(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】土砂投入治具及び大型土のうの作成方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20240531BHJP
B65D 88/22 20060101ALI20240531BHJP
B65D 88/58 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E02B3/04 301
B65D88/22 A
B65D88/58
(21)【出願番号】P 2021144251
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】521391494
【氏名又は名称】株式会社樋口組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 淳史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 典央
(72)【発明者】
【氏名】志賀 竜巳
(72)【発明者】
【氏名】上城 佳之
(72)【発明者】
【氏名】武野 芳弘
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315722(JP,A)
【文献】特許第4122363(JP,B2)
【文献】特開2017-197922(JP,A)
【文献】登録実用新案第3232645(JP,U)
【文献】特開2019-218725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
B65D 88/22
B65D 88/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する袋状の袋状体と、前記袋状体の上端部に下端部が取り付けられ、前記袋状体の前記開口を覆うことが可能なカバー体と、前記袋状体の外側側面に下端部が取り付けられた被係止体とを有する大型土のうの前記袋状体の内部に土砂を投入する際に使用する土砂投入治具であって、
前記袋状体に充填されるべき土砂を内部に充填することが可能な内容積を有し、上部及び下部が開口し、前記袋状体内に配置することが可能な筒状の筒状体と、
前記筒状体の外側側面に上端部が取り付けられ、下端部に前記被係止体の上端部と解除可能に係止される係止部を有する係止体とを備え、
前記被係止体の上端部と下端部との間の鉛直方向の最大長さをA、前記係止体の上端部と前記係止部との間の最大長さをB、
前記袋状体に充填され土砂の最大の高さ位置となる、前記筒状体の周囲を覆うようにして上方に拡げられた状態の前記袋状体の上端と、前記被係止体の下端部との高さの差をC、前記係止体の上端部と前記筒状体の下端との間の高さの差をDとしたとき、A+B≧C+Dの関係式が成立する
ことを特徴とする土砂投入治具。
【請求項2】
前記筒状体の外側側面の上部の対向する位置に、前記カバー体を引っ掛けることが可能な一対の第1の引っ掛け部を備えることを特徴とする請求項1に記載の土砂投入治具。
【請求項3】
前記第1の引っ掛け部より下方において、前記筒状体の外側側面の対向する位置に、前記カバー体を引っ掛けることが可能な一対の第2の引っ掛け部を備えることを特徴とする請求項2に記載の土砂投入治具。
【請求項4】
請求項1に記載の土砂投入治具を用いて大型土のうを作成する方法であって、
前記袋状体の内側底面の上に前記筒状体を配置する工程と、
前記係止部に前記被係止体の上端部を係止する工程と、
前記筒状体の内部に前記袋状体に充填されるべき土砂を投入する工程と、
前記筒状体を吊り上げ、前記筒状体の内部に投入された土砂を全て前記袋状体の内部に投入する工程と、
前記筒状体を前記袋状体の内部に投入された土砂の上に降ろす工程と、
前記係止部と前記被係止体の上端部との係止を解除する工程と、
前記筒状体を再度吊り上げ、前記土砂投入治具を前記大型土のうから離脱させる工程とを備えることを特徴とする大型土のうの作成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の大型土のうの作成方法において、
前記筒状体の内部に前記土砂を投入する前に、前記筒状体の外側側面の上部の対向する位置に備わる一対の第1の引っ掛け部に前記カバー体を引っ掛ける工程と、
前記筒状体を吊り上げて前記袋状体の内部に土砂を投入する前に、前記一対の第1の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除する工程とをさらに備えることを特徴する大型土のうの作成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の大型土のうの作成方法において、
前記一対の第1の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除した後であって、前記筒状体を吊り上げ、前記袋状体の内部に土砂を投入する前に、前記筒状体の外側側面部の対向する位置に前記一対の第1の引っ掛け部より下方に備わる一対の第2の引っ掛け部に前記カバー体を引っ掛ける工程と、
前記筒状体を再度吊り上げ、前記土砂投入治具を前記大型土のうから離脱させる前に、前記一対の第2の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除する工程とをさらに備えることを特徴する大型土のうの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂投入治具、及び、土砂投入治具を用いた大型土のうの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型土のうは、建物の基礎工事等において掘削した土砂を袋状体に充填して保管するほか、河川構造物の仮締め切り、道路工事や災害復旧工事の際の土留めなどを行う際に使用される。
【0003】
特許文献1には、粉粒体案内具(土砂投入治具)を大型土のうに装着して、大型土のうの袋体(袋状体)に土砂を投入する技術が記載されている。この粉粒体案内具は、本体である筒体(筒状体)に一対の掛止部材が取り付けられている。
【0004】
具体的には、まず、掛止紐からなる掛止体に大型土のうの掛止部材を掛け、袋体に筒体を装着した状態で、筒体内に土砂を投入する。その後、粉粒体案内具を吊り上げることにより、筒体内の土砂が袋体内に落下する。この落下した土砂の重みによって袋体は動かないが、粉粒体案内具は吊り上げられ、掛止体と掛止部材との掛止が自動的に解除される。そして、粉粒体案内具が完全に引き上げられることにより、袋体に土砂が充填された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、土砂の一部が内部に残存した状態で筒体を、底面が地面などに接した袋体から引き出す(特に特許文献1の
図6参照)。そのため、引き出された筒体内に残存していた土砂が袋体内に流れ落ちる。このとき、袋体は粉粒体案内具によって支持されておらず、袋体内の土砂の形状が崩れる。このため、再度大型土のうを吊り直して袋体内の土砂を成形する手間が生じるという課題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制を図ることが可能な土砂投入治具及び大型土のうの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の土砂投入治具は、上部に開口を有する袋状の袋状体と、前記袋状体の上端部に下端部が取り付けられ、前記袋状体の前記開口を覆うことが可能なカバー体と、前記袋状体の外側側面に下端部が取り付けられた被係止体とを有する大型土のうの前記袋状体の内部に土砂を投入する際に使用する土砂投入治具であって、前記袋状体に充填されるべき土砂を内部に充填することが可能な内容積を有し、上部及び下部が開口し、前記袋状体内に配置することが可能な筒状の筒状体と、前記筒状体の外側側面に上端部が取り付けられ、下端部に前記被係止体の上端部と解除可能に係止される係止部を有する係止体とを備え、 前記被係止体の上端部と下端部との間の鉛直方向の最大長さをA、前記係止体の上端部と前記係止部との間の最大長さをB、前記袋状体に充填され土砂の最大の高さ位置となる、前記筒状体の周囲を覆うようにして上方に拡げられた状態の前記袋状体の上端と、前記被係止体の下端部との高さの差をC、前記係止体の上端部と前記筒状体の下端との間の高さの差をDとしたとき、A+B≧C+Dの関係式が成立することを特徴とする。
【0009】
本発明の土砂投入治具によれば、A+B≧C+Dの関係式が成立するので、袋状体内に筒状体を配置し、この筒状体内に袋状体の前記充填されるべき土砂を投入し、その後、被係止体の上端部に係止部を係止した状態で筒状体を袋状体と共に吊り上げた場合、全ての土砂が袋状体内に充填されたとき、筒状体の下端は土砂の上面と高さと同一又はこの高さよりも高い。
【0010】
これにより、土砂が充填された状態で成形された袋状体が維持されるので、成形された後に土砂が流れ落ちる上記特許文献1に記載の技術と比較して、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制を図ることが可能となる。
【0011】
本発明の土砂投入治具において、前記筒状体の外側側面の上部の対向する位置に、前記カバー体を引っ掛けることが可能な一対の第1の引っ掛け部を備えることが好ましい。
【0012】
この場合、一対の第1の引っ掛け部にカバー体を引っ掛けた状態で、土砂が投入された筒状体を吊り上げた場合、上部が持ち上げられた状態の袋状体内に砂が充填されるので、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制をさらに図ることが可能となる。
【0013】
また、本発明の土砂投入治具において、前記一対の第1の引っ掛け部より下方において、前記筒状体の外側側面の対向する位置に、前記カバー体を引っ掛けることが可能な一対の第2の引っ掛け部を備えることが好ましい。
【0014】
この場合、一対の第2の引っ掛け部にカバー体を引っ掛けた状態で、筒状体を袋状体と共に吊り上げた場合、上部が持ち上げられた状態の袋状体内に砂が充填されるので、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制をさらに図ることが可能となる。
【0015】
本発明の大型土のうの作成方法は、上記本発明の土砂投入治具を用いて大型土のうを作成する方法であって、前記袋状体の内側底面の上に前記筒状体を配置する工程と、前記係止部に前記被係止体の上端部を係止する工程と、前記筒状体の内部に前記袋状体に充填されるべき土砂を投入する工程と、前記筒状体を吊り上げ、前記筒状体の内部に投入された土砂を全て前記袋状体の内部に投入する工程と、前記筒状体を前記袋状体の内部に投入された土砂の上に降ろす工程と、前記係止部と前記被係止体の上端部との係止を解除する工程と、前記筒状体を吊り上げ、前記土砂投入治具を前記大型土のうから離脱させる工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の大型土のうの作成方法によれば、A+B≧C+Dの関係式が成立するので、筒状体の内部に投入された土砂を全て袋状体の内部に投入する工程が完了したとき、筒状体の下端は土砂の上面と高さと同一又はこの高さよりも高い。
【0017】
これにより、土砂が充填された状態で成形された袋状体が維持されるので、成形された後に土砂が流れ落ちる上記特許文献1に記載の技術と比較して、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制を図ることが可能となる。
【0018】
本発明の大型土のうの作成方法において、前記筒状体の内部に前記土砂を投入する前に、前記筒状体の外側側面の上部の対向する位置に備わる一対の第1の引っ掛け部に前記カバー体を引っ掛ける工程と、前記筒状体を吊り上げて前記袋状体の内部に土砂を投入する前に、前記一対の第1の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除する工程とをさらに備えることが好ましい。
【0019】
この場合、一対の第1の引っ掛け部にカバー体を引っ掛けた状態で、土砂が投入された筒状体を吊り上げるので、上部が持ち上げられた状態の袋状体内に砂が充填され、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制をさらに図ることが可能となる。
【0020】
また、本発明の大型土のうの作成方法において、前記一対の第1の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除した後であって、前記筒状体を吊り上げ、前記袋状体の内部に土砂を投入する前に、前記筒状体の外側側面部の対向する位置に前記一対の第1の引っ掛け部より下方に備わる一対の第2の引っ掛け部に前記カバー体を引っ掛ける工程と、前記筒状体を再度吊り上げ、前記土砂投入治具を前記大型土のうから離脱させる前に、前記一対の第2の引っ掛け部と前記カバー体との引っ掛けを解除する工程とをさらに備えることが好ましい。
【0021】
この場合、一対の第2の引っ掛け部にカバー体を引っ掛けた状態で、筒状体を袋状体と共に吊り上げるため、上部が持ち上げられた状態の袋状体内に砂が充填されるので、袋状体内の土砂を成形する手間の抑制をさらに図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る大型土のうの作成方法を説明する模式側面図であり、袋状体内に土砂投入治具を配置した状態を示す。
【
図2】大型土のうの作成方法を説明する模式側面図であり、袋状体を弛みがなくなるように保持した状態を示す。
【
図3】大型土のうの作成方法を説明する模式側面図であり、土砂投入治具を吊り上げ始めた状態を示す。
【
図4】大型土のうの作成方法を説明する模式側面図であり、土砂投入治具と共に大型土のうを吊り上げた状態を示す。
【
図5】大型土のうの作成方法を説明する模式側面図であり、筒状体を土砂の上に降ろした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る土砂投入治具10について、
図1から
図5を参照して説明する。土砂投入治具10は、大型土のう20の中に土砂を投入する際の補助治具として使用される。なお、
図1から
図5は、分り易いように、構成要素の形状、寸法などはデフォルメされている。
【0024】
大型土のう20は、上部に開口を有し、内部に土砂が充填される袋状の袋状体21と、袋状体21の上端部に下端部が取り付けられ、袋状体21の上部の開口を覆うことが可能なカバー体22と、袋状体21の外側側面に下端部が取り付けられた吊りベルト23とを備えている。
【0025】
袋状体21及びカバー体22は、化学繊維製の織地、又は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド等の合成樹脂素材からなるシートなどからなり、高強度、耐候性及び耐久性を有している。
【0026】
土砂が内部に充填された袋状体21は、全体として、ここでは、略円筒状である。ただし、四角柱状などの多角形柱状などであってもよい。また、袋状体21は、ここでは、その天端まで土砂が充填されることが予定されている。ただし、袋状体21は、天端から所定の高さだけ低い高さの位置まで土砂が充填されるべきものであってもよい。
【0027】
カバー体22は、ここでは、上部及び下部が開口した円筒状であって、その下縁が全周に亘って袋状体21の上縁の全周に亘って縫着により取り付けられている。カバー体22は、内側に折りたたむことによって、内部に土砂が充填された袋状体21の上部の開口を覆うことが可能となっている。
【0028】
なお、カバー体22は、袋状体21の開口を覆うことが可能であれば、袋状体21の上縁に、全周ではなく、部分的に、さらには、複数に分割されて部分的に、取り付けられているものであってもよい。
【0029】
さらに、カバー体22は、袋状体21に対して取り外し可能に設けられていてもよい。また、カバー体22は、図示しないが、袋状体21の開口を封止したカバー体22を結束するための紐状やロープ状の結束体を有している。
【0030】
吊りベルト23は、大型土のう20を吊り下げる際に使用されるベルトであり、本願発明の被係止体に相当する。吊りベルト23は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド等の合成樹脂素材を撚り糸として織った帯状であり、高強度、耐候性及び耐久性を有している。ただし、吊りベルト23の代わりに、細長い紐状のものを用いてもよく、さらには、樹脂や金属などからなるフックや取手などを用いてもよい。
【0031】
吊りベルト23は、袋状体21の外側側面に、その両端部が縫着などにより取り付けられている。吊りベルト23は、ここでは、袋状体21の縦中心軸線に対して対称に取り付けられている。そして、吊りベルト23は、その両端部が袋状体21に取り付けられているので、中央部付近を持ち上げることによって中央部が上方に位置して上端部となり、両端部の取り付け部分が下端部となり、全体がピンと張った状態となる。このように、中央部付近を持ち上げた状態における吊りベルト23の中央部が本発明の被係止体の上端部に相当し、両端部の取り付け部分が本発明の被係止体の下端部に相当する。
【0032】
なお、ここでは、吊りベルト23は2つであるが、3つ以上でもよく、さらに袋状体21の縦中心軸線に対して対称になるように両端部のそれぞれが取り付けられていれば、1つであってもよい。
【0033】
土砂投入治具10は、袋状体21に充填されるべき土砂を内部に充填することが可能な内容積を有し、上部及び下部が開口し、袋状体21内に配置することが可能な筒状の筒状体11と、筒状体11の外側側面に上端部が取り付けられ、下端部が吊りベルト23の上端部と解除可能に係止されるフック(鉤)12Aを有する係止体12とを備えている。
【0034】
筒状体11は、土砂投入治具10の本体であって、鉄鋼、アルミニウム合金などの金属からなっている。筒状体11は、ここでは、略円筒状の筒体であるが、袋状体21内に配置することができれば、その形状は、限定されず、例えば、四角筒状などの多角形筒状などであってもよい。また、筒状体11は、その上部が上方に向かって拡がるような形状であってもよい。
【0035】
筒状体11の内容積(上部及び下部の開口を閉じたと仮定したときの内容積)は、ここでは、袋状体21に充填されるべき土砂の容量と等しい又は略等しい。これにより、筒状体11の天端まで土砂を投入すれば、筒状体11の土砂を全て袋状体21内に移すだけで、袋状体21内に所望の容量の土砂を充填することが可能となる。
【0036】
ただし、筒状体11の内容積は、袋状体21に充填されるべき土砂の容量を超えていてもよい。この場合、筒状体11の所定の高さまで土砂を充填し、この土砂を袋状体21内に投入すればよい。
【0037】
係止体12は、ここでは、下端部に吊りベルト23の上端部を係止することが可能なフック12Aを備え、上端部にもフック12Bを備えるチェーン12Cと、筒状体11の外側側面に取り付けられ、フック12Bと解除可能に係止される取り付け部12Dから構成されている。ここで、取り付け部12Dは、貫通孔が形成された矩形状の金属片であり、溶接によって筒状体11に固定されている。なお、フック12Aは、本発明の係止部に相当する。
【0038】
チェーン12Cに代わりに、細長い紐状、帯状又はベルト状などであって、伸縮しない高強度のものを用いてもよい。ここでは、フック12Bはシャックルであり、このシャックル12BのU字部材が取り付け部12Dに係止されており、シャックル12Bの棒状部材にチェーン12Cの上端が固定されている。
【0039】
係止体12は、吊りベルト23に対応する個数、位置に設けられている。
【0040】
土砂投入治具10は、さらに、筒状体11の上部に被係止部13を備えている。この被係止部13は、クレーンのフック(不図示)などにワイヤロープ31を掛け、このワイヤロープ31の先端に取り付けられたフック32に係止されることが可能となっている。なお、ワイヤロープ31は、バックホウ等の建設作業機のバケットに取り付けられているフック(不図示)などに掛けてもよい。
【0041】
被係止部13は、ここでは、筒状体11の上部に形成された貫通孔である。そして、この貫通孔13は、筒状体11の上端部に、筒状体11の縦中心軸に対して対称に2か所に形成されている。ただし、被係止部13は、対称であれば、3か所以上に形成されていてもよい。また、被係止部13は、フック32などに係止されるものであれば、貫通孔に限定されず、例えば、筒状体11の外側側面に設けられた取り付け部12Dと同様の貫通孔が形成された矩形状の金属片などの部材であってもよい。
【0042】
土砂投入治具10は、さらに、筒状体11の外側側面の上部の対向する位置に、カバー体22を引っ掛けることが可能な一対の第1の引っ掛け部14を備えている。第1の引っ掛け部14は、ここでは、筒状体11の上部に突出して設けられたフック状の部材である。
【0043】
そして、第1の引っ掛け部14は、筒状体11の上部に、筒状体11の縦中心軸に対して対称に2か所に形成されている。ただし、第1の引っ掛け部14は、一対以上であればよく、複数対であってもよい。
【0044】
第1の引っ掛け部14は、筒状体11を袋状体21の底面の内面に配置し、袋状体21を拡げるようにしてカバー体22を上方に持ち上げたとき、このカバー体22が維持されるように、持ち上げられたカバー体22の上部に対応する高さにて筒状体11に設けられている。
【0045】
土砂投入治具10は、さらに、第1の引っ掛け部14より下方の対向する位置において、筒状体11の外側側面に、カバー体22を引っ掛けることが可能な一対の第2の引っ掛け部15を備えている。第2の引っ掛け部15は、ここでは、筒状体11の上下方向中間部付近に突出して設けられたフック状の部材である。
【0046】
そして、この第2の引っ掛け部15は、筒状体11の中間部に、筒状体11の縦中心軸に対して対称に2か所に形成されている。ただし、第2の引っ掛け部15は、一対以上であればよく、複数対であってもよい。
【0047】
第2の引っ掛け部15は、
図4を参照して、袋状体21に充填された土砂の上面より下端が高くなるように筒状体11を吊り上げたときに、このカバー体22が維持されるように、持ち上げられたカバー体22の上部に対応する高さにて筒状体11に設けられている。
【0048】
なお、第1及び第2の引っ掛け部14,15に引っ掛かるカバー体22の部分は、引っ掛けの際に破れて貫通孔が形成されるものであっても、予め貫通孔が形成されているものであってもよい。
【0049】
そして、上述した土砂投入治具10及び大型土のう20において、
図4を参照して、吊りベルト23の上端部と下端部との間の鉛直方向の最大長さをA、係止体12の上端部とフック12Aとの間の最大長さをB、袋状体21の充填されるべき土砂の最大高さと吊りベルト23の下端部との高さの差をC、係止体12の上端部と筒状体11の下端との間の高さの差をDとしたとき、以下の式(1)の関係式が成立する。
A+B≧C+D ・・・ (1)
【0050】
以下、上述した土砂投入治具10を用いて、本発明の実施形態に係る大型土のうの作成方法について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0051】
この方法においては、まず、
図1に示すように、袋状体21の内側底面の上に筒状体11を配置する工程を行う。この工程においては、上記クレーンのフック(不図示)などにワイヤロープ31を掛け、このワイヤロープ31の先端に取り付けられたフック32を筒状体11の被係止部(貫通孔)13に係止させる。
【0052】
そして、この状態で、上記クレーンのフックを巻き上げるなどによってワイヤロープ31を上昇させることにより土砂投入治具10を吊り上げる。そして、作業者が、地面などに大型土のう20を載置し、この載置されている大型土のう20を拡げす。そして、袋状体21の内側底面の上に筒状体11を配置する。配置後、フック32と被係止部13との係止を解除し、その後、上記クレーンなどを退避させる。
【0053】
次に、
図2に示すように、土砂投入治具10のチェーン12Cの下端に備わるフック12Aにより、吊りベルト23を係止する工程を行う。具体的には、作業者は、大型土のう20を筒状体11を周囲を覆うようにして上方に拡げ、吊りベルト23をフック12Aに引っ掛ける。これにより、吊りベルト23はフック12Aに係止される。
【0054】
このとき、吊りベルト23の取り付け部とチェーン12Cの上端部との高さの差はチェーン12Cの長さより短くなっており、吊りベルト23は中央部が垂れ下がった状態となっている。
【0055】
また、第1の引っ掛け部14に袋状体21の上部を引っ掛ける工程も行う。この工程においては、作業者は、筒状体11の上部に備わる第1の引っ掛け部14に、カバー体22の上部を引っ掛ける。これにより、袋状体21が持ち上げられた状態が維持される。
【0056】
次に、筒状体11の内部に袋状体21に充填されるべき土砂を投入する工程を行う。この工程においては、作業者は、上記クレーンなどを用いて、筒状体11の天端まで土砂を投入する。
【0057】
次に、
図3に示すように、筒状体11を吊り上げ、筒状体11の内部に投入された土砂を全て袋状体21の内部に投入する工程を行う。この工程においては、まず、再び、作業者は、ワイヤロープ31の先端に取り付けられたフック32を筒状体11の被係止部(貫通孔)13に係止させる。そして、その後、その前、又は、後述する土砂投入治具10の吊り上げを開始した後、作業者は、第1の引っ掛け部14によるカバー体22の引っ掛けを解除し、その代わりに、第2の引っ掛け部15にカバー体22の上部を引っ掛ける。
【0058】
これらの後、作業者は、上記クレーンなどを上昇させることにより土砂投入治具10の吊り上げを開始する。この吊り上げに伴い、筒状体11内の土砂が順次、袋状体21内に投入される。
【0059】
なお、第1の引っ掛け部14によるカバー体22の引っ掛けを解除することなく、土砂投入治具10の吊り上げを開始してもよい。この場合、第1の引っ掛け部14によってカバー体22破れなどの破損が生じ得るが、大型土のう20の性能には影響を与えない。
【0060】
また、土砂投入治具10の吊り上げを開始した後に、第2の引っ掛け部15にカバー体22を引っ掛けてもよい。
【0061】
筒状体11内の土砂が全て袋状体21内に投入されたとき、筒状体11の下端は、土砂の上面と略同一の高さとなる。さらに、土砂投入治具10を上昇させて、筒状体11の下端を、土砂の上面から少し浮いた状態としてもよい。ただし、袋状体21は地面などから浮いていなくてもよく、袋状体21の底面が部分的に、又は全面を亘って地面などと接触していてもよい。
【0062】
袋状体21の底面が浮き上がっているとき、又は浮き上がる寸前のとき、チェーン12C及び吊りベルト23はピンと張った状態になる。そして、この状態において、本実施形態においては、筒状体11の下端は、土砂の上面と略同一の高さ、又は、土砂の上面から隙間を開けて上方に位置した状態となる。
【0063】
この状態は、上述したように、吊りベルト23の上端部と下端部との間の最大長さをA、係止体12の上端部とフック12Aとの間の最大長さをB、袋状体21の充填されるべき土砂の最大高さと吊りベルト23の下端部との高さの差をC、係止体12の上端部と筒状体11の下端との間の高さの差をDとしたとき、以下の式(1)の関係式が成立することで表現することができる。
A+B≧C+D ・・・ (1)
【0064】
式(1)が成立することにより、袋状体21内に充填すべき土砂が全て投入された状態において、土砂内に筒状体11が埋まり込んでいない。そのため、上記特許文献1に記載の技術のように埋まり込んだ筒状体11を吊り上げる際に筒状体11内の土砂が流れ込まない。よって、土砂が充填された袋状体21はきれいに成形された状態が維持される。
【0065】
また、土砂が投入される際、袋状体21はその上部に取り付けられた吊りベルト23が引っ張られると共に、カバー体22が第2の引っ掛け部15に引っ掛けられているので、袋状体21は弛んだ状態ではなく、袋状体21にきれいに土砂が充填される。
【0066】
なお、吊り上げた大型土のう20を設置すべき場所に移動させてもよい。
【0067】
その後、
図5に示すように、筒状体11を袋状体21の内部に投入された土砂の上に降ろす工程を行う。この工程においては、作業者は、上記クレーンなどを下降させることにより土砂投入治具10の土砂の上に降ろす。このとき、筒状体11の下端部は土砂内にめり込むが僅かであるので、成形された土砂はほぼそのまま維持される。
【0068】
次に、土砂投入治具10のフック12Aによる吊りベルト23の係止を解除する工程を行う。これにより、土砂投入治具10と大型土のう20とは分離可能となる。
【0069】
そして、最後に、土砂投入治具10を再度吊り上げ、土砂投入治具10を大型土のう20から離脱させる工程を行う。この工程においては、作業者は、上記クレーンなどを上昇させることにより土砂投入治具10を大型土のう20から離脱させる。
【0070】
なお、チェーン12Cの長さを変更することによって、大きさの異なる大型土のう20に対して同じ筒状体11などを用いることが可能となる。この場合、大型土のう20の大きさに応じて、式(1)が成立するように、チェーン12Cの長さを定めればよい。なお、チェーン12Cの長さを変更するには、異なる長さのチェーンに交換してもよいが、フック12A,12Cの取り付け位置を変更することにより、チェーン12Cの実質的な長さを変えてもよい。
【0071】
本発明は、上述した土砂投入治具10、及び、これを用いた大型土のうの作成方法に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、土砂投入治具10は、第1の引っ掛け部14及び第2の引っ掛け部15を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…土砂投入治具、 11…筒状体、 12…係止体、 12A…フック(係止部)、 12B…フック、シャックル、 12C…チェーン、 12D…取り付け部、 13…貫通孔(被係止部)、 14…第1の引っ掛け部、 15…第2の引っ掛け部、 20…大型土のう、 21…袋状体、 22…カバー体、 23…吊りベルト(被係止体)、 31…ワイヤロープ、 32…フック。