(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】食品用品質改良剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20240531BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240531BHJP
A23L 5/30 20160101ALI20240531BHJP
A23G 9/38 20060101ALI20240531BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20240531BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240531BHJP
A23G 3/44 20060101ALN20240531BHJP
A21D 2/26 20060101ALN20240531BHJP
A21D 2/36 20060101ALN20240531BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20240531BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L5/00 M
A23L5/30
A23G9/38
A23J3/18
A23L7/109 C
A23L7/109 A
A23L7/109 D
A23G3/44
A21D2/26
A21D2/36
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2020004754
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019011492
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 亮人
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-101835(JP,A)
【文献】特開2002-171897(JP,A)
【文献】特開2002-125635(JP,A)
【文献】特開昭62-032846(JP,A)
【文献】特公昭36-002871(JP,B1)
【文献】特開平09-220049(JP,A)
【文献】特開2008-173057(JP,A)
【文献】特開平07-265000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
A23G 1/00 - 9/52
A23J 1/00 - 7/00
A21D 2/00 - 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用品質改良剤を製造する方法であって、
原食品素材に機械的処理を施し、疎水度が上昇した改質食品素材を得る工程を含み、
該改質食品素材が、該原食品素材と比べて10%以上上昇した疎水度を有し、
該原食品素材が
小麦たん白加水分解物である、
方法。
【請求項2】
食品用品質改良剤であって、
該食品用品質改良剤が、原食品素材よりも高い疎水度を有する改質食品素材を含み、
該改質食品素材が、該原食品素材の機械的処理物であり、
該改質食品素材が、該原食品素材と比べて10%以上上昇した疎水度を有し、
該原食品素材が
小麦たん白加水分解物である、
食品用品質改良剤。
【請求項3】
請求項2に記載の食品用品質改良剤を含む食品。
【請求項4】
食品の製造方法であって、
請求項2に記載の食品用品質改良剤と該食品の原料とを合わせる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用品質改良剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に関して、製造時の作業性、食感・風味、保存性などの品質の改良のために、種々の食品添加剤が開発されている。食品の品質改良のために、植物性または動物性のたん白およびその分解物、澱粉などの食品素材が食品添加剤として用いられる。上記食品素材は、例えば、粉末形態で食品に添加され得る。粉末形態の食品素材は、例えば、ミル等を用いた粉砕によって調製され得る。このような粉砕においては、得られる粉末の粒径の調節のため、例えば、粉砕条件が設定され得る。
【0003】
他方で、上記食品素材は、食品の品質改良の向上のために、化学品、酵素などの化学物質を用いた種々の化学的な処理がなされている。
【0004】
食品の品質改良のために、その食品に望まれる品質について向上した改良効果を奏し、かつ安全性がある食品素材の提供がなお求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、化学品、酵素などの化学物質を用いた化学的な処理に頼ることなく改質した素材から製造することができ、食品の品質を改良することができる食品用品質改良剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、食品用品質改良剤を製造する方法を提供し、この方法は、原食品素材に機械的処理を施し、疎水度が上昇した改質食品素材を得る工程を含む。
【0007】
1つの実施形態では、上記改質食品素材は、上記原食品素材と比べて10%以上上昇した疎水度を有する。
【0008】
1つの実施形態では、上記原食品素材は、たん白およびたん白分解物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0009】
本発明は、食品用品質改良剤を提供し、該食品用品質改良剤が、原食品素材よりも高い疎水度を有する改質食品素材を含み、該改質食品素材は、該原食品素材の機械的処理物である。
【0010】
1つの実施形態では、上記改質食品素材は、上記原食品素材と比べて10%以上高い疎水度を有する。
【0011】
1つの実施形態では、上記原食品素材が、たん白およびたん白分解物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0012】
本発明はさらに、上記食品用品質改良剤を含む食品を提供する。
【0013】
本発明はまた、食品の製造方法を提供し、この方法は、上記食品用品質改良剤と該食品の原料とを合わせる工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食品用品質改良剤を、機械的処理によって簡便に製造することができる。また、本発明によれば、種々の食品に対して食感その他の品質を変化させ得る食品用品質改良剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、食品用品質改良剤を製造する方法を提供する。この方法は、原食品素材に機械的処理を施し、疎水度が上昇した改質食品素材を得る工程を含む。
【0016】
本明細書において用語「原食品素材」は、それ自体が食品の原料または食品添加剤として用いることができる食品素材であって、以下に説明する機械的処理を施す前の食品素材をいう。用語「改質食品素材」は、機械的処理により、原食品素材と比べて物理的性質および/または化学的性質が改変した食品素材をいう。「改質食品素材」は、例えば、原食品素材に機械的処理を施すことにより得られた物(これを「原食品素材の機械的処理物」ともいう)である。
【0017】
本明細書において用語「機械的処理」は、食品素材(原食品素材)に対して、化学品、酵素などの化学物質を用いた化学反応を経由することなく、装置、デバイス、器具などの機械的手段を用いた粉砕、破砕、摩砕、衝撃、圧縮、剪断などの操作により物理的エネルギー(例えば、力学的エネルギー、熱エネルギー、および電気エネルギー、ならびにそれらの任意の組合せ)を付与する処理をいう。機械的処理は、例えば、当該物理的エネルギーの付与による食品素材の内外での物理的性質および/または化学的性質の改変を包含する。
【0018】
「機械的処理」は、例えば、「粉砕処理」を含む。本明細書においては、ある大きさの固体物質を砕いて、元の大きさよりも小さくする操作をまとめて「粉砕処理」ともいう。粉砕処理は、当該処理方法に応じて付加される衝撃力、圧縮力、摩擦力、せん断力などによって、処理対象の食品素材(原食品素材)に対し、上記物理エネルギーを付与し得る。粉砕処理に用いられる装置としては、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ビーズミル、ポットミル、ピンミル、ローラーミル、ハンマーミル、回転ミル、遊星ミル、石臼式粉砕機などが挙げられるが、これらに限定されない。粉砕処理で生じる食品素材の粒子の大きさは、特に限定されない。また、粉砕処理は、乾式または湿式のいずれであってもよいが、好ましくは乾式である。
【0019】
1つの実施形態では、機械的処理として、ジェットミル処理が用いられる。ジェットミルは、気流粉砕とも呼ばれ、加圧された空気または窒素ガスなどの加圧気体を噴射ノズルより噴出させ、このジェット気流によって粉砕対象の素材を加速し、当該素材同士または素材を衝突板等と衝突させることによって素材を破砕し得る。ジェットミルでは、例えば、衝突により生じる衝撃力、または摩擦力によって素材が粉砕され得る。ジェットミルの粉砕処理条件としては、粉砕処理に通常用いられる条件を用いることができる。粉砕処理条件は、ジェットミル装置に依存するが、例えば、処理圧力は、例えば0.1MPa~0.7MPaであり、処理対象品(原食品素材当たり)の量は、例えば1kg/時間~20kg/時間である。処理温度は特に限定されない。別の実施形態では、機械的処理として、振動ミル処理が用いられる。振動ミルは、ボール等の粉砕媒体が充填されたミルに振動を与え、当該粉砕媒体に運動を与えてミル内の素材を粉砕し得る。振動ミルでは、例えば、振動により運動する粉砕媒体と素材の衝突により生じる衝撃力、または摩擦力によって素材が粉砕され得る。振動ミルの粉砕処理条件としては、粉砕処理に通常用いられる条件を用いることができる。粉砕処理条件は、振動ミル装置に依存するが、例えば、処理対象品(原食品素材当たり)の量は、例えば0.5kg/時間~2kg/時間であり、処理時間が例えば0.5時間~2時間である。処理温度は、特に制限されないが、振動ミル装置内は、粉砕処理の間、例えば内容物の摩擦熱により30℃~70℃の温度を有していることがある。
【0020】
「疎水度」は、当業者が通常用いる測定方法に基づいて決定され得る。当業者が通常用いる測定方法は、例えば、ANS蛍光法である。ANS(8-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸)は、電荷移動型蛍光色素の1つである。ANSは、純水中に比べて疎水環境下でその蛍光強度を増加するため、この性質を利用した疎水性プローブとして用いられている。本明細書において、「疎水度」は、以下のようにして決定され得る:
15ml遠沈管に試料と蒸留水を秤量し、調製した1%(w/w)水溶液を3時間転倒攪拌後に遠心分離(16000g[10000rpm]で4℃にて5分)し、上清を採取する。採取した上清に蒸留水を加えて10倍の容量に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、たん白質量を求める。たん白質量が一定(A280=0.35)となるように蒸留水で全量を4mlに調整し、次いで0.4mlの0.04%(w/w)ANSを添加し、励起波長365nmおよび蛍光波長470nmにて測定する。測定値を下記計算式にて処理し、疎水度を求める:
疎水度=試料ANS蛍光強度-ブランクANS蛍光強度
【0021】
疎水度の上昇は、機械的処理前の原食品素材の疎水度と、機械的処理後の改質食品素材の疎水度とを比較することにより決定され得る。本明細書において、疎水度の上昇は、ANS蛍光法で測定した疎水度に基づき、下式のように、(機械的処理後)改質食品素材疎水度が(機械的処理前)原食品素材疎水度から増加した分(疎水度上昇分)の当該原食品素材疎水度に対する割合(%)を算出して得られる疎水度上昇率(%)により決定される:
疎水度上昇率(%)={(改質食品素材疎水度-原食品素材疎水度)/原食品素材疎水度}×100
【0022】
以上のようにして、原食品素材と比べて疎水度が上昇した改質食品素材を得ることができる。本発明においては、疎水度が上昇した改質食品素材が、食品用品質改良剤の有効成分として用いられる。1つの実施形態では、改質食品素材は、原食品素材と比べて10%以上、好ましくは20%以上、上昇した疎水度を有する。上記のように上昇した疎水度を有する改質食品素材により、食品の品質改良をより効果的に行うことができる。
【0023】
1つの実施形態では、原食品素材は、たん白およびたん白分解物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。たん白およびたん白分解物は、食用のたん白およびたん白分解物が用いられ得る。たん白は、由来を問わず、植物性および動物性のいずれでもよく、植物性および動物性のたん白の組合せでもよい。植物性たん白としては、例えば、小麦たん白、大麦たん白、大豆たん白、エンドウたん白、米たん白、トウモロコシたん白類、グルテニン、グリアジン、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せが挙げられる。動物性たん白としては、例えば、乳たん白、卵白たん白、ホエーたん白、カゼイン、カゼインナトリウム、動物性血漿たん白、ならびにこれらの任意の2つ以上の組合せなどが挙げられる。たん白分解物としては、上記の植物性たん白および動物性たん白の分解物が挙げられ、例えば、加水分解により得られるペプチドである(「たん白加水分解物」ともいう)。たん白分解物の分子量は問わず、また種々の分子量を有するペプチドの混合物であってもよい。分子量は、例えば、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など分子量測定に通常用いる方法または装置により測定され得る。たん白分解物は、例えばHPLCによる分子量測定において、例えば約1000~70000(重量平均分子量(MW))の範囲内、好ましくは約1000~45000(MW)の範囲内にメインピークの頂点が位置するペプチド混合物である。たん白分解物における加水分解処理としては、例えば、酸処理、強アルカリ処理または酵素処理が挙げられるが、食品素材に対して通常用いる方法であればよく、好ましくは、酵素処理である。酵素としては、例えば、たん白分解酵素(プロテアーゼ)、ペプチド分解酵素(ペプチダーゼ)などが挙げられる。例えば、エンド型プロテアーゼが用いられる。たん白またはたん白分解物は、当業者が通常用いる方法によって調製されてもよく、あるいは、市販品であってもよい。原食品素材は、上述したたん白およびたん白分解物の1種または2種以上の混合物であってもよい。原食品素材に用いられるたん白およびたん白分解物は、好ましくは、水可溶性である。たん白またはたん白分解物は、食品素材として利用可能である限り、水可溶性を付与または増大するように処理されたもの(例えば、分子内に極性基を生じるように酸処理されたもの)であってもよく、このような処理がなされた市販品であってもよい。原食品素材は、例えば、たん白またはたん白分解物自体であってもよく、または機械的処理を行うために粉末形態にたん白またはたん白分解物を加工する際に添加され得る成分(例えば賦形剤)を含むものであってもよい。原食品素材は、乾燥体または湿潤体(例えば、固形状または半固形状)であり得るが、好ましくは、乾燥体であり、より好ましくは、10%(w/w)以下の含水率を有する乾燥体である。
【0024】
本発明によれば、上記のように改質食品素材を得ることにより、食品用品質改良剤を製造することができる。改質食品素材は、例えば粉砕処理後は粉末状で得られる場合もあるが、このまま粉末状で用いてもよく、あるいは食用媒体(例えば、水)と混合して溶液状または懸濁液状としてもよい。
【0025】
本発明は、原食品素材よりも高い疎水度を有する改質食品素材を含む食品用品質改良剤もまた提供する。疎水度については上述したとおりである。食品用品質改良剤は、食品に添加するための製剤または食品添加剤として調製され得る。本発明の食品用品質改良剤は、上昇した疎水度を有する改質食品素材を含む固形剤または液剤などの剤形で調製され得る。本発明の食品用品質改良剤は、必要に応じて、増粘多糖類、澱粉、加工デンプン、糖類、未改質のたん白、未改質のたん白分解物、油脂、乳化剤、ソルビトール、水、賦形剤などの食品添加剤の製造上許容され得る他の成分をさらに含有してもよい。本発明の食品用品質改良剤における他の成分の含有量は、上記改質食品素材による食品の品質改良効果を阻害しない範囲にて当業者によって適宜設定され得る。
【0026】
本発明の食品用品質改良剤は、例えば、食品の製造に際して、その食品の原料に添加して用いることができる。このような食品としては、特に限定されないが、例えば、麺類・餃子皮・パン等の穀粉(例えば小麦粉)加工品、穀粉、菓子・ケーキ類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子など)、飴類(例えばキャラメル)、冷菓(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、氷菓、ゼリーなど)、グミ、米飯、惣菜、汁物、スープ、めんつゆ(例えばうどんつゆ、そばつゆなど)、ソース、たれ、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ハム・ソーセージ類、畜産加工品、水産練り製品、水産加工品、農産・林産加工食品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、調味料、酒類、清涼飲料(例えば、ジュース、コーヒー、茶、麦芽飲料、発泡飲料)などが挙げられる。本発明の食品用品質改良剤は、食品添加剤として使用され得る。
【0027】
本発明の食品用品質改良剤の添加量は、改質食品素材および/または食品の原料の種類、所望される品質の種類とその改変または改良の程度などによって変動するため、必ずしも限定されないが、本発明の食品用品質改良剤は、食品の原料100重量部に対し、改質食品素材が例えば0.0001重量部~50重量部、好ましくは0.001重量部~10重量部であるように添加され得る。
【0028】
本発明は、本発明の食品用品質改良剤を含む食品もまた提供する。このような食品は、当該食品の原料と本発明の食品用品質改良剤とを合わせる工程を含む方法によって製造され得る。本発明の食品用品質改良剤と食品の原料とを合わせるタイミングについては、当業者によって、食品製造における任意の段階が選択され得る。本発明の食品用品質改良剤は、例えば、原食品素材について食品の製造の際に当該食品の原料と合わせるタイミングと同様のタイミングで、食品の原料と合わせることができる。合わせる方法については、改質食品素材、食品の原料の種類、食品の製造の手順などの要因に依存するが、例えば、混和させる、混捏する、練り込む、まぶす、溶解させる、予め調製した水溶液を加える等によって行われる。
【0029】
本発明によって、上昇した疎水度を有する改質食品素材を含む食品用品質改良剤を含ませることによって、製造された食品に対し、原食品素材が本来有する品質改良効果を増強し得、かつ/または、原食品素材で見られない品質改良効果を付与し得る。本発明の食品用品質改良剤を用いて製造された食品の品質改良効果としては、改質食品素材の種類および/または製造された食品の種類に依存するが、例えば、食感の改変(製造された食品の種類に依存するが、サクサク感、ふんわり感、もちもち感、口溶け、ソフト感、滑らかさなどの向上)、生地の伸展性向上、麺の茹で伸び抑制、麺のほぐれ性向上、澱粉の老化抑制などが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0031】
(実施例1:食品用品質改良剤の製造)
20kgの小麦たん白加水分解物(HPLC分析による分子量測定において、1300~45000(MW)の分子量範囲内にメインピークの頂点が位置した。これを「原小麦たん白加水分解物」ともいう)をジェットミル粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社:TYPE 200SP)を用いて圧力0.3Mpaにて1時間処理した。本処理により得られた物を「実施例1の改質小麦たん白加水分解物」と称した。
【0032】
(実施例2:食品用品質改良剤の製造)
原小麦たん白加水分解物2kgを振動ミル(中央化工機株式会社製:試験研究用振動ミルMB-3)を用いて2時間処理した。本処理により得られた物を「実施例2の改質小麦たん白加水分解物」と称した。
【0033】
(疎水度の測定方法:ANS蛍光法)
15ml遠沈管に試料と蒸留水を秤量して調製した1%(w/w)水溶液を3時間転倒攪拌後に遠心分離(16000g[10000rpm]で4℃にて5分)し、上清を採取した。採取した上清に蒸留水を加えて10倍の容量に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、たん白質量を求めた。たん白質量が一定(A280=0.35)となるように蒸留水で全量を4mlに調整し、次いで0.4mlの0.04%(w/w)ANSを添加し、励起波長365nmおよび蛍光波長470nmにて測定した(株式会社日立ハイテクノロジーズ:F-4500分光蛍光光度計)。測定値を下記計算式にて処理し、疎水度を求めた:
疎水度=試料ANS蛍光強度-ブランクANS蛍光強度
【0034】
実施例1の改質小麦たん白加水分解物、実施例2の改質小麦たん白加水分解物および原小麦たん白加水分解物について、疎水度測定結果を以下の表1に示す。疎水度上昇率(%)は、下式のように、改質小麦たん白加水分解物の疎水度の原小麦たん白加水分解物の疎水度からの増加分(疎水度上昇分)を、原小麦たん白加水分解物の疎水度に対する割合として求めた:
疎水度上昇率(%)={(改質小麦たん白加水分解物疎水度-原小麦たん白加水分解物疎水度)/原小麦たん白加水分解物疎水度}×100
【0035】
【0036】
実施例1の改質小麦たん白加水分解物および実施例2の改質小麦たん白加水分解物とも、原小麦たん白加水分解物と比べて、10%以上上昇した疎水度を有することを確認した。
【0037】
(実施例3:生中華麺の製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所:5DM 03r)に準強力粉300g、小麦たん白(奥野製薬工業株式会社:プロテインX)6g、実施例1の改質小麦たん白加水分解物0.3g、水93g、かん粉3g、食塩3g、アルコール(アルコール(エタノール)濃度75%)6g、クチナシ色素0.15gを配合し、8分間混捏後に複合し、熟成し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ1.5mm、20番角[幅1.5mm])を行い、得られた麺をポリエチレン袋に120gずつ入れて口封し、10℃にて24時間保存後に生中華麺を得た。
【0038】
(実施例4:生中華麺の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて実施例2の改質小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例3と同様にして生中華麺を得た。
【0039】
(比較例1:生中華麺の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例3と同様にして生中華麺を得た。
【0040】
以下の表2に、実施例3、実施例4および比較例1の生中華麺の製造のための配合を示す。
【0041】
【0042】
(製造した生中華麺の評価方法)
実施例3、実施例4および比較例1で得られた各生中華麺を沸騰水中で2分30秒間茹で、ラーメンスープの入ったどんぶりに移し、パネリスト10名にて、麺の食感、茹で伸びおよび食味について評価した。麺の食感については、茹で立ての麺を喫食した際の麺の硬さおよびコシ(弾力性)を評価した。茹で伸びについては、茹でてから5分後の麺を喫食し、麺の食感の劣化(やわらかくなり、コシがなくなる)の程度に基づき、劣化の程度が低いほど良好と評価した。食味については、茹で立ての麺を喫食したときの味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。各試験区(実施例3、実施例4および比較例1)の評価した結果を以下の表3に示す。
【0043】
【0044】
評価結果から、実施例3(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を配合)および実施例4(実施例2の改質小麦たん白加水分解物を配合)の生中華麺は、比較例1(原小麦たん白加水分解物を配合)の生中華麺に比べ、麺の食感に優れており、茹で伸びがより抑制でき、そして食味を維持していた。
【0045】
(実施例5:餃子皮の製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所:5DM 03r)に準強力粉300g、実施例1の改質小麦たん白加水分解物3g、水108g、食塩3g、アルコール(アルコール(エタノール)濃度75%)6gを配合し、8分間混捏後に複合し、熟成し、餃子生地を得た。この餃子生地を0.8mmに圧延し、型抜き後、ポリエチレン袋に入れ口封した。10℃にて24時間保存後に餃子皮を得た。
【0046】
(実施例6:餃子皮の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて実施例2の改質小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例5と同様にして餃子皮を得た。
【0047】
(比較例2:餃子皮の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例5と同様にして餃子皮を得た。
【0048】
以下の表4に、実施例5、実施例6および比較例2の餃子皮の製造のための配合を示す。
【0049】
【0050】
(製造した餃子皮の評価方法)
実施例5、実施例6および比較例2で得られた各餃子皮をレオメーター(株式会社島津製作所:Ez Test)にて貫入試験を行い、皮が破断した距離を測定し、この破断距離を皮の伸展距離として比較した(試験治具:φ10mm球状型押し棒、試験速度:10mm/分)。各試験区(実施例5、実施例6および比較例2)における評価結果を以下の表5に示す。
【0051】
【0052】
評価結果から、実施例5(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を配合)および実施例6(実施例2の改質小麦たん白加水分解物を配合)の餃子皮は、比較例2(原小麦たん白加水分解物を配合)の餃子皮に比べ、皮の伸展性が向上した。
【0053】
(実施例7:キャラメルの製造)
鍋に水飴70gおよび水30.5gを計量し、加熱しながら溶解した。これにグラニュー糖60g、実施例1の改質小麦たん白加水分解物0.9g、ショ糖脂肪酸エステル0.6gを篩過しながら加え、溶解した。これに、加糖練乳34g、パーム油15g、生クリーム12g、無塩バター4g、バニラエッセンス0.6gを加え、溶解し、最終水分量が7%になるまで煮詰めた後、型枠に生地を流し込み、冷却、切断しキャラメルを得た。
【0054】
(比較例3:キャラメルの製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例7と同様にしてキャラメルを得た。
【0055】
以下の表6に、実施例7および比較例3のキャラメルの製造のための配合を示す。
【0056】
【0057】
(製造したキャラメルの評価方法)
実施例7および比較例3で得られた各キャラメルをパネリスト10名にて風味、ソフト感、滑らかさについて評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。各試験区(実施例7および比較例3)における評価結果を以下の表7に示す。
【0058】
【0059】
評価結果から、実施例7(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を配合)のキャラメルは、比較例3(原小麦たん白加水分解物を配合)のキャラメルに比べ、風味は維持しつつ、ソフト感があり、滑らかであった。
【0060】
(実施例8:スポンジケーキの製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所:5DM 03r)に上白糖100g、全卵液140g、乳化剤(奥野製薬工業株式会社:トップユニックDSO)4gおよび液体油脂(カネカ食品株式会社:NSM)40gを計量し、攪拌した。さらに、薄力粉100g、膨張剤(奥野製薬工業株式会社:トップふくらし粉750)1gおよび、実施例1の改質小麦たん白加水分解物5gを計量し、篩過しながら加えて3分間攪拌した(生地比重:0.50mg/ml)。型枠に生地120gを流し込み、170℃にて28分間焼成した。冷却後にポリエチレン袋に入れて口封し、24時間保存後にスポンジケーキを得た。
【0061】
(比較例4:スポンジケーキの製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてスポンジケーキを得た。
【0062】
以下の表8に、実施例8および比較例4のスポンジケーキの製造のための配合を示す。
【0063】
【0064】
(製造したスポンジケーキの評価方法)
実施例8および比較例4で得られた各スポンジケーキをパネリスト10名にて食感、口どけ、風味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。評価した結果を以下の表9に示す。
【0065】
【0066】
評価結果から、実施例8(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を配合)のスポンジケーキは、比較例4(原小麦たん白加水分解物を配合)のスポンジケーキに比べ、風味を維持しつつ、食感および口どけが良好であった。
【0067】
(実施例9:茹でそばの製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所:5DM 03r)にそば粉150g、小麦粉(強力粉)150g、実施例1の改質小麦たん白加水分解物1gおよび水99gを配合し、8分間混捏後に複合し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ1.5mm、18番角[幅1.7mm])、麺を得た。得られた麺を沸騰水中で2分間茹でた後、1分間水で冷却し、茹でそばを得た。
【0068】
(比較例5:茹でそばの製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例9と同様にして茹でそばを得た。
【0069】
以下の表10に、実施例9および比較例5の茹でそばの製造のための配合を示す。
【0070】
【0071】
(製造した茹でそばの評価方法)
実施例9および比較例5で得られた各茹でそばを10℃で48時間保存後、官能評価、麺ほぐれ性評価および澱粉老化度測定を行った。
【0072】
(官能評価および麺ほぐれ性評価)
官能評価では、茹でそばをパネリスト10名にて麺の食感、滑らかさ、および食味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。評価した結果を以下の表11に示す。
【0073】
麺ほぐれ性評価は、100gの茹でそばの塊状の麺に水40mlをかけた後、箸で麺をほぐし、そのほぐれ易さの程度をパネリスト10名による採点にて評価した。この評価は、ほぐれ易いほど良好であり、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。評価した結果を以下の表11に示す。
【0074】
【0075】
(澱粉老化度測定)
貝沼圭二(1981)『β-アミラーゼ-プルラナーゼ(BAP)法系を用いた澱粉の糊化度,老化度の新測定法』、澱粉化学(J. Jap. Soc. Starch Sci.)第28巻第4号、p235-240に記載の澱粉老化度測定方法に準じて、澱粉老化度を測定した。測定した結果を以下の表12に示す。
【0076】
【0077】
評価結果から、実施例9(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を配合)の茹でそばは、比較例5(原小麦たん白加水分解物を配合)の茹でそばに比べ、食感、滑らかさおよび食味が良好であった。麺ほぐれ性についても、実施例9の茹でそばは、比較例5の茹でそばに比べて良好であり、ほぐれ易かった。実施例9の茹でそばにおいて、比較例5の茹でそばに対し、澱粉の老化抑制効果が観察された。
【0078】
(実施例10:食品用品質改良剤の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物50重量部と小麦たん白(グリコ栄養食品株式会社製:A-グルG)50重量部とをポリエチレンの袋に充填して混合し、粉末混合物を得た。得られた粉末混合物を製剤1と称した。
【0079】
(比較例6:食品用品質改良剤の製造)
実施例1の改質小麦たん白加水分解物に代えて原小麦たん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例10と同様に粉末混合物を調製した。得られた粉末混合物を製剤2と称した。
【0080】
(実施例11:即席麺の製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所製:5DM 03r)に小麦粉240g、加工デンプン60g、小麦たん白(奥野製薬工業株式会社製:プロテインX)2.4g、製剤1(実施例10にて調製した、実施例1の改質小麦たん白加水分解物を含有する製剤)0.6g、水120g、かん粉1.5gおよび食塩6gを配合し、8分間混捏後に複合し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ2.0mm、12番角[幅2.5mm])を行い、麺を得た。得られた麺を蒸し機でα化した後、金属枠に入れて140~160℃の揚げ油で揚げることで即席麺を得た。
【0081】
(比較例7:即席麺の製造)
製剤1に代えて製剤2(比較例6にて調製した、原小麦たん白加水分解物を含有する製剤)を用いたこと以外は、実施例11と同様にして即席麺を得た。
【0082】
以下の表13に、実施例11および比較例7の即席麺の製造のための配合を示す。
【0083】
【0084】
(製造した即席麺の評価方法)
実施例11および比較例7で得られた各即席麺と粉末スープとをどんぶり容器に入れ、95℃の湯を注ぎ、蓋をして5分間湯戻しした。パネリスト10名にて、麺のほぐれ性、麺の食感、茹で伸びおよび食味について評価した。麺のほぐれ性については、湯戻し直後の麺を箸でつかんで持ち上げることを3回行い、その際の麺のほぐれやすさの程度で評価した。麺の食感については、湯戻し直後の麺を喫食した際の麺の硬さ(湯戻り性)およびコシ(弾力性)を評価した。茹で伸びについては、湯戻ししてから5分後の麺を喫食し、麺の食感の劣化(やわらかくなり、コシがなくなる)の程度に基づき、劣化の程度が低いほど良好と評価した。食味については、湯戻し直後の麺を喫食したときの味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。各試験区(実施例11および比較例7)の評価した結果を以下の表14に示す。
【0085】
【0086】
評価結果から、実施例11(実施例1の改質小麦たん白加水分解物を含有する製剤1)は、比較例7(原小麦たん白加水分解物を含有する製剤2)の即席麺に比べ、麺の食味はほぼ同程度でありながら、麺のほぐれ性が良く、麺の食感に優れており、茹で伸びがより抑制できた。
【0087】
(実施例12:食品用品質改良剤の製造)
50gのエンドウたん白(たん白含量:85%。これを「原エンドウたん白」と称した)をジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製:スパイラルジェットミル TYPE 50AS)を用いて圧力0.6Mpaにて1時間処理した。本処理により得られた物を「実施例12の改質エンドウたん白」と称した。
【0088】
(実施例13:食品用品質改良剤の製造)
原エンドウたん白:水=1:10の割合で懸濁液を調製した。懸濁液を45℃に昇温後、たん白に対して0.5%となるようにエンド型プロテアーゼを添加し3時間酵素分解を行った。90℃にて30分間加熱処理を行った後、冷却した液を凍結乾燥した。乾燥物を乳鉢ですり潰した後、篩過し、エンドウたん白加水分解物を得た(これを「原エンドウたん白加水分解物」と称した)。
【0089】
50gの原エンドウたん白加水分解物をジェットミル粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製:スパイラルジェットミル TYPE 50AS)を用いて圧力0.6Mpaにて1時間処理した。本処理により得られた物を「実施例13の改質エンドウたん白加水分解物」と称した。
【0090】
実施例12の改質エンドウたん白および原エンドウたん白、ならびに実施例13の改質エンドウたん白加水分解物および原エンドウたん白加水分解物の疎水度を測定した。測定結果を以下の表15に示す。疎水度上昇率(%)は、実施例12の改質エンドウたん白については、原エンドウたん白の疎水度からの増加分(疎水度上昇分:改質エンドウたん白の疎水度から原エンドウたん白の疎水度を差し引いたもの)を原エンドウたん白の疎水度に対する百分率であり、そして実施例13の改質エンドウたん白加水分解物については、原エンドウたん白加水分解物の疎水度からの増加分(疎水度上昇分:改質エンドウたん白加水分解物の疎水度から原エンドウたん白加水分解物の疎水度を差し引いたもの)を原エンドウたん白加水分解物白の疎水度に対する百分率である。
【0091】
【0092】
実施例12の改質エンドウたん白および実施例13の改質エンドウたん白加水分解物とも、ジェットミル粉砕機による機械的処理を通じて、原エンドウたん白または原エンドウたん白加水分解物と比べて10%以上上昇した疎水度を有することを確認した。
【0093】
(実施例14:茹でうどんの製造)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所製:5DM 03r)に小麦粉(中力粉)240g、加工デンプン60g、実施例12の改質エンドウたん白3g、水120g、食塩6gを配合し、8分間混捏後に複合、熟成し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ3.0mm、8番角[幅3.75mm])、麺を得た。得られた麺を沸騰水中で10分間茹でた後、1分間水で冷却し、茹でうどんを得た。
【0094】
(比較例8:茹でうどんの製造)
実施例12の改質エンドウたん白に代えて原エンドウたん白を用いたこと以外は、実施例14と同様にして茹でうどんを得た。
【0095】
(実施例15:茹でうどんの製造)
実施例12の改質エンドウたん白に代えて実施例13の改質エンドウたん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例14と同様にして茹でうどんを得た。
【0096】
(比較例9:茹でうどんの製造)
実施例12の改質エンドウたん白に代えて原エンドウたん白加水分解物を用いたこと以外は、実施例14と同様にして茹でうどんを得た。
【0097】
以下の表16に、実施例14、比較例8、実施例15および比較例9の茹でうどんの製造のための配合を示す。
【0098】
(製造した茹でうどんの評価方法)
実施例14、比較例8、実施例15および比較例9で得られた各茹でうどんを10℃で24時間保存後、官能評価、麺ほぐれ性評価を行った。
【0099】
(官能評価および麺ほぐれ性評価)
官能評価では、茹でうどんをパネリスト10名にて麺の食感、滑らかさ、および食味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。結果を以下の表16に示す。
【0100】
麺ほぐれ性評価は、100gの茹でうどんの塊状の麺に水40mlをかけた後、箸で麺をほぐし、そのほぐれ易さの程度をパネリスト10名による採点にて評価した。この評価は、ほぐれ易いほど良好であり、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点で示した。評価した結果を以下の表17に示す。
【0101】
【0102】
評価結果から、実施例14(実施例12の改質エンドウたん白を配合)および実施例15(実施例13の改質エンドウたん白加水分解物を配合)の茹でうどんはそれぞれ、比較例8(原エンドウたん白を配合)および比較例9(原エンドウたん白加水分解物)の茹でうどんに比べ、食感、滑らかさおよび食味が良好であった。麺ほぐれ性についても、実施例14および15の茹でうどんはそれぞれ、比較例8および9の茹でうどんに比べて良好であり、ほぐれ易かった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えば、食品添加剤および食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。