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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】溶湯の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/04 20060101AFI20240531BHJP
   C21C 1/10 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C21C7/04 R
C21C1/10 103
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020106995
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001661
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000222875
【氏名又は名称】東洋電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】又川 隆義
(72)【発明者】
【氏名】中山 和俊
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181564(JP,A)
【文献】特開昭63-007321(JP,A)
【文献】特開昭58-200115(JP,A)
【文献】特開平07-316630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/04
C21C 1/10
B22D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋内の溶湯に添加される第一線材及び前記第一線材の後端部に接続部材を介して前 端部が連結されている第二線材を有する線材と、
前記線材を送線する送線装置と、
前記線材が送線される経路に位置し、前記接続部材に備えられた磁石を検出する磁気検 出装置を備えることを特徴とする溶湯の製造装置。
【請求項2】
前記磁石が、前記接続部材に内設されており、前記第一線材と前記第二線材との間に 位置していること特徴とする請求項1に記載の溶湯の製造装置。
【請求項3】
前記磁石が、磁性を有さない被覆材によって被覆されていることを特徴とする請求項 1又は請求項2に記載の溶湯の製造装置。
【請求項4】
前記磁石は、S極とN極を結ぶ方向が前記線材の送線方向に沿うように、前記接続部 材に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶 湯の製造装置。
【請求項5】
前記第一線材及び前記第二線材が筒状部材の内部に無機材料を充填した部材であり、 前記第一線材の後端部及び前記第二線材の先端部が、磁性を有さない接着剤によって封 じられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の溶湯の製 造装置。
【請求項6】
前記磁石が、前記接続部材の外周面に設けられていることを特徴とする請求項1に記 載の溶湯の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯の製造装置に関し、特に、金属の溶湯に線材を投入することによって、所望の処理、例えば溶湯内で黒鉛を球状化する処理を行う溶湯の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の溶湯に線材を投入することによって、所望の処理を行う溶湯の製造装置において、コイル状の線材束を送線装置にセットし、線材束から線材を繰り出し、予め決められた長さの線材を溶湯に投入する溶湯の製造装置が知られている。そして、送線装置にセットされた一つの線材束から全ての線材が繰り出された後に、その線材束の終端に新たな線材束の始端を接続することで、複数の線材束を連続して投入することで、作業者の業務を軽減し、ひいては生産効率を向上することができる溶湯の製造装置も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1において、金属からなる線材を溶湯へと送る送線装置と、2つの線材束の繋目となる接続部材を検出する検出装置などを備える製造装置が開示されており、連続的に複数の線材束を溶湯に投入することができ、さらに、含有される種々金属の割合が多少異なる複数の線材束ごとに溶湯への投入量を算出し、溶湯ごとに添加された種々金属の量を把握できるシステムも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-181564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の溶湯の製造装置においては、異なる線材を接続する接続部材を検出するために、静電容量センサ、画像センサ、移置変化センサなど各種センサが用いられているが、分速数十メートルにもなる線材の送線速度からすると数十から数百ミリ秒でその接続部材を検出する必要があるところ、特許文献1に記載の溶湯の製造装置では十分に接続部材を検出することが困難であった。
【0006】
このため、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、溶湯に連続して添加される複数の束から繰り出される線材について、それら線材を接続する接続部材を確実に検出することができる溶湯の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕本発明は、取鍋10内の溶湯Fに添加される第一線材W1及び前記第一線材W 1の後端部に接続部材Cを介して前端部が連結されている第二線材W2を有する線材W と、前記線材Wを送線する送線装置1と、前記線材Wが送線される経路Qに位置し、前 記接続部材Cに備えられた磁石C2を検出する磁気検出装置2を備えることを特徴とす る溶湯の製造装置である。
【0008】
〔2〕そして、前記磁石C2が、前記接続部材Cに内設されており、前記第一線材W 1と前記第二線材W2との間に位置していることを特徴とする前記〔1〕に記載の溶湯 の製造装置である。
【0009】
〔3〕そして、前記磁石C2が、磁性を有さない被覆材C3によって被覆されている ことを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の溶湯の製造装置である。
【0010】
〔4〕そして、磁石である前記磁石C2は、S極とN極を結ぶ方向が前記線材Wの送 線方向X1に沿って、前記接続部材Cに設けられていることを特徴とする前記〔1〕か ら前記〔3〕のいずれか1項に記載の溶湯の製造装置である。
【0011】
〔5〕そして、前記第一線材W1及び前記第二線材W2が筒状部材WCの内部に無機材料WIを充填した部材であり、前記第一線材W1の後端部及び前記第二線材W2の先端部が、磁性を有さない接着剤WAによって封じられていることを特徴とする前記〔1〕から前記〔3〕のいずれか1項に記載の溶湯の製造装置である。
【0012】
〔6〕そして、前記磁石C2が、前記接続部材Cの外周面に設けられていることを特徴 とする前記〔1〕に記載の溶湯の製造装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶湯の製造装置によれば、溶湯に連続して添加される異なる線材について、それら線材を接続する接続部材を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る溶湯の製造装置を示す概要図である。
図2】(a)本発明の第一実施形態に係る接続部材に線材を取り付ける途中状態を示す断面図である。(b)本発明の第一実施形態に係る接続部材に線材を取り付けた状態を示す断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る溶湯の製造装置における制御系統を示すブロック図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る制御装置によって実行される制御処理の前半部分を示すフローチャートである。
図5】本発明の第一実施形態に係る制御装置によって実行される制御処理の後半部分を示すフローチャートである。
図6】(a)本発明の第二実施形態に係る接続部材に線材を取り付けた状態を示す外観図である。(b)本発明の第二実施形態に係る接続部材に線材を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る溶湯の製造装置に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。
【0016】
〔第一実施形態〕
図1に示すように、実施形態に係る溶湯の製造装置は、取鍋10に収容された金属の溶湯Fに線材Wを投入することによって、取鍋10に収容された溶湯Fを一単位として、複数単位の溶湯Fに順次所望の処理を行う。所望の処理は、例えば溶湯F内で黒鉛を球状化するための処理などである。また、線材Wは、所望の処理に対応する成分、例えば黒鉛を球状化するための球状化剤を含有する。
【0017】
そして、線材Wは、主に溶融鋳鉄などの溶湯Fにおける成分調整のために溶湯Fに投入される。例えば、線材Wは、溶湯Fの品質を改善するために溶湯に投入される。溶湯Fの品質を改善する目的、つまり改質目的には、例えば、溶湯から作製される製品における機械的物性の向上がある。しかしながら、改質目的には様々なものがあり、具体的な改質目的に応じて、線材Wの成分が決定される。
【0018】
具体的に、線材Wの成分として、鉄鋼の脱酸のためにカルシウム及びシリコンを含有させることができる。また、鉄鋼の脱硫のためにカルシウム及びマグネシウムを含有させることができる。そして、溶鋼成分を安定させるために、硫黄を含有させることができる。溶鉱成分の微調整のために、炭素を含有させることができる。さらに、鋳鉄の脱硫又は黒鉛球状化のために、マグネシウム、シリコン、鉄を含有させることができる。そして、線材Wとしては、これらの無機材料WIのみからなるソリッドワイヤーを用いることができるが、これらの無機材料WIが薄い鋼板などで緊密に被覆されることにより、筒状部材WCにこれらの無機材料WIが充填された状態のコアードワイヤーであることが好ましい。線材Wは、目的に応じて、1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0019】
さらに、第一線材W1及び第二線材W2が上述したコアードワイヤーであるときに、第一線材W1の後端部及び第二線材W2の先端部が、磁性を有さない接着剤WAによって封じられていることが好ましい。接着剤WAとしては、具体的に、シリコン系材料、ポリウレタン系材料、ポリアクリル酸などの樹脂であることが好ましい。磁性体C2に磁性を有する部材が直接付着することで磁性体C2による磁界が不安定となり磁気検出装置2にて検出されにくくなるところ、接着剤WAによって、コアードワイヤーに充填されている無機材料WIに磁性を有する部材が含まれていたとしても、第一線材W1及び第二線材W2から無機材料WIが漏洩しないので、磁性体C2の磁力が弱まらないため、磁気検出装置2における接続部材Cの検出精度の低下を防ぐことができとともに、接続部本体C1及び磁性体C2と密着して第一線材W1及び第二線材W2を接続部材C内に固定することができる。なお、接続部材Cと、第一線材W1の後端部及び第二線材W2の前端部を固定するために、磁性体C2を備える接続部材本体C1の内部に第一線材W1の後端部及び第二線材W2の前端部を挿入してからさらに物理的に圧着するなどして補強することができることはもちろんである。
【0020】
図1に示すように、実施形態に係る溶湯の製造装置は、送線装置1と、検出装置2と、制御装置3とを備える。送線装置1は、取鍋10まで線材Wを順に送る。線材Wは、各々独立した第一線材W1、第二線材W2を、接続部材Cを介して予め連結されて形成されており、これにより実質的に1本の線状の部材として送線される。具体的には、接続部材Cは、送線方向X1に対して第一線材W1の末端である後端部と、送線方向X1に対して第二線材W2の先端である前端部を連結している。図1に示すように、第一線材W1及び第二線材W2は、それぞれ第一線材束P1及び第二線材束P2として、コイル状に巻回されて形成されている。なお、本実施形態では、線材Wは、簡単のために第一線材W1、第二線材W2の二つとして説明しているが、他の実施形態において、第三線材や第四線材など3つ以上の線材をそれぞれの端部を接続部材Cによって接続して使用することもできる。
【0021】
接続部材Cは、上述したように、第一線W1と第二線材W2の端部同士を互いに連結し、磁性体を備える部材である。具体的には、図2(a)及び図2(b)に示すように、接続部材Cは、中空の接続部材本体C1の内側に、磁石である磁性体C2が設けられている。接続部材Cが磁性体C2を備えていることにより、磁性体C2が通過することでその周囲の磁場が変動するので磁気検出装置2によって高い精度で接続部材Cを検出することができる。接続部材本体C1の材質は、金属、金属酸化物、有機化合物など磁性の有無を問わず種々の材料を用いることができる。
【0022】
そして、接続部材Cに備えられる磁性体C2は、強磁性体など磁場中で磁化する部材であり、具体的には、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト、ネオジムなどを含有している。磁性体C2を、本実施形態のように、磁石として固体状にて使用することができることはもちろんであるが、ゴムなどの弾性又は粘性を有する材料を複合して柔軟性のあるシート状やゲル状、あるいは液状の材料と複合して磁性流体といった液状にて使用することもできる。また、図2(a)、図2(b)に示すように、磁石である磁性体C2は、S極とN極を結ぶ方向が線材Wの送線方向X1に沿うように、接続部材Cに設けられていることが好ましい。磁石である磁性体C2の両磁極を送線方向X1に沿うように配置すると、例えばS極とN極を結ぶ方向が線材Wの送線方向X1と垂直になるように設けたときよりも、磁気検出装置2における接続部材Cの検出精度を向上させられるので、線材Wの送線速度をより上げることができ、所望の処理を迅速に行うことができる。
【0023】
また、磁性体C2は、磁性を有さない被覆材C3によって被覆されていることが好ましい。被覆材C3としては、具体的に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂など有機化合物や、シリカ、アルミナなどの金属酸化物、SUS304のオーステナイト系のステンレスなどであることが好ましい。磁性体C2に磁性を有する部材が直接付着することで磁性体C2による磁界が不安定となり磁気検出装置2にて検出されにくくなるところ、磁性体C2が磁性を有さない被覆材C3によって被覆されていることにより、作業中に鉄粉などの磁性を有する部材が付着しても間接的となるので磁性体C2の磁力が低下しにくいため、磁気検出装置2における接続部材Cの検出精度が低下することを防ぐことができる。
【0024】
送線装置1は、2つの駆動ローラ11と、2つの従動ローラ12とを有する。2つの駆動ローラ11は、図示しない電動機によって駆動される。電動機は、制御装置3によって制御される。実施形態において、電動機として、サーボモータ又はギアードモータを使用することができる。
【0025】
実施形態においては、2つの従動ローラ12は、各々駆動ローラ11と対を成しており、各々駆動ローラ11に向かって付勢され、各々駆動ローラ11との間で線材Wを挟持する。駆動ローラ11と従動ローラ12とが、線材Wを挟持した状態で駆動ローラ11が回転することによって、線材Wが送線方向X1に送られる。また、2つの従動ローラ12のうち、少なくとも一方の従動ローラ12の回転軸には図示しないロータリエンコーダが接続されている。当該ロータリエンコーダは、少なくとも一方の従動ローラ12の回転速度を示す信号を出力する。制御装置3は、当該ロータリエンコーダの出力信号に基づいて、予め決められた速度で線材Wが送られるように、電動機を制御する。
【0026】
送線装置1によって送られるとき、線材Wは、第一線材束P1及び第二線材束P2から引き出され、複数のガイドリング23の内側を通過し、さらに、送線装置1に接続された漏斗状の部材を整えられながら通過することによって、送線装置1まで案内される。送線装置1から送り出された線材Wは、ガイドパイプ24によって取鍋10に案内され、溶湯Fに投入される。
【0027】
磁気検出装置2は、線材Wが送線される経路である送線経路Qのうちのいずれかに位置し、接続部材Cに備えられた磁性体C2を検出する装置である。具体的に、磁気検出装置2は、例えば、螺旋状に巻かれた導電性コイルを備え、その中又はその近傍を接続部材Cに備えられた磁性体C2が通過すると、そのコイルの磁束密度が増加し、そのコイルに誘導電流が発生することから、接続部材Cの通過を検出して電気的な検出信号D1として送ることができる。磁気検出装置2は、本実施形態において、線材Wに付いた曲がりや撚りなどの癖の影響により検出精度が低下しないように、それらの癖の影響を最も受けにくい線材Wが送線装置1に挿入される直前に位置しているが、他の実施形態において、線材Wが送線経路Qのいずれかに位置すればよく、適宜他のガイドパイプの中を案内させるなどして、第一線材束P1や第二線材束P2の近傍や、ガイドリング23の近傍に位置してもよい。なお、磁気検出装置2としては、例示した導電性コイルを備えるものだけでなく、接続部材Cに備えられた磁性体C2による磁場の変化を電気的な信号として検出することができれば、リードスイッチ、ホール素子、半導体磁気抵抗素子などを使用することができる。また、接続部材Cに備えられた磁性体C2の通過によって磁気検出装置2にて生じた電気的な検出信号D1を増幅するために、磁気検出装置2と制御装置3との間に増幅器21を備えていることが好ましい。
【0028】
制御装置3は、図3に示すように、データ生成部31と、記憶装置4とを含む。データ生成部31は、検出信号D1に基づいて、関連データD2を生成する。関連データD2は、複数単位の溶湯Fと、第一線材W1及び第二線材W2を関連付ける情報を示す。制御装置3は、記憶装置4に予め記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、データ生成部31として機能し、後述の制御処理を実行する。記憶装置4は、保存部32と、パラメータ保持部33とを含む。保存部32は、関連データD2を保存する。
【0029】
制御装置3は、中央処理装置を含む。記憶装置4は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は揮発性メモリを含み、補助記憶装置は不揮発性メモリを含む。実施形態においては、保存部32は、補助記憶装置における不揮発性メモリ内の特定の記憶領域を含んでいる。当該特定の記憶領域に関連データD2を格納するように、制御装置3が補助記憶装置を制御することによって、保存部32は、関連データD2を保存する。
【0030】
パラメータ保持部33は、各種データを保持する。パラメータ保持部33が保持するデータには、「重量データ」、「温度データ」、「添加率データ」、「歩留りデータ」、「成分データ」がある。重量データ、温度データは、取鍋10内の溶湯Fの重量、温度を示す。添加率データは、所望の処理に対応する成分、例えば球状化剤を溶湯Fに添加する目標量を示す。歩留りデータは、目標とする歩留りを示す。成分データは、所望の処理に対応する成分、例えば球状化剤の第一線材W1及び第二線材W2における成分量を示す。
【0031】
次に、図4図5を参照して、溶湯Fに所望の処理を行う際に、制御装置3によって実行される制御処理を説明する。図4図5は、本発明の第一実施形態に係る制御装置3によって実行される制御処理を示すフローチャートである。なお、図4図5に示される制御処理において、第1長さL1、第2長さLp、第3長さLr、第1残長Lu、第2残長Le、線材ID(x)は、記憶装置4の特定領域に記憶される変数である。制御装置3は、第1長さL1、第2長さLp、第3長さLr、第1残長Lu、第2残長Le、線材ID(x)に制御処理における算出結果を代入し、代入値を必要に応じて保存部32に保存するように制御を行う。
【0032】
図4に示すように、ステップS1においては、第1長さL1が算出される。第1長さL1は、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行うために投入すべき線材Wの長さを示す。制御装置3は、パラメータ保持部33に保持されている重量データ、添加率データ、成分データに基づいて、第1長さL1を算出する。
【0033】
ステップS2においては、線材Wが送られる。制御装置3は、予め決められた速度で線材Wを送るように、送線装置1を制御する。なお、理解を容易にするために、以下、線材Wが送られ始めたときに、同時に溶湯Fに線材Wが投入され始めるものとして説明する。
【0034】
ステップS3においては、接続部材Cが磁気検出装置2を通ったか否かが判定される。制御装置3は、図1図4に示すように、磁気検出装置2から検出信号D1が入力されたときに、接続部材Cが磁気検出装置2を通ったと判定する。接続部材Cが磁気検出装置2を通った(Yes)と判定されれば、処理はステップS4に進み、接続部材Cが磁気検出装置2を通っていない(No)と判定されれば、処理はステップS5に進む。
【0035】
ステップS4においては、第2長さLpが算出される。第2長さLpは、送線装置1によって線材Wが送られ始めたときから、接続部材Cが磁気検出装置2を通ったとステップS3において判定されたときまでに、線材Wが送られた長さを示す。制御装置3は、送線装置1におけるロータリエンコーダの出力信号に基づいて、第2長さLpを算出する。なお、当該単位の溶湯Fに対して一度でも第2長さLpが算出されれば、次回以降は、当該単位の溶湯Fに対してステップS4における算出処理はスキップされる。
【0036】
ステップS5においては、第1長さL1だけ線材Wが送られたか否かが判定される。制御装置3は、上記したロータリエンコーダの出力信号に基づいて、送線装置1によって線材Wが送られ始めたときから、実際に線材Wが送られた第3長さLrを算出し、第3長さLrが第1長さL1に達しているかを判定する。第3長さLrが第1長さL1に達している(Yes)と判定されれば、処理は、図5のステップS6に進む。第3長さLrが第1長さLrに達していない(No)と判定されれば、処理はステップS2に戻り、第3長さLrが第1長さL1に達していると判定されるまで、送線装置1が線材Wを送る動作が継続される。
【0037】
図5のステップS6においては、第2長さLpが値「0」より大きいか否かが判定される。制御装置3は、第2長さLpと値「0」とを比較し、第2長さLpが値「0」より大きいかを判定する。第2長さLpが値「0」より大きい(Yes)と判定されれば、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときに接続部材Cが磁気検出装置2を通過したものとして、処理は、ステップS7に進む。長さLpが値「0」より大きくない(No)と判定されれば、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときに接続部材Cが磁気検出装置2を通過していないものとして、処理はステップS8に進む。
【0038】
ステップS7においては、第1線材W1の第1残長Luに値「0」が代入され、第2線材W2の第2残長Leに下記式(1)による算出値が代入される。当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときに接続部材Cが磁気検出装置2を通過したことによって、第1線材W1の全てが第一線材束P1から繰り出されたものとして、制御装置3は、第1残長Luに値「0」を代入する。また、第3長さLrのうちの第2長さLpは、第1線材W1が送られた長さであり、第2線材W1が送られた長さは、第3長さLrから長さLpを除いた長さであることから、第2残長Leを下記式(1)により、「初期の第2残長Le」から算出する。「初期の第2残長Le」とは、当該単位の溶湯Fに所望の処理を実行する前の初期の第2残長Leである。
Le=「初期の第2残長Le」-(Lr-Lp) (1)
【0039】
ステップS8においては、第1残長Luに下記式(2)による算出値が代入される。また、第2残長Leは「初期の第2残長Le」のまま維持される。当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときには、接続部材Cが磁気検出装置2を通過していないことによって、制御装置3は、第1残長Luを下記式(2)により、「元の第1残長Lu」から算出する。「元の第1残長Lu」とは、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行う前の第1残長Luである。
Lu=「元の第1残長Lu」-Lr (2)
【0040】
ステップS9においては、関連データD2が生成され、保存される。データ生成部31が関連データD2を生成し、制御装置3が、関連データD2を保存するように、保存部32を制御する。関連データD2は、終了時刻情報D3と、線材ID(x)とを含む。終了時刻情報D3は、当該単位の溶湯Fに対する所望の処理が終了した時刻を示す。線材ID(x)は、複数の線材Wのうち、当該単位の溶湯Fに対する所望の処理において始めに使用された線材を示す。
【0041】
終了時刻情報D3を各鋳物の製造時刻と比較することによって、各鋳物がどの単位の溶湯Fから作製されたかを容易に特定できる。従って、不具合が生じたときに、不具合の原因となった線材Wを終了時刻情報D3と線材ID(x)とから容易に特定できる。
【0042】
なお、上記の例では、線材ID(x)の値は「ID(1)」である。「ID(1)」は、第1線材W1を示す。また、関連データD2には、第1残長Luと第2残長Leとを含ませることもできる。関連データD2に、第1残長Lu、第2残長Leを含ませることによって、当該単位の溶湯Fに対する所望の処理において、第1線材W1と第2線材W2とが投入されたときに、各々が投入された長さを担当者が調査することもできる。
【0043】
ステップS10においては、第2長さLpが値「0」より大きいか否かが再度判定される。制御装置3は、第2長さLpと値「0」とを比較し、第2長さLpが値「0」よりも大きいかを判定する。第2長さLpが値「0」より大きい(Yes)と判定されれば、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときに接続部材Cが磁気検出装置2を通過したものとして、処理は、ステップS11に進む。第2長さLpが値「0」より大きくない(No)と判定されれば、当該単位の溶湯Fに所望の処理を行っているときに接続部材Cが磁気検出装置2を通過していないものとして、ステップS11はスキップし、処理は終了する。
【0044】
ステップS11においては、線材ID(x)の値が第1線材W1を示す「ID(1)」から第2線材W2を示す「ID(2)」に書き換えられる。また、第1残長Luに第2残長Leの値が代入され、第2残長Leに第3線材W3の初期長さが代入される。また、成分データが、第1線材W1の成分データから第2線材W2の成分データに書き換えられる。
【0045】
以上、図1図5を参照して説明したように、第一実施形態によれば、線材Wを構成する第一線材W1及び第二線材W2は、各々独立した第一線材束P1及び第二線材束P2を形成しており、送られる順に、接続部材Cによって端部同士が互いに接続されている。従って、金属の溶湯Fに所望の処理を行うときに、第一線材束P1から全ての第一線材W1が繰り出されても、次の第二線材束P2の第二線材W2を送線装置1に改めてセットする必要がなく、一旦作業が始まれば一の線材束の線材を使い切れば他の線材束の線材を送線装置1にセットするのに必要とされる作業量を低減できる。
【0046】
また、送線装置1によって、線材Wが複数の線材束Pから取鍋10まで順に送られ、磁気検出装置2を接続部材Cが通ったことを示す検出信号D1が出力され、データ生成部31によって、関連データD2が生成され、保存部32によって、関連データD2が保存される。関連データD2は、複数単位の溶湯Fとそれぞれに添加された線材WのIDや量、さらには添加された線材Wに含有されている各種成分の総量とを関連付ける情報を示す。従って、製造された溶湯Fから作製される鋳物に不具合が生じても、不具合の原因となった線材Wを容易に特定でき、さらには原因の究明を行い易くすることができるため、金属の溶湯Fに所望の処理を行うときに、作業者がいちいち製造管理上のデータを作成し、保存する労力を削減することができ、効率化することができる。
【0047】
〔第二実施形態〕
次に、図6を参照して、本発明の第二実施形態を説明する。図6(a)は、本発明の第二実施形態に係る接続部材Cに線材Wを取り付けた状態を示す外観図である。図6(b)は、本発明の第二実施形態に係る接続部材Cに線材Wを取り付けた状態を示す断面図である。第二実施形態は、第一実施形態と第一線材W1及び第二線材W2を繋ぎ合わせる接続部材Cが異なり、他は第一実施形態と共通する。このため、以下、第二実施形態が第一実施形態と相違する点を主に説明する。
【0048】
具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、第二実施形態において、磁性体C2が、接続部材Cの外周面に設けられている点において、第一実施形態と異なる。第二実施形態の接続部材Cは、中空の接続部材本体C1と、その外側である外周面に覆設されている磁石である磁性体C2を備えている。磁性体C2は、弾性部材と複合されてシート状として形成されている。また、磁性体C2は、本実施形態において、接続部材本体C1の外周面全体に覆設されているが、他の実施形態において、接続部材本体C1の外周面の一部に設けられていてもよい。なお、磁石である磁性体C2は、本実施形態において、第一実施形態における磁性を有さない被覆材C3によって被覆されていないが、必要に応じて使用することができる。
【0049】
さらに、第一線材W1の後端部及び第二線材W2の先端部が、磁性を有さない接着剤WAによって封じられていることが好ましい。接着剤WAとしては、具体的に、シリコン系、ポリウレタン系、ポリアクリル酸などの樹脂であることが好ましい。第一線材W1と第二線材W2を互いに当接し、さらに、第一線材W1及び第二線材W2を接続部材C内に固定することができる。なお、第一実施形態と同様に、接続部材Cと、第一線材W1の後端部及び第二線材W2の前端部を固定するために、磁性体C2を備える接続部材本体C1の内部に第一線材W1の後端部及び第二線材W2の前端部を挿入してからさらに物理的に圧着するなどして補強することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
W・・・線材
W1・・・第一線材
W2・・・第二線材
WC・・・筒状部材
WI・・・無機材料
WA・・・粘着剤
C・・・接続部材
C1・・・接続部材本体
C2・・・磁性体
C3・・・被覆材
P1・・・第一線材束
P2・・・第二線材束
Q・・・送線経路
1・・・送線装置
10・・・取鍋
2・・・磁気検出装置
21・・・増幅器
3・・・制御装置
31・・・データ生成部
32・・・保存部
33・・・パラメータ保持部
4・・・記憶装置
D1・・・検出信号
D2・・・関連データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6