(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20240531BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240531BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240531BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
A61B5/00 G
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2023180125
(22)【出願日】2023-10-19
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300014554
【氏名又は名称】株式会社メディアシーク
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 直紀
(72)【発明者】
【氏名】平井 祐希
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029728(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0124842(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0039805(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第116458901(CN,A)
【文献】特開2022-117633(JP,A)
【文献】特開2023-044794(JP,A)
【文献】特開2016-146173(JP,A)
【文献】特開2021-121317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-21/06
A61B 5/00
G16H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳波の状態に影響を与える提示情報
として、対象ユーザに
脳波の状態を変化させる効果を有するコンテンツである映像コンテンツ及び音声コンテンツを提示する提示部と、
前記提示部が前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、前記取得部が取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する測定部
であって、前記提示部が前記提示情報として前記映像コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標と、前記提示部が前記提示情報として前記音声コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標とを測定する測定部と、
前記映像コンテンツが提示された場合における前記測定部による測定の結果と、前記音声コンテンツが提示された場合における前記測定部による測定の結果とに基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練に用いる訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択し、前記測定部が測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練
であって、選択した前記訓練用のコンテンツの状態を前記対象ユーザの脳波の測定結果に基づいて変化させることにより、前記対象ユーザに脳波の測定状態を認識させる訓練の内容を設定する設定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記提示前脳波状態と前記提示後脳波状態との差に基づいて特定した前記対象ユーザの脳波状態の変化量、及び前記脳波状態の変化の速さのうちの少なくともいずれかを前記一以上の指標として測定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記対象ユーザの前記脳波状態の変化量、及び前記対象ユーザの前記脳波状態の変化の速さの少なくともいずれかが大きければ大きいほど、前記訓練の難易度を高く設定する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記提示部は、前記提示情報として、前記対象ユーザに脳波の状態を変化させることを促すメッセージを提示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する、
脳波の状態に影響を与える提示情報
として、対象ユーザに
脳波の状態を変化させる効果を有するコンテンツである映像コンテンツ及び音声コンテンツを提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報を取得するステップと、
前記提示前脳波情報を取得した後に前記提示情報を対象ユーザに提示するステップと、
前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報を取得するステップと、
取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定するステップであって、
前記提示情報として前記映像コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標と、前記提示情報として前記音声コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標とを測定するステップと、
前記映像コンテンツが提示された場合における測定の結果と、前記音声コンテンツが提示された場合における測定の結果とに基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練に用いる訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択するステップと、
測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練
であって、選択した前記訓練用のコンテンツの状態を前記対象ユーザの脳波の測定結果に基づいて変化させることにより、前記対象ユーザに脳波の測定状態を認識させる訓練の内容を設定するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
脳波の状態に影響を与える提示情報
として、を対象ユーザに
脳波の状態を変化させる効果を有するコンテンツである映像コンテンツ及び音声コンテンツを提示する提示部、
前記提示部が前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する取得部、
前記取得部が取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、前記取得部が取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する測定部であって、
前記提示部が前記提示情報として前記映像コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標と、前記提示部が前記提示情報として前記音声コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標とを測定する測定部、及び、
前記映像コンテンツが提示された場合における前記測定部による測定の結果と、前記音声コンテンツが提示された場合における前記測定部による測定の結果とに基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練に用いる訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択し、前記測定部が測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練
であって、選択した前記訓練用のコンテンツの状態を前記対象ユーザの脳波の測定結果に基づいて変化させることにより、前記対象ユーザに脳波の測定状態を認識させる訓練の内容を設定する設定部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳波を測定する被験者に対して脳波の測定状態を認識させ、被験者が意図したように脳波を調整させる訓練を行うことにより脳機能を高めるニューロフィードバックが知られている。例えば、特許文献1には、被験者がリラックスするときの脳波が検出されるように、被験者に自身の脳活動を修正させる訓練であるニューロフィードバックを行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のニューロフィードバックの訓練では、予め定められていた訓練内容で訓練が行われていた。しかしながら、予め定められていた訓練内容で訓練を実施すると、被験者に効果的な訓練を行うことができない場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、脳波に関する効果的な訓練を実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する提示部と、前記提示部が前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、前記取得部が取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する測定部と、前記測定部が測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する設定部と、を有する。
【0007】
前記測定部は、前記提示前脳波状態と前記提示後脳波状態との差に基づいて特定した前記対象ユーザの脳波状態の変化量、及び前記脳波状態の変化の速さのうちの少なくともいずれかを前記一以上の指標として測定してもよい。
【0008】
前記設定部は、前記対象ユーザの前記脳波状態の変化量、及び前記対象ユーザの前記脳波状態の変化の速さの少なくともいずれかが大きければ大きいほど、前記訓練の難易度を高く設定してもよい。
【0009】
前記提示部は、前記提示情報として、前記対象ユーザに脳波の状態を変化させることを促すメッセージを提示してもよい。
【0010】
前記提示部は、前記提示情報として、前記対象ユーザに脳波の状態を変化させる効果を有するコンテンツである映像コンテンツ及び音声コンテンツを提示してもよい。
【0011】
前記訓練は、訓練用のコンテンツの状態を前記対象ユーザの脳波の測定結果に基づいて変化させることにより、前記対象ユーザに脳波の測定状態を認識させる訓練であり、前記測定部は、前記提示部が前記提示情報として前記映像コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標と、前記提示部が前記提示情報として前記音声コンテンツを提示した場合における前記一以上の指標とを測定し、前記設定部は、前記映像コンテンツが提示された場合における測定の結果と、前記音声コンテンツが提示された場合における測定の結果とに基づいて、前記訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、コンピュータが実行する、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報を取得するステップと、前記提示前脳波情報を取得した後に前記提示情報を対象ユーザに提示するステップと、前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報を取得するステップと、取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定するステップと、測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定するステップと、を有する。
【0013】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、コンピュータを、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する提示部、前記提示部が前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の前記対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、前記提示情報を提示した後の前記対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する取得部、前記取得部が取得した前記提示前脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、前記取得部が取得した前記提示後脳波情報が示す前記対象ユーザに前記提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、前記提示情報の提示による前記対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する測定部、及び、前記測定部が測定した結果に基づいて、前記対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する設定部、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脳波に関する効果的な訓練を実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】情報処理装置に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの概要を示す図である。情報処理システムSは、ユーザの脳波に関する訓練を実施するためのシステムである。
図1に示すように、情報処理システムSは、情報処理装置1と、端末2と、脳波測定装置3とを有する。情報処理装置1は、インターネット回線や携帯電話網等の通信ネットワークを介して端末2と通信可能に接続されているコンピュータである。ここで、脳波に関する訓練は、例えば、情報処理装置1が訓練用のコンテンツを端末2に表示させ、対象ユーザの脳波の測定結果である脳波の変化量及び脳波の変化速度に基づいて当該コンテンツの状態を変化させることにより、対象ユーザに脳波の測定状態を認識させて対象ユーザの脳機能を高める、ニューロフィードバックと呼ばれる訓練である。
【0017】
端末2は、例えばタブレット、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の端末である。端末2は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、無線LAN等の無線通信、又は、USB(登録商標)等の有線通信を介して、対象ユーザの脳波を測定する脳波測定装置3と通信可能に接続されている。なお、脳波測定装置3は、インターネット回線や携帯電話網等の通信ネットワークを介して情報処理装置1と通信可能に接続されていてもよい。
【0018】
本実施形態において、情報処理装置1は、脳波に関する訓練を実施するにあたり、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報を取得する(
図1における(1))。続いて、情報処理装置1は、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示し(
図1における(2))、当該提示情報を提示した後の対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報を取得する(
図1における(3))。
【0019】
情報処理装置1は、取得した提示前脳波情報が示す、対象ユーザに提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、取得した提示後脳波情報が示す、対象ユーザに提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、提示情報の提示による対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する(
図1における(4))。
【0020】
情報処理装置1は、一以上の指標の測定結果に基づいて、対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する(
図1における(5))。例えば、情報処理装置1は、一以上の指標の測定結果に基づいて、対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の難易度を設定する。例えば、情報処理装置1は、一以上の指標が示す対象ユーザの脳波状態の変化量、及び脳波状態の変化の速さの少なくともいずれかが大きければ大きいほど、訓練の難易度を高く設定する。ここで、訓練の難易度が高ければ高いほど、訓練において提示されるコンテンツの状態を変化させるのに必要となる対象ユーザの脳波の変化量及び脳波の変化速度が大きくなるものとする。
【0021】
情報処理装置1は、設定した訓練の内容に係るコンテンツを端末2に出力して脳波に関する訓練を実施する(
図1における(6))。このように、対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標の測定結果に対応して訓練の内容を設定することにより、情報処理装置1は、脳波に関する効果的な訓練を実施することができる。
【0022】
[情報処理装置1の構成]
続いて、情報処理装置1の構成について説明する。
図2は、情報処理装置1の構成を示す図である。
図2に示すように、情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
通信部11は、インターネット回線や携帯電話網等の通信ネットワークに接続するためのインターフェースである。
【0023】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部12は、制御部13を、取得部131、提示部132、測定部133、設定部134、訓練実施部135として機能させるプログラムを記憶している。
【0024】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、提示部132、測定部133、設定部134、訓練実施部135として機能する。
【0025】
取得部131及び提示部132は、協働することにより、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、当該提示情報を対象ユーザに提示した後の対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する。ここで、脳波情報は、例えば、複数の時刻それぞれにおける脳波の電圧を示す情報である。すなわち、脳波情報は、時間の経過に伴う脳波の電圧の変化を示す情報である。
【0026】
まず、取得部131は、端末2から、脳機能を高める訓練の実施要求を受け付けると、端末2を介して、脳波測定装置3に対象ユーザの脳波の測定を指示する。そして、取得部131は、脳波測定装置3が測定した、提示部132が脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの所定期間における脳波を示す提示前脳波情報を、端末2を介して取得する。
【0027】
続いて、提示部132は、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する。提示情報は、例えば、「楽しいことを思い浮かべてください」等の脳波の状態を変化させることを促すためのメッセージである。提示部132は、提示情報として、当該メッセージを端末2に表示させることにより、当該メッセージを対象ユーザに提示する。
【0028】
ここで、提示部132は、提示情報として、対象ユーザに脳波の状態を変化させることを促すメッセージとともに、対象ユーザに脳波の状態を変化させる効果を有するコンテンツである映像コンテンツ及び音声コンテンツの少なくともいずれかを対象ユーザに提示してもよい。
【0029】
この場合、映像コンテンツ及び音声コンテンツは、予め複数のユーザの脳波を変化させる効果を有することが確認されているコンテンツであり、記憶部12に記憶されている。提示部132は、対象ユーザに脳波の状態を変化させることを促すメッセージと、記憶部12に記憶されている映像コンテンツ及び音声コンテンツとを端末2に送信し、当該メッセージと映像コンテンツが示す映像とを端末2に表示させるとともに、音声コンテンツが示す音声を端末2に出力させる。このようにすることで、情報処理装置1は、ユーザの脳波の状態の変化量を大きくすることができる。
【0030】
取得部131は、提示部132が対象ユーザに提示情報を提示した後に、端末2を介して、脳波測定装置3に対象ユーザの脳波の測定を指示する。ここで、提示部132が対象ユーザに提示情報を提示した後とは、提示部132が対象ユーザに提示情報の提示を開始した後であるものとするが、これに限らず、提示部132が対象ユーザに提示情報の提示を終了した後であってもよい。取得部131は、脳波測定装置3が測定した、提示部132が対象ユーザに提示情報を提示した後の対象ユーザの所定期間における脳波を示す提示後脳波情報を、端末2を介して取得する。
【0031】
なお、取得部131は、提示部132が脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報を取得したが、この提示前脳波情報が示す脳波の状態は、対象ユーザが安静にしており、脳波の状態の変化量が小さい状態である安静時脳波状態であることが好ましい。このため、取得部131が提示前脳波情報を取得する前に、提示部132が対象ユーザに対して安静にすることを促すメッセージを提示し、取得部131が、当該メッセージが提示された後に提示前脳波情報を取得してもよい。
【0032】
測定部133は、取得部131が取得した提示前脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、取得部131が取得した提示後脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、提示情報の提示による対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する。
【0033】
測定部133は、提示前脳波状態と提示後脳波状態との差に基づいて特定した対象ユーザの脳波状態の変化量、及び脳波状態の変化の速さのうちの少なくともいずれかを一以上の指標として測定する。
【0034】
例えば、測定部133は、提示前脳波情報を解析することにより、提示前脳波状態として、提示情報を提示する前のθ波の振幅の平均値を特定する。同様に、測定部133は、提示後脳波情報を解析することにより、提示後脳波状態として、提示情報を提示した後のθ波の振幅の平均値を特定する。測定部133は、提示情報を提示する前のθ波の振幅の平均値に対する、提示情報を提示した後のθ波の振幅の平均値の変化量を第1の指標として特定する。
【0035】
また、測定部133は、提示前脳波情報及び提示後脳波情報を解析することにより、提示情報を提示する前のθ波の振幅の最大値と、提示情報を提示した後のθ波の振幅の最大値とを特定する。そして、測定部133は、提示情報を提示する前のθ波の振幅の最大値に対する、提示情報を提示した後のθ波の振幅の最大値の変化量を第2の指標として特定する。
【0036】
また、測定部133は、提示後脳波情報を解析することにより、対象ユーザに提示情報を提示したときに、提示情報を提示してからθ波の振幅の最大値となるまでの時間を第3の指標として特定する。
【0037】
設定部134は、測定部133が測定した結果としての第1の指標、第2の指標及び第3の指標の少なくともいずれかに基づいて、対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する。設定部134は、対象ユーザの脳波状態の変化量、及び対象ユーザの脳波状態の変化の速さの少なくともいずれかが大きければ大きいほど、訓練の難易度を高く設定する。
【0038】
具体的には、まず、設定部134は、第1の指標が示す対象ユーザの脳波状態の変化量の大きさに基づいて、訓練の難易度の設定に用いる第1の部分スコアを算出する。例えば、設定部134は、θ波の平均値の変化量が大きければ大きいほど第1の部分スコアを大きくする。
【0039】
ここで、部分スコアが大きいほど訓練の難易度が高く設定され、訓練において提示されるコンテンツの状態を変化させるのに必要となる対象ユーザの脳波の変化量及び脳波の変化速度が大きくなるものとする。
【0040】
例えば、提示情報が提示されることによる脳波状態の変化量が比較的大きい対象ユーザに対し、訓練において脳波状態の変化量が少量であってもコンテンツの状態を変化させるようにすると、対象ユーザが脳波状態の変化量を大きくするように意識しない場合であってもコンテンツの状態が変化してしまい、訓練の効果が低くなってしまう。これに対し、部分スコアが大きいほど訓練の難易度が高く設定される。これにより、脳波状態の変化量が比較的大きい対象ユーザに対しては、訓練において脳波状態の変化量が十分に大きくならないとコンテンツの状態を変化させないようにすることができるので、脳波状態の変化量が大きい傾向にある対象ユーザに適した訓練を実施することができる。
【0041】
逆に、提示情報が提示されることによる脳波状態の変化量が小さい対象ユーザに対し、通常の変化量の対象ユーザと同様に訓練を実施した場合、対象ユーザが脳波状態を変化させようと意識しても、コンテンツの状態が変化せず、訓練の効果が低くなってしまう。これに対し、部分スコアが小さい場合には、訓練の難易度が低く設定される。これにより、脳波状態の変化量が比較的小さい対象ユーザに対しては、訓練において脳波状態の変化量が小さくてもコンテンツの状態を変化させるようにすることができるので、脳波状態の変化量が小さい傾向がある対象ユーザに対しても適した訓練を実施することができる。
【0042】
同様に、設定部134は、第2の指標が示す対象ユーザの脳波状態の変化量の大きさに基づいて、訓練の難易度の設定に用いる第2の部分スコアを算出する。例えば、設定部134は、θ波の最大値の変化量が大きければ大きいほど第2の部分スコアを大きくする。同様に、設定部134は、第3の指標が示す対象ユーザの脳波状態の変化の速さの大きさに基づいて、訓練の難易度の設定に用いる第3の部分スコアを算出する。例えば、設定部134は、対象ユーザの脳波状態の変化の速さが大きければ大きいほど第3の部分スコアを大きくする。設定部134は、第1の部分スコアと第2の部分スコアと第3の部分スコアとの合計スコアを算出する。
【0043】
記憶部12には、合計スコアの範囲と、訓練の難易度とを関連付けた難易度設定用情報が記憶されている。
図3は、難易度設定用情報の一例を示す図である。
図3に示されているように、合計スコアが高ければ高いほど、訓練の難易度が高くなることが確認できる。設定部134は、難易度設定用情報を参照し、算出した合計スコアに対応する訓練の難易度を、対象ユーザの訓練の難易度に設定する。
【0044】
訓練実施部135は、設定部134が対象ユーザの訓練の難易度を設定したことに応じて、脳波に関する訓練を実施する。上述したように、脳波に関する訓練は、情報処理装置1が訓練用のコンテンツを端末2に表示させ、対象ユーザの脳波の測定結果である脳波の変化量又は脳波の変化速度が所定の閾値を超えたことを条件として、当該コンテンツの状態を変化させることにより、対象ユーザに脳波の測定状態を認識させるニューロフィードバックである。
【0045】
ここで、訓練用のコンテンツは、例えば、映像コンテンツや音声コンテンツであるものとする。訓練用のコンテンツが映像コンテンツである場合、訓練実施部135は、初めに映像コンテンツを不鮮明な状態で端末2に表示させ、対象ユーザの脳波の変化量又は脳波の変化速度が所定の閾値を超えた場合に、映像コンテンツを鮮明な状態で端末2に表示させる。また、訓練用のコンテンツが音声コンテンツである場合、訓練実施部135は、初めに音声コンテンツにノイズを加えた状態で端末2に出力させ、対象ユーザの脳波の変化量又は脳波の変化速度が所定の閾値を超えた場合に、音声コンテンツにノイズを加えない状態で端末2に音声コンテンツを端末2に出力させる。
【0046】
訓練実施部135は、所定の閾値を、設定部134が設定した難易度に対応する値に設定する。例えば、訓練実施部135は、設定部134が設定した難易度が高ければ高いほど、所定の閾値を高くする。これにより、難易度が高いほど、対象ユーザの脳波の変化量又は脳波の変化速度が大きく変化しても、コンテンツの状態が変化しにくくなる。
【0047】
なお、訓練実施部135は、設定部134が設定した難易度が相対的に低い難易度である場合には、端末2に出力するコンテンツとは別に、訓練中に脳波状態の変化を促進させる音声や映像等の刺激情報を端末2に出力してもよい。このようにすることで、情報処理装置1は、難易度が低く設定された、脳波の変化量又は脳波の変化速度が小さい対象ユーザに対して、脳波状態を変化させることを支援することができる。
【0048】
[動作フロー]
続いて、情報処理装置1に係る処理の流れについて説明する。
図4は、情報処理装置1に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図4に係るフローチャートは、脳機能を高める訓練の実施要求を受け付けると開始されるものとする。
【0049】
まず、取得部131は、脳波測定装置3に対象ユーザの脳波の測定を指示し、脳波測定装置3が測定した、提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの所定期間における脳波を示す提示前脳波情報を、端末2を介して取得する(S1)。
【0050】
続いて、提示部132は、提示情報を端末2に出力し(S2)、提示情報をユーザに提示する。
続いて、取得部131は、脳波測定装置3に対象ユーザの脳波の測定を指示し、脳波測定装置3が測定した、提示情報を対象ユーザに提示した後の対象ユーザの所定期間における脳波を示す提示後脳波情報を、端末2を介して取得する(S3)。
【0051】
続いて、測定部133は、提示前脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、提示後脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、提示情報の提示による対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する(S4)。
【0052】
続いて、設定部134は、測定部133が測定した指標に基づいて、対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の難易度を設定する(S5)。
続いて、訓練実施部135は、対象ユーザに対し、設定部134が設定した難易度で脳波に関する訓練を実施する(S6)。
【0053】
[変形例1]
上述の実施形態では、測定部133は、提示前脳波情報及び提示後脳波情報を解析することにより、提示情報を提示する前後におけるθ波の振幅の平均値の変化量、θ波の振幅の最大値の変化量、提示情報を提示してからθ波の振幅の最大値となるまでの時間を、訓練の内容を設定するための指標として測定したが、これに限らない。
【0054】
測定部133は、提示前脳波情報及び提示後脳波情報を解析することにより、提示情報を提示する前のθ波の振幅の標準偏差と、提示情報を提示した後のθ波の振幅の標準偏差とを特定してもよい。そして、測定部133は、提示情報を提示する前のθ波の振幅の標準偏差に対する、提示情報を提示した後のθ波の振幅の標準偏差の変化量を、指標として特定してもよい。また、測定部133は、提示前脳波情報及び提示後脳波情報を解析し、脳波のうちのθ波に基づいて指標を測定したが、これに限らず、α波に基づいて指標を測定してもよい。
【0055】
[変形例2]
また、上述の実施形態では、訓練用のコンテンツは、例えば、映像コンテンツや音声コンテンツであるものとしたが、設定部134が、訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択するようにしてもよい。
【0056】
この場合、提示部132が提示情報として映像コンテンツ及び音声コンテンツを、異なるタイミングで対象ユーザに提示し、取得部131が、映像コンテンツが提示された後における提示後脳波情報である第1提示後脳波情報と、音声コンテンツが提示された後における提示後脳波情報である第2提示後脳波情報とを取得する。
【0057】
測定部133は、提示部132が提示情報として映像コンテンツを提示した場合に取得部131が取得した第1提示後脳波情報に基づく一以上の指標と、提示部132が提示情報として音声コンテンツを提示した場合に取得部131が取得した第2提示後脳波情報に基づく一以上の指標とを測定する。設定部134は、映像コンテンツが提示された場合における測定の結果と、音声コンテンツが提示された場合における測定の結果とに基づいて、訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを用いるか、音声コンテンツを用いるかを選択する。
【0058】
例えば、設定部134は、第1提示後脳波情報に基づく一以上の指標に基づいて算出した合計スコアである第1合計スコアが、第2提示後脳波情報に基づく一以上の指標に基づいて算出した合計スコアである第2合計スコアよりも大きい場合には、訓練用のコンテンツとして映像コンテンツを選択し、第1合計スコアが第2合計スコアよりも小さい場合には、訓練用のコンテンツとして音声コンテンツを選択する。このようにすることで、情報処理装置1は、対象ユーザの脳機能を高めるのに適したコンテンツを用いて訓練を実施することができる。
【0059】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する前の対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、当該提示情報を提示した後の対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得し、提示前脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、提示後脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、提示情報の提示による対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定し、当該測定結果に基づいて対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する。このようにすることで、情報処理装置1は、脳波に関する効果的な訓練を実施できるようにすることができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
1 情報処理装置
2 端末
3 脳波測定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 取得部
132 提示部
133 測定部
134 設定部
135 訓練実施部
S 情報処理システム
【要約】 (修正有)
【課題】脳波に関する効果的な訓練を実施する情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置1は、脳波の状態に影響を与える提示情報を対象ユーザに提示する提示部と、提示部が前記対象ユーザに提示情報を提示する前の対象ユーザの脳波を示す提示前脳波情報と、提示情報を提示した後の対象ユーザの脳波を示す提示後脳波情報とを取得する取得部と、取得部が取得した提示前脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示する前の脳波状態である提示前脳波状態と、取得部が取得した提示後脳波情報が示す対象ユーザに提示情報を提示した後の脳波状態である提示後脳波状態との差に基づいて、提示情報の提示による対象ユーザの脳波状態の変化に関する一以上の指標を測定する測定部と、測定部が測定した結果に基づいて、対象ユーザの脳機能を高めるための訓練の内容を設定する設定部と、を有する。
【選択図】
図2