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  • 特許-放射線量可視化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】放射線量可視化装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240531BHJP
【FI】
A61B6/46 506Z
A61B6/46 523Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020047480
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145821
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年5月30日に一般社団法人日本IVR学会総会プログラム・抄録集編集委員会発行の第48回日本IVR学会総会プログラム・抄録集、第308頁にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年6月1日に第48回日本IVR学会総会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月12日にウェブサイトhttps://link.springer.com/content/pdf/10.1007%2Fs00270-019-02282-x.pdfに掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月7日にCardiovascular and Interventional Radiological Society of Europe 2019にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月12日に公益社団法人日本医学物理学会発行の医学物理第39巻Sup.3、第85頁にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月14日に第118回日本医学物理学会学術大会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古徳 純一
(72)【発明者】
【氏名】高田 剛志
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213709(JP,A)
【文献】特表2020-505686(JP,A)
【文献】特表2013-544605(JP,A)
【文献】特表2016-533211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0127859(US,A1)
【文献】国際公開第2020/036232(WO,A1)
【文献】特開2015-100417(JP,A)
【文献】特開2016-077795(JP,A)
【文献】特開2016-009912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32 、 6/00 - 6/58 、
34/00 -90/98 、
A61M36/10 -36/14 、
A61N 5/00 - 5/10 、
G06F 3/01 、 3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースルー画像またはそれに対応して表示される撮像画像である実画像と重畳させて、被ばく量を示す画像を表示する放射線量可視化装置であって、
上記実画像を視認可能なヘッドマウントディスプレイと、
あらかじめ、検査室の大きさ、室内機器、および遮蔽板の少なくとも何れかに関する条件を含む複数通りのX線照射の環境条件に対応して算出された検査室内の空間線量分布データのうち、X線照射時の環境条件に対応する空間線量分布データを読み出し、術者の水晶体位置に応じた水晶体線量を求めて、上記術者の水晶体被ばく量を示す表示である、上記水晶体線量に応じた画像を上記被ばく量を示す画像として上記実画像と重畳させて上記ヘッドマウントディスプレイに表示させる処理部と、
を備えたことを特徴とする放射線量可視化装置。
【請求項2】
請求項1の放射線量可視化装置であって、
上記ヘッドマウントディスプレイはカメラを備え、撮像された画像に基づいて、上記術者の水晶体位置を求め、
上記処理部は、上記求められた術者の水晶体位置に基づいて、術者の水晶体位置に応じた水晶体被線量を求めることを特徴とする放射線量可視化装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の放射線量可視化装置であって、
上記処理部は、さらに、上記X線照射時の環境条件に基づいて、モンテカルロ計算により被験者の皮膚での累積皮膚線量を求め、上記被験者の皮膚での累積皮膚線量に応じた画像を上記実画像と重畳させて上記ヘッドマウントディスプレイに表示させることを特徴とする放射線量可視化装置。
【請求項4】
請求項3の放射線量可視化装置であって、
上記処理部は、さらに、あらかじめ上記被験者について求められたCTデータに基づいて、上記モンテカルロ計算による被験者の皮膚での累積皮膚線量を求めることを特徴とする放射線量可視化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者や術者の被ばく放射線量を可視化する放射線量可視化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線透視・撮影時の空間線量分布をモニタにリアルタイム表示するシステムとして、線量計によって複数の所要座標における空間線量分布データを取得し、これに基づいて、X線透視・撮影時の空間線量分布モニタに表示するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-47757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように線量計によって空間線量分布データを取得する場合、保持装置の位置条件等に対応して計測を行う必要があり、様々な環境条件に対応した空間線量分布を把握することは容易でない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、様々な環境条件に対応した被ばく等の把握を容易できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
シースルー画像またはそれに対応して表示される撮像画像である実画像と重畳させて、被ばく量を示す画像を表示する放射線量可視化装置であって、
上記実画像を視認可能なヘッドマウントディスプレイと、
あらかじめ、複数のX線照射の環境条件に対応して算出された空間線量分布データのうち、X線照射時の環境条件に対応する空間線量分布データを読み出し、術者の水晶体位置に応じた水晶体線量を求めて、上記水晶体線量に応じた画像を上記実画像と重畳させて上記ヘッドマウントディスプレイに表示させる処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、ヘッドマウントディスプレイによるシースルー画像や撮像実画像などと重畳させて放射線量の表示がなされることにより、実質的なリアルタイムで被ばく量を容易に把握可能にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な環境条件に対応した被ばく等の把握を容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】放射線量可視化装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】放射線量可視化装置による表示画面例を示す説明図である。。
図3】放射線量可視化装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、X線診断装置やCT装置等のX線装置による放射線被ばくを容易に把握できるようにする放射線量可視化装置の例を説明する。
【0011】
放射線量可視化装置は、例えば図1に示すように、あらかじめ、種々のX線照射の環境条件における空間線量分布をモンテカルロ法によって計算し、蓄積するクラウドコンピュータ101と、X線装置103によるX線の照射条件等に基づいて、患者(被験者)の皮膚被ばく量(線量)をモンテカルロ法によって計算するとともに、上記照射条件等に応じてクラウドコンピュータ101から空間線量分布を読み出し、術者の水晶体被ばく量(線量)を推定するローカルホストサーバ102と、上記患者(被験者)の皮膚被ばく量や術者の水晶体被ばく量を示す表示を、例えば図2に示すような現実世界の像に重畳させて、いわゆるシースルー表示で行う例えばHoloLens(マイクロソフト社の登録商標)などの複合現実(Mixed Reality)のヘッドマウントディスプレイ104とを備えて構成される。
【0012】
以下、上記各部で行われる処理や動作について、図3に示すフローチャートを参照して、より詳しく説明する。
【0013】
(クラウドコンピュータ101の処理)
(S101) クラウドコンピュータ101には、まず、検査室の種々のX線照射の環境条件が設定される。具体的には、例えば、検査室の大きさや、室内機器、遮蔽板などの設備、おこびこれらの材質(X線等価や吸収等に関する特性)、X線管の管電圧、管電流、パルスレート、X線照射時間、照射視野絞りや、X線装置の位置、姿勢(アームの角度)などが複数通り設定される。
【0014】
(S102) 次に、各環境条件ごとに、モンテカルロ計算によって検査室内の空間線量が計算され、蓄積される。
【0015】
(ローカルホストサーバ102の処理)
(S201) ローカルホストサーバ102では、まず、現在の透視条件(X線照射の環境条件)が収集される。具体的には、例えば、X線装置103に設定されたX線管の管電圧、管電流、パルスレート、X線装置103の位置、姿勢等の情報が取得される。また、図示しない操作装置からの入力等に基づいて、検査室や設備等についての環境条件が収集される。なお、種々のセンサや画像処理などによって設備等の位置などが検出されるようにしてもよい。また、患者203の位置も、例えば超音波センサなどによって検出される。さらに、患者について、あらかじめCT装置によって得られた体の組成構造(例えば皮膚部分、骨の部分、主として水の部分、空気の部分などの配置等)などの情報も収集される。
【0016】
(S202) 上記(S201)で収集されたX線装置103によるX線の照射条件に関する情報、および患者の体の組成構造に関する情報にも応じて、モンテカルロ計算によって患者の皮膚被ばく量が計算される。すなわち、この被ばく量の算出は比較的計算量を少なく抑えることが容易なので、ローカルホストサーバ102で例えば数秒おきなどに計算される。ここで、患者の体の組成構造も考慮されることによって、より正確な被ばく量の算出を容易にできる。
【0017】
(S203) 上記(S202)で算出された皮膚被ばく量が累積され、保持データが更新される。
【0018】
(S204) 一方、術者の被ばくに関しては、上記(S201)で収集された環境条件に基づいて、対応する検査室内の空間線量が、クラウドコンピュータ101から読み出される。すなわち、このような空間線量の計算は、例えば35cmグリッドで計算するとすればかなり大きな計算量になるので、あらかじめ比較的処理能力の大きなクラウドコンピュータ101等によって種々の環境条件の場合の空間線量分布を計算しておき、ローカルホストサーバ102により読み出すことによって、リアルタイム的な表示が容易になる。
【0019】
(S205) 上記(S204)で算出された空間線量と、後述するヘッドマウントディスプレイ104によって追跡される術者の水晶体の位置に基づいて、術者の水晶体被ばく推定値が求められる。
【0020】
(S206) 上記(S203)および(S205)で求められた患者の累積皮膚被ばく分布や、術者の水晶体被ばく量の算出結果がヘッドマウントディスプレイ104に送信されて、後述するように放射線量の可視化表示が行われる。以後、上記(S201)以降が繰り返される。
【0021】
(ヘッドマウントディスプレイ104の処理)
(S301) ヘッドマウントディスプレイ104では、まず、図示しない内蔵カメラによって患者の身体上や術者上、検査室内のマーカーが撮像、識別され、空間上の位置が求められる。
【0022】
(S302) 上記マーカーの位置に基づいて、術者の位置が求められ、位置情報がローカルホストサーバ102に送られる。この位置情報に基づいて、ローカルホストサーバ102では、上記のように術者の水晶体被ばく推定値が求められる。
【0023】
(S303) (S301)で求められたマーカー位置に応じて、ローカルホストサーバ102により上記(S206)で送信された患者の皮膚被ばく分布や術者の水晶体被ばく量のデータに基づいた被ばく量の可視化表示が行われる。具体的には、例えば、図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ104では、シースルー画像、または撮像画像表示よって、ベッド201、X線装置103の保持装置202、患者203、および術者204が視認されるとともに、上記患者203の像や術者の像に重畳させて、患者の皮膚被ばく分布や術者の水晶体被ばく量を示す例えば色分け表示や濃淡表示などがなされ、放射線量の3次元的な可視化表示がなされる。具体的には、例えば、患者203の体の表面位置に皮膚線量に応じた色の線量マーク203’が表示される。また、術者204の目の位置に水晶体線量に応じた色の線量マーク204’が表示されたり、表示画面の隅に水晶体線量の数値が表示されたりする。
【0024】
上記のように、ヘッドマウントディスプレイ104によるシースルー画像や撮像実画像などと重畳させて放射線量の表示がなされることにより、実質的なリアルタイムで被ばく量を容易に把握可能にすることができる。
【0025】
しかも、比較的計算負荷の小さい患者皮膚被ばくをローカルホストサーバ102によって求めることにより、実質的にリアルタイムな表示を可能にできる一方、比較的計算負荷の大きい検査室の空間線量は、あらかじめクラウドコンピュータ101によって算出し、環境条件に応じて呼び出すことによって、やはり、実質的にリアルタイムな表示を可能にできる。なお、検査室の空間線量を求めるためには、クラウドコンピュータ101を用いるのに限らず、例えば所定の処理能力を有するワークステーションなどのコンピュータが用いられてもよく、配置場所も遠隔やローカルなどでもよい。
【0026】
また、上記のような空間線量のモンテカルロ計算によって空間線量が求められるので、環境条件ごとに空間線量分布の計測を行うことなく、多様な環境条件での表示を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
101 クラウドコンピュータ
102 ローカルホストサーバ
103 X線装置
104 ヘッドマウントディスプレイ
201 ベッド
202 保持装置
203 患者
203’ 線量マーク
204 術者
204’ 線量マーク

図1
図2
図3