(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】手指消毒剤用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/045 20060101AFI20240531BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240531BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20240531BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240531BHJP
A01N 59/26 20060101ALI20240531BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240531BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240531BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20240531BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20240531BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240531BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240531BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240531BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240531BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
A61K31/045
A01N25/02
A01N25/06
A01N31/02
A01N59/26
A01P3/00
A61K9/12
A61K31/14
A61K33/42
A61K47/04
A61P17/00 101
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
(21)【出願番号】P 2020092140
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166134(JP,A)
【文献】特開2012-67089(JP,A)
【文献】特開2016-169914(JP,A)
【文献】特開2002-52074(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101863350(CN,A)
【文献】特開2004-24796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A01N
A01P
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器と、
前記外装容器に収容され、25w/v%以上60w/v%未満の炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸に対応する塩、
第四級アンモニウム塩、水を含有し、25℃におけるpHが3.0~5.0である手指消毒剤を内包
し、少なくとも前記手指消毒剤と当
接する面において、ポリオレフィン、フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種から形成
されている袋体と、
前記外装容器と前記袋体の間の空間に充填されている不燃性圧縮気体を備えることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製品。
【請求項2】
前記不燃性圧縮気体が、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ば
れる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の手指消毒剤用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるための消毒剤を内包するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるために、有効成分としてエタノールなどを配合した消毒剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エタノール、アルギニン、及び重炭酸塩を含有し、液性が塩基性である消毒用組成物が開示されている。また、明細書段落0041には、その消毒用組成物をエアゾールの形態として作成し得ることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の消毒用組成物においては、実施例に示されるように、エタノールが80重量%も含有されているために、消防法における第4類(引火性液体)中の「アルコール類」に分類されることから、貯蔵方法や取扱い方法に関し、引火点より低い温度に保って貯蔵及び保管する必要があったり、火気厳禁であったり、静電気に気を付ける必要があったりなど、種々の制限があった。
【0006】
また、特許文献1の消毒用組成物をエアゾールの形態としたとしても、一般的にエアゾールには、圧縮されたプロパンやブタンなどの液化石油ガスが用いられることから、その消毒用組成物を噴霧したときに、石油ガスに引火するおそれがあることから、やはり火気厳禁であったり、静電気に気を付ける必要があったりなど、種々の制限があった。
【0007】
そこで、本件発明では、エタノールを含有する消毒剤に関するエアゾール製品について、菌の殺菌やウイルス、とりわけCOVID-19のようなエンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルス及びノロウイルス、ポリオウィルス、アデノウィルスなどのエンベロープを有さないノンエンベロープウイルスに対して不活化を行うことができるとともに、消防法における危険物に該当せず、万が一に充填される圧縮気体が漏洩しても引火などせず、安全に貯蔵することができ、取り扱える手指消毒剤用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕すなわち、本発明は、外装容器と、前記外装容器に収容され、25w/v%以上60w/v%未満の炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸に対応する塩、第四級アンモニウム塩、水を含有し、25℃におけるpHが3.0~5.0である手指消毒剤を内包し、少なくとも前記手指消毒剤と当接する面において、ポリオレフィ
ン、フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種から形成されている袋体と、前記外装容器と前記袋体の間の空間に充填されている不燃性圧縮気体を備えることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製品である。
【0010】
〔2〕そして、前記不燃性圧縮気体が、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記〔1〕に記載の手指消毒剤用エアゾール製品である。
【発明の効果】
【0011】
本件発明によれば、エタノールを含有する消毒剤に関するエアゾール製品について、内包される手指消毒剤に関し、菌の殺菌やウイルス、とりわけCOVID-19のようなエンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルス及びノロウイルス、ポリオウィルス、アデノウィルスなどのエンベロープを有さないノンエンベロープウイルスに対して不活化を行うことができるとともに、消防法における「アルコール類」などの危険物に該当せず、万が一に圧縮気体が漏洩しても引火などしないために、安全に貯蔵及び取扱いを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の手指消毒剤用エアゾール製品における中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明の手指消毒剤用エアゾール製品に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0014】
外装容器1は、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品において、使用者から視認することができる最も外側に位置し、内部に袋体2を収容する部材である。外装容器1の内部に不燃性圧縮気体を充填することから、アルミ合金などの金属、所定厚みを有する合成樹脂など所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、外装容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、
図1に示すように、マウンティングカップ3によって封止される。
【0015】
袋体2は、外装容器1に収容され、後述する手指消毒剤Lを内包し、可撓性を有する部材である。袋体2が外装容器1に収容されていることにより、袋体2に内包されている手指消毒剤Lが直接外装容器1に当接しないために外装容器1の腐食を防止することができ、また、外装容器1と袋体2の間の空間に充填されている不燃性圧縮気体によって常に押圧されているため、袋体2に内包されている手指消毒剤Lを最後まで使いきることができ、当該エアゾール製品を
図1の状態から上下逆さまにして、アクチュエータ7が下になるようにして噴霧しても手指消毒剤Lが円滑に排出されるという作用効果を奏する。また、袋体2に内包されている手指消毒剤Lが酸性であり、常圧より高い圧力で保存されていることから、袋体2の劣化や破損が懸念されるところ、袋体2としては、少なくとも手指消毒剤Lと当接する面において、加水分解されないようにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂であることが好ましく、ポリエチレンの中でも比重が0.92~0.96であって、JIS K7191-3などで定められる荷重たわみ温度が130℃以下である高密度ポリエチレンであることがより好ましい。また、上記のポリオレフィン、フッ素樹脂は、共重合体として形成されてもよいのはもちろんである。そして、不燃性圧縮気体が袋体2に流入しないように、或いは、内包されている手指消毒剤Lが袋体2から空間Sへ漏洩しないように、上述したポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやフッ素樹脂の外側に、他の合成樹脂やアルミなどの金属、二酸化ケイ素、三酸化アルミなどの酸化金属などを積層して2層以上の複数層のフィルムとしてもよい。
【0016】
次に、袋体2に内包される手指消毒剤Lについて説明する。
【0017】
本発明における炭素数1~3の低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの分子中における炭素数が1個から3個のアルコールである。当該低級アルコールを用いることにより、ウイルスのエンベロープや細菌の細胞膜の破壊並びに酵素等のたんぱく質の凝固によりウイルスや細菌を死滅させて、それらウイルスや細菌による病気など人体への害を予防することができる。
【0018】
炭素数1~3の低級アルコールの手指消毒剤Lにおける含有割合としては、25w/v%以上60w/v%未満であることが好ましく、そして40~55w/v%であることがより好ましい。炭素数1~3の低級アルコールの含有割合がこの範囲であると、消防法における危険物に該当しないようにすることができ、酸との組み合わせによりウイルスに対する効果が十分に発揮することができる。なお、濃度の表記については、100mLあたりのグラム数(g)の割合である。
【0019】
本発明における酸は、エタノールや第四級アンモニウム塩等と併存することにより核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩等の細胞への浸透を促進させ、エンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させる成分である。
【0020】
酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0021】
酸の含有割合は、手指消毒剤Lのうち、0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができる。
【0022】
手指消毒剤Lに配合される前記酸の塩は、上述した有機酸や無機酸に対応する塩である。具体的には、例えば、酸としてクエン酸を用いているときはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどの塩であり、リンゴ酸を用いているときはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウムなどの塩であり、リン酸を用いているときはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどの塩である。このように、前記酸に対応する塩が含まれることによって、手指消毒剤Lが所定範囲のpHとなるとともに、手指消毒剤Lにおいて炭素数1~3の低級アルコールや水が長く使用して少々揮発したとしても、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができる。
【0023】
前記酸の塩の含有割合は、手指消毒剤Lのうち0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。前記酸の塩の含有割合がこの範囲にあると、手指消毒剤LのpHを所定の範囲に保つことができる。
【0024】
手指消毒剤Lに配合することができる第四級アンモニウム塩は、一般的に化学式N+RX-(R:アルキル基,X-:塩化物イオンなど)で表されるように、第四級アンモニウムイオンとカウンターアニオンとからなる化合物である。第四級アンモニウム塩としては、具体的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサドデシルトリメチリアンモニウム、臭化テトラアンモニウムなどが好ましい。これらの第四級アンモニウム塩は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。このように、第四級アンモニウム塩が含まれることによって、コロナウイルス(とりわけCOVID-19)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのエンベロープを有するRNAウイルスやヘルペスウイルス、天然痘ウイルスなどのエンベロープを有するDNAウイルスに対して、エンベロープが破壊されやすくなり、より不活化することができる。
【0025】
第四級アンモニウム塩の含有割合は、手指消毒剤Lのうち、0.01w/v%~2.0w/v%が好ましく、0.03w/v%~1.0w/v%がさらに好ましい。第四級アンモニウム塩の含有割合がこの範囲にあると、エンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルスが、より不活化されやすくなる。
【0026】
本発明の水は、炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸の塩、第四級アンモニウム塩を均一な溶液とするための溶媒である。具体的に、水としては、日本薬局方規格の水が好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などが好ましい。そして、水の配合割合は、本発明に用いられる炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸の塩、第四級アンモニウム塩などを除く残余であり、30w/v%~75w/v%であることが好ましく、32w/v%~65w/v%であることが好ましい。
【0027】
手指消毒剤Lには、上記した成分の他に、必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビットなどの多価アルコールやヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類又はその塩である保湿剤、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤、香料、色素などを配合することもできる。例えば、保湿剤を添加することでさらに肌荒れを防止することができる。
【0028】
上述した成分が配合されている手指消毒剤Lは、酸性・アルカリ性の程度を示す液性として、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが好ましく、3.0~4.0であることがさらに好ましい。手指消毒剤LのpHがこの範囲であると、菌の殺菌や各種ウイルスの不活化に効果を奏する。
【0029】
本発明の不燃性圧縮気体は、外装容器1と袋体2の間の空間Sに充填され、通常使用される10~30℃程度の常温において、火気により引火及び燃焼が起きず、大気圧より高い圧力の状態である気体である。不燃性圧縮気体が袋体2を押圧することで袋体2に内包されている手指消毒剤Lを外部へ排出することができる。具体的に、不燃性圧縮気体は、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。不燃性圧縮気体がこれらの気体であると、引火等しないために本発明の手指消毒剤用エアゾール製品を安全に貯蔵及び使用することができる。
【0030】
また、外装容器1と袋体2の間の空間Sに充填されている不燃性圧縮気体の圧力としては、35℃において0.10MPa以上1.0MPa未満であることが好ましく、0.2MPa以上0.5MPa以下であることが好ましい。不燃性圧縮気体の圧力がこの範囲であると、袋体2に内包された手指消毒剤Lが円滑に排出される。
【0031】
当該エアゾール製品は、
図1に示すように、外装容器1、袋体2、マウンティングカップ3、ステム4、弾性バネ5、チューブ6、アクチュエータ7などから構成されている。外装容器1に収容されている袋体2は、外装容器1と袋体2の間の空間Sに充填されている不燃性圧縮気体に常に押圧されている。このため、アクチュエータ7が押下されると、弾性バネ5が付勢力に抗ってステム4も押下されることにより、ステム孔41が袋体2の内部と連通し、袋体2を介して不燃性圧縮気体に押圧されている手指消毒剤Lが、チューブ6、ステム4を通じてアクチュエータ7の噴射口71から外部に排出される。
【実施例】
【0032】
以下、本件発明における手指消毒剤Lについて具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、炭素数1~3の低級アルコールとしてエタノールを50.7g、酸としてリン酸を0.4g、前記酸に対応する塩としてリン酸三ナトリウムを0.35g、第四級アンモニウム塩として濃ベンザルコニウム塩化物液50を0.1g(塩化ベンザルコニウムとして0.05g)、保湿剤としてグリセリンを0.2g、そして、残余として精製水を加え、攪拌し、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0034】
<実施例2~4>
実施例2~4は、炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸に対応する塩、第四級アンモニウム塩の種類と配合量について、それぞれ表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0035】
<比較例1>
比較例1は、炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸に対応する塩、第四級アンモニウム塩の種類と配合量について、表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0036】
<参考例1>
また、実施例1から4の手指消毒剤が、消防法上の危険物に該当するか否かを判断するために、基準となるエタノールと水のみからなるエタノール濃度が60w/w%である水溶液を、実施例1と同様にして、合計100g作成した。
【0037】
このようにして得られた手指消毒剤は、以下の評価方法において確認された。
【0038】
〔pH〕
pHについて、pH7(中性リン酸塩)標準液(pH 6.86 at 25℃)をゼロ点とし、pH4(フタル酸塩)標準液(pH 4.01 at 25℃)またはpH9(ホウ酸塩)標準液(pH 9.18 at 25℃)で校正したpH測定器(株式会社堀場製作所製、商品名F-52)を用いて、25℃に補正した値として測定した。
【0039】
〔引火点及び燃焼点〕
消防法上、アルコールを含有する物品が「アルコール類」に該当せず「非危険物」に該当するためには、アルコールを含有する物品において、最終的に、(1)可燃性液体量が60w/v%未満であること、(2)引火点が60w/w%エタノール水溶液の引火点より高いこと、(3)燃焼点が60w/w%エタノール水溶液の燃焼点より高いことの3つの要件をすべて充足する必要がある。このため、引火点について、JIS K2265-1に準拠してタグ密閉法により測定した。そして、燃焼点について、JIS K2265-4に準拠してクリーブランド開放法により測定した。実施例1から4のいずれの引火点も、60w/w%エタノール水溶液の引火点よりも高かった。そして、同様に、実施例1から4のいずれの燃焼点も、60w/w%エタノール水溶液の燃焼点よりも高かった。この結果を表1に示す。なお、比較例1においては、ウイルス抑制効果が得られないことから、引火点及び燃焼点を測定しなかった。
【0040】
〔ウイルス抑制効果〕
ウイルス抑制効果について、以下の方法により評価した。すなわち、まず、それぞれ処方した手指消毒剤とウイルス液を直接混合し、所定時間反応を停止した後、細胞に感染させて培養し、TCID50法にてウイルス感染価を測定した。薬効は細胞の細胞変性効果を指標とし、50%組織培養感染量(TCID50)から、ウイルス感染価(log TCID50/mL)を算出した。作用前のウイルス感染価と作用後のウイルス感染価の差を算出し、ウイルス感染価の減少の値とした。このように得られたウイルス感染価の減少が4.0以上のものを◎と評価し、ウイルス感染価の減少が2.0以上4.0未満のものを○と評価し、ウイルス感染価の減少が2.0未満のものを×と評価した。これらのうち、◎及び○を良好、×を不良と判断した。また、当該試験において、エンベロープ型ウイルスとしてインフルエンザウイルスと、ノンエンベロープ型ウイルスとしてネコカリシウイルスの2種類のウイルス液を用いて、それぞれ行った。なお、手指消毒剤とウイルス液を作用させる時間は、実施例1から3については180秒とし、実施例4については30秒とした。
【0041】
これらの実施例1~4、比較例1の組成及び試験結果を表1にまとめて示す。
【0042】
【0043】
表1に示すように、実施例1~4の手指消毒剤は、それぞれ所定量の炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸の塩、水が配合され、pH3.2~3.5となることによって、エンベロープ型ウイルス、ノンエンベロープ型ウイルスともに不活化してその増殖を大きく抑制することができるとともに、引火点及び燃焼点に関して、60w/w%エタノール水溶液の引火点及び燃焼点より高いことから、消防法における非危険物に該当することが分かった。また、エアゾール製品における圧縮気体として、表1には明記されていないが、窒素を使用することから、万が一にエアゾール製品から窒素が漏れたとしても引火など火災を引き起こす原因とならない。これらのことから、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品は、安全に貯蔵することができ、取り扱えるができることが分かった。
【符号の説明】
【0044】
1・・・外装容器
2・・・袋体
3・・・マウンティングカップ
4・・・ステム
41・・・ステム孔
5・・・弾性バネ
6・・・チューブ
7・・・アクチュエータ
71・・・噴射口
S・・・空間
L・・・手指消毒剤