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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】船舶の床材用支持脚
(51)【国際特許分類】
   B63B 29/02 20060101AFI20240531BHJP
   B63B 3/48 20060101ALI20240531BHJP
   B63H 21/30 20060101ALI20240531BHJP
   E04F 15/20 20060101ALI20240531BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240531BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20240531BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B63B29/02 Z
B63B3/48
B63H21/30 Z
E04F15/20
F16F15/08 D
E04F15/18 602D
E04B1/82 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020113980
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022022676
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 道雄
(72)【発明者】
【氏名】城本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小出 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】今田 修輔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 拓門
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-137290(JP,A)
【文献】特表2010-519490(JP,A)
【文献】実開昭53-050997(JP,U)
【文献】中国実用新案第205632916(CN,U)
【文献】実開昭60-051240(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/02
B63B 3/48
B63H 21/30
E04F 15/20
F16F 15/08
E04F 15/18
E04B 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の一次甲板と、当該一次甲板から上方に間隔をあけて設けられる居住区用浮き床との間に介在し、前記浮き床を支持する船舶の床材用支持脚において、
金属で構成された所定の厚さを有する金属層が前記浮き床側に設けられ、
前記金属層の下には、加硫ゴムを含み、酸素指数が45%以上の材料からなる防振層が積層され
前記防振層を構成する材料には、クロロプレンゴム100重量部に対して無機系難燃剤が160重量部以上200重量部以下含有されていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶の床材用支持脚において、
前記金属層と前記防振層とは接着剤により接着されていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項3】
請求項1または2に記載の船舶の床材用支持脚において、
前記金属層は、厚みが0.1mm以上5.0mm以下の金属製板材で構成されていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の船舶の床材用支持脚において、
前記防振層は、厚みが10mm以上50mm以下であり、ゴム硬度(タイプAデュロメータ)が40以上80以下であることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1つに記載の船舶の床材用支持脚において、
前記金属層は、金属製板材で構成されており、
前記金属層には、上下方向に貫通する上側孔部が形成され、
前記防振層における前記上側孔部の真下には、当該上側孔部と連通する下側孔部が形成され、
前記上側孔部及び前記下側孔部には上下方向に延びるねじ軸が挿通され、当該ねじ軸は前記金属層に設けられたねじ溝に螺合しており、
前記ねじ軸の上部により前記浮き床を支持するように構成されていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項6】
請求項に記載の船舶の床材用支持脚において、
前記ねじ溝は、前記金属層における前記上側孔部の内周面に設けられていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1つに記載の船舶の床材用支持脚において、
前記防振層の下には、金属で構成された下層が積層されていることを特徴とする船舶の床材用支持脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の床材を支持する支持脚に関し、特に防振ゴムを有する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般の船舶は、騒音源となる主機や発電機が設置されている機関室と、船員が居住する居住区とが壁及び床によって区画された構造となっている。機関室に設置されている主機等は騒音源であり、この騒音源の騒音は、機関室の床や壁から居住区の床や壁に伝わる固体伝播音、及び騒音源から直接発せられる空気伝播音として居住空間に達し、居住性の悪化をもたらす懸念がある。
【0003】
そこで、居住区の騒音を低減するために、例えば特許文献1に開示されているような浮き床構造が採用される場合がある。特許文献1では、床の上にロックウールを設置し、ロックウールの上に鋼板、鋼板の上にデッキコンポジション等の塗り床等が施工された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-105433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、居住区の騒音レベルの低減のみの対策であれば、特許文献1のようにロックウールを床に設置する方法でも特に問題は生じないが、実際の使用環境を考慮すると以下のような問題が生じ得る。
【0006】
すなわち、一般に、ロックウールは、変形を起こす程度の荷重をかけた後、その荷重を除いた場合に形状の復元性がない。このため、長期間の使用によりデッキコンポジションなどの塗り床が沈み込み、当該塗り床の表面にひび割れが発生してくるという問題がある。
【0007】
また、長期間の使用によりロックウールがへたり、床が沈み込むこともあり、こうなると施工当初の振動の減衰性能が低下するという問題もある。
【0008】
一方、一般のアパート、マンション等の集合住宅や戸建住宅では、上室の歩行音などの生活騒音を下室に伝えにくくするために浮き床が使用されることがある。住宅の浮き床では、浮かせた床を支持する方法としてロックウールを使用するケースは極僅かで、積載荷重により床が沈み込んだ場合でも復元性の高いゴム支持脚を用いることが大多数である。
【0009】
そこで、船舶においてもゴム支持脚を使用すれば荷重により床が一時的に沈んでも荷重を除けば復元するため、長期間の使用においても塗り床(デッキコンポジション)の表面にひび割れが発生することもなく、へたらないことで、長期的な使用による振動の減衰性能の低下も低減できると期待される。
【0010】
然しながら、船舶では火災に対する要件が非常に厳しく、船舶内で床構造等に使用可能な材料は、不燃材であるか、船舶特有の火災試験に合格した高い難燃性能を有する材料でなければならない。具体的には、船舶内に使用可能な材料の試験は、SOLAS条約(海上人命安全条約)において参照されているFire Test Procedures Code(FTPコード:火災試験方法コード)により国際的に統一された方法により行われており、その中で床の一次甲板の上に使用される材料は、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験(表面材と一次甲板床張り材の試験)」に合格することが最低の要件となる。この試験は厳しいものであり、住宅等で使用されている一般のゴム支持脚はそのような耐火性能を持っていないので、船舶内では使用することができなかった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、船舶内においても使用可能な高い耐火性を備えるとともに、経年変化が小さく、しかも、騒音低減性能の高い船舶の床材用支持脚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の発明は、船舶の一次甲板と、当該一次甲板から上方に間隔をあけて設けられる居住区用浮き床との間に介在し、前記浮き床を支持する船舶の床材用支持脚において、金属で構成された所定の厚さを有する金属層が前記浮き床側に設けられ、前記金属層の下には、加硫ゴムを含み、酸素指数が45%以上の材料からなる防振層が積層されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、一次甲板と浮き床との間に床材用支持脚が設けられるので、浮き床が床材用支持脚によって一次甲板から浮いた状態で支持される。このとき、一次甲板と浮き床との間には加硫ゴムを含む防振層が介在することになるので、例えば一次甲板側からの騒音が浮き床に伝達され難くなり、居住区内の騒音が低減される。
【0014】
また、浮き床に積載荷重がかかると主に防振層が変形するが、この防振層は加硫ゴムを含むものなので、変形は弾性変形である。よって、積載荷重を除くと防振層の形状が復元するので浮き床が沈み込んだままになり難く、例えばデッキコンポジションが設けられていてもひび割れが起こり難くなる。また、防振層の形状が復元するということは、防振層がへたりにくいということであるので、施工当初の振動の減衰性能を長期間に亘って維持できる。
【0015】
さらに、例えば居住区で火災が起こった場合を想定すると、床材用支持脚の上層が金属層であり、不燃層となっているので、浮き床から伝達された熱によって金属層が燃えることはない。また、この金属層の下にある防振層を構成している材料の酸素指数が45%以上であるので、浮き床から伝達された火災時の熱によって防振層が燃え難くなる。したがって、床材用支持脚は、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験」に合格可能な程度の極めて高い耐火性を有するものになるので、船舶内において問題なく使用できる。防振層を構成している材料の酸素指数は50%以上がより好ましい。また、金属層は、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム等で構成できる。鉄については、防食、耐食性のある亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板(登録商標)を使用するか防錆塗装等をした方が好ましい。
【0016】
また、前記防振層を構成する材料には、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン及びクロロスルホン化ポリエチレンの中から選ばれる1種以上が含有されるとともに、難燃剤が含有されている。
【0017】
この構成によれば、難燃性の高い材料に難燃剤を含有させることで、防振層の耐火性をより一層高めることができる。
【0018】
また、前記防振層を構成する材料には、クロロプレンゴム100重量部に対して無機系難燃剤が160重量部以上200重量部以下含有されている。
【0019】
この構成によれば、無機系難燃剤を160重量部以上にすることで、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験」に合格可能な難燃性を防振層に付与できる。また、無機系難燃剤を200重量部以下にすることで、防振層の硬さを、船舶内の騒音低減効果の高い硬さにすることができる。
【0020】
第2の発明は、前記金属層と前記防振層とは接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、船舶への取付前に金属層と防振層とを予め一体化しておくことができるので、施工性が良好になる。この接着剤は、従来からゴム系材料と金属とを接着する際に使用されているものを用いることができる
【0022】
の発明は、前記金属層は、厚みが0.1mm以上5.0mm以下の金属製板材で構成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、金属層の厚みが0.1mm以上確保されることで、浮き床の熱が防振層に直接的に伝達されにくくなり、防振層が燃え出しにくくなる。また、金属層の厚みを5.0mm以下にすることで、金属製板材の加工性が良好になるとともに、無用に厚くなるのを防止して一次甲板と浮き床との間のスペース効率を高めることができる。金属層の厚みは、2.0mm以上3.5mm以下がより好ましい。
【0024】
の発明は、前記防振層は、厚みが10mm以上50mm以下であり、ゴム硬度(タイプAデュロメータ)が40以上80以下であることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ゴム硬度40以上80以下の防振層の厚みが10mm以上確保されることで、居住区に伝達される振動の減衰性能が十分に得られ、居住区の快適性を高めることができる。また、防振層の厚みが50mm以下であるため、浮き床を歩行したときの沈み込みを感じ難くなり、歩行感が良好になる。さらに、防振層の厚みが50mmを超えると、難燃性が低下するおそれがあるが、防振層の厚みを50mm以下にしておくことで、高い難燃性を維持できる。
【0026】
の発明は、前記金属層は、金属製板材で構成されており、前記金属層には、上下方向に貫通する上側孔部が形成され、前記防振層における前記上側孔部の真下には、当該上側孔部と連通する下側孔部が形成され、前記上側孔部及び前記下側孔部には上下方向に延びるねじ軸が挿通され、当該ねじ軸は前記金属層に設けられたねじ溝に螺合しており、前記ねじ軸の上部により前記浮き床を支持するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、ねじ軸が金属層に設けられたねじ溝に螺合した状態で上側孔部及び下側孔部に挿通されているので、ねじ軸を回転させることによって上下方向に移動させることができる。そして、このねじ軸の上部で浮き床を支持しているので、浮き床のレベル調整を簡単に行うことができる。例えば、船舶の床の傾斜、溶接による床のひずみ、床の凹凸をレベル調整により吸収することができ、水平な床を形成することが可能となる。
【0028】
の発明は、前記ねじ溝は、前記金属層における前記上側孔部の内周面に設けられていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、ねじ軸が螺合するナット等を別途設けることなく、上側孔部の内周面のねじ溝にねじ軸を螺合させることができるので、部品点数の増加を抑制できる。この場合、金属層を構成する板材の厚みを3.0mm以上にして、上側孔部の内周面にねじ切り加工するのが強度的に好ましい。
【0030】
の発明は、前記防振層の下には、金属で構成された下層が積層されていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、下層が金属であるため、下層を一次甲板に溶接によって固定できる。下層は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等で構成することができるが、溶接をする場合、船舶の一次甲板と同質となる鉄製の亜鉛めっき鋼板かガルバリウム鋼板を用いる方が溶接も簡易的に行うことができて好ましい。下層と金属層とは同じ材料で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、上層が不燃性を有する金属層とされ、その金属層の下に酸素指数が45%以上の加硫ゴムからなる防振層を積層したので、船舶内においても使用可能な高い耐火性を備えるとともに、経年変化を小さくすることができ、しかも、騒音低減性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係る船舶の床材用支持脚を備えた床構造の断面図である。
図2】浮き床の一部の平面図である。
図3】床材用支持脚の側面図である。
図4】床材用支持脚の平面図である。
図5】床材用支持脚の底面図である。
図6】積載荷重試験結果を示すグラフである。
図7】固有振動数及び損失係数の測定結果を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態2に係る図3相当図である。
図9】本発明の実施形態2に係る図4相当図である。
図10】本発明の実施形態2に係る図5相当図である。
図11】本発明の実施形態2の変形例に係る図8相当図である。
図12A】本発明の実施形態2の変形例のボルト及び固定板の平面図である。
図12B】本発明の実施形態2の変形例のボルト及び固定板の側面図である。
図13】本発明の実施形態2の変形例に係る図1相当図である。
図14】本発明の実施形態3に係る床材用支持脚の縦断面図である。
図15】本発明の実施形態3の変形例に係る図14相当図である。
図16】本発明の実施形態4に係る床材用支持脚の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
(実施形態1)
(床構造100の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る船舶の床材用支持脚1を備えた床構造100の断面図である。床構造100は、図示しないが船舶に設けられている。船舶には、ディーゼルエンジン等の主機、発電機等が設置される機関室と、船員が居住する居住区とが設けられており、機関室と居住区とは壁及び床によって区画されている。例えば機関室の上に居住区が設けられており、この場合、上記床構造100は機関室と居住区との間に設けられている。床構造100は、居住区と居住区との間に設けてもよい。主機や発電機は、騒音源であり、この騒音源の騒音は、機関室の床や壁から居住区の床や壁に伝わる固体伝播音、及び騒音源から直接発せられる空気伝播音として居住空間に達することがある。
【0036】
床構造100は、水平方向に並ぶ複数の鋼板が組み合わされてなる一次甲板101と、一次甲板101から上方に間隔をあけて設けられる居住区用浮き床102と、一次甲板101及び浮き床102の間に介在し、浮き床102を支持する床材用支持脚1とを備えている。一次甲板101の下面には、補強用のL型アングル103が設けられている。一次甲板101を構成する鋼板の厚みは例えば5mm~20mm程度の範囲で設定されている。一次甲板101を構成する鋼板の厚みが厚くなれば、L型アングル103の大きさが大きくなるとともに、厚みも厚くなる。一次甲板101の構造は特に限定されるものではなく、上述した構造は一例である。浮き床102も水平方向に並ぶ複数の鋼板が組み合わされてなるものであるが、その鋼板は一次甲板101を構成する鋼板の厚みよりも薄い。
【0037】
図2に示すように、浮き床102を構成する1枚の鋼板を複数個の床材用支持脚1で支持することができる。図2に示す例では、1枚の鋼板を4つの床材用支持脚1で支持しているが、床材用支持脚1の数及び位置は任意に設定することができる。例えば1枚の鋼板の4つの角部や縁部にそれぞれ床材用支持脚1を配置して当該鋼板を支持することができる。また、隣合う鋼板を共通の床材用支持脚1で支持することもできる。また、一次甲板101と、浮き床102との間には、図示しないが吸音材等が設けられていてもよい。
【0038】
(床材用支持脚1の構成)
図3図5に示すように、床材用支持脚1は、金属層2と、防振層3と、下層4とを備えている。金属層2は、床材用支持脚1における浮き床102側に設けられており、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム等からなる金属の板材で構成されている。金属層2として、鉄製の板材を用いる場合には、防食、耐食性のある亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板を使用するか、防錆塗装等を使用するのが好ましい。
【0039】
金属層2を構成する板材は、例えば円板とすることができるが、これに限られるものではなく、例えば楕円形、多角形等であってもよい。金属層2は、所定の厚さを有しており、その厚さは、例えば0.1mm以上5.0mm以下に設定することができる。金属層2の厚みが0.1mm以上確保されることで、火災時に浮き床102の熱が防振層3に直接的に伝達されにくくなり、防振層3が燃え出しにくくなるとともに、金属層2に必要な強度を確保できる。また、金属層2の厚みを5.0mm以下にすることで、金属製板材の加工性が良好になるとともに、無用に厚くなるのを防止して一次甲板101と浮き床102との間のスペース効率を高めることができる。金属層2の厚みは、強度、加工性、防振層3の難燃性を考慮すると、1.0mm以上4.0mm以下が好ましく、より好ましいのは、2.0mm以上3.5mm以下である。
【0040】
金属層2の中央部には、上下方向に貫通する上側孔部2aが形成されている。この実施形態では、上側孔部2aはねじ孔で構成されており、従って、金属層2における上側孔部2aの内周面にはねじ溝が設けられている。このねじ溝は、金属層2の上側孔部2aの内周面にねじ切り加工を施すことによって設けることができる。金属層2に形成されているねじ溝には、浮き床102を支持するねじ軸5(図1に示す)が螺合するようになっている。ねじ軸5には浮き床102の荷重がかかることになるので、金属層2のねじ溝が形成された領域を上下方向に広く確保した方がよい。このため、金属層2の厚みを3.0mm以上にするのが強度的に好ましい。
【0041】
ねじ軸5は、浮き床102を支持可能な強度を有しており、その径が例えば3mm以上15mm以下のものを使用することができる。金属層2の上側孔部2aの径はねじ軸5の径に応じて設定すればよく、ねじ軸5を上側孔部2aの内周面のねじ溝に螺合させることで、ねじ軸5を当該上側孔部2aに挿通することが可能になる。ねじ軸5の上端部にはナット6が螺合している。ナット6の上端面は浮き床102を構成する鋼板の下面に当接している。
【0042】
ねじ軸5を金属層2に対して回転させることでねじ軸5の高さを無段階に変化させることができる。このねじ軸5の上部で浮き床102を支持できるので、ねじ軸5を回転させることによって浮き床102のレベル調整を簡単に行うことができる。例えば、船舶の床の傾斜、溶接による床のひずみ、床の凹凸をレベル調整により吸収することができ、水平な浮き床102を形成することが可能となる。
【0043】
ねじ軸5は、床材用支持脚1の一部を構成する部材であってもよいし、床材用支持脚1とは別の部材であってもよい。また、ナット6も、床材用支持脚1の一部を構成する部材であってもよいし、床材用支持脚1とは別の部材であってもよい。ナット6の形状は図示した形状に限られるものではない。また、ナット6は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0044】
防振層3は、金属層2の下に積層されている。防振層3は、加硫ゴムを含む弾性材料からなる層である。防振層3の上端部の形状は金属層2と同様な形状とされており、この実施形態では、金属層2と同径の円形状である。
【0045】
防振層3における上側孔部2aの真下には、当該上側孔部2aと連通する下側孔部3aが形成されている。下側孔部3aは、略円形であり、防振層3を上下方向に貫通している。下側孔部3aの上端開口は防振層3の上面に開口し、下側孔部3aの下端開口は防振層3の下面に開口している。下側孔部3aの上端開口の径は、上側孔部2aの径よりも大きく設定されているが、両者は同径であってもよい。
【0046】
ねじ軸5における金属層2よりも下側の部分が防振層3の下側孔部3aに挿通されている。したがって、下側孔部3aの径は、ねじ軸5の外径よりも大きく設定されていればよい。また、下側孔部3aは、ねじ軸5における金属層2よりも下側の部分を収容する収容部であることから、防振層3の上側にのみ形成されていてもよく、この場合、下側孔部3aは、非貫通孔となる。また、上記レベル調整が不要な場合には、ねじ軸5及びナット6を省略することもできる。この例については後述するが、本実施形態1においてねじ軸5及びナット6を省略する場合、防振層3は中実にすることができる。
【0047】
下側孔部3aの径は、下側へ行くほど大きくなっている。また、防振層3の外径は、下側へ行くほど大きくなっている。これにより、防振層3を金型で成形した場合に、成形後の防振層3の脱型が容易になる。
【0048】
また、防振層3の外形状は略円形である。この防振層3の水平方向の断面積は、防振層3の外径を直径とする円の面積から、下側孔部3aの内径を直径とする円の面積を差し引いた面積になる。この防振層3の水平方向の断面積が当該防振層3の下側へ行くほど大きくなるように、防振層3の外径及び下側孔部3aの内径の変化量が設定されている。
【0049】
尚、図示しないが、防振層3の外形状及び下側孔部3aは円形に限られるものではなく、例えば楕円形、長円形、多角形等であってもよい。
【0050】
防振層3の材料は、加硫ゴムを含んでおり、酸素指数が45%以上の材料を用いることができる。酸素指数は、例えばJIS K6269「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの酸素指数法による燃焼性試験方法」による試験にて得ることができ、防振層3の材料の燃焼性能を示す数値である。酸素指数が高くなればなるほど燃えにくくなる。防振層3を構成している材料の酸素指数は、47%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。酸素指数は高い方が好ましく、上限は特に設けなくてもよいが、床支持材としての防振性を確保した上で例えば60%以下、好ましく65%以下に設定することができる。
【0051】
防振層3の材料の酸素指数を上述した値にする手法は、様々あるが、例えば、難燃性の高いポリマーであるクロロプレンゴム(CR)100重量部に、難燃剤である金属水酸化物を160重量部以上添加する配合を挙げることができる。無機系難燃剤を160重量部以上にすることで、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験」に合格可能な難燃性を防振層3に付与できる。また、金属水酸化物は、200重量部以下にする配合が望ましい。金属水酸化物を200重量部以下にすることで、防振層3の硬さを、船舶内の騒音低減効果の高い硬さにすることができる。金属水酸化物は、190重量部以下にするのが好ましく、180重量部以下にするのがより好ましい。難燃性及び騒音低減効果の試験結果については後述する。
【0052】
防振層3の材料に含まれるポリマーは、上記クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等からなる群のうち、任意の1種のポリマー、または任意の2種を混合したポリマーとすることができる。クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等は難燃性が高く、防振層3の難燃性を高める上で好適である。このポリマーは防振層3の主要なポリマーであることから、主ポリマーと呼ぶことができる。
【0053】
また、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)等からなる群のうち、任意の1種のポリマー、または任意の2種を混合したポリマーを添加ポリマーとし、この添加ポリマーを防振層3の材料(上記主ポリマー)に添加することもできる。上記添加ポリマーを添加する場合は、添加ポリマーを添加しない場合に比べて、難燃剤の添加量を増やすことで防振層3の難燃性を高めることができる。また、添加ポリマーの添加量は、主ポリマーの3割以下にするのが好ましい。
【0054】
難燃剤の種類は、特に限定されるものではないが、含有する成分によりハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等に分類することができ、これらからなる群のうち、任意の1種の難燃剤、または任意の2種以上を混合した難燃剤を使用することができる。無機系難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0055】
金属層2と防振層3とは接着剤により接着されている。金属層2における防振層3と接着させる面(接着面)に予め接着剤を塗布しておいて、防振層3を構成するゴムを加硫する時に金属層2と同時に接着する方法と、防振層3を構成するゴムを加硫成型した後に接着剤により貼り合わせる方法とがあり、いずれの方法を用いて接着してもよい。接着剤は従来から周知のものを用いることができる。ゴムを加硫する時に金属層と同時に接着可能な接着剤としては、例えば、ロード・ジャパン・インクの「CHEMLOK」を用いることができる。
【0056】
防振層3の厚みは、10mm以上50mm以下の範囲で設定することができるが、防振性能と耐火性能を満たすことができれば、上記範囲外であってもよい。また、防振層3の硬さは、ゴム硬度(タイプAデュロメータ)で40以上80以下の範囲で設定することができる。船舶の火災試験の要求基準を満たすためには、防振層3の厚みが30mm以下、かつ、表層に金属層2を積層する条件下で、酸素指数45%以上の難燃性を有しているのが好ましい場合がある。また、防振層3の厚みが30mm以下、かつ、表層に金属層2を積層する条件下で、酸素指数50%以上の難燃性を有しているのがより好ましい。また、防振層3の厚みが厚くなる程、より高い酸素指数を持つ配合が必要となるので、防振層3の厚みが薄い場合には厚い場合に比べて難燃剤の配合量を少なくすることが可能になる。難燃剤の配合量を少なくすることで、防振性、振動の減衰性能を高めることができる。
【0057】
一例として、ゴム硬度40以上80以下の防振層3で、その防振層3の厚みが10mm以上確保されていることで、一般的な船舶の機関室から居住区に伝達される振動の減衰性能が十分に得られ、居住区の快適性を高めることができる。また、ゴム硬度40以上80以下の防振層3の厚みを50mm以下に設定することで、浮き床102を歩行したときの沈み込みを感じ難くなり、歩行感が良好になる。この歩行感は、ゴム硬度が低くなると低下する傾向にあるが、防振層3の厚みが薄くなれば良好になるので、ゴム硬度と厚みとの相関関係に基づいて決定することができる。さらに、防振層3の厚みが50mmを超えると、上述したように防振層3の難燃性が低下するおそれがあるが、防振層3の厚みを50mm以下にしておくことで、高い難燃性を維持できる。また、防振性能、耐火性能及び歩行感の3つを総合的に考慮した場合、防振層3の厚みは20mm以上40mm以下が好ましく、ゴム硬度は50以上70以下が好ましい。
【0058】
防振層3の下には、金属で構成された下層4が積層されている。下層4は、金属層2と同様な板材で構成することができる。下層4の厚みと金属層2の厚みとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。下層4の形状は円形であり、下層4の径は防振層3の下端部の径よりも大きく設定されている。したがって、下層4の外縁部は防振層3の下端部の外縁部から外方へ延出することになる。
【0059】
下層4には、防振層3の下側孔部3aの真下に対応する部分に、上下方向に貫通する貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aの径は、下側孔部3aの下端部の径よりも大きくすることができるが、下側孔部3aの下端部の径と同じであってもよい。また、貫通孔4aは必須のものではなく、省略してもよい。
【0060】
下層4が金属であるため、下層4を一次甲板101に溶接によって固定できる。下層4を溶接する場合、船舶の一次甲板101と同質となる鉄製の亜鉛めっき鋼板かガルバリウム鋼板を用いる方が溶接も簡易的に行うことができて好ましい。溶接の際、下層4の外縁部を溶接することができる。この下層4の外縁部は防振層3の下端部から離れているので、溶接時の熱が防振層3に直接伝達されなくなり、溶接時における防振層3の損傷を抑制できる。下層4は必須なものではなく、省略してもよい。
【0061】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
【表1】
【0063】
表1は、実施例1~4及び比較例1、2の防振層3の組成を示すとともに、実施例1~4及び比較例1、2の防振層3のゴム硬度、酸素指数を示すものである。ゴム硬度は、JIS K6253準拠のタイプAデュロメータで測定した場合の硬度である。酸素指数は、JIS K6269「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの酸素指数法による燃焼性試験方法」による試験にて得た数値である。実施例1~4は、酸素指数が45%以上であるのに対し、比較例1、2は、酸素指数が45%未満である。
【0064】
実施例1~4及び比較例1、2の金属層2及び下層4は全て同じである。すなわち、金属層2及び下層4は共に厚み2.3mmの鋼板である。
【0065】
(Part5 表面燃焼製試験 予備試験)
次に、「Part5 表面燃焼製試験 予備試験結果」について説明する。船舶内に使用する材料は、SOLAS条約において参照されているFire Test Procedures Code(FTPコード:火災試験方法コード)により国際的に統一された方法により行われている。その中で床の一次甲板101の上に使用される材料は、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験(表面材と一次甲板床張り材の試験)」に合格することが必要となる。試験結果を表2に示す
【0066】
【表2】
【0067】
この試験では、表2に示される基材が使用される。基材は、厚み3.2mmのSPCC鋼板である。この基材に、下層4を重ねて固定しており、したがって、基材、下層4、防振層3及び金属層2の4層構造にて試験体が構成され、この試験体を用いて試験が行われる。また、試験体の形状は、図3等に示す形状ではなく、試験の便宜上、板状で、試験体の寸法は、縦155mm、横800mmである。
【0068】
金属層2と防振層3及び下層4は接着剤により固定され、基材と下層4はビスにより固定されている。したがって、積層構造は図3等に示すものと同一になるが、形状のみ異なる。
【0069】
表2の試験体No.1は、防振層3が表1の実施例1の配合によるものであり、この防振層3の厚みは15mmである。表2の試験体No.2は、防振層3が表1の実施例1の配合によるものであり、この防振層3の厚みは20mmである。表2の試験体No.3は、防振層3が表1の実施例1の配合によるものであり、この防振層3の厚みは30mmである。表2の試験体No.4は、防振層3が表1の比較例1の配合によるものであり、この防振層3の厚みは30mmである。試験体No.1~3の防振層3の酸素指数は、48.2%であり、試験体No.4の防振層3の酸素指数は、43.4%である。
【0070】
試験の具体的な方法はFTPコードのPart5に準拠したものであるため、詳細な説明は省略するが、基材に所定の熱量が所定時間与えられる。判定基準は表2に記載しているとおりである。この判定基準に基づけば、試験体No.1~3は、一次甲板床張り材の判定基準を全てクリアーすることができ、更に、Part2(煙と毒性の試験)も免除となる。同様な結果は、上述した厚みの下層4が設けられ、かつ防振層3の材料の酸素指数が45%以上で得られる。また、難燃剤の種類が無機系難燃剤であっても、有機系難燃剤であっても同様な結果となる。ポリマーの種類も上述したものであれば、同様な結果となる。
【0071】
一方、試験体No.4では、一次甲板床張り材の判定基準を全てクリアーすることはできたが、Part2(煙と毒性の試験)の試験免除の数値には届かない結果となった。つまり、酸素指数が45%未満では、Part2(煙と毒性の試験)の試験が免除されるレベルに達しないので、Part2の試験で不合格になる懸念がある。
【0072】
(積載荷重試験)
次に、積載荷重試験結果について説明する。この試験は、船舶用の浮き床において、ロックウールを用いた浮き床の支持方法と、本発明の実施例に係る床材用支持脚1を用いた浮き床の支持方法とで積載荷重による床の沈み量と荷重を除荷した場合の復元量の比較を行うものである。
【0073】
試験体としては、厚み3.2mmのパネル鋼板(試験体サイズ幅400mm×長さ500mm)の4つの角部を実施例に係る床材用支持脚1でそれぞれ支持した実施例の試験体と、上記パネル鋼板の下に厚み25mmのロックウールを設置して上記パネル鋼板をロックウールで支持した比較例の試験体とを用意した。ロックウールの密度は150kg/mである。実施例の床材用支持脚1の防振層3は表1の実施例1の配合によるものであり、厚みは25mmである。金属層2の厚みは2.3mmであり、下層4は省略している。従って、実施例に係る床材用支持脚1の高さは27.3mmになる。
【0074】
実施例の試験体、及び比較例の試験体の上にそれぞれ100kgの荷重を14日間継続して積載し、その間のパネル鋼板の沈み込み量を計測する。この荷重は500kg/mに相当する。沈み込み量の計測には、従来から周知のレーザー変位計(株式会社キーエンス製)を用いることができる。14日後の沈み込み量の計測後に、100kgの荷重を除荷し、除荷後14日間の復元量を上記レーザー変位計で計測する。
【0075】
その結果、図6に示すように、比較例(ロックウール)の場合、徐荷後14日経過しても試験開始時に比べて0.5mm程度の沈み込み量であったのに対し、実施例の場合、徐荷後14日経過すると0.09mmであった。したがって、実施例の床材用支持脚1の復元度は、ロックウールに比べて大幅に高いことが分かる。
【0076】
(損失係数及び固有振動数)
次に、積載荷重の影響による損失係数及び固有振動数の低下について説明する。この試験は、船舶用の浮き床において、ロックウールを用いた浮き床の支持方法と、本発明の実施例に係る床材用支持脚1を用いた浮き床の支持方法とで積載荷重による損失係数及び固有振動数の変化の比較を行うものである。
【0077】
試験体は、積載荷重試験で用いた実施例の試験体と比較例の試験体である。実施例の試験体、及び比較例の試験体の上にそれぞれ80kgの荷重(重り)を載せて損失係数と固有振動数の測定を行う。その後、実施例の試験体、及び比較例の試験体の上にそれぞれ100kgの荷重を14日間継続して積載して14日後に100kgの荷重を除荷する。これが荷重試験であり、この荷重試験後、浮き床が沈んだ状態で80kgの荷重(重り)を載せて損失係数と固有振動数の測定を行う。
【0078】
測定条件は、測定周波数が0~400Hzであり、周波数分解能が0.25Hzである。インパクトハンマーヘッドチップはゴムであり、打撃回数は5回である。周波数分析器は、Type3560-B-130 B&Kであり、測定ソフトはPULSE LabShop Ver.15.1である。重りの上面の加速度を加速度ピックアップで検出し、その出力を増幅器で増幅してFFT分析器に入力するとともに、インパクトハンマーの出力を別の増幅器で増幅して上記FFT分析器に入力する。FFT分析器はパーソナルコンピュータに接続し、パーソナルコンピュータで損失係数と固有振動数を算出する。
【0079】
図7に示すように、実施例の試験体の場合、固有振動数は荷重試験前後で殆ど変化しなかったのに対し、比較例の試験体の場合、固有振動数は荷重試験前が26.8Hzであったものが荷重試験後は28.5Hzに高くなっている。固有振動数は低い程、より低い周波数から振動の低減効果が得られるので、比較例の試験体は荷重試験後に振動低減効果が低下したことになる。
【0080】
また、図7に示すように、実施例の試験体の場合、損失係数は荷重試験後に微増しているのに対し、比較例の試験体の場合、損失係数は荷重試験前が0.167であったものが荷重試験後は0.149に小さくなっている。損失係数は大きいと振動低減効果が高いので、比較例の試験体は荷重試験後に振動低減効果が低下したことになる。
【0081】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、一次甲板101と浮き床102との間に床材用支持脚1を設けることで、浮き床102が床材用支持脚1によって一次甲板101から浮いた状態で支持される。このとき、一次甲板101と浮き床102との間には加硫ゴムを含む防振層3が介在することになるので、例えば一次甲板101側からの騒音が浮き床102に伝達され難くなり、居住区内の騒音が低減される。
【0082】
また、浮き床101に積載荷重がかかると主に防振層3が変形するが、この防振層3は加硫ゴムを含むものなので、変形は弾性変形である。よって、積載荷重を除くと防振層3の形状が復元するので浮き床102が沈み込んだままになり難く、例えばデッキコンポジションが設けられていてもひび割れが起こり難くなる。また、防振層3の形状が復元するということは、防振層3がへたりにくいということであるので、施工当初の振動の減衰性能を長期間に亘って維持できる。
【0083】
さらに、例えば居住区で火災が起こった場合を想定すると、床材用支持脚1の上層が金属層2であり、不燃層となっているので、浮き床102から伝達された熱によって金属層2が燃えることはない。また、この金属層2の下にある防振層3を構成している材料の酸素指数が45%以上であるので、浮き床102から伝達された火災時の熱によって防振層3が燃え難くなる。したがって、床材用支持脚1は、FTPコードのPart5の「表面燃焼性試験」に合格可能な程度の極めて高い耐火性を有するものになるので、船舶内において問題なく使用できる。また、下層4も金属であるため、一次甲板101から伝達された熱によっても高い耐火性を示す。
【0084】
(実施形態2)
図8~10は、本発明の実施形態2に係る床材用支持脚1を示すものである。この実施形態2では下層が設けられていない点が実施形態1と異なるとともに、防振層3の形状も実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0085】
実施形態2では、防振層3に有底の下側孔部3bが形成されている。下側孔部3bは、上側孔部2aの真下に位置しており、防振層3の上面に開口し、上下方向中間部まで延びている。下側孔部3bには、ねじ軸5の下部に設けられた棒状部5aが差し込まれるようになっている。また、防振層3の下面には、外周部分に外周側環状溝3cが形成されている。また、防振層3の下面には、外周側環状溝3cの内側に内周側環状溝3dが形成されている。さらに、防振層3の下面には、中央部に窪み部3eが形成されている。外周側環状溝3c、内周側環状溝3d及び窪み部3eのうち、任意の1つのみ形成してもよいし、任意の2つのみ形成してもよい。外周側環状溝3c、内周側環状溝3d及び窪み部3eを省略してもよい。
【0086】
この実施形態2の床材用支持脚1によれば、実施形態1と同様に、船舶内においても使用可能な高い耐火性を備えるとともに、経年変化を小さくすることができ、しかも、騒音低減性能を高めることができる。
【0087】
図11図12A及び図12Bは、実施形態2の変形例を示すものである。この変形例では、ねじ軸5に金属製の固定板7を固定している。固定板7は、全体として円盤状に形成されており、外側板部7aと内側板部7bとを備えている。外側板部7aの下面が金属層2の上面に載置される。内側板部7bは、固定板7の中央部へ向かって次第に高くなるように傾斜している。この内側板部7bには孔7cが形成されており、この孔7cにねじ軸5が差し込まれた状態で固定されている。尚、実施形態2において、実施形態1と同様にねじ軸5を金属層2の上側孔部2aに螺合させるようにしてもよい。
【0088】
図13は、本発明の実施形態2の変形例に係る床材用支持脚1を使用した床構造100を示すものである。この形態では、高さ調整用部材8がねじ軸5の上端部に設けられている。
【0089】
高さ調整用部材8は、浮き床102の裏面に固定される固定板部8aと、ねじ軸5の上端部に螺合するねじ孔を有する筒部8bとを備えている。筒部8bは上下方向に延びる姿勢で配置されている。この筒部8bの上端部に固定板部8aが当該筒部8bの径方向外方へ延びるように形成されている。固定板部8aは、浮き床102に対して溶接等によって固定することができる。
【0090】
浮き床102には、筒部8bの真上に位置するようにレベル調整孔102aが形成されている。レベル調整孔102aは浮き床102を上下方向に貫通しており、レベル調整孔102aを介して浮き床102の上から下を見ることができるようになっている。
【0091】
ねじ軸5の上部には工具係合部5bが設けられている。工具係合部5bは、高さ調整用部材8の筒部8b内に位置しており、この状態で浮き床102の上からレベル調整孔102aを介して所定の工具を係合させることができる。工具係合部5bは、ねじ軸5を回転させることが可能な各種工具が係合する部分であり、例えばマイナスドライバーが工具であれば、マイナスドライバーの先端が嵌まる溝、プラスドライバーが工具であれば、プラスドライバーの先端が嵌まる十字状の窪み、六角レンチが工具であれば、六角レンチの先端が嵌まる断面六角形の窪み等であり、これらは一例である。
【0092】
工具を浮き床102の上からレベル調整孔102aに差し込んでねじ軸5の工具係合部5bに係合させることで、ねじ軸5を浮き床102の上から回転させてレベル調整することができる。このとき、固定板7の外側板部7aの下面が金属層2の上面に載置されているだけで非固定状態であるため、金属同士の小さな摩擦力となり、例えば浮き床102の上に作業者が乗った状態でもねじ軸5をスムーズに回転させることができる。
【0093】
(実施形態3)
図14は、本発明の実施形態3に係る床材用支持脚1の縦断面図である。この実施形態3では、実施形態1のものに対して金属層2、防振層3の形状が異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0094】
金属層2は、防振層3の上端部よりも大きな外径を有しており、防振層3の上端部から径方向へ延出している。この金属層2の外径と下層4の径とは同じにすることができる。金属層2の周縁部を溶接によって浮き床102に固定することができる。
【0095】
防振層3には、孔部3fが上下方向に貫通するように形成されている。この孔部3fによって防振層3が中空状になる。
【0096】
この実施形態3も実施形態1と同様に、船舶内においても使用可能な高い耐火性を備えるとともに、経年変化を小さくすることができ、しかも、騒音低減性能を高めることができる。
【0097】
また、図15に示す実施形態3の変形例のように、下層4を省略してもよい。この場合、防振層3の下端部が一次甲板101に直接載置されることになる。
【0098】
(実施形態4)
図16は、本発明の実施形態4に係る床材用支持脚1の縦断面図である。この実施形態4は、金属層21と防振層30とが接着剤で接着されていない点、即ち機械固定によって金属層21が防振層30に固定されている点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態4について詳細に説明する。
【0099】
金属層21は金属板材20の一部分で構成されており、この金属層21の側縁部には下方へ延びる側板部22、22が一体に形成されている。防振層30の側面には、溝33、33が形成されている。溝33、33には、側板部22、22から内方へ向けて屈曲した屈曲部22a、22aが嵌合している。これにより、金属層21と防振層30とを一体化することができる。
【0100】
防振層30には、ねじ軸5の棒状部5a(実施形態2参照)が差し込まれる孔部31が形成されている。また、防振層30の下面には、複数の溝32が形成されている。さらに、ねじ軸5には、実施形態2の変形例と同様な固定板7及び高さ調整用部材8が設けられている。
【0101】
この実施形態4も実施形態1と同様に、船舶内においても使用可能な高い耐火性を備えるとともに、経年変化を小さくすることができ、しかも、騒音低減性能を高めることができる。
【0102】
実施形態4において、高さ調整用部材8及び固定板7を省略してもよい。この場合、金属層21に実施形態1と同様なねじ孔を設けておき、このねじ孔にねじ軸5を螺合させてレベル調整を行うことができる。
【0103】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明に係る船舶の床材用支持脚は、例えば一次甲板の上に浮き床を設ける場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 床材用支持脚
2 金属層
2a 上側孔部
3 防振層
3a 下側孔部
4 下層
5 ねじ軸
101 一次甲板
102 浮き床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16