流体流導管10内に取り付け可能であり、第2の壁15および少なくとも1つの付加的な壁18、24を備える。
【0038】
あるいは、要求されたh/D比が既定のh/D比ではなく、異なる比すなわち付加的な壁24におけるh/D比0.3である場合は、第2の壁15およびリブ22が後段のカスタマイズとして、リブ22に配置された切り欠き30で付加的な壁の切断面33に沿って流体流干渉装置1から切り取られる。流体流干渉装置1から第2の壁15が除去され、第3の壁18および付加的な壁24が残る。
【0039】
別の非限定的な例として、要求されたh/D比が第3の壁18のh/D比0.4である場合は、第2の壁15および付加的な壁24が後段のカスタマイズとして、リブ22に配置された切り欠き30で第3の壁の切断面32に沿って流体流干渉装置1から切り取られる。流体流干渉装置1から第2の壁15および付加的な壁24(存在する場合)が除去され、第3の壁18が残る。
【0040】
図4Aに示すように、非限定的な一例として、流体流干渉装置1には、当該流体流干渉装置1の製造時の既定値として、h/D比0.5が設定されていてもよい。第3の壁18は、h/D比0.6に配置されていてもよい。非限定的な一例として、
図4Bには、流体流干渉装置1の製造時の既定値として、h/D比0.2が設定されていてもよく、また、h/D比0.3および0.4のウェッジに変更可能である。
【0041】
図11は、流体流干渉装置1を製造する方法200の一実施形態を示している。第1ステップ205では、第1の壁11を用意する。第2ステップ210では、第2の壁15を第1の壁の近位端13に配置して第1の頂点60を構成する。第3ステップ215では、第1の壁11の第1の面12に沿って第1の壁の近位端13からある距離で第2の壁15と平行に少なくとも1つの付加的な壁18、24を配置することにより、対応する少なくとも1つの付加的な頂点すなわち第2の頂点61および/または第3の頂点62を有する。第4ステップ220では、第1の壁11の第1の面12に沿って、第2の壁15ならびに付加的な壁すなわち第3の壁および/もしくは付加的な壁24それぞれを所定のh/D比で配置する。第5ステップ225では、少なくとも1つの付加的な壁18、24それぞれを第1の壁の遠位端14から第2の壁の遠位端17まで延びたリブ22と交差させる。
【0042】
一実施形態において、自立設計の場合は、水平線36から60°を超える角度で流体流干渉装置の各特徴が製造される。
図12は、第1の壁11と平行な水平線36を有する流体流干渉装置1を示している。各特徴は、水平線36に対して少なくとも60°で配置される。一実施形態においては、リブ22、第2の壁15、および少なくとも1つの付加的な壁18、24が水平線36から90°または長手方向37に製造される。第2の壁15および付加的な壁18、24を第1の壁11と垂直となるように製造し、リブ22を第1の壁11、第2の壁15、および少なくとも1つの付加的な壁18、24それぞれと垂直に製造することは、任意の方向からの誘導力または圧力に対する構造的完全性を提供するのに役立つ。
【0043】
記載の流体流干渉装置1は、単一の自立構造として形成される。金属250の鋳造および積層造形(AM)法を含む複数の方法を利用可能である。AM法の非限定的な一例として、レーザ粉末床溶融結合(LPBF)があり、直接金属レーザ焼結(DMLS)と称する場合もある。
図13は、一般的なDMLSプロセス
図400である。このプロセスの基本原理では、最終部品404が完全に融合されるまで、高密度に充填された金属粉末408が3DプリンタのCO
2レーザ等のレーザ402によって、1層分の厚さだけ低くなった構築プラットフォーム405から上方の薄層となるように溶融される。3Dプリンタは、金属粉末408用の吐出プラットフォーム407と、
図13の場合にはレーザユニット402、ファイバ401、およびスキャンヘッド403を具備する焼結/溶融ユニットと、から成る。レーザユニット402は、流体流干渉装置1の層形状に対して、粉末408を選択的に焼結/溶融する。層の焼結/溶融後は、層の厚さに等しい距離の粉末吐出プラットフォーム407の上方移動および/または構築プラットフォーム405の下方移動によって、新たな層の印刷に必要な粉末408を供給するとともに、リコータ410のリコータブレード409によって、右側位置から左側位置への移動により粉末408を焼結/溶融領域に移送する。余分な材料は、収集プラットフォーム406に落ちる。流体流干渉装置1の最後の層の作製がなされるまで、同じプロセスが継続する。
【0044】
印刷プロセス中に格子も支持構造も必要がないことを意味する流体流干渉装置1の自立設計によれば、ウェッジ要素すなわち流体流干渉装置1の費用対効果が高くなり、AMの実用的な候補となり得る。さらに、AM成分のコストは体積と関連するが、流体流干渉装置1の材料の量が少なくなることから、流体流干渉装置1の生産コストも抑えられる。
【0045】
図14は、プロセス制御システム100への設置用に
図11で製造される流体流干渉装置1を作成する方法300の一実施形態を示している。第1ステップ
305においては、指定された所定のh/D比のリクエストを受け付ける。第2ステップにおいては、ステップ305の要求h/D比に応じて2つの選択ステップが存在する。第1選択ステップ310においては、指定または要求された所定の比が付加的な壁のうちの1つすなわち第3の壁18または付加的な壁24に存在する。この選択肢においては、第3ステップ315を実行し、要求された所定のh/D比に対応する付加的な壁の切断面に沿って第1の壁11を切り裂く。指定された所定の比が第2の壁15に存在する場合、すなわち、製造時の既定の比である場合は、第2選択ステップ320が発生する。この場合は、切断を実行しない。第4ステップ323においては、要求h/D比の頂点60、61、62に対応する開始孔63、64、65を任意選択としてアンカー35用に作成する。この作成には、開始孔のタップを含み得る。最終ステップ325では、アンカーボス31を介して、指定された所定のh/D比を有する流体流干渉装置をアンカー35によってプロセス制御システム100に設置し、流体流導管10の本体2に流体流干渉装置を取り付ける。
【0046】
以上、好適な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者であれば、本明細書の思想および範囲から逸脱することなく、形態および詳細を変更可能であることが認識されよう。
【符号の説明】
【0047】
1 流体流干渉装置
9 プロセス流体流測定装置
11 第1の壁
13 近位端
14 遠位端
15 第2の壁
16 近位端
17 遠位端
18 付加的な壁
20 遠位端
21 近位端
60 第1の頂点
61 付加的な頂点