(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】エネルギー回生装置
(51)【国際特許分類】
F04F 5/20 20060101AFI20240531BHJP
F15B 11/06 20060101ALN20240531BHJP
【FI】
F04F5/20 A
F15B11/06 R
(21)【出願番号】P 2020091352
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年12月3日、第16回「運動と振動の制御」シンポジウム(MoViC2019)、USB講演論文集、C103にて発表。 令和1年12月4日、第16回「運動と振動の制御」シンポジウム(MoViC2019)にて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】吉満 俊拓
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121677(JP,A)
【文献】特開平02-105000(JP,A)
【文献】実開昭59-040770(JP,U)
【文献】特開平02-064364(JP,A)
【文献】特開2002-022295(JP,A)
【文献】特開2008-281338(JP,A)
【文献】特開2016-068630(JP,A)
【文献】米国特許第6470593(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0209406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 1/00-99/00
F15B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と
を含み、
前記容器は、前記エジェクタと接続される1次容器と、2次容器とから構成され、
前記切替手段は、前記1次容器に接続される1次切替手段と、前記2次容器に接続される2次切替手段とから構成され、
前記装置は、
前記1次容器と前記2次容器との間に設けられ、前記1次容器内の圧力が閾値以下になった場合に開き、前記2次容器内の流体を前記1次容器へ流入させる開閉手段を含む
、エネルギー回生装置。
【請求項2】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と、
前記エジェクタと並列に接続され、一方向にのみ流体を流し、該流体の逆流を防止する逆流防止手段と、
前記逆流防止手段を介した前記流体機器への流体の供給と、前記エジェクタからの流体の排出とを切り替える給排用切替手段と
を含む
、エネルギー回生装置。
【請求項3】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と
を含み、
前記切替手段は、前記負圧エネルギーを蓄積している間に、流体を前記流体機器へ供給するように切り替える
、エネルギー回生装置。
【請求項4】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と、
前記エジェクタから排出される流体を貯留する回収容器
と
を含み、
前記切替手段は、前記負圧エネルギーを蓄積している間に、前記回収容器に貯留された前記流体を前記流体機器へ供給するように切り替える
、エネルギー回生装置。
【請求項5】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と、
前記エジェクタと並列に接続され、一方向にのみ流体を流し、該流体の逆流を防止する逆流防止手段と、
前記逆流防止手段を介して前記流体機器へ流体を供給し、前記エジェクタから排出された流体を貯留する緩衝容器と、
外部から前記流体機器への流体の流入と、前記流体機器から前記緩衝容器への流体の貯留とを切り替える緩衝用切替手段と
を含む
、エネルギー回生装置。
【請求項6】
流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
前記エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
前記負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と
を含み、
前記流体機器は、エアシリンダであり、
前記エアシリンダ内をピストンにより2つの空間に区分した場合の各空間に、
前記各装置の前記エジェクタが接続される
、エネルギー回生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が有するエネルギーを回生する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機器は、電動機器と比較してパワー密度が高く、力制御が容易であることから、幅広い分野で用いられている。エアシリンダ等の流体機器の速度制御には、飛び出しを防ぎつつ力制御を行うことができるメーターアウト回路が一般的に使用されている。メーターアウト回路は、シリンダから流出する流体を速度調整弁で制御する装置である。
【0003】
しかしながら、速度調整弁は、流体の粘性力により速度エネルギーを散逸させているため、流体が有するエネルギーが損失するのみで、省エネルギーの観点から課題として考えられている。
【0004】
エネルギーを回生する技術として、例えばエジェクタを用い、ノズルから噴射する高い速度の冷媒流により蒸発器で蒸発した気相冷媒を吸引し、それらを混合させながら冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-022295号公報
【文献】特開2008-281338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術は、流体機器の速度制御を目的とするものではなく、流体機器の速度制御を行いつつ流体が有するエネルギーを回生することはできないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、流体が有するエネルギーを回生する装置であって、
流体機器から排出される流体の流量を制御するとともに、該流体が有する圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するエジェクタと、
エジェクタにより吸引され、内部を負圧にして負圧エネルギーを蓄積する容器と、
負圧エネルギーの供給と蓄積とを切り替える切替手段と
を含む、エネルギー回生装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流体機器の速度制御を行いつつ流体が有するエネルギーを回生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エネルギー回生装置の第1の構成例を示した図。
【
図2】流体機器から流体を排出する流れを示した図。
【
図4】エネルギー回生装置の第2の構成例を示した図。
【
図5】エネルギー回生装置の第3の構成例を示した図。
【
図6】エネルギー回生装置の第4の構成例を示した図。
【
図7】エネルギー回生装置を、エアシリンダに適用した第1の例を示した図。
【
図8】エネルギー回生装置を、エアシリンダに適用した第2の例を示した図。
【
図9】エネルギー回生装置を、エアしリンダに適用した第3の例を示した図。
【
図10】エネルギー回生装置の動作を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、エネルギー回生装置の第1の構成例を示した図である。エネルギー回生装置は、流体機器の速度制御のため、メーターアウト回路により流体機器から排出される流体を速度調整弁で制御し、損失となっていた排出される流体が有する圧力エネルギーを回収する機器である。
【0011】
流体機器は、水や油等の液体や、空気や窒素等の気体の圧力や速度を利用して動力を取り出したり、モータ等の動力を使用してこれらの液体や気体を昇圧し、圧送したりする機器である。流体機器としては、例えば流体として圧縮空気のエネルギーを直動運動に変換する筒状のエアシリンダ等が挙げられる。エアシリンダは、自動車の組み立てラインの組み立てロボットや物を仕分けする自動選別機等のアクチュエータ(アーム)等に使用されている。
【0012】
エアシリンダは、中空の筒状のシリンダと、シリンダ内を2つの空間に分けるピストンと、ピストンに連結し、ピストンを往復動させる棒状のロッドとを含む。エアシリンダには、ロッドでピストンをヘッド側に押し込む際、空気圧で押し込み、ピストンが戻る際は、スプリング等で戻る単動型や、押し込む場合も、戻る場合も、空気圧により行う複動型等がある。
【0013】
流体機器の速度制御には、スピードコントローラが使用され、スピードコントローラは、速度調整弁を含み、流体の流量を絞ってその速度を調整する。スピードコントローラには、速度調整弁で流体の流量を絞るタイミングを、入口側とするメーターイン回路と、出口側とするメーターアウト回路とがある。
【0014】
メーターイン回路は、入口側で速度を制御するため、所定の推力を得るためには時間がかかり、推力自体を制御することが難しい。一方、メーターアウト回路は、ピストンのヘッド側とロッド側の両方が圧縮空気で充填され、常に圧力がかかった状態で出口を絞るため、安定した推力を得ることができ、シリンダからピストン等の飛び出しも抑制でき、流体の速度も制御することができる。このため、流体の速度制御には、一般的にメーターアウト回路が使用されている。
【0015】
メーターアウト回路は、速度調整弁で流体の流量を絞るため、流体に内部摩擦(粘性力)が発生し、流体が有する速度エネルギーが熱となって失われる。これにより、流体が有するエネルギーが損失してしまう。省エネルギーの観点からは、エネルギーを回収して再利用できることが重要である。
【0016】
エネルギー回生装置は、速度調整弁の機能と、エネルギー回生機構とを併せもつエジェクタ回生回路であり、エジェクタ10と、逆止弁11と、容器としての真空側タンク12と、切替手段としての2ポート切替弁13とを含む。エネルギー回生装置は、図示しない流体機器と3ポート切替弁14を介して接続され、3ポート切替弁14の1つのポート(接続部分)には、配管を介して高圧側タンク15が接続される。逆止弁11は、円が記載されたくの字の開いた側へと流体が流れ、その逆方向へは流れないことを示す。
【0017】
3ポート切替弁14は、3つのポートに、流体機器と繋がる配管と、高圧側タンク15と繋がる配管と、エネルギー回生装置と繋がる配管とが接続され、流体機器と高圧側タンク15との接続から流体機器とエネルギー回生装置との接続へ、またはその逆へ切り替える。3ポート切替弁14により流体機器と高圧側タンク15とを接続すると、高圧側タンク15に貯留される流体が流体機器内へ供給される。一方、3ポート切替弁14により流体機器とエネルギー回生装置とを接続すると、流体機器内の流体がエネルギー回生装置へ排出される。
【0018】
高圧側タンク15は、図示しない圧縮機と接続され、圧縮機から所定の圧力に昇圧した流体が適宜供給され、タンク内がほぼ一定の圧力に保持される。
【0019】
高圧側タンク15から3ポート切替弁14を介して流体機器へ供給された流体は、流体機器内でピストンの往復動等に使用され、その使用後、排出される。流体の排出時、3ポート切替弁14が切り替わり、流体機器とエネルギー回生装置とが接続され、エネルギー回生装置へ排出される。
【0020】
流体機器から排出される流体は、圧縮流体であり、エネルギー回生装置のエジェクタ10へ供給される。エジェクタ10は、流体機器から供給された高圧の流体を噴射させるノズルと、高圧で流体を噴射することによりその周囲の圧力が低下することを利用して、ノズルの周囲の流体を吸い込み、噴射された流体と吸い込んだ流体とを混合し、速度を減じて昇圧しつつ吐出させるディフューザとを含む。
【0021】
エジェクタ10は、逆止弁11を介して真空側タンク12と接続されており、ノズルから高圧の流体を噴射することにより、真空側タンク12内に貯留される流体が吸引される。エジェクタ10は、流体機器の速度制御を行うため、流体機器から排出される流体の速度が所定の速度となるノズル径とされる。逆止弁11は、真空側タンク12からエジェクタ10へは流体を流すが、エジェクタ10から真空側タンク12へは流体を流さない。真空側タンク12は、流体機器から排出される流体のノズルからの噴射により、真空側タンク12内の流体が吸引され、真空側タンク12内の圧力が低下する。
【0022】
真空側タンク12内の圧力は、大気圧を下回ると、負圧になり、負圧エネルギーとしてエネルギーが蓄積される。負圧エネルギーは、物を持ち上げるピックアップ装置等に使用することができる。負圧エネルギーは、エアシリンダにおいて、高圧側タンク15から流体機器のヘッド側へ流体を供給しているときに、ロッド側の流体を吸い込むために使用することができる。これにより、ピストンの往復動をよりスムーズにすることができる。ディフューザから排出された流体は、排気口16へ排出される。
【0023】
2ポート切替弁13は、2つのポートを有し、真空側タンク12と繋がる配管と、負圧エネルギーを利用する機器(以下、利用機器とする。)と繋がる配管と接続される。2ポート切替弁13は、エジェクタ10により真空側タンク12内の流体を吸い込んでいる間、2ポート切替弁13内で真空側タンク12と利用機器とを繋ぐ流路を遮断し、真空側タンク12と利用機器との接続を切り離し、その接続を解除する。2ポート切替弁13は、負圧エネルギーを使用する場合、高圧側タンク15と利用機器とを接続するように切り替える。
【0024】
図2および
図3を参照して、流体機器から流体を排出する段階のエネルギー回生装置の動作および流体機器へ流体を供給する段階のエネルギー回生装置の動作について説明する。
図2は、流体機器から流体を排出する段階のエネルギー回生装置の動作について説明する図である。
【0025】
流体を排出する段階では、3ポート切替弁14は、図示しない流体機器とエネルギー回生装置とを接続し、2ポート切替弁13は、図示しない利用機器と真空側タンク12との接続を解除する。
【0026】
3ポート切替弁14を介して排出された流体は、エジェクタ10へ入り、エジェクタ10のノズルから噴射される。エジェクタ10内では、ノズルからの流体の噴射により真空側タンク12内の流体が逆止弁11を介して吸い込まれる。ノズルから噴射された流体と、吸い込まれた流体とは、ノズルの後流側のディフューザで混合され、排気口16から排出される。
【0027】
エジェクタ10のノズルから流体が噴射されている間は、真空側タンク12内の流体が吸い込まれ、真空側タンク12内が負圧になり、負圧エネルギーが蓄積されていく。
【0028】
図3は、流体機器へ流体を供給する段階のエネルギー回生装置の動作について説明する図である。流体の排出を開始し、例えば一定時間が経過した後、流体機器への流体の供給を開始する。なお、一定時間が経過した後に限らず、真空側タンク12内の圧力が一定の圧力になったところで、流体機器への流体の供給を開始してもよい。
【0029】
流体機器へ流体を供給する段階では、3ポート切替弁14は、流体機器と高圧側タンク15とを接続し、2ポート切替弁13は、利用機器と真空側タンク12とを接続する。
【0030】
3ポート切替弁14を切り替えて流体機器と高圧側タンク15とを接続すると、高圧側タンク15内に貯留される高圧の流体が流体機器へ流れる。このため、流体機器からエネルギー回生装置へは流体が流れない。流体がエジェクタ10へ流れないと、真空側タンク12内の流体がエジェクタ10へ吸い込まれることもなくなる。流体がエジェクタ10から真空側タンク12へ流れようとしても、逆止弁11の存在により真空側タンク12へは流れない。
【0031】
2ポート切替弁13の切り替えにより、利用機器と真空側タンク12とが接続されると、真空側タンク12に蓄積された負圧エネルギーが、利用機器へ供給される。利用機器がピックアップ装置であれば、物をピックアップする際に吸引する空気等の流体が真空側タンク12に吸い込まれる。これにより、真空側タンク12内に流体が蓄積されていく。真空側タンク12内に蓄積された流体は、再び切り替えが発生し、
図2に示した動作を開始すると、エジェクタ10のノズルからの流体の噴射により吸い込まれ、ノズルから噴射された流体とともに排出される。
【0032】
このようにして、エネルギー回生装置は、流体が有する圧力エネルギーを、エジェクタ10により速度エネルギーに変換し、それを真空側タンク12に負圧エネルギーとして回収し、利用機器へ負圧エネルギーを提供することで、エネルギーを再利用することを可能にする。
【0033】
図4は、エネルギー回生装置の第2の構成例を示した図である。エネルギー回生装置は、エジェクタ10と、逆止弁11と、真空側タンク12と、2ポート切替弁13と、逆止弁17とを含み、3ポート切替弁14が流体機器とエジェクタ10との間ではなく、エジェクタ10から流体を排出する側に設けられている。逆止弁17は、逆流防止手段として機能し、エジェクタ10と並列に接続されている。3ポート切替弁14には、排気口16と圧力源18とが接続される。圧力源18は、
図1に例示した高圧側タンク15等である。2ポート切替弁13の動作は、
図1~
図3に示した例と同様であるため、その説明は省略する。
【0034】
流体機器から流体を排出する場合は、3ポート切替弁14が排気口16と接続される。この場合、流体機器内の流体がエジェクタ10および逆止弁17へと流れるが、逆止弁17は、圧力源18から流体機器へ向けてしか流れないので、エジェクタ10のみに流れる。エジェクタ10では、流体機器から排出された流体の噴射により、真空側タンク12内の流体が吸い込まれ、噴射された流体と吸い込まれた流体とが混合して排出される。エジェクタ10を排出された流体は、3ポート切替弁14を介して排気口16へ流れる。
【0035】
圧力源18から流体機器へ流体を供給する場合、3ポート切替弁14が圧力源18と接続される。この場合、流体は、逆止弁17およびエジェクタ10へと流れる。エジェクタ10は、ノズルの径が小さいことから、これが流れの抵抗となってノズル内へは流れない。エジェクタ10へと流れる流体の大部分は、ノズルの径に比較して流路の断面が大きい真空側タンク12側へ流れることになる。しかしながら、真空側タンク12の入口には、逆止弁11が設けられ、エジェクタ10から真空側タンク12の方向へは流れない。このため、流体は、圧力源18と接続した場合、逆止弁17のみを介して流体機器へ流れる。
【0036】
図5は、エネルギー回生装置の第3の構成例を示した図である。
図5に示した例は、エネルギー回生装置を並列に2つ設けた構成となっている。3ポート切替弁14は、流体機器と高圧側タンク15、流体機器と2つのエネルギー回生装置とを切り替えて接続する。2つのエネルギー回生装置は、分岐管を介して3ポート切替弁14の1つのポートに接続される。
【0037】
分岐管の分岐の一方に第1のエネルギー回生装置20が接続され、他方に第2のエネルギー回生装置21が接続される。分岐管と第2のエネルギー回生装置21との間にリリーフ弁22が設けられている。
【0038】
流体機器から排出される流体は、第1のエネルギー回生装置20へ流れる。第1のエネルギー回生装置20へ流れる流体の量が多いと、第1のエネルギー回生装置20が備えるエジェクタ10aを通過する流体の流速が上昇し、エジェクタ10aの内部のノズルを通過する流速の上限の音速に近くなる。すると、エジェクタ10aの上流側、すなわち(流体機器側)の圧力が上昇する。
【0039】
そこで、上流側の圧力が一定の圧力になると、リリーフ弁22が動作し、第2のエネルギー回生装置21へ流体が流れるようにする。これにより、排出される流体の流量が大きく変動しても、上流側の圧力の上昇を抑制してエネルギー回生が可能となる。一定の圧力としては、例えば0.3~0.6MPaの間の任意の圧力とすることができる。なお、これらの圧力は一例であるので、これらの圧力に限定されるものではない。
【0040】
図6は、エネルギー回生装置の第4の構成例を示した図である。エネルギー回生装置は、エジェクタ10と、逆止弁11と、真空側タンク12として1次真空側タンク23と、2ポート切替弁13とを含み、さらに、逃がし弁24と、2次真空側タンク25と、2ポート切替弁26とを備えている。
【0041】
1次真空側タンク23のみでは、1次真空側タンク23の絶対圧力が低下し、およそ-0.5気圧になると、エジェクタ10の吸い込み能力の限界となり、吸い込むことができなくなる。これでは、排出される流体の圧力エネルギーを充分に回生することができない。
【0042】
そこで、2次真空側タンク25を設け、1次真空側タンク23と2次真空側タンク25との間で、一定圧力差で開く開閉手段として機能する逃がし弁24を設ける。1次真空側タンク23の内圧が下限閾値圧力を下回ると、逃がし弁24が開く。2次真空側タンク25は、1次真空側タンク23より容量が大きく、逃がし弁24が開くと、1次真空側タンク23へ2次真空側タンク25内の流体が流入する。この流入により、1次真空側タンク23内の圧力が上昇し、上限閾値圧力まで上昇すると、逃がし弁24が閉止する。
【0043】
このような一連の動作により、1次真空側タンク23内の圧力を-0.2~-0.3気圧の負圧に維持しつつ、2次真空側タンク25内の圧力をさらに低い圧力とすることで、より多くのエネルギーを回生することができる。ここでは、2つの真空側タンクを、逃がし弁を介して接続した構成のみを例示したが、真空側タンクは3つ以上が逃がし弁を介して接続した構成であってもよい。
【0044】
また、1次真空側タンク23、2次真空側タンク25のそれぞれに2ポート切替弁13、26を設け、必要時に負圧エネルギーを提供することができる。1次真空側タンク23のみでは、一定の負圧エネルギーしか提供することができないが、2次真空側タンク25を用いることで、より大きい負圧エネルギーを提供することができる。
【0045】
図7は、エネルギー回生装置を、流体機器としてエアシリンダに適用した第1の例を示した図である。エアシリンダ30は、シリンダ31と、ピストン32と、ロッド33とを備える。エネルギー回生装置は、エジェクタ10と、逆止弁11と、真空側タンク12と、3ポート切替弁34とを含み、エアシリンダ30のヘッド側に3ポート切替弁14が接続され、3ポート切替弁14には、エネルギー回生装置と高圧側タンク15とが接続される。エネルギー回生装置は、逆止弁35、36と、回収容器としての中圧側タンク37とをさらに備えている。
【0046】
エアシリンダ30のロッド側に3ポート切替弁34が接続され、3ポート切替弁34には、真空側タンク12と中圧側タンク37とが接続される。エジェクタ10と中圧側タンク37とは逆止弁35を介して接続され、流体はエジェクタ10から中圧側タンク37へは流れるが、その逆には流れないようになっている。また、真空側タンク12も、真空側タンク12から外部へは流体が流れるようになっている。
【0047】
3ポート切替弁14が、エアシリンダ30のヘッド側と高圧側タンク15とを接続すると、エアシリンダ30のヘッド側へ高圧の流体が供給され、ピストン32をロッド側へ移動させる。このとき、3ポート切替弁34は、エアシリンダ30のロッド側と真空側タンク12とを接続し、エアシリンダ30のロッド側を負圧にし、ピストン32およびロッド33の推力を大きくする。
【0048】
また、外力によりピストン32をヘッド側に移動させると、3ポート切替弁34を中圧側タンク37に接続し、中圧側タンク37から流体を供給し、ピストン32をヘッド側へ移動させるのを補助する。3ポート切替弁14は、高圧側タンク15からエジェクタ10へ切り替え、エアシリンダ30のヘッド側の流体をエジェクタ10へ排出させる。エジェクタ10では、排出された流体を噴射させ、真空側タンク12内の流体を吸い込み、排出された流体と吸い込まれた流体とを混合し、昇圧して逆止弁35を介して中圧側タンク37へ供給し、中圧側タンク37内の圧力を一定に維持する。
【0049】
図8は、エネルギー回生装置を、流体機器としてエアシリンダに適用した第2の例を示した図である。エアシリンダ30は、シリンダ31と、ピストン32と、ロッド33とを備える。エネルギー回生装置は、エジェクタ10と、逆止弁11と、真空側タンク12と、3ポート切替弁34と、逆止弁17と、緩衝容器としての定圧タンク38とを含んで構成されている。
【0050】
外力によりピストン32がヘッド側へ移動する場合、ヘッド側から排出された流体は、エジェクタ10を通して定圧タンク38へ排出される。このとき、エジェクタ10には、真空側タンク12内の流体が吸い込まれ、真空側タンク12内の圧力が低下し、負圧となる。3ポート切替弁34は、エアシリンダ30のロッド側と外部とを接続し、外部の空気等の流体がロッド側へ流入する。
【0051】
ピストン32がロッド側へ移動する場合、定圧タンク38内の流体が逆止弁17を介してヘッド側へ流入し、3ポート切替弁34が、エアシリンダ30のロッド側と定圧タンク38とを接続し、ロッド側の流体を定圧タンク38へ供給する。ロッド側とヘッド側の圧力は同圧力となるが、ヘッド側のピストン32の受圧面積は、ロッド側の受圧面積よりロッド33が連結されていない分、大きい。同じ圧力でも、ヘッド側の受圧面積が大きい分、ヘッド側にかかる圧力が大きく、ピストン32はロッド側へ移動する。
【0052】
図8に示した構成は、外部から圧力を加えないと、ピストン32がロッド側へ移動し、その圧力が変動しても、ヘッド側とロッド側とで圧力のバランスをとることができることから、常に外部から圧力を加え、圧力のバランスをとることが必要なエアダンパーに利用することができる。
【0053】
図9は、エネルギー回生装置を、流体機器としてエアシリンダに適用した第3の例を示した図である。2つのエネルギー回生装置をエアシリンダ30のヘッド側とロッド側にそれぞれ接続した例である。
図9では、第1のエネルギー回生装置20をヘッド側に、第2のエネルギー回生装置21をロッド側に接続している。
【0054】
ピストン32をヘッド側に押し込む場合、エアシリンダ30のヘッド側の3ポート切替弁40を、第1のエネルギー回生装置20と接続し、エアシリンダ30のロッド側の3ポート切替弁41を、高圧側タンク15と接続する。これにより、ヘッド側の流体は、外部へ排出される際、第1のエネルギー回生装置20に負圧エネルギーとして蓄積される。
【0055】
ピストン32をロッド側に移動させる場合、エアシリンダ30のヘッド側の3ポート切替弁40を、高圧側タンク15との接続に切り替える。また、エアシリンダ30のロッド側の3ポート切替弁41を、第2のエネルギー回生装置21との接続に切り替える。これにより、ヘッド側へは高圧側タンク15から高圧の流体が流入し、ピストン32をロッド側へ押し込み、ロッド側の流体は第2のエネルギー回生装置21を介して外部へ排出されるが、その際、第2のエネルギー回生装置21に負圧エネルギーとして蓄積される。
【0056】
第1のエネルギー回生装置20および第2のエネルギー回生装置21に蓄積された負圧エネルギーは、ピックアップ装置等の利用機器で使用される。なお、第1のエネルギー回生装置20および第2のエネルギー回生装置21は、異なる利用機器に接続され、各利用機器で負圧エネルギーを使用してもよいし、同じ利用機器に接続され、第1のエネルギー回生装置20と第2のエネルギー回生装置21とを切り替えて使用することで、連続して負圧エネルギーを使用することができるように構成されていてもよい。
【0057】
図10は、
図1~
図9を参照して説明してきたエネルギー回生装置の動作について説明するフローチャートである。この動作は、
図1~
図9のいずれも同じ動作であるため、ここでまとめて説明する。
【0058】
エネルギー回生装置は、接続される流体機器が動作を開始することにより、ステップ100から動作を開始する。ステップ101では、流体機器の動作が停止したか否かを判断する。停止しない場合、ステップ102へ進み、3ポート切替弁14により流体機器がエネルギー回生装置に接続され、2ポート切替弁13により真空側タンク12と利用機器との接続が解除されているかを判断する。一方、ステップ101で停止する場合、ステップ107へ進み、動作を終了する。
【0059】
ステップ102でエネルギー回生装置に接続され、利用機器との接続が解除されている場合、ステップ103へ進み、流体機器から排出される流体をエジェクタ10に受け入れ、ノズルから流体を噴射させる。ステップ104では、ノズルからの流体の噴射により、真空側タンク12から逆止弁11を介して該真空側タンク12内に貯留する流体を吸引する。これにより、真空側タンク12内の圧力を低下させ、負圧にし、負圧エネルギーを蓄積する。ステップ105では、ディフューザで噴射した流体と吸引した流体とを混合し、昇圧して、エジェクタ10から排出する。そして、ステップ101へ戻る。
【0060】
ステップ102で高圧側タンク15に接続され、利用機器と接続されている場合、ステップ106へ進み、流体機器へ高圧の流体を供給し、真空側タンク12に蓄積した負圧エネルギーを、利用機器へ提供する。高圧側タンク15に接続され、利用機器と接続されている場合としては、エネルギー回生装置に接続され、利用機器との接続が解除されていたが、3ポート切替弁14および2ポート切替弁13に切り替えが発生した場合が該当する。反対に、ステップ102のエネルギー回生装置に接続され、利用機器との接続が解除されている場合としては、高圧側タンク15に接続され、利用機器と接続されていたが、3ポート切替弁14および2ポート切替弁13に切り替えが発生した場合が該当する。この場合も、ステップ101へ戻る。
【0061】
したがって、ステップ102で切り替えが発生するまで、ステップ103からステップ105までの動作、またはステップ106の動作を繰り返す。
【0062】
本発明によれば、エジェクタ10を使用して排出する流体の速度を制御しつつ、真空側タンク12に負圧エネルギーとして、排出する流体のエネルギーを回収することができ、回収した負圧エネルギーを再利用することで、エネルギーを回生することができる。このようにエネルギーを回生することができるので、省エネルギーに寄与することができる。
【0063】
これまで本発明のエネルギー回生装置および回生方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
10、10a、10b…エジェクタ
11…逆止弁
12…真空側タンク
13…2ポート切替弁
14…3ポート切替弁
15…高圧側タンク
16…逆止弁
17…排気口
18…圧力源
20…第1のエネルギー回生装置
21…第2のエネルギー回生装置
22…リリーフ弁
23…1次真空側タンク
24…逃がし弁
25…2次真空側タンク
30…エアシリンダ
31…シリンダ
32…ピストン
33…ロッド
34…3ポート切替弁
35、36…逆止弁
37…中圧側タンク
38…定圧タンク
40…3ポート切替弁
41…3ポート切替弁