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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 9/18 20060101AFI20240531BHJP
   B41F 13/14 20060101ALI20240531BHJP
   B41F 13/24 20060101ALI20240531BHJP
   B41F 33/08 20060101ALI20240531BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B41F9/18
B41F13/14
B41F13/24 138
B41F33/08 S
B41F9/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020134790
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030653
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】国竹 高明
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144432(JP,A)
【文献】特開2012-240314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043569(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0387828(KR,Y1)
【文献】特開平06-320715(JP,A)
【文献】特開2003-266645(JP,A)
【文献】特開2015-112854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00 - 13/70
B41F 31/00 - 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴のキー溝に挿入されるキーを有する支持軸と、
ウエブに印刷を行う印刷ユニット内の前記版胴を着脱する版交換位置、前記キー溝の位置を検出する検出位置及び前記印刷ユニットに搬入された前記版胴を待機させる待機位置の間で、前記版胴を移動させる昇降部と、
前記検出位置で、前記版胴までの距離を計測する非接触センサと、
前記非接触センサの計測結果から前記キー溝の位置を検出する制御部と、を備え、
前記非接触センサは、
前記検出位置において前記キー溝が位置すると推定される中央部、及び前記中央部から前記版胴の接線方向に前記キー溝の幅以上離れた側部で、前記版胴までの距離を計測し、
前記制御部は、
前記非接触センサで計測された複数箇所の距離の差に基づいて、前記キー溝の位置を検出する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記非接触センサは、
前記中央部を通る前記版胴の径方向の直線上に設定された複数箇所で、前記版胴までの距離を計測し、
前記制御部は、
前記径方向の直線上で計測された複数箇所の距離の差に基づいて、前記キー溝の位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記キー溝の位置の検出結果に基づいて、
前記版胴を前記支持軸に取り付けるための版交換位置を調整する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ユニットは、
前記支持軸、前記昇降部及び前記非接触センサを有する印刷ユニット本体と、
前記印刷ユニット本体から取り外される前記版胴を乗載する第1の台車、及び前記印刷ユニット本体に取り付ける前記版胴を乗載する第2の台車を有する台車ユニットと、を備え、
前記制御部は、
前記第1の台車と前記第2の台車のいずれかを選択して、前記印刷ユニット本体の前記待機位置に前記版胴を搬入及び搬出する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1の台車及び前記第2の台車は、前記版胴にインキを供給するファニッシャロールと前記版胴とを乗載する上テーブルを備え、
前記昇降部は、前記第1の台車又は前記第2の台車から受け渡された前記上テーブルを前記版交換位置、前記検出位置及び前記待機位置の間で移動させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2の台車は、
前記キー溝に挿入され、前記版胴の回転を阻止する回転止めを備える、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、版胴に塗布されたインキをウエブに転写して印刷を行うグラビア印刷機において、版胴を効率的に交換する機能を有する印刷装置が開発されている。具体的には、版胴に設けられたキー溝と、版胴を支持する支持軸に設けられたキーとを、予め位置合わせすることで版胴の交換を容易にしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-144432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る印刷装置では、インデックスマークを基準として台車上に版胴が乗載され、台車が印刷ユニットへ搬入される。そして、印刷ユニット内の昇降部が版胴を受け取り、上昇させる。昇降機構は、上昇途中の位置で停止し、センサのレーザを版胴側面の1点に照射して距離を計測しつつ、昇降機構に設けられた版胴回転機構によって版胴を回転させる。このように、版胴を回転させながら、版胴とセンサとの距離を計測することにより、キー溝部とキー溝でない平面部との計測距離の差からキー溝の位置を判別して版胴のキー溝と支持軸のキーとの位置合わせを行う。
【0005】
しかしながら、検出位置で版胴を回転させるためには、昇降機構に、回転力を発生する駆動部、版胴に回転力を伝えるコロ、版胴の回転量を計測するセンサ等が必要であり、昇降部の構造が複雑化する。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、版胴のキー溝と支持軸のキーとの位置合わせを行うため、簡素な構造で、キー溝が所定の回転位置であるか否か判定可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る印刷装置は、
版胴のキー溝に挿入されるキーを有する支持軸と、
ウエブに印刷を行う印刷ユニット内の前記版胴を着脱する版交換位置、前記キー溝の位置を検出する検出位置及び前記印刷ユニットに搬入された前記版胴を待機させる待機位置の間で、前記版胴を移動させる昇降部と、
前記検出位置で、前記版胴までの距離を計測する非接触センサと、
前記非接触センサの計測結果から前記キー溝の位置を検出する制御部と、を備え、
前記非接触センサは、
前記検出位置において前記キー溝が位置すると推定される中央部、及び前記中央部から前記版胴の接線方向に前記キー溝の幅以上離れた側部で、前記版胴までの距離を計測し、
前記制御部は、
前記非接触センサで計測された複数箇所の距離の差に基づいて、前記キー溝の位置を検出する。
【0008】
また、前記非接触センサは、
前記中央部を通る前記版胴の径方向の直線上に設定された複数箇所で、前記版胴までの距離を計測し、
前記制御部は、
前記径方向の直線上で計測された複数箇所の距離の差に基づいて、前記キー溝の位置を検出する、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記制御部は、
前記キー溝の位置の検出結果に基づいて、
前記版胴を前記支持軸に取り付けるための版交換位置を調整する、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記印刷ユニットは、
前記支持軸、前記昇降部及び前記非接触センサを有する印刷ユニット本体と、
前記印刷ユニット本体から取り外される前記版胴を乗載する第1の台車、及び前記印刷ユニット本体に取り付ける前記版胴を乗載する第2の台車を有する台車ユニットと、を備え、
前記制御部は、
前記第1の台車と前記第2の台車のいずれかを選択して、前記印刷ユニット本体の前記待機位置に前記版胴を搬入及び搬出する、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記第1の台車及び前記第2の台車は、前記版胴にインキを供給するファニッシャロールと前記版胴とを乗載する上テーブルを備え、
前記昇降部は、前記第1の台車又は前記第2の台車から受け渡された前記上テーブルを前記版交換位置、前記検出位置及び前記待機位置の間で移動させる、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記第2の台車は、
前記キー溝に挿入され、前記版胴の回転を阻止する回転止めを備える、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷装置によれば、キー溝幅以上離れた複数箇所で、センサから版胴までの距離を計測可能なセンサを用いてキー溝の検出を行うので、簡素な構造で、キー溝が所定の回転位置であるか否か判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る印刷装置の概要図である。
図2】実施の形態に係る印刷ユニットの正面図である。
図3】実施の形態に係る印刷ユニットの側面図である。
図4】実施の形態に係る印刷ユニットの平面図である。
図5】版交換位置における版胴、支持軸及び昇降部を示す概要図である。
図6】版胴、支持軸及びストッパの関係を示す要部断面図であり、(A)は、版胴が支持軸に支持されている状態の図、(B)は、版胴の側面とストッパとが当接している状態の図、(C)は、支持軸が版胴から外れた状態の図である。
図7】ファニッシャアームの位置を示す概要図であり、(A)は、ファニッシャアームが運転位置にある状態の図、(B)は、ファニッシャアームが第1着脱位置にある状態の図、(C)は、ファニッシャアームが第2着脱位置にある状態の図である。
図8】版胴と非接触センサとの位置関係を示す概要図である。
図9】版胴と非接触センサの測定箇所との関係を示す側面図であり、(A)は、版胴位置が適正である場合の図、(B)は、版胴が回転している場合の図、(C)は、版胴位置が低い場合の図、(D)は、版胴位置が高い場合の図である。
図10】印刷ユニットの制御部に係る機能ブロック図である。
図11図2のA-A’断面図である。
図12】版胴と回転止めとの関係を示す要部断面図であり、(A)は、版胴が待機位置にある場合の図、(B)は、版胴の上昇初期の図、(C)は、回転止めがキー溝から外れた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る印刷装置について説明する。
【0016】
図1の概要図に示すように、印刷装置1は、ウエブWに各色の図柄を連続して印刷する、グラビア印刷機である。本実施の形態では、グラビア印刷により、紙、プラスチックフィルム等のウエブWに多色印刷を行う印刷機を例として説明する。
【0017】
印刷装置1は、ウエブWを送出する巻出ロール11、ウエブWにグラビア印刷を行う印刷ユニット12、印刷ユニット12で印刷されたウエブWを乾燥させる乾燥機13、印刷後のウエブWを巻き取る巻取ロール14を備える。本実施の形態に係る印刷装置1は、異なる色の印刷を行う印刷ユニット12が、3つ並設されるように構成されている。そして、巻出ロール11と巻取ロール14との間には、複数のガイドロール15が設けられ、ウエブWは、各ガイドロール15に巻き掛けられて各印刷ユニット12を通過しながら印刷される。
【0018】
巻出ロール11及び巻取ロール14は、図示しない印刷装置1のフレームに回転可能に支持される。巻出ロール11、乾燥機13及び巻取ロール14は、それぞれ、公知の構造のものを用いることができる。
【0019】
印刷ユニット12は、図2の正面図、図3の側面図及び図4の平面図に示すように、版胴51を回転可能に支持し、ウエブWにインキを転写する印刷ユニット本体20、印刷ユニット本体20に対して交換用の版胴51を搬入及び搬出する台車ユニット40を備える。
【0020】
なお、印刷装置1の各部を説明する図では、図2に示す印刷ユニット12の正面視における左右方向をx軸方向、印刷ユニット12の奥行き方向、すなわち図2の紙面垂直方向をy軸方向、印刷ユニット12の上下方向をz軸方向とする直交座標系を設定し、適宜参照する。なお、図2の右方向を+x方向、奥行方向を+y方向、上方向を+z方向とする。
【0021】
印刷ユニット本体20は、図2に示すように、サイドフレーム21、ベースフレーム22、支持軸23、ストッパ24、制御ユニット25、ファニッシャアーム26、昇降部27、インキパン28、昇降駆動部29、ギアケース30、非接触センサ31を備える。
【0022】
サイドフレーム21は、z軸方向に延びる一対のフレームである。両サイドフレーム21間には、版胴51が軸心を水平方向(x軸方向)に向けた状態で回転可能に支持される。
【0023】
ベースフレーム22は、印刷ユニット本体20の下部に配置される基台である。両サイドフレーム21は、ベースフレーム22で連結されている。
【0024】
支持軸23は、サイドフレーム21の内側に対向するように配置され、版胴51を支持する。対向配置される支持軸23のうち一方は、略水平方向(x軸方向)に伸縮するシリンダ(不図示)により版胴51の軸心方向一端側に進退可能となっている。また、他方の支持軸23は、x軸方向に伸縮するサーボモータ駆動のボールネジ機構(不図示)により版胴51の軸心方向他端側に進退可能となっている。
【0025】
支持軸23に支持される版胴51は、印刷絵柄が彫られたグラビア印刷用のロールである。図5に示すように、版胴51の軸心方向両端部には、軸心方向内側に向けて孔径が小さくなるように、テーパ状に凹陥する凹陥部51aが形成されている。両端部の凹陥部51aのうち一方には、キー溝51bが形成されている。
【0026】
支持軸23の先端側は、凹陥部51aに対応するように略テーパ状のテーパ部23aとなっている。また、一方の支持軸23のテーパ部23aには、版胴51のキー溝51bに挿入されるキー23bが設けられている。
【0027】
そして、両支持軸23は、進出状態で版胴51の両端部の凹陥部51aにそれぞれ係合して版胴51を支持する。また、両支持軸23は、後退状態で版胴51の両凹陥部51aから離れて版胴51を印刷ユニット本体20から取り外す。版胴51及び支持軸23は、一方の支持軸23に設けられたキー23bを版胴51のキー溝51bに挿入させることで互いに位置決めされる(図6(A))。
【0028】
また、一方の支持軸23の基端側には、支持軸23を回転駆動させるサーボモータ制御の回転駆動部(不図示)が設けられている。回転駆動部は、支持軸23を回転駆動させることにより、版胴51を回転させる。
【0029】
ストッパ24は、後退状態の支持軸23よりも版胴51側に接近するように、サイドフレーム21に突設されている。これにより、支持軸23が後退した際、支持軸23に固着して、支持軸23とともに後退する版胴51の側面51cがストッパ24に当接する(図6(B))。側面51cとストッパ24とが当接した状態から、さらに支持軸23が後退することにより、支持軸23から版胴51を容易に取り外すことができる(図6(C))。
【0030】
ファニッシャアーム26は、図2及び図7(A)~(C)の概要図に示すように、版胴51の側方(-y方向)で、版胴51の軸心方向(x軸方向)両側に、上端が各サイドフレーム21に揺動可能に支持される。そして、一対のファニッシャアーム26が対向配置されている。両ファニッシャアーム26の下端部間には、軸心が水平方向(x軸方向)に向くファニッシャロール52が、回転可能に支持されている。より具体的には、ファニッシャアーム26の揺動側端部には、略U状の切り欠き部が形成されている。そして、切り欠き部にファニッシャロール52の回転軸が挿入された状態で、クランプ部が切り欠き部を塞ぐことにより、ファニッシャアーム26はファニッシャロール52を支持する。
【0031】
ファニッシャアーム26は、揺動することで、運転位置(図7(A))、第1着脱位置(図7(B))及び第2着脱位置(図(C))に切り替えられる。運転位置は、版胴51の外周面にファニッシャロール52を当接させる位置である。第1着脱位置は、版胴51とファニッシャロール52とが接触しない状態で、ファニッシャロール52を着脱する位置である。第2着脱位置は、ファニッシャロール52が取り外された状態で、版胴51の交換を行う際に、他の部材に干渉しないように待避する位置である。ファニッシャロール52は、印刷装置1の稼働中においては、版胴51の外周面に接しながら版胴51と逆方向に回転する。
【0032】
版胴51及びファニッシャロール52の下方には、インキパン28が設けられている。ファニッシャロール52の下側部分は、インキパン28に貯留されたインキに浸されており、版胴51及びファニッシャロール52の回転により、版胴51にインキが供給される。また、インキパン28は、図示しないスライド部によって、印刷ユニット本体20の手前側(-y方向)に引き出すことができる。これにより、インキパン28のインキの清掃が容易となるとともに、版胴51及びファニッシャロール52の交換時に、版胴51又はファニッシャロール52とインキパン28とが干渉することを防ぐことができる。
【0033】
また、版胴51のファニッシャロール52と反対側には、版胴51の外周面に圧接するドクターブレード53が配設されている。ドクターブレード53は、版胴51の外周面に付着する余分なインキを、版胴51の回転動作によって掻き取る。
【0034】
版胴51の上方には、版胴51にウエブWを上方から圧着させる圧胴54が設けられている。圧胴54は、図示しないスライド機構によって、上下方向(z軸方向)に移動可能である。
【0035】
圧胴54は、支持軸23に支持された版胴51との間でウエブWを挟み込む。そして、版胴51及び圧胴54の回転動作によって、ウエブWを搬送しながら版胴51の外周面に付着したインキをウエブWに転写する。
【0036】
昇降部27は、版胴51及びファニッシャロール52を乗載する上テーブル46を、印刷ユニット本体20の内部で昇降させるものであり、2つのラック27a、支持プレート27bを備える。より具体的には、昇降駆動部29によって回転する平歯車によってラック27aが駆動され、印刷ユニット本体20下部の待機位置にある台車43の上テーブル46を掬い上げる。そして、昇降部27は、待機位置、版胴51のキー溝51b位置を検出する検出位置、版胴51を支持軸23に取り付け、取り外す版交換位置の間で上テーブル46を移動させる。
【0037】
昇降部27を駆動する昇降駆動部29は、図2に示すように、一方のサイドフレーム21のベースフレーム22上方に配置されている。昇降駆動部29は、回転軸心が版胴軸心方向に向くように配置され、サーボモータ制御により動作する。昇降駆動部29の出力軸には、版胴軸心方向(x軸方向)に延びる回転軸29aが取り付けられる。回転軸29aは、昇降駆動部29の回転駆動に連動して回転する。
【0038】
ベースフレーム22上面には、版胴軸心方向に所定の間隔をあけて縦長の略長方形状のギアケース30が一対設けられ、回転軸29aは、一方のギアケース30を貫通するとともに、延出端が他方のギアケース30内部にまで達し、各ギアケース30内部には、回転軸29aと一体に回転する平歯車(不図示)が設けられている。
【0039】
また、各ギアケース30には、ギアケース30を上下に貫通するラック27aが設けられ、各ギアケース30内でラック27aと平歯車とが互いに噛み合っている。
【0040】
各ラック27aの上端には、支持プレート27bが取り付けられている。支持プレート27bは、待機位置に搬入された台車43の上テーブル46を下方から支持した状態で昇降駆動部29の回転駆動により昇降する。より具体的には、回転軸29aが回転すると、平歯車を介して各ラック27aが上下動することにより、支持プレート27bが昇降する。そして、昇降部27は、下方の待機位置で版胴51を乗載する上テーブル46を台車43との間で受け渡すことにより、版胴51の受け渡しを行う。また、昇降部27は、上方の版交換位置で両サイドフレーム21との間で版胴51の受け渡しを行う。
【0041】
非接触センサ31は、検出位置にある版胴51のキー溝51bの位置を検出するセンサであり、キー23bを有する支持軸23側のサイドフレーム21の上下方向中程に配設されている。
【0042】
図8に示すように、非接触センサ31は、版胴51の軸心方向一方側から版胴51の軸心方向端部に向かってレーザ光Lzを照射することにより版胴51の軸心方向端部、すなわち版胴51の側面51cまでの距離を計測する。非接触センサ31は、版胴51の軸心方向端部におけるキー溝51bが形成された箇所と形成されていない箇所とで測定値が異なることを利用して、キー溝51bを検出する。
【0043】
本実施の形態では、キー溝51bの検出に非接触センサ31を用いるので、センサが接触式でキー溝51bに接触して位置を検出する場合のように複雑な構造とならず、印刷ユニット12の構造を簡素化することができる。
【0044】
本実施の形態に係る非接触センサ31は、複数箇所の距離を一括して計測可能なセンサである。具体的には、図9(A)~(D)に示すように、水平方向にキー溝幅Wk以上離れた3箇所(P1~P3)の距離を計測する。また、キー溝位置から、上下方向に所定の距離をあけて計測点を設定する(P4、P5)。所定の距離は、例えば、キー溝深さHkとすればよい。これにより、キー溝51bが、所定の回転位置であるか否か検出できる。また、例えば、版胴51を保護するために、版胴51に保護部材が巻き付けられている場合等により、検出位置における版胴51の高さが、予め設定された版胴51の径から推測される高さと異なっていることを判別することができる。
【0045】
さらに、種類の異なる版胴51のキー溝51bをそれぞれ検出する場合において、非接触センサ31を固定したまま昇降部27の昇降位置を変えるだけで各版胴51のキー溝51bを検出できるようになるので、印刷ユニット12の構造を複雑化させることなく、昇降部27の昇降動作を利用して様々な大きさの版胴51のキー溝51b位置を検出することができる。
【0046】
制御ユニット25は、印刷ユニット12の動作を制御するものであり、図10のブロック図に示すように、制御部251、不揮発性メモリである記憶部252、液晶パネル等の表示部253、タッチパネル、押しボタン等の入力部254を備える。制御部251は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、水晶発振器等から構成されている。また、制御部251は、制御部251のROM、記憶部252等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPUを動作させることにより、図10に示す制御部251の各機能を実現させる。これにより、制御部251は、センサ制御部251a、演算部251bとして動作する。
【0047】
入力部254から入力される各種データを記憶する記憶部252には、隣り合う印刷ユニット12のウエブWへの転写位置間距離L、版胴51の半径r、及び印刷絵柄を合わせるために隣り合う印刷ユニット12の上流側版胴51に対する下流側版胴51の正規の基準位置に補正する基準位置補正角度等が予め記憶される。
【0048】
制御部251は、版胴51を乗載した台車43を印刷ユニット本体20下部の待機位置に搬入した状態で、昇降駆動部29を制御して昇降部27を上昇させる。これにより、昇降部27が版胴51を台車43から受け取る。
【0049】
また、制御部251は、昇降駆動部29を制御して版胴51を乗載した昇降部27を上昇途中の検出位置で停止させ、非接触センサ31を制御してキー溝51bの位置を検出する。
【0050】
制御部251のセンサ制御部251aは、非接触センサ31を制御して、版胴51のキー溝51b側の側面51cとの距離を計測する。上述したように、本実施の形態に係る非接触センサ31は、側面51cの複数箇所について距離計測を行う。演算部251bは、計測された距離に基づいて、キー溝位置を検出する。これにより、キー溝51bの回転位置にずれが生じているか否か、キー溝51bの高さが、版胴51の径から推定される所定の高さとなっているか否か等を判定することができる。
【0051】
また、制御部251は、昇降駆動部29を制御して昇降部27を上昇端の版交換位置まで上昇させる。さらに、制御部251は、昇降部27が版交換位置にある状態で、各シリンダを制御して両支持軸23を版胴51の軸心方向両端部に進出させ、キー溝51bにキー23bを挿入させ、版胴51を両サイドフレーム21に回転可能に支持させる。版胴51が支持軸23に支持された後、制御部251は、昇降駆動部29を制御して昇降部27を下降させる。
【0052】
また、制御部251は、各支持軸23に版胴51が回転可能に支持されている状態で、昇降駆動部29を制御して昇降部27を版交換位置まで上昇させ、昇降部27で版胴51を支持する。そして、各シリンダを制御して両支持軸23を版胴51の軸心方向両端部から後退させて両サイドフレーム21から版胴51を取り外す。これにより、両サイドフレーム21から昇降部27へ、版胴51が受け渡される。
【0053】
さらに、制御部251は、昇降部27が版胴51を支持し、版胴51を乗載していない台車43が印刷ユニット本体20の下部に搬入されている状態で、昇降駆動部29を制御して昇降部27を下降させ、版胴51を台車43に受け渡す。
【0054】
台車ユニット40は、一方のサイドフレーム21下部に連結されるように構成され、該サイドフレーム21に形成された開口部21aから印刷ユニット本体20下部に対して版胴51を乗載した台車43を搬入出する。台車ユニット40は、図2~4に示すように、印刷ユニット12の幅方向(x軸方向)に延びており、台車ユニット40の基台である本体フレーム41、シャーシ42、台車43を備える。台車43は、印刷ユニット本体20から取り外された使用済みの版胴51(以下、旧版胴51-1という。)及びファニッシャロール52(以下、旧ファニッシャロール52-1という。)が乗載される第1の台車(以下、旧版台車43-1という。)、新たに印刷ユニット本体20に取り付ける交換用の版胴51(以下、新版胴51-2という。)及びファニッシャロール52(以下、新ファニッシャロール52-2という。)が乗載される第2の台車(以下、新版台車43-2という。)からなる。
【0055】
シャーシ42は、本体フレーム41上を、版胴51の軸心方向に直交するy軸方向にスライド可能に配設されている。シャーシ42上には2つの台車43、すなわち旧版台車43-1及び新版台車43-2が設置されている。シャーシ42は、印刷ユニット本体20の開口部21aに対して、いずれかの台車43を選択して搬入出できるように、シャーシ42をy軸方向にスライドする。これにより、シャーシ42に備えられた台車側レール42aと印刷ユニット本体20に備えられた印刷ユニット側レール32とが連続する位置となるようにする(図4、11)。さらに、台車43を移動させるために、シャーシ42に備えられた台車側ラック42bと、印刷ユニット本体20に備えられた印刷ユニット側ラック33とが連続する位置となる。
【0056】
旧版台車43-1及び新版台車43-2は、図11に示すように、それぞれモータ44、上テーブル46を備える。上テーブル46は、版胴51を支持する版胴受け46a、ファニッシャロール52を支持するファニッシャ受け46bを備える。本体フレーム41上で、旧版台車43-1と新版台車43-2とは、図3、4に示すように、印刷ユニット本体20への侵入方向であるx軸方向に並列して配置されている。上述のように、シャーシ42がy軸方向にスライド移動することにより、旧版台車43-1と新版台車43-2のいずれかが、印刷ユニット本体20の開口部21aに対向する位置(以下、搬入出位置という。)となる。
【0057】
モータ44は、台車43を台車ユニット40と印刷ユニット本体20との間で移動させる駆動手段であり、台車43の下部に配置されている。モータ44の種類は特に限定されず、例えばエアモータである。モータ44の駆動軸には、平歯車44aが取り付けられている。搬入出位置にある台車43のモータ44を駆動することにより、台車側ラック42b及び印刷ユニット側ラック33のいずれかと平歯車44aとが噛み合い、台車43下部の車輪が台車側レール42a、印刷ユニット側レール32の上を走行することで、台車43が印刷ユニット本体20へと搬入される。搬出される場合も同様である。
【0058】
旧版台車43-1及び新版台車43-2には、昇降部27の支持プレート27bが通過可能な台車開口部が設けられている。そして、旧版台車43-1及び新版台車43-2の上面には、上下方向(z軸方向)に着脱可能な上テーブル46が、少なくとも台車開口部の一部を覆うように配置されている。上テーブル46には、版胴受け46aが配設されている。版胴受け46aは、乗載される版胴51の軸心と平行(x軸方向)な中心軸を挟んで対向する斜面を有しており、斜面に版胴51が接することにより、版胴51を支持する。版胴51は、作業者によって、キー溝51bが下側に位置するように、回転された状態で版胴受け46aに乗載される。
【0059】
ファニッシャ受け46bは、乗載されるファニッシャロール52の軸心方向(x軸方向)に対して断面略U字状の溝を有しており、ファニッシャロール52が乗載される。
【0060】
また、台車43は、図12(A)に示すように、版胴51の回転位置決めを行う回転止め43aを備える。回転止め43aは、台車43上の版胴51侵入方向(-y方向)側に配設されている。回転止め43aは、版胴51の軸心方向(x軸方向)と直交するy軸方向に回転軸を有し、回転可能に配置されている。回転止め43aは、略矩形状のプレートであり、プレートの一方端部近傍が回転軸に取り付けられている。また、回転止め43aの厚さは、キー溝51bの幅より僅かに狭く設定されており、回転止め43aとキー溝51bとの隙間は例えば1mmである。これにより、版胴受け46aに乗載された版胴51のキー溝51bに、回転止め43aを回転させて、係合させることにより、キー溝51bが版胴51の下部に位置するように、版胴51の回転を阻止して、回転位置決めを行うことができる。
【0061】
昇降部27は、台車43上に位置決めされた版胴51をその姿勢のまま下方から支持して上昇させる。したがって、予め版胴51のキー溝51bを位置決めした状態で版胴51を台車43から昇降部27へ受け渡すことができる。
【0062】
続いて、印刷装置1の印刷ユニット12の版胴51を交換する方法、すなわち使用済みの旧版胴51-1を取り外し、別の版胴51である新版胴51-2を取り付ける方法について説明する。また、使用済みの旧ファニッシャロール52-1を、新ファニッシャロール52-2に交換する方向についても併せて説明する。
【0063】
まず、作業者は、印刷ユニット12へ新たに取り付ける新版胴51-2及び新ファニッシャロール52-2を新版台車43-2に乗載し、キー溝51bが下端に位置するように新版胴51-2を回転させる。続いて、回転止め43aを回動させて、キー溝51bに挿入する。これにより、新版胴51-2の回転を停止させる(図12(A))。
【0064】
通常、版胴交換開始前の初期状態では、図4に示すように、旧版台車43-1の台車側レール42aが印刷ユニット本体20の印刷ユニット側レール32と連続する搬入出位置に配置されている。また、新版台車43-2は、サイドフレーム21の開口部21aから外れた位置(以下、待避位置という。)に配置されている。
【0065】
作業者が、制御ユニット25に印刷装置1の停止を入力すると、印刷装置1の動作が停止される。また、ファニッシャアーム26は、運転位置から第1着脱位置へと揺動する。続いて、作業者は、インキパン28を手前(-y方向)に引き出して逃がした後、入力部254から、版胴51の交換開始を入力する。制御部251は、旧版台車43-1が搬入出位置に配置されているか判定する。具体的には、新版台車43-2が搬入出位置にある場合、制御部251は、旧版台車43-1及び新版台車43-2が乗載されているシャーシ42をy軸方向に移動させ、旧版台車43-1を搬入出位置にセットする。また、旧版台車43-1が搬入出位置に存在する場合、制御部251は、シャーシ42を移動させず、次の動作へ進む。
【0066】
そして、制御部251は、旧版台車43-1のモータ44を駆動制御して、モータ44に連結された平歯車44aと、台車側ラック42b、印刷ユニット側ラック33との噛み合いにより、旧版台車43-1を印刷ユニット本体20内部へと搬入する。制御部251は、版胴51が乗載されていない旧版台車43-1が印刷ユニット本体20下部の待機位置に搬入されている状態で、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を上昇させる。
【0067】
昇降部27の支持プレート27bは、上昇途中で旧版台車43-1の上テーブル46を掬い上げる。制御部251は、ファニッシャ受け46bが印刷ユニット本体20に支持されている旧ファニッシャロール52-1に接触する直前で昇降部27を停止させる。この時のファニッシャ受け46bと旧ファニッシャロール52-1との距離は、例えば5mm程度である。続いて、制御部251は、ファニッシャアーム26のクランプを解除して、旧ファニッシャロール52-1を印刷ユニット本体20から上テーブル46へと受け渡す。
【0068】
制御部251は、ファニッシャアーム26が第2着脱位置へと揺動しても干渉しない位置(以下、ファニッシャ準備位置という。)まで、昇降部27を下降させる。そして、制御部251は、ファニッシャアーム26を第2着脱位置へと揺動させる。その後、制御部251は、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を版交換位置まで上昇させる。
【0069】
続いて、制御部251は、各シリンダを伸縮させて両支持軸23を旧版胴51-1の軸心方向両端部から後退させて、両サイドフレーム21から旧版胴51-1を取り外す。これにより、旧版胴51-1は、版胴受け46aに乗載され、印刷ユニット本体20から昇降部27上の上テーブル46に受け渡される。
【0070】
その後、制御部251は、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を下降させ、下降途中で旧版胴51-1及び旧ファニッシャロール52-1が乗載された上テーブル46を、昇降部27から旧版台車43-1に受け渡す。
【0071】
制御部251は、旧版台車43-1のモータ44を制御して、旧版台車43-1を印刷ユニット本体20の待機位置から側方(+x方向)に後退させ、旧版胴51-1及び旧ファニッシャロール52-1を印刷ユニット本体20から搬出する。そして、制御部251は、回転駆動部を駆動させて、キー23bが支持軸23の下端に位置するように支持軸23を回転させる。
【0072】
続いて、新版胴51-2及び新ファニッシャロール52-2を印刷ユニット本体20に取り付ける。制御部251は、シャーシ42をスライドさせて、新版台車43-2を搬入出位置へ移動させる。そして、制御部251は、新版台車43-2のモータ44を駆動させ、新版胴51-2及び新ファニッシャロール52-2が乗載された新版台車43-2を、開口部21aを介して印刷ユニット本体20下方の待機位置に進入させる。
【0073】
その後、制御部251は、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を上昇させ、新版台車43-2の上テーブル46を掬い上げる。制御部251は、昇降駆動部29を駆動させてさらに昇降部27を上昇させ、印刷ユニット本体20の上下方向中程の検出位置で停止させる。そして、制御部251は、非接触センサ31により新版胴51-2までの距離を計測し、キー溝51bの位置を検出する。
【0074】
また、演算部251bは、検出したキー溝51bの位置データから、キー溝51bが下端の回転位置であるか否か、及びキー溝51bが予め入力された版胴51の径から算出される所定の高さに位置しているか否かを判定する。
【0075】
本実施の形態に係る非接触センサ31は、版胴51の径に基づいて、上テーブル46上に乗載された版胴51が検出位置に移動した際、キー溝51bが位置すると推定される位置を基準として、非接触センサ31から版胴51の側面51cまでの距離を計測し、キー溝51bの位置を検出する。版胴51の径は、入力部254から、予め入力された値を用いればよい。また、例えば、サイドフレーム21において、印刷ユニット本体20へ搬入される新版胴51-2の直上に設置されたセンサを用いて計測することとしてもよい。この場合、制御部251の演算部251bは、該センサから新版胴51-2までの距離を計測して得られた値から、新版胴51-2の径を推定することとすればよい。
【0076】
非接触センサ31は、図9(A)に示すように、検出位置にある版胴51について、キー溝51bが位置すると推定される中央部P2、中央部P2から水平方向(y軸方向)にキー溝51bの幅Wk以上離れた側部P1、P3で、版胴51までの距離を計測する。中央部P2の径方向の位置は、例えば、図8に示すように、側面51cにおけるキー溝51bの深さの半分の位置である。言い換えれば、制御部251は、このキー溝51bの深さの半分の位置が中央部P2となるように、予め入力されている版胴51の径、キー溝51bの仕様等に基づいて、昇降部27の上昇量を算出し、検出位置を設定する。
【0077】
側部P1、P3、中央部P2の位置関係について、より詳細に説明すると、側部P1と中央部P2との距離、及び中央部P2と側部P3との距離は、版胴51の軸心を中心とし、中央部P2を通る円弧上で、中央部P2から版胴51の接線方向にキー溝51bの幅Wk離れた位置である。ここで、中央部P2から版胴51の接線方向とは、版胴51の軸心を中心として、中央部P2を通る円弧の中央部P2における接線方向をいう。
【0078】
側部P1、P3と中央部P2との距離は、キー溝51bの幅Wk以上で、側面51c上の点であればよく、版胴51の回転により、キー溝51bが位置し得る適切な範囲で選択すればよい。また、側部P1、P3及び中央部P2は、版胴51の軸心を中心とする円弧上に配置されていなくてもよい。例えば、中央部P2を通る水平方向(y軸方向)の直線上に配置されていてもよい。
【0079】
また、非接触センサ31は、上記の側部P1、P3、中央部P2に加え、中央部P2を通り、版胴51の径方向の直線上で、版胴51の側面51cであると推定される中央下部P4で、版胴51までの距離を計測することにより、キー溝位置を検出する。中央下部P4は、キー溝51bに対して、版胴51の外周側の平面部に設定される。中央部P2と中央下部P4との距離は、例えば、キー溝51bの深さHkである。また、中央部P2を通り、版胴51の径方向の直線上で、版胴51の軸心側の中央上部P5で、版胴51までの距離を計測する。中央部P2と中央上部P5との距離は、例えば、キー溝51bの深さHkである。通常、中央上部P5は、キー溝51bとして適正な値よりも遠い点として検出される。
【0080】
上記P1~P5において、非接触センサ31との距離を計測し、計測結果に基づいてキー溝51bの位置を検出する。例えば、図9(A)に示すように、非接触センサ31から、側部P1までの距離と、側部P3までの距離が予め定められた所定の閾値以下であれば、側部P1と側部P3とは同一面であり、いずれもキー溝51bでないと判定する。所定の閾値は、例えば、2.0mmである。
【0081】
また、側部P1、P3のいずれかと中央部P2との距離の差が、予め定められた所定の閾値(2.0mm)より大きければ、演算部251bは、閾値以上に遠い点を、キー溝51bであると判定する。新版台車43-2の上テーブル46に乗載されている版胴51は、新版台車43-2の回転止め43aによって、キー溝51bの位置が下端に固定されているので、上テーブル46の上昇にともなって、回転止め43aがキー溝51bから外れても、キー溝51bの回転位置は下側のまま保持されている(図12(B)、(C))。したがって、通常、中央部P2がキー溝51bの位置であると検出される。
【0082】
しかしながら、上昇途中で、版胴51が予期せず回転し、キー溝51bの位置がずれた状態になると、側部P1又はP3がキー溝51bの位置であると判定される場合(図9(B))、P1~P3の測定点のいずれもキー溝51bでないと判定される場合もあり得る。この場合、制御部251は、警告音、表示部253への警告表示等の警告を発して、昇降部27を停止させる。昇降部27が停止された後、作業者は、表示部253に表示されるエラー内容、すなわち、非接触センサ31による各計測位置についてキー溝51bであるか否かの判定結果を確認し、新版胴51-2のキー溝51b位置を修正する。そして、エラーを解除し、新版胴51-2の取り付け動作を継続する。
【0083】
また、新版胴51-2の高さが推定された位置でない場合、制御部251は、警告を発して昇降部27を停止させる。具体的には、図9(C)に示すように、新版胴51-2の高さが、推定される位置よりも低く(-z方向)、中央下部P4にキー溝51bが位置する場合、また、図9(D)に示すように、新版胴51-2の高さが、推定される位置よりも高く(+z方向)、中央上部P5にキー溝51bが位置する場合が想定される。このような状況は、例えば、新版胴51-2の外周面を保護するために、新版胴51-2を印刷ユニット本体20へ取り付けるまで、新版胴51-2にシート状緩衝材等の保護部材を巻き付けていることによって起こり得る。
【0084】
この場合、作業者は、エラー内容、すなわち、新版胴51-2の高さが推定値と異なることを確認し、入力部254に補正情報を入力して、昇降部27の高さを修正する。これにより、新版胴51-2を支持軸23に取り付けるための版交換位置が適正な高さに調整され、新版胴51-2を取り付ける際のキー23bがキー溝51bに正常に挿入されない等の不具合を防止することができる。そして、作業者はエラーを解除し、新版胴51-2の取り付け動作を継続する。
【0085】
上記高さ修正は、手動ではなく、非接触センサ31による計測値に基づいて、制御部251が自動で行うこととしてもよい。具体的には、中央上部P5にキー溝51bが位置すると判定された場合、制御部251は、昇降駆動部29を制御して、中央部P2と中央上部P5との間の距離に相当する高さ分、昇降部27を下降させる。そして、制御部251は、再度非接触センサ31を制御して、新版胴51-2のキー溝51bの位置を検出する。キー溝51bが、中央部P2に位置していれば、制御部251は、引き続き昇降部27を上昇させ、新版胴51-2を版交換位置へ移動させる。これにより、制御部251は、キー溝51bの位置の検出結果に基づいて、新版胴51-2を支持軸23に取り付けるための版交換位置を調整することができる。
【0086】
検出位置において、新版胴51-2のキー溝51bが適正な位置にあることが確認された後、制御部251は、さらに昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を上昇端の版交換位置まで上昇させる。そして、制御部251は、各シリンダを伸長させて両支持軸23を版胴51の軸心方向両端部に進出させる。これにより、キー溝51bにキー23bが挿入されるとともに、版胴51が両サイドフレーム21に回転可能に支持される。
【0087】
そして、制御部251は、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27をファニッシャ準備位置へ下降させる。制御部251は、ファニッシャアーム26を、第2着脱位置から第1着脱位置へと揺動させる。続いて、制御部251は、昇降部27を上昇させ、新ファニッシャロール52-2の回転軸をファニッシャアーム26の切り欠き部へ挿入し、クランプさせる。そして、制御部251は、昇降駆動部29を駆動させて昇降部27を下降させ、新版胴51-2及び新ファニッシャロール52-2の印刷ユニット12への取り付けを終了する。昇降部27が下降端まで下降する途中の待機位置で、上テーブル46は、昇降部27から新版台車43-2へと受け渡される。
【0088】
昇降部27が下降端まで下降された後、制御部251は、新版台車43-2のモータ44を制御して、新版台車43-2を印刷ユニット本体20から、台車ユニット40のシャーシ42へと搬出する。また、新版台車43-2が搬入出位置まで移動された後、制御部251は、シャーシ42を+y方向へ移動させる。これにより、シャーシ42上の旧版台車43-1は、開口部21aを介して印刷ユニット本体20へと搬入可能な搬入出位置へ移動される。
【0089】
以上により、印刷ユニット本体20に取り付けられている旧版胴51-1及び旧ファニッシャロール52-1が取り外され、新版胴51-2及び新ファニッシャロール52-2が、印刷ユニット本体20へ取り付けられる。
【0090】
以上、説明したように、本実施の形態に係る印刷装置1は、印刷ユニット本体20に取り付ける版胴51を上昇させる途中の検出位置において、キー溝幅Wk以上の距離に離れた複数箇所までの距離を計測可能なセンサを用いてキー溝51bの検出を行う。したがって、検出位置で、版胴51を回転させることなく、キー溝51bが所定の回転位置であるか否か判定することが可能である。よって、簡素な構造の印刷装置1で、キー溝51bを検出し、キー溝51bとキー23bとの位置合わせを行うことができるので、効率よく版胴51を交換することができる。
【0091】
また、本実施の形態に係る印刷装置1では、キー溝51bと版胴51の軸心とを通る径方向の複数箇所で、版胴51までの距離を計測することにより、キー溝51bの検出を行うこととしている。これにより、版胴51に保護部材を巻き付けている場合であっても、キー溝位置の検出を行うことができる。また、検出されたキー溝51bの高さに基づいて版交換位置を調整することができるので、より効率的に版胴交換を行うことができる。
【0092】
また、本実施の形態に係る昇降部27は、版胴回転機構を備えない。よって、従来の印刷装置のように、台車側の版胴受けとは別に、より幅(版胴軸心方向)の狭い、すなわち台車開口部より幅の狭い回転機構付きの版胴受けを昇降部27側に設けなくてもよい。したがって、版交換位置において、取り外された版胴51を、より広い幅の版胴受けで支持することができる。これにより、取り外される版胴51を、版胴受け46a上に位置させるために、可動式の支持軸カバー等の版胴位置規制機構を設けなくてもよい。よって、装置の構造を簡素にし、より安定した版胴51の受け渡しを行うことができる。
【0093】
本実施の形態では、キー溝51bが版胴51の下端に位置するように設定されることとしたが、これに限られない。例えば、キー溝51bを版胴51の側部に位置させることとしてもよい。
【0094】
本実施の形態では、印刷ユニット本体20に版胴51を搬入した状態の台車43と各印刷ユニット12の両サイドフレーム21に取り付けられた状態の版胴51とが上下に位置する。したがって、版胴51の軸心方向と交差する各印刷ユニット12の奥行き(y軸方向長さ)が狭くなるので、各印刷ユニット12の間の距離を狭くすることができ、コンパクトなレイアウトの印刷装置1とすることができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る印刷装置によれば、印刷ユニット12の待機位置に対して側方から台車43を搬入出させるので、印刷ユニット12のウエブ搬送方向上流側及び下流側のスペースを有効利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、回転可能に支持された版胴を有する印刷ユニットにおいて、径の異なる版胴を適宜交換して印刷する印刷装置に好適である。特に、版胴を保護する保護部材を取り付けた状態で、印刷ユニットに取り付ける場合に好適である。
【符号の説明】
【0097】
1 印刷装置、11 巻出ロール、12 印刷ユニット、13 乾燥機、14 巻取ロール、15 ガイドロール、20 印刷ユニット本体、21 サイドフレーム、21a 開口部、22 ベースフレーム、23 支持軸、23a テーパ部、23b キー、24 ストッパ、25 制御ユニット、251 制御部、251a センサ制御部、251b 演算部、252 記憶部、253 表示部、254 入力部、26 ファニッシャアーム、27 昇降部、27a ラック、27b 支持プレート、28 インキパン、29 昇降駆動部、29a 回転軸、30 ギアケース、31 非接触センサ、32 印刷ユニット側レール、33 印刷ユニット側ラック、40 台車ユニット、41 本体フレーム、42 シャーシ、42a 台車側レール、42b 台車側ラック、43 台車、43-1 旧版台車、43-2 新版台車、43a 回転止め、44 モータ、44a 平歯車、46 上テーブル、46a 版胴受け、46b ファニッシャ受け、51 版胴、51-1 旧版胴、51-2 新版胴、51a 凹陥部、51b キー溝、51c 側面、52 ファニッシャロール、52-1 旧ファニッシャロール、52-2 新ファニッシャロール、53 ドクターブレード、54 圧胴、W ウエブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12