(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】座体及び椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20240531BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20240531BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A47C31/02 C
A47C7/02 Z
B68G7/05 A
(21)【出願番号】P 2019143293
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-244103(JP,A)
【文献】実開昭60-054499(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/02
A47C 7/02
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子用の座体であって、
表面に凹部が形成された基部と、
前記基部の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記凹部に嵌入可能に構成された嵌入部材であって、前記カバーの一部が前記凹部に挿入された状態で前記凹部に嵌入されることにより、前記凹部を構成する壁面との間に前記カバーの一部を挟み込んで固定する嵌入部材と、を備え、
前記凹部は、該凹部を構成する壁面として、第1壁面と、前記第1壁面と対向する第2壁面と、を有しており、
前記嵌入部材は、該嵌入部材が前記凹部に嵌入されているときに、前記第1壁面の側に位置する第1当接部と、前記第2壁面の側に位置する第2当接部と、前記第1当接部と前記第2当接部との間に空間を形成しつつ前記第1当接部と前記第2当接部とを連接する連接部と、を備え、
前記嵌入部材が前記凹部に嵌入されているときには、前記第1壁面及び前記第2壁面により、前記第1当接部及び前記第2当接部は互いに接近するように加圧されており、かつ、前記第1当接部と前記第1壁面の間、及び、前記第2当接部と前記第2壁面の間、のうちの少なくともいずれか一方に、前記カバーが挟み込まれており、
前記凹部への前記嵌入前における前記第1当接部、前記第2当接部及び前記連接部は、一部が開放された
円筒状又はU字型の形状を有する、座体。
【請求項2】
請求項1に記載の座体であって、
前記嵌入部材は、前記凹部に嵌入された状態において、前記凹部よりも外に突出している突出部を備える、座体。
【請求項3】
請求項2に記載の座体であって、
前記突出部は、前記嵌入部材が前記凹部に嵌入された状態において、前記基部における前記凹部の周囲の部分と前記カバーを介して当接するように構成されている、座体。
【請求項4】
椅子用の座体であって、
表面に凹部が形成された基部と、
前記基部の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記凹部に嵌入可能に構成された嵌入部材であって、前記カバーの一部が前記凹部に挿入された状態で前記凹部に嵌入されることにより、前記凹部を構成する壁面との間に前記カバーの一部を挟み込んで固定する嵌入部材と、を備え、
前記嵌入部材は、前記凹部に嵌入された状態において、前記凹部よりも外に突出している突出部を備え、
前記凹部を構成する前記壁面は、外部壁、及び、前記外部壁よりも前記座体の内側に位置する内側壁により形成され、
前記内側壁は、前記壁面と、当該壁面の反対側に位置する内壁面と、を有し、
前記突出部は、前記嵌入部材が前記凹部に嵌入された状態において、前記内壁面と前記カバーを介して当接するように構成されている、座体。
【請求項5】
請求項4に記載の座体であって、
前記凹部は、該凹部を構成する壁面として、第1壁面と、前記第1壁面と対向する第2壁面と、を有しており、
前記嵌入部材は、該嵌入部材が前記凹部に嵌入されているときに、前記第1壁面の側に位置する第1当接部と、前記第2壁面の側に位置する第2当接部と、を備え、
前記嵌入部材が前記凹部に嵌入されているときには、前記第1壁面及び前記第2壁面により、前記第1当接部及び前記第2当接部は互いに接近するように加圧されており、かつ、前記第1当接部と前記第1壁面の間、及び、前記第2当接部と前記第2壁面の間、のうちの少なくともいずれか一方に、前記カバーが挟み込まれている、座体。
【請求項6】
請求項5に記載の座体であって、
前記嵌入部材は、前記第1当接部と前記第2当接部との間に空間を形成しつつ前記第1当接部と前記第2当接部とを連接する連接部を備える、座体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の座体であって、
前記凹部は、所定の長さの幅を有し、該幅の方向と交差する方向に沿って長さを有する溝である、座体。
【請求項8】
請求項7に記載の座体であって、
前記溝の長さは、少なくとも2つの前記嵌入部材を嵌入可能な長さである、座体。
【請求項9】
請求項7に記載の座体であって、
前記溝は、前記基部における当該座体の着座面とは反対側に位置する面の外縁に沿って長さを有している、座体。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の座体と、
該座体を支持する支持体と、を備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバーを取り付けられる椅子用の座体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子用の座の表面部分に布などのカバーを貼り付けることが行われている。例えば下記特許文献1に示される椅子の座は、枠板と、枠板に設けられたバネやクッションと、それらを覆うカバーと、を備える。カバーの端部は、クリップやステープルを用いて枠板に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、カバーの取り付けられた新規な座体及び椅子を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、椅子用の座体であって、基部と、カバーと、嵌入部材と、を備える。基部は、表面に凹部が形成される。カバーは、基部の少なくとも一部を覆う。嵌入部材は、凹部に嵌入可能に構成されており、カバーの一部が凹部に挿入された状態で凹部に嵌入されることにより、凹部を構成する壁面との間にカバーの一部を挟み込んで固定する。
このような構成であれば、嵌入部材を凹部に嵌入させることにより、カバーを基部に取り付けることができる。
【0006】
上述した座体において、凹部は、該凹部を構成する壁面として、第1壁面と、第1壁面と対向する第2壁面と、を有していてもよい。嵌入部材は、第1当接部と、第2当接部と、連接部と、を備えてもよい。第1当接部は、嵌入部材が凹部に嵌入されているときに、第1壁面の側に位置する。第2当接部は、嵌入部材が凹部に嵌入されているときに、第2壁面の側に位置する。嵌入部材が凹部に嵌入されているときには、第1壁面及び第2壁面により、第1当接部及び第2当接部は互いに接近するように加圧されており、また、第1当接部と第1壁面の間、及び、第2当接部と第2壁面の間、のうちの少なくともいずれか一方に、カバーが挟み込まれている。
【0007】
このような構成であれば、嵌入部材の第1当接部と第2当接部とによって、カバーの一部を凹部の第1壁面と第2壁面とに固定することができる。なお連接部は、第1当接部と第2当接部との間に空間を形成しつつ第1当接部と第2当接部とを連接するように構成されていてもよい。このように構成することで、第1当接部及び第2当接部の接近を実現できる。
【0008】
また上述した座体において、凹部は、所定の長さの幅を有し、該幅の方向と交差する方向に沿って長さを有する溝であってもよい。
このような構成であれば、カバーの一部が溝に挿入されるときに、溝が存在する範囲では、嵌入部材により固定される部分以外の部分であっても、カバーの一部が溝に入り込むことができる。その結果、凹部の幅方向と交差する長さが短い場合と比較して、嵌入部材を嵌入したときに、カバーの凹部周辺に配置される部分に皺が生じにくくなる。
【0009】
また上述した溝は、少なくとも2つの嵌入部材を嵌入可能な長さであってもよい。また、上述した溝は、上記基部における当該座体の着座面とは反対側に位置する面の外縁に沿って長さを有していてもよい。溝がこのような長さを有していることによって、カバーの凹部周辺に配置される部分における皺の発生を高度に抑制することができる。
【0010】
また上述した座体において、嵌入部材は、凹部に嵌入された状態において、凹部よりも外に突出している突出部を備えてもよい。
このような構成であれば、突出部を操作して嵌入部材を凹部から取り外すことができる。
【0011】
また上述したように嵌入部材が突出部を備える構成のとき、突出部は、嵌入部材が凹部に嵌入された状態において、基部における凹部の周囲の部分と当接するように構成されていてもよい。
【0012】
このような構成であれば、突出部が基部における凹部の周囲の部分と当接することで、嵌入部材が凹部の中で変位することが抑制され、その結果、嵌入部材が凹部から脱落してしまうことを抑制できる。
【0013】
本開示の別の一態様は、上述した本会時の一態様の座体と、該座体を支持する支持体と、を備える椅子である。このような椅子では、上述した本開示の一態様の座体と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aが、座体が収納位置である椅子の斜視図であり、
図1Bが、座体が使用位置である椅子の斜視図である。
【
図5】
図5Aが嵌入部材の正面図であり、
図5Bが嵌入部材の平面図であり、
図5Cが嵌入部材の底面図であり、
図5Dが嵌入部材の左側面図であり、
図5Eが嵌入部材の右側面図である。
【
図6】
図6Aが嵌入部材を溝に挿入する途中の状態を示す図であり、
図6Bが溝に嵌入部材が挿入された状態を示す図である。
【
図7】嵌入部材の変形例を示す図であり、
図7Aが嵌入部材を溝に挿入する途中の状態を示す図であり、
図7Bが溝に嵌入部材が挿入された状態を示す図である。
【
図8】嵌入部材の変形例を示す図であり、
図8Aが嵌入部材を溝に挿入する途中の状態を示す図であり、
図8Bが溝に嵌入部材が挿入された状態を示す図である。
【
図9】嵌入部材の変形例を示す図であり、
図9Aが嵌入部材を溝に挿入する途中の状態を示す図であり、
図9Bが溝に嵌入部材が挿入された状態を示す図であり、
図9Cが嵌入部材を溝から取り外す途中の状態を示す図である。
【
図10】嵌入部材の変形例を示す図であり、
図10Aが嵌入部材を溝に挿入する途中の状態を示す図であり、
図10Bが溝に嵌入部材が挿入された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.全体構成]
図1A-1Bに示されるように、椅子1は、座体11を備えている。また椅子1は、座体11を支持する一対の支持体12と、背もたれ13と、裏板14と、を備えていてもよい。支持体12は座体11の左右に配置される。背もたれ13は座体11の後方に配置される。
図1A-1Bの椅子1は、複数の椅子1が隣接して配置されている。複数の座体11の間に配置される支持体12は、それら座体11の両方を支持する。言い換えると、2つの椅子1の間に位置する支持体12は、その2つの椅子1で兼用される。
【0016】
座体11は、
図1Aに示されるように、使用者が着席する面である着座面が略鉛直である収納位置と、
図1Bに示されるように着座面が比較的水平に近くなった使用位置と、の間で回動可能である。裏板14は、座体11の着座面とは反対の底面を覆うように配置される板状の部材である。
【0017】
[2.座体]
<座体の全体構成>
図2A-2Cに示されるように、座体11は、使用者が着席することができるように構成された椅子用の座体である。座体11は、基部21と、カバー22と、嵌入部材23と、を備える。また、クッション24を備えていてもよい。
【0018】
<基部>
本実施形態の基部21は、例えば合成樹脂により構成することができる。基部21の材質は合成樹脂に限られず、鋼板を折り曲げ加工したものや、金属のダイカスト成形品であってもよい。以下の説明において、上下、左右、前後等の方向は、座体11が使用位置のときの方向であって、かつ、
図5以降の説明で用いる方向とは一致しない場合がある方向である。
【0019】
図3A-3D及び
図4A-4Bに示されるように、基部21は、主板31、前板32、後板33、及び左右一対の側板34を有している。主板31は、略矩形の薄板状の部材である。前板32、後板33、及び一対の側板34は、それぞれ、主板31の前方、後方、左右側方の端部となる位置から、下方に向かって延び出す略板状の部材である。これら5つの板状の部材を備える基部21は、底面に開口を有する箱状の形状である。これら5つの板状の部材は一体に成形されていてもよい。前板32は平板状である。後板33は外側に向かって僅かに凸となるように曲がった板状である。主板31の上面には、主板31全体と、前板32の前方とを覆うようにクッション24が配置される。
【0020】
一対の側板34は、後方の約半分が左右方向に関して肉厚に形成されており、
図3D及び
図4Aに示されるように、この肉厚の部分に貫通孔35が形成されている。貫通孔35には、
図4Bに示されるように、支持軸41が回動ブッシュ42を介して挿入される。支持軸41は支持体12に取り付けられており、座体11はこの支持軸41を中心として回動する。
【0021】
前板32、後板33、及び一対の側板34の底面側の表面には、下向きに開口を有し、内側方向に窪んだ凹部である溝36が形成されている。ここでいう内側方向とは、座体11の中心側方向であり、上側方向である。溝36は、基部21の底面において、この底面の外縁、即ち外側の縁に沿うように長さを有する。また溝36は、基部21の底面において、底面に形成される開口の外縁に沿うように長さを有する。溝36は、上記底面において環状に形成される。溝36は、その大部分において、所定の長さの幅を有するように構成されている。この所定の長さの幅を有する部分が、嵌入部材23を嵌入可能な嵌入領域となる。溝36が凹部に相当する。
【0022】
溝36は、少なくとも嵌入領域においては、第1壁面36aと、第1壁面36aと対向する壁面である第2壁面36bと、を含む壁面により構成されている。第1壁面36aは、座体11の外部側に位置する外部壁37aに形成される壁面である。第2壁面36bは、座体11の中央側に位置する内側壁37bに形成される壁面である。第1壁面36aと第2壁面36bとの間隔は、嵌入部材23の幅よりも大きい。外部壁37aの下端は内側壁37bの下端よりも下方に突出する。
【0023】
<カバー>
本実施形態のカバー22は、例えば布、合成樹脂、皮、合皮などにより構成することができる。
図2A-2Cに示されるように、カバー22は、基部21の上面、前面、背面、及び左右側面を、クッション24ごと覆う。カバー22の端部は基部21の溝36に固定される。固定には嵌入部材23が用いられる。このカバー22によって、座体11の美観が向上し、さらにクッション24の破損が抑制される。
【0024】
<嵌入部材>
本実施形態の23は、例えば合成樹脂により構成することができる。以下の説明において、嵌入部材23の形状を説明するために前後左右の方向を用いるが、これらの方向は嵌入部材23の使用態様などを限定するものではない。
【0025】
嵌入部材23は、溝36に嵌入可能に構成されている。
図5A-5Eに示されるように、嵌入部材23は、第1当接部51と、第2当接部52と、連接部53と、突出部54と、を備えていてもよい。
【0026】
嵌入部材23は、断面形状が一定である形状、つまり、いわゆる押出し形状である。第1当接部51、第2当接部52、及び連接部53は、
図5Aに示されるように正面視で円弧状に繋がった形状である。別の言い方をすると、第1当接部51、第2当接部52、及び連接部53は、一部が開放された円筒状である。
【0027】
第1当接部51は、嵌入部材23が溝36に嵌入されているときに、第1壁面36aの側に位置する。第1当接部51は、カバー22を介して第1壁面36aと当接する部分であり、右端の一部が突出した形状となっている。また、第2当接部52は、嵌入部材23が溝36に嵌入されているときに、第2壁面36bの側に位置する。第2当接部52は、カバー22を介して第2壁面36bと当接する部分であり、左側に凸となる曲面形状である。連接部53は嵌入部材23の下端に位置しており、第1当接部51と前記第2当接部52との間に空間を形成しつつ第1当接部51と第2当接部52とを連接する。
嵌入部材23が溝36に嵌入されているときに、第1壁面36a及び第2壁面36bにより、第1当接部51及び第2当接部52は互いに接近するように加圧される。
【0028】
第2当接部52における連接部53と反対の上側には、突出部54が設けられている。突出部54は第2当接部52の上端から左方向に延び出しており、左端部には、左側に突出する左突出片54aと、下側に突出する下突出片54bと、を備える。
【0029】
このような嵌入部材23において、第1当接部51及び第2当接部52は、嵌入部材23が溝36に嵌入されているときに、第1壁面36a及び第2壁面36bに挟まれることによって互いに近づくように弾性変形する。そして嵌入部材23は、
図6A-6Bに示されるように、カバー22の一部が溝36に挿入された状態で溝36に嵌入されることにより、溝36を構成する壁面との間にカバー22の一部を挟み込んで固定する。より詳細には、第1壁面36aと第1当接部51がカバー22の一部を挟み込み、また、第2壁面36bと第2当接部52とがカバー22の別の一部を挟み込む。
【0030】
また
図6Bに示されるように、突出部54は、嵌入部材23が溝36に嵌入された状態において、溝36よりも外に突出している。下突出片54bは、嵌入部材23が溝36に嵌入された状態において、基部21における溝36の周囲の部分、本実施形態では内側壁37bにおける第2壁面36bとは逆の壁面と当接する。
【0031】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)上述した椅子用の座体11は、嵌入部材23を溝36に嵌入させることにより、クリップやステープラを用いた従来の固定とは異なる新たな方法により、カバー22を基部21に取り付けることができる。
【0032】
(1b)嵌入部材23は、第1当接部51と第2当接部52との間に空間が形成されているため、第1当接部51と第2当接部52とが接近するように弾性変形させることができる。嵌入部材23が溝36に嵌入された状態では、第1壁面36a及び第2壁面36bにより第1当接部51と第2当接部52とが接近するように左右に圧縮された状態となっている。そのため、その第1当接部51と第2当接部52は互いに離れる方向に弾性力を生じる。その結果、カバー22の一部を挟み込む力を強くすることができ、カバー22が基部21から外れてしまう危険を低減できる。
【0033】
(1c)溝36は、幅方向と交差する方向に長さを有する形状である。もし溝36の長さが嵌入部材23と同程度であれば、嵌入部材23が溝36に挿入されるときに、カバー22はその一部分のみが溝36に押し込まれるので、カバー22に多くの皺が生じてしまう。しかしながら本実施形態では、嵌入部材23よりも溝36が充分に長いことから、カバー22は、嵌入部材23に押圧されない部分であっても、溝36に沿って溝36に入り込むことができる。したがって、嵌入部材23を挿入したときにカバー22の溝の周辺に配置される部分に皺が生じにくくなる。
【0034】
(1d)嵌入部材23は、溝36に嵌入された状態において溝36よりも外に突出している突出部54を備えている。この突出部54を操作して、嵌入部材23を溝36から容易に取り外すことができる。例えば、左突出片54aに指などを掛けて操作してもよいし、下突出片54bの下端に指などを掛けて操作してもよい。
【0035】
(1e)突出部54の下突出片54bは、嵌入部材23が溝36に嵌入された状態において、基部21における溝36の周囲の部分と当接する。それにより、嵌入部材23が溝36の中で回転変位することが抑制され、その結果、嵌入部材23が溝36から脱落してしまうことを抑制できる。
【0036】
(1f)裏板14によって座体11の裏側面が覆われているため、嵌入部材23が溝36から脱落してしまうことを高度に抑制できる。
[4.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0037】
(2a)嵌入部材の形状は、上述した形状に限定されない。
例えば、
図7A-7Bに示される嵌入部材101は、第1当接部102、第2当接部103、及び連接部104を備え、正面視でU字型の形状である。第1当接部102には右方向(即ち、第2当接部103とは逆の方向)に突出する突起102aが設けられている。第2当接部103の上端には突出部105が設けられている。突出部105は、第2当接部103に対して略平行となるように、第2当接部103の左側にて下方に向けて折り返されている。
【0038】
基部111には、溝112と並行する補助溝113が設けられている。第1当接部102、第2当接部103、及び連接部104は溝112に挿入されて嵌合する。第1当接部102は、突起102aを中心として、カバー22を第1壁面112aとの間で挟み込む。第2当接部103はカバー22を第2壁面112bとの間で挟み込む。突出部105は補助溝113に挿入され、補助溝113を構成する壁面114b、114cと、カバー22を介して又は介さずに当接する。
【0039】
この構成では、突出部105の先端が補助溝113の内部に収まるため、突出部105が嵌入部材101の回転を抑制しつつ、突出部105が指などに接触して想定外に嵌入部材101が外れてしまうことを抑制できる。
【0040】
また例えば、
図8A-8Bに示される嵌入部材201は、第1当接部202、第2当接部203、及び連接部204を備え、正面視で略V字型の形状である。第1当接部202の先端には、右方向(即ち、第2当接部203とは逆の方向)に突出し先端が細い先端部202aが設けられている。第2当接部203の上端には突出部205が設けられている。突出部205は、第2当接部203に対して略平行となるように、第2当接部203の左側にて下方に向けて折り返されている。また突出部205の折り返した部分は上部ほど厚くなっている。
【0041】
嵌入部材201は、第1当接部202、第2当接部203、及び連接部204が、基部211に設けられた溝212に挿入されて嵌合する。第1当接部202は、先端部202aを中心として、カバー22を第1壁面212aとの間で挟み込む。第2当接部203はカバー22を第2壁面212bとの間で挟み込む。突出部205は基部211の内側面に当接する。
【0042】
この構成では、
図8Aに示されるように先端部202aを第1壁面212aに掛けて嵌入部材201を回転させることで、
図8Bに示されるように、容易に嵌入部材201を溝212に嵌合させることができる。
【0043】
また例えば、
図9A-9Cに示される嵌入部材301は、第1当接部302、第2当接部303、及び連接部304を備え、正面視でU字型の形状である。第2当接部303の上端には、右方向(即ち、第1当接部302の方向)に延び出す係止片305が設けられている。連接部304の下端には、切欠き306が形成されている。
【0044】
基部311には、溝312が設けられている。溝312には第1壁面312aと第2壁面312bが設けられている。溝312の底面には、溝312の内部に向かって突出する突条313が形成されている。312aの上端には、左方向(即ち、第2壁面312bの方向)に延び出すツメ314が形成されている。
【0045】
嵌入部材301は、第1当接部302、第2当接部303、及び連接部304が溝312に挿入されて嵌合する。嵌入部材301を挿入する際は、
図9Aに示されるように垂直に差し込むことができる。嵌合している状態では、
図9Bに示されるように、突条313が切欠き306と小さい間隔を空けた状態となること又は当接することで嵌入部材301の位置が規定される。また、第1当接部302がツメ314に当接することで、嵌入部材301の基部311からの抜け止めが実現される。嵌入部材301を取り外すときは、
図9Cに示されるように、係止片305に指などを引掛けて、ツメ314を中心に捻るように回転させることで取り外しが実現される。
【0046】
また例えば、
図10A-10Bに示される嵌入部材401は、第1当接部402、第2当接部403、及び連接部404を備える。連接部404は、左右に並んで上下方向に延びる2つの柱を有している。第1当接部402は一方の柱の下端に連接され、第2当接部403は他方の柱の下端に連接される。第1当接部402及び第2当接部403は、連接部404の2つの柱それぞれの下端から、スナップフィットのツメのように上方向に折り返して互いに逆方向に張り出している。連接部404の上端は、左右に広がるフランジ状の突出部405が形成されている。
【0047】
基部411には、溝412が設けられている。溝412には第1壁面412aと第2壁面412bが設けられている。第1壁面412a及び第2壁面412bの上端には、互いに向かい合うように延び出すツメ413が形成されている。
【0048】
嵌入部材401は、第1当接部402、第2当接部403、及び連接部404が溝412に挿入されて嵌合する。嵌入部材401が嵌合した状態では、第1当接部402及び第2当接部403がカバー22を介して第1壁面412a及び第2壁面412bに当接する。また、
図10Bに示されるように、第1当接部402及び第2当接部403がツメ413に係合することで、嵌入部材401の溝412からの抜け止めが実現される。突出部405は、溝412を覆うように溝412の幅よりも広く構成されているため、突出部405と第1当接部402及び第2当接部403との間にツメ413が挟み込まれる。その結果、嵌入部材401の溝412からの抜け止めが高度に実現される。
【0049】
また上記実施形態では、長さ方向に断面形状が一定である形状の嵌入部材を例示したが、嵌入部材は長さ方向に沿って断面形状が変化してもよい。例えば
図11A-11Bに示す嵌入部材321は、側面視で上述した嵌入部材301と同様の形状であるが、嵌入部材301と同一の断面形状となる部分を有していない。第1当接部322及び第2当接部323は長さ方向の全域に亘って設けられている。連接部324及び切欠き326は、嵌入部材321の長さ方向の両端部にのみ設けられている。また係止片325は、嵌入部材321の長さ方向の中央部分にのみ設けられている。このような嵌入部材であっても、嵌入部材301と同様の機能を発揮できる。
【0050】
また嵌入部材は、第1当接部と第2当接部との間に空間が形成される構成でなくてもよい。例えば、合成樹脂製のブロックやスポンジ、金属製のワイヤーメッシュなど、加圧により圧縮する部材により構成されていてもよい。
【0051】
(2b)上記実施形態では、下方が開口された箱型の基部21を例示したが、基部の形状はこれに限定されない。例えば、基部は上下ともに開口された枠状であってもよいし、前板32、後板33、及び一対の側板34の一部又は全部が設けられていなかったり、主板31、前板32、後板33、側板34の形状が実施形態の基部21とは異なっていたりしてもよい。主板31には、スリットが形成されていてもよい。主板31にスリットを設けることで、使用者が座体に着席したときに使用者の荷重によって主板31が大きくたわみ、座り心地の向上を図ることができる。
【0052】
(2c)上記実施形態では、嵌入部材23が嵌入される凹部である溝36は、基部21の底面の外縁に沿うように環状に形成される構成を例示した。しかしながら、凹部は溝36とは異なる形態であってもよい。例えば、凹部は溝36のように基部21の底面の外周に沿った環状形状でなくてもよい。また例えば前板32、後板33、及び一対の側板34の一部分にのみ凹部が設けられていてもよいし、凹部が基部21の側面や上面に設けられていてもよい。つまり凹部は、基部の表面、言い換えるとカバーが当接可能な面であれば、基部の様々な位置に設けることができる。また凹部は貫通している穴であっても良い。また、基部が板状又は略板状の形状である場合、凹部は、基部における着座面とは反対側に位置する面の外縁に形成されていてもよい。その場合、凹部は外縁に沿って長さを有していてもよい。
【0053】
また凹部は、上述した溝36とは異なる長さであってもよい。例えば凹部は嵌入部材の長さと同程度の長さであってもよい。なお、凹部は、幅の方向と交差する方向に少なくとも2つの嵌入部材が嵌入可能な長さであれば、上述した(1c)にて説明したカバーの皺を低減するという効果を高度に奏することができる。
【0054】
(2d)上記実施系形態においては、カバー22は、基部21の底面を除く部分を覆うように構成されていたが、基部21の少なくとも一部を覆うように構成されていれば、その被覆範囲は特に限定されない。
【0055】
(2e)上記実施形態では、座体11を回転可能に支持する支持体12として、設置面から上方向に延び出す部材を例示したが、支持体は上述した以外の構成であってもよい。例えば、座体11を後方から支持する構成であってもよいし、座体11を回動しないように支持する構成や、座体11をスライド可能に支持する構成であってもよい。
【0056】
(2f)上記実施形態では、嵌入部材23が溝36に嵌入されているときに、(i)第1当接部51と第1壁面36aの間、及び、(ii)第2当接部52と第2壁面36bの間、の両方においてカバー22が挟み込まれる構成を例示した。しかしながら、カバー22は、少なくとも上記(i),(ii)のいずれか一方に挟み込まれていれば、基部21に対して固定されることができる。
【0057】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…椅子、11…座体、12…支持体、13…背もたれ、14…裏板、21,111,211,311,411…基部、22…カバー、23,101,201,301,321,401…嵌入部材、24…クッション、31…主板、32…前板、33…後板、34…側板、35…貫通孔、36,112,212,312,412…溝、36a,112a,212a,312a,412a…第1壁面、36b,112b,212b,312b,412b…第2壁面、37a…外部壁、37b…内側壁、41…支持軸、42…回動ブッシュ、51,102,202,302,322,402…第1当接部、52,103,203,303,323,403…第2当接部、53,104,204,304,324,404…連接部、54,105,205,405…突出部、54a…左突出片、54b…下突出片、102a…突起、113…補助溝、202a…先端部、305,325…係止片、306,326…切欠き、313…突条、314,413…ツメ。