(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】クリップ用パッド
(51)【国際特許分類】
B42F 1/02 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
B42F1/02 G
(21)【出願番号】P 2020202913
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313008939
【氏名又は名称】有限会社 サンコーエンジニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晴敏
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-094872(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035660(JP,U)
【文献】特開2013-027992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/02
B42F 21/06
B42D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長手に形成されて一端側が開閉する一対の圧接部を備えて両圧接部間に紙等を挟むクリップに装着して用いるクリップ用パッドであって、
前記クリップの一方の圧接部を挿入する袋状の第1の装着部と、前記クリップの他方の圧接部を挿入する袋状の第2の装着部をと備え、
両装着部の夫々の上端部には、前記クリップの各圧接部を各装着部に差し込むための挿入口部が形成されており、
少なくとも何れか一方の前記装着部の挿入口部は、その一部に、前記クリップの圧接部の差し込み時に当該挿入口部の開放する方向に遊離する遊離部を備え
、
前記遊離部は、前記挿入口部への前記クリップの圧接部の挿入方向と反対方向に前記装着部から張り出して形成されていて、前記装着部に装着する前記クリップの外側に当接して前記クリップから離反する方向に遊離可能となっていることを特徴とするクリップ用パッド。
【請求項2】
前記第1の装着部と前記第2の装着部との何れか一方は、他方よりも外側に拡張して設けられた拡張部を備えることを特徴とする請求項1記載のクリップ用パッド。
【請求項3】
前記第1の装着部と前記第2の装着部とによって構成されたパッド部を複数備え、各パッド部は前記拡張部を介して連結されていることを特徴とする請求項2記載のクリップ用パッド。
【請求項4】
前記第1の装着部と前記第2の装着部とによって構成されたパッド部を複数備え、各パッド部は、その上端に設けられた連結部を介して連結されていることを特徴とする請求項1記載のクリップ用パッド。
【請求項5】
前記第1の装着部と前記第2の装着部とは、その一方が他方より大きな形状とされていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のクリップ用パッド。
【請求項6】
前記第1の装着部と前記第2の装着部とは、その夫々の下端が互いに異なる方向に傾斜していることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のクリップ用パッド。
【請求項7】
前記第1の装着部は、第1内側シートと、該第1内側シートの外側に前記クリップの一方の前記圧接部を収容する第1収容部を除いて貼り合わされた第1外側シートとを備え、
前記第2の装着部は、第2内側シートと該第2内側シートの外側に前記クリップの他方の前記圧接部を収容する第2収容部を除いて貼り合わされた第2外側シートとを備えることを特徴とする請求項1~6の何れか1項記載のクリップ用パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙等を挟み止めるクリップに装着するクリップ用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
金属線材により扁平な2重渦巻き状に形成されたクリップは、一般にゼムクリップとも呼ばれる。この種のクリップは、2つの圧接部を備え、その間に紙等を挟み込んで留めておく等の用途で広く用いられる。
【0003】
この種のクリップを用いたときには、金属線材の先端が露出していることにより紙等が傷つき、或いは、両圧接部が直接に紙面を押圧して挟むので紙面に挟み跡が残るといった不都合があった。
【0004】
そこで、クリップに装着することにより、紙等に傷つきや挟み跡が生じることを防止したクリップ用パッドが知られている(下記特許文献1参照)。このクリップ用パッドにおいては、更に、表面に印刷や色分け等の工夫を施すことで、しおりや整理ラベルとしての用途も提案されている。
【0005】
上記従来のクリップ用パッドは、扁平な袋状の一対の装着部を備えており、夫々の装着部に、クリップの圧接部を挿入することによりクリップに装着される。両装着部には、夫々、クリップの各圧接部を挿入するための挿入口部が形成されている。
【0006】
クリップにクリップ用パッドを装着するときには、夫々の挿入口部から、各々の圧接部を挿入する。これにより、両圧接部の挟持力がクリップ用パッドの夫々の装着部に付与され、両装着部間で紙等を確実に挟持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のものでは、クリップにクリップ用パッドを装着する際、装着部の挿入口部が扁平に閉じられた状態であるため、クリップの圧接部を挿入口部から挿入し難い。このときに、各圧接部が夫々の装着部の挿入口部から正確に挿入されないと、クリップ用パッドの外側に圧接部が露出するため、クリップ用パッドへのクリップの装着作業が失敗となり、装着作業をやり直さなければならず、不要な手数がかかってしまう不都合がある。
上記の点に鑑み、本発明は、クリップへの装着作業を円滑に行うことができる構造簡単なクリップ用パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、一方向に長手に形成されて一端側が開閉する一対の圧接部を備えて両圧接部間に紙等を挟むクリップに装着して用いるクリップ用パッドであって、前記クリップの一方の圧接部を挿入する袋状の第1の装着部と、前記クリップの他方の圧接部を挿入する袋状の第2の装着部をと備え、両装着部の夫々の上端部には、前記クリップの各圧接部を各装着部に差し込むための挿入口部が形成されており、少なくとも何れか一方の前記装着部の挿入口部は、その一部に、前記クリップの圧接部の差し込み時に当該挿入口部の開放する方向に遊離する遊離部を備え、前記遊離部は、前記挿入口部への前記クリップの圧接部の挿入方向と反対方向に前記装着部から張り出して形成されていて、前記装着部に装着する前記クリップの外側に当接して前記クリップから離反する方向に遊離可能となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明のクリップ用パッドは、クリップに装着するときに、クリップの2つの圧接部を第1及び第2の装着部の夫々の挿入口部に挿入する作業行う。このとき、挿入口部が閉じた状態にあっても、クリップの圧接部の先端を遊離部に引っ掛けて遊離させることで、挿入口部を開放させることができ、クリップへの装着作業を円滑に行うことができる。
【0011】
また、本発明において、前記第1の装着部と前記第2の装着部との何れか一方は、他方よりも外側に拡張して設けられた拡張部を備えてもよい。これによれば、所望の表示や情報を拡張部に予め印刷したり、使用者が拡張部にメモ等を記入したりすることができ、使い勝手が向上する。
更に、前記第1の装着部と前記第2の装着部とによって構成されたパッド部を複数備えるときには、各パッド部を、前記拡張部を介して連結することができる。
【0012】
また、前記第1の装着部と前記第2の装着部とによって構成されたパッド部を複数備えるときには、各パッド部は、その上端に設けられた連結部を介して連結されていてもよい。
【0013】
また、本発明において、前記第1の装着部と前記第2の装着部とは、その一方が他方より大きな形状とされていることが好ましい。これによれば、第1の装着部と第2の装着部との境界が容易に視認でき、第1の装着部と第2の装着部との間に紙等を挟み込む作業が円滑に行える。
【0014】
また、本発明において、前記第1の装着部と前記第2の装着部とは、その夫々の下端が互いに異なる方向に傾斜していてもよい。これによれば、第1の装着部の下端の傾斜と第2の装着部の下端の傾斜との交差位置から、紙等を挟み込むことができ、挟み込み作業が容易となる。
【0015】
また、本発明において、前記第1の装着部は、第1内側シートと、該第1内側シートの外側に前記クリップの一方の前記圧接部を収容する第1収容部を除いて貼り合わされた第1外側シートとを備え、前記第2の装着部は、第2内側シートと該第2内側シートの外側に前記クリップの他方の前記圧接部を収容する第2収容部を除いて貼り合わされた第2外側シートとを備えることを特徴とする。
【0016】
これによれば構造簡単として低コストでクリップ用パッドを製造することができるだけでなく、外観形状の自由度が高いクリップ用パッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態のクリップ用パッドを示す斜視図。
【
図2】
図1のクリップ用パッドの展開状態を示す説明図。
【
図4】
図1のクリップ用パッドの使用状態を示す説明図。
【
図5】本発明の第2の実施形態のクリップ用パッドを示す斜視図。
【
図6】
図5のクリップ用パッドの展開状態を示す説明図。
【
図7】第1及び第2の実施形態のクリップ用パッドの変形例を示す説明図。
【
図8】第1及び第2の実施形態のクリップ用パッドの他の変形例を示す説明図。
【
図9】本発明の第3の実施形態のクリップ用パッドを示す説明図。
【
図10】本発明の第3の実施形態のクリップ用パッドの変形例を示す説明図。
【
図11】本発明の第4の実施形態のクリップ用パッドを示す説明図。
【
図12】本発明の第5の実施形態のクリップ用パッドを示す説明図。
【
図13】第5の実施形態のクリップ用パッドの変形例を示す説明図。
【
図14】本発明の第6の実施形態のクリップ用パッドを示す説明図。
【
図15】第6の実施形態のクリップ用パッドの製造工程の一部を示す説明図。
【
図16】第6の実施形態のクリップ用パッドの変形例を示す説明図。
【
図17】第1の実施形態のクリップ用パッドの変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1の実施形態のクリップ用パッド1は、単一のパッド部2により構成されている。パッド部2は、
図2に示すように、中空に形成されており、第1の装着部3と第2の装着部4とを備えている。
【0019】
第1の装着部3と第2の装着部4とは、夫々、挿入口部5を備えている。各挿入口部5は、遊離部6を備えている。遊離部6は、パッド部2の上縁よりも下方位置に設けられている。
【0020】
パッド部2は、
図3に示すように、表面パネル7と裏面パネル8とを互いに貼り合わせることにより形成されている。挿入口部5の一部に形成されている遊離部6は、表面パネル7の一部に形成されており、裏面パネル8から遊離自在となっている。2つの挿入口部5は、
図2に示すように、表面パネル7に形成された2つの穴の夫々により形成される。
【0021】
このように構成された第1の実施形態のクリップ用パッド1は、先ず、
図2に示した折目線9を介して折り曲げ、次いで、
図4Aに示すように、クリップ10の圧接部の先端を挿入口部5に差し込み、
図4Bに示すように、クリップ10の一方の圧接部を第1の装着部3に挿入し、クリップ10の他方の圧接部を第2の装着部4に挿入することで、クリップ10はクリップ用パッド1が装着されて使用状態となる。
【0022】
このとき、
図4Aに示すように、クリップ10の圧接部の先端を挿入口部5に差し込むことで、遊離部6が遊離して挿入口部5が開放されるので、挿入作業が容易となる。
【0023】
次に、
図5に示す第2の実施形態のクリップ用パッド11について説明する。このクリップ用パッド11が備える挿入口部12は、
図6に示すように、表面パネル13に設けた1つの穴によって形成されている。それ以外の構成は、第1の実施形態と同様であるため同一の符号を付す。そして、挿入口部12には、遊離部14が形成されており、第1の実施形態と同様の効果が得られるようになっている。
【0024】
第1及び第2の実施形態の変形例として、
図7及び
図8に示すものを挙げることができる。
図7及び
図8に示すものは、挿入口部と遊離部の形状が第1及び第2の実施形態と異なり、それ以外は同様であるため、同一符号を付して構成及び効果の説明を省略する。
【0025】
図7Aに示すクリップ用パッド15Aは、波型の切れ目によって挿入口部16Aが形成されており、当該切れ目の山型の部分が遊離部17Aとして挿入口部16Aを容易に開放できるようになっている。
図7Bに示すクリップ用パッド15Bは、挿入口部16Bの中央部外側に山型の遊離部17Bが形成されていて、露出する裏面パネル8から離反可能となっている。
図7Cに示すクリップ用パッド15Cは、表面パネル7側の挿入口部16Cの端縁全長にわたって山型の遊離部17Cが形成されている。これにより、遊離部17Cが露出する裏面パネル8から離反可能となっている。
【0026】
図8Aに示すクリップ用パッド18Aは、表面パネル7の全幅にわたって遊離部19Aが形成されており、遊離部19Aによって閉塞された挿入口部20Aが設けられている。挿入口部20Aは遊離部19Aが裏面パネル8から離反することで開放される。
図8Bに示すクリップ用パッド18Bは、挿入口部20Bの両側に一対のスリット21Bを設けることで、遊離部19Bが形成されている。
図8Cに示すクリップ用パッド18Cは、図示した展開状態でH形状のスリット21Cを設けたことにより、遊離部19Cが形成されている。
【0027】
次に、
図9に示す第3の実施形態のクリップ用パッド22について説明する。このクリップ用パッド22は、第1の装着部3に拡張部23が形成されている。拡張部23を設けることで、拡張部23にイラストや文字といった各種の情報表示を印刷し、或いは、拡張部23にメモ等を書き込めるようにしておくことが可能となるので、使い勝手が向上する。
【0028】
第3の実施形態の変形例としては、
図10に示すものが挙げられる。
図10Aに示すクリップ用パッド24Aに設けられた拡張部25Aは、表裏方向に貫通する孔部を備えている。
図10Bに示すクリップ用パッド24Bに設けられた拡張部25Bは、パッド部26Bの上方に延びる環状に形成されている。
図10Cに示すクリップ用パッド24Cは、2つのパッド部26Cを備え、拡張部25Cは、両パッド部26Cの上方に延びる環状に形成されている。
更に、
図11に示す第4の実施形態のクリップ用パッド27は、2つのパッド部28を備えるが、2つのパッド部28は、拡張部29によって連結されている。
【0029】
次に、第5の実施形態について説明する。
図12に示すように、第5の実施形態のクリップ用パッド30は、複数のパッド部31と、パッド部31を連結する連結部32とを備えている。連結部32は、互いに隣り合うパッド部31を分離することができるように切り離し自在となっている。また、第1の装着部3及び第2の装着部4の上端部と連結部32との間には、第1の装着部3側と第2の装着部4側とでクリップ10の圧接部を通過自在とする挿通穴33が形成されている。
【0030】
第5の実施形態の変形例としては、
図13に示すものが挙げられる。
図13Aに示したクリップ用パッド34は、3つのパッド部35を3方向(又は、放射状)に連結する連結部36を備えている。
図13Bに示したクリップ用パッド37は、2つのパッド部38を連結する連結部39を備えている。
【0031】
次に、第6の実施形態について説明する。
図14に示すように、第6の実施形態のクリップ用パッド40は、第1の実施形態と同様の挿入口部5を備え、挿入口部5には遊離部6が形成されている。更に、第6の実施形態のクリップ用パッド40は、第1の装着部3及び第2の装着部4の上端部に延出する延出板41を備えている。第1の装着部3及び第2の装着部4と延出板41との境界位置の近傍には、挿通穴42が形成されている。挿通穴42は、第1の装着部3と第2の装着部4とにクリップ10の各圧接部を挿入するときに一方の圧接部を通過させるために設けられている。
【0032】
第6の実施形態のクリップ用パッド40は、次のようにして製造することができる。即ち、先ず、
図15Aに示すように、第1の装着部3と第2の装着部4とを個別に形成する。第1の装着部3は、第1内側シート43と第1外側シート44とを貼り合わせて形成される。第2の装着部4は、第2内側シート45と第2外側シート46とを貼り合わせて形成される。次いで、
図15Bに示すように、第1の装着部3の延出板41と第2の装着部4の延出板41とを互いに貼り合わせる。
【0033】
こうすることで、容易にクリップ用パッド40を製造することができる。しかもこの構造によれば、外観の設計が容易である。例えば、
図16に外観の変形例を示すように、曲線の輪郭を有するクリップ用パッド47を形成することも可能となる。
【0034】
なお、
図4を参照して、第1の装着部3と第2の装着部4とは、その一方が他方より大きな形状とされていることで、紙等の挟み込み作業が容易となっているが、これ以外に、
図17に示すように、第1の装着部3と第2の装着部4との夫々の下端を、互いに異なる方向に傾斜する形状に形成されていてもよい。これによっても、紙等の挟み込み作業を容易とする効果を得ることができる。
また、上記の各実施形態では、クリップ10として所謂ゼムクリップを採用しているが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0035】
1,11,15A,15B,15C,18A,18B,18C,22,24A,24B,24C,27,30,34,37,40,47…クリップ用パッド、10…クリップ、3…第1の装着部、4…第2の装着部、5,12,16A,16B,16C,20A,20B…挿入口部、6,14,17A,17B,17C,19A,19B,19C…遊離部、23,25A,25B,25C,29…拡張部、2,26B,26C,28,31,35,38…パッド部、32,36,39…連結部、43…第1内側シート、44…第1外側シート、45…第2内側シート、46…第2外側シート。