(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】耐力壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240531BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240531BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20240531BHJP
E04C 2/38 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
E04B2/56 643A
E04B2/56 605E
E04B2/56 604F
E04H9/02 321B
E04B1/26 F
E04C2/38 C
(21)【出願番号】P 2020006367
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 久光
(72)【発明者】
【氏名】三津橋 歩
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 春彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 由佳
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-276163(JP,A)
【文献】特開2019-196634(JP,A)
【文献】特開2008-144577(JP,A)
【文献】特開2011-226166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04H 9/02
E04B 1/26
E04C 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材と、前記隣り合う第一フレーム材同士を連結する木製の水平材である複数の第二フレーム材と、前記隣り合う第一フレーム材同士を連結するパネル材と、を備えており、
前記複数の第二フレーム材は、前記隣り合う第一フレーム材の下端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材の上端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材のうち前記下端部及び前記上端部よりも高さ方向中央に位置する中央部同士と、を少なくとも連結しており、
前記隣り合う第一フレーム材と前記複数の第二フレーム材との接合部には、水平力を受けて前記パネル材に破壊が生じた後にも、前記水平力に伴って前記複数の第二フレーム材の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記複数の第二フレーム材は、前記第一フレーム材の長さ方向に間隔を空けて配置されているとともに、前記複数の第二フレーム材同士の間には補強手段が設けられ、
前記補強手段は、前記パネル材であり、
前記パネル材は、前記隣り合う第一フレーム材のうち互いに対向する側面間に亘って設けられ、
前記補強手段の高さ寸法は、前記複数の第二フレーム材同士の間隔寸法と等しく設定されていて、前記複数の第二フレーム材同士は、前記補強手段によって間隔が保持されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力壁構造において、
前記パネル材は、
縦横の框材によって形成された枠体と、この枠体の少なくとも一側面に設けられた面材と、を有する中空パネル体として構成されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項3】
建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材と、前記隣り合う第一フレーム材同士を連結する木製の水平材である複数の第二フレーム材と、前記隣り合う第一フレーム材同士を連結するパネル材と、を備えており、
前記複数の第二フレーム材は、前記隣り合う第一フレーム材の下端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材の上端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材のうち前記下端部及び前記上端部よりも高さ方向中央に位置する中央部同士と、を少なくとも連結しており、
前記隣り合う第一フレーム材と前記複数の第二フレーム材との接合部には、水平力を受けて前記パネル材に破壊が生じた後にも、前記水平力に伴って前記複数の第二フレーム材の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記複数の第二フレーム材は、前記第一フレーム材の長さ方向に間隔を空けて配置されているとともに、前記複数の第二フレーム材同士の間には補強手段が設けられ、
前記補強手段は、柱状に形成された補強材であり、
前記補強材は、前記複数の第二フレーム材間に配置されるとともに前記第一フレーム材の側面に添って配置され、
前記補強手段の高さ寸法は、前記複数の第二フレーム材同士の間隔寸法と等しく設定されていて、前記複数の第二フレーム材同士は、前記補強手段によって間隔が保持されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の耐力壁構造において、
前記第一フレーム材から前記第二フレーム材の端部に亘って鋼板が埋め込まれ、
前記第一フレーム材と前記第二フレーム材は、これら第一フレーム材と第二フレーム材の各々の側面から、複数のドリフトピンが、前記第一フレーム材及び前記第二フレーム材と、前記鋼板と、を貫通して差し込まれることによって接合されており、
前記第一フレーム材側及び前記第二フレーム材側の前記複数のドリフトピンは、少なくとも前記第一フレーム材の長さ方向に沿って並んで設けられていることを特徴とする耐力壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物においては、地震時や台風時の水平荷重に抵抗するため、必要壁量を満たすように耐力壁が設けられる。
このような耐力壁としては、隣り合う柱材間の開口部に筋交いを架け渡したり、隣り合う柱材間の開口部全面を覆うように構造用合板を張り付けたりすることで構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、耐力壁を、例えば中層・高層の木造建物や延べ面積の広い木造建物のような比較的規模の大きな木造建物の建築に使用することが求められている。
しかしながら、比較的規模の大きな木造建物に、例えば規模の小さい木造の戸建て住宅に使用されるような通常の耐力壁を適用すると、粘り強さを発揮するための性質である靭性が十分でない場合があり、耐震性を維持しにくい。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐力壁における靭性を向上させ、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図14に示すように、建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁1構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材2と、前記隣り合う第一フレーム材2同士を連結する木製の水平材である複数の第二フレーム材3と、前記隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4と、を備えており、
前記複数の第二フレーム材3は、前記隣り合う第一フレーム材2の下端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材2の上端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材2のうち前記下端部及び前記上端部よりも高さ方向中央に位置する中央部同士と、を少なくとも連結しており、
前記隣り合う第一フレーム材2と前記複数の第二フレーム材3との接合部には、水平力を受けて前記パネル材4に破壊が生じた後にも、前記水平力に伴って前記複数の第二フレーム材3の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記複数の第二フレーム材3は、前記第一フレーム2材の長さ方向に間隔を空けて配置されているとともに、前記複数の第二フレーム材3同士の間には補強手段が設けられ、
前記補強手段は、前記パネル材4であり、
前記パネル材4は、前記隣り合う第一フレーム材2のうち互いに対向する側面2d間に亘って設けられ、
前記補強手段の高さ寸法は、前記複数の第二フレーム材3同士の間隔寸法と等しく設定されていて、前記複数の第二フレーム材3同士は、前記補強手段によって間隔が保持されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3との接合部には、水平力を受けてパネル材4に破壊が生じた後にも、水平力に伴って複数の第二フレーム材3の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されているので、隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3からなるフレーム(本体フレーム1a)の耐力・靭性を向上させることができる。
そのため、パネル材4に破壊が生じた後にも、隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3からなるフレームが靭性の高い状態を確保・維持し、耐力壁1としての機能を損なわずに、水平力に抵抗できることとなる。これにより、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0008】
また、第二フレーム材3は複数備えられ、これら複数の第二フレーム材3は、第一フレーム材2の長さ方向に間隔を空けて配置されているので、隣り合う第一フレーム材2は、複数の第二フレーム材3が設けられた複数の箇所で連結された状態となる。そのため、隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を向上させることができる。
【0010】
また、補強手段であるパネル材4は、隣り合う第一フレーム材2のうち互いに対向する側面2d間に亘って設けられているので、パネル材4によって隣り合う第一フレーム材2同士を連結することができる。そのため、例えばパネル材4を用いずに、第一フレーム材2と第二フレーム材3だけで耐力を持たせようとする場合に比して、耐力壁1の耐力を向上させることができる。
さらに、パネル材4を、隣り合う第一フレーム材2間に納めることができるので、耐力壁1の壁厚を抑えることができる。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、例えば
図1~
図3,
図12,
図13に示すように、請求項
1に記載の耐力壁1構造において、
前記パネル材4は、縦横の框材によって形成された枠体4aと、この枠体4aの少なくとも一側面に設けられた面材4bと、を有する中空パネル体として構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、パネル材4は、縦横の框材によって形成された枠体4aと、この枠体4aの少なくとも一側面に設けられた面材4bと、を有する中空パネル体として構成されているので、パネル材4自体の剛性を向上させることができ、耐力壁1の性能向上に貢献できる。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、例えば
図4~
図10に示すように、
建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁11構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材12と、前記隣り合う第一フレーム材12同士を連結する木製の水平材である複数の第二フレーム材13と、前記隣り合う第一フレーム材12同士を連結するパネル材14と、を備えており、
前記複数の第二フレーム材13は、前記隣り合う第一フレーム材12の下端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材12の上端部同士と、前記隣り合う第一フレーム材12のうち前記下端部及び前記上端部よりも高さ方向中央に位置する中央部同士と、を少なくとも連結しており、
前記隣り合う第一フレーム材12と前記複数の第二フレーム材13との接合部には、水平力を受けて前記パネル材14に破壊が生じた後にも、前記水平力に伴って前記複数の第二フレーム材13の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記複数の第二フレーム材13は、前記第一フレーム12材の長さ方向に間隔を空けて配置されているとともに、前記複数の第二フレーム材13同士の間には補強手段が設けられ、
前記補強手段は、柱状に形成された補強材16であり、
前記補強材16は、前記複数の第二フレーム材13間に配置されるとともに前記第一フレーム材12の側面12dに添って配置され
、
前記補強手段の高さ寸法は、前記複数の第二フレーム材13同士の間隔寸法と等しく設定されていて、前記複数の第二フレーム材13同士は、前記補強手段によって間隔が保持されていることを特徴とする。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図14に示すように、請求項1~
3のいずれか一項に記載の耐力壁41構造において、
前記第一フレーム材42から前記第二フレーム材43の端部に亘って鋼板46が埋め込まれ、
前記第一フレーム材42と前記第二フレーム材43は、これら第一フレーム材42と第二フレーム材43の各々の側面42e,43eから、複数のドリフトピン47が、前記第一フレーム材42及び前記第二フレーム材43と、前記鋼板46と、を貫通して差し込まれることによって接合されており、
前記第一フレーム材42側及び前記第二フレーム材43側の前記複数のドリフトピン47は、少なくとも前記第一フレーム材42の長さ方向に沿って並んで設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、第一フレーム材42から第二フレーム材43の端部に亘って鋼板46が埋め込まれ、第一フレーム材42と第二フレーム材43は、これら第一フレーム材42と第二フレーム材43の各々の側面42e,43eから、複数のドリフトピン47が、第一フレーム材42及び第二フレーム材43と、鋼板46と、を貫通して差し込まれることによって接合されており、第一フレーム材42側及び第二フレーム材43側の複数のドリフトピン47は、少なくとも第一フレーム材42の長さ方向に沿って並んで設けられているので、第二フレーム材43を、第一フレーム材42に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材42と複数の第二フレーム材43からなるフレームの変形性能を格段に向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐力壁における靭性を向上させ、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態における耐力壁を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態における耐力壁の構成例を示す図である。
【
図4】第2実施形態における耐力壁を部分的に示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態における耐力壁の本体フレームを示す図である。
【
図6】第一フレーム材と第二フレーム材との接合部の例を示す側面図である。
【
図7】第一フレーム材と第二フレーム材との接合部の例を示す側面図である。
【
図8】第一フレーム材と第二フレーム材との接合部の例を示す側面図である。
【
図9】第一フレーム材と第二フレーム材との接合部の例を示す側面図である。
【
図10】第2実施形態における耐力壁の構成例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における耐力壁の構成例を示す図である。
【
図12】第3実施形態における耐力壁を部分的に示す斜視図である。
【
図13】変形例の耐力壁を部分的に示す平面図である。
【
図14】第一フレーム材と第二フレーム材との接合部における変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態及び構成例について説明する。ただし、以下に述べる実施形態及び構成例には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び構成例に限定するものではない。以下の実施形態及び構成例において共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。なお、以下の実施形態及び構成例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。また、以下の実施形態及び構成例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1において符号1は、耐力壁を示す。この耐力壁1は、主として、例えば、中層・高層の木造建物や、延べ面積の広い木造建物のような、比較的規模の大きな木造建物の建築に使用されるものである。このような比較的規模の大きな木造建物以外にも、例えば、戸建て住宅のような比較的規模の小さな木造建物に使用してもよいし、このような建物のリフォーム時に採用してもよい。さらに、耐力壁1は、枠組壁工法やパネル工法による建物以外にも、木造軸組構法による建物に使用してもよいし、木造と非木造を組み合わせた混構造の建物に使用してもよい。
【0024】
また、このような耐力壁1を建物に組み込む場合、耐力壁1は、基礎や梁、土台、床等の下部構造材(図示省略)上に立設され、上には、梁や床、上階の壁(耐力壁を含む)等の上部構造材(図示省略)が載せられる。つまり、耐力壁1は、下部構造材と上部構造材との間に挟まれた状態に設けられる。
【0025】
さらに、耐力壁1は、棒鋼やボルト、長ボルト等の棒材(下棒材7L、上棒材7U)によって下部構造材及び上部構造材に接合されている。すなわち、耐力壁1には、棒材7L,7Uの一端が差し込まれる差込穴2b,2c(
図3参照)が形成され、下部構造材と上部構造材にも、棒材7L,7Uの他端が差し込まれる差込穴が形成されることになる。
棒材7L,7Uとしては、異形棒鋼や全ねじボルト等のように、表面に凹凸のある長尺な棒材が好適に用いられる。
また、棒材7L,7Uによる耐力壁1と下部構造材及び上部構造材との接合には、グルードインロッド(GIR:Glued in Rod)と呼ばれる方法が採用される。より詳細に説明すると、棒材7L,7Uと上記の耐力壁1側の差込穴2b,2cとの空隙と、棒材7L,7Uと下部構造材及び上部構造材側の差込穴との空隙と、に接着剤を充填し、その接着剤の硬化により、応力を接着剤の付着力と棒材7L,7Uを介して伝達し、接合耐力を発生させる方法である。
なお、下棒材7Lは、耐力壁1の下端面に対して下方に突出して設けられる場合も、下部構造材の上面から上方に突出して設けられる場合もある。一方、上棒材7Uは、耐力壁1の上端面に対して上方に突出して設けられ、その上から、上部構造材(又は第二金物6U)が載せられる。
なお、本実施形態においては、棒材7L,7Uによる耐力壁1と下部構造材及び上部構造材との接合には、グルードインロッドの方法を採用したが、例えば接合用の金物を用いるなど、その他の方法を採用してもよい。
【0026】
以上のような耐力壁1は、互いに間隔を空けて隣り合う第一フレーム材2と、隣り合う第一フレーム材2同士を連結する第二フレーム材3と、隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4と、を備えている。また、耐力壁1は、第一フレーム材2と第二フレーム材3とを接合するための複数の接合用棒材5を更に備えている。
【0027】
第一フレーム材2は、水平方向(横方向・左右方向)よりも上下方向に長尺な構造用集成材であり、平断面視において正方形状に形成されている。なお、本実施形態においては、第一フレーム材2として構造用集成材が用いられているが、通常の角材でもよいし、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber)やCLT(Cross Laminated Timber)による柱材でもよい。すなわち、第一フレーム材2は、木製の柱状部材である。また、断面形状も正方形状ではなく、矩形状でもよいし、円状(正円、長円)であってもよい。
【0028】
第一フレーム材2のうち、第二フレーム材3が配置される位置(すなわち、第一フレーム材2における第二フレーム材3側面)には、当該第一フレーム材2と第二フレーム材3の端部とを接合する複数の接合用棒材5が差し込まれる複数の接合用差込孔2aが形成されている。これら複数の接合用差込孔2aは、第一フレーム材2を左右方向に貫通する貫通孔である(
図1においては図示省略)。
また、第一フレーム材2の下端部には、上記の差込穴2bが形成され、上端部には、上記の差込穴2cが形成されている。
【0029】
第二フレーム材3は、上下方向よりも水平方向(横方向・左右方向)に長尺な構造用であり、縦断面視において正方形状に形成されている。この第二フレーム材3も、第一フレーム材2と同様に、構造用集成材以外の木材でもよい。また、断面形状も、第一フレーム材2と同様に、正方形状でなくてもよい。
また、第二フレーム材3は、耐力壁1に対して複数備えられており、これら複数の第二フレーム材3は、隣り合う第一フレーム材2の長さ方向に間隔を空けて配置されている。すなわち、本実施形態における耐力壁1は、隣り合う第一フレーム材2と、複数の第二フレーム材3と、によって略井桁状(又は梯子状)に形成された本体フレーム1aを備えている。
【0030】
第二フレーム材3の両端部には、当該第二フレーム材3の両端部と隣り合う第一フレーム材2とを接合するための複数の接合用棒材5が差し込まれる複数の接合用差込穴3aが形成されている。これら複数の接合用差込穴3aの位置と、第一フレーム材2に形成された複数の接合用差込孔2aの位置は整合している。そのため、複数の接合用棒材5を、左の第一フレーム材2における左側面と右の第一フレーム材2における右側面から、第二フレーム材3に向かって差し込むことができる。
【0031】
複数の接合用棒材5は、第一フレーム材2と第二フレーム材3とを接合するために、第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部(すなわち、隣り合う第一フレーム材2における第二フレーム材3側面と、第二フレーム材3の両端部と、が接している部分とその付近)に埋め込まれるものである。
接合用棒材5としては、異形棒鋼や全ねじボルト等のように、表面に凹凸のある長尺な棒材が好適に用いられる。
また、複数の接合用棒材5による第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合には、上記のグルードインロッドの方法が採用されている。すなわち、複数の接合用棒材5と第一フレーム材2側の複数の接合用差込孔2aとの空隙と、複数の接合用棒材5と第二フレーム材3側の複数の接合用差込穴3aとの空隙と、に接着剤を充填し、その接着剤の硬化により、応力を接着剤の付着力と複数の接合用棒材5を介して伝達し、接合耐力を発生させるようにする。
【0032】
さらに、複数の接合用棒材5は、第一フレーム材2の長さ方向(上下方向)に並んで設けられている。より詳細に説明すると、複数の接合用棒材5は、第二フレーム材3の両端部において、第二フレーム材3の上半部側と下半部側にそれぞれ設けられている。
本実施形態においては、第二フレーム材3の両端部のそれぞれにおける上半部に、8本ずつの接合用棒材5が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、8本ずつの接合用棒材5が設けられている。さらに、上半部における8本ずつの接合用棒材5は、上側4本、下側4本になるように配置され、下半部における8本ずつの接合用棒材5も、上側4本、下側4本になるように配置されている。
また、第一フレーム材2側の複数の接合用差込孔2aと、第二フレーム材3側の複数の接合用差込穴3aは、これら複数の接合用棒材5と同じ数だけ形成されている。
【0033】
耐力壁1が強い外力(水平力)を受けた場合、隣り合う第一フレーム材2は、同一の方向に傾くように動こうとし、それに合わせて、第二フレーム材3は上方や下方に回転しようとする。このような第一フレーム材2及び第二フレーム材3の動きに対し、複数の接合用棒材5が、第一フレーム材2の長さ方向(上下方向)に並んで設けられていると、第二フレーム材3が上方に回転しようとする動きと、下方に回転しようとする動きを抑制できることとなる。つまり、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部には、外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されていることになり、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材3からなる本体フレーム1aは、靭性が高い状態となる。
ここで、靭性とは、耐力壁1に対して外力による変形が生じた後も壁としての機能が著しく低下しない粘り強さを発揮するための性質を指し、このような靭性は、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部に、複数の接合用棒材5によるモーメント抵抗接合が適用されることにより確保される。
【0034】
パネル材4は、縦横の框材によって形成された枠体4aと、この枠体4aの少なくとも一側面(本実施形態においては正面側及び背面側の双方)に設けられた面材4bと、を有する中空パネル体として構成されている。
より詳細に説明すると、パネル材4は、建築用木質パネルであり、
図2に示すように、縦横の框材によって形成された枠体4aと、枠体4aの内部に組み込まれた補強桟材4cと、枠体4a及び補強桟材4cの表裏面に貼り付けられた面材4bと、を有する。枠体4aの内部には、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。なお、補強桟材4cは、図示例においては上下方向(縦)に伸びるものが1本のみ用いられているが、左右方向(横)に伸びる補強桟材が、縦に伸びる補強桟材4cと交差して設けられてもよいし、本数も1本に限られるものではない。
このようなパネル材4は、面材4bが枠体4aに接着されて一体化しているため、パーツ全体(枠体4a、面材4b)で剛性と強度を保持するようになっている。また、パネル材4自体は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有しているが、耐力壁1が強い外力を受けた場合には、破壊が生じる場合がある。
【0035】
本実施形態におけるパネル材4は、左右に間隔を空けて隣り合う第一フレーム材2間に組み込まれている。すなわち、パネル材4は、左右に隣り合う第一フレーム材2のうち互いに対向する側面2d(内側面2d)間に亘って設けられている。
さらに、パネル材4は、上下に間隔を空けて隣り合う第二フレーム材3間に組み込まれる。すなわち、パネル材4は、下側の第二フレーム材3における上面3bと、上側の第二フレーム材3における下面3cと、に亘って設けられている。
要するに、パネル材4は、左右に隣り合う第一フレーム材2と、上下に隣り合う第二フレーム材3と、によって形成される枠内に配置され、かつ、左右に隣り合う第一フレーム材2と、上下に隣り合う第二フレーム材3と、に接している。
【0036】
そして、パネル材4は、上下左右の外周面が、左右に隣り合う第一フレーム材2と、上下に隣り合う第二フレーム材3と、に対して接着によって接合されている。つまり、第一フレーム材2におけるパネル材4側面と、パネル材4の外周面と、が接している部分とその付近が、第一フレーム材2とパネル材4との接合部とされている。また、第二フレーム材3におけるパネル材4側面と、パネル材4の外周面と、が接している部分とその付近が、第二フレーム材3とパネル材4との接合部とされている。
なお、本実施形態においては、正背方向に隣接する2枚一組のパネル材4が、上記の枠内に配置されている。
【0037】
隣り合う第一フレーム材2間に設けられる複数の第二フレーム材3及び複数のパネル材4は、
図1に示すように、上下方向に交互に配置されている。より詳細に説明すると、最も下方にはパネル材4が配置され、最も上方にもパネル材4が配置されている。
複数のパネル材4の幅寸法(左右方向の寸法)は全て同一に設定されているが、最も下方のパネル材4は上下方向の寸法が他のパネル材4よりも長く、最も上方のパネル材4は上下方向の寸法が他のパネル材4よりも短く設定されている。
また、複数のパネル材4の厚さ寸法(正背方向の寸法)は、正背方向に隣接する2枚一組で、第一フレーム材2における正背方向の寸法と等しくなるように設定されている。
さらに、最も下方のパネル材4における下端面と、隣り合う第一フレーム材2における下端面は面一となっており、最も上方のパネル材4における上端面と、隣り合う第一フレーム材2における上端面は面一となっている。
【0038】
耐力壁1は、隣り合う第一フレーム材2同士と、その間に設けられる第二フレーム材3及びパネル材4と、の一体性を高めるための第一金物6L及び第二金物6Uを更に備えている。第一金物6Lは、耐力壁1の下端面に設けられ、第二金物6Uは、耐力壁1の上端面に設けられている。
【0039】
第一金物6Lは、矩形板状の鋼板であり、両端部に、耐力壁1を下部構造材に接続するための上記の下棒材7Lを通すための孔が複数形成されている。また、この第一金物6Lの上面及び下面における面積は、耐力壁1の下端面における面積と略等しい。
第二金物6Uも、同様に鋼板であり、両端部に、耐力壁1を上部構造材に接続するための上記の上棒材7Uを通すための孔が複数形成されている。また、この第二金物6Uの上面及び下面における面積は、耐力壁1の上端面における面積と略等しい。
【0040】
第一金物6Lは、両端部に形成された複数の孔に下棒材7Lを通して耐力壁1の下端面に接し、下部構造材と耐力壁1との間に挟まれた状態に設けられる。
第二金物6Uは、両端部に形成された複数の孔に上棒材7Uを通して耐力壁1の上端面に接し、上部構造材と耐力壁1との間に挟まれた状態に設けられる。
なお、第一金物6L及び第二金物6Uの、耐力壁1への固定は、接着でもよいし、ビスなどの固定具によるものでもよい。ビスなどの固定具を使用する場合は、ビス孔が形成されている。
【0041】
第一金物6L及び第二金物6Uが設けられた耐力壁1は、複数の孔に上記の棒材7L,7Uが通されているため、例えば耐力壁1が強い外力を受けたときに、隣り合う第一フレーム材2が外側(左右方向)に広がるような変形を起こしにくくなる。そのため、第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部にも、第一フレーム材2とパネル材4との接合部にも影響を及ぼしにくくなるので、隣り合う第一フレーム材2同士と、その間に設けられる第二フレーム材3及びパネル材4と、の一体性を高めることができる。
【0042】
本実施形態における耐力壁1の寸法設定について説明すると、第一フレーム材4は、180mm角となっており、長さ(上下方向の寸法)は2888mmとされている。
隣り合う第一フレーム材2間の間隔寸法は、540mmとされており、隣り合う第一フレーム材2間に設けられる第二フレーム材3の長さ(左右方向の寸法)も、540mmとされている。また、第二フレーム材3の上下方向の寸法は、215mmとされている。さらに、第二フレーム材3の厚さ寸法(正背方向の寸法)は、本実施形態においては180mmであるが、第二フレーム材3の厚さ寸法は180mmより薄くしてもよい(例えば
図3等参照)。
接合用棒材5の長さ(左右方向の寸法)は、335mmとされている、また、第二フレーム材3の上面又は下面から直近の接合用棒材5までの間隔は、24~30mm程度とされている。さらに、上半部又は下半部において上下に並ぶ接合用棒材5同士の間隔は、30mm前後とされているが、上半部の接合用棒材5と下半部の接合用棒材5との間隔は、30mm程度よりも広い。換言すれば、上半部に設けられる接合用棒材5と下半部に設けられる接合用棒材5同士の間隔は、上半部又は下半部において上下に並ぶ接合用棒材5同士の間隔よりも目に見えて明らかに広くなるように設定されていることが望ましい。ただし、用いられる接合用棒材5が多く、上半部に設けられる接合用棒材5と下半部に設けられる接合用棒材5同士の間隔を広く確保できない場合は、等間隔でもよい。
なお、このような寸法設定は、耐力壁1が導入される木造建物の大きさに応じて縮尺を適宜変更して使用してもよい。
【0043】
以上のように構成された耐力壁1は、例えば、中層・高層の木造建物や、延べ面積の広い木造建物のような、比較的規模の大きな木造建物に組み込まれる。当該木造建物が地震や台風等によって強い外力(水平力)を受けると、耐力壁1は剪断方向に変形しようとする。ここで、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているので、本体フレーム1aの変形性能は、パネル材4自体の変形性能よりも高い。そのため、耐力壁1が一定値以上の外力を受けると、パネル材4に破壊が生じる場合がある。
従来公知の耐力壁の場合は、耐力壁に剛性を付与するパネル材に破壊が生じると、耐力壁としての機能を損なう。これに対して、本実施形態によれば、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているため、パネル材4に破壊が生じた後にも、本体フレーム1aが靭性の高い状態を確保・維持しており、耐力壁1としての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなる。これにより、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0044】
また、第二フレーム材3は複数備えられ、これら複数の第二フレーム材3は、第一フレーム材2の長さ方向に間隔を空けて配置されているので、隣り合う第一フレーム材2は、複数の第二フレーム材3が設けられた複数の箇所で連結された状態となる。そのため、隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3からなる本体フレーム1aの変形性能を向上させることができる。
【0045】
また、第一フレーム材2と第二フレーム材3は、第一フレーム材2と第二フレーム材3との接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材5によって接合されており、複数の接合用棒材5は、少なくとも第一フレーム材2の長さ方向に並んで設けられているので、第二フレーム材3を、第一フレーム材2に対してモーメント抵抗接合することができ、本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
【0046】
また、パネル材4は、隣り合う第一フレーム材2のうち互いに対向する側面2d間に亘って設けられているので、パネル材4によって隣り合う第一フレーム材2同士を連結することができる。そのため、例えばパネル材4を用いずに、第一フレーム材2と第二フレーム材3だけで耐力を持たせようとする場合に比して、耐力壁1の耐力を向上させることができる。
さらに、パネル材4を、隣り合う第一フレーム材2間に納めることができるので、耐力壁1の壁厚を抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態におけるパネル材4は、縦横の框材によって形成された枠体4aと、この枠体4aの少なくとも一側面に設けられた面材4bと、を有する中空パネル体として構成されているので、パネル材4自体の剛性を向上させることができ、耐力壁1の性能向上に貢献できる。
【0048】
〔構成例1〕
図3は、上記の第1実施形態における耐力壁1の構成例を示しており、本構成例における耐力壁1Aは、上端部及び下端部に、第二フレーム材3が設けられている。
より詳細に説明すると、隣り合う第一フレーム材2間に設けられる複数の第二フレーム材3及び複数のパネル材4は、上下方向に交互に配置されているが、最も下方には第二フレーム材3が配置され、最も上方にも第二フレーム材3が配置されている。つまり、隣り合う第一フレーム材2と上下端部の第二フレーム材3によって矩形枠が形成され、その枠内に、他の第二フレーム材3と複数のパネル材4とが上下方向に交互に組み込まれた状態となっている。
【0049】
複数のパネル材4の幅寸法(左右方向の寸法)は全て同一に設定されているが、最も下方のパネル材4は上下方向の寸法が他のパネル材4よりも長く、最も上方のパネル材4は上下方向の寸法が他のパネル材4よりも短く設定されている。
なお、上端部の第二フレーム材3と、上から二番目の第二フレーム材3との間の隙間は狭いため、この隙間に設けられる最も上方のパネル材4は、他のパネル材4よりも簡略化された構成であってもよい。
【0050】
また、最も下方の第二フレーム材3における下端面と、隣り合う第一フレーム材2における下端面は面一となっており、最も上方の第二フレーム材3における上端面と、隣り合う第一フレーム材2における上端面は面一となっている。
【0051】
隣り合う第一フレーム材2と複数の第二フレーム材3は、接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材5によってモーメント抵抗接合されている。
上下端部の第二フレーム材3は、上下方向に並んで設けられる2本の接合用棒材5によって、第一フレーム材2に接合されている。すなわち、上下端部の第二フレーム材3は、両端部のそれぞれにおける上半部側と下半部側に設けられた接合用棒材5によって、第一フレーム材2に接合されている。なお、2本の接合用棒材5と、当該2本の接合用棒材5が差し込まれる接合用差込孔2a及び接合用差込穴3aは、棒材7L,7Uの一端が差し込まれる差込穴2b,2cを避けて配置されている。
なお、これら上下端部の第二フレーム材3については、両端部に2本ずつの接合用棒材5によって第一フレーム材2に接合されるものとしたが、1本ずつでもよい。両端部に1本ずつの接合用棒材5によって第一フレーム材2に接合される場合も、第一フレーム材2へのめり込みで圧縮し、接合用棒材5で引っ張りとなるのでモーメント抵抗接合されていることとなる。
また、他の複数の第二フレーム材3は、両端部のそれぞれにおける上半部に、10本ずつの接合用棒材5が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、10本ずつの接合用棒材5が設けられている。さらに、上半部における10本ずつの接合用棒材5は、上側5本、下側5本になるように配置され、下半部における10本ずつの接合用棒材5も、上側5本、下側5本になるように配置されている。
また、第一フレーム材2側の複数の接合用差込孔2aと、第二フレーム材3側の複数の接合用差込穴3aは、これら複数の接合用棒材5と同じ数だけ形成されている。
【0052】
本構成例によれば、第1実施形態と同様の効果を発揮するとともに、隣り合う第一フレーム材2と上下端部の第二フレーム材3によって矩形枠が形成され、その枠内に、他の第二フレーム材3と複数のパネル材4とが上下方向に交互に組み込まれた状態となっているので、本体フレーム1aの変形性能をより向上させることができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
図4,
図5に示す耐力壁11は、互いに間隔を空けて隣り合う第一フレーム材12と、隣り合う第一フレーム材12同士を連結する第二フレーム材13と、隣り合う第一フレーム材12同士を連結するパネル材4と、を備えている。
また、耐力壁11は、第一フレーム材12と第二フレーム材13とを接合するための複数の接合用棒材15と、隣り合う第一フレーム材12と複数の第二フレーム材3からなる本体フレーム11aを補強する複数の補強材16と、を更に備えている。
【0054】
第一フレーム材12は、第1実施形態における第一フレーム材2の構成と同一である。
複数の第二フレーム材13のうち、上下端部の第二フレーム材13の厚さ寸法(正背方向の寸法)は、第一フレーム材12の厚さ寸法(正背方向の寸法)と等しく、隣り合う第一フレーム材12間に設けられた場合に、第一フレーム材12の表面と第二フレーム材13の表面が面一となる。
一方、複数の第二フレーム材13のうち、上下端部の第二フレーム材13以外のその他の第二フレーム材13は、上下端部の第二フレーム材13よりも厚さ寸法(正背方向の寸法)が短く設定されている。また、第一フレーム材12の正背方向中央に位置するように設けられている。ただし、上下端部の第二フレーム材13以外のその他の第二フレーム材13も、上下端部の第二フレーム材13と同じ厚さ寸法に設定されていてもよい。
【0055】
パネル材14は、合板などの矩形板材である。このようなパネル材14は、幅寸法(左右方向の寸法)が、隣り合う第一フレーム材12間の間隔寸法よりも長く設定され、隣り合う第一フレーム材12のうち同一鉛直面上に配置された側面12e間に亘って設けられて接着されている。
なお、パネル材14は、一枚の大判なものでもよいし、複数に分割されたパネル材14を上下方向に並べて隣り合う第一フレーム材12間に設けるようにしてもよい。
また、パネル材14は、複数の第二フレーム材13のうち、少なくとも、上下端部の第二フレーム材13に接し、接着によって接合されている。
パネル材14は、第一フレーム材12や少なくとも上下端部の第二フレーム材13に対して接着により接合されているが、これに限られるものではなく、釘などの固定具によって固定されて接合されてもよい。
また、複数に分割されたパネル材14を上下方向に並べて設ける場合は、接着で接合されたパネル材14と、固定具によって接合されたパネル材14とが混在してもよい。さらに、例えば開口部が形成される箇所などのように、場合によっては、パネル材14が部分的に設けられなくてもよい。
【0056】
複数の補強材16は、柱状に形成された構造用集成材(LVLやCLT等でもよい。)であり、上下に隣り合う第二フレーム材13間に配置されるとともに、第一フレーム材12の内側面12dに添って配置されている。
複数の補強材16は、第一フレーム材12及び第二フレーム材13に対して接着接合されているが、例えばビス留めなど、その他の接合方法を採用するか適宜組み合わせて接合されるものとしてもよい。
【0057】
隣り合う第一フレーム材12と複数の第二フレーム材13は、接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材15によってモーメント抵抗接合されている。
上下端部の第二フレーム材13は、両端部のそれぞれにおいて、上下方向に並んで設けられる2本の接合用棒材15によって第一フレーム材2に接合されている。
さらに、他の複数の第二フレーム材13は、両端部のそれぞれにおける上半部に、2本ずつの接合用棒材15が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、2本ずつの接合用棒材15が設けられている。
また、第一フレーム材12側の複数の接合用差込孔12aと、第二フレーム材13側の複数の接合用差込穴13aは、これら複数の接合用棒材15と同じ数だけ形成されている。
【0058】
なお、上下端部の第二フレーム材13以外の、他の複数の第二フレーム材13において複数の接合用棒材15が用いられる本数は、
図6~
図9に示すように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
すなわち、
図6に示す例では、第二フレーム材13の両端部のそれぞれにおける上半部に、4本ずつの接合用棒材15が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、4本ずつの接合用棒材15が設けられている。
図7に示す例では、第二フレーム材13の両端部のそれぞれにおける上半部に、6本ずつの接合用棒材15が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、6本ずつの接合用棒材15が設けられている。また、上半部及び下半部における6本ずつの接合用棒材15は、2本ずつ上下三段に並んだ状態となっている。
図8に示す例では、第二フレーム材13の両端部のそれぞれにおける上半部に、6本ずつの接合用棒材15が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、6本ずつの接合用棒材15が設けられている。また、上半部及び下半部における6本ずつの接合用棒材15は、3本ずつ上下二段に並んだ状態となっている。
図9に示す例では、第二フレーム材13の両端部のそれぞれにおける上半部に、10本ずつの接合用棒材15が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、10本ずつの接合用棒材15が設けられている。このように数多く接合用棒材15を設ける必要がある場合は、第二フレーム材13の厚さ寸法を、第一フレーム材12と同じ長さにし、接合用棒材15を埋め込むことができるスペースを確保する。
【0059】
本実施形態によれば、上記の第1実施形態と同様に、耐力壁11としての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなるので、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
さらに、パネル材14は、隣り合う第一フレーム材12のうち同一鉛直面上に配置された側面12e間に亘って設けられているので、パネル材14によって隣り合う第一フレーム材12同士を連結することができる。そのため、例えばパネル材14を用いずに、第一フレーム材12と第二フレーム材13だけで耐力を持たせようとする場合に比して、耐力壁11の耐力を向上させることができる。
さらに、パネル材14を、隣り合う第一フレーム材12のうち同一鉛直面上に配置された側面12e間に亘って設けるだけで耐力壁1の耐力を向上できるので、パネル材14を製造する手間やコストを低減できるとともに、耐力壁11を組み立てる作業も効率良く行うことができる。
【0060】
〔構成例2〕
図10に示す構成例では、複数の接合用棒材15Aとして、長ボルト又は全ねじボルトが用いられており、第一フレーム材12の左右側面から側方に突出する部分(突出部)に雄ネジ部が形成されている。
突出部には、角座金15aが設けられるとともにナット15bが設けられている。角座金15aは、複数の接合用棒材15Aのそれぞれに設けられるものであるため、複数の角座金15aは隣接し合い、回転を防止できるようになっている。
【0061】
本構成例において、複数の接合用棒材15Aは、第二フレーム材13の接合用差込穴13aに埋め込まれ、空隙に接着剤が充填されるグルードインロッドの方法によって、第二フレーム材13に対して設けられている。第一フレーム材12に対しては、第一フレーム材12の接合用差込孔12aに通された後で、接着剤を充填してもよい。
【0062】
複数の接合用棒材15Aによって第一フレーム材12と第二フレーム材3とを接合する場合は、第一フレーム材12を、第二フレーム材13に対し、複数の接合用棒材15Aを接合用差込孔12aに通すようにしながら外側から設けた後に、角座金15aとナット15bを設けるようにする。
【0063】
本構成例によれば、複数の接合用棒材15Aを第二フレーム材13に対して予め埋め込んで固定しておくことができるので、第二フレーム材13と複数の接合用棒材15Aを一つの部材として取り扱うことができる。これにより、複数の接合用棒材15Aをバラバラにせずに一まとめにできるので、輸送時に持ち運びしやすく、耐力壁11を組み立てる作業も効率良く進めることができる。
【0064】
〔構成例3〕
図11に示す構成例は、隣り合う第一フレーム材12と、複数の第二フレーム材13からなる本体フレーム11aの最も簡易な構造である。
すなわち、本構成例における本体フレーム11aは、隣り合う第一フレーム材12と上下端部の第二フレーム材13によって矩形枠状に形成されている。
また、隣り合う第一フレーム材12と上下端部の第二フレーム材13は、接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材15によってモーメント抵抗接合されている。つまり、上下端部の第二フレーム材13は、両端部のそれぞれにおいて、上下方向に並んで設けられる2本の接合用棒材15によって第一フレーム材2に接合されている。
【0065】
本構成例によれば、本体フレーム11aを簡易な構造とすることができるので、コストの面で有利となるとともに、耐力壁11を組み立てる作業も効率良く進めることができる。
【0066】
〔第3実施形態〕
図12に示す耐力壁21は、互いに間隔を空けて隣り合う第一フレーム材22と、隣り合う第一フレーム材22同士を連結する第二フレーム材23と、隣り合う第一フレーム材22同士を連結するパネル材24と、を備えている。
また、隣り合う第一フレーム材22と複数の第二フレーム材23は、接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材(図示省略)によってモーメント抵抗接合されている。
【0067】
第一フレーム材22は、第1及び第2実施形態における第一フレーム材2,12の構成と同一である。
複数の第二フレーム材23は、隣り合う第一フレーム材22よりも厚さ寸法(正背方向の寸法)が短く設定されている。より具体的には、第一フレーム材22の正背方向における寸法の3分の1程度に設定されている。また、第一フレーム材22の正背方向中央に位置するように設けられている。
【0068】
パネル材24は、縦横の框材によって形成された枠体24aと、この枠体24aの少なくとも一側面(本実施形態においては正面側及び背面側の双方)に設けられた面材24bと、を有する中空パネル体として構成されている。
パネル材24の幅寸法(左右方向の寸法)は、第二フレーム材23の長さ方向(左右方向の寸法)と等しく、厚さ寸法(正背方向の寸法)は、第二フレーム材23の厚さ寸法(正背方向の寸法)と等しい。また、パネル材24を一枚の大判なものとする場合は、上下方向の寸法が、第一フレーム材22における上下方向の寸法と等しいが、複数に分割されたパネル材24を上下方向に並べる場合は、上下に並ぶ複数のパネル材24における上下方向の寸法を足し合わせた寸法が、第一フレーム材22における上下方向の寸法と等しい。
このようなパネル材24は、面材24bが枠体24aに接着されて一体化しているため、パーツ全体(枠体24a、面材24b)で剛性と強度を保持するようになっている。また、パネル材24自体は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有しているが、耐力壁21が強い外力を受けた場合には、破壊が生じる場合がある。
【0069】
本実施形態におけるパネル材24は、左右に間隔を空けて隣り合う第一フレーム材22間に組み込まれている。すなわち、パネル材24は、左右に隣り合う第一フレーム材22のうち互いに対向する側面22d(内側面22d)間に亘って設けられている。
さらに、パネル材24は、複数の第二フレーム材23の正面側と背面側であって、かつ隣り合う第一フレーム材22間に組み込まれる。要するに、パネル材24は、左右に隣り合う第一フレーム材22間に亘って配置され、かつ、複数の第二フレーム材23に接して設けられ、第二フレーム材23は、パネル材24によって正面及び背面からは見えない状態となる。
【0070】
そして、パネル材24は、左右の外周面が、左右に隣り合う第一フレーム材22に対して接着によって接合されている。つまり、第一フレーム材22におけるパネル材24側面(内側面22d)と、パネル材24の外周面と、が接している部分とその付近が、第一フレーム材22とパネル材24との接合部とされている。
また、正面側に位置するパネル材24の背面は、複数の第二フレーム材23の正面に接し、背面側に位置するパネル材24の正面は、複数の第二フレーム材23の背面に接するが、これらの接触部位は接着によって接合されてもよいし、接合されていなくてもよい。
【0071】
隣り合う第一フレーム材22の表面と、正面側及び背面側のパネル材24の表面は面一となっている。また、隣り合う第一フレーム材22の上端面と、上端部の第二フレーム材23の上面と、パネル材24の上端面も面一となっている。さらに、隣り合う第一フレーム材22の下端面と、下端部の第二フレーム材23の下面と、パネル材24の下端面も面一となっている。
【0072】
本実施形態によれば、上記の第1実施形態と同様に、耐力壁21としての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなるので、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
さらに、パネル材24を、耐力壁21の下端部から上端部にかけて連続的に、かつ耐力壁21の正面側と背面側に設けることができるので、表裏のパネル材24によって耐力壁21の耐力を向上させることができる。また、複数の第二フレーム材23をパネル材24によって遮蔽できる。
【0073】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態及び構成例は、上記のものに限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上記の実施形態及び構成例と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0074】
〔変形例1〕
本変形例における耐力壁31は、
図13に示すように、互いに間隔を空けて隣り合う第一フレーム材32と、隣り合う第一フレーム材32同士を連結する第二フレーム材33と、隣り合う第一フレーム材32同士を連結するパネル材34と、を備えている。
第二フレーム材33は、第一フレーム材32に形成された差込穴32cに干渉しないように、耐力壁31の上端部と下端部には配置されない。
パネル材34は、枠体34aと面材34bとを有する中空パネル体であり、上下方向の寸法が、第一フレーム材32における上下方向の寸法と等しい。
【0075】
第二フレーム材33は、耐力壁31における一面側に寄って配置されており、パネル材34は、耐力壁31における他面側に寄って配置されている。
また、隣り合う第一フレーム材32と複数の第二フレーム材33は、接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材(図示省略)によってモーメント抵抗接合されている。さらに、パネル材34は、左右の外周面が、隣り合う第一フレーム材32に対して接着によって接合されている。
【0076】
そして、このような耐力壁31は、
図13に示すように、平面視においてロ字状に形成された四角筒状の柱状体30を構成している。換言すれば、柱状体30は、四側面に耐力壁31を備えた状態となっている。より詳細に説明すると、当該柱状体30は、四隅に配置された4本の第一フレーム材32と、隣り合う第一フレーム材32間に設けられた第二フレーム材33及びパネル材34とから構成されている。
【0077】
なお、本変形例における耐力壁31は、図示例のように四側面に配置されて柱状体30を構成しているが、柱状体30に組み込まれず、耐力壁31単体でも十分な機能を発揮する。すなわち、パネル材34に破壊が生じた後にも、隣り合う第一フレーム材32と第二フレーム材33からなる本体フレーム31aが靭性の高い状態を維持し、耐力壁31としての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなる。
【0078】
本変形例によれば、平面視においてロ字状に形成された四角筒状の柱状体30が、四側面に耐力壁31を備えた状態となっているので、高耐力・高靭性の柱を比較的規模の大きな木造建物に組み込むことができる。これにより、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0079】
さらに、本変形例における耐力壁31は、第二フレーム材33は、耐力壁31における一面側に寄って配置されており、パネル材34は、耐力壁31における他面側に寄って配置されていても、耐力壁31としての十分な機能を発揮するので、耐力壁31によって柱状体30を構成しなくても、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0080】
〔変形例2〕
図14は、耐力壁41において、第一フレーム材42と第二フレーム材43との接合部における変形例を示している。より詳細に説明すると、第一フレーム材42から第二フレーム材43の端部に亘って鋼板46が埋め込まれ、第一フレーム材42と第二フレーム材43は、これら第一フレーム材42と第二フレーム材43の各々の側面42e,43eから、複数のドリフトピン47が、第一フレーム材42及び第二フレーム材43と、鋼板46と、を貫通して差し込まれることによって接合されている。
【0081】
第一フレーム材42、第二フレーム材43、鋼板46には、それぞれ貫通孔42a,43a,46aが形成されている。また、第一フレーム材42には、鋼板46が差し込まれる差込穴42bが形成され、第二フレーム材43の端部には、鋼板46が差し込まれる差込スリット43bが形成されている。
【0082】
第一フレーム材42側及び第二フレーム材43側の複数のドリフトピン47は、少なくとも第一フレーム材42の長さ方向(上下方向)に沿って並んで設けられている。すなわち、隣り合う第一フレーム材42と複数の第二フレーム材43は、接合部に埋め込まれた鋼板46及び複数のドリフトピン47によってモーメント抵抗接合されている。
【0083】
本変形例によれば、第一フレーム材42から第二フレーム材43の端部に亘って鋼板46が埋め込まれ、第一フレーム材42と第二フレーム材43は、これら第一フレーム材42と第二フレーム材43の各々の側面42e,43eから、複数のドリフトピン47が、第一フレーム材42及び第二フレーム材43と、鋼板46と、を貫通して差し込まれることによって接合されており、第一フレーム材42側及び第二フレーム材43側の複数のドリフトピン47は、少なくとも第一フレーム材42の長さ方向に沿って並んで設けられているので、第二フレーム材43を、第一フレーム材42に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材42と複数の第二フレーム材43からなるフレームの変形性能を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 耐力壁
1a 本体フレーム
2 第一フレーム材
2a 接合用差込孔
2d 内側面
3 第二フレーム材
3a 接合用差込穴
4 パネル材
5 接合用棒材